JP3580476B2 - メタルウッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製のゴルフクラブヘッドに関する。所謂、アイアンヘッドではなく、従来、ウッドと呼ばれていたタイプの、金属製中空状クラブヘッド(メタルウッド)に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタルウッドは、金属壁面によって囲まれており、鋳造等によって一体に製造することも可能ではあるが、こうすると安価な鋳造では厚めに形成される他、比重の異なった材料を使用して重量調節を行ったり、ライ角調節等の目的で、分割された複数の部品を溶接接合させて一体化させることが多い。そうした構造の例が、特許第2526765号公報等に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示のように板状の各部品を接合する場合、通常は各板状部品の板厚は、その部品内において概ね一定とし、接ぎ合わせのために特別な工夫を施してはいないため、板状部品全体が接合に必要な厚さを有するものとなり、軽量化が図られてはいない。また、溶接等の肉盛りがなされた状態では、肉盛り部の直近部において応力の集中が生じ易く、特に、ゴルフクラブヘッドには打撃によって強い衝撃が作用するため、応力集中の存在は大きな問題である。
また、上記のように溶接等によって接合されたヘッドでは、例え外観を良くするために研磨して装飾被膜を施しても、その接合部位がフェース部やソール部であっては、直ぐに被膜が剥がれて効果が低減する。また、フェース部は直接に打撃され、ソール部は直接に地面に当たるため、これらの領域に接合部が有れば、衝撃力がこの接合部に直接に作用してゴルフクラブヘッドの耐久性に問題が生じる。
【0004】
更には、重量調節をする場合には、その重量部材を固定することが多いが、一般に壁板部材と重量部材とは熱膨張率が異なるため、接合部が近くてその接合部を溶接等によって熱すると、固定部位に熱応力の影響が生じて固定構造が緩んだり、変形が生じたりする。
依って本発明は、軽量化を図りつつ高強度なゴルフクラブヘッドの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み、請求項1において、壁に囲まれたゴルフクラブヘッドを2以上の壁板部品を接ぎ合わせて構成し、前記1の壁板部品の縁部である接合部の厚さを、その壁板部品の接合部周辺の厚さに対して段差を有することなく接合端に近づくに従って漸次厚肉化させ、該接合部を、隣接する他の壁板部品の接合部と一体的に接合し、該一体接合した部分の外側表面を滑らかな面状に形成したことを特徴とするメタルウッドを提供する。
【0006】
請求項1では、ゴルフクラブヘッドの壁を2以上の壁板部品を継ぎ合わせて構成し、この内の1の壁板部品の接合部が、その壁板部品の接合部周辺の厚さに対して漸次厚く形成される形態のため、接合面積確保のために壁板部品全体を厚く形成する必要も無く、その分軽量化を図ることができると共に、接合部が強く構成できるのみならず、応力集中が防止されて高強度になる。更には、一体接合部分の外側表面を滑らかな面状に形成するため、即ち、接合部の厚さは主としてゴルフクラブヘッドの内側方向に確保し、これによって強度を維持しつつ外観を向上できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。
図1はチタン、アルミニウム、ステンレス等を、鋳造、鍛造、プレス加工等によって成形される金属製ゴルフクラブヘッド10の斜視図であり、図2はその背面図、図3は矢視線C−Cによる縦断面図、図4は矢視線D−Dによる横断面図である。ゴルフクラブヘッドはフェース面10F、バック面10K、ソール面10S、上面10U、トウ面10T、ヒール面10Hによって囲まれており、ヒール面の上方部がシャフトを挿入固定する挿入孔12Hのあるネック部12である。ここでソール面は、ソール面中央部10S1と、ソール面トウ部10S2と、ソール面ヒール部10S3と、ソール面バック部10S4とを有している。
【0008】
この形態例ではゴルフクラブヘッド10は2つの部品を溶接接合して構成している。即ち、上面10Uの大部分を含み、図の2点鎖線P1,P2,P4,P3で囲んだ上部枠体10”と、それ以外の下部枠体10’とを、2点鎖線の接合部ラインに沿って溶接して一体化している。2点鎖線P1は、フェース面と上面との稜線R1から上面内に概ねL1だけ離隔しており、2点鎖線P2は、トウ面と上面との稜線R5から上面内に概ねL2だけ離隔しており、2点鎖線P3は、ネック部の前側の上面内にあり、2点鎖線P4はバック面内にある。前記2点鎖線P2とP3は、バック面と上面との稜線R3を越えて2点鎖線P4と接続している。
【0009】
フェース面とソール面との稜線がR2であり、バック面とソール面との稜線がR4であり、トウ面とソール面との稜線がR6であり、フェース面とトウ面との稜線がR7であり、バック面とトウ面との稜線がR8である。
距離L1とL2は2mm以上が好ましい。また、図3の接合部を示す2点鎖線P2部位近くの拡大図を図6に示す。上部枠体10”は、その周縁である接合端(2点鎖線P2位置)周辺から、当該接合端に至る領域Z1は該接合端に近づくに従って漸次厚肉化しており(接合端において1mm)、上部枠体のこの接合部領域Z1の他領域Z0は当該接合部よりも薄く(t5の厚さ、即ち、0.6mm)形成されている。従って、全体として軽量化を図りつつ、下記のように接合部の強度を維持する。
【0010】
下部枠体10’の接合端の厚さも前記上部枠体のそれと同じ程度に形成している。この場合は、下部枠体の前記接合端近くの部位Z2を該接合端に近づくに従って漸次薄く形成して応力集中が生じ難いようにしている。この形態で溶接肉YZを設け、接合部の外側表面は研磨して表面部を滑らかに形成している。他の接合端近くも図6と同様に形成している。
【0011】
図1と図2とに示すように、ゴルフクラブヘッド10の上部枠体10”は上面部とバック面部とに亘って形成されているが、フェース部とソール部には亘っていない。フェース部とソール部には接合部が無く、一体形成されている。従って、ボールを打撃した衝撃は直接には接合部に作用せず、また、地面を叩いた衝撃も直接には接合部に作用しないため、ゴルフクラブヘッドの耐久性が向上し、その分耐久性が向上して接合部付近の壁板を薄くできる。
【0012】
更には、ゴルフクラブヘッド10は、接合部の外側表面を滑らかに研磨し、これに塗装等の装飾被膜を被覆しており、錆を防止できると共に、溶接等によって接合された部位の硬度差に起因して研磨時に発生する微小な凹凸や、接合時に生じるピンホールや、溶接跡等の色変化の隠蔽が容易であって外観が優れ、接合部は直接に打撃力を受ける部位ではないため、被膜の剥がれることが防止されて優れた外観の長期維持が可能となる。
溶接等した接合部を研磨しても、塗装等の被膜によって上記の各不均一さが隠れる。接合部の無い各面は、研磨するまでも無く表面にこうした意味の凹凸等の不均一さは無く、例え、塗装等を施さなくても優れた外観を呈する。
【0013】
ゴルフクラブヘッド10を図1と図2に示す既述の形態に分割すると、ネック部とフェース部とソール部とは下部枠体10’の成形時において既に一体であるため、その各寸法、角度等の製品精度を向上でき、品質が安定する。また、上面部を広い範囲に亘って下部枠体とは別部材化でき、例えば下部枠体が鋳造でも、上面部は鋳造とは異なった成形方法(例えば薄い板材の精密なプレス成形等)も採用でき、薄肉化、また軽量化することが容易となる。即ち、厚い部分と薄い部分とに分け、前者を鋳造とし、後者をプレス成形にすれば、全体を鋳造成形にする場合よりも成形し易く、安価に成形し易く、また精度も向上し易くなる。
【0014】
図1と図2に示す既述のように分割すれば、図5によって後述しているように開口部が大きくなって、下部枠体に何らかの加工を施す場合に、その加工が容易になり、また、下部枠体を鋳造する場合に、金型構造が簡単になるし、成形時間も短縮できる。
以上と異なって、上部枠体10”の縁を示す2点鎖線P1をトウ面にまで延長したP1’とし、2点鎖線P2をトウ面からバック面に至らせ、バック面の2点鎖線P4に接続するP2’とする分割としてもよい。上面部は滑らかに湾曲した壁板形状に形成する他、積極的に凹凸状に形成することがあるが、こうした場合でも、上部枠体と下部枠体との接合部は、接合の都合上滑らかな形状であることが望まれる。一般に側周面は滑らかに湾曲した壁板形状とするため、上記のように分割ラインを主として側周面に設けると、接合部が主として滑らかな形状となり、接合が容易となる。また、上面部が凹凸の存在によって剛性が向上する。
【0015】
【実施例】
ゴルフクラブヘッド10の下部枠体10’と、上部枠体10”の材料は、ステンレス鋼、マレージング鋼、チタン合金等が使用され、図3と図4に示す各面部の概ねの厚さt1,t2,t3,t4,t5,t6,t7(mm)は、例えば、夫々、1.5,1.5,1.5,1.5,0.6,1.5,2.5(mm)である。上記各板厚の一般的な範囲としては、夫々、1.0〜3.5,0.7〜3.0,0.7〜3.0,0.7〜3.0,0.4〜1.0(又は0.4〜0.7),0.7〜3.0,1.8〜2.8(mm)である。
【0016】
一般に、ゴルフクラブヘッド10の重心位置は、上面寄りの場合と、ソール面寄りの場合とを比較すれば、ソール面寄りが良く、こうした意味で上記板厚t5を最も薄く形成している。然しながら、それでもまだ重心位置が高い場合、或いは重心位置が高いと共にヘッドの重量自体が不足している場合には、それを調節すべく、図5に示すように重量調節部材Wを装着固定する。この形態例では、ソール面中央部10S1を有する中央のソール部に2つの孔H1,H2と、これらの孔を連結する状態の溝Mをソール面側(下側)に設け、ここにソール部よりも比重の大きな材料、例えば、タングステンカッパーの重量調節部材Wを装着固定する。
【0017】
重量調節部材Wは、前記孔H1,H2に挿入できる足部W1とW2と、溝Mに沿う連結部W3とを有している。これを装着する際には、まだ下部枠体10’に上部枠体10”を接合しておらず、下部枠体の上方は開放されている。従って、この上方の開口から前記各孔H1,H2に挿入された各足部の先端部を叩いて広げるように潰し、足部W1,W2はゴルフクラブヘッドの内外において各孔H1,H2よりも広がっており(この形態例の外側は、連結部W3により広がっている)、ソール部に強固に固定される。この後、上部枠体10”と下部枠体10’とを溶接等で接合させる。
【0018】
この場合の接合部ラインは、図1と図2に2点鎖線で示す場合と同様に構成しているため、ソール部には存在しない。従って、この接合部を溶接する際の熱に基づく熱応力は、接合部の存在する各面部(上面部、バック面部)内には作用し易いが、熱が1つ以上の稜線を越えなければソール部にまでは到達せず、ソール部に設けた重量調節部材Wに対する熱応力の影響は小さい。従って、接合作業によって重量調節部材が緩んだり、外れたりすることが防止される。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、軽量化を図りつつ高強度なゴルフクラブヘッドが提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図2】図2は図1のゴルフクラブヘッドの背面図である。
【図3】図3は図1の矢視線C−Cによる縦断面図である。
【図4】図4は図1の矢視線D−Dによる横断面図である。
【図5】図5は他の本発明に係るゴルフクラブヘッドの縦断面図である。
【図6】図6は図3の要部拡大図である。
【符号の説明】
10 ゴルフクラブヘッド
10’ 下部枠体
10” 上部枠体
P1,P2,P3,P4 接合部ライン
W 重量調節部材
Claims (1)
- 壁に囲まれたゴルフクラブヘッドを2以上の壁板部品を接ぎ合わせて構成し、1の壁板部品の縁部である接合部の厚さを、前記1の壁板部品の接合部周辺の厚さに対して段差を有することなく接合端に近づくに従って漸次厚肉化させ、該接合部を、隣接する他の壁板部品の接合部と一体的に接合し、該一体接合した部分の外側表面を滑らかな面状に形成したことを特徴とするメタルウッド。
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