JP3580623B2 - 熱可塑性樹脂によるフラッパー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂製フラッパーに関するものであり、さらに詳しくは寸法精度が良好で、生産性に優れ、軽量化され、さらにリサイクル性にも優れた熱可塑性樹脂製フラッパーに関する。
【0002】
【従来の技術】
フラッパーは電気・電子分野、特にOA分野の機構部品として幅広く用いられている。そして、成形性が良く、軽量で、しかも錆びないという理由から各種の樹脂がフラッパーに応用され、近年ますますその利用が拡大している。従来、このようなフラッパーは軸に金属シャフトを用いて熱可塑性樹脂によるインサート成形により製品を得ている。図4〜6に図示する。
【0003】
このような方法を用いるのは、熱可塑性樹脂により軸部と爪部を一体成形すると、通常の射出成形では成形時の収縮により成形品にソリが発生してしまうので成形品が曲がってしまい、寸法精度の良いものが得られないためである。このため、軸に金属シャフトを用いて爪部のみを樹脂でインサート成形している。この様な方法によれば、結果として曲がりの少ない製品が得られる。
【0004】
しかしながら、この方法ではインサート成形時に金属シャフトを金型中にセットする工程が必要であり、樹脂のみの射出成形と比較すると生産性に劣る。また、金属を軸に用いるので部品が重くなる。更に最近社会問題となっている環境問題を考慮すると、部品が金属と樹脂の一体物なので、材料のリサイクルの際に金属と樹脂の分離が困難であるという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、寸法精度が良好で、生産性に優れ、軽量化され、さらにリサイクル性にも優れた熱可塑性樹脂製フラッパーを提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すかわち、本発明は、軸部と爪部が熱可塑性樹脂により一体成形され、かつ内部に中空部を有することを特徴とする熱可塑性樹脂製フラッパーである。
中空部が、次式(1)で定義される関係を満足することが好ましく、又、次式(2)で定義される関係を満足することが好ましい熱可塑性樹脂製フラッパーである。
【0007】
0.9≦L(b)/L(a)≦1 (1)
[式(1)において、L(a)はフラッパーの軸線に沿った全長を示し、そしてL(b)は該中空部の、フラッパーの軸線に沿った長さを示す。]
10≦Vh≦50 (2)
[式(2)において、Vhは該熱可塑性樹脂製フラッパーの中空率(%)を示す。]
熱可塑性樹脂製フラッパーの熱可塑性樹脂は、ポリアセタール樹脂、又はポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂製フラッパーは、中空射出成形法で形成されることが好ましく、更には、金型キャビティに溶融樹脂を射出してから、一方の端面から加圧流体を圧入すると共に、他方の端面から、金型キャビティ内の余剰の溶融樹脂もしくは余剰の溶融樹脂と余剰の加圧流体を金型キャビティ外へ流出させる中空射出成形方法が好ましい。
【0009】
本発明でフラッパーとは軸線を中心に回転することによって、爪部でものの搬送方向を制御する部品であり、特にOA機器(複写機、ファクシミリ、プリンター等)の内部で紙の移動方向を制御するために用いられる部品である。例えば図5及び図2の矢印4のように紙等のものの移動方向を上下に分けることができる。また、「爪部」とはものの搬送方向を制御するときにものと主に接触する機能部分である。更に、「軸部」とはフラッパーが回転するときに他部品(軸受け部品)によって回転が安定するように支えられる部分である。「爪部」と「軸部」以外の部分は作動に影響が無ければ任意の形状をとることが可能である。また、「端面」とは成形品の外表面で軸線と交わる部分の面をいう。図中に「爪部」、「軸部」、及び「端面」の例を示した。
【0010】
本発明における中空部は、成形品内に中空部を生じさせる成形方法によって形成されるもので、この中空部は巣(ボイド)や発泡剤による気泡とは相違するものである。成形品内に中空部を発生させる成形方法はどのようなものでもよいが、接合部を残すことなく1回の樹脂射出で成形でき、しかもバリの発生が少ないことから、中空射出成形方法が好ましい。
【0011】
本発明でいう中空射出成形方法とは、射出成形において溶融樹脂を成形用型(普通は金型であるが、それに限定されない)のキャビティー中に射出中または射出後、中空部形成流体を樹脂中に加圧下で注入し、この中空部形成流体を介して溶融樹脂に圧力を加えながら冷却し、中空成形品を得る成形法である。中空射出成形法の代表的な方法は特公昭57ー14968号公報に開示されている。
【0012】
本発明における上記中空部形成流体とは、常温常圧でガス状または液状のもので、射出成形の温度及び圧力下で、成形に用いる溶融樹脂と反応または相溶しないものが使用される。例えば窒素、炭酸ガス、空気、ヘリウム、ネオン、アルゴン、水蒸気、グリセリン、流動パラフィン等であるが、通常はガス体が使用され、特に窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスが好ましく用いられる。経済性を考慮すると工業的には窒素ガスがより好適に使用される。
【0013】
本発明の中空射出成形法は、通常の射出成形機と中空部形成流体の圧入装置の組み合わせによって行われる。中空部形成流体の圧入装置は、溶融樹脂の射出後に配管を通して溶融樹脂中に中空部形成流体を圧入し、設定時間この中空部形成流体を介してキャビティー中の樹脂を加圧する装置である。これには注入する中空部形成流体を予め一定圧力まで高圧に圧縮し、アキュムレーターに蓄え、溶融樹脂の射出後に配管を通して高圧の中空部形成流体を圧入する方式や一定量の中空部形成流体を計量し、これをポンプや加圧シリンダーでキャビティーに順次送り込み、加圧していく方式等があるが、射出後の溶融樹脂中に中空部形成流体を送り込めれば如何なる方式も可能である。上記の中空部形成流体は成形品を得るときの型開きの前に圧力が解放される。最終的に熱可塑性樹脂中に中空部を有するが、好適な中空率は10〜50%である。これは中空率が高いと成形途中に中空部形成流体が樹脂層を突き破り成形が安定しずらくなり、低いとソリが生じ易くなる場合があるためである。なお、中空率とは次式で定義される。
【0014】
中空率(%)={(V×ρ−M)/(V×ρ)}×100
[ただし、上式においてVは熱可塑性樹脂部分の見かけ体積、ρは用いた熱可塑性樹脂の比重、Mは中空の熱可塑性樹脂部分の重量である]。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、通常の射出成形が可能であれば、いかなる熱可塑性樹脂も用いることができる。特に、ポリアセタール樹脂(以下POMと略す)、及びポリアミド樹脂(以下PAと略す)は耐熱性が高く、機械的物性にも優れ、さらには摺動特性にも優れるためフラッパー用の樹脂として多く用いられており、本発明においても好適に用いられる。
【0015】
本発明では内部に中空部を有するので、耐熱性、機械的強度等をアップする目的で、必要に応じて無機及び、または有機の充填材を熱可塑性樹脂に配合することが出来る。好適な充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム、アスベスト、炭化ケイ素、セラミック、窒化ケイ素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、ネフェリンシナイト、タルク、アタルパルジャイト、ウオラストナイト、PMF、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、石英、石英ガラスなどの強化充填材を挙げることが出来き、これらは中空であってもよい。また、これらの強化充填材は2種以上を併用することが可能であり、必要によりシラン系、チタン系などのカップリング剤で予備処理して使用する事ができる。
【0016】
また本発明の好ましい態様として、中空率をアップする目的で、金型内に補助室(補助キャビティーあるいは捨てキャビティーとも称する)を設けて、余剰の溶融樹脂、または余剰の溶融樹脂と余剰の加圧流体を金型キャビティ外へ流出させている。この補助キャビティーの代表例は特開平3ー121820号公報に開示されている。また、本公報には、キャビティー内への溶融樹脂の射出時にはキャビティーと補助室間を遮断しキャビティー内への中空部形成流体の圧入時にはキャビティーと補助室間を解放する方法が開示されているが、本発明においてもこの方法は好適に用いられる。
【0017】
なお、本発明において「金型キャビティ」とは金型内の空間で製品部に相当する部分をいう。
【0018】
【発明の実施の形態】
【0019】
【実施例1】
軸線に沿った長さが320mm(このうち軸部の長さは両端のそれぞれ10mm)で軸部の直径が6mmのポリアセタール樹脂製フラッパー(旭化成工業(株)製ポリアセタールコポリマー「テナックーC 8520」を樹脂として用いた。)を作製した。製品態様を図1に示す。
【0020】
金型温度は80℃、シリンダーの設定温度は200℃で中空射出成形を行った。また、樹脂の計量値を調整して中空率28%の成形品を得た。
樹脂中に注入する中空部形成流体には窒素ガスを用い、ガス注入口はシリンダーのノズル部に設けた。このときシリンダーへのガスの侵入(金型と反対方向への侵入)を防止する目的でガス注入口のスクリュー側(ホッパー側)にシャットオフ弁を設けた。
【0021】
ガス注入装置に窒素ガスを導入し、100kg/cm2に昇圧してアキュームレーターにたくわえ、樹脂射出後に配管を通して樹脂中に注入した。窒素ガスは、ノズルからスプルー、ランナー、ゲートを通って製品キャビティー中に導入された。図7の様な断面の成形品が得られた。
ゲートは図7に示すように製品の片側に1点で設けた。このときの条件はガス圧入遅延時間(樹脂の射出後ガスを注入するまでの時間)を0秒、ガス圧入時間(ガス注入を行う時間)を5秒、圧力保持時間(ガス注入をとめガス系を閉じた状態に保持する時間とガス圧入時間をたした時間)を25秒とした。型開きは圧力保持時間終了から5秒後に行い、成形品を取り出した。
【0022】
本実施例では金属インサートを金型中にセットする工程がないので生産性に優れていた。また、全ての部分が樹脂で一体化されているのでリサイクル性に優れる成形品が得られた。ソリ(曲がり度合い、振れ精度)が比較例1と同等の成形品が得られた。
【0023】
【実施例2】
ゲートと反対側の端面に補助キャビティーを用い、余剰の溶融樹脂と余剰の加圧流体を金型キャビティ外へ流出させた他は実施例1と同様な方法で成形品を得た。このため中空部は図8に示すように両端面間を貫通していた。また、中空率は32%であった。実施例1より中空部が長く、中空率も高いので、実施例1よりもソリが少なかった。
【0024】
実施例1同様、金属インサートを金型中にセットする工程がないので生産性に優れていた。また、全ての部分が樹脂で一体化されているのでリサイクル性に優れる成形品が得られた。
【0025】
【実施例3】
熱可塑性樹脂としてナイロン66(旭化成工業(株)製ポリアミド66「レオナ 1300S」)を用い、成形機のシリンダー温度を290℃にした他は実施例2と同様な方法で成形品を得た。
実施例1、および実施例2同様、金属インサートを金型中にセットする工程がないので生産性に優れていた。また、全ての部分が樹脂で一体化されているのでリサイクル性に優れる成形品が得られた。ソリ(曲がり度合い、振れ精度)が実施例2と同等の成形品が得られた。
【0026】
【比較例1】
金型を開き金属インサート(ステンレス鋼)を金型中にセットする工程を行い、金型を閉めた後で爪部のみをポリアセタール樹脂(旭化成工業(株)製ポリアセタールコポリマー「テナックーC 8520」を樹脂として用いた。)によりインサート成形し、図4の様な製品が得られた。
【0027】
金属インサートを金型にセットする工程があるので、人手やロボットを必要とし、さらにこの工程に時間がとられるので成形サイクルも実施例より長くなった。このため実施例より生産性に劣っていた。
また、出来上がった製品は金属と樹脂が一体化しているのでリサイクル性にも劣っていた。また、金属を軸に用いているので、実施例より部品が重くなってしまっていた。
【0028】
【発明の効果】
本発明による熱可塑性樹脂製フラッパーは良好な寸法精度をもち、生産性に優れ、軽量化され、更にはリサイクル性にも優れる。
このため本発明による熱可塑性樹脂製フラッパーは機構部品として優れており、特にOA機器(複写機、ファクシミリ、プリンター等)の内部機構部品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のフラッパーの態様図。
【図2】図1のAA断面の断面図。
【図3】図1のBB断面の断面図。
【図4】比較例のフラッパーの態様図。
【図5】図4のCC断面の断面図。
【図6】図4のDD断面の断面図。
【図7】実施例1の軸線を通る断面での断面図。
【図8】実施例2の軸線を通る断面での断面図。
【符号の説明】
1 軸部(金属)
2 シャフト部(金属)
3 爪部(樹脂)
4 もの(例えば紙)の搬送方向を示す矢印
5 軸部(樹脂)
6 シャフト部(樹脂)
7 爪部(樹脂)
8 中空部
9 ゲート部
10 補助室への連通部
11 軸線
12 端面
Claims (6)
- 軸部と爪部が熱可塑性樹脂により一体成形され、かつ内部に中空部を有することを特徴とする熱可塑性樹脂製フラッパー。
- 中空部が、次式(1)で定義される関係を満足することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂製フラッパー。
0.9≦L(b)/L(a)≦1 (1)
[式(1)において、L(a)はフラッパーの軸線に沿った全長を示し、そしてL(b)は該中空部の、フラッパーの軸線に沿った長さを示す。] - 中空部が、次式(2)で定義される関係を満足することを特徴とする請求項1、2記載の熱可塑性樹脂製フラッパー。
10≦Vh≦50 (2)
[式(2)において、Vhは該熱可塑性樹脂製フラッパーの中空率(%)を示す。] - 樹脂がポリアセタール樹脂、又はポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3記載の熱可塑性樹脂製フラッパー。
- 中空部が中空射出成形法で形成されることを特徴とする請求項1〜4記載の熱可塑性樹脂製フラッパーの中空射出成形方法。
- 金型キャビティに溶融樹脂を射出してから、一方の端面から加圧流体を圧入すると共に、他方の端面から、金型キャビティ内の余剰の溶融樹脂もしくは余剰の溶融樹脂と余剰の加圧流体を金型キャビティ外へ流出させることを特徴とする請求項5記載の熱可塑性樹脂製フラッパーの中空射出成形方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33651495A JP3580623B2 (ja) | 1995-12-25 | 1995-12-25 | 熱可塑性樹脂によるフラッパー |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP33651495A JP3580623B2 (ja) | 1995-12-25 | 1995-12-25 | 熱可塑性樹脂によるフラッパー |
Publications (2)
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JPH09175709A JPH09175709A (ja) | 1997-07-08 |
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ID=18299922
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP33651495A Expired - Lifetime JP3580623B2 (ja) | 1995-12-25 | 1995-12-25 | 熱可塑性樹脂によるフラッパー |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3580623B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001001362A (ja) * | 1999-06-24 | 2001-01-09 | Polyplastics Co | 樹脂製中空分岐爪 |
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1995
- 1995-12-25 JP JP33651495A patent/JP3580623B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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