JP3581670B2 - 血糖上昇抑制食品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖尿病や肥満症などを予防するための血糖上昇抑制食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
国内における糖尿病患者は急激に増加する傾向にあり、1997年の厚生省の実態調査によれば、その患者数は690万人であり、また、糖尿病と健康との境界線にあたる予備群を含めると、その数は1370万人にもなる。これらの患者は、血糖や血清インスリンなどの濃度が特に食後において上昇して異常値を示す。従って、これら血糖や血清インスリンなどの濃度が上昇しないように抑制しコントロールする方法として、炭水化物の消化吸収阻害が考えられており、実際に、α−グルコシダーゼ阻害薬(α−glucosidase阻害薬、α−GI)が血糖の濃度の上昇を抑える血糖上昇抑制剤として用いられている。このようなα−GIは血糖上昇抑制剤として用いられるほかに、膵臓B細胞の疲弊を防止し、さらにはインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)の発症予防につながることが期待されているものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、糖尿病や肥満症などを予防する目的で、日常的に手軽に摂取または飲食することができるものが望まれていた。
【0004】
本発明は、血糖の濃度の上昇を抑えるのに有効で、しかも人体に対して安全である血糖上昇抑制食品を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る血糖上昇抑制食品は、ツユクサに含まれている1−デオキシノジリマイシンと2,5−ジハイドロオキシメチル3,4−ジハイドロオキシピロリジンを有効成分とすることを特徴とするものであり、ツユクサに含まれている1-deoxynojirimycin(1−デオキシノジリマイシンであって、以下、DNJと略することがある)と2,5-dihydroxymethyl3,4-dihydroxypyrrolidine(2,5−ジハイドロオキシメチル3,4−ジハイドロオキシピロリジンであって、以下、DMDPと略することがある)によりα−グルコシダーゼ(α−glucosidase)の活性を阻害することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明の血糖上昇抑制食品はツユクサ科(Commelinaceae)の植物であるツユクサ(Commelina communis)とオオボウシバナ(C.communis var.hortensis)の一方あるいは両方の植物体の全草(茎、葉、根などの各種部位)をそのままあるいは乾燥した後、粉末に粉砕したものを主成分とするものである。また、本発明の血糖上昇抑制食品はツユクサとオオボウシバナの植物体の各種部位をそのままあるいは乾燥し、必要に応じて粉砕した後、水や熱水及び/又はエチルアルコール等のアルコールなどの溶媒で抽出したものを主成分とするものである。ツユクサとオオボウシバナには主活性成分として下記の化学式で示される1-deoxynojirimycin(DNJ)と2,5-dihydroxymethyl3,4-dihydroxypyrrolidine(DMDP)の二つの化合物が含まれている。
【0011】
【化1】
Figure 0003581670
そして、本発明の血糖上昇抑制食品はツユクサやオオボウシバナの粉砕物あるいは抽出液に含まれている上記二つの化合物により二糖類の分解酵素であるα−グルコシダーゼの活性を阻害することができ、血糖の上昇を抑えることができるものである。DNJとDMDPはそれぞれ単独でα−グルコシダーゼの活性を阻害することは知られているが、ツユクサとオオボウシバナ(及び抽出液)はそれぞれDNJとDMDPの両方を約1:1で同時に含むものであり、従って、DNJとDMDPの相乗効果により高いα−グルコシダーゼの活性阻害効果を得ることができるものである。しかも、DNJとDMDPをそれぞれ別々の物質から得た場合、これらを併用しようとすると混合する必要があるが、本発明ではこのような混合の手間が必要ないものである。
【0012】
本発明は上記のツユクサやオオボウシバナの粉砕物そのものあるいは抽出物そのものを血糖上昇抑制食品とすることができる。また、本発明の血糖上昇抑制食品はツユクサやオオボウシバナの粉砕物や抽出物を既知の飲食品類などの他の成分に添加して形成することができる。他の成分としては、例えば、口腔用組成物(ガム、キャンデーなど)やかまぼこ、ちくわなどの加工水産ねり製品、ソーセージ、ハムなどの畜産製品、洋菓子類、和菓子類、生めん、中華めん、ゆでめん、ソバなどのめん類、ソース、醤油、タレ、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめなどの調味料、カレー粉、からし粉、コショウ粉などの香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、漬物、そう菜、ふりかけや、各種野菜・果実の缶詰・瓶詰など加工野菜・果実類、チーズ、バター、ヨーグルトなど乳製品、みそ汁、スープ、果実ジュース、野菜ジュース、乳清飲料、清涼飲料、酒類などの飲料、茶葉、その他、健康食品など一般的な飲食品類への使用を例示することができる。また、本発明の血糖上昇抑制食品は既知の賦形材やカプセル材を用いて各種の内用・外用製剤類(動物用に使用する製剤も含む)のように、アンプル状、カプセル状、丸剤、錠剤状、粉末状、顆粒状、固形状、液状、ゲル状或いは気泡性のように形成しても良い。尚、抽出物は抽出液に溶解された状態で用いても良いし、抽出液から溶媒を除去して得られる結晶体の状態で用いても良い。また、ツユクサやオオボウシバナの粉砕物や抽出物を既知の飲食品類に添加したり既知の賦形材やカプセル材を用いる場合、ツユクサやオオボウシバナの粉砕物や抽出物の使用量は任意であるが、60kgの成人において上記の二つの主活性成分の一回当たりの摂取量の合計が1〜40mgとなるように血糖上昇抑制食品に含有させるのが好ましく、これにより、本発明の血糖上昇抑制食品よる血糖上昇抑制を効果的に得ることができるものである。
【0013】
オオボウシバナの抽出物は、溶媒を用いてオオボウシバナの植物体の全草(茎、葉、根などの各種部位)を直接抽出する方法で得ることができる。抽出に用いる溶媒としては水やアルコールを用いることができ、アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を用いることができる。また、これらの溶媒を任意の比率で混合した混合溶媒を用いることもできる。上記の溶媒の中でも、水、エタノール、または水とエタノールの混合溶媒を用いるのが好ましく、水とエタノールの混合溶媒を用いる場合は、その混合比率を通常、アルコール濃度で5〜95%、好ましくは70%にするのが最適である。溶媒はオオボウシバナ1gに対して3〜200ミリリットル、好ましくは5〜30ミリリットル配合して抽出を行うようにする。
【0014】
抽出に際しては、オオボウシバナを適当な大きさ(10〜20mm)に細切に切断することが好ましい。抽出方法は、オオボウシバナの粉砕物と溶媒の混合物を80〜90℃で3時間程度加熱し、この後、還流法で抽出することが好ましいが、上記加熱後に静置により抽出してもよい。次に、冷却後ろ過し、そのろ液を減圧下で45℃以下の温度で完全に溶媒を留去し、乾燥エキスとして抽出物を得ることができる。
【0015】
また、本発明の血糖上昇抑制食品はこの抽出物を溶媒に溶解した状態のままで使用しても良いし、粗画分として得られるものを使用しても良い。しかしながら、上記のような抽出により得られる抽出物は上記の二つの主活性成分の含量が少なく、血糖の上昇抑制に寄与しない不純物も多い。そこで、上記の抽出により得られる抽出物から水溶性塩基性画分を分離精製して分画し、この水溶性塩基性画分を本発明の血糖上昇抑制食品として用いるのが好ましく、これにより、DNJとDMDPの含有量(濃度)が高い血糖上昇抑制食品を調製することができる。水溶性塩基性画分を分画するにあたっては既知の方法を採用することができ、例えば、陽イオン交換樹脂を備えるクロマトグラフィーを用いておこなうことができる。
【0016】
ここで、ツユクサ及びオオボウシバナと他のツユクサ科植物とのα−グルコシダーゼ阻害活性を比較する。まず、ツユクサ科植物として、ツユクサ、オオボウシバナ、イボクサ(Aneilema Keisak)、ムラサキオモト(Rhoeo discolor)、ヤブミョウガ(Polliajaponica)、オオムラサキツユクサ(Tradescantia virginiana)、シロフハカタカラクサ(T.viridis)、ノハカタカラクサ(トキワツユクサ)(T.flumiensis)、ブライダルベル(Tripogandra multiflora)を用意した。
【0017】
次に、図1に示す手順に従ってサンプルを調製した。すなわち、乾燥させた上記のツユクサ科植物の全草を適当な大きさに切断し、切断したツユクサ科植物の全草50g(乾燥重量)を水2リットルに入れて加熱して1時間の熱水抽出を行い、抽出液を濾過して得た。次に、抽出液を弱酸性陽イオン交換樹脂(Amberlite CG-50)を固相として用いたカラムクロマトグラフィーで処理した。この時の抽出液の温度は室温、抽出液の流速は40〜60ミリリットル/分でカラム中に流下させた。次に、上記の弱酸性陽イオン交換樹脂を水で洗浄した後、次に、弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着した成分を濃度2.8%のアンモニア水で溶出し、この溶出液を濃縮して粗塩基性画分を得た。次に、粗塩基性画分を水に溶解してサンプルとした。
【0018】
そして、上記の各ツユクサ科植物から得られたサンプルのα−グルコシダーゼに対する阻害率をジニトロサリチル酸(DNS)法により求めた。DNS法は以下の[化2]に示すような反応を用いるものである。
【0019】
【化2】
Figure 0003581670
DNS法は図2に示すようにして行う。すなわち、まず、(1)25マイクロリットルのサンプルに濃度50mMでpH7.0のリン酸緩衝液(phosphate buffer)を200マイクロリットル加えて37℃で5分間加温した。次に、サンプルを混入した緩衝溶液に基質溶液(濃度100mMのショ糖水溶液)を175マイクロリットル加えて37℃で5分間加温した。次に、(2)この溶液に酵素溶液(100マイクロリットルのα−グルコシダーゼ溶液)を加えて37℃で30分間反応した。(尚、α−グルコシダーゼ溶液は酵素標準品(Saccharomyces sp.由来)を濃度10mMでpH7.0のリン酸緩衝液で1mg/ミリリットルに溶解し、同緩衝液で約40倍に希釈したものを用いた。)次に、(3)α−グルコシダーゼ溶液を加えた溶液にDNS溶液を加えて100℃で10分間反応した。(尚、DNS溶液は水1リットルに対して、3,5-dinitrosalicylic acid(DNS)を1%、酒石酸カリウムを5%、NaOHを1%、フェノールを0.2%、NaSOを0.05%の割合で溶解した溶液を用いた。)そして、(4)DNS溶液を加えた溶液を水で3倍に希釈した後、540nmにおける3−アミノ−5−ニトロサリチル酸の光学濃度を測定(ODsample)し、以下の式で阻害率を算出した。
阻害率(%)=100-(ODsample-ODblank)/(ODcontrol-ODblank)×100
ODcontrolは(1)の操作でサンプルの代わりにHOで反応を行ったときの光学濃度、ODblankは(2)の操作で酵素溶液の代わりに緩衝液を加えて行ったときの光学濃度をそれぞれ示す。
【0020】
上記の各ツユクサ科植物の阻害率を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003581670
表1から明らかなように、ツユクサやオオボウシバナから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分は他のツユクサ科植物から得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分よりも阻害率が高く、従って、本発明ではツユクサ科植物の中でもツユクサやオオボウシバナを用いるのである。
【0022】
また、オオボウシバナから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分の同定を行った。まず、図3に示す方法で成分1、2を得た。すなわち、乾燥させたオオボウシバナの全草を適当な大きさに切断し、切断したオオボウシバナの全草1.2kg(乾燥重量)を水40リットルに入れて加熱して1時間の熱水抽出を行い、抽出液を濾過して得た。次に、抽出液を弱酸性陽イオン交換樹脂(Amberlite CG-50)を固相として用いたカラムクロマトグラフィーで処理した。この時の抽出液の温度は室温、抽出液の流速は40〜60ミリリットル/分でカラム中に流下させた。次に、上記の弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着した成分を濃度2.8%のアンモニア水で溶出し、この溶出液の溶媒を除去することによって粗塩基性画分を得た。次に、粗塩基性画分を水に溶解し、この粗塩基性画分溶液を0.2MでpH5.7のギ酸アンモニウム緩衝液で緩衝化させた強酸性陽イオン交換樹脂(DOWEX 50WX4)を固相として用いたカラムクロマトグラフィーで処理した。この時、粗塩基性画分溶液の温度は室温、粗塩基性画分溶液の流速は10ミリリットル/分でカラム中に流下させた。
【0023】
次に、上記の強酸性陽イオン交換樹脂に吸着した成分を0.28%アンモニア水(1→100)で溶出し、溶出液の溶媒を除去することによって、0.28%アンモニア水溶出画分を得た。そして、上記の0.28%アンモニア水溶出画分を高速液体クロマトグラフィー(HPLC,Asahipak NHP,80%CHCN)で処理して成分1と成分2を得た。この成分1と成分2を核磁気共鳴分光法(H−NMRspectrum(DO))で解析した。結果を図4、図5に示す。
【0024】
成分1は図4のようなH−NMRスペクトルを示し、各シグナルは化学シフトの値、カップリング定数、H−HCOSYスペクトル、H−13CCOSYスペクトルの解析結果を統合して、低磁場側から3位と4位の水素(2H相当)、ヒドロキシメチル基の水素(4H相当)、2位と5位の水素(2H相当)に帰属することができた。
【0025】
成分2は図5のようなH−NMRスペクトルを示し、成分1と類似の解析結果を統合して、各シグナルを図に示したように帰属することができた。
【0026】
成分1はDMDPであり、色のない粉体であった。また、次のような性質を示すものであった。
ニンヒドリン反応:positive(orange)
SI−MS(質量スペクトル):m/z164(M+1)であり、分子量が163で分子式がC13NOであることを意味する。
[α]+74.0°(c=0.07,HO)であり、この値は天然由来のDMDP固有の値であって、合成DMDPではないことを示している。
【0027】
また、成分2はDNJであり、色のない粉体であった。また、次のような性質を示すものであった。
ニンヒドリン反応:positive(yellow)
SI−MS(質量スペクトル):m/z164(M+1)であり、分子量が163で分子式がC13NOであることを意味する。
[α]−30.5°(c=0.10,HO)であり、この値は天然由来のDNJ固有の値であって、合成DNJではないことを示している。
【0028】
また、オオボウシバナから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分中のDNJとDMDPの定量を行った。まず、図6に示す方法でHPLC用サンプルを得た。すなわち、恒量にしたオオボウシバナの粉末500mgを精秤し、50%CHCNを10ミリリットル正確に加え、20分間超音波抽出した。次に、以下の分析の前処理として、HPLCのカラムの保護のため、同じ中身の樹脂に一度通して共稚物を取り除いた(SeppakNH(Waters))。次に、ゴミなどにより配管等を詰まらせないために、ろ過(0.22μm)を行った。このようにして高速液体クロマトグラフィー用のサンプルを調製した。このサンプルを用いて高速液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を行った。LC/MS条件は次の通りである。
カラム:Asahipak NHP,4.6mmi.d×250mm
移動相:75%CHCN
流速:0.8ミリリットル/min
カラム温度:25℃
注入量:5マイクロリットル(カット注入)
検出:イオントラップ型質量分析計
イオン化:大気圧化学イオン化法(APCI)
極性:ポジティブ
噴霧器温度:180℃
脱溶媒室温度:350℃
第一細孔温度:120℃
第二細孔温度:120℃
ニードル電圧:3.00kV
ドリフト電圧:100V
フォーカス電圧:30V
上記のLC/MS分析の結果を図7にグラフで示す。尚、グラフ中のオオボウシバナ1は草津市内で栽培したもの、オオボウシバナ2は大阪薬科大学の薬用植物園で栽培したもの、オオボウシバナ3はオオボウシバナ1の根部である。ツユクサ科植物のツユクサの結果も併記する。
【0029】
図7から明らかなように、ツユクサ及びオオボウシバナには約0.02〜0.06%のDMDPとDNJが含有されている。
【0030】
また、図8に示すように、上記のオオボウシバナの場合と同様にしてツユクサから得られる成分1、2を得て、ツユクサから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分の同定を行った。そして、オオボウシバナの場合と同様にして成分1と成分2を核磁気共鳴分析法(H−NMRspectrum(DO))で分析した。結果を図9に示す。上記のオオボウシバナの場合と同様に、成分1はDMDP、成分2はDNJであり、それぞれオオボウシバナの場合と同様の性質を示した。
【0031】
また、図10に示すように、上記のオオボウシバナの場合と同様にしてツユクサから得られる熱水抽出物のHPLC用サンプルの作成し、ツユクサから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分中のDNJとDMDPの定量を行った。LC/MS条件は上記のオオボウシバナの場合と同様である。
【0032】
上記のLC/MSによる定量分析の結果を図11にグラフで示す。尚、グラフ中のツユクサ1、2、3は野生品(高槻市周辺)で栽培したもの、ツユクサ4は大阪薬科大の薬用植物園で栽培したもの、ツユクサ5はツユクサ4において葉にふ模様のあるものである。
【0033】
図11から明らかなように、オオボウシバナには約0.02〜0.12%のDMDPとDNJが含有されている。
【0034】
図12にDMDP及びDNJ標準溶液による検量線をグラフで示す。標準溶液1はDMDPを75ppmとDNJを75ppmそれぞれ含むものである。また、標準溶液2はDMDPを150ppmとDNJを150ppmそれぞれ含むものである。また、注入量は5マイクロリットルとした。図12から明らかなように、相関係数が0.997以上の良好な検量線が得られている。
【0035】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0036】
(実施例1)
乾燥したツユクサを適当な大きさに切断粉砕して得られた粉砕物を血糖上昇抑制食品とした。
【0037】
参考例1
ツユクサの代わりに、乾燥したオオボウシバナを用いた以外は実施例1と同様にして血糖上昇抑制食品を製造した。
【0038】
(実施例
ツユクサの代わりに、乾燥したツユクサと乾燥したオオボウシバナを1:1で混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして血糖上昇抑制食品を製造した。
【0039】
(実施例
ツユクサを適当な大きさに切断し、切断したツユクサ15g(乾燥重量)を水に入れて加熱して1時間の熱水抽出を行い、抽出液を濾過して得た。次に、抽出残渣に1リットルの水を加え、上記と同様の熱水抽出を行った。この後、さらに抽出残渣に1リットルの水を加え、上記と同様の熱水抽出を行った。そして、3回の熱水抽出で得た抽出液を合わせて血糖上昇抑制食品を製造した。
【0040】
参考例2
ツユクサの代わりに、乾燥したオオボウシバナを用いた以外は実施例と同様にして血糖上昇抑制食品を製造した。
【0041】
(実施例
ツユクサの代わりに、乾燥したツユクサと乾燥したオオボウシバナを1:1で混合したものを用いた以外は実施例と同様にして血糖上昇抑制食品を製造した。
【0042】
(実施例
図13に示す方法で水溶性塩基性画分を得た。ツユクサを適当な大きさに切断し、切断したツユクサ15g(乾燥重量)を水に入れて加熱して1時間の熱水抽出を行い、抽出液を濾過して得た。次に、抽出残渣に1リットルの水を加え、上記と同様の熱水抽出を行った。この後、さらに抽出残渣に1リットルの水を加え、上記と同様の熱水抽出を行った。
【0043】
次に、上記3回の熱水抽出で得た抽出液を合わせ、弱酸性陽イオン交換樹脂(Amberlite CG-50)を固相として用いたカラムクロマトグラフィーで処理した。この時の抽出液の温度は室温、抽出液の流速は40〜60ミリリットル/分で、抽出液を3時間かけてカラム中に流下させた。
【0044】
次に、上記の弱酸性陽イオン交換樹脂に吸着した成分を濃度2.8%のアンモニア水で溶出し、この溶出液の溶媒を除去することによって110mgの粗塩基性画分を得た。次に、粗塩基性画分を水に溶解し、この粗塩基性画分溶液をpH5.7のギ酸アンモニウム緩衝液で緩衝させた強酸性陽イオン交換樹脂(DOWEX 50WX4)を固相として用いたカラムクロマトグラフィーで処理した。この時、粗塩基性画分溶液の温度は室温、粗塩基性画分溶液の流速は10ミリリットル/分で、粗塩基性画分溶液を3時間かけてカラム中に流下させた。
【0045】
次に、上記の強酸性陽イオン交換樹脂に吸着した成分を水と濃度0.28%のアンモニア水と濃度2.8%のアンモニア水で順次溶出し、各溶出液の溶媒を除去することによって、70mgの水溶出画分と、20mgの0.28%アンモニア水溶出画分と、10mgの2.8%アンモニア水溶出画分を得た。
【0046】
そして、上記の0.28%アンモニア水溶出画分を血糖上昇抑制食品とした。
【0047】
参考例3
ツユクサの代わりに、オオボウシバナを用いた以外は実施例と同様にして血糖上昇抑制食品を製造した。
【0048】
(実施例
ツユクサの代わりに、ツユクサとオオボウシバナを1:1で混合したものを用いた以外は実施例と同様にして血糖上昇抑制食品を製造した。
【0049】
(比較例1)
アルガボースを血糖上昇抑制剤とした。
【0050】
(比較例2)
ボグリボースを血糖上昇抑制剤とした。
【0051】
(阻害活性試験)
実施例4〜6と参考例1〜3及び比較例1、2について、α−グルコシダーゼの阻害活性試験を図2に示す上記のDNS法に準じて行った。
【0052】
α−グルコシダーゼの阻害活性試験の結果をIC50値として表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0003581670
(血糖上昇抑制試験)
実施例1〜6と参考例1〜3の血糖上昇抑制試験としてスクロース負荷試験を以下のようにして行った。
【0054】
動物はddYマウス♂7週令(一群5匹)を用いた。負荷糖としてはsucrose(スクロース)を用いた。
【0055】
そして、一晩絶食したマウス(一群5匹)の空腹時血中グルコース濃度を測定した後、マウスに負荷糖を4g/kg強制経口投与すると共に、負荷糖を投与したマウスの一群に実施例1〜6と参考例1〜3をそれぞれ別々に強制経口投与した。また、比較のために、負荷糖を投与したマウスのある一群にDNJを10mg/kg強制経口投与し、別の一群にDMDPを10mg/kg強制経口投与した。また、対照のために、負荷糖を投与したマウスのある一群に脱イオン水を20mg/kg強制経口投与した。そして、実施例等を投与した後、30分後に尾静脈から採血し、血中のグルコース濃度を測定して血糖値とした。測定方法はキットによるグルコースオキシターゼ法(ロート製薬)である。スクロース負荷試験の結果を図14に示す。尚、図14において、blankは負荷糖や実施例等を与えなかったもの、controlは脱イオン水を与えたもの、normalは負荷糖のみを与えたものをそれぞれ示す。
【0056】
尚、実施例1〜4及び参考例1、2の投与量は200mg/kgとし、実施例5、6及び参考例3の投与量は50mg/kgとした。
【0057】
本発明は材料の入手が容易で、自然環境保全にも寄与する植物であること、及び図14から明らかなように、実施例1〜6と参考例1〜3はDNJ単独及びDMDP単独の約100分の1に相当する量で、それらに相当する血糖低下作用を示すものであり、従って、食品材料等として使用するのに安全性が高く、使用量を適量に制御し易いものである。
【0058】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、ツユクサに含まれている1−デオキシノジリマイシンと2,5−ジハイドロオキシメチル3,4−ジハイドロオキシピロリジンを有効成分とすることを特徴とするものであり、ツユクサに含まれている1-deoxynojirimycinと2,5-dihydroxymethyl3,4-dihydroxypyrrolidine(DMDP)によりによりα−グルコシダーゼの活性を阻害することができ、血糖の濃度の上昇を抑えるのに有効であり、しかも天然の植物を用いることによって、人体に対して安全なものであり、また、食事等で日常的に手軽に摂取または飲食して血糖の上昇を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】α−グルコシダーゼ阻害活性試験のサンプルの調製方法を示す説明図である。
【図2】DNS法を示す説明図である。
【図3】オオボウシバナから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分1、2の調製方法を示す説明図である。
【図4】オオボウシバナから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分1に関する核磁気共鳴分析の結果を示すグラフである。
【図5】オオボウシバナから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分2に関する核磁気共鳴分析の結果を示すグラフである。
【図6】HPLC用サンプルの調製方法を示す説明図である。
【図7】LC/MSによる定量分析の結果を示すグラフである。
【図8】ツユクサから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分1、2の調製方法を示す説明図である。
【図9】ツユクサから得られる熱水抽出物の水溶性塩基性画分の成分1、2に関する核磁気共鳴分析の結果を示すグラフである。
【図10】HPLC用サンプルの調製方法を示す説明図である。
【図11】LC/MSによる定量分析の結果を示すグラフである。
【図12】DMDP及びDNJ標準溶液による検量線を示すグラフである。
【図13】実施例5の調製方法を示す説明図である。
【図14】実施例及び比較例のスクロース負荷試験の結果を示すグラフである。

Claims (1)

  1. ツユクサに含まれている1−デオキシノジリマイシンと2,5−ジハイドロオキシメチル3,4−ジハイドロオキシピロリジンを有効成分とすることを特徴とする血糖上昇抑制食品。
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