JP3582784B2 - 基板処理装置および基板処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、塩酸、硝酸、硫酸、ふっ酸(HFおよび無水HFを含む)、酢酸などのような酸を含む蒸気を基板の表面に導いて基板の処理(とくに、いわゆる気相エッチング処理によって基板の表面の膜を除去するための処理)を行うための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象の基板には、半導体ウエハ、液晶表示装置およびプラズマディスプレイ用ガラス基板、ならびに光、磁気および光磁気ディスク用基板などの各種の基板が含まれる。また、基板の材質としては、シリコン、ガラス、樹脂およびセラミックなどの材質が含まれる。なお、基板表面の膜の除去は、所定の膜の一部または全部の選択的除去を目的としていてもよく、また、基板表面の洗浄を目的としていてもよい。
【0002】
【従来の技術】
半導体メモリの製造工程においては、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という。)上にメモリキャパシタ膜を作製する際に、BSG(Boron−Silicate Glass)、PSG(Phospho−Silicate Glass)、BPSG(Boron−doped Phospho−Silicate Glass)などの不純物を多く含んだ酸化膜が犠牲酸化膜として用いられる。これらの犠牲酸化膜は、ふっ酸蒸気を用いたエッチングにおける熱酸化膜またはCVD(化学的気相成長)酸化膜に対する選択比を大きくとることができ、熱酸化膜またはCVD酸化膜をエッチングストッパ膜として用いて選択的に除去することができる。
【0003】
ふっ酸蒸気を用いたエッチング処理におけるエッチング選択比は温度に依存する。たとえば、熱酸化膜は、温度上昇に伴ってエッチングレートが急激に減少するのに対して、BPSG膜は温度変化によらずに比較的高いエッチングレートを維持する。そこで、ウエハの表面に形成された熱酸化膜上のBPSG膜を選択除去するときには、ウエハの温度を50℃〜80℃に維持してふっ酸蒸気による気相エッチング処理が行われる。
【0004】
この気相エッチング処理を行うための基板処理装置は、ふっ酸蒸気を発生させるためのふっ酸蒸気発生容器と、このふっ酸蒸気発生容器で発生したふっ酸蒸気が導かれる処理室とを備えている。ふっ酸蒸気発生容器で発生したふっ酸蒸気は、不活性ガス(一般には窒素ガス)からなるキャリアガスによって、処理ガス供給路を介して、処理室に導かれる。処理室には、ウエハを一定温度に維持して保持するためのホットプレートが設けられている。
【0005】
ふっ酸蒸気発生容器内に貯留されるふっ酸水溶液は、いわゆる擬似共沸組成となる濃度(たとえば、1気圧、室温(20℃)のもとで、約39.6%)に調製されている。この擬似共沸組成のふっ酸水溶液は、水とふっ化水素との蒸発速度が等しく、そのため、処理ガス供給路を介して処理室にふっ酸蒸気が導かれることによってふっ酸蒸気発生容器内のふっ酸水溶液が減少したとしても、処理室に導かれるふっ酸蒸気の濃度は不変に保持される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ふっ酸蒸気による酸化膜のエッチングプロセスは、極めて微妙なプロセスである。このプロセスには、ウエハ上における水分の吸着が関与している。そのため、ウエハの表面状態の影響を受けやすく、ウエハの表面の汚染状態および水分の吸着状態により、反応の進行速度が変化する。したがって、安定したエッチングレートが得にくいという問題がある。
【0007】
また、ウエハの表面状態がウエハ面内で異なっていると、ウエハの面内で均一なエッチング処理を行うことができない。
さらに、複数枚のウエハの表面状態は必ずしも等しくないから、ウエハに対するエッチング処理に個体差がでてしまう。すなわち、再現性が必ずしもよくない。
そこで、処理の面内均一性および再現性を向上するために、処理室内を減圧することによって、ウエハに吸着される水分をコントロールすることが提案されている。
【0008】
ところが、処理室を排気して減圧すると、処理ガス供給路を介してふっ酸蒸気発生容器の内部も排気されることになり、このふっ酸蒸気発生容器内の圧力が減少する。これにより、ふっ酸蒸気発生容器における共沸条件が崩れ、ふっ酸水溶液中のふっ酸および水の組成と、ふっ酸蒸気中のふっ酸および水の組成が等しくなくなってしまう。このことは、ふっ酸水溶液の減少に伴って、処理室に供給されるふっ酸蒸気の組成が変動することを意味する。したがって、ウエハに対して所期の処理を達成することが極めて困難になる。
【0009】
また、処理室のみならずふっ酸蒸気発生容器についても、減圧に耐えうるだけの強固な構造とする必要があるから、気相エッチング処理装置のコストが高くなるという問題もある。
さらには、ふっ酸蒸気発生容器のメンテナンス時には、容器内の圧力を常圧に戻さなければならないから、メンテナンス作業が面倒になる。
一方、処理室には、処理前のウエハが搬入され、処理後のウエハが搬出されることになるから、このウエハの搬入/搬出時における処理室内の圧力の変化は避けられない。したがって、処理室を減圧するか否かにかかわらず、処理ガス供給路を介して処理室に連結されたふっ酸蒸気発生容器内の圧力は、必ずしも安定していない。そのため、減圧を行わない構成の気相エッチング処理装置においても、ウエハの表面に導かれるふっ酸蒸気中の組成は、必ずしも安定していたわけではない。
【0010】
そこで、この発明の目的は、安定した組成の酸を含む蒸気による基板処理が可能な基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、基板処理槽を減圧するか否かによらずに、安定した組成の酸を含む蒸気を基板に供給することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、酸を含む溶液(11)を貯留し、酸を含む蒸気を発生させる酸蒸気発生槽(10)と、この酸蒸気発生槽にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段(30,31)と、処理対象の基板が収容される基板処理槽(20)と、酸を含む蒸気とキャリアガスとの混合ガスである処理ガスを、上記酸蒸気発生槽から上記基板処理槽に導く処理ガス供給路(40)と、この処理ガス供給路に介装され、開度調整の可能な圧力調整バルブ(50)と、この圧力調整バルブの開度を調整することによって上記酸蒸気発生槽内の圧力を所定圧力に保持する圧力制御手段(53)とを含むことを特徴とする基板処理装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0012】
この発明によれば、酸蒸気とキャリアガスとの混合ガスである処理ガスが導かれる処理ガス供給路には、開度調整の可能な圧力調整バルブが介装されている。この圧力調整バルブの開度調整が行われることによって、酸蒸気発生槽内の圧力が所定圧力に保持される。これにより、酸蒸気発生槽内における酸を含む蒸気の発生が、安定した条件下で行われるので、組成の安定した処理ガスを基板処理槽に導くことができる。これにより、再現性の良い基板処理を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記処理ガス供給路に介装され、この処理ガス供給路を開閉して上記基板処理槽への処理ガスの供給を制御する処理ガス供給制御バルブ(82)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置である。
請求項3記載の発明は、基板処理中に、上記基板処理槽を排気することによって、この基板処理槽内を減圧する減圧手段(90,91)をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置である。
この発明では、基板処理槽は、基板処理中に減圧されるので、基板表面に吸着される水分を良好にコントロールできる。したがって、処理ガスによる基板表面の処理を基板面内で均一に行うことができ、かつ複数の基板に対して再現性の良い表面処理を施すことができる。
【0014】
また、基板処理槽が減圧されている期間中においても、酸蒸気発生槽内は減圧されないから、酸蒸気発生槽は減圧に耐えうる強固な構造を有している必要がない。これにより、基板処理装置のコストの削減を図ることができる。
さらに、酸蒸気発生槽内の圧力を、たとえば常圧に保持することとすれば、酸蒸気発生槽のメンテナンスの際に、内部圧力を常圧に戻す操作を行う必要がない。これにより、酸蒸気発生槽のメンテナンス作業を簡素化できる。
【0015】
なお、減圧手段には、真空ポンプ、排気ブロワまたはエジェクタなどの強制排気機構を適用することができる。
請求項4記載の発明は、上記所定圧力が、上記酸蒸気発生槽に貯留された酸を含む溶液中の酸と溶媒との共沸条件を満たす圧力に定められていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置である。
この発明では、基板処理槽における圧力の変動によらずに、酸蒸気発生槽において共沸条件を満足させることができる。これによって、酸蒸気発生槽内に貯留された酸を含む溶液が蒸発により減少していっても、その蒸気中における酸と溶媒との組成は一定に保持される。これによって、基板処理槽内において処理される基板に対する処理の再現性を向上できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、上記キャリアガス供給手段からのキャリアガスを、上記酸蒸気発生槽を迂回して上記処理ガス供給路の上記圧力調整バルブよりも上流側に導くバイパス経路(75)と、上記酸蒸気発生槽と上記処理ガス供給路との間を遮断するための酸蒸気供給制御バルブ(81)と、上記酸蒸気供給制御バルブを閉じた状態で、上記圧力制御手段により、上記圧力調整バルブよりも上流側の圧力が上記所定圧力になるように上記圧力調整バルブの開度が調整された後に、上記酸蒸気供給制御バルブを開くバルブ開閉制御手段(53)とをさらに含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置である。
【0017】
この発明では、処理ガス供給路において圧力調整バルブよりも上流側の圧力が所定圧力となった後に、酸蒸気供給制御バルブが開かれて、酸蒸気発生槽と処理ガス供給路とが連通する。したがって、酸蒸気の供給が開始されると、圧力調整バルブの開度は、酸蒸気発生槽内の圧力を上記所定圧力に保持することができる開度へと速やかに導かれる。すなわち、バイパス経路を介するキャリアガスの供給時において、圧力調整バルブの開度を前もって調整するトレーニングを行うことにより、酸を含む蒸気の供給を開始した後における圧力調整バルブの開度調整量を少なくすることができる。これによって、酸を含む蒸気が基板処理槽に供給されている期間のほぼ全部において、酸蒸気発生槽内の圧力を上記所定圧力に保持できる。したがって、基板処理槽に導かれる酸を含む蒸気の組成をさらに安定化することができる。
【0018】
バルブ開閉制御手段および圧力制御手段の機能は、共通のハードウエア(マイクロコンピュータなど)によって実行される異なるソフトウエア部分で実現されてもよいし、異なるハードウエア構成によって実現されてもよい。
請求項6記載の発明は、酸を含む溶液を貯留した酸蒸気発生槽内で酸蒸気を発生させる工程と、上記酸蒸気発生槽から酸を含む蒸気を処理ガス供給路を介して基板処理槽に導き、この基板処理槽内の基板を処理するステップと、上記基板処理槽に酸を含む蒸気が導かれて基板の処理が行われている基板処理期間(T4)中において、上記処理ガス供給路に介装された圧力調整バルブの開度を制御することによって、上記酸蒸気発生槽内の圧力を上記基板処理槽とは独立して所定圧力に制御するステップとを含むことを特徴とする基板処理方法である。
【0019】
この方法によって、請求項1に関連した効果を達成することができる。
また、この方法は、具体的には、請求項1に記載した構成によって実施することができる。
請求項7記載の発明は、上記基板処理槽を排気することによって、この基板処理槽内を減圧するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6記載の基板処理方法である。
これらの方法に関連して、請求項3〜5に記載したような変形を施すことも可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この装置は、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wの表面に形成された酸化膜を除去するための気相エッチング処理装置としての基本構成を有している。より具体的には、たとえば、ウエハW上に形成された熱酸化膜上にメモリキャパシタ形成のために使用される犠牲酸化膜(BPSG膜など)が形成されている場合に、この犠牲酸化膜を選択的に除去するための装置である。この処理のために、この基板処理装置では、ふっ酸の蒸気をウエハWの表面に供給することにより、ふっ酸の気相エッチング処理によって膜除去工程が行われる。
【0021】
この基板処理装置は、ふっ酸水溶液11を貯留し、このふっ酸水溶液の蒸気を発生させる密閉構造のふっ酸蒸気発生容器10と、ウエハWが収容される基板処理室20と、ふっ酸蒸気発生容器10に不活性ガス(一般的には窒素ガス)からなるキャリアガスを供給するキャリアガス供給路30と、ふっ酸蒸気発生容器10からのふっ酸蒸気とキャリアガスとの混合気である処理ガスを基板処理室20に導く処理ガス供給路40と、この処理ガス供給路40において、基板処理室20とふっ酸蒸気発生容器10との間に介装された圧力調整バルブ50とを備えている。キャリアガス供給路30には、キャリアガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給源31が結合されている。また、キャリアガス供給路30の途中部には、流量制御装置(MFC)32が介装されている。
【0022】
キャリアガス供給路30とふっ酸蒸気発生容器10との間にはキャリアガス導入路61が形成されており、ふっ酸蒸気発生容器10と処理ガス供給路40との間には、ふっ酸蒸気発生容器10からの処理ガスが導出される処理ガス導出路62が形成されている。キャリアガス導入路61および処理ガス導出路62には、第1キャリアガス供給制御バルブ71および第1処理ガス供給制御バルブ81がそれぞれ介装されている。
【0023】
キャリアガス導入路61において第1キャリアガス供給制御バルブ71よりもキャリアガスの供給方向上流側の位置と、処理ガス導出路62において第1処理ガス供給制御バルブ81よりも処理ガス供給方向下流側の位置との間には、バイパス経路75が形成されている。すなわち、バイパス経路75は、ふっ酸蒸気発生容器10を迂回して、キャリアガス供給路30と処理ガス供給路40とを結合している。このバイパス経路75には、第2キャリアガス供給制御バルブ72が介装されている。
【0024】
圧力調整バルブ50は、ふっ酸蒸気に対して耐久性を有するエアオペレートバルブで構成されている。この圧力調整バルブ50は、電空レギュレータ51から供給される圧力調整された圧縮空気によって作動され、その開度が調整されるようになっている。電空レギュレータ51には圧縮空気供給源52からの圧縮空気が供給されていて、この電空レギュレータ51には、たとえばPID(比例積分微分)制御を行うコントローラ53からの制御信号が与えられている。
【0025】
コントローラ53には、圧力調整バルブ50よりも処理ガス供給方向上流側において処理ガス供給路40内の圧力を検出する圧力計54の出力信号が与えられている。コントローラ53は、圧力計54によって検出される圧力が所定圧力(たとえば、1気圧)となるように、電空レギュレータ51に制御信号を与える。これによって、圧力調整バルブ50の開度は、圧力調整バルブ50よりも処理ガス供給方向上流側の圧力が上記所定圧力となる開度に制御されることになる。
【0026】
処理ガス供給路40において、圧力調整バルブ50と基板処理室20との間には、基板処理室20への処理ガスの供給を制御するための第2処理ガス供給制御バルブ82が介装されている。
なお、図示は省略しているが、ふっ酸蒸気発生容器10には、このふっ酸蒸気発生容器10に対してふっ酸水溶液11を供給するためのふっ酸供給配管、ふっ酸蒸気発生容器10内のふっ酸溶水液11を排出するためのふっ酸排液配管、およびふっ酸蒸気発生容器10内に過剰に貯留されたふっ酸水溶液11をオーバーフローさせるオーバーフロー配管等が接続されている。
【0027】
基板処理室20内には、ウエハWが載置されるホットプレート21が設けられている。このホットプレート21は、ウエハWの温度を、たとえば40℃〜80℃の範囲内の所定温度に制御し、ふっ酸蒸気による酸化膜の選択エッチングに適した温度条件を与える。このホットプレート21は、回転駆動機構22によって鉛直軸線まわりに回転されるようになっていて、これにより、ウエハWの表面処理の面内均一性の向上が図られている。
【0028】
基板処理室20には、排気経路91を介して真空ポンプ90が結合されている。排気経路91には排気制御バルブ92が介装されていて、この排気制御バルブ92を開くことによって、基板処理室20内を排気して減圧することができる。これによって、ウエハWの表面における水分の吸着を良好に制御して、ふっ酸蒸気による気相エッチング処理を良好な条件で進行させることができる。
基板処理室20には、不活性ガス供給源31からの不活性ガス(キャリアガス)が、キャリアガス供給路100を介して供給できるようになっている。このキャリアガス供給路100は、キャリアガス供給路30および処理ガス供給路40などとは別系統のキャリアガス供給路を形成していて、その途中部にはキャリアガス供給制御バルブ101が介装されている。このキャリアガス供給制御バルブ101は、基板処理室20から処理後のウエハWを搬出する際に、基板処理室20内を不活性ガスでパージするために開成される。
【0029】
コントローラ53は、たとえば、マイクロコンピュータからなっていて、この実施形態では、電空レギュレータ51の制御のほか、バルブ71,72,81,82,92,101の開閉制御をも行うようになっている。
ふっ酸蒸気発生容器10内に貯留されるふっ酸水溶液11は、いわゆる擬似共沸組成となる濃度(たとえば、1気圧、室温(20℃)のもとで、約39.6%)に調製されている。この擬似共沸組成のふっ酸水溶液11は、ふっ酸蒸気発生容器10内の圧力が当該擬似共沸組成における共沸条件を満たしている限りにおいて、すなわち、たとえばふっ酸蒸気発生容器10内の圧力が1気圧に保持される限りにおいて、水とふっ化水素との蒸発速度が等しい。そのため、処理ガス導出路62および処理ガス供給路40を介してふっ酸蒸気が基板処理室20に導かれることによってふっ酸水溶液11が減少したとしても、処理ガス供給路40から基板処理室20に導かれるふっ酸蒸気の組成は不変に保持される。
【0030】
この実施形態では、コントローラ53は、圧力計54がふっ酸蒸気発生容器10における共沸条件が満たされる圧力、すなわちたとえば1気圧を検出するように、電空レギュレータ51を介して圧力調整バルブ50の開度を制御する。これにより、ふっ酸蒸気発生容器10における水およびふっ化水素の蒸発は、基板処理室20の圧力変化に依らずに等しい速さで進行する。
すなわち、真空ポンプ90によって基板処理室20を排気し、これにより基板処理室20の内部圧力が減圧される条件下で処理ガスによる気相エッチング処理が進行するにも関わらず、ふっ酸蒸気発生容器10における共沸条件が保持される。これによって、ウエハWを所望の組成のふっ酸蒸気によって気相エッチング処理することができるとともに、複数枚のウエハWに対する処理の再現性も向上される。
【0031】
また、基板処理室20が減圧されている期間中においても、ふっ酸蒸気発生容器10内は減圧されないから、ふっ酸蒸気発生容器10は、減圧に耐えうる強固な構造を有している必要がない。したがって、基板処理装置のコストの削減を図ることができる。また、ふっ酸蒸気発生容器10内の圧力は、たとえば常圧(1気圧)に保持すればよいので、ふっ酸蒸気発生容器10のメンテナンスの際に、内部圧力を常圧に戻す操作を行う必要がない。したがって、メンテナンス作業を簡素化できる。
【0032】
図2は、上記基板処理装置の動作を説明するためのタイムチャートであり、コントローラ53によるバルブ50,71,72,81,82,92,101に対する制御動作が表されている。図2(a)は第1キャリアガス供給制御バルブ71の開閉動作を表わし、図2(b)は第1処理ガス供給制御バルブ81の開閉動作を表わし、図2(c)は第2キャリアガス供給制御バルブ72の開閉動作を表わし、図2(d)は第2処理ガス供給制御バルブ82の開閉動作を表わし、図2(e)は排気制御バルブ92の開閉動作を表わす。さらに、図2(f)は圧力調整バルブ50の制御状態を表わし、図2(g)はキャリアガス供給制御バルブ101の開閉状態を表わす。
【0033】
基板処理室20に図示しない基板搬送ロボットによって未処理のウエハWを搬入するウエハ搬入期間T1においては、バルブ71,72,81,82,92,101は、いずれも閉成状態にあって、圧力調整バルブ50の開度の調整も行われていない。
ウエハWの搬入が終了すると、基板処理室20を減圧する処理室減圧期間T2に入る。この期間T2には、排気制御バルブ92のみが開成状態へと切り換えられる。これによって、基板処理室20内は真空ポンプ90によって排気され、その内部圧力が減少することになる。
【0034】
こうして、基板処理室20が予め定める一定の圧力まで減圧されると、基板処理室20内の雰囲気を置換するためのプリパージ期間T3に入る。このプリパージ期間T3では、第2キャリアガス供給制御バルブ72および第2処理ガス供給制御バルブ82が開成状態に切り換えられる。このとき、排気制御バルブ92は開成状態に保持されていて、引き続き基板処理室20の減圧が行われている。このプリパージ期間T3には、流量制御装置32によって目的の流量に制御されたキャリアガスがキャリアガス供給路30、バイパス経路75、および処理ガス供給路40を介して基板処理室20に導かれる。これによって、基板処理室20内の雰囲気が、不活性ガス雰囲気に置換される。
【0035】
プリパージ期間T3においては、同時に、圧力調整バルブ50の開度制御が開始される。すなわち、コントローラ53は、処理ガス供給路40において圧力調整バルブ50よりも処理ガス供給方向上流側の圧力がふっ酸蒸気発生容器10における共沸条件を満たす圧力となるように、圧力調整バルブ50の開度を制御する。このとき、第1キャリアガス供給制御バルブ71および第1処理ガス供給制御バルブ81は閉成状態にあるから、ふっ酸蒸気発生容器10は処理ガス供給路40から切り離された状態となっている。プリパージ期間T3における圧力調整バルブ50の開度制御の目的は、バルブ71,81を開成してふっ酸蒸気の供給を開始した当初における圧力調整バルブ50の開度調整幅を最小限に抑えることである。すなわち、ふっ酸蒸気の供給を開始する以前に、バイパス経路75を用いて圧力調整バルブ50の開度制御のトレーニングが行われることになる。
【0036】
プリパージ期間T3の後には、処理ガス供給路40を介して基板処理室20にふっ酸蒸気を供給する蒸気供給期間T4が開始される。この蒸気供給期間T4においては、バイパス経路75に介装された第2キャリアガス供給制御バルブ72が閉成されるとともに、第1キャリアガス供給制御バルブ71および第1処理ガス供給制御バルブ81が開成状態に切り換えられる。バルブ82,92は開成状態に保持され、圧力調整バルブ50の開度の制御は引き続き行われる。
【0037】
バルブ71,72,81の開閉状態の切り換えが完了すると、流量制御装置32によって流量の制御されたキャリアガスは、キャリアガス供給路30およびキャリアガス導入路61を介してふっ酸蒸気発生容器10に導かれる。そして、キャリアガスとふっ酸蒸気との混合ガスが、処理ガス導出路62を介して処理ガス供給路40に導かれ、この処理ガス供給路40から基板処理室20へと導入される。
【0038】
プリパージ期間T3における圧力調整バルブ50の開度制御のトレーニングにより、圧力調整バルブ50の開度は、微小な調整幅で、速やかにふっ酸蒸気発生容器10の共沸条件を満たすことができる開度へと導かれる。これにより、ふっ酸蒸気発生容器10においては、ふっ化水素と水とが等しい蒸発速度で蒸発し、安定した組成のふっ酸蒸気を含む処理ガスが基板処理室20のウエハWへと導かれることになる。
【0039】
予め定める所定時間だけ処理ガスの供給が行われると、ポストパージ期間T5に移り、基板処理室20および処理ガス供給路40などの内部雰囲気を置換するためのポストパージが行われる。すなわち、第1キャリアガス供給制御バルブ71および第1処理ガス供給制御バルブ81は閉成状態に切り換えられ、バイパス経路75に介装された第2キャリアガス供給制御バルブ72が開成状態に切り換えられる。第2処理ガス供給制御バルブ82および排気制御バルブ92は引き続き開成状態に保持され、圧力調整バルブ50の開度制御は引き続き行われる。
【0040】
このポストパージ期間には、したがって、キャリアガス供給路30からのキャリアガスがバイパス経路75および処理ガス供給路40を介して基板処理室20へと導かれるとともに、基板処理室20内の雰囲気が排気経路91を介して真空ポンプ90によって排気される。このようにして、ふっ酸蒸気を含む雰囲気が主に処理ガス供給路40および基板処理室20から排除される。
こうしてポストパージが終了すると、処理室減圧期間T6において、第2キャリアガス供給制御バルブ72および処理ガス供給制御バルブ82が閉成状態へと切り換えられる。そして、排気制御バルブ92が引き続き開成状態に保持され、これにより、基板処理室20の減圧が行われる。この処理室減圧期間T6には、圧力調整バルブ50の開度制御は行われない。
【0041】
このようにして、基板処理室20内の処理雰囲気が排除された後に、不活性ガスリーク期間T7において、排気制御バルブ92が閉成状態へと切り換えられる。この期間T7には、キャリアガス供給路100に介装されたキャリアガス供給制御バルブ101が開成される。これにより、処理ガス雰囲気が排除された後の基板処理室20に不活性ガスが満たされることになる。この後には、ウエハ搬出期間T8において、図示しない基板搬出ロボットによって、処理済のウエハWが基板処理室20から搬出される。このウエハ搬出期間T8には、キャリアガス供給制御バルブ101を閉成状態として、基板処理室20への不活性ガスの供給は行わない。
【0042】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、上述の実施形態では基板表面をエッチングするための蒸気として、ふっ酸の蒸気を用いているが、塩酸、硝酸、硫酸、ふっ酸(HFおよび無水HFを含む)、酢酸などのような酸を含む蒸気であれば基板の気相エッチング処理の目的のために適用することができる。たとえば、上記酸を含む水溶液の蒸気を用いてエッチング処理を行うことができる他、上記酸を含むガス(気相状態のもの)を水蒸気中に混合した形態の蒸気によっても基板表面のエッチング処理を行うことができる。
【0043】
また、上記の実施形態では、バイパス経路75を設けて、ふっ酸蒸気を基板処理室20に供給する前に、圧力調整バルブ50の開度制御のトレーニングを行うこととしているが、このような開度制御のトレーニングは省かれてもよい。また、上記の実施形態では、基板処理室20内を減圧雰囲気としてウエハWの表面の気相エッチング処理が行われる例について説明したが、基板処理室20の減圧を行わない構成、すなわち基板処理を常圧下で行う気相エッチング処理装置に対してもこの発明を適用することができる。この場合でも、ふっ酸蒸気発生容器内の圧力を共沸条件を満たす圧力に確実に維持することができるので、とくに複数枚のウエハに対する処理の再現性を向上することができる。
【0044】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図2】図1の装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
10 ふっ酸蒸気発生容器
11 ふっ酸水溶液
20 基板処理室
30 キャリアガス供給路
31 不活性ガス供給源
40 処理ガス供給路
50 圧力調整バルブ
51 電空レギュレータ
52 圧縮空気供給源
53 コントローラ
54 圧力計
61 キャリアガス導入路
62 処理ガス導出路
71 第1キャリアガス供給制御バルブ
72 第2キャリアガス供給制御バルブ
75 バイパス経路
81 第1処理ガス供給制御バルブ
82 第2処理ガス供給制御バルブ
90 真空ポンプ
91 排気経路
92 排気制御バルブ
100 キャリアガス供給路
101 キャリアガス供給制御バルブ
W ウエハ
Claims (7)
- 酸を含む溶液を貯留し、酸を含む蒸気を発生させる酸蒸気発生槽と、
この酸蒸気発生槽にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、
処理対象の基板が収容される基板処理槽と、
酸を含む蒸気とキャリアガスとの混合ガスである処理ガスを、上記酸蒸気発生槽から上記基板処理槽に導く処理ガス供給路と、
この処理ガス供給路に介装され、開度調整の可能な圧力調整バルブと、
この圧力調整バルブの開度を調整することによって上記酸蒸気発生槽内の圧力を所定圧力に保持する圧力制御手段とを含むことを特徴とする基板処理装置。 - 上記処理ガス供給路に介装され、この処理ガス供給路を開閉して上記基板処理槽への処理ガスの供給を制御する処理ガス供給制御バルブをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
- 基板処理中に、上記基板処理槽を排気することによって、この基板処理槽内を減圧する減圧手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
- 上記所定圧力が、上記酸蒸気発生槽に貯留された酸を含む溶液中の酸と溶媒との共沸条件を満たす圧力に定められていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
- 上記キャリアガス供給手段からのキャリアガスを、上記酸蒸気発生槽を迂回して上記処理ガス供給路の上記圧力調整バルブよりも上流側に導くバイパス経路と、
上記酸蒸気発生槽と上記処理ガス供給路との間を遮断するための酸蒸気供給制御バルブと、
上記酸蒸気供給制御バルブを閉じた状態で、上記圧力制御手段により、上記圧力調整バルブよりも上流側の圧力が上記所定圧力になるように上記圧力調整バルブの開度が調整された後に、上記酸蒸気供給制御バルブを開くバルブ開閉制御手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。 - 酸を含む溶液を貯留した酸蒸気発生槽内で酸蒸気を発生させる工程と、
上記酸蒸気発生槽から酸を含む蒸気を処理ガス供給路を介して基板処理槽に導き、この基板処理槽内の基板を処理するステップと、
上記基板処理槽に酸を含む蒸気が導かれて基板の処理が行われている基板処理期間中において、上記処理ガス供給路に介装された圧力調整バルブの開度を制御することによって、上記酸蒸気発生槽内の圧力を上記基板処理槽とは独立して所定圧力に制御するステップとを含むことを特徴とする基板処理方法。 - 上記基板処理槽を排気することによって、この基板処理槽内を減圧するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6記載の基板処理方法。
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