JP3583178B2 - 抗菌剤の製造方法及び抗菌剤 - Google Patents
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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、抗菌・抗カビ効果の持続性が改良された抗菌性の金属を含有するポリマー粒子からなる抗菌剤の製造方法及び抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から微量の銀、銅、亜鉛等の金属イオンが抗菌・抗カビ効果を有することはよく知られており、このような抗菌性の金属イオンは、例えば硝酸銀のような金属塩の形態で殺菌剤、消毒剤等に添加され各種分野で広く使用されている。しかし、このような金属塩は、水溶液状態で取り扱うことからその用途が限定され、また硝酸銀にあっては人体への強い粘膜刺激性があり、その安全性にも問題が多い。
【0003】
このような状況より、近年銀等の抗菌性金属イオンを各種の担体に担持させ、取扱操作性の改善と抗菌活性の持続性を向上させる検討が行われている。
例えば、このような担体として活性炭(特公昭52−38666号)、ゼオライト(特公昭63−54013号)、非晶質アルミノ珪酸塩(特開平3−23960号)等を使用し、これら各種の担体に抗菌性金属イオンを担持させた例が開示されている。しかしながら、このような担体は何れも無機化合物の担体であることから、有機系ポリマーを基材とする樹脂や塗料等への分散性が悪く、自ずとその用途が限定されている。
【0004】
従って、有機系ポリマー樹脂等に使用できる抗菌剤として、有機系ポリマーを基材とする抗菌剤の開発が要望され、各種の抗菌剤が検討されている。
例えば、抗菌性の金属イオンを界面活性剤の塩の形態で使用する方法(特開平3−141205号)が開示されているが、このような抗菌剤は、抗菌性金属イオンが単なる界面活性剤の塩として担持されていることから、金属イオンが容易に溶出するという問題がある。
【0005】
このような状況の中で、本願出願人のひとりは抗菌性金属イオンを有機系ポリマー粒子に担持させる方法について検討を行い、先に特開平4−173712号として抗菌活性の持続性を有する抗菌剤及びその製法技術を開示した。この抗菌剤は、担体が有機系ポリマーであることから他のポリマー樹脂との相溶性に優れている。この技術は、担体ポリマーを水を分散媒とする乳化重合によって得た後、これに抗菌性金属イオンを混合して反応させることによって抗菌剤を製造するものである。この方法について更に検討を重ねた結果、この抗菌剤は抗菌性金属が担体表面に分布し、抗菌性金属が離脱し易いことからその溶出速度が早くなり、抗菌効果の持続性が未だ充分でないことが明らかとなった。更にこの抗菌剤は、乳化重合に使用する原料にスルホン酸基を有するラジカル重合性の乳化剤原料を使用するが、このような原料中のスルホン酸基の存在により、得られたポリマーの耐熱性が非常に低下し、他の樹脂材料との溶融混合の際に容易にその熱分解によって樹脂の着色の現象を招来し、その用途が非常に制限されているという欠点がある。
従って、有機系ポリマーを担体とする抗菌剤として、各種のポリマーに均一に混合が可能であり、しかも抗菌活性の持続性と幅広い用途分野で使用できるような抗菌剤の耐熱性と分散性に優れた抗菌剤の開発が要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは前述の実状に鑑み、抗菌剤の耐熱性と各種ポリマーへの分散性が優れ、しかも抗菌活性の持続性に優れた抗菌剤を得るべく鋭意検討を重ねた。
その結果、アクリル酸エステル系の原料を高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛等の塩と有機溶媒の存在下で重合を行うことにより、得られる抗菌性金属を含有するポリマーが、前述の課題を解決する優れた抗菌剤となることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、重合用原料(1)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及び/又は(2)ジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステル(但し、アクリル酸ないしメタクリル酸のモノマーとの混合を除く)を、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩と有機溶媒の存在下で重合させることを特徴とする抗菌剤の製造方法に関し、更にこのような製造方法で得られる抗菌剤に関する。
【0008】
【作用】
以下本発明について更に詳述する。
本発明の抗菌剤は、重合用原料▲1▼アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及び/又は▲2▼ジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステルを、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩と有機溶媒の存在下で重合させることにより得られるものである。従って、本発明ではその原料にスルホン酸基を有するラジカル重合性の原料を使用しないため、得られる抗菌剤の耐熱性は非常に優れたものとなる。また本発明で重要な点は、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩を有機溶媒中に微粒子状で懸濁させた状態で、アクリル酸エステル系の重合用原料を重合させることにある。このような重合反応によって、微粒子状の高級脂肪酸塩は重合原料ポリマー中に取り込まれ、結果として得られる高級脂肪酸塩が均一に分散した抗菌剤が、抗菌活性を長期間にわたり維持できるものとなる。
【0009】
本発明で用いる重合用原料について更に詳記すると、重合用原料▲1▼のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート等の脂肪族アルコールの各種アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート等の脂環式アルコールのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルがある。更に、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルがある。更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を含有したもの、或いは4−ブロモフェニルアクリレート、4−クロルフェニルメタクリレート等のハロゲンを含有したアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等も挙げることが出来る。しかし、これらに限定されるものではない。
【0010】
次に、重合用原料▲2▼のジ又はトリアクリル酸エステル又は、ジ又はトリメタクリル酸エステルの例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ジアクリロキシ−2−プロパノール、1,3−ジメタクリロキシ−2−プロパノール等の二官能性ジアクリル酸エステル、ジメタクリル酸エステルの他、グリセリンのトリアクリレート、トリメタクリレートやトリメチロールプロパンのトリアクリレートやトリメタクリレート等の三官能アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等も用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明ではこのような重合用原料▲1▼及び/又は▲2▼の原料の他、これら重合用原料に共重合可能な他の単量体も用いることができる。このような単量体の使用は、本発明の抗菌剤を他の樹脂と混合させる場合に、樹脂との相溶性が増加する等で有用である。このような単量体の例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアクリルシアヌレート、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、α−メチルスチレン、ブタジエン等が目的に応じて使用できる。
【0012】
次に、本発明で使用する高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩について詳述する。このような高級脂肪酸の抗菌性金属塩は、次のような方法によって容易に製造することができる。即ち、先ず高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等を水に加熱溶解させた水溶液に、抗菌性金属塩として硝酸銀、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛等の水溶液を加え、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩として析出させる。次いで、この析出物をろ過、洗浄、乾燥することにより得ることができる。
【0013】
本発明で使用できる高級脂肪酸塩としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩が挙げられる。また、これら以外の高級脂肪酸として、ラウリン酸より低級の脂肪酸、あるいはベヘニン酸より高級の脂肪酸を使用することもできるが、抗菌活性の持続性の向上あるいは抗菌性金属塩の製造の容易さから、本発明では前記の高級脂肪酸塩の使用が最も好ましい。
【0014】
次に、本発明の抗菌剤の製造方法について詳記すると、本発明は先ず重合用原料▲1▼及び/又は▲2▼を有機溶媒中に溶解させ、次いでこれに前述の高級脂肪酸の抗菌性金属塩を分散させる。尚、この場合に高級脂肪酸の抗菌性金属塩は、有機溶媒中で非常に安定な微粒子状懸濁液となる。また使用できる有機溶媒の種類としては、酢酸エチル、エチルプロピオネート、エチル−n−ヘキサネート、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
本発明ではこのような有機溶媒の存在下で重合反応を行うことにより、これによって微粒状の高級脂肪酸の抗菌性金属塩がポリマー担体中に均一に分布した抗菌剤が得られる。
【0015】
本発明の重合用原料▲1▼及び/又は▲2▼の使用割合は、目的とする抗菌剤の組成当たり、原料▲1▼のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは0〜95重量%、特に好ましくは20〜70重量%、原料▲2▼のジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステルは0〜95重量%、特に好ましくは20〜70%である。尚、原料▲1▼と▲2▼の使用割合は、得ようとする抗菌剤に柔軟さを必要とする場合には、主として原料▲1▼の使用量を多くし、逆に堅さを必要とする場合には、原料▲2▼の使用量を多くすればよい。
【0016】
また、高級脂肪酸の抗菌性金属塩の使用量は、ポリマー担体中に担持する抗菌性金属量と比例関係にあり、これは所望する抗菌剤の抗菌活性とも相関し、その量はこれら原料の単量体の総量に対して少なくとも2重量%以上、好ましくは5重量%以上を使用する。しかし、その上限に関しては30重量%であり、これを越えるとポリマー担体中への抗菌性金属塩の取り込みが困難となり、また抗菌性金属が不均一に分散することから、長期間での抗菌活性の維持が困難となるため好ましくない。
有機溶媒の使用量について云えば、原料▲1▼及び/又は▲2▼と高級脂肪酸の抗菌性金属塩の総量に対して2〜20倍量程度が好ましい。
【0017】
重合反応は、このような原料溶液に重合開始剤を添加し、還流下、攪拌を行いながら反応系を50〜80℃に加熱し概ね2〜10時間行う。重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物が使用でき、例えば過酸化ベンゾイル等が使用できる。重合の進行と共に、抗菌性金属塩が担持された本発明の抗菌剤は平均粒子径が0.5〜50μm程度の粒子状となって析出する。反応の停止後、析出した重合体粒子を濾過等で分離し、必要ならば有機溶媒や水を用いて洗浄した後、乾燥を行うことにより粉末状の本発明抗菌剤を得ることができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実施例を掲げ更に説明を行う。尚、本実施例に於いて、%は特に断らない限り全て重量%を示す。
【0019】
(実施例1)
オレイン酸カリウム25.0gを水2000gに加熱溶解し、これに16%硝酸銀水溶液82.5gを添加し、オレイン酸銀の懸濁液を得た。この懸濁液を吸引ろ過により懸濁粒子を分取し、これを水で洗浄した後、真空乾燥を行うことにより、オレイン酸銀28.5gを得た。
【0020】
攪拌機を備えた1L容の4ツ口フラスコに、有機溶媒としてメチルイソブチルケトン500gを入れ、これにメタクリル酸メチル42.5gとジエチレングリコールジメタクリレート4.5gを添加溶解させた。次に、この溶液に上記のオレイン酸銀6.7gを添加して懸濁液とし、更に重合触媒として過酸化ベンゾイル0.5gを添加した。
次いで、この溶液を窒素置換により脱気を行いながら攪拌下、反応系を60℃に加熱しながら10時間の反応を行った。反応後、この懸濁液を吸引ろ過によって懸濁粒子を分取し、これをメチルエチルケトンで洗浄した後、真空乾燥を行うことにより本発明の抗菌剤50gを得た。
得られた本発明の抗菌剤中の銀含有量を原子吸光法によって測定した結果3.3%であった。また、この抗菌剤を超音波洗浄器を用いて水に分散し、これを遠心沈降式粒度分布測定装置を使用して遠心沈降法で粒子径を測定した結果、平均粒子径は2μmであった。
【0021】
(実施例2〜6)
実施例1のオレイン酸カリウムに代えてミリスチン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液100.0gを使用して同様にミリスチン酸銀30.0gを得た。
また同様に、ラウリン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液112.0gを使用してラウリン酸銀25.5gを得た。次に、ステアリン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液82.5gを使用してステアリン酸銀29.0gを得た。更に、パルミチン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液90.0gを使用してパルミチン酸銀29.5gを得た。また、ベヘニン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液70.0gを使用してベヘニン酸銀29.0gを得た。
【0022】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレートの47gを使用し、更にオレイン酸銀に代えてミリスチン酸銀5.8g(実施例2)、ラウリン酸銀5.3g(実施例3)、ステアリン酸銀6.7g(実施例4)、パルミチン酸銀6.3g(実施例5)、ベヘニン酸銀8.0g(実施例6)を使用し、実施例1と同様に反応を行い本発明の抗菌剤を得た。これら抗菌剤の銀含有量及び平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
(実施例7)
実施例1のオレイン酸カリウムに代えてミリスチン酸カリウムを使用し、また硝酸銀水溶液に代えて15%硫酸銅水溶液50.0gを使用し、同様の操作を行うことによってミリスチン酸銅24.0gを得た。
【0025】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレートの50gを使用し、更に実施例1で用いたオレイン酸銀に代えてミリスチン酸銅7.5gを使用し、実施例1と同様に反応を行い本発明の抗菌剤56gを得た。
得られた抗菌剤の銅含有量を測定した結果1.4%であり、また平均粒子径は20μmであった。
【0026】
(実施例8)
実施例1のオレイン酸カリウムに代えてミリスチン酸カリウムを使用し、また硝酸銀水溶液に代えて15%硝酸亜鉛水溶液60.0gを使用し、同様の操作を行うことによってミリスチン酸亜鉛24.0gを得た。
【0027】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレートの50gを使用し、更に実施例1で用いたオレイン酸銀に代えてミリスチン酸亜鉛7.5gを使用し、実施例1と同様に反応を行い本発明の抗菌剤55gを得た。
得られた抗菌剤の亜鉛含有量を測定した結果1.3%であり、また平均粒子径は20μmであった。
【0028】
<抗菌性評価試験1>
実施例1〜8で得た抗菌剤を使用し、各種試験菌による最小発育阻止濃度(MIC)を測定することにより抗菌剤の抗菌性能を評価した。
尚、試験菌としてエシェリキア・コリ(Escherichia coli IFO−3301)(大腸菌)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa IFO−13275)(緑膿菌)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus IFO−12732)(黄色ブドウ球菌)を用いた。
【0029】
抗菌性評価試験の方法は、先ず滅菌水で抗菌剤試料検体の4000μg/ml懸濁液を調製した後、更にこれに滅菌水を加え2倍希釈系列溶液を調製した。次に、滅菌処理を行い50〜60℃に保持した感受性測定用培地(Mueller Hinton medium(Difco))に、前記の各希釈系列溶液を各10重量%添加し、充分に混合を行った後、これらをシャーレに分注、固化させて感受性測定用平板とした。
また、前記試験菌の接種用菌液の調製は、継代培養した試験菌を増菌用培地(Mueller Hinton Broth (Difco))に接種し、これを35℃で20時間培養した後、菌数が106/mlとなるように増殖用培地で希釈し、これを接種用菌液とした。
次に、前記の感受性測定用平板に接種用菌液をニクロム線ループ(内径約1mm)を用いて1〜2cm程度に画線塗抹し、これを35℃で20時間培養し、発育が阻止された最小濃度を以て試験菌に対する抗菌剤のMIC値とした。
各抗菌剤を用いてMIC値を測定した結果を表2に示した。
【0030】
【表2】
【0031】
<抗菌性評価試験2>
実施例1〜3で得た抗菌剤を使用し、抗菌剤の抗菌活性の持続性について評価を行った。また比較のために、各実施例で得た高級脂肪酸の抗菌性金属塩であるオレイン酸銀(比較例1)、ミリスチン酸銀(比較例2)及びラウリン酸銀(比較例3)
について同様に評価を行った。
抗菌性評価試験の方法は、先ず滅菌水で抗菌剤試料検体の1%懸濁液を調製し、これを30℃の恒温振とう器で所定時間(1、2、4週間)振とうした後ろ過を行い、乾燥させて検体試料を調製した。次いでこの検体試料を使用し、抗菌性評価試験1と同様の操作で試験菌エシェリキア・コリに対するMIC値を測定することにより、抗菌活性の持続性を評価した。結果を表3に示した。
【0032】
【表3】
【0033】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤は、アクリル系ポリマーが抗菌性金属の担体であるため、各種ポリマー基材への相溶性に優れ、しかも微細な粒子状であるために分散性にも優れている。またこの抗菌剤は、抗菌性金属がポリマー担体内部に均一に分布しているため、抗菌性金属は徐々に担体より放出され、その結果抗菌活性が長期間にわたり持続する性能を有する。
【産業上の利用分野】
本発明は、抗菌・抗カビ効果の持続性が改良された抗菌性の金属を含有するポリマー粒子からなる抗菌剤の製造方法及び抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から微量の銀、銅、亜鉛等の金属イオンが抗菌・抗カビ効果を有することはよく知られており、このような抗菌性の金属イオンは、例えば硝酸銀のような金属塩の形態で殺菌剤、消毒剤等に添加され各種分野で広く使用されている。しかし、このような金属塩は、水溶液状態で取り扱うことからその用途が限定され、また硝酸銀にあっては人体への強い粘膜刺激性があり、その安全性にも問題が多い。
【0003】
このような状況より、近年銀等の抗菌性金属イオンを各種の担体に担持させ、取扱操作性の改善と抗菌活性の持続性を向上させる検討が行われている。
例えば、このような担体として活性炭(特公昭52−38666号)、ゼオライト(特公昭63−54013号)、非晶質アルミノ珪酸塩(特開平3−23960号)等を使用し、これら各種の担体に抗菌性金属イオンを担持させた例が開示されている。しかしながら、このような担体は何れも無機化合物の担体であることから、有機系ポリマーを基材とする樹脂や塗料等への分散性が悪く、自ずとその用途が限定されている。
【0004】
従って、有機系ポリマー樹脂等に使用できる抗菌剤として、有機系ポリマーを基材とする抗菌剤の開発が要望され、各種の抗菌剤が検討されている。
例えば、抗菌性の金属イオンを界面活性剤の塩の形態で使用する方法(特開平3−141205号)が開示されているが、このような抗菌剤は、抗菌性金属イオンが単なる界面活性剤の塩として担持されていることから、金属イオンが容易に溶出するという問題がある。
【0005】
このような状況の中で、本願出願人のひとりは抗菌性金属イオンを有機系ポリマー粒子に担持させる方法について検討を行い、先に特開平4−173712号として抗菌活性の持続性を有する抗菌剤及びその製法技術を開示した。この抗菌剤は、担体が有機系ポリマーであることから他のポリマー樹脂との相溶性に優れている。この技術は、担体ポリマーを水を分散媒とする乳化重合によって得た後、これに抗菌性金属イオンを混合して反応させることによって抗菌剤を製造するものである。この方法について更に検討を重ねた結果、この抗菌剤は抗菌性金属が担体表面に分布し、抗菌性金属が離脱し易いことからその溶出速度が早くなり、抗菌効果の持続性が未だ充分でないことが明らかとなった。更にこの抗菌剤は、乳化重合に使用する原料にスルホン酸基を有するラジカル重合性の乳化剤原料を使用するが、このような原料中のスルホン酸基の存在により、得られたポリマーの耐熱性が非常に低下し、他の樹脂材料との溶融混合の際に容易にその熱分解によって樹脂の着色の現象を招来し、その用途が非常に制限されているという欠点がある。
従って、有機系ポリマーを担体とする抗菌剤として、各種のポリマーに均一に混合が可能であり、しかも抗菌活性の持続性と幅広い用途分野で使用できるような抗菌剤の耐熱性と分散性に優れた抗菌剤の開発が要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは前述の実状に鑑み、抗菌剤の耐熱性と各種ポリマーへの分散性が優れ、しかも抗菌活性の持続性に優れた抗菌剤を得るべく鋭意検討を重ねた。
その結果、アクリル酸エステル系の原料を高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛等の塩と有機溶媒の存在下で重合を行うことにより、得られる抗菌性金属を含有するポリマーが、前述の課題を解決する優れた抗菌剤となることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、重合用原料(1)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及び/又は(2)ジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステル(但し、アクリル酸ないしメタクリル酸のモノマーとの混合を除く)を、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩と有機溶媒の存在下で重合させることを特徴とする抗菌剤の製造方法に関し、更にこのような製造方法で得られる抗菌剤に関する。
【0008】
【作用】
以下本発明について更に詳述する。
本発明の抗菌剤は、重合用原料▲1▼アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及び/又は▲2▼ジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステルを、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩と有機溶媒の存在下で重合させることにより得られるものである。従って、本発明ではその原料にスルホン酸基を有するラジカル重合性の原料を使用しないため、得られる抗菌剤の耐熱性は非常に優れたものとなる。また本発明で重要な点は、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩を有機溶媒中に微粒子状で懸濁させた状態で、アクリル酸エステル系の重合用原料を重合させることにある。このような重合反応によって、微粒子状の高級脂肪酸塩は重合原料ポリマー中に取り込まれ、結果として得られる高級脂肪酸塩が均一に分散した抗菌剤が、抗菌活性を長期間にわたり維持できるものとなる。
【0009】
本発明で用いる重合用原料について更に詳記すると、重合用原料▲1▼のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート等の脂肪族アルコールの各種アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート等の脂環式アルコールのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルがある。更に、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の芳香族アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルがある。更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を含有したもの、或いは4−ブロモフェニルアクリレート、4−クロルフェニルメタクリレート等のハロゲンを含有したアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等も挙げることが出来る。しかし、これらに限定されるものではない。
【0010】
次に、重合用原料▲2▼のジ又はトリアクリル酸エステル又は、ジ又はトリメタクリル酸エステルの例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ジアクリロキシ−2−プロパノール、1,3−ジメタクリロキシ−2−プロパノール等の二官能性ジアクリル酸エステル、ジメタクリル酸エステルの他、グリセリンのトリアクリレート、トリメタクリレートやトリメチロールプロパンのトリアクリレートやトリメタクリレート等の三官能アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等も用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明ではこのような重合用原料▲1▼及び/又は▲2▼の原料の他、これら重合用原料に共重合可能な他の単量体も用いることができる。このような単量体の使用は、本発明の抗菌剤を他の樹脂と混合させる場合に、樹脂との相溶性が増加する等で有用である。このような単量体の例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアクリルシアヌレート、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、α−メチルスチレン、ブタジエン等が目的に応じて使用できる。
【0012】
次に、本発明で使用する高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩について詳述する。このような高級脂肪酸の抗菌性金属塩は、次のような方法によって容易に製造することができる。即ち、先ず高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等を水に加熱溶解させた水溶液に、抗菌性金属塩として硝酸銀、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛等の水溶液を加え、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩として析出させる。次いで、この析出物をろ過、洗浄、乾燥することにより得ることができる。
【0013】
本発明で使用できる高級脂肪酸塩としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩が挙げられる。また、これら以外の高級脂肪酸として、ラウリン酸より低級の脂肪酸、あるいはベヘニン酸より高級の脂肪酸を使用することもできるが、抗菌活性の持続性の向上あるいは抗菌性金属塩の製造の容易さから、本発明では前記の高級脂肪酸塩の使用が最も好ましい。
【0014】
次に、本発明の抗菌剤の製造方法について詳記すると、本発明は先ず重合用原料▲1▼及び/又は▲2▼を有機溶媒中に溶解させ、次いでこれに前述の高級脂肪酸の抗菌性金属塩を分散させる。尚、この場合に高級脂肪酸の抗菌性金属塩は、有機溶媒中で非常に安定な微粒子状懸濁液となる。また使用できる有機溶媒の種類としては、酢酸エチル、エチルプロピオネート、エチル−n−ヘキサネート、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
本発明ではこのような有機溶媒の存在下で重合反応を行うことにより、これによって微粒状の高級脂肪酸の抗菌性金属塩がポリマー担体中に均一に分布した抗菌剤が得られる。
【0015】
本発明の重合用原料▲1▼及び/又は▲2▼の使用割合は、目的とする抗菌剤の組成当たり、原料▲1▼のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルは0〜95重量%、特に好ましくは20〜70重量%、原料▲2▼のジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステルは0〜95重量%、特に好ましくは20〜70%である。尚、原料▲1▼と▲2▼の使用割合は、得ようとする抗菌剤に柔軟さを必要とする場合には、主として原料▲1▼の使用量を多くし、逆に堅さを必要とする場合には、原料▲2▼の使用量を多くすればよい。
【0016】
また、高級脂肪酸の抗菌性金属塩の使用量は、ポリマー担体中に担持する抗菌性金属量と比例関係にあり、これは所望する抗菌剤の抗菌活性とも相関し、その量はこれら原料の単量体の総量に対して少なくとも2重量%以上、好ましくは5重量%以上を使用する。しかし、その上限に関しては30重量%であり、これを越えるとポリマー担体中への抗菌性金属塩の取り込みが困難となり、また抗菌性金属が不均一に分散することから、長期間での抗菌活性の維持が困難となるため好ましくない。
有機溶媒の使用量について云えば、原料▲1▼及び/又は▲2▼と高級脂肪酸の抗菌性金属塩の総量に対して2〜20倍量程度が好ましい。
【0017】
重合反応は、このような原料溶液に重合開始剤を添加し、還流下、攪拌を行いながら反応系を50〜80℃に加熱し概ね2〜10時間行う。重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物が使用でき、例えば過酸化ベンゾイル等が使用できる。重合の進行と共に、抗菌性金属塩が担持された本発明の抗菌剤は平均粒子径が0.5〜50μm程度の粒子状となって析出する。反応の停止後、析出した重合体粒子を濾過等で分離し、必要ならば有機溶媒や水を用いて洗浄した後、乾燥を行うことにより粉末状の本発明抗菌剤を得ることができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実施例を掲げ更に説明を行う。尚、本実施例に於いて、%は特に断らない限り全て重量%を示す。
【0019】
(実施例1)
オレイン酸カリウム25.0gを水2000gに加熱溶解し、これに16%硝酸銀水溶液82.5gを添加し、オレイン酸銀の懸濁液を得た。この懸濁液を吸引ろ過により懸濁粒子を分取し、これを水で洗浄した後、真空乾燥を行うことにより、オレイン酸銀28.5gを得た。
【0020】
攪拌機を備えた1L容の4ツ口フラスコに、有機溶媒としてメチルイソブチルケトン500gを入れ、これにメタクリル酸メチル42.5gとジエチレングリコールジメタクリレート4.5gを添加溶解させた。次に、この溶液に上記のオレイン酸銀6.7gを添加して懸濁液とし、更に重合触媒として過酸化ベンゾイル0.5gを添加した。
次いで、この溶液を窒素置換により脱気を行いながら攪拌下、反応系を60℃に加熱しながら10時間の反応を行った。反応後、この懸濁液を吸引ろ過によって懸濁粒子を分取し、これをメチルエチルケトンで洗浄した後、真空乾燥を行うことにより本発明の抗菌剤50gを得た。
得られた本発明の抗菌剤中の銀含有量を原子吸光法によって測定した結果3.3%であった。また、この抗菌剤を超音波洗浄器を用いて水に分散し、これを遠心沈降式粒度分布測定装置を使用して遠心沈降法で粒子径を測定した結果、平均粒子径は2μmであった。
【0021】
(実施例2〜6)
実施例1のオレイン酸カリウムに代えてミリスチン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液100.0gを使用して同様にミリスチン酸銀30.0gを得た。
また同様に、ラウリン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液112.0gを使用してラウリン酸銀25.5gを得た。次に、ステアリン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液82.5gを使用してステアリン酸銀29.0gを得た。更に、パルミチン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液90.0gを使用してパルミチン酸銀29.5gを得た。また、ベヘニン酸カリウムを使用し、16%硝酸銀水溶液70.0gを使用してベヘニン酸銀29.0gを得た。
【0022】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレートの47gを使用し、更にオレイン酸銀に代えてミリスチン酸銀5.8g(実施例2)、ラウリン酸銀5.3g(実施例3)、ステアリン酸銀6.7g(実施例4)、パルミチン酸銀6.3g(実施例5)、ベヘニン酸銀8.0g(実施例6)を使用し、実施例1と同様に反応を行い本発明の抗菌剤を得た。これら抗菌剤の銀含有量及び平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
(実施例7)
実施例1のオレイン酸カリウムに代えてミリスチン酸カリウムを使用し、また硝酸銀水溶液に代えて15%硫酸銅水溶液50.0gを使用し、同様の操作を行うことによってミリスチン酸銅24.0gを得た。
【0025】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレートの50gを使用し、更に実施例1で用いたオレイン酸銀に代えてミリスチン酸銅7.5gを使用し、実施例1と同様に反応を行い本発明の抗菌剤56gを得た。
得られた抗菌剤の銅含有量を測定した結果1.4%であり、また平均粒子径は20μmであった。
【0026】
(実施例8)
実施例1のオレイン酸カリウムに代えてミリスチン酸カリウムを使用し、また硝酸銀水溶液に代えて15%硝酸亜鉛水溶液60.0gを使用し、同様の操作を行うことによってミリスチン酸亜鉛24.0gを得た。
【0027】
実施例1で用いたメタクリル酸メチルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレートの50gを使用し、更に実施例1で用いたオレイン酸銀に代えてミリスチン酸亜鉛7.5gを使用し、実施例1と同様に反応を行い本発明の抗菌剤55gを得た。
得られた抗菌剤の亜鉛含有量を測定した結果1.3%であり、また平均粒子径は20μmであった。
【0028】
<抗菌性評価試験1>
実施例1〜8で得た抗菌剤を使用し、各種試験菌による最小発育阻止濃度(MIC)を測定することにより抗菌剤の抗菌性能を評価した。
尚、試験菌としてエシェリキア・コリ(Escherichia coli IFO−3301)(大腸菌)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa IFO−13275)(緑膿菌)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus IFO−12732)(黄色ブドウ球菌)を用いた。
【0029】
抗菌性評価試験の方法は、先ず滅菌水で抗菌剤試料検体の4000μg/ml懸濁液を調製した後、更にこれに滅菌水を加え2倍希釈系列溶液を調製した。次に、滅菌処理を行い50〜60℃に保持した感受性測定用培地(Mueller Hinton medium(Difco))に、前記の各希釈系列溶液を各10重量%添加し、充分に混合を行った後、これらをシャーレに分注、固化させて感受性測定用平板とした。
また、前記試験菌の接種用菌液の調製は、継代培養した試験菌を増菌用培地(Mueller Hinton Broth (Difco))に接種し、これを35℃で20時間培養した後、菌数が106/mlとなるように増殖用培地で希釈し、これを接種用菌液とした。
次に、前記の感受性測定用平板に接種用菌液をニクロム線ループ(内径約1mm)を用いて1〜2cm程度に画線塗抹し、これを35℃で20時間培養し、発育が阻止された最小濃度を以て試験菌に対する抗菌剤のMIC値とした。
各抗菌剤を用いてMIC値を測定した結果を表2に示した。
【0030】
【表2】
【0031】
<抗菌性評価試験2>
実施例1〜3で得た抗菌剤を使用し、抗菌剤の抗菌活性の持続性について評価を行った。また比較のために、各実施例で得た高級脂肪酸の抗菌性金属塩であるオレイン酸銀(比較例1)、ミリスチン酸銀(比較例2)及びラウリン酸銀(比較例3)
について同様に評価を行った。
抗菌性評価試験の方法は、先ず滅菌水で抗菌剤試料検体の1%懸濁液を調製し、これを30℃の恒温振とう器で所定時間(1、2、4週間)振とうした後ろ過を行い、乾燥させて検体試料を調製した。次いでこの検体試料を使用し、抗菌性評価試験1と同様の操作で試験菌エシェリキア・コリに対するMIC値を測定することにより、抗菌活性の持続性を評価した。結果を表3に示した。
【0032】
【表3】
【0033】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤は、アクリル系ポリマーが抗菌性金属の担体であるため、各種ポリマー基材への相溶性に優れ、しかも微細な粒子状であるために分散性にも優れている。またこの抗菌剤は、抗菌性金属がポリマー担体内部に均一に分布しているため、抗菌性金属は徐々に担体より放出され、その結果抗菌活性が長期間にわたり持続する性能を有する。
Claims (3)
- 重合用原料(1)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及び/又は(2)ジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステル(但し、アクリル酸ないしメタクリル酸のモノマーとの混合を除く)を、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩と有機溶媒の存在下で重合させることを特徴とする抗菌剤の製造方法。
- 重合用原料(1)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、及び/又は(2)ジ又はトリアクリル酸エステル又はジ又はトリメタクリル酸エステル(但し、アクリル酸ないしメタクリル酸のモノマーとの混合を除く)を、高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩と有機溶媒の存在下で重合してなる抗菌剤。
- 高級脂肪酸の銀、銅、亜鉛からなる塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸から選ばれた銀、銅、亜鉛からなる塩である請求項2記載の抗菌剤。
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