JP3578765B2 - 縫糸把持装置 - Google Patents

Description

《発明の分野》
本発明は、全体として、縫糸又は他のコード状材料を係蹄するための装置に関する。更に詳細には、本発明は、開放外科手術及び閉鎖外科手術の両方で、縫糸を組織を通して引っ張るのに適した縫糸把持装置に関する。
《発明の背景》
外科手術中に縫糸の自由端を把持するための装置が当該技術分野で周知である。このような装置の一つには、細長い要素が設けられている。この要素は、可撓性の閉鎖ループを一端に有する。細長い要素は、ループをシャフトの先端に引っ込めたり先端の外に突出させたり交互に行うことができるように、中空シャフトの内側に入れ子式に取り付けられている。使用にあたっては、シャフトの先端を把持されるべき縫糸の自由端の近くに持っていき、ループをシャフトの先端から外に突出させるように装置を操作する。縫糸の自由端がループを通って延びるまで装置を更に操作する。次いで、縫糸を把持してこれをシャフトの先端にぴったりと保持するようにループをシャフトに引っ込める。
上述の種類の装置には幾つかの欠点がある。一つの欠点は、縫糸の中間部分には近づくことができるけれども、縫糸の自由端に近づくのが困難（不可能）な場合が多いということである。これは、多くの場合に視界が極めて制限されており且つ手術を行う空間が比較的制限された閉鎖手術において特にいえることである。更に、多くの外科手術では、縫糸の自由端は、把持される前に軟らかな組織に通し、次いで結索する必要がある。こうした場合には、針を縫糸の自由端に取り付け、次いで、縫糸把持装置を使用する前に別の外科器具を使用して軟らかな組織にこれを通す操作を行う必要がある。縫糸を通したり係蹄するのにこのような操作器具の使用を必要とすることは、特に閉鎖手術を行う場合、不便であり且つ煩わしいことである。
《発明の目的》
従って、本発明の目的は、縫糸をその長さに沿った任意の箇所で容易に且つ便利に把持するようになった縫糸把持装置を提供することである。
本発明の別の目的は、開放外科手術及び閉鎖外科手術の両方で使用できる縫糸把持装置を提供することである。
本発明の更に別の目的は、縫糸を固定的に係蹄し、その後、縫糸を装置に対して或る程度動かすことのできる縫糸把持装置を提供することである。
本発明の他の目的は、軟らかな組織の向こう側の縫糸を把持する前に軟らかな組織を穿孔するようになっており、これによって、軟らかな組織を通して縫糸把持装置を後方に引出すときに縫糸を軟らかな組織に通すことができる縫糸把持装置を提供することである。
《発明の概要》
本発明のこれらの目的及び他の目的は、剛性の中空シャフト、ロッド、細長い第１ワイヤ状要素、細長い第２ワイヤ状要素、及び作動装置からなる縫糸把持装置によって達成される。
更に詳細には、剛性の中空シャフトは、基端、この基端と隣接した基端部分、先の尖った先端、この先端と隣接した先端部分、及び基端と先端との間を延びる内腔を有する。本発明の好ましい実施例では、シャフトの基端部分の内径及び外径は、シャフトの先端部分の内径及び外径よりも大きい。本発明の一つの好ましい実施例によれば、シャフトの先端部分は湾曲している。
ロッドは、基端及び先端を持つ中実の要素である。ロッドは、シャフトの基端部分に入れ子式に配置されている。更に特定的には、ロッドの長手方向長さは、シャフトの基端部分の長手方向長さよりも僅かに大きい。従って、ロッドは、（ｉ）ロッドの先端がシャフトの基端部分と先端部分が出会う点から基端方向に間隔を隔てられた最も基端側の位置と、（ii）ロッドの先端がシャフトの基端部分と先端部分とが出会う点と実質的に整合した最も先端側の位置との間で移動できる。
第１及び第２のワイヤ状要素の各々は、基端及び先端を夫々有する。これらのワイヤ状要素の基端はロッドの先端に取り付けられ、これによって、ワイヤ状要素はロッドと関連して移動する。更に、夫々のワイヤ状要素は、通常は、少なくとも先端部分が曲がっており、即ち互いから遠ざかるように末広がりになっている。更に、第１ワイヤ状要素は、実質的にフック形状の形体を形成するように、その先端の直ぐ近くが半径方向内方に曲がっている。
第１及び第２のワイヤ状要素の長手方向長さは、ロッドがその最も基端側の位置にある場合、第１及び第２のワイヤ状要素の先端がシャフトの先端部分内に配置されるように選択される。この位置では、第１及び第２のワイヤ状要素の先端は、互いからほんの僅か間隔を隔てられた関係で配置されている。しかしながら、ロッドがその最も先端側の位置にある場合には、第１及び第２のワイヤ状要素の先端はシャフトの先端の外に突出している。この位置では、第１及び第２のワイヤ状要素の先端は互いから遠ざかるように外方に湾曲している。
作動手段は、シャフトの基端及びロッドの基端に取り付けられている。好ましい実施例では、作動手段はシャフトの基端に取り付けられたハウジングを有する。ハウジングは、シャフトの内腔と整合し且つこの内腔に軸線方向に開放した円筒形キャビティを構成する。引き金がハウジングに枢着されており、円筒形キャビティ内に延びている。ピストン状要素は、ロッドの基端に取り付けられており、ハウジングの円筒形キャビティ内に往復動自在に摺動する関係で配置されている。ばねは、ロッドが通常はその上述の最も基端側の位置をとるように、ピストンを基端方向に押圧する。引き金は、ロッドが上述の最も先端側の位置を取るように、ピストンをばねの力に抗して先端方向に移動できる。
従って、ロッドは、通常はその最も基端側の位置にあり、二つのワイヤ状要素の先端は、通常は、シャフトの先端部分内にあるということは理解されよう。二つのワイヤ状要素の先端がシャフトの先端部分内にある場合には、シャフトの先の尖った先端を、ワイヤ状要素の先端で干渉されることなく、軟らかな組織に押し通すことができるということは理解されるべきである。
装置は、手術室で一本の縫糸を掴むのに使用できる。とりわけ、この装置は、軟らかな組織の向こう側で１本の縫糸を把持し、この縫糸を軟らかな組織に再び通すのに使用できる。
更に詳細に述べると、この場合には、装置の先の尖った先端を先ず最初に軟らかな組織に押し通す。次いで、軟らかな組織を通して後方に運ばれるべき縫糸の一部に先端が届くように装置の先端を操作する。次に、引き金を引いてロッドをその最も先端側の位置に向かって移動させる。これによりワイヤ状要素の先端をシャフトの先端から押し出し、これらを互いから末広がりに遠ざける。次いで、工具を必要に応じて更に操作し、第１及び第２のワイヤ状要素の先端を目標縫糸のいずれかの側に通す。このように更に操作を行うと、二つのワイヤ状要素の末広がりの端部が所定長さの目標縫糸を包囲するための囲いを自然に形成するということは理解されるべきである。
その後、引き金を離し、ロッドをその最も後方の位置に戻す。これを行うと、ワイヤ状要素の先端がシャフトの先端部分内に引っ込み、シャフトの先端部分に再び入るときにワイヤ状要素が互いに向かって後方に移動する。これと同時に、第１ワイヤ状要素の先端にあるフックが目標縫糸の側方を通過するとき、所定長さの縫糸を把持し、これをシャフトの先端に向かって後方に運ぶ。フックがシャフトの先端に入るとき、縫糸の部分もまたシャフトの先端に運び込まれ、シャフトの先端と協働するフックによってシャフトの先端部分内に保持される。フック及びシャフトは、縫糸をシャフトにぴったりとくっつけるような大きさになっており、更に好ましくは、縫糸はシャフトの内部にあるときにフックの周りで幾分自由に摺動する。次いで、シャフトの先端を穿孔した組織から引抜き、縫糸を軟らかな組織に通すように、縫糸をシャフトとともに移動する。
その後、引き金を再び引くことによって二つのワイヤ状要素をシャフトの先端の外に再び突出させ、これによって縫糸を装置から外すことができるようにすることによって、縫糸を工具から離す。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらの目的及び他の目的及び特徴は、同様の部分に同じ参照番号が附してある添付図面を参照して、以下の本発明の好ましい実施例を読めば、更によく理解されるであろう。
第１図は、本発明に従って形成された縫糸把持工具の、ロッドが上述の最も基端側の位置で示してある、一部を切除し、一部を断面で示す側面図であり、
第２図は、本発明に従って形成された縫糸把持工具の、ロッドが上述の最も先端側の位置で示してある、一部を切除し、一部を断面で示す側面図であり、
第３図は、最も先端側の位置にあるロッド及び縫糸又は同様の材料の両側に配置されたワイヤ状要素を示す。一部を切除し、一部を断面で示す側面図であり、
第４図は、シャフトの先端部分に部分的に引き込まれており且つ一本の縫糸を実質的に取り囲んだワイヤ状要素を示す、シャフトの側面図であり、
第５図は、シャフト内に最も基端側の位置まで引っ込められ、縫糸を工具に把持するワイヤ状要素を示す、シャフトの先端部分の部分断面側面図である。
《実施例》
添付図面、特に第１図及び第２図を参照すると、これらの図には縫糸把持工具５が示してあり、この工具が、剛性中空シャフト10、ロッド12、細長い第１ワイヤ状要素15、細長い第２ワイヤ状要素20、及び作動装置25を有する。
更に特定的には、剛性中空シャフト10は、基端30、基端30と隣接した基端部分35、先の尖った先端40、先端と隣接した先端部分45、及び基端30から先端40まで延びる内腔50を有する。本発明の好ましい実施例では、シャフト10の基端部分35の内径及び外径は、シャフトの先端部分45の内径及び外径よりも大きい。本発明の一実施例によれば、シャフト10の先端部分45は湾曲している。勿論、所望であれば、シャフトの先端部分45を真っ直ぐに形成してもよいということは理解されるべきである。
ロッド12は、基端55及び先端60を持つ中実の要素である。ロッド12は、シャフト10の基端部分35に入れ子式に配置されている。更に特定的には、ロッド12の長手方向長さは、シャフトの基端部分35の長手方向長さよりも僅かに大きい。従って、ロッド12は、（ｉ）ロッド12の先端60がシャフトの基端部分と先端部分とが出会う点から基端方向に間隔を隔てられた最も基端側の位置（第１図参照）と、（ii）ロッド12の先端60がシャフトの基端部分と先端部分とが出会う点と実質的に整合した最も先端側の位置（第２図参照）との間で移動できる。
第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の各々は、基端65、70、及び先端75、80を夫々有する（第３図参照）。これらのワイヤ状要素の基端65及び70はロッド12の先端60に取り付けられ、これによって、ワイヤ状要素15及び20はロッド12と関連して移動する。更に、夫々のワイヤ状要素15及び20は、通常は、少なくとも先端部分75及び80が曲がっており、即ち互いから遠ざかるように末広がりになっている。更に、第１ワイヤ状要素15は、全体に参照番号85を附した実質的にフック形状の形体を形成するように、その先端75の直ぐ近くが半径方向内方に曲がっている。
第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の長手方向長さは、ロッド12がその最も基端側の位置にある（第１図参照）場合に、第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の先端75及び80がシャフト10の先端部分45内に配置されるように選択される。この位置では、第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の先端75及び80は、互いからほんの僅か間隔を隔てられた関係で配置されている。しかしながら、ロッド12がその最も先端側の位置（第２図参照）にある場合には、第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の先端75及び80はシャフト10の先端40の外に突出している。この位置では、第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の先端75及び80は互いから遠ざかるように外方に湾曲している（第３図参照）。
作動手段25は、シャフト10の基端30及びロッド12の基端55に取り付けられている。好ましい実施例では、作動手段25はシャフト10の基端30に取り付けられたハウジング90を有する。ハウジング90は、シャフト10の内腔50と整合し且つこの内腔に軸線方向に開放した円筒形キャビティ95を構成する。引き金100がハウジングに枢着されており、円筒形キャビティ内に延びている。ピストン状要素105は、ロッド12の基端55に取り付けられており、ハウジングの円筒形キャビティ95内に往復動自在に摺動する関係で配置されている。ばね110は、ロッド12が通常はその上述の最も基端側の位置（第１図参照）をとるように、ピストン105を基端方向に押圧する。引き金100は、ロッド12が上述の最も先端側の位置（第２図参照）を取るように、ピストン105をばね110の力に抗して先端方向に移動できる。
従って、ロッド12は、通常はその最も基端側の位置（第１図参照）にあり、二つのワイヤ状要素15及び20の先端75及び80は、通常は、シャフト10の先端部分45内にあるということは理解されよう。二つのワイヤ状要素15及び20の先端75及び80がシャフト10の先端部分45内にある場合には、シャフト10の先の尖った先端40を、ワイヤ状要素15及び20の先端75及び80で干渉されることなく、軟らかな組織に押し通すことができるということは理解されるべきである。
装置５は、手術室で一本の縫糸115を掴むのに使用できる。とりわけ、この装置は、軟らかな組織120の向こう側118で１本の縫糸115を把持し、この縫糸を軟らかな組織に再び通すのに使用できる。
更に詳細に述べると、この場合には、装置５の先の尖った先端40を先ず最初に軟らかな組織120に押し通す。次いで、軟らかな組織120を通して後方に運ばれるべき縫糸115の一部に先端40が届くように装置５の先端40を操作する。次に、引き金100を引いてロッド12をその最も先端側の位置に向かって移動させる。これによりワイヤ状要素15及び20の先端75及び80をシャフト10の先端40から押し出し、これらを互いから末広がりに遠ざける（第３図参照）。次いで、工具５を必要に応じて更に操作し、第１及び第２のワイヤ状要素15及び20の先端75及び80を目標縫糸115のいずれかの側に通す。このように更に操作を行うと、二つのワイヤ状要素15及び20の末広がりの端部が所定長さの目標縫糸115を包囲するための囲いを自然に形成するということは理解されるべきである。
その後、引き金100を離し、ロッド12をその最も後方の位置に戻す。これを行うと、ワイヤ状要素の先端75及び80がシャフト10の先端部分45内に引っ込み、シャフト10の先端部分45に再び入るときにワイヤ状要素15及び20が互いに向かって後方に移動する（第４図参照）。これと同時に、第１ワイヤ状要素15の先端にあるフック85が目標縫糸115の側方を通過するとき、所定長さの縫糸を把持し、これをシャフトの先端に向かって後方に運ぶ。フック85がシャフトの先端に入るとき、縫糸115の部分もまたシャフトの先端に運び込まれ、シャフトの先端40と協働するフック85によってシャフトの先端部分内に保持される。フック及びシャフトは、縫糸をシャフトにぴったりとくっつけるような大きさになっており、更に好ましくは、縫糸はシャフトの内部にあるときにフックの周りで幾分自由に摺動する。次いで、シャフトの先端40を穿孔した組織120から引抜き、縫糸115をシャフトとともに移動して縫糸を軟らかな組織に通す。
その後、引き金100を再び引くことによって二つのワイヤ状要素15及び20をシャフトの先端の外に再び突出させ、これによって縫糸115を装置５から外すことができるようにすることによって、縫糸を工具から離す。
本発明の好ましい実施例についての以上の詳細な説明から、当業者には本発明の多くの変更、変形、及び用途が明らかであろう。従って、以上の記載は単なる例示であって本発明を限定するものではないということは理解されるべきである。本発明は、本明細書に添付した請求の範囲によってのみ限定される。

Claims (3)

1. コード状対象物を把持するための装置において、
   基端、先が尖った先端、及び前記基端から前記先端まで軸線方向に延びる内腔を持つ実質的に剛性の中空シャフトと、
   前記シャフトの内腔に関して往復動自在に摺動する関係で前記シャフトの内腔内に配置された、基端及び先端を持つロッドと、
   先端及び基端を各々有する第１及び第２のワイヤ状要素であって、該第１及び第２のワイヤ状要素は、前記ロッドの前記先端からこれを延長する方向に延びるように夫々の基端が前記ロッドの前記先端に取り付けられており、前記第１のワイヤ状要素の前記先端はフック形状形体を構成し、前記第２のワイヤ状要素の前記先端は実質 的に直線とされ、前記第１及び第２のワイヤ状要素の前記先端は、互いから遠ざかるようにばね負荷されている、第１及び第２のワイヤ状要素と、
   前記ロッド及び前記両ワイヤ状要素を、前記両ワイヤ状要素の前記先端が前記シャフト内に収容された第１位置と、前記両ワイヤ状要素の前記先端が互いに対して末広がりになった関係をなして前記シャフトの前記先端から外方に延びる第２位置との間で移動させるため、前記ロッドの前記基端及び前記シャフトの前記基端に取り付けられた作動手段とを有し、
   前記第２位置にある前記両ワイヤ状要素は、コード状対 象物を包囲するようにされ、
   前記コード状対象物が前記両ワイヤ状要素の間に配置さ れた状態で前記第１位置にある前記両ワイヤ状要素は、 前記両ワイヤ状要素の間で前記コード状対象物の摺動を 可能にするようにされた、装置。
2. 前記シャフトの前記先端は、湾曲している、請求項１に記載の装置。
3. 前記作動手段は、前記ロッド及び前記両ワ イヤ状要素をそれらの第１位置に向かって付勢するためのばね手段を有する、請求項１に記載の装置。

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