JP3579765B2 - 金属超微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属超微粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
金属ペーストは、電子回路、電極等の導電膜の形成に用いられている。これらの導電膜は、金属ペーストをセラミックス、ガラス等の非導電性基板上に塗布し、塗膜を焼成・硬化することにより形成されている。近年、電子材料の多様化、需要増大等に伴って、金属ペーストの用途も急速に拡大しつつあるが、その一つとして金属粉末と樹脂成分とを混練して製造される金属導電膜形成用厚膜ペーストが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来における金属導電膜形成用厚膜ペーストでは、次のような問題がある。
【0004】
第一に、金属粉末の粒子サイズが数ミクロンと大きいため、焼成温度が必然的に高くなり、最低でも500〜600℃という高温で焼成しなければ所定の導電膜を形成することが困難である。また、このように焼成温度が高いことから、耐熱性の低いプラスチック等の基材に適用することも困難である。
【0005】
第二に、上記のように金属粉末の粒子サイズが大きいことから、形成される導電膜にもピンホールが発生しやすい。このため、ピンホールのない緻密な導電膜を得るためには、厚膜ペーストを塗布し、焼成するという一連の工程を何回も繰り返す必要がある。
【0006】
第三に、上記厚膜ペーストは、少なくとも金属粉末の調製、樹脂成分の調製及び両者の混練という工程が必要であり、その製造工程も効率的なものとは言えない。
【0007】
従って、本発明は、特に、金属膜の形成をより確実かつ容易に実現できる材料を提供することを主な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属錯体化合物を用いる場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の金属超微粒子及びその製造方法に係るものである。
【0010】
1.一般式[R1R2R3R4N]x[My(A)z](但し、R1〜R4は、同一又は別異の炭化水素基であって置換基を有していても良いもの、Mは遷移金属、Aは有機硫黄系配位子、xは0よりも大きい整数、yは0よりも大きい整数、zは0よりも大きい整数を示す。)で表わされる4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を出発原料とし、当該化合物の有機硫黄系配位子の還元的脱離反応から中心金属を還元することを特徴とする金属超微粒子の製造方法。
【0011】
2.一般式[R1R2R3R4N]x[My(A)z](但し、R1〜R4は、同一又は別異の炭化水素基であって置換基を有していても良いもの、Mは遷移金属、Aは有機硫黄系配位子、xは0よりも大きい整数、yは0よりも大きい整数、zは0よりも大きい整数を示す。)で表わされる4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を熱処理することを特徴とする金属超微粒子の製造方法。
【0012】
3.金属超微粒子とともにジスルフィドを生成させる上記第1項又は第2項に記載の製造方法。
【0013】
4.有機硫黄系配位子がチオレート配位子(SR’)又はチオアセチレン配位子(SC≡CR’)(いずれについても、R’は炭化水素基であって置換基を有していても良いものを示す。)である上記第1項〜第3項のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
5.Mが、Au,Pt、Cu、Ni又はPdである上記第1項〜第4項のいずれかに記載の製造方法。
【0015】
6.得られる金属超微粒子中の有機成分として4級アンモニウム塩型金属錯体化合物の対カチオンである[R1R2R3R4N]に由来の炭化水素基成分を含む上記第1項〜第5項のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
7.得られる金属超微粒子中の金属成分の含有量が80〜95重量%となるように熱処理する上記第2項〜第6項のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
8.中心部とその周囲の保護層から構成される金属超微粒子であって、中心部が金属成分からなり、保護層が有機成分からなることを特徴とする金属超微粒子。
【0018】
9.金属成分の含有量が80重量%以上である上記第7項に記載の金属超微粒子。
10.上記第8項又は第9項に記載の金属超微粒子を含む金属膜成形用材料。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、一般式[R1R2R3R4N]x[My(A)z](但し、R1〜R4は、同一又は別異の炭化水素基であって置換基を有していても良いもの、Mは遷移金属、Aは有機硫黄系配位子、xは0よりも大きい整数、yは0よりも大きい整数、zは0よりも大きい整数を示す。)で表わされる4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を出発原料とし、当該化合物の有機硫黄系配位子の還元的脱離反応から中心金属を還元することを特徴とする。
【0020】
本発明の製造方法の出発原料(以下「前駆体」ともいう)である4級アンモニウム塩型金属錯体化合物は、一般式[R1R2R3R4N]x[My(A)z]で表わされる。この一般式を有するものであれば、公知の製法で得られるもの又は市販品を用いることもできる。例えば、上記化合物が一般式[R4N][Au(SR’)2](Rはアルキル基、R’はアルキル基を示す。以下の1)及び2)においても同じ。)で示される4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を製造する場合は次のような工程1)〜2)(溶媒中での反応)によって製造することができる。
【0021】
1)HAuCl4+R4NCl→[R4N][AuCl4]+HCl
2)[R4N][AuCl4]+4R’SNa→[R4N][Au(SR’)2]+R’S−SR’+4NaCl
すなわち、塩化金酸等の金属塩の溶液に炭化水素基を有する4級アンモニウム塩を反応させ、得られた生成物をナトリウムメチラートの存在下でチオール化合物を反応させることによって所定の4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を得ることができる。従って、この場合は、4級アンモニウム塩型金属錯体化合物におけるR1〜R4は、上記の4級アンモニウム塩を適宜選択することによって決定することができる。また、中心金属に配位する配位子は、上記チオール化合物の種類によって決定することができる。溶媒は、用いる原料の種類等に応じて公知の溶媒から適宜採択すれば良い。
【0022】
本発明における4級アンモニウム塩型金属錯体化合物のR1〜R4は、同一又は別異の炭化水素基であって置換基を有していても良いものを適用できる。炭化水素基としては特に限定的ではないが、通常は炭素数1〜20のアルキル基であって置換基を有していても良いものことが好ましい。具体的には、[R1R2R3R4N]部として[C12H25(CH3)3N]、[C14H29(CH3)3N]、[(C18H37)2(CH3)2N]、[C6H13(CH3)3N]等の直鎖アルキル基をもつものが例示される。
【0023】
上記炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の種類も制限されない。例えば、メチル基、エチル基、OH基、ニトロ基、ハロゲン基(Cl、Br等)、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0024】
上記Mは遷移金属であり、上記4級アンモニウム塩型金属錯体化合物の中心金属を構成する。遷移金属としては、例えばAu、Pt、Cu、Ni、Pd、Co、Fe、Ti、Cr、Mn、Zr等が挙げられる。本発明では、特にAu、Pt、Cu、Ni又はPdが好ましい。
【0025】
Aは有機硫黄系配位子を示す。硫黄原子を含む配位子であれば、その化学構造は特に限定されず、また単座配位子、二座配位子等のいずれであっても良い。
【0026】
特に、本発明の有機硫黄系配位子としては、チオレート配位子(SR’)又はチオアセチレン配位子(SC≡CR’)(いずれについても、R’は炭化水素基であって置換基を有していても良いものを示す。)であることが好ましい。上記R’は、特に炭素数1〜20のアルキル基であって置換基を有していても良いものことが好ましい。置換基を有する場合、その置換基の種類も制限されず、前記と同様のものを適用できる。有機硫黄系配位子は、のいずれであっても良く、中心金属の種類等により適宜選択すれば良い。
【0027】
チオレート配位子としては、R’部としてCnH2n+1(n=1〜20)で示されるものが好ましく、例えばC12H25、C6H13、C13H37等の直鎖アルキル基が適用できる。チオアセチレン配位子のR’部としては、例えばCnH2n+1(n=1〜8)で示されるものが例示される。
【0028】
置換基を有するチオアセチレン配位子は、C≡CR’部としてプロピン、2−プロピン−1−オール、1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,3−ジメチル−1−ブチン、1−ペンチン、1−ペンチン−3−オール、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、4−メチル−1−ペンチン、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−ヘプチン、1−ヘプチン−3−オール、5−ヘプチン−3−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、1−オクチン、1−オクチン−3−オール等が例示される。
【0029】
また、例えば水酸基を有する環状炭化水素を含むチオアセチレン配位子も適用できる。このような配位子SC≡CR’は、C≡CR’部として1−エチニル−1−シクロプロパノール、1−エチニル−1−シクロブタノール、1−エチニル−1−シクロペンタノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1−プロピン−3−シクロプロパノール、1−プロピン−3−シクロブタノール、1−プロピン−3−シクロペンタノール、1−ブチン−4−シクロブタノール、1−ペンチン−5−シクロプロパノール等が例示される。
【0030】
上記xは0よりも大きい整数、yは0よりも大きい整数、zは0よりも大きい整数をそれぞれ示し、中心金属の種類、有機硫黄系配位子の種類等により適宜決定される。例えば、4級アンモニウム塩型金属錯体化合物の有機硫黄系配位子がチオレート配位子(SR’)又はチオアセチレン配位子(SC≡CR’)である場合において、中心金属MがAuのときはx=2、y=1及びz=2、MがAgのときはx=1、y=1及びz=2、MがPtのときはx=2、y=1及びz=4、MがCuのときはx=1、y=1及びz=2(又はx=2、y=1及びz=3)、MがPdのときはx=2、y=1及びz=4、MがNiのときはx=2、y=1及びz=4等とすれば良い。
【0031】
本発明の製造方法では、上記のような4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を出発原料として用い、この化合物の有機硫黄系配位子の還元的脱離反応から中心金属を還元する。
【0032】
例えば、出発原料として[R4N][Au(SC12H25)2](Rはアルキル基)を用いる場合の反応は、下記のように進行する。
[R4N][Au(SC12H25)2]→Au(−R)+R3N+(SC12H25)2
すなわち、チオレート配位子が還元的脱離を起こし、ジスルフィドを生成するとともに金を生成するが、同時に起こる4級アンモニウム塩の分解(熱分解)により生じるアルキル基の一部又は全部が金のまわりに保護層を形成し、平均粒径が10数ナノメータの金超微粒子(Au(−R))となる。
【0033】
本発明の製造方法においては、上記のような還元的脱離反応が起こる限り、いずれの操作方法によって上記出発原料を処理しても良いが、通常は出発原料の熱処理によって実施することができる。
【0034】
熱処理における条件は、かかる反応が生ずる限り特にその条件に制限はなく、出発原料の種類、最終製品の用途・使用目的等に応じて適宜設定すれば良い。特に、金属超微粒子の金属成分の含有量が80重量%以上となるように熱処理するのが好ましい。上記含有量の上限は特に限定されないが、通常は95重量%程度(炭化水素基成分が5重量%以上)となるようにすれば良い。換言すれば、金属成分の含有量が80〜95重量%程度となるように熱処理すれば良い。
【0035】
従って、加熱温度、加熱時間、加熱雰囲気等も、出発原料の種類、所望の粒径・金属成分含有量、最終製品の用途等との関係で設定すれば良い。例えば、出発材料として[C12H25N(CH3)3][Au(SC12H25)2]を用いる場合は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中160℃で7時間程度加熱すれば、粒径30〜40nmの粒子が多く分布する金超微粒子(金含有量90重量%以上)を得ることができる。
【0036】
還元的脱離反応が完了した後、生成した金属超微粒子は、一般には副生したジスルフィドとともに存在する。生成したジスルフィドは通常は液状であり、その中に沈殿するようなかたちで金属超微粒子が生成する。この場合は、濾過、遠心分離等の通常の固液分離方法に従って金属超微粒子を回収し、必要に応じて水、溶剤等で洗浄すれば良い。さらに、必要に応じて金属超微粒子を自然乾燥又は強制乾燥させても良い。
【0037】
本発明の金属超微粒子は、中心部とその周囲の保護層から構成される金属超微粒子であって、中心部が金属成分からなり、保護層が有機成分からなることを特徴とする。
【0038】
金属超微粒子の保護層を構成する有機成分は、本発明の製造方法により製造される場合には、通常は出発原料の対カチオンてある4級アンモニウム塩に由来の炭化水素基成分を含有する。但し、有機硫黄系配位子の由来する成分が含まれていても差し支えない。本発明では、特に、炭素数1〜20アルキル基成分が含まれていることが好ましい。
【0039】
本発明の金属超微粒子の金属成分としては特に限定されず、通常は遷移金属(好ましくはAu、Pt、Cu、Ni又はPd)のいずれかを適用できる。本発明の製造方法により製造される場合には、出発原料として用いる4級アンモニウム塩型金属錯体化合物の中心金属に由来する金属成分が存在する。
【0040】
金属成分の含有量は、最終製品の用途、出発原料の種類等により適宜変更できるが、通常は80重量%以上(好ましくは80〜95重量%、より好ましくは80〜90重量%)とすれば良い。
【0041】
本発明の金属超微粒子の平均粒径は特に限定されず、通常は100nm以下(数10〜数nm)の範囲内で最終製品の用途・使用目的等に応じて適宜設定できる。特に、本発明では、平均粒径50nm以下の金属超微粒子を製造することもできる。金属超微粒子の形態も特に限定されず、球状、多角形状、フレーク状、柱状等のいずれであっても良いが、通常は球状又はそれに近い形状であることが好ましい。
【0042】
本発明の金属超微粒子は、例えば本発明の上記製造方法によってより効率良くかつ確実に製造することができる。すなわち、本発明の金属超微粒子は、上記製造方法によって製造されるものであることが特に好ましい。
【0043】
本発明の金属超微粒子は、金属膜形成用、装飾用、触媒用等のあらゆる分野での利用が可能である。特に、金属膜成形用材料(具体的には、電子回路、電極等の電子材料用、その他装飾用)として最適である。その使用形態は特に限定的でないが、本発明の金属超微粒子はそのままでも用いることができ、また必要に応じて溶剤に分散させて用いることもできる。また、本発明の効果を妨げない範囲内で、樹脂成分、溶剤等と混練してペースト化することも可能である。上記材料中における金属超微粒子の含有量は、用いる金属超微粒子の種類、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
【0044】
このように、本発明の金属膜成形用材料は本発明の金属超微粒子を含むものである。この材料は、実質的にあらゆる基材に適用できる。例えば、プラスチック、セラミックス、ガラス、紙類、金属等に適用可能である。特に、本発明材料は、比較的低温で金属膜を形成することができるので、耐熱性の低いプラスチック等に好適である。基材に適用する際には、公知の電子回路、電極等の形成方法に従って塗布、乾燥、焼成等を行えば良く、これによって所望の金属膜を得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、ナノオーダーの粒径をもつ金属超微粒子を効率的かつ確実に製造することができる。
【0046】
本発明の金属超微粒子は、中心部が金属成分からなり、保護層が有機成分からなるという特異な構造を有しているので、凝集が起こりにくく、ナノオーダーの粒径を安定して維持することができる。
【0047】
これにより、従来技術のような問題点のない金属膜を効率的かつ確実に形成することができる。特に、金属超微粒子を金属膜形成用に用いる場合は、その焼成温度が400℃以下という低温で金属膜を形成することができ、コスト面のみならず、幅広い種類の基材に適用できるという点でも有利である。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより一層明確にする。本発明は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0049】
製造例1
前駆体として[C14H29N(CH3)3][Au(SC12H25)2]の合成を行った。
【0050】
塩化金酸HAuCl4・4H2O(3.94g、9.56mmol)のメタノール溶液(30cm3)に、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド[C14H29N(CH3)3]Br(3.22g、9.57mmol)のメタノール溶液(30cm3)を滴下により加え、3時間攪拌した。その後、メタノールを減圧下で除き、濃縮し、蒸留水(30cm3)を加えた後、桐山ロートでろ過し、蒸留水(30cm3)、続いてメタノール(15cm3)で洗浄し、減圧下で乾燥させて[C12H25N(CH3)3」「AuCl4」を得た。これにメタノール(40cm3)を加えて懸濁液とし、1−ドデカンチオールC12H25SH(7.74g、38.2mmol)とナトリウムメチラートCH3ONa(2.07g、38.2mmol)を含むメタノール溶液(30cm3)を室温で滴下しながら加えて反応させた。13時間の攪拌後、生じた黄白色の沈殿を桐山ロートでろ別し、蒸留水で2回(30cm3×2)、続いてメタノールで2回(30cm3×2)、さらにジエチルエーテルで3回(30cm3×3)洗浄し、減圧下で乾燥させ、下記の物性をもつ標記前駆体を得た。
【0051】
[C14H29N(CH3)3][Au(SC12H25)2]
収量:7.19g
収率:87.9%
融点:97.5〜99.5℃
C41H88NS2Au:計算値C,57.51%;H,10.36%;N,1.64%、実測値C,57.49%;H,9.95%;N,1.91%
1H−NMR:δ=0.88(t,9H,CH 3CH2)、1.24〜1.26(m,52H,CH3CH 2CH 2CH2)、1.39〜1.32(m、6H,NCH2CH2CH 2CH2,SCH2CH2CH 2CH2)、1.66(p,4H,SCH2CH 2CH2)、1.78(p,2H,NCH2CH 2CH2)、2.76(t,4H,SCH 2CH2)、3.40(s,9H,NCH 3)、3.54〜3.62(m,2H,NCH 2CH2)(なお、NMRスペクトル測定は、重クロロホルム(CDCl3)を溶媒とし、内部基準としてテトラメチルシランを用いた。以下同じ。)
製造例2
前駆体[C12H25N(CH3)3][Au(SC12H25)2]の合成は、実施例1と同様にして[C12H25N(CH3)3][AuCl4]のメタノール懸濁液を調製し、これに1−ドデカンチオールとナトリウムメチラートを含むメタノール溶液を反応させて合成した。
[C12H25N(CH3)3][Au(SC12H25)2]
収量:7.19g
収率:90.8%
融点:96.4〜98.2℃
C39H84NS2Au:計算値C,56.56%;H,10.22%;N,1.69%、実測値C,55.01%;H,9.92%;N,1.91%
1H−NMR:δ=0.88(t,9H,CH 3CH2)、1.24〜1.27(m,48H,CH3CH 2CH 2CH2)、1.32〜1.39(m、6H,NCH2CH2CH 2CH2,SCH2CH2CH 2CH2)、1.67(p,4H,SCH2CH 2CH2)、1.79(p,2H,NCH2CH 2CH2)、2.76(t,4H,SCH 2CH2)、3.41(s,9H,NCH 3)、3.53〜3.60(m,2H,NCH 2CH2)
製造例3
前駆体[(C18H37)2N(CH3)2][Au(SC12H25)2]の合成は、実施例1と同様にして[(C18H37)2N(CH3)2][AuCl4]のメタノール懸濁液を調製し、これに1−ドデカンオールとナトリウムメチラートを含むメタノール溶液を反応させて合成した。
【0052】
[(C18H37)2N(CH3)3][Au(SC12H25)2]
収量:8.80g
収率:74.2%
融点:86.0〜91.0℃
C62H130NS2Au:計算値C,64.71%;H,11.39%;N,1.22%、実測値C,63.22%;H,11.23%;N,1.53%
1H−NMR:δ=0.88(t,12H,CH 3CH2)、1.24〜1.35(m,88H,CH3CH 2CH 2CH2)、1.35〜1.38(m、8H,NCH2CH2CH 2CH2,SCH2CH2CH 2CH2)、1.64〜1.75(m,8H,NCH2CH 2CH2,SCH2CH 2CH2)、2.76(t,4H,SCH 2CH2)、3.32(s,6H,NCH 3)、3.45〜3.52(m,4H,NCH 2CH2)
実施例1
製造例1で得られた前駆体[C14H29N(CH3)3][Au(SC12H25)2]の還元的脱離反応による金超微粒子の製造を行った。
【0053】
[C14H29N(CH3)3][Au(SC12H25)2](7.74g、9.04mmol)をパイレックス製三ツ口フラスコにとり、油浴により130℃まで加熱して完全に融解させた後、160℃まで徐々に加熱した。その後、160℃で9時間反応を持続させた後、放冷した。生成した褐色の粉末を液状のジスルフィド(SC12H25)2を分離し、エタノールで2回(30cm3×2)で洗浄し、桐山ロートでろ別し、減圧下で乾燥させ、褐色の金超微粒子を得た。得られた金超微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、その観察結果に基づいて粒度分布を求めた。得られた金超微粒子の粒度分布を図1に示す。
【0054】
図1に示すように、4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を熱処理(熱分解)することによって、粒径30〜40nmの中心分布をもつ金属超微粒子が得られることがわかる。
【0055】
実施例2
加熱温度180℃及び180℃での保持時間9時間としたほかは、製造例1で得られた前駆体を用いて実施例1と同様にして金超微粒子の製造を行った。得られた金超微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして求めた。その結果を図1に示す。図1の結果からも明らかなように、本発明では、加熱温度及び加熱時間により金属超微粒子の粒径を制御できることもわかる。
【0056】
図2には、実施例2で得られた金超微粒子を透過型電子顕微鏡により観察した結果(TEM像)を示す。図2によれば、約50nm以下の粒径をもつほぼ球状の金超微粒子が生成していることがわかる。
【0057】
実施例3
製造例2で得られた前駆体[C12H25N(CH3)3][Au(SC12H25)2]を用い、加熱温度160℃及び160℃での保持時間7時間としたほかは、実施例1と同様にして金超微粒子の製造を行った。得られた金超微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして求めた。その結果を図1に示す。
【0058】
実施例4
製造例3で得られた前駆体[(C18H37)2N(CH3)2][Au(SC12H25)2]を用い、加熱温度170℃及び170℃での保持時間6時間としたほかは、実施例1と同様にして金超微粒子の製造を行った。得られた金超微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして求めた。その結果を図1に示す。
【0059】
また、図3には、実施例4で得られた金超微粒子の粉末X線回折分析を行った結果を示す。
【0060】
実施例5
加熱温度を190℃及び190℃での保持時間6時間としたほかは、製造例3で得られた前駆体を用いて実施例4と同様にして金超微粒子の製造を行った。得られた金超微粒子の粒度分布を実施例1と同様にして求めた。その結果を図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例で得られた金超微粒子の粒度分布を示す図である。
【図2】実施例2で得られた金超微粒子のTEM像を示す。
【図3】実施例4で得られた金超微粒子の粉末X線回折分析結果を示す図である。
Claims (4)
- 一般式[R1R2R3R4N]x[My(A)z](但し、R 1 は、同一又は別異の炭素数12〜18のアルキル基であって置換基を有していても良いもの、R 2 〜R 4 はCH 3 、Mは遷移金属であってAu、Pt又はPd、Aは有機硫黄系配位子であってチオレート配位子であるSC 12 H 25 、x、y及びzは、いずれも0より大きい整数であって中心金属MがAuのときはx=1、y=1及びz=2、MがPtのときはx=2、y=1及びz=4、MがPdのときはx=2、y=1及びz=4を示す。)で表わされる4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を出発原料とし、当該化合物の有機硫黄系配位子の還元的脱離反応から中心金属を還元することを特徴とする金属超微粒子の製造方法。
- 一般式[R1R2R3R4N]x[My(A)z](但し、R 1 は、同一又は別異の炭素数12〜18のアルキル基であって置換基を有していても良いもの、R 2 〜R 4 はCH 3 、Mは遷移金属であってAu、Pt又はPd、Aは有機硫黄系配位子であってチオレート配位子であるSC 12 H 25 、x、y及びzは、いずれも0より大きい整数であって中心金属MがAuのときはx=1、y=1及びz=2、MがPtのときはx=2、y=1及びz=4、MがPdのときはx=2、y=1及びz=4を示す。)で表わされる4級アンモニウム塩型金属錯体化合物を、得られる金属超微粒子中の金属成分の含有量が80〜95重量%となるように熱処理することを特徴とする金属超微粒子の製造方法。
- 金属超微粒子とともにジスルフィドを生成させる請求項1又は2に記載の製造方法。
- 得られる金属超微粒子中の有機成分として4級アンモニウム塩型金属錯体化合物の対カチオンである[R1R2R3R4N]に由来の炭素数12〜18のアルキル基成分を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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