JP3582468B2 - ワイヤ放電加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ワイヤ電極自動供給装置を備えたワイヤ放電加工装置に係り、特にワイヤ電極の自動結線の信頼性を向上させるワイヤ放電加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動制御装置を備えたワイヤ放電加工装置には、長時間の無人運転に備えてワイヤ電極(以下、ワイヤと称する。)の自動結線機能や自動修復結線機能を備えたものがある。
ワイヤの自動結線機能は、被加工物(以下、ワークと称する。)に対する一つの図形の加工が終了し、次の図形の加工が設定されているとき、ワイヤ放電加工装置が備えた制御装置の指令によって、結線された状態にあるワイヤを一旦切断し、ワイヤをワーク上の新たな加工開始孔位置に移動(実際はワークを移動して加工開始孔を移す)し、この加工開始孔に新たなワイヤを挿通して結線状態を構築する機能である。
また、自動修復結線機能は、一つの図形の加工中に何等かの理由でワイヤが切断(断線)した時、これを検知した制御装置の指令でワイヤの走行方向の上流側に残されたワイヤの先端部を切断して、この先端を加工中のワークの孔(または溝)に再び通して結線状態を修復する機能である。
【0003】
上記のように、ワイヤ放電加工装置は、長時間の無人運転に備えてワイヤの自動結線機能や自動修復結線機能を備えているが、何れにしても結線の為には、切断されたあと新たに繰り出されてくるワイヤを上部ガイド,ワーク,及び下部ガイドなど、ワイヤ通過上で障害となり得る部分をスムーズに挿通させ、ワイヤ経路末端のワイヤ巻き取りローラーとピンチローラー間まで到達させる必要がある。しかし、これらワイヤ挿通経路上のクリアランスの狭い部分で摩擦負荷が大きかったり、引っ掛かりがあるとワイヤは挿通経路上の一部で挫屈したり経路からはみ出すことがあり、ワイヤの送り出しが停止、即ち結線動作が機能しないといった問題が発生する。
【0004】
ワイヤ放電加工装置の給電体はワイヤに電力を供給するための電極であるが、加工中に安定した電力供給を維持する為に、ワイヤに給電体を押圧している必要がある。その為一般には、給電体はワイヤ経路上でワイヤにしごきを与える位置で接している。
【0005】
この給電体によってワイヤがワイヤ経路上でしごかれている為に、上記のワイヤ挿通経路上のクリアランスの狭い部分となり、結線動作でワイヤ挿通上の大きな負荷となり、結線動作を停止に導く要因の一つとなっていた。自動結線の不調は、連続運転の停止を意味し、作業上で大きな支障となる。逆に自動結線を確実且つ迅速に行うことは、生産性を向上し資源を節約することに繋がる。
上記の給電体によるワイヤ経路上での負荷低減として、ワイヤにしごきを与えるサブダイスガイド部分を移動させる手段が特開平7−24646号公報に開示されている。しかしながら、上記方法では加工中のワイヤ経路と自動結線時のワイヤ経路が異なる為、サブダイスガイド上方でのしごき部分での負荷が大きくなるといった問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記問題点を解決する為に成されたもので、自動結線機能、あるいは自動修復結線機能を有するワイヤ放電加工装置の結線動作において、ワイヤ挿通上の負荷を軽減し、結線の信頼性を向上させるワイヤ自動供給装置を備えたワイヤ放電加工装置を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係るワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極を自動供給するワイヤ自動供給装置を備えたワイヤ放電加工装置であって、前記ワイヤ電極の走行経路に沿って上下に移動可能なガイドパイプと、前記ワイヤ電極に接触し電力を供給する給電体と、前記ワイヤ電極の自動供給時に、前記給電体を少なくとも前記ワイヤ電極径分退避させる退避装置を備えたワイヤ放電加工装置において、
前記退避装置は、前記ガイドパイプの下降時の推進力により前記給電体を退避させる構成としたものである。
【0008】
第2の発明に係るワイヤ放電加工装置は、第1の発明に係る退避装置を、ワイヤ電極径により選択的に給電体を退避させる構成としたものである。
【0009】
第3の発明に係るワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極を自動供給するワイヤ自動供給装置を備えたワイヤ放電加工装置であって、前記ワイヤ電極の走行経路に沿って上下に移動可能なガイドパイプと、前記ワイヤ電極に接触し電力を供給する給電体と、前記ワイヤ電極の自動供給時に、前記給電体を少なくとも前記ワイヤ電極径分退避させる退避装置を備えたワイヤ放電加工装置において、
前記ガイドパイプの下降に伴う信号を前記退避装置に与えると共に、前記退避装置の退避制御を司る制御装置を備え、
前記退避装置を、ワイヤ電極径により選択的に給電体を退避させる構成としたものであることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1におけるワイヤ放電加工装置の構成について図1を用いて説明する。図1において、1はワイヤ、2は被加工物、3はワイヤ1を供給するワイヤボビン、4および5はワイヤ1の走行経路を変換するプーリ、6は張力制御装置、7は張力制御装置6が接続されたキャプスタンローラ、8および9はキャプスタンローラ7と一対であるピンチローラ、10はプーリ5とピンチローラ8間のワイヤ経路上にあるワイヤ1のたわみを吸収するたわみ取りプーリ、26および27はワイヤ1を拘束するガイドダイスである。11は上部ワイヤガイド、12は下部ワイヤガイド、13は被加工物2の上方から加工液を噴出する上部加工液ノズル、14は同様に被加工物2の下方から加工液を噴出する下部加工液ノズルであり、15は被加工物2の加工時に、下部ワイヤガイド12を通過したワイヤ1の走行方向を変換するローラ、16はガイドパイプ、17はワイヤ1を挟持し、ワイヤ1を巻き上げる巻き上げローラである。なお、100は後述する上部給電体30に駆動信号を与え、駆動力を付与する制御装置である。
【0011】
上記のように構成されたワイヤ放電加工装置において、ワイヤ1はワイヤボビン3から送り出され、プーリ4およびプーリ5によって方向変換され、たわみ取りローラ10、後述する張力制御部200、同じく後述するワイヤ自動供給装置本体300、上部ワイヤガイド11を通り、被加工物2との間で放電加工を行った後、下部ワイヤガイド12、ローラ15、ガイドパイプ16を通り、巻き上げローラ17によって巻き上げられ、回収箱(図示せず)に回収される。一方、加工液供給装置(図示せず)よりイオン交換水が高圧ポンプ(図示せず)により上部加工液ノズル13および下部加工液ノズル14に供給され、このイオン交換水は、上部および下部加工液ノズル13,14からワーク2の加工部に対してワイヤ1と同軸状に噴出される。
【0012】
張力制御部200は、張力制御装置6、ピンチローラ8、キャプスタンローラ7、ピンチローラ9から構成され、ピンチローラ8およびピンチローラ9はキャプスタンローラ7にワイヤ1が十分な摩擦力をもって接触することができるようにワイヤ1を押さえ込むローラである。なお、張力制御装置6は、ここでは例えばトルクモータを用い、加工時には、ワイヤ1の送り方向と反対方向に一定のトルクに制御されることにより、キャプスタンローラ7を介してワイヤ1を一定の張力に制御するものである。また、張力制御装置6のトルクモータにサーボモータを使用し、送り速度をタコジェネレータまたはロータリーエンコーダ等でフィードバックすることにより、自動結線時にはワイヤ1を送り出す方向あるいは巻き戻しを行う方向に一定速度になるようキャプスタンローラ7の回転を制御することができる。
【0013】
次に、ワイヤ自動供給装置本体300の構成について説明する。図1において、20はワイヤ自動供給装置本体300内のワイヤ1の挿通経路を拘束するガイドパイプ、21はガイドパイプ20を空気圧により上下に昇降させるリニアシリンダ、22は上部ワイヤガイド11からワーク2の加工開始穴、下部ワイヤガイド12までの間のワイヤ1の挿通を拘束するための流体柱、例えば水柱を形成させるジェットノズルである。ワイヤ自動結線動作が開始されると、後述する切断通電部にあるワイヤ1の先端が、一定速度で回転制御されるキャプスタンローラ7により送り出される(図1中では右回転)。同時にガイドパイプ20が下降して、ガイドパイプ20の先端が上部ワイヤガイド11の近傍に達する機構となっている。前記キャプスタンローラ7の送り出しにより、ワイヤ1の先端は、ガイドパイプ20の中を通過し、上部ワイヤガイド11、ジェトノズル22を通過した後はワーク2の加工開始穴を通り、下部ワイヤガイド12に達するまではジェットノズル22から噴出された流体、例えば水によって拘束される。さらに、ローラ15によってほぼ90度に方向変換された後、回収パイプ16内を通り、巻き上げローラ17に達した際に自動結線が完了する。
【0014】
ところで、ワイヤ自動供給装置には、自動結線の機能に加えて、ワイヤ断線時および加工終了時に自動的にワイヤ電極1を切断する自動切断の機能を有するのが一般的で、23はその切断通電部、24は切断用キャプスタンローラ、25は切断用ピンチローラである。キャプスタンローラ7と切断用キャプスタンローラ24および切断用ピンチローラ25との間で張力を与えながら、切断通電部23の一対の給電体間に電流を流すことにより、切断通電部23の近傍でワイヤ1を溶断する。溶断後、切断通電部23から下方に残ったワイヤ1の切りかすは、前記切断用キャプスタンローラ24およびピンチローラ25並びに巻き上げローラ17により上部ワイヤガイド11および加工部から排出される。
【0015】
次に、この発明の実施の形態1における給電体可動機構について、図2を用いて説明する。図2において30は上部給電体、31は上部ガイドブロック、32はシリンダ、33は第1のサブガイド、34は第2のサブガイド、35はばねである。図中、ガイドパイプ20は通常リニアシリンダ21により上限に位置し、ガイドパイプ20と上部ガイドブロック31の間でワイヤ1を拘束していない。これは前記切断通電部との干渉を防ぐなどの為であるが、自動結線工程においては、ガイドパイプ20はリニアシリンダ21により下方に移動し、上部ガイドブロック31との間でワイヤ1を拘束する。ガイドパイプ20の下限位置は第1のサブガイド33に押し当てられることにより決定する。第1のサブガイド33も上部ガイドブロック31の中で上下に移動可能で、ばね35により通常は上部ガイドブロック31の上限に位置する。
【0016】
一方、放電加工を行う際には図3(1)に示すように、ワイヤ1に電力を供給する為に、上部給電体30はシリンダ32によりワイヤ1に押し当てられている。上部給電体30がワイヤ1に対し一定の角度で接する為に、上部給電体30の上下には第1のサブガイド33と第2のサブガイド34がそれぞれワイヤ1を拘束している。
【0017】
次に、自動結線工程における給電体可動機構の動作について説明する。図3(2)において上部給電体30は側方から力を受けることにより水平方向に移動可能な構造である。先ず、制御装置により上部給電体30を上部ガイドブロック31の内面(図3(2)では左方)に押し当てていたシリンダ32を納める。これにより上部給電体30は側方からの力から開放される。そしてリニアシリンダ21を駆動し、ガイドパイプ20を下げて第1のサブダイス33に押し当てる。(図3(3)参照)
第1のサブダイス33はそれまで上部ガイドブロック31の上限に位置していたが、ガイドバイプ20により上方から力を受けると、ばね35は縮み上部ガイドブロック31内に押し込められる。これに連鎖して第1のサブダイス33の底面にある突起が上部給電体30に衝突するが、上部給電体30は水平方向のみに移動可能であり、第1のサブダイス33の突起が接触する面は図の通りRを成している為に、上部給電体30が上方から受けた力は水平方向に変換され、シリンダ32の方向(図3(3)では右方)へ押し戻される。(図3(4)参照)
ガイドパイプ20がリニアシリンダ21により下限にある限り、第1のサブガイド33と第2のサブガイド34との間にワイヤ挿通の障害がなく、円滑にワイヤ1が通過可能な状態となる。
【0018】
上記の状態でワイヤ1がキャプスタンローラ7により送り出され、上部ワイヤガイド11、被加工物2、下部ワイヤガイド12、下部ローラ15の順に挿通されてワイヤ回収機構17に到達した際、今度は先ずリニアシリンダ21を先程とは逆方向に駆動し、ガイドパイプ20を上限に位置する。すると上方からの力が解放された第1のサブダイス33は、ばね35により再びこれも上限に復帰する。(図3(2)参照)
続いて一定の時間をおいてシリンダ32を駆動して、上部給電体30をワイヤ経路に張り出させ、放電加工可能な状態をとる。(図3(1)参照)
【0019】
実施の形態2.
次に図1〜図3を用いて実施の形態3について説明する。図1〜図3において、上部給電体30がワイヤ経路から退避すると、上部ガイドブロック31の内面と上部給電体30の間に隙間が広がるので、特に細い径のワイヤ1を使用する場合にはワイヤ1に元々存在する若干の湾曲により、自動結線工程のワイヤ送り出しの際に、ワイヤ1の先端がこの隙間に引っかかり、逆にワイヤ挿通の支障となることがある。そこで制御装置100によりシリンダ32を所定のワイヤ1を使用する時のみ、選択的に駆動してもよい。この場合、シリンダ32の押圧力を開放しないようにして上部給電体30を上部ガイドブロック31の内面に押圧したまま自動結線を行う。リニアシリンダ21が駆動してガイドパイプ20が下方に移動し、第1のサブダイス33に上方から力が加わった際、このサブダイス33の底面にある突起は上部給電体30に衝突するものの下限まで移動できない。これは構造上、上部給電体30の移動可能な水平方向の力を付与するシリンダ32の押圧力が、ガイドパイプ20による下向きに受けた力に基づき上部給電体30を側方へ退避させようとする第1のサブダイス33の押圧力より大きくなるように構成されているためである。つまり制御装置により、所定のワイヤ1を使用する時のみ選択的に上部給電体30の退避を行うことができる。
【0020】
実施の形態3.
次に図4を用いて実施の形態3について説明する。図4において、36は上部給電体30に固定されたホルダー、37はシリンダ32のロッドの先端に固定された押え板である。放電加工を行う際には、シリンダ32が伸びて押え板37は上部給電体30をワイヤ1に押圧している。一方自動結線工程では、制御装置100の出力信号に基づいてシリンダ32を縮め、これにより押え板37は上部給電体30から離間するが、押え板37の上部はホルダー36と連結している為に上部給電体30共々側方(ワイヤ電極とは反対方向)へ退避する。即ち、ガイドパイプ20の下降する推進力を利用しないで上部給電体30を退避させる機構である。
なお、この実施の形態3においても、前記実施の形態2で説明したと同様に、制御装置により、所定のワイヤ1を使用する時のみ選択的に上部給電体30の退避を行うことができることは言うまでもない。
【0021】
実施の形態4.
上記各実施の態様においては、上部加工液ノズル13から下部加工液ノズル14に向ってワイヤ1を挿通する場合について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じて下部加工液ノズル14から上部加工液ノズル13に向ってワイヤ1を挿通する場合にも適用できることは勿論である。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明のワイヤ放電加工装置は、ワイヤ経路の直線状に張り出している給電体が、ガイドパイプの下降時の推進力により、ワイヤ経路から離れる方向へ移動し、ワイヤガイドを含むワイヤを拘束する部品全てが同一直線状に並ぶことを実現し、ワイヤ挿通負荷がを軽減でき、自動結線の信頼性を高めることが可能となる。
【0023】
第2の発明のワイヤ放電加工装置は、前記第1の発明の効果に加え、退避装置を、ワイヤ径により選択的に給電体を退避させる構成にすることにより、自動結線工程において給電体の退避によって生じる隙間に、ワイヤの持つ湾曲等に基づきワイヤ先端が引っ掛かることを防止し、自動結線の信頼性を向上させることができる。
【0024】
第3の発明のワイヤ放電加工装置は、制御装置により、使用するワイヤに応じて給電体の退避を選択可能としたので、自動結線工程において給電体の退避によって生じる隙間に、ワイヤの持つ湾曲等に基づきワイヤ先端が引っ掛かることを防止し、自動結線の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】この発明の一実施例の要部を示す断面図である。
【図3】この発明の一実施例の動作を示す断面図である。
【図4】この発明の他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ電極、20 ガイドパイプ、30 上部給電子、31 上部ガイドブロック、32 シリンダ、33 第1のサブダイス、34 第2のサブダイス。
Claims (3)
- ワイヤ電極を自動供給するワイヤ自動供給装置を備えたワイヤ放電加工装置であって、前記ワイヤ電極の走行経路に沿って上下に移動可能なガイドパイプと、前記ワイヤ電極に接触し電力を供給する給電体と、前記ワイヤ電極の自動供給時に、前記給電体を少なくとも前記ワイヤ電極径分退避させる退避装置を備えたワイヤ放電加工装置において、
前記退避装置は、前記ガイドパイプの下降時の推進力により前記給電体を退避させるものであることを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 退避装置は、ワイヤ電極径により選択的に給電体を退避させるものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工装置。
- ワイヤ電極を自動供給するワイヤ自動供給装置を備えたワイヤ放電加工装置であって、前記ワイヤ電極の走行経路に沿って上下に移動可能なガイドパイプと、前記ワイヤ電極に接触し電力を供給する給電体と、前記ワイヤ電極の自動供給時に、前記給電体を少なくとも前記ワイヤ電極径分退避させる退避装置を備えたワイヤ放電加工装置において、
前記ガイドパイプの下降に伴う出力信号を前記退避装置に与えると共に、前記退避装置の退避制御を司る制御装置を備え、
前記退避装置は、ワイヤ電極径により選択的に給電体を退避させるものであることを特徴とするワイヤ放電加工装置。
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