JP3583739B2 - ガス分光分析用微小フローセルおよびその製造方法 - Google Patents

ガス分光分析用微小フローセルおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は気体中に存在する微量物質を検出するセンサーに用いられるガス分光分析用微小フローセルおよびその製造方法、ならびに該ガス分光分析用微小フローセルに用いられるガス濃縮回収用セルに関する。さらに、該ガス分光分析用微小フローセルを具えるガス分光分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気汚染の原因となる有機ガスの分析においては、一般に分析対象ガスの濃度が希薄であるため、分析操作の前段階で、この低濃度分析対象ガスの濃縮回収処理が必要となる。従来の濃縮分析装置においては、吸着捕集管に充填された吸着剤に分析対象ガスを吸着させ、その後に加熱脱着処理により分析対象ガスを高濃度な濃縮ガスとして回収し、分析装置に導入する装置が最も一般的である。
【0003】
この従来の濃縮分析装置の使用手順とその問題について、紫外分光器等の分析手段を組み合わせたガス分析装置(特開2000−241313号公報)、およびガスクロマトグラフとコールドトラップ法とを組み合わせた手法を例として、以下に簡単に説明する。
【0004】
分析したい場所において、分析対象の有機ガスを含んだ大気を捕集管に導入し、有機ガスを吸着剤に捕集する。その後、この捕集管を加熱することにより吸着剤に吸着されている有機ガスを濃縮ガスとして脱着させる。次いで、紫外分光器などを分析手段とする場合は、この濃縮ガスを紫外分光器等の分析装置へ導入する。ガスクロマトグラフを分析手段として用いる場合は、液体窒素を循環させた冷却回収装置にこの濃縮ガスを再回収した後、一気に再加熱してガスクロマトグラフ分析装置へ導入する。
【0005】
これらの手順において、次のような問題が生じる。すなわち、加熱脱着によりガスを回収する際、従来用いられている捕集管の大きさは太さ数mm×長さ数十cmと大きいため吸着部全体が均一に加熱されにくく、脱着回収時間に幅が生じるため濃縮効果が減少して分析感度が低下する。管壁の肉厚も1mm以上と厚いため、外壁をヒーターで加熱する際、管内に充填された吸着剤とヒーターとに温度差が生じ、温調精度が低下する。また、吸着剤の加熱温度を複数種の吸着ガスの各々に固有な脱着温度に制御して分析対象ガスの成分分離を行う際、捕集管の体積が大きい場合は温度制御の精度が悪くなるため成分分離能が悪くなる。また加熱部分が大きいと、吸着剤全体をガスの脱着に必要な温度に加熱するために、加熱温度を高く、そして加熱時間を長く設定する必要がある。従って、消費電力も高くなるなどの問題も生じる。
【0006】
また、捕集管の内径も数mm程度に大きいため、妨害成分を除去処理した石英ウールを吸着剤の前後に入れて吸着剤を固定する必要がある。粉末吸着剤を使用する際は石英ウールの繊維間に吸着剤が混入して吸着剤とガスの接触断面積が変化してしまい測定精度が低下する原因となるという問題がある。
【0007】
さらに、濃縮ガスを紫外分光器等の分析装置へ導入する際、測定セルの体積が光路長10cmに比べて数十cm程度に大きい場合、セル内に濃縮ガスが拡散してしまい濃縮効果が減少して分析感度が低下するという問題が生じる。また測定セルが大きいと、セル壁面と中央部でガスの濃度が変化し、定量誤差の原因となるという問題がある。
【0008】
また、この濃縮ガスを冷却回収装置に回収する際、上記のように高温なガスを冷却回収するため、液体窒素などの冷媒を循環して冷却回収装置を冷却する必要が生じる。このため10L程度の冷媒溜めおよび冷媒循環装置が必要となり装置規模が大きくなるという問題がある。この冷却回収装置ではガスを凝固して回収するため再加熱して取り出す必要があり、ここに別途加熱機構を設ける必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
大気汚染有機ガスの分析には、低濃度の分析対象ガスを分析の前段階で濃縮回収し、この濃縮ガス試料を加熱により回収して分析装置に導入する方法が一般的である。しかし、上述のように捕集管や分析セルの体積が大きい場合は、ガス分光分析の感度、成分分離能、定量精度の低下が生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みて、ガス分光分析の感度、成分分離能、定量精度の向上を実現し、同時に装置全体の低消費電力化、および小型軽量化を実現するための、濃縮用セルおよび測定用セルから成るガス分光分析用微小フローセルおよびその製造方法を提供する。また、特に濃縮用セルとして、ガス冷却回収流路を含むガス濃縮回収用セルも提供する。さらには、ガス分光分析用微小フローセルを具えるガス分析装置も提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のガス分光分析用微小フローセルは、分析対象ガスが流れるガス流路、濃縮用セル、および測定用セルを具え、
前述の分析対象ガスが流れるガス流路は、ガス導入流路を含む第1ガス流路と、ガス排出流路を含む第2ガス流路と、第1ガス流路および第2ガス流路を連通する連結ガス流路とからなり、
前述の濃縮用セルは、第1ガス流路と、該第1ガス流路の一部に設けられた分析対象ガスを吸脱着する物質と、該分析対象ガスを吸脱着する物質を加熱する加熱源とを具えること、および
前述の測定用セルは、第2ガス流路と、該第2ガス流路に分光分析用紫外光を入射する光ファイバと、該第2ガス流路から分光分析用紫外光を出射する光ファイバとを具える。
【0012】
ここで、前述の濃縮用セルが、分析対象ガスを吸脱着する物質を固定するための固定部を具えることが好ましい。
【0013】
また、前述の第1ガス流路が、加熱源の加熱により脱着した分析対象ガスを冷却回収するガス流路を具えることが好ましい。
【0014】
本発明では、前述の第1ガス流路および第2ガス流路が、それぞれ別個の基板上に形成され、これらの基板が積層され、かつ連結ガス流路が貫通孔となっている構造をしていてもよく、もしくは第1ガス流路、第2ガス流路、および連結ガス流路が同一基板上に形成されている構造をしていてもよい。
【0015】
前述の分析対象ガスを冷却回収するガス流路は、ヒーターおよび断熱材を設けず、空冷によってガスを冷却する流路であってもよく、この分析対象ガスを冷却回収するガス流路に対応した基板表面部分に、空冷用溝および/または冷却用メタル薄膜を有するを有することが好ましい。さらに、分析対象ガスを冷却回収するガス流路中に、多数の微細突起構造を有してもよい。
【0016】
本発明のガス分光分析用微小フローセル中の入射用光ファイバーの先端は半球状であり、出射用光ファイバーの先端は平坦であることが好ましい。
【0017】
また、分析対象ガスを吸脱着する物質として、異なるガス吸脱着特性をもつ複数の物質を用いるができ、分析対象ガスを吸脱着する物質は、多孔質ガラス、多孔質ポリマー、および多孔質カーボンよりなる群から少なくとも1種選択することができる。
【0018】
さらに、本発明のガス濃縮回収用セルは、ガス導入流路およびガス排出流路を有する分析対象ガスが流れるガス流路と、ガス流路の一部に設けられた分光対象ガスを吸脱着する物質と、分析対象ガスを吸脱着する物質を加熱する加熱源と、ガス流路の一部に設けられた吸脱着する物質から脱着した分析対象ガスを冷却回収するガス流路と、を具える。
【0019】
このようなガス濃縮回収用セルは、第1の基板の裏面に薄膜パターンよりなる薄膜ヒーターを形成する工程と、
第1の基板の表面にガス吸着剤固定部としての段差を有するガス吸着剤充填部流路用の溝およびガス冷却回収流路用の溝を形成する工程と、
第2の基板のガス吸着剤充填部用の溝に対応する位置にガス導入流路用の穴、およびガス冷却回収流路用の溝に対応する位置にガス排出流路用の穴を形成する工程と、
第1の基板の表面に前記第2の基板を接合してガス導入流路に連通したガス吸着剤充填部流路およびガス排出流路に連通したガス冷却回収流路を形成する工程と、
ガス吸着剤充填部流路内にガス吸着剤を導入する工程と、を具える。
【0020】
ここで、ヒーターを設ける工程は、メタルマスク法、リフトオフ法、メッキ法、およびイオンミリング法よりなる群から選択される方法によって施すことができる。また、連続したパターンを形成する工程は、ダイシングソーを用いた方法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、およびサンドブラスト法よりなる群から選択される方法によって施されるができる。
【0021】
さらに、上述したような本発明のガス分光分析用微小フローセルの製造方法は3通りあり、第1の製造方法は、第1の基板の表面にガス吸着剤固定部としての段差を含む連続したパターンの溝を形成する工程と、
溝の一部にガスを吸脱着する物質を充填する工程と、
溝に所定間隔離して分光分析用紫外光を入射する光ファイバおよび分光分析用紫外光を出射する光ファイバを、ガラスよりなる封止材料を用いて接続する工程と、
第1の基板の表面に平坦な第2の基板を接合により貼り合わせて溝部分にガス流路を形成する工程と、
第1の基板の裏面で、ガスを吸脱着する物質の充填部分に対応した位置にヒーターを設ける工程と、を具える。
【0022】
第2のガス分光分析用微小フローセルの製造方法は、第1の基板の表面にガス吸着剤固定部としての段差を含む連続したパターンの溝を形成する工程と、
溝の一部にガスを吸脱着する物質を充填する工程と、
第2の基板の表面に所定の連続したパターンの溝および溝部分に貫通孔を形成する工程と、
第2の基板の溝に所定間隔離して分光分析用紫外光を入射する光ファイバおよび分光分析用紫外光を出射する光ファイバをガラスよりなる封止材料を用いて接続する工程と、
第2の基板の表面に平坦な第3の基板を接合によって貼り合わせて第2の基板の溝部分にガス流路を形成する工程と、
第1の基板の表面に第2の基板の裏面を接合によって貼り合わせて第1の基板の溝部分にガス流路を形成する工程と、
第1の基板の裏面で、ガスを吸脱着する物質の充填部分に対応した位置にヒーターを設ける工程と、を具える。
【0023】
第3の本発明のガス分光分析用微小フローセルの製造方法は、第1の基板の表面にガス吸着剤固定部としての段差を含む連続したパターンの溝を形成する工程と、
溝の一部にガスを吸脱着する物質を充填する工程と、
第1の基板の表面に第1の基板の溝に対応した位置に貫通孔を有する平坦な第2の基板を接合によって貼り合わせて、第1の基板の溝部分にガス流路を形成する工程と、
第1の基板の裏面で、ガスを吸脱着する物質の充填部分に対応した位置にヒーターを設ける工程と、
第3の基板の表面に所定の連続したパターンの溝および溝部分に貫通孔を形成する工程と、
第3の基板の溝に所定間隔離して分光分析用紫外光を入射する光ファイバおよび分光分析用紫外光を出射する光ファイバをガラスからなる封止材料を用いて接続する工程と、
第3の基板の表面に、第3の基板の溝に対応した位置に貫通孔を有する平坦な第4の基板を接合によって貼り合わせて第3の基板の溝部分にガス流路を形成する工程と、
第2の基板と第3の基板との間に介在し、第2の基板の貫通孔および第3の基板の貫通孔に対応した位置に貫通孔を有するテフロン(登録商標)シールパッキングよりなる第5の基板を積層する工程と、を具える。
【0024】
ここで、上述したガス流路が、ガス吸着剤固定用段差を挟んでガス吸着剤充填部流路およびガス冷却回収流路を含むことが好ましい。
【0025】
また、上述した各製造方法は、第2の基板の第1の基板と接合する面と反対面上、または第1の基板の裏面で、ガス冷却回収流路に対応した位置に、空冷用溝を形成する工程をさらに具えてもよい。
【0026】
さらに、上述した各製造方法では、第1の基板の裏面で、ガス冷却回収流路に対応した位置に、冷却用メタル薄膜を形成する工程をさらに具えることもできる。
【0027】
そして、上述した各製造方法において、ヒーターを設ける工程は、メタルマスク法、リフトオフ法、メッキ法、およびイオンミリング法よりなる群より選択される方法によって施されることができ、そして連続したパターンを形成する工程は、ダイシングソーを用いた方法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、およびサンドブラスト法よりなる群から選択される方法によって施すことができる。
【0028】
さらに、本発明のガス分光分析装置は、分析対象ガスが流れるガス流路、濃縮用セル、および測定用セルを有する上述した本発明のガス分光分析用微小フローセルと、ヒーター用電源と、紫外線光源と、紫外分光器と、分析対象ガスの成分と濃度を測定する測定手段とを具える。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明のガス分光分析用微小フローセルは、ガス流路と、濃縮用セルと、測定用セルとからなる。
【0030】
「ガス流路」は、濃縮用セルに含まれるガス導入流路を有する第1ガス流路と、測定用セルに含まれるガス排出流路を有する第2ガス流路と、第1ガス流路および第2ガス流路を連通する連結ガス流路とからなる。この連結ガス流路は、濃縮用セルおよび測定用セルの間を接続する微量試料のフロー分析が可能なガス流路である。
【0031】
「濃縮用セル」は、第1ガス流路と、この第1ガス流路の一部に分析対象ガスを吸脱着する物質(ガス吸着剤)を充填させたガス吸着剤充填部と、このガス吸着剤充填部全体を加熱する機能と、を有する。好ましくは、濃縮用セル中のガス吸着剤充填部の下流部分に、ガス吸着剤を固定するための固定部を設ける。
【0032】
「測定用セル」は、第2ガス流路と、この第2ガス流路の両端に接続された光ファイバとを有し、この光ファイバを通してガス流路内の紫外吸収スペクトルによって分析対象ガスを分光測定する。
【0033】
各部分は以下のような条件を満たす程度に小型化を図るものとする。
【0034】
「濃縮用セル」の流路は、試料の濃縮に十分な量のガス吸着剤が充填可能で、ガス吸着剤とガスとの接触面積が大きく、かつ加熱時に温度が不均一にならないように、数100μm径×数cm長さ程度とする。固定部としては、ガス吸着剤充填部の下流部分に段差構造を設けることができる。このガス吸着剤固定部用段差は、ガス吸着剤充填部流路と同じ幅で、10〜数10μm深さ×1mm程度である。加熱機能(ヒーター)はガス吸着剤充填部流路全体を加熱できるように、ガス吸着剤充填部流路と同程度の大きさの金属薄膜等をガス吸着剤充填部流路に対応した位置の外面に取り付け、全体を片側より加熱するものとする。このヒーターの外側をテフロン(登録商標)などの断熱材で覆い、加熱してもよい。低消費電力化をはかるため、ヒーターはガス吸着剤充填部全体を効率よく温度制御可能なように、例えば蛇行状などにパターニングされている。
【0035】
セルが微小であるためガス吸着剤充填部の熱容量が小さく、10〜数10秒程度の高速な加熱脱着が可能となり、加熱脱着効率が上昇する。
【0036】
「測定用セル」の流路は光ファイバによる紫外吸収スペクトルが測定可能な大きさでかつ試料ガス濃縮効果を維持できるよう、数100μm径×数cm長さ程度の大きさとする。
【0037】
本発明のガス分光分析用微小フローセルの大きさは3cm×1cmであり、厚さは張り合わせる基板の数に応じるものである。
【0038】
本発明のガス分光分析用微小フローセル中のガス流路は全て、連続していれば同一基板上に形成されていても、異なる基板上に形成されていてもよい。つまり第1ガス流路、第2ガス流路、および連結ガス流路が同一基板上に連続して形成されていてもよく、もしくは第1ガス流路と第2ガス流路がそれぞれ異なる基板上に形成され、それらの基板が積層されて第1ガス流路と第2ガス流路が連通するように、連結ガス流路が、対応する基板部分の貫通孔として形成されてもよい。
【0039】
ここで、上述した濃縮用セルとして、ガス吸着剤に吸着した分析対象ガスを加熱脱着した後に、ガスを冷却回収するためのガス冷却回収流路をさらに有する、ガス濃縮回収用セルを用いることがさらに好ましい。ガス濃縮回収用セルは、ガス導入流路と、ガス吸着剤と、ガス吸着剤充填部流路と、ガス吸着剤充填部流路の下流に設けられた、ガス吸着剤固定部と、ガス冷却回収流路と、ガス排出流路と、ガス吸着剤充填部を加熱する機能を有するヒーターとを具える。このガス濃縮回収用セルは、本発明のガス分光分析用微小フローセルの濃縮用セルとして測定用セルと組み合わせて用いられることはもちろんだが、同様に、他の分析装置に接続して用いることも可能である。
【0040】
このガス濃縮回収用セルのガス吸着剤充填部流路は、分析対象ガスの濃縮に十分な量のガス充填剤が充填可能で、ガス吸着剤とガスとの接触面積が十分大きく、かつ加熱時に温度が不均一にならないよう数(0.1〜9)mm幅×数10〜数100μm深さ×数mm長さ程度の大きさとする。この流路の下流部分のガス吸着剤固定部としての段差構造は、ガス吸着剤充填部流路と同じ幅で10〜数10μm深さ×1mm長さ程度である。セルを微小にすることで、ガス流量が従来の1/10〜1/100となるため、この程度の段差構造でガス吸着剤を十分固定することができる。
【0041】
また、ガス吸着剤固定用段差の下流のガス冷却回収流路は、数100μm幅×数100μm深さ×数mm長さの流路である。このガス冷却回収流路に対応する位置の外面にはヒーターおよび断熱材を設けず、空冷によってガスを冷却する。上述したように、セルが微小であるため、熱容量が小さく、冷却効率が良くなり、液体窒素などの冷媒が不要となる。また、空冷回収のため、再加熱過程は不要となる。さらに、ガス冷却回収流路中に、微細突起構造を設けると、加熱されたガスがガス冷却回収流路中に滞留する時間が長くなり、より効率的に冷却することが可能となる。また、ガス冷却回収流路に対応する基板の表面部分に、空冷用の溝を形成したり、メタル薄膜を形成しても、冷却効果を増すことができて好ましい。
【0042】
このガス濃縮回収用セルの全体の大きさは3cm×1cmであり、厚さは張り合わせる基板の数に応じる。
【0043】
上述したガス分光分析用微小フローセル、およびガス濃縮回収用セルの製造方法の条件としては、各セルの基板材料として、微細加工が可能な材料でかつ加熱時においても分解したり妨害成分を発生したりすることの無い材料を用る。また光ファイバまたは基板等の接続には、熱しても分解したり妨害成分を発生しない接着材料または接着方式を用いることが必要である。またガス流路の形状はガス吸着剤充填または光ファイバ接続に十分な大きさに加工できることが必要である。このため本発明では、各セルの基板にはパイレックス(登録商標)やシリコン等を用いる。また光ファイバ等の接続には、一般的に用いられている紫外線硬化樹脂等の接着剤と比較して、高温でも分解せずかつ妨害成分を発生しない低融点ガラスもしくはシクロテン等による封止方法を採用する。
【0044】
また流路の形成法としては、ダイシングソーを用いた簡便な方式やドライエッチング、ウェットエッチング、サンドブラスト法等が適用できる。ヒーターの形成法としては、メタルマスク法、リフトオフ法、メッキ法、およびイオンミリング法などがあげられる。
【0045】
上述したような本発明のガス分光分析用微小フローセルは、紫外光源、紫外分光器、ヒーター用電源、および測定器と接続することによって、ガス分光分析装置となる。
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施形態例を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態例のみに限定されるものではない。
【0047】
(実施形態例1)
本発明の実施形態例1として、パイレックス(登録商標)基板を用い、ガス流路が全て同一基板上に形成されたガス分光分析用微小フローセルおよびその製造方法を図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの一例を示す斜視図である。図2は、図1のa−a線における断面図を示す。
【0048】
両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmのパイレックス(登録商標)基板を、プラズマCVD装置(アネルバ(株))を用いて、窒素ガス140sccm、アルゴンベースの5%シランガス25sccm、圧力20Pa、RF(高周波)電力40Wの条件下で、パイレックス(登録商標)基板の片面に窒化シリコン膜を200nm堆積した。
【0049】
この窒化シリコン膜付きのパイレックス(登録商標)基板にダイシングソー装置(ディスコ)により、0.4mm厚のブレードを用いて、図1に示すような連続したパターンに幅および深さが0.4mmの溝パターンA〜Eを、複数個形成した。図1中のA〜Eの部分はチョッパーカットで溝を形成した。溝を形成後、各溝パターンごとにチップとして切り離し、複数のパイレックス(登録商標)基板21を作製した。ここで、Aはガス吸着剤充填部流路、Bは紫外線光路兼ガス流路、Cはガス導入流路、Dはガス排出流路、およびEは第1ガス流路と第2ガス流路とを連通する連結ガス流路に対応している。
【0050】
図2に示すように、溝のAの部分には細孔径を約4nmに調整した多孔質ガラス(バイコールなど)の粉末をガス吸着剤1として配置した。チョッパーカットで溝を形成してあり、両端の溝が浅くなって、ガス吸着剤固定部Fを形成している。そのため、流路にガスを通じても、多孔質ガラスの粉末が移動しにくい構造になっている。
【0051】
次に、第二の両面研磨したパイレックス(登録商標)基板22を窒化シリコン膜付きパイレックス(登録商標)基板21と同じ大きさに切断した。
【0052】
次にこの溝を形成した基板21と、溝を形成していない平坦な基板22を陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でアライメントした。引き続き、−1.5kVの電圧を印可し、ヒータ温度450℃にて、10分間の条件で基板21の窒化シリコン膜と基板22の陽極接合を行って張合わせた。このようにして、それぞれの溝A〜Eをガス流路とした。
【0053】
端面を鏡面研磨したUV透過型マルチモード光ファイバー2(コア径365マイクロメートル、クラッド径400マイクロメートル、加オズオプティクス社製)を二本用意し、研磨面が向かいあわせになるようにガス流路Bに挿入した。次に、低熔融ガラス(旭テクノグラス7590)の粉末を1%のニトロセルローズを含む酢酸イソアミル溶液で溶いたスラリーを、ガス流路Bの光ファイバーが突き出している部分に塗布した。塗布後、110℃で乾燥し有機溶媒を気化した。その後、350℃に昇温してニトロセルローズを追い出した後、450℃で焼成し光ファイバ2をパイレックス(登録商標)セルに封着した。その後緩やかに常温に戻し、余分なファイバをカッターで除去し、四側面を鏡面に研磨した。
【0054】
次に、第三のパイレックス(登録商標)基板23をスパッタ装置(日本シード社製)に導入し、放電電力500W、アルゴン雰囲気中0.005Torrで白金のスパッタ蒸着を行い、ヒーター3を形成した。その際、メタルマスクを用いて所定の薄膜パターンを得た。このパイレックス(登録商標)基板23を、ダイシングソー装置で所定の大きさに切断した後、光ファイバーを封入したセルの下に密着させて配置した。ここで、白金のヒーター部3は多孔質ガラスの直下に配置し電流を通じることで効率的に多孔質ガラスの温度を制御することができる。
【0055】
以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを製造した。
【0056】
以下に測定の手順を図3を参照しながら説明する。図3は、本発明のガス分光分析用微小フローセルを具えるガス分光分析装置の一例を示す略図である。
【0057】
図1に示すようなガス分光分析系微小フローセル7をヒーター用電源11、紫外光源12、紫外分光器13、測定器14に接続する。ポンプ15により上述したようにして製造されたガス分光分析用微小フローセル7のガス導入流路Cから汚染物質を含んだ空気を導入し、ガス吸着剤充填部流路A内に充填されたガス吸着剤に汚染物質を吸着固定する。一定時間、分析対象ガスを通気した後、ヒーター3をヒーター用電源11を用いて、通電により加熱し、ガス吸着剤1に吸着された汚染物質の各成分の加熱脱着温度に昇温し、各成分を順次脱着させた。この脱着分離された汚染物質成分を連結ガス流路Eを経由して、紫外線光路兼ガス流路Bに導入する。紫外光源12および紫外線分光器13に接続された光ファイバ2により、吸収分光による汚染物質の検出を行う。測定後のガスはガス排出流路Dから排気される。
【0058】
このようなガス分光分析用微小フローセルを用いてガスを分析したところ、感度は30分間の濃縮時間で5ppmであり、精度は20%以内であった。
【0059】
(実施形態例2)
本発明の実施形態例2として、両面研磨したパイレックス(登録商標)基板と酸化膜付きシリコン基板を用い、第1ガス流路と第2ガス流路が異なる基板上で形成され、貫通孔である連結ガス流路によって接続されているガス分光分析用微小フローセルの構成と製造方法を図4を用いて説明する。図4は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの一例を示す斜視図である。
【0060】
実施形態例1と同様に、両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmのパイレックス(登録商標)基板にダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図4の24に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝パターンAおよびCを、チョッパーカットで複数個形成した。このAはガス吸着剤充填部流路、Cはガス導入流路に対応している。この後、各溝パターンごとにチップとして切り離し、複数のパイレックス(登録商標)基板を作製した。溝のAの部分には多孔質ガラスの粉末をガス吸着剤1として配置した。
【0061】
次に、両面鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmの酸化膜付きシリコン基板に、ダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図4の25に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝パターンBおよびDを、チョッパーカットで複数個形成した。このBは紫外線光路兼ガス流路、およびDはガス排出流路に対応している。さらに、電着ダイヤモンドドリルを用いて図4の各BのEの部分に0.4mm径の穴を作製した。このEは、連結ガス流路に対応している。各溝パターンごとにチップとしてこの酸化膜付きシリコン基板をパイレックス(登録商標)基板24と同じ大きさに切断して、複数の酸化膜付きシリコン基板25を形成した。
【0062】
次にこの溝を形成した2枚の基板24および25をそれぞれ図4のように陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内で貫通孔Eで溝Aと溝Bが連通するようにアライメントし、実施形態例1の条件で陽極接合を行い張合わせた。さらに、この上層に溝の形成していない平坦なパイレックス(登録商標)基板26を同様の条件で陽極接合を行うことにより張り合わせた。
【0063】
次に、実施形態例1と同様の条件でUV透過型マルチモード光ファイバー2を酸化膜付きシリコン基板の紫外線光路兼ガス流路Bに挿入し、セルに固定した。
【0064】
次に、実施形態例1と同様の条件で、パイレックス(登録商標)基板27に白金のスパッタ蒸着を行い、図4に記載のようなヒーター3を形成した。そして、ダイシングソー装置で所定の大きさに切断した。これを上述の光ファイバー2を封入したセルの下(基板24の下面)に密着させて配置した。このヒーター3は、ガス吸着剤充填部に対応した位置にある。
【0065】
以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを製造した。このガス分光分析用微小フローセルを図3に示すようなガス分光分析装置に用いて、測定は実施形態例1と同様に行った。得られた結果は、実施形態例1と同様に、感度は30分間の濃縮で5ppmであり、精度は20%以内であった。
【0066】
(実施形態例3)
本発明の実施形態例3として、両面研磨したパイレックス(登録商標)基板と酸化膜付きシリコン基板を用い、ガス流路が全て同一基板上に形成されたガス分光分析用微小フローセルの構成および製造方法を図5を用いて示す。図5は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの一例を示す斜視図である。
【0067】
実施形態例1と同様に、両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmの酸化膜付きシリコン基板にダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図5に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝パターンA〜Eを複数個形成した後、各パターンごとにチップとして切り離して、複数の酸化膜付きシリコン基板28を作製した。このAは、ガス吸着剤充填部流路、Bは紫外線光路兼ガス流路、Cはガス導入流路、Dはガス排出流路、およびEは連結ガス流路に対応している。溝のAの部分には多孔質ガラスの粉末をガス吸着剤1として配置した。
【0068】
次に、第二の両面研磨したパイレックス(登録商標)基板29を基板28と同じ大きさに切断した。
【0069】
次にこの溝を形成した基板28と溝を形成していない平坦な基板29を陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でアライメントし、実施形態例1の条件で陽極接合を行い張合わせた。
【0070】
次に、実施形態例1と同様の方法で、2本のUV透過型マルチモード光ファイバー2a、2bを酸化膜付きシリコン基板の溝Bに挿入し、セルに固定した。ここで、光源側の光ファイバ2aは予め先端を半球型に加工してあるもの(協和電線株式会社などで入手可能)を用いた。これによりセル内で光束が広がるのを防ぎ光源のパワーを効率よく用いることができた。分光器側の光ファイバ2bは先端が平坦になっており、セル内に広がった光を効率よく拾うことができた。
【0071】
次に、実施形態例1と同様の条件で、第三のパイレックス(登録商標)基板30に白金のスパッタ蒸着を行ってヒーター3を形成した。そして、ダイシングソー装置で所定の大きさに切断した。これを上述の光ファイバー2a、2bを封入したセルの下(基板28の下面)に密着させて配置した。ヒーター3は、ガス吸着剤充填部Aに対応した位置にある。
【0072】
以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを作製した。このガス分光分析用微小フローセルを例えば図3に示すガス分光分析装置に用い、実施形態例1と同様に測定を行った。得られた結果は、実施形態例1と同様に、感度は30分間の濃縮で5ppmであり、精度は20%以内であった。
【0073】
(実施形態例4)
本発明の実施形態例4として、濃縮用セルと測定用セルが異なる基板に構成され組み合わせて使用するガス分光分析用微小フローセルの構成と製造方法を図6を用いて説明する。図6は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの一例を示す斜視図である。
【0074】
まず、ガスの濃縮用セルの構成と製造方法を図6を用いて説明する。
【0075】
実施形態例1と同様に、両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmで窒化シリコン膜付きのパイレックス(登録商標)基板にダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図6に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝Aを、チョッパーカットで複数個形成した後、各溝パターンごとにチップとして切り離し、複数のパイレックス(登録商標)基板31を作製した。Aはガス吸着剤充填部流路に対応している。溝Aの部分にはガス吸着剤1として多孔質ガラスの粉末を配置した。さらに、電着ダイヤモンドドリルを用いて図6のCの部分に0.4mm径の穴を作製した。このCはガス導入流路に対応する。
【0076】
次に、両面研磨したパイレックス(登録商標)基板32を基板31と同じ大きさに切断し、電着ダイヤモンドドリルを用いて図6のE1の部分に0.4mm径の穴を作製した。E1は連結ガス流路の一部に対応している。
【0077】
次にこの溝を形成した基板31と溝を形成していない基板32を陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でそれぞれ図6のようにアライメントし、実施形態例1の条件で陽極接合を行い張合わせた。穴E1は溝Aに通じるように位置する。
【0078】
次に、実施形態例1と同様の条件で、パイレックス(登録商標)基板33に白金のスパッタ蒸着を図6のように行い、ヒーター3を形成した。そして、基板33をダイシングソー装置で所定の大きさに切断した。この基板33を上述の基板31の下面に密着させて配置し、ガスの濃縮用セルを製造した。ヒーター3はガス吸着剤充填部Aに対応して位置する。
【0079】
次に、測定用セルの構成と製造方法を図6を用いて説明する。
両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmで窒化シリコン膜付きのパイレックス(登録商標)基板に、ダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図6に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝Bを複数個形成した。さらに、電着ダイヤモンドドリルを用いて図6の各溝BのE3の部分に0.4mm径の穴を作製した。ここで、Bは紫外線光路兼ガス流路、E3は連結ガス流路の一部に対応する。この窒化シリコン膜付きのパイレックス(登録商標)基板を各溝パターンごとにチップとして、基板31と同じ大きさに切断して複数個の基板34を作製した。次に、両面研磨したパイレックス(登録商標)基板35を基板34と同じ大きさに切断し、電着ダイヤモンドドリルを用いて図6のDの部分に0.4mm径の穴を作製した。このDは、ガス排出流路に対応する。
【0080】
次にこの溝を形成した基板34と溝を形成していない基板35を陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でそれぞれ図6のようにアライメントし、実施形態例1の条件で陽極接合を行い張合わせた。穴Dは、溝Bに通じるように位置する。
【0081】
次に、実施形態例1と同様の方法でUV透過型マルチモード光ファイバー2を基板34の溝Bに挿入し、固定して測定用セルとした。
【0082】
次に、シート状のフッ素樹脂を基板32と同じ大きさに切断したテフロン(登録商標)シールパッキングを基板36とし、図6のE2の部分に0.4mm径の穴を作製した。これを上述のガスの濃縮用セルと測定用セルとの間に図6のようにはさみ両側から押さえつけることで基板36はガスケットとして作用する。このとき、穴E1、E2、およびE3は一致しており、一つの貫通孔となっており、連結ガス流路に対応する。そして、溝Aと溝Bはこの連結ガス流路によって連通しており、溝Aは貫通孔Cで開口し、溝Bは貫通孔Dで開口している。
【0083】
以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを製造した。このようにして得られたガス分光分析用微小フローセルを、例えば図3に示すガス分光分析装置に用いて、実施形態例1と同様にして測定を行った。得られた結果は、実施形態例1と同様に、感度は30分間の濃縮で5ppmであり、精度は20%以内であった。
【0084】
(実施形態例5)
本発明の実施形態例5として、3種類の多孔質ガラスを充填したガス分光分析用微小フローセルの構成と製造方法を図7を用いて説明する。図7は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの一例を示す斜視図である。
【0085】
実施形態例1と同様に、両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmのパイレックス(登録商標)基板に窒化膜を形成した。ダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図7に示すような形状に幅および深さが0.4mm幅の溝パターンA〜Eを、チョッパーカットで複数個形成した。このA1、A2、およびA3はガス吸吸着剤充填部流路、Bは紫外線光路兼ガス流路、Cはガス導入流路、Dはガス排出流路、およびEは連結ガス流路にそれぞれ対応する。その後、各溝パターンごとにチップとして切り離し、複数個の基板37を作製した。溝のA1〜A3の部分にはそれぞれ細孔径を1nm、4nm、10nmに調整した多孔質ガラスの粉末をガス吸着剤1として配置した。この細孔径の異なる多孔質ガラスはそれぞれ異なるガス吸着性を持つ。
【0086】
次に、第ニの両面研磨したパイレックス(登録商標)基板38を基板37と同じ大きさに切断した。
【0087】
次にこの溝を形成した基板37と溝を形成しない平坦な基板38を陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でアライメントし、実施形態例1の条件で陽極接合を行い張合わせた。
【0088】
次に、実施形態例1と同様の条件で、2本のUV透過型マルチモード光ファイバー2をパイレックス(登録商標)基板37の溝Bに挿入し、セルに固定した。
【0089】
次に、実施形態例1と同様の条件で、第三のパイレックス(登録商標)基板39に白金のスパッタ蒸着を行い、図7のようなヒーター部3を形成した。そして、ダイシングソー装置で所定の大きさに切断した。これを上述の光ファイバーを封入したセルの下(基板37の下面)に密着させて配置した。この3本の白金のパターンはそれぞれ溝A1〜A3の多孔質ガラスの直下に配置し電流を通じることで効率的に独立に多孔質ガラスの温度を制御することができ、多孔質ガラスのガス脱着特性に合わせて変えることができる。
【0090】
以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを作製した。このようにして得られたガス分光分析用微小フローセルを、例えば図3に示すガス分光分析装置に用いることによって、実施形態例1と同様に測定を行う。
【0091】
測定は実施例1と同様に行った。得られた結果は、実施形態例1と同様に、感度は30分間の濃縮で5ppmであり、精度は20%以内で、3種類のガスを分離して検出することができた。
【0092】
(実施形態例6)
本発明の実施形態例6として、両面研磨したパイレックス(登録商標)基板と酸化膜付きシリコン基板を用い、ガス流路が全て同一基板上に形成されたガス分光分析用微小フローセルの構成と製造方法を図8を用いて説明する。図8は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの一例を示す斜視図である。
【0093】
実施形態例1と同様に、両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.7mmの酸化膜付きシリコン基板の裏面に実施形態例1と同様の条件で図8に示したパターンのように白金のスパッタ蒸着を行い、ヒーター部3を複数個形成した。次いで、ヒーター形成面と反対の面をダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図8に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝パターンA〜Eを複数個形成した後、各溝パターンごとにチップとして切り離して、複数の基板40を作製した。このAはガス吸着剤充填部流路、Bは紫外線光路兼ガス流路、Cはガス導入流路、Dはガス排出流路、およびEは連結ガス流路に対応している。溝のAの部分には多孔質ガラスの粉末をガス吸着剤1として配置した。
【0094】
次に、第二の両面研磨したパイレックス(登録商標)基板41を基板40と同じ大きさに切断した。
【0095】
次にこの溝を形成した基板40と溝を形成していない平坦な基板41を陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でアライメントし、実施形態例1の条件で陽極接合を行い張合わせた。
【0096】
次に、実施形態例1と同様の方法で、2本のUV透過型マルチモード光ファイバー2を酸化膜付きシリコン基板40の溝Bに挿入し、セルに固定した。以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを製造した。このようにして得られたガス分光分析用微小フローセルを、例えば図3のようなガス分光分析装置に用いて、実施形態例1と同様にして測定を行った。得られた結果は、実施形態例1と同様に、感度は30分間の濃度で5ppmであり、精度は20%以内だったが、吸着剤とヒーターの距離が近いため、速い応答が得られた。
【0097】
実施形態例1〜6は、ガスの濃縮用セルに冷却回収用流路を設けていないガス分光分析用微小フローセルを用いた実施形態例について記載した。本発明では、上述したように、濃縮用セルとしてガス冷却回収流路を有するガス濃縮回収用セルを用いるとより好ましい。以下、ガス濃縮回収用セルを用いた実施形態例を説明する。
【0098】
(実施形態例7)
本発明の実施形態例7として、パイレックス(登録商標)基板を用いたガス濃縮回収用セルの構成と製造方法を図9を用いて説明する。図9は、本発明のガス濃縮回収用セルの製造方法の一例を示す図である。
【0099】
図9(a)に示すような両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.5mmのパイレックス(登録商標)基板42を、プラズマCVD装置(アネルバ(株))を用いて、窒素ガス140sccm、アルゴンベースの5%シランガス25sccm、圧力20Pa、RF電力40Wの条件で、図9(b)に示すように、パイレックス(登録商標)基板42の片面に窒化シリコン膜101を200nm堆積した。なお、図9(a)〜図9(d)は、基板42全体ではなく、ガス濃縮回収用セル1個分のみを記載した。
【0100】
この窒化シリコン膜101付きのパイレックス(登録商標)基板42をスパッタ装置(日本シード社製)に導入し、図9(c)に示すように、放電パワー500W、アルゴン雰囲気中0.005Torrで、窒化シリコン膜101を堆積していない面にチタン、白金の順にスパッタ蒸着を行った。その際、メタルマスクを用いて所定のヒーター形状の白金/チタン薄膜パターン3を、複数個得た。ここで、薄膜ヒーター3はガス吸着剤充填部Aの直下に配置し電流を通じることで効率的に温度を制御することができる。
【0101】
その後、基板42の窒化シリコン膜101側にダイシングソー装置(ディスコ)により、0.2mm厚のブレードを用いて、図9(d)に示すような細長形状に深さおよび幅が0.2mmと2.4mmでその中途に深さ0.03mmの段差構造Fをもつ長さ約16mmの溝Aよりなるガス吸着剤充填部流路と、幅約0.8mm、深さ0.2mm、長さ約8mmの溝Gよりなるガス冷却回収流路を複数個形成した。ここで、図9のガス吸着剤充填部流路Aの幅2.4mmは0.2mm幅の溝を12本刻むことで形成した。溝形成はチョッパーカットモードで行いブレードの高さ方向を制御することで、溝の途中にガス吸着剤固定用段差Fを実現した。同様に図面のガス冷却回収流路Gの幅0.8mmは、0.2mm幅の溝4本から成る。溝を形成後、各ガス冷却回収流路ごとにチップとして切り離して、図9(d)に示す構造物を複数個得た。
【0102】
次に、図9(e)に示すように、第ニの両面研磨したパイレックス(登録商標)基板43に、電着ダイヤモンドドリルを用いて図のガス導入流路Cおよびガス排出流路Dの部分に0.5mm径の穴を作製した。この基板43をパイレックス(登録商標)基板42と同じ大きさに切断した。
【0103】
次に図9(f)に示すように、この溝を形成した基板42と溝を形成していない基板43を、ガス導入流路Cとガス吸着剤充填部流路A、ガス排出流路Dとガス冷却回収流路Gが連通するように、陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でアライメントした。そして−1.2kVの電圧を印加し、ヒーター温度500℃、10分の条件で基板42の窒化シリコン膜101と基板43の陽極接合を行い、張合わせた。その後、図9(g)に示すように、ガス導入流路Cの穴よりガス吸着剤1を、ガス吸着剤充填部流路Aに導入した。
【0104】
以上の方法により、図9(h)、(i)、(j)に示すように、ガス吸着剤充填部流路Aと、分析対象ガスを吸脱着する物質であるガス吸着剤1と、加熱源の薄膜ヒーター3と、分析対象ガスを冷却回収する流路Gが基板42と基板43が一体化した基板に集積化されているガス濃縮回収用セルを作製した。
【0105】
図9(h)は、本実施形態例によって製造されたガス濃縮回収用セルの上面図、図9(i)は断面図、および図9(j)は裏面図である。
【0106】
次にセル作製法および構造に起因する効果について述べる。ガス吸着剤充填部流路A、ガス冷却回収流路Gおよびガス吸着剤固定用段差Fの形成にはダイシングソー装置による切削法を用いた。ダイシングソー装置による溝形成法は、直線の溝しか形成できず溝のパターンに大きな制約を受けるものの、エッチング法に比べて、簡便に短時間で深い溝を形成することができる。また、ブレードの高さ方向の位置を制御することにより、一本の溝の中で溝の深さを変えることが可能である。本実施形態例において、溝中にブレードの高さを制御することでガス吸着剤固定用段差Fを形成し、ガス吸着剤1の流失を防ぐことが可能である。また、直線流路を多数平行に配置した幅広溝のガス吸着剤充填部流路Aは通気の際の抵抗を小さく保ったまま、ガス吸着剤1の充填量を大きくできる。さらに、平行配置の溝数を少なくしたガス冷却回収流路Gはガス吸着剤充填部流路Aに比べて断面積が1/3で、ガス吸着剤充填部流路Aで脱着したガスがガス冷却回収流路Gで効率的に集中する。また、ガス冷却回収流路Gの下面には薄膜ヒーター3が形成されておらず、ガス吸着剤充填部流路Aで脱着したガスがガス冷却回収流路G通過中に効率的に冷却される。
【0107】
以下に測定の手順の例を説明する。図9のガス導入流路Cから汚染物質を含んだ空気を通じ、ガス吸着剤充填部流路A内に充填されたガス吸着剤1に汚染物質を吸着固定する。一定時間、分析対照ガスを通気した後、通気を停止し、ヒーター3を通電により加熱し、ガス吸着剤1に吸着された汚染物質の各成分の加熱脱着温度に昇温し、各成分を順次脱着させる。この脱着分離された汚染物質成分をガス冷却回収流路Gで空冷により回収する。十分回収が終わった後に再度通気を開始し、ガス排出流路Dより分光器の実施形態1〜6のいずれかに記載したような測定用セルに導入する。
【0108】
また、分析対象ガスが単一成分の場合において、従来技術と本発明の実施形態例7における装置および分析対象ガスの温度特性を図10を用いて説明する。従来技術は前述したように、分析したい場所において、分析対象の有機ガスを含んだ大気を捕集管に導入し、有機ガスをガス吸着剤に捕集する。その後、捕集管を加熱することによりガス吸着剤に吸着されている有機ガスを濃縮ガスとして脱着させ、液体窒素を循環させた冷却回収装置にこの濃縮ガスを再回収する。引き続き一気に再加熱してガスクロマトグラフ分析装置へ導入する。このように、従来技術における脱着過程はヒーターの温度をガスの脱着温度よりもかなり高めに設定し、かつ時間を10分程度必要とした。一方、本発明の実施形態例7ではヒーターの温度は脱着温度より少し高い程度に設定すればよく、かつ1分程度の短時間で終了する。また引き続き行う冷却回収過程は、従来技術では液体窒素温度に冷却し、凝固したガスを脱着温度付近まで再加熱して分光装置へ導入するが、本発明の実施形態例7では室温にて冷却回収を行うので、そのまま分光装置に導入できる。
【0109】
また図11に、実施形態例7のガス濃縮回収用セルを用いた場合(X)と、実施形態例1のガス分光分析用微小フローセルを用いた場合(Y)との分析ガスのフロー特性を比較する。実施形態例1のガス分光分析用微小フローセル(Y)を用いた場合、ガス吸着剤を充填したガス流路に吸着濃縮された分析対象ガスは、加熱脱着により順次測定用流路に導入される。このとき分析対象ガスが光測定用流路内で拡散してピーク幅が広がりやすい。実施形態例7から得られるガス濃縮回収用セル(X)では、加熱脱着したガスを再度冷却回収することにより、分析対象ガスが測定用流路内で拡散するのを防ぐため、ピーク幅を狭くする効果がある。これにより、同量の試料の測定を行った場合のピーク値が高くなり、ガス冷却回収流路を設けた方が、検出感度を高める効果があり、より好ましいことがわかる。
【0110】
(実施形態例8)
本発明の実施形態例8として、パイレックス(登録商標)基板を用い、ガス冷却回収流路を設けた、ガス分光分析用微小フローセルの構成と製造方法を図12を用いて説明する。図12は、本発明のガス分光分析用微小フローセルの構造および製造方法の一例を示す図である。
【0111】
両面を鏡面研磨した直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.5mmのパイレックス(登録商標)基板をプラズマCVD装置(アネルバ(株))を用いて、窒素ガス140sccm、アルゴンベースの5%シランガス25sccm、圧力20Pa、RF電力40Wの条件で、パイレックス(登録商標)基板の片面に窒化シリコン膜を200nm堆積した。この窒化シリコン膜付きのパイレックス(登録商標)基板を、スパッタ装置(日本シード社製)に導入し、放電パワー500W、アルゴン雰囲気中0.005Torrで窒化シリコン膜を堆積した面と反対の面にチタン、白金の順にスパッタ蒸着を行った。その際、メタルマスクを用いて所定のヒーター形状の白金/チタン薄膜パターンよりなる薄膜ヒーター3を得た。ここで、ヒーター3はガス吸着剤充填部Aの直下に配置し電流を通じることで効率的に温度を制御することができる。
【0112】
その後、基板44の窒化シリコン膜面側にダイシングソー装置(ディスコ)により、0.2mm厚のブレードを用いて、図12に示すように、溝Cからなるガス導入流路と、細長形状に深さおよび幅が0.2mmと2.4mmでその中途に深さ0.03mmのガス吸着剤固定用段差Fをもつ長さ約16mmの溝Aからなるガス吸着剤充填部流路と、幅約0.8mm、深さ0.2mm、長さ約8mmの溝Gからなるガス冷却回収流路を、複数個形成した。ここで、図12のガス吸着剤充填部流路Aの幅2.4mmは0.2mm幅の溝を12本刻むことにより形成した。溝形成はチョッパーカットモードで行いブレードの高さ方向を制御することで、溝の途中にガス吸着剤固定用段差Fを形成した。同様に図面のガス冷却回収流路Gの幅0.8mmは0.2mm幅の溝4本から成る。またガス導入流路Cは、ガス吸着剤充填部流路Aにつながっている。溝を形成後、各ガス冷却回収流路ごとにチップとして切り離し、複数の基板44を作製した。
【0113】
次に、両面を鏡面研磨した直径4インチ厚さ0.7mmで窒化シリコン膜付きのパイレックス(登録商標)基板に、ダイシングソー装置により、0.4mm厚のブレードを用いて、図12に示すような形状に幅および深さが0.4mmの溝BおよびDを複数個形成した。さらに、電着ダイヤモンドドリルを用いて図12の各溝BのEの部分に0.4mm径の穴を作製した。Bは紫外線光路兼ガス流路、Dはガス排出流路、Eは連結ガス流路に対応する。
【0114】
この基板を各溝パターンごとにチップとして、上述の基板44と同じ大きさに切断して、複数の基板45を作製した。次にこの溝を形成した2枚の基板44および45をそれぞれ図12のように陽極接合装置(ユニオン光学製、SIG−S)内でアライメントし、−1.2kVの電圧を印加し、ヒーター温度500℃、10分の条件で陽極接合を行い張合わせた。さらに、この基板45の上に溝の形成されていない平坦なパイレックス(登録商標)基板46を同様の条件で陽極接合を行うことにより張り合わせた。その後、ガス流路Cよりガス吸着剤1を導入して、ガス吸着剤1をガス吸着剤充填部流路Aに充填した。
【0115】
次に、端面を鏡面研磨したUV透過型マルチモード光ファイバー2(コア径365マイクロメートル、クラッド径400マイクロメートル、加オズオプティクス社製)を二本用意し、研磨面が向かいあわせになるようにガス流路Bに挿入した。次に、低熔融ガラス(旭テクノグラス7590)の粉末を1%のニトロセルローズを含む酢酸イソアミル溶液で溶いたスラリーを、ガス流路Bの光ファイバーが突き出している部分に塗布した。塗布後、110℃で乾燥し有機溶媒を気化した。その後350℃に昇温してニトロセルローズを追い出した後、450℃で焼成し光ファイバをパイレックス(登録商標)セルに封着した。その後緩やかに常温に戻し、余分なファイバーをカッターで除去し、四側面を鏡面に研磨した。
【0116】
以上の方法により、ガス分光分析用微小フローセルを作製した。
【0117】
得られたガス分光分析用微小フローセルを、例えば図3に示すガス分光分析装置に用いて、以下の手順で測定を行った。図12のガス導入流路Cから汚染物質を含んだ空気を通じ、ガス吸着剤充填部流路A内に充填されたガス吸着剤1に汚染物質を吸着固定した。一定時間通気後、通気を停止し、ヒーター3を通電により加熱し、ガス吸着剤1に吸着された汚染物質の各成分の加熱脱着温度に昇温し、各成分を順次脱着させた。この脱着分離された汚染物質成分をガス冷却回収流路Gで空冷により回収した。十分回収が終わった後に再度通気を開始し、紫外線光源12および紫外分光器13に接続された光ファイバ2により、吸収分光による汚染物質の検出を行った。測定後のガスはガス排出流路Dから排気された。得られた測定結果は、実施形態例1と同じ条件の場合、実施形態例1よりもピークが一桁高くなり、ピーク幅も狭くなった。よって感度は30分間の濃縮で0.5ppmであり、精度は20%以内であった。
【0118】
(実施形態例9)
本発明の実施形態例9として、パイレックス(登録商標)基板を用いたガス濃縮回収用セルの構成と製造方法を図13を用いて説明する。図13は、本発明のガス濃縮回収用セルの製造方法を説明する図である。
【0119】
実施形態例7と同様にして、図13(a)に示すような直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.5mmのパイレックス(登録商標)基板47の片面に、図13(b)に示すように、窒化シリコン膜101を200nm堆積した。なお、図13(a)〜図13(g)は、基板47全体ではなく、ガス濃縮回収用セル1個分のみを記載した。
【0120】
その後、図13(c)に示すように、窒化シリコン膜を堆積していない面にスピンコータにてレジストTSMR−V3(東京応化)102を1μmの厚さで塗布した。次に、図13(d)に示すように、アライナーPLA−501FA (キャノン)でヒーター電極パターンを露光した。現像液NMD−W(東京応化)で40秒間現像し、流水で60秒間リンスしてレジスト102のパターニングを行った。次に図13(e)に示すように、この基板を実施実施例7と同様にしてレジスト面にチタン、白金の順にスパッタ蒸着を行って白金/チタン薄膜103を、形成した。次に図13(f)に示すように、超音波洗浄機を用いてメチルエチルケトン中でこの基板47をリフトオフして、白金/チタンパターンよりある薄膜ヒーター3を複数個得た。
【0121】
その後、図13(g)に示すように、実施形態例7と同様に窒化シリコン膜101側にダイシングソー装置で溝Aよりなるガス吸着剤充填部流路、溝Gよりなるガス冷却回収流路、およびガス吸着剤固定用段差Fを複数個形成した。溝を形成後、各チップを切り離し、図13(g)に示す構造体を複数個得た。
【0122】
さらに、図13(h)および図13(i)に示すように、穴よりなるガス導入流路Cおよびガス排出流路Dを形成したパイレックス(登録商標)基板48を陽極接合で張り合わせた。次に、図13(j)に示すように、パイレックス(登録商標)基板48の外面にガス冷却回収流路Gに沿って厚さ40μmのブレードで深さ200μmの空冷用溝4を80μm間隔で10本形成した。その後、図13(k)に示すように、ガス導入流路Cからガス充填剤1を導入し、ガス吸着剤充填部流路Aにガス充填剤1を充填した。
【0123】
以上の方法により、ガス濃縮回収用セルを作製した。
【0124】
この濃縮回収用セルを実施形態例8と同様にして、測定用セルと組み合わせてガス分光分析用微小フローセルとすることもできる。このとき、ガス導入流路Cは、基板48に形成するのではなく、基板47にガス吸着剤充填部流路Aと連続して形成する。
【0125】
本実施形態例9では薄膜ヒーター3の形成にリフトオフ法を用いたが、メタルマスク法に比べて、エッジ部分のぼけが小さく、正確な位置に薄膜ヒーター3を形成することができる。また、ガス冷却回収流路Gの上面には多数の細い溝よりなる空冷用溝4を刻んでおり表面積が大きくなるため、外気と熱交換が効率的になる。この結果、冷却効果が大きくなり、高感度検出に有効である。
【0126】
(実施形態例10)
本発明の実施形態例10として、パイレックス(登録商標)基板を用いたガス濃縮回収用セルの構成と製造方法を図14を用いて示す。図14は、本発明のガス濃縮回路用セルの製造方法の一例を示す図である。
【0127】
図14(a)に示すような直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.5mmのパイレックス(登録商標)基板49の片面に図14(b)に示すように、クロムを200nmスパッタ蒸着してクロム膜104を形成した。なお、図14(a)〜図14(m)は、基板49全体ではなく、ガス濃縮回収用セル1個分のみを記載した。
【0128】
次に、図14(c)に示すように、クロム膜104の面にネガ型の感光性全芳香族ポリイミド前駆体溶液(フォトニース、東レ)105をスピンコートした。プリベーク後、図14(d)に示すように、アライナーPLA−501FA(キャノン)で流路パターンを露光した。現像液DV−140中で超音波現像を行い、イソプロパノール中で超音波リンスを行い流路パターンを得た。180℃でベークした後、図14(e)に示すように、流路パターンの形成された面と反対面にフォトニース106をスピンコートした。その後所定のベーキング行程を完了させた。次に、図14(f)に示すように、クロムエッチング液(関東化学)でクロムのエッチングを行った。引き続いて、図14(g)に示すように、緩衝フッ酸液でフォトニース/クロムをマスクにしてパイレックス(登録商標)基板49を20μmエッチングし、溝Aよりなるガス吸着剤充填部流路、溝Gよりなるガス冷却回収流路、およびガス吸着剤固定用段差Fを、複数個形成した。次に図14(h)に示すように、両面のフォトニースを酸素RIEでのエッチングで剥離し、図14(i)に示すように、クロムもクロムエッチング液で剥離した。
【0129】
次に図14(j)〜(m)に示すように、パイレックス(登録商標)基板49の裏面には実施形態例9と同様な方法で白金/チタン薄膜パターンよりなる薄膜ヒーター3を複数個形成した。この後、各チップを切り離して、複数個の図14(m)に示す構造物を得た。
【0130】
第二のパイレックス(登録商標)基板50を実施形態例7と同様に片面に窒化シリコン膜101を200nm堆積した。電着ダイヤモンドドリルを用いてガス通気用に0.5mm径の穴よりなるガス導入流路Cおよびガス排出流路Dを2カ所開けた。基板50を基板49と同じ大きさに切断した。
【0131】
次に、図14(o)に示すように、基板49の上に基板50をアライメントし、実施形態例1と同じ条件で陽極接合を行った。さらに図14(p)に示すように、基板50のガス冷却回収流路Gに対応する位置にダイシングソー装置にて多数の空冷用溝4を形成した。
【0132】
その後、図14(q)に示すように、ガス導入流路Cからガス吸着剤1を導入した。
【0133】
以上の方法により、ガス濃縮回収用セルを作製した。この濃縮回収用セルを実施形態例8と同様にして、測定用セルと組み合わせてガス分光分析用微小フローセルとすることもできる。このとき、ガス導入流路Cは、基板50に形成するのではなく、基板49にガス吸着剤充填部流路と連続して形成する。
【0134】
本実施形態例では、ガス吸着剤充填部流路A、ガス冷却回収流路Gの溝形成は緩衝フッ酸液によるウエットエッチングにより20μm行った。ウエットエッチングは等方的であるために30μm程度のサイドエッチが起きる。フォトニース/クロムマスクのパターンを一部配置しておくことにより、この部分でのサイドエッチを利用してガス吸着剤固定用段差Fを形成することができる。緩衝フッ酸液によるウエットエッチングでは溝の深さを大きくすることが難しく、20μm程度が現実的である。このため、ガス吸着剤充填部流路A、ガス冷却回収流路Gの幅を広くすることで、通気の際の圧力を低下させた。また、ガス流路が浅く、ガス吸着剤1が幅広のガス吸着剤充填部流路A中に薄く配置されるために、薄膜ヒーター3との熱交換の効率が飛躍的に向上する。また同様な理由により、空冷溝部分4での熱交換の効率も向上する。このため、濃縮効果が大きくなり、高感度検出に有効である。
【0135】
(実施形態例11)
本発明の実施形態例11として、パイレックス(登録商標)基板を用いたガス濃縮回収用セルの構成と製造方法を図15を用いて示す。図15は、本発明のガス濃縮回収用セルの製造方法の一例を示す図である。
【0136】
図15(a)に示すような直径4インチ(4×2.54cm)、厚さ0.5mmのパイレックス(登録商標)基板51の片面に、図15(b)に示すように、スピンコータにてレジストTSMR−V3(東京応化)107を1μmの厚さで塗布した。なお、図15(a)〜図15(k)は、基板51全体ではなく、ガス濃縮回収用セル1個分のみを記載した。
【0137】
次に、図15(c)に示すように、アライナーPLA−501FA(キャノン)で流路パターンを露光した。現像液NMD−W(東京応化)で40秒間現像し、流水で60秒間リンスしてレジストのパターニングを行った。次に図15(d)に示すように、この基板51にクロムのスパッタ蒸着を行ってクロム膜108を形成した。次に図15(e)に示すように、超音波洗浄機を用いてメチルエチルケトン中でこの基板51をリフトオフして、クロムの流路パターンを得た。次に、図15(f)に示すように、この基板51を高密度プラズマエッチング装置を用いてCガスでパイレックス(登録商標)基板51のエッチングを行い、深さ50μmの溝Aよりなるガス吸着剤充填部流路、溝Gよりなるガス冷却回収流路を、複数個得た。その後、図15(g)に示すように、クロムエッチング液でクロムのエッチングを行った。
【0138】
次に図15(h)〜(k)に示すように、パイレックス(登録商標)基板51の裏面には実施形態例9と同様な方法で白金/チタン薄膜パターンよりなる薄膜ヒーター3を、複数個形成した。この後、各チップを切り離して、図15(k)に示すような構造物を複数個得た。
【0139】
次に、図15(l)に示すように、第二のパイレックス(登録商標)基板52を実施形態例7と同様に片面に窒化シリコン膜101を200nm堆積した。電着ダイヤモンドドリルを用いてガス通気用に0.5mm径の穴よりなるガス導入流路Cおよびガス排出流路Dを2カ所開けた。そして、基板52を基板51と同じ大きさに切断した。
【0140】
次に、図15(m)に示すように、基板51の上に基板52をアライメントし、実施形態例7と同じ条件で陽極接合を行った。さらに図15(n)に示すように、基板52のガス冷却回収流路Gに対応する位置ににダイシングソー装置にて多数の空冷用溝4を形成した。その後、図15(o)に示すように、ガス導入流路Cからガス吸着剤1を導入し、ガス吸着材充填部流路Aにガス吸着剤1を充填した。
【0141】
以上の方法により、ガス濃縮回収用セルを作製した。図15(p)は、基板51の上面図である。
【0142】
以上の方法により、ガス濃縮回収用セルを作製した。この濃縮回収用セルを実施形態例8と同様にして、測定用セルと組み合わせてガス分光分析用微小フローセルとすることもできる。このとき、ガス導入流路Cは、基板52に形成するのではなく、基板51にガス吸着剤充填部流路と連続して形成する。
【0143】
本実施形態例11では、溝Aよりなるガス吸着剤充填部流路、溝Gよりなるガス冷却回収流路の形成にドライエッチング法を用いた。これは異方性エッチングであるため、サイドエッチが小さく、マスクパターンの形状を保ったまま、50μmの溝を形成することが可能である。そのため、複雑で微細な流路形状を形成することが容易になる。本実施形態例11ではガス吸着剤1の流失防止に段差構造を用いるのではなく、フォトリソグラフィーによるパターニングでガス吸着剤1のフィルター構造F′を形成している。また、ガス冷却回収流路G中に多数の微細突起構造6を形成することで、ガス冷却回収流路G中での滞在時間を長くし、効率的に冷却することが可能になるため、高感度検出に有効である。
【0144】
なお、前述のガス濃縮回収用セルの製造方法において、薄膜ヒーターの形成として、メタルマスク法を用いることができる。
【0145】
また、前述のガス濃縮回収用セルの製造方法において、ガス吸着剤固定用段差を有するガス吸着剤充填部流路用溝およびガス冷却回収流路用溝の形成として、ダイシングソー装置を用いた方法を用いることもできる。
【0146】
(実施形態例12)
本発明の実施形態例12として、パイレックス(登録商標)基板を用いたガス濃縮回収用セルの構成と製造方法を図16を用いて説明する。図16は、本発明のガス濃縮回収用セルの製造方法の一例を示す図である。
【0147】
実施形態例7と同様にして、パイレックス(登録商標)基板42の片面に窒化シリコン膜101を200nm堆積した。なお、図16(d)〜図16(d)は、基板42全体ではなく、ガス濃縮回収用セル1個分のみを記載した。
【0148】
この窒化シリコン膜101付きのパイレックス(登録商標)基板42をスパッタ装置(日本シード社製)に導入し、図16(C)に示すように、放電パワー500W、アルゴン雰囲気中0.005Torrで窒化シリコン膜101を堆積していない面にチタン、白金の順にスパッタ蒸着を行った。その際、メタルマスクを用いて所定のヒーター形状および冷却用メタル形状の白金/チタン薄膜パターンよりなる薄膜ヒーター3および冷却用メタル5を、それぞれ複数個得た。
【0149】
後は、図16(d)〜図16(g)に示すように、実施形態例7と同様にしてガス濃縮回収用セルを製造した。
【0150】
図16(h)は、本実施形態例によって製造されたガス濃縮回収用セルの上面図であり、図16(i)は断面図であり、そして図16(j)は裏面図である。
【0151】
次に、セル構造および構造に起因する効果について述べる。本実施形態例で得られるガス濃縮回収用セルは、ガス冷却回収流路Gに対応する位置の基板下面には薄膜ヒーター3がパターンニングされておらず、別途冷却用メタル5が設けられていることを除いて実施形態例7と同じである。この冷却用メタルを設けることによって、近接するヒーター部の昇温に伴ってガス冷却回収流路部も僅かに温度上昇が起こるが、冷却用メタルによりガス冷却回収流路部における放熱効率が高くなり、空冷による冷却効果が高くなる。このため、ガス吸着剤充填部流路Aで脱着したガスがガス冷却回収流路G通過中により効率的に冷却される。
【0152】
以上の方法により、ガス濃縮回収用セルを作製した。この濃縮回収用セルを実施形態例8と同様にして、測定用セルと組み合わせてガス分光分析用微小フローセルとすることもできる。このとき、ガス導入流路Cは、基板43に形成するのではなく、基板42にガス吸着剤充填部流路と連続して形成する。
【0153】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、ガス分光分析の感度、成分分離能、定量精度の向上を可能とし、同時に装置全体の低消費電力化を実現するガス分光分析用微小フローセルの提供を可能とする。また、本発明のガス分光分析用微小フローセルはでは、小型軽量化が可能となり、狭い領域ごとのガスの分析、および時間の経過によるガスの分析も可能となる。さらに、他の測定装置とともに用いることもできるガス濃縮回収用セルをこのガス分光分析用微小フローセルにも用いると、より好ましい効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図2】図1のa−a線における断面略図である。
【図3】本発明のガス分光分析装置の一例を示す略図である。
【図4】実施形態例2に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図5】実施形態例3に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図6】実施形態例4に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図7】実施形態例5に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図8】実施形態例6に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図9】(a)〜(g)は、実施形態例7に示すガス濃縮回収用セルの製造方法を説明する図であり、(h)は、実施形態例7に示すガス濃縮回収用セルの上面図であり、(i)は断面図であり、および(j)は下面図である。
【図10】実施形態例7に示すガス濃縮回収用セルと従来技術による動作時の装置および分析対象ガスの温度特性を比較する図である。
【図11】実施形態例7に示すのガス濃縮回収用セルを用いた場合と実施形態例1に示す濃縮用セルを用いた場合のガス検出ピーク特性を比較する図である。
【図12】実施形態例8に示すガス分光分析用微小フローセルの斜視図である。
【図13】(a)〜(k)は、実施形態例9に示すガス濃縮回収用セルの製造方法を説明する図である。
【図14】(a)〜(q)は、実施形態例10に示すガス濃縮回収用セルの製造方法を説明する図である。
【図15】(a)〜(o)は、実施形態例11に示すガス濃縮回収用セルの製造方法を説明する図であり、および(p)は、実施形態例11のガス濃縮回収用セルを構成する基板51の上面図である。
【図16】(a)〜(g)は、実施形態例12に示すガス濃縮回収用セルの製造方法を説明する図であり、(h)は、実施形態例12に示すガス濃縮回収用セルの上面図であり、(i)は断面図であり、および(j)は下面図である。
【符号の説明】
1 ガス吸着剤
2 ファイバー
2a 先端半球型光ファイバー
2b 先端平坦型光ファイバー
3 加熱源(ヒーター)
4 空冷用溝
5 冷却用メタル
6 微小突起構造
7 ガス分光分析用微小フローセル
11 ヒーター用電源
12 紫外線光源
13 紫外分光器
14 測定器
15 ポンプ
21〜52 基板
101 窒化シリコン膜
102、107 レジスト
103 白金/チタン薄膜
104、108 クロム膜
105、106 フォトニース
A、A1、A2、A3 ガス吸着剤充填部流路
B 紫外線光路兼ガス流路
C ガス導入流路
D ガス排出流路
E、E1、E2、E3 第1ガス流路と第2ガス流路とを連通する連結ガス流路
F、F′ ガス吸着剤固定部
G ガス冷却回収流路

Claims (26)

  1. 分析対象ガスが流れるガス流路、濃縮用セル、および測定用セルを具え、
    前記分析対象ガスが流れるガス流路は、ガス導入流路を含む第1のガス流路と、ガス排出流路を含む第2ガス流路と、前記第1ガス流路および第2ガス流路を連通する連結ガス流路とからなり、
    前記濃縮用セルは、前記第1ガス流路に設けられたガス吸着剤充填部と、該ガス吸着剤充填部全体を加熱する加熱源と、前記ガス吸着剤充填部に充填された分析対象ガスを吸脱着する物質であるガス吸着剤とを具え、
    前記測定用セルは、前記第2ガス流路に設けられた紫外線光路兼ガス流路と、該紫外線光路兼ガス流路に分光分析用紫外光を入射する光ファイバと、前記紫外線光路兼ガス流路から分光分析用紫外光を出射する光ファイバとを具え、
    前記第1のガス流路と第2のガス流路のそれぞれが、別個の基板上あるいは同一基板上に形成されていることを特徴とするガス分光分析用微小フローセル。
  2. 前記第1のガス流路と第2のガス流路が、それぞれ別個の基板上に形成され、これらの基板が積層され、前記連結ガス流路が前記第1ガス流路と第2ガス流路とが連通するように、対応する基板部分の貫通孔となっていることを特徴とする請求項に記載のガス分光分析用微小フローセル。
  3. 前記第1のガス流路、第2のガス流路、および連結ガス流路が同一の基板上に形成されていることを特徴とする請求項に記載のガス分光分析用微小フローセル
  4. 前記濃縮用セルが、ガス吸着剤を固定するガス吸着剤固定部を具えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガス分光分析用フローセル。
  5. 前記第1ガス流路が、前記加熱源による前記ガス吸着剤の加熱により脱着した分析対象ガスを冷却回収するガス冷却回収流路を具えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガス分光分析用微小フローセル。
  6. 前記ガス冷却回収流路が、ヒーターおよび断熱材を設けず、空冷によってガスを冷却する流路であることを特徴とする請求項に記載のガス分光分析用微小フローセル。
  7. 前記ガス冷却回収流路に対応した基板表面部分に、空冷用溝を有することを特徴とする請求項5または6に記載のガス分光分析用微小フローセル。
  8. 前記ガス冷却回収流路中に、多数の微細突起構造を有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のガス分光分析用微小フローセル。
  9. 前記ガス冷却回収流路に対応した基板表面部分に、冷却用メタル薄膜を有することを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載のガス分光分析用微小フローセル。
  10. 前記入射用光ファイバー先端が半球状であり、前記出射用光ファイバー先端が平坦であることを特徴とする請求項に記載のガス分光分析用微小フローセル。
  11. ガス吸着剤として、ガス吸脱着特性の異なる複数のガス吸着剤を用いることを特徴とする請求項1または4に記載のガス分光分析用微小フローセル。
  12. ガス吸着剤が、多孔質ガラス、多孔質ポリマー、および多孔質カーボンよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、4または11のいずれかに記載のガス分光分析用微小フロ−セル。
  13. ガス導入流路およびガス排出流路を有する分析対象ガスが流れるガス流路と、前記ガス流路の一部に設けられたガス吸着剤充填部流路と、前記ガス吸着剤充填部に充填された分析対象ガスを吸脱着する物質であるガス吸着剤と、前記ガス吸着剤充填部を加熱する加熱源と、前記ガス吸着剤の加熱により該ガス吸着剤から脱着した分析対象ガスを冷却回収するガス冷却回収流路と、
    を具え、これらが基板上に集積されていることを特徴とするガス濃縮回収用セル。
  14. 第1の基板の裏面に薄膜パターンよりなる薄膜ヒーターを形成する工程と、
    前記第1の基板の表面にガス吸着剤固定部としての段差を有するガス吸着剤充填部流路用の溝およびガス冷却回収流路用の溝とが連続したパターンの溝を形成する工程と、
    第2の基板に、前記ガス吸着剤充填部流路用の溝のガス導入口に対応する位置にガス導入流路用の穴、および前記ガス冷却回収流路用の溝のガス排出口に対応する位置にガス排出流路用の穴を形成する工程と、
    前記第1の基板の表面に前記第2の基板を接合してガス導入流路に連通したガス吸着剤充填部流路およびガス排出流路に連通したガス冷却回収流路を形成する工程と、
    前記ガス吸着剤充填部流路内にガス吸着剤を導入する工程と、
    を有することを特徴とするガス濃縮回収用セルの製造方法。
  15. 前記ヒーターを設ける工程が、メタルマスク法、リフトオフ法、メッキ法、およびイオンミリング法よりなる群から選択される方法によって施されることを特徴とする請求項14に記載のガス濃縮回収用セルの製造方法。
  16. 前記連続したパターンの溝を形成する工程が、ダイシングソーを用いた方法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、およびサンドブラスト法よりなる群から選択される方法によって施されることを特徴とする請求項14に記載のガス濃縮回収用セルの製造方法。
  17. 第1の基板の表面にガス導入流路およびガス吸着剤固定部としての段差を含むガス吸着剤充填部流路からなる第1のガス流路と、紫外線光路兼ガス流路およびガス排出流路からなる第2ガス流路と、前記第1ガス流路および第2ガス流路を連通する連結ガス流路とに対応した連続したパターンの溝を形成する工程と、
    前記ガス吸着剤充填部流路ガス吸着剤を充填する工程と、
    前記紫外線光路兼ガス流路に分光分析用紫外光を入射する光ファイバおよび分光分析用紫外光を出射する光ファイバを、ガラスよりなる封止材料を用いて接続する工程と、
    前記第1の基板の表面に平坦な第2の基板を接合により貼り合わせて前記溝部分に前記第1のガス流路と、前記第2のガス流路と、前記ガス連結流路とが連続したガス流路を形成する工程と、
    前記第1の基板の裏面で、前記ガス吸着剤充填部流路に対応した位置にヒーターを設ける工程と、
    を具えることを特徴とするガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  18. 第1の基板の表面にガス導入流路およびガス吸着剤固定部としての段差を含むガス吸着剤充填部流路からなる第1ガス流路に対応した連続したパターンの溝を形成する工程と、
    前記ガス吸着剤充填部流路ガス吸着剤を充填する工程と、
    第2の基板の表面に、紫外線光路兼ガス流路およびガス排出流路からなる第2ガス流路に対応した連続したパターンの溝および該溝の前記第1ガス流路との連結ガス流路に対応した位置該溝の底部から基板裏面に貫通する貫通孔を形成する工程と、
    前記紫外線光路兼ガス流路に対応した溝に所定間隔離して分光分析用紫外光を入射する光ファイバおよび分光分析用紫外光を出射する光ファイバを、ガラスよりなる封止材料を用いて接続する工程と、
    前記第2の基板の表面に平坦な第3の基板を接合によって張り合わせて前記第2の基板の溝部分に前記第2ガス流路を形成する工程と、
    前記第1の基板の表面に前記第2の基板の裏面を接合によって張り合わせて前記第1の基板の溝部分に前記第1ガス流路と、第1ガス流路および第2ガス流路を連通する連結ガス流路とを形成する工程と、
    前記第1の基板の裏面で、前記ガス吸着剤充填部流路に対応した位置にヒーターを設ける工程と、
    を具えることを特徴とするガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  19. 第1の基板の表面にガス導入流路およびガス吸着剤固定部としての 段差を含むガス吸着剤充填部流路からなる第1ガス流路に対応した連続したパターンの溝を形成する工程と、
    前記ガス吸着剤充填部流路ガス吸着剤を充填する工程と、
    前記第1の基板の表面に、前記第1ガス流路と後記第2ガス流路とを連通する連結ガス流路に対応した位置に貫通孔を有する平坦な第2の基板を接合によって貼り合わせて、前記第1の基板の溝部分に第1ガス流路を形成する工程と、
    前記第1の基板の裏面で、前記ガス吸着剤充填部流路に対応した位置にヒーターを設ける工程と、
    第3の基板の表面に紫外線光路兼ガス流路およびガス排出流路からなる第2ガス流路に対応した連続したパターンの溝および該溝の前記第1ガス流路との連結ガス流路に対応した位置該溝の底部から基板裏面に貫通する貫通孔を形成する工程と、
    前記紫外線光路兼ガス流路に対応した溝部分に所定間隔離して分光分析用紫外光を入射する光ファイバおよび分光分析用紫外光を出射する光ファイバをガラスよりなる封止材料を用いて接続する工程と、
    前記第3の基板の表面に、前記第2ガス流路からのガス排出流路に対応した部分に貫通孔を有する平坦な第4の基板を接合によって貼り合わせて、前記第3の基板の溝部分に前記紫外光路兼ガス流路および第4の基板にガス排出流路を形成する工程と、
    前記第2の基板の貫通孔および前記第3の基板の貫通孔に対応した位置に貫通孔を有するテフロン(登録商標)製シールパッキンよりなる第5の基板を、前記第2の基板の表面と前記第3の基板の裏面との間に介在させて積層し、第1ガス流路と第2ガス流路とを連通する連結ガス流路を形成する工程と、
    を具えることを特徴とするガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  20. 前記第1ガス流路に対応した連続したパターンの溝が、前記ガス吸着剤固定部用段差を挟んでガス冷却回収流路に対応した溝をさらに含むことを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載のガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  21. 前記第1の基板に接合される第2の基板の前記接合面とは反対面上で、かつガス冷却回収流路に対応した位置に、空冷用溝を形成する工程をさらに具えることを特徴とする請求項20に記載のガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  22. 前記第1の基板の裏面で、ガス冷却回収流路に対応した位置に、空冷用溝を形成する工程をさらに具える請求項20に記載のガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  23. 前記第1の基板の裏面で、ガス冷却回収流路に対応した位置に、空冷用メタル薄膜を形成する工程をさらに具える請求項20または21に記載のガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  24. 前記ヒーターを設ける工程が、メタルマスク法、リフトオフ法、メッキ法、およびイオンミリング法よりなる群から選択される方法によって施されることを特徴とする請求項17ないし19のいずれかに記載のガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  25. 前記連続したパターンの溝および空冷用溝を形成する工程が、ダイシングソーを用いた方法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、およびサンドブラスト法よりなる群から選択される方法によって施されることを特徴とする請求項17ないし22のいずれかに記載のガス分光分析用微小フローセルの製造方法。
  26. 請求項1ないし12のいずれかに記載の分析対象ガスが流れるガス流路、濃縮用セル、および測定用セルを具えたガス分光分析用微小フローセルと、ヒーター用電源と、紫外線光源と、紫外分光器と、分析対象ガスの成分および濃度を測定する手段と、を具えていることを特徴とするガス分光分析装置。
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