JP3578724B2 - 下肢上肢血圧指数測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下肢上肢血圧指数を測定する下肢上肢血圧指数測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、下肢における血圧値(以下、下肢血圧値という)は上肢における血圧値(以下、上肢血圧値という)よりも高い。しかし、下肢の動脈に狭窄があると、下肢血圧値は上肢血圧値よりも低くなる。このことを利用して下肢動脈の狭窄を診断するために、下肢血圧値と上肢血圧値との比である下肢上肢血圧指数を算出する下肢上肢血圧指数測定装置が提案されている。たとえば、特許第3027750号公報に記載された装置がそれである。
【0003】
下肢上肢血圧指数を算出するためには、下肢血圧値および上肢血圧値を測定しなければならない。下肢血圧値および上肢血圧値を測定するためには、カフを生体の下肢または上肢に巻回し、そのカフの圧迫圧力を徐速変化させる過程でカフに発生する信号に基づいて血圧値を測定する形式の血圧測定装置が一般に使用される。カフを用いる形式の血圧測定装置は信頼性の高い血圧値が得られるからである。カフを用いて測定された下肢血圧値および上肢血圧値に基づいて算出される下肢上肢血圧指数は信頼性が高く、精度よく下肢動脈の狭窄が診断できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、カフを用いる形式の血圧測定装置により血圧値を測定する場合には、カフの圧迫圧力を、一旦、最高血圧値よりも高い圧力に設定された目標圧力まで昇圧する必要がある。また、正常な者であれば、下肢における最高血圧値は上肢における最高血圧値よりも高いので、下肢血圧値を測定する場合には、上肢血圧値を測定する場合よりもさらに高い目標圧力までカフの圧迫圧力を昇圧する必要がある。たとえば、上肢血圧測定装置では、目標圧力は180mmHg程度が一般的であるのに対し、下肢血圧測定装置では、目標圧力は240mmHg程度に設定される。そのため、下肢血圧値を測定する際に患者に与える苦痛が比較的大きいという問題があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、下肢動脈の狭窄を診断する際の患者の苦痛が少ない下肢上肢血圧指数測定装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、下肢脈波から得られる情報にも下肢動脈の狭窄に関連して変動する情報(これを狭窄関連脈波情報とする)があることを見いだした。そして、その狭窄関連脈波情報に基づいて下肢動脈の狭窄についての予備的な診断を行い、下肢動脈に狭窄があると疑われる場合にのみ下肢上肢血圧指数を算出すれば、下肢動脈の狭窄を診断する際の患者の苦痛を少なくすることができるとの考えに至った。本発明は、係る思想に基づいてなされたものである。
【0007】
すなわち、前記目的を達成するための請求項1に係る発明は、生体の下肢に巻回されるカフを用いてその下肢における血圧値である下肢血圧値を測定する下肢血圧測定装置と、その生体の上肢に巻回されるカフを用いてその上肢における血圧値である上肢血圧値を測定する上肢血圧測定装置と、その下肢血圧測定装置により測定された下肢血圧値とその上肢血圧測定装置により測定された上肢血圧値とに基づいて、下肢上肢血圧指数を算出する下肢上肢血圧指数算出手段とを備えた下肢上肢血圧指数測定装置であって、その生体の下肢に装着され、前記下肢血圧測定装置による下肢血圧値の測定に先立って、下肢脈波を検出する下肢脈波検出装置と、前記下肢脈波検出装置により検出された下肢脈波に基づいて、下肢の狭窄に関連して変動する狭窄関連脈波情報を決定する狭窄関連脈波情報決定手段と、前記狭窄関連脈波情報決定手段により決定された狭窄関連脈波情報が、予め設定された異常範囲内の値であることに基づいて下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する予備判定手段と、その予備判定手段により狭窄の疑いがあると判定された場合には、下肢上肢血圧指数を算出するために、前記下肢血圧測定装置および前記上肢血圧測定装置により血圧測定を実行させる血圧測定起動手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、下肢血圧測定装置による下肢血圧値の測定に先立って、狭窄関連脈波情報決定手段により、下肢脈波検出装置によって検出される下肢脈波から狭窄関連脈波情報決定され、予備判定手段により、その狭窄関連脈波情報が予め設定された異常範囲内の値であることに基づいて下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定された場合には、血圧測定起動手段により自動的に下肢血圧測定装置および上肢血圧測定装置による血圧測定が実行されて下肢上肢血圧指数が算出されるが、狭窄の疑いがないと判定された場合には下肢血圧測定装置および上肢血圧測定装置による血圧測定が実行されないので、下肢動脈の狭窄を診断する際の患者の苦痛が少なくなる。
【0011】
また、前記目的を達成するための請求項に係る発明は、前記狭窄関連脈波情報決定手段として、次の3つの手段のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
(1)前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波に基づいて、前記下肢を脈波が伝播する速度に関連する下肢脈波伝播速度情報を算出する下肢脈波伝播速度情報算出手段
(2)前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波の先鋭度を算出する先鋭度算出手段
(3)前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波の上昇部分の特徴値である上昇特徴値を決定する上昇特徴値決定手段
【0012】
また、前記目的を達成するための請求項に係る発明は、前記狭窄関連脈波情報算出手段として、前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波に基づいて、前記下肢を脈波が伝播する速度に関連する下肢脈波伝播速度情報を算出する下肢脈波伝播速度情報算出手段を含む請求項1に記載の下肢上肢血圧指数測定装置であって、前記生体の上肢に装着されて上肢脈波を検出する上肢脈波検出装置と、その上肢脈波検出装置により検出された上肢脈波に基づいて、前記上肢を脈波が伝播する速度に関連する上肢脈波伝播速度情報を算出する上肢脈波伝播速度情報算出手段と、その上肢脈波伝播速度情報算出手段により算出される上肢脈波伝播速度情報に基づいて、予め記憶された関係から下肢脈波伝播速度情報の正常範囲を決定する正常範囲決定手段と、前記下肢脈波伝播速度情報算出手段により算出された下肢脈波伝播速度情報が、前記正常範囲決定手段により決定された正常範囲外であることに基づいて、下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する予備判定手段とをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、正常範囲決定手段により、上肢脈波伝播速度情報に基づいて予め記憶された関係から下肢脈波伝播速度情報の正常範囲が決定される。そして、予備判定手段により、下肢脈波伝播速度情報算出手段により算出された下肢脈波伝播速度情報が正常範囲外であることに基づいて下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定される。上記正常範囲は、測定毎に実際に測定された上肢脈波伝播速度情報に基づいて決定されるので、実際に測定された下肢脈波伝播速度情報が多数の患者に当てはまるように設定された一般的な正常範囲にあるか否かに基づいて下肢動脈の狭窄の疑いが判断される場合に比較して、下肢動脈における狭窄の有無の予備的判断がより精度よく行える。
【0014】
また、前記目的を達成するための請求項に係る発明は、請求項1に記載の下肢上肢血圧指数測定装置であって、前記下肢脈波検出装置は、前記生体の左右の下肢にそれぞれ装着されており、前記狭窄関連脈波情報決定手段は、左下肢脈波および右下肢脈波に基づいて前記狭窄関連脈波情報をそれぞれ決定するものであることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、左下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報と右下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報とを比較して両者の相違が大きい場合には、左右いずれかの下肢に狭窄があり、その狭窄のために両者の相違が大きくなっている可能性があると判断できるので、下肢動脈における狭窄の有無の予備的診断がより精度よく行える。
【0016】
また、前記目的を達成するための請求項に係る発明は、請求項に記載の下肢上肢血圧指数測定装置であって、前記狭窄関連脈波情報決定手段においてそれぞれ決定された左下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報と右下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報との相違値が予め設定された基準値以上である場合には、下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する予備判定手段を含むことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、左下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報と右下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報との相違値が基準値以上である場合には、予備判定手段により、狭窄の疑いがあると判定されるので、下肢動脈における狭窄の有無の予備的判断がより精度よく行える。
【0018】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用された足首上腕血圧指数測定装置10の構成を説明するブロック図である。すなわち、図1の足首上腕血圧指数測定装置10は、下肢として足首12(右足首12Rおよび左足首12L)が選択され、上肢として上腕14(右上腕14Rおよび左上腕14L)が選択された下肢上肢血圧指数測定装置である。なお、この足首上腕血圧指数測定装置10による測定は、上腕14と足首12とが略同じ高さとなるように、患者16が伏臥位・側臥位・側臥位のいずれかの状態で測定される。
【0019】
足首12R,12Lには足首用カフ18R,18Lがそれぞれ巻回され、上腕14R,14Lには上腕用カフ20R,20Lがそれぞれ巻回されている。これらのカフ18,20は、巻回している部位を圧迫する圧迫帯であり、布或いはポリエステル等の伸展性のない素材から成る帯状外袋内にゴム製袋を有している。
【0020】
上腕用カフ20R,20Lは配管22a,22bを介して血圧測定装置本体24a,bにそれぞれ接続され、足首用カフ18R,18Lは配管22c,dを介して血圧測定装置本体24c,dにそれぞれ接続されている。
【0021】
それら4つの血圧測定装置本体24a,b,c,dは同一の構成を有するので、上腕用カフ20Lと接続されている血圧測定装置本体24bを例として血圧測定装置本体24の構成を説明する。血圧測定装置本体24bは、調圧弁26b,圧力センサ28b,静圧弁別回路30b,脈波弁別回路32bを備えており、前記配管22bは圧力センサ28bおよび調圧弁26bに接続されている。また、調圧弁26bは、配管34を介して空気ポンプ36に接続されている。
【0022】
上記調圧弁26bは、空気ポンプ36により発生させられた圧力空気を上腕用カフ20L内へ供給することを許容する圧力供給状態、上腕用カフ20L内の圧力を維持する圧力維持状態、電動バルブの開度が制御されることにより上腕用カフ20L内の圧力を所定の速度で徐々に排圧する徐速排圧状態、および上腕用カフ20L内を急速に排圧する急速排圧状態の4つの状態に切り替えられるようになっている。
【0023】
圧力センサ28bは、上腕用カフ20L内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路30bおよび脈波弁別回路32bにそれぞれ供給する。静圧弁別回路30bはローパスフィルタを備え、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ圧PCを表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKを図示しないA/D変換器を介して演算制御装置38へ供給する。
【0024】
脈波弁別回路32bはバンドパスフィルタを備え、圧力信号SPの振動成分である脈波信号SMを周波数的に弁別してその脈波信号SMを図示しないA/D変換器を介して演算制御装置38へ供給する。この脈波信号SMは、上腕用カフ20Lにより圧迫される左上腕14Lの動脈からの上腕脈波WAを表すので、脈波弁別回路32bは上肢脈波検出装置として機能している。また、同様に、血圧測定装置本体24aの脈波弁別回路32aは、右上腕14Rの動脈からの上腕脈波WAを表す脈波信号SMを弁別する上肢脈波検出装置として機能し、血圧測定装置本体24cの脈波弁別回路32cは、右足首12Rの動脈からの足首脈波WLを表す脈波信号SMを弁別する下肢脈波検出装置として機能し、血圧測定装置本体24dの脈波弁別回路32dは、左足首12Lの動脈からの足首脈波WLを表す脈波信号SMを弁別する下肢脈波検出装置として機能する。
【0025】
なお、上腕用カフ20L、血圧測定装置本体24b、および空気ポンプ36により上腕血圧測定装置40Lが構成される。同様に、上腕用カフ20R、血圧測定装置本体24a、および空気ポンプ36により上腕血圧測定装置40Rが構成され、足首用カフ18R、血圧測定装置本体24c、および空気ポンプ36により足首血圧測定装置42Rが構成され、足首用カフ18L、血圧測定装置本体24d、および空気ポンプ36により足首血圧測定装置42Lが構成される。
【0026】
心音マイク44は、生体の胸部表皮上の所定部位に装着されて、心音を表す心音信号SHを検出して出力する。心音マイク44から出力された心音信号SHは、A/D変換器46を介して演算制御装置38へ供給される。上記心音信号SHが表す心音は、生体の心拍に同期して発生する心拍同期信号であることから、心音信号SHを出力する心音マイク44は心拍同期信号検出装置として機能している。
【0027】
上記演算制御装置38は、CPU48,ROM50,RAM52,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU48は、ROM50に予め記憶されたプログラムに従ってRAM52の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して空気ポンプ36および血圧測定装置本体24内の調圧弁26を制御するとともに、足首上腕血圧指数(Ankle/Arm Blood Pressure =ABI)の算出などを行い、その算出したABIなどを表示器54に表示する。
【0028】
図2は、上記演算制御装置38の制御機能のうち、ABIの測定が必要なほどに狭窄の疑いがあるか否かを判定するための予備的な診断に関する機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【0029】
カフ圧制御手段60は、血圧測定においては、空気ポンプ36およびそれに接続された4つの調圧弁26a,b,c,dを制御して、上腕用カフ20および足首用カフ18のカフ圧PC,PC,PC,PCを、所定の目標圧力値PCM(たとえば、上腕用カフ20については180mmHg程度、足首用カフ18については240mmHg程度の圧力値)まで急速昇圧させ、その後、5mmHg/sec程度の速度で徐速降圧させる。また、狭窄関連脈波情報を算出するための脈波の検出においては、空気ポンプ36およびそれに接続された4つの調圧弁26a,b,c,dを制御して、カフ圧PC,PC,PC,PCを所定の脈波検出圧まで昇圧させた後、一定時間その圧力を保持させる。上記脈波検出圧は、一般的な最低血圧値よりも低く、且つカフ18,20にそのカフ下の動脈において発生した圧力振動波が伝達されてカフ18,20にその圧力振動波を表す脈波が十分な信号強度で発生するような圧力であり、たとえば60mmHgである。
【0030】
上昇特徴値決定手段62は、カフ圧制御手段60により足首用カフ18が前記脈波検出圧に維持されている状態で脈波弁別回路32cにより抽出される右足首脈波WLおよび脈波弁別回路32dにより抽出される左足首脈波WLの上昇部分(すなわち立ち上がり点からピークまで)の特徴を表す上昇特徴値をそれぞれ決定する。図3は、足首脈波WLを例示する図であり、上昇特徴値には、たとえば図3に示すものが含まれる。すなわち、立ち上がり点aからピークbまでの足首脈波WLが上昇する期間として算出されるU−time(msec)、立ち上がり点aからピークbまでで増加率が最大となる点すなわち最大傾斜点cにおける接線Lの傾きγ、立ち上がり点aから最大傾斜点cまでの前半時間、最大傾斜点cからピークbまでの後半時間、その前半時間と後半時間との比、などが上昇特徴値に含まれる。足首12R,12Lの上流側の下肢における狭窄の程度が大きいほど、足首脈波WL, WLは立ち上がり部分の傾斜がなだらかになる傾向にあるので、足首12R,12Lの上流側の下肢に狭窄があると、上昇特徴値はその狭窄に関連して変化する。たとえば、U−timeは、上流側における狭窄の程度が大きいほど長くなる。従って、足首脈波WL, WLから算出される上昇特徴値は狭窄関連脈波情報であり、上昇特徴値決定手段62は狭窄関連脈波情報決定手段として機能する。
【0031】
先鋭度算出手段64は、カフ圧制御手段60により足首用カフ18が前記脈波検出圧に維持されている状態で脈波弁別回路32cにより抽出される右足首脈波WLおよび脈波弁別回路32dにより抽出される左足首脈波WLの先鋭度をそれぞれ算出する。上記先鋭度とは、脈波の上方への尖り具合を示す値であり、たとえば、図3に示す一拍分の区間の足首脈波WLを積分(加算)することにより算出される脈波面積Sを、ピーク高さHと脈拍周期Wとの積(W×H)で割ることにより、すなわちS/(W×H)なる演算が行われることにより算出される正規化脈波面積VR、最高ピ−クbまでの前半部の面積S1あるいは最高ピ−クb以降の後半部の面積S2を正規化したもの、H×(2/3)に相当する高さの幅寸法Iを正規化したI/W等が先鋭度である。また、上記正規化脈波面積VRは、%MAPとも称され、ピーク高さHすなわち脈圧に対する脈波面積Sの重心位置の高さGの割合(=100×H/G)としても算出できる。足首12R,Lの上流側の下肢に狭窄があると、足首脈波WL, WLの振幅は弱くなり、脈波の上方への尖り具合は鈍くなる。すなわち、足首12R,12Lの上流側の下肢に狭窄があると、上記先鋭度は小さくなるので、足首脈波WL, WLから算出される先鋭度は狭窄関連脈波情報であり、先鋭度算出手段64は狭窄関連脈波情報決定手段として機能する。
【0032】
上肢脈波伝播速度情報算出手段66は、上肢を含む所定の2部位間(ただし下肢は含まない)を脈波が伝播する速度に関連する上肢脈波伝播速度情報を算出するものである。上記2部位は、たとえば、上腕用カフ20が装着されている部位および心臓である。また、上肢脈波伝播速度情報には、上肢を脈波が伝播する時間である上肢脈波伝播時間や上肢を脈波が伝播する速度である上肢脈波伝播速度が含まれる。上記2部位を上腕用カフ20が装着されている部位と心臓とする場合には、たとえば、心音マイク44により検出される心音の周期的に繰り返す所定の部位(I音の開始点など)が発生した時点と、上肢脈波検出装置として機能する脈波弁別回路32により抽出される上腕脈波WAの周期的に繰り返す所定部位(立ち上がり点など)が発生した時点との時間差を上肢脈波伝播時間hbDT(sec)として算出し、或いは、その上肢脈波伝播時間hbDTに基づいて予めROM50に記憶された式1から上肢脈波伝播速度hbPWV(cm/sec)を算出する。尚、式1において、L1(cm)は大動脈弁から大動脈を経て上腕用カフ20が装着される部位までの距離であり、予め実験に基づいて決定された一定値が用いられる。
(式1) hbPWV = L1/hbDT
【0033】
下肢脈波伝播速度情報算出手段68は、下肢を含む所定の2部位間を脈波が伝播する速度に関連する下肢脈波伝播速度情報を算出する。上記2部位は、たとえば、心臓および足首用カフ18Rまたは18Lが装着されている部位である。また、下肢脈波伝播速度情報には、上肢脈波伝播速度情報と同様に、下肢脈波伝播時間や下肢脈波伝播速度が含まれる。上記2部位間において下肢に狭窄があると、下肢脈波伝播時間は長くなり下肢脈波伝播速度は遅くなるので、下肢脈波伝播速度情報は狭窄関連脈波情報であり、下肢脈波伝播速度情報算出手段68は狭窄関連脈波情報決定手段として機能する。上記2部位を心臓および足首用カフ18が装着されている部位とする場合には、たとえば、心音マイク44により検出される心音の周期的に繰り返す所定の部位(I音の開始点など)が発生した時点と、下肢脈波検出装置として機能する脈波弁別回路32cおよび32dにより抽出される足首脈波WL, WLの周期的に繰り返す所定部位(立ち上がり点など)が発生した時点との時間差を下肢脈波伝播時間baDT(sec)として算出し、或いは、その下肢脈波伝播時間baDTに基づいて予めROM50に記憶された式2から下肢脈波伝播速度baPWV(cm/sec)を算出する。尚、式2において、L2(cm)は大動脈弁から足首用カフ18が装着される部位までの距離であり、予め実験に基づいて決定された一定値が用いられる。
(式2) baPWV = L2/baDT
【0034】
正常範囲決定手段70は、上肢脈波伝播速度情報算出手段66により算出された上肢脈波伝播速度情報に基づいて、上肢脈波伝播速度情報と下肢脈波伝播速度情報との間の予め記憶された関係から下肢脈波伝播速度情報の正常範囲を決定する。上肢および下肢ともに狭窄がない場合には、上肢脈波伝播速度情報と下肢脈波伝播速度情報との間には一定の比例関係が成立するので、上肢に狭窄がないと仮定して、上肢脈波伝播速度情報算出手段68により実際に算出された上肢脈波伝播速度情報を用いて上記予め記憶された比例関係から、上記正常範囲を決定するのである。図4は、心臓と上腕との間で算出された上肢脈波伝播速度hbPWVと、心臓と足首との間で算出された下肢脈波伝播速度baPWVとの間の関係を例示する図である。予め記憶された関係として図4に示す関係を用いる場合、たとえば、上肢脈波伝播速度hbPWVから決定される下肢脈波伝播速度baPWVを中心としてその下肢脈波伝播速度baPWVの−10%〜+10%の範囲を正常範囲に決定する。なお、図4において、下肢脈波伝播速度baPWVの方が上肢脈波伝播速度hbPWVよりも速いのは、脈波伝播速度PWVは血管径の1/2乗に反比例して速くなること、および足首の方が上腕よりも血管径が細いことによる。
【0035】
上腕血圧値決定手段72は、カフ圧制御手段60により上腕用カフ20が徐速降圧させられる過程において、順次採取される脈波信号SMまたはSMが表す上腕脈波WA,WAの振幅の変化に基づきよく知られたオシロメトリック法を用いて、右上腕14Rの血圧値BPである右上腕最高血圧値BPASYS(R)・右上腕最低血圧値BPADIA(R)・右上腕平均血圧値BPAMEAN(R)、および左上腕14Lにおける血圧値BPである左上腕最高血圧値BPASYS(L)・左上腕最低血圧値BPADIA(L)・左上腕平均血圧値BPAMEAN(L)を決定し、その決定した右上腕最高血圧値BPASYS(R)、左上腕最高血圧値BPASYS(L)等を表示器54に表示する。
【0036】
相違値算出手段74は、下肢脈波伝播速度情報算出手段68により算出された左下肢の脈波伝播速度情報と右下肢の脈波伝播速度情報との相違値、上昇特徴値決定手段62により決定された左下肢の上昇特徴値と右下肢の上昇特徴値との相違値、および先鋭度算出手段64により算出された左下肢の先鋭度と右下肢の先鋭度との相違値を算出する。上記相違値とは、脈波伝播速度情報などの狭窄関連脈波情報が左右でどの程度異なっているかを示す値であり、たとえば、左右の差または比などである。
【0037】
予備判定手段76は、狭窄関連脈波情報決定手段である下肢脈波伝播速度情報算出手段68、上昇特徴値決定手段62、先鋭度算出手段64によりそれぞれ算出された下肢脈波伝播速度情報、上昇特徴値、先鋭度が、それぞれについて狭窄の疑いがある範囲として設定された異常範囲内の値であることに基づいて、下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する。
【0038】
上記下肢脈波伝播速度情報の異常範囲とは、前記正常範囲決定手段70で決定された正常範囲外の範囲である。また、上昇特徴値の異常範囲および先鋭度の異常範囲は予め実験に基づいて決定されている。上昇特徴値としてU−timeが算出される場合には、異常範囲はたとえば180msec以上に設定され、先鋭度として%MAPが算出される場合には異常範囲はたとえば42%以下に設定される。また、上記下肢脈波伝播速度情報、上昇特徴値、先鋭度の3つのうち少なくとも一つが異常範囲である場合に下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定してもよいし、いずれか2つが異常範囲である場合や、3つすべてが異常範囲である場合に下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定してもよい。なお、下肢脈波伝播速度情報、上昇特徴値、先鋭度は左右の下肢についてそれぞれ決定されるので、下肢動脈の狭窄の疑いは左右の下肢それぞれについて判定できる。
【0039】
予備判定手段76は、さらに、前記相違値算出手段72で算出された下肢脈波伝播速度情報、上昇特徴値、先鋭度の相違値が予め設定された基準値以上であることに基づいて、下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する。相違値が基準値以上となるのは、左右の下肢のいずれか一方に狭窄があるためと考えられるからである。なお、相違値に基づいて下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する場合には、左右いずれの下肢に狭窄の疑いがあるかまでは判定できない。
【0040】
予備判定手段76は、上記下肢脈波伝播速度情報、上昇特徴値および先鋭度がいずれも異常範囲でなく且つ前記相違値が基準値よりも小さい場合には、さらに、上腕血圧値決定手段72により決定された上腕最高血圧値BPASYSが予め設定された最低値(たとえば100mmHg)より小さいかを判断する。このように、上腕最高血圧値BPASYSが予め設定された最低値より小さいかを判断するのは、上腕最高血圧値BPASYSが予め設定された最低値より小さい場合には、上肢に狭窄があることによって上腕最高血圧値BPASYSが低下している可能性があり、上肢にも狭窄がある場合にはABIを算出しても下肢動脈の狭窄を診断することが困難だからである。
【0041】
血圧測定起動手段として機能するABI測定起動手段78は、予備判定手段76により下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定された場合であって上腕最高血圧値BPASYSが前記最低値以上である場合に、上腕血圧値決定手段72および後述する足首血圧値決定手段82を実行させる。なお、一方の下肢のみに狭窄の疑いがある場合には足首血圧値決定手段82により狭窄の疑いのある側の足首12についてのみ血圧測定を実行させる。また、上腕血圧値決定手段72による上腕血圧測定についても予め設定された一方の上腕14についてのみ血圧測定を実行させてもよいが、好ましくは、両側の上腕14について血圧測定を実行させる。
【0042】
下肢血圧測定起動手段80は、予備判定手段76により下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定された場合であって上腕血圧値BPASYSが前記最低値より小さい場合に、足首血圧値決定手段82を実行させる。上腕血圧値BPASYSが前記最低値より小さい場合には、ABIから下肢動脈の狭窄を診断することが困難であるので、足首血圧値BPの絶対値のみによって下肢動脈の狭窄を診断するためである。
【0043】
図5は、演算制御装置38の制御機能のうち、図2に示す機能が実行されることによって下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定された場合に実行される機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【0044】
足首血圧値決定手段82は、ABI測定起動手段78または下肢血圧測定起動手段80により実行させられ、カフ圧制御手段60により狭窄の疑いのある一方または両方の下肢の足首12に巻回された足首用カフ18の圧迫圧力を制御させ、足首用カフ18の圧迫圧力が徐速降圧させられる過程において、順次採取される脈波信号SMまたはSMが表す下肢脈波WL,WLの振幅の変化に基づきよく知られたオシロメトリック法を用いて、右足首12Rにおける血圧値BPである右足首最高血圧値BPLSYS(R)・右足首最低血圧値BPLDIA(R)・右足首平均血圧値BPLMEAN(R)、および左足首12Lにおける血圧値BPである左足首最高血圧値BPLSYS(L)・左足首最低血圧値BPLDIA(L)・左足首平均血圧値BPLMEAN(L)を決定し、その決定した右足首最高血圧値BPLSYS(R)、左足首最高血圧値BPLSYS(L)等を表示器54に表示する。
【0045】
下肢上肢血圧指数算出手段として機能する足首上腕血圧指数算出手段84は、足首血圧値決定手段82により決定された右足首血圧値血圧値BP(R)(たとえば右足首最高血圧値BPLSYS(R))または左足首血圧値BP(L)(たとえば左足首最高血圧値BPLSYS(L))を、上腕血圧値決定手段72により決定された上腕血圧値BPのうち上記足首血圧値BPに対応する上腕血圧値BP(たとえば足首最高血圧値BPLSYSには上腕最高血圧値BPASYSが対応する)で割ることにより右足首上腕血圧指数(=ABIR)または左足首上腕血圧指数(=ABIL)を算出する。そして、その算出したABIR,ABILの値を表示器54に表示する。
【0046】
下肢動脈の狭窄がある場合には、右足首血圧値BP(R)や左足首血圧値BP(L)が低下するので、下肢動脈の狭窄が場合には、これらABIR,ABILは低下する。従って、ABIR,ABILが基準値(たとえば0.9)よりも小さい場合には下肢動脈に狭窄がある疑いが強いと判断できる。なお、ABIの算出において上腕血圧値BPとして右上腕血圧値BP(L)および左上腕血圧値BP(L)のいずれを用いるかは、血圧測定に先立って予め決定されていてもよいが、好ましくは、高い方の値を用いる。高い方の値を用いるとABIが小さくなるので、ABIに基づいて下肢動脈の狭窄を発見しやすくなるからである。
【0047】
図6乃至図9は、図2および図5に示した演算制御装置38の制御機能の要部をさらに具体的に説明するためのフローチャートであって、図6は予備判定のための信号を読み込む信号読み込みルーチンであり、図7はその読み込んだ信号に基づいて予備判定を行う予備判定ルーチンであり、図8はABI測定ルーチンであり、図9は足首血圧測定ルーチンである。
【0048】
まず、図6の信号読み込みルーチンを説明する。図6のステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、血圧測定装置本体24a,b,c,dにそれぞれ備えられている調圧弁26a,b,c,dが圧力供給状態とされ且つ空気ポンプ36が駆動されることにより、足首用カフ18R,18Lおよび上腕用カフ20R,20Lの昇圧が開始され、続くSA2では、4つのカフ18R,18L,20R,20Lのカフ圧PCが、脈波検出圧として設定された60mmHg以上となったか否かが判断される。このSA2の判断が否定された場合は、SA2の判断が繰り返される。
【0049】
そして、カフ圧PCの上昇により上記SA2の判断が肯定されると、続くSA3では、空気ポンプ36が停止され且つ調圧弁26が圧力維持状態に切り替えられることによりカフ圧PCが維持される。上記SA1乃至SA3はカフ圧制御手段60に相当する。
【0050】
続くSA4では、血圧測定装置本体24b,c,dにそれぞれ備えられている脈波弁別回路32b,c,dから供給される脈波信号SM,SM,SMおよび心音マイク44から供給される心音信号SHが一拍分読み込まれる。
【0051】
続いて、カフ圧制御手段60に相当するSA5乃至SA8が実行される。SA5では、調圧弁26c,dが急速排圧状態に切り替えられることにより、足首用カフ18R,Lのカフ圧PC,PCが解放され、続くSA6では、調圧弁26a,26bが再び圧力供給状態に切り換えられ且つ空気ポンプ36が再度駆動されることにより、上腕用カフ20R,20Lの急速昇圧が開始される。続くSA7では、上腕用カフ20R,20Lのカフ圧PC,PCがそれぞれ180mmHgに設定された目標圧迫圧PCM以上となったか否かが判断される。このSA7の判断が否定された場合は、上記SA6以下が繰り返し実行されることによりカフ圧PC,PCの上昇が継続される。
【0052】
そして、カフ圧PC,PCの上昇により上記SA7の判断が肯定されると、続くSA8では、空気ポンプ36が停止され且つ調圧弁26a,26bが徐速排圧状態に切り換えられて、上腕用カフ20R,20L内の圧力が予め定められた5mmHg/sec程度の緩やかな速度で下降させられる。
【0053】
次に、上腕血圧値決定手段72に相当するSA9の血圧値決定ルーチンが実行される。すなわち、脈波弁別回路32a,32bから逐次供給される脈波信号SM,SMが表す上腕脈波WA,WAの振幅が一拍毎に決定され、その振幅の変化に基づいて、よく知られたオシロメトリック方式の血圧値決定アルゴリズムに従って右上腕最高血圧値BPASYS(R)および左上腕首最高血圧値BPASYS(L)等が決定される。
【0054】
続いて、カフ圧制御手段60に相当するSA10において、2つの調圧弁26a,26bが急速排圧状態に切り換えられることにより、上腕用カフ20R,20L内が急速に排圧させられて、信号読み込みルーチンは終了させられる。
【0055】
信号読み込みルーチンが終了させられると、続いて図7の予備判定ルーチンが実行される。図7では、まず上肢脈波伝播速度情報算出手段66に相当するSB1が実行される。SB1では、図6のSA4で読み込まれた心音信号SHに基づいて心音のI音の開始点が決定されるとともに、そのSA4で読み込まれた脈波信号SMに基づいてその脈波信号SMが表す左上腕脈波WAの立ち上がり点が決定され、I音の開始点と左上腕脈波WAの立ち上がり点との時間差すなわち上肢脈波伝播時間hbDTが算出され、さらに、その上肢脈波伝播時間HbDTが前記式1に代入されて上肢脈波伝播速度hbPWVが算出される。
【0056】
続いて正常範囲決定手段70に相当するSB2が実行される。SB2では、上記SB1で算出された上肢脈波伝播速度hbPWVに基づいて、前述の図4の関係から下肢脈波伝播速度baPWVが決定され、その決定された下肢脈波伝播速度baPWVの−10%から+10%の範囲が下肢脈波伝播速度hbPWVの正常範囲に決定される。
【0057】
続いて下肢脈波伝播速度情報算出手段68に相当するSB3が実行されて、右下肢脈波伝播速度baPWV(R)および左下肢脈波伝播速度baPWV(L)が算出される。すなわち、図6のSA4で読み込まれた脈波信号SM,SMに基づいてその脈波信号SM,SMがそれぞれ表す右足首脈波WLおよび左足首脈波WLの立ち上がり点がそれぞれ決定され、続いて、前記SB1で決定された左上腕脈波WAの立ち上がり点と上記右足首脈波WLの立ち上がり点との時間差すなわち右下肢脈波伝播時間baDT(R)、および前記SB1で決定された左上腕脈波WAの立ち上がり点と上記左足首脈波WLの立ち上がり点との時間差すなわち左下肢脈波伝播時間baDT(L)が算出され、さらに、それら右下肢脈波伝播時間baDT(R)および左下肢脈波伝播時間baDT(L)が前記式2に代入されて右下肢脈波伝播速度baPWV(R)および左下肢脈波伝播速度baPWV(L)が算出される。また、算出された右下肢脈波伝播速度baPWV(R)および左下肢脈波伝播速度baPWV(L)は表示器54に表示される。
【0058】
続いて上昇特徴値決定手段62に相当するSB4が実行される。SB4では、図6のSA4で読み込まれた脈波信号SM,SMに基づいてその脈波信号SM,SMがそれぞれ表す右足首脈波WLおよび左足首脈波WLの立ち上がり点およびピークが決定され、右足首脈波WLのピークと立ち上がり点との時間差がU−time(R)として算出され、左足首脈波WLのピークと立ち上がり点との時間差がU−time(L)として算出される。また、算出されたU−time(R),U−time(R)は表示器54に表示される。
【0059】
続いて先鋭度算出手段64に相当するSB5が実行される。SB5では、図6のSA4で読み込まれた脈波信号SMが表す右足首脈波WLについて、その面積Sがピーク高さHと脈拍周期Wとの積(W×H)で割られることにより%MAP(R)が算出されるとともに、図6のSA4で読み込まれた脈波信号SMが表す左足首脈波WLについて、その面積Sがピーク高さHと脈拍周期Wとの積(W×H)で割られることにより%MAP(L)が算出される。また、算出された%MAP(R),%MAP(L)は表示器54に表示される。
【0060】
続くSB6では、前記SB3で算出された右下肢脈波伝播速度baPWV(R)、左下肢脈波伝播速度baPWV(L)、前記SB4で算出されたU−time(R),U−time(L)、上記SB5で算出された%MAP(R),%MAP(L)がそれぞれについて予め設定された異常範囲内にあるか否かが判断される。すなわち右下肢脈波伝播速度baPWV(R)、左下肢脈波伝播速度baPWV(L)については、前記SB2で決定された正常範囲外であるか否かが判断され、U−time(R),U−time(L)については180msec以上であるか否かが判断され、%MAP(R),%MAP(L)については42%以下であるか否かが判断される。そして、それらのうちの少なくとも一つが異常範囲内にある場合にはSB6の判断が肯定される。このSB6の判断が肯定された場合には、下肢動脈に狭窄があることが疑われるので、図8のABI測定ルーチンが実行される。一方、SB6の判断が否定された場合には、相違値算出手段74に相当するSB7が実行される。
【0061】
SB7では、前記SB3で算出された右下肢脈波伝播速度baPWV(R)と左下肢脈波伝播速度baPWV(L)との脈波伝播速度差(絶対値)ΔPWV、前記SB4で算出されたU−time(R)とU−time(L)との差ΔU−time(絶対値)、および前記SB5で算出された%MAP(R)と%MAP(L)との差Δ%MAP(絶対値)が相違値として算出される。
【0062】
続くSB8では、上記SB7で算出されたΔPWV, ΔU−time, Δ%MAPが、それぞれについて予め設定された基準値以上であるか否かが判断される。そして、それらΔPWV, ΔU−time, Δ%MAPのうちの少なくとも一つが基準値以上である場合にはSB8の判断が肯定される。このSB8の判断が肯定された場合には、いずれか一方の下肢の下肢動脈に狭窄の疑いがあるので、図8のABI測定ルーチンが実行されて、両下肢のABIが測定される。このように、SB6またはSB8の判断が肯定された場合にはABI測定ルーチンが実行されるので、SB6およびSB8がABI測定起動手段78に相当する。
【0063】
一方、SB8の判断が否定された場合には、続いてSB9が実行される。SB9では、図6のSA9で決定された上腕最高血圧値BPASYSが最低値として予め設定された100mmHgより小さいか否かが判断される。この判断が肯定された場合には、図9の足首血圧測定ルーチンが実行される。従って、SB9は下肢血圧測定起動手段80に相当する。一方、SB9の判断が否定された場合には、下肢動脈に狭窄の疑いはないと判断されてABI測定ルーチンも足首血圧測定ルーチンも実行させることなく本ルーチンは終了させられる。このように、SB6,SB8,SB9により下肢動脈に狭窄の疑いがあるか否かが判断されるので、SB6,SB8,SB9は予備判定手段76にも相当する。
【0064】
続いて、図8のABI測定ルーチンを説明する。図8のABI測定ルーチンでは、まず、カフ圧制御手段60に相当するSC1乃至SC3が実行される。SC1では、2つの上腕用カフ20R,20Lにそれぞれ接続された調圧弁26a,26b、および図7のSB6またはSB8で狭窄の疑いがあると判定された側の足首用カフ18(SB8において狭窄の疑いがあると判定された場合には両側の足首用カフ18)に接続された調圧弁26cまたは26dが圧力供給状態に切り換えられ、且つ空気ポンプ36が駆動されることにより、2つの上腕用カフ20R,20Lおよび少なくとも一方の足首用カフ18の急速昇圧が開始される。続くSC2では、それらのカフ18,20のカフ圧PCがそれぞれ予め設定された目標圧迫圧PCM(たとえば、上腕用カフ20については180mmHg、足首用カフ18については240mmHg)以上となったか否かがそれぞれのカフ圧PCについて判断される。このSC2の判断が否定された場合は、上記SC1以下が繰り返し実行されることによりカフ圧PCの上昇が継続される。
【0065】
そして、カフ圧PCの上昇により上記SC2の判断が肯定されると、続くSC3では、目標圧迫圧PCMに到達したカフ18,20に接続されている調圧弁26から順に徐速排圧状態に切り替えられて、その調圧弁26に接続されたカフ18,20内の圧力が予め定められた5mmHg/sec程度の緩やかな速度で下降させられる。そして、すべてのカフ圧PCについてSC2の判断が肯定されると空気ポンプ36も停止される。
【0066】
次に、上腕血圧値決定手段72および足首血圧値決定手段82に相当するSC4の血圧値決定ルーチンが実行される。すなわち、脈波弁別回路32から逐次供給される脈波信号SMが表す上腕脈波WAまたは足首脈波WLの振幅が一拍毎に決定され、その振幅の変化に基づいて、よく知られたオシロメトリック方式の血圧値決定アルゴリズムに従って右上腕最高血圧値BPASYS(R)、左上腕最高血圧値BPASYS(L)および右(左)足首最高血圧値BPLSYS等が決定される。
【0067】
次に、カフ圧制御手段60に相当するSC5において、徐速排圧状態にあった調圧弁26が急速排圧状態に切り換えられることにより、カフ18,20内が急速に排圧させられる。
【0068】
続いて足首上腕血圧指数算出手段84に相当するSC6が実行される。SC6では、SC4で決定された右足首最高血圧値BPLSYS(R)または左足首最高血圧値BPLSYS(L)が、SC4で決定された右上腕最高血圧値BPASYS(R)および左上腕最高血圧値BPASYS(L)のうちの高い方の値で割られることによりABIRまたはABILが算出され、その算出されたABIRまたはABILが表示器54に表示される。
【0069】
続いて、図9の足首血圧測定ルーチンを説明する。図9の足首血圧測定ルーチンでは、まず、カフ圧制御手段60に相当するSD1乃至SD3が実行される。SD1では、図7のSB9で狭窄の疑いがあると判定された側の足首用カフ18に接続された調圧弁26cまたは26dが圧力供給状態に切り換えられ、且つ空気ポンプ36が駆動されることにより、少なくとも一方の足首用カフ18の急速昇圧が開始される。続くSD2では、そのカフ18のカフ圧PCが予め設定された目標圧迫圧PCM(たとえば240mmHg)以上となったか否かが判断される。このSD2の判断が否定された場合は、上記SD1以下が繰り返し実行されることによりカフ圧PCの上昇が継続される。
【0070】
そして、カフ圧PCの上昇により上記SD2の判断が肯定されると、続くSD3では、空気ポンプ36が停止させられるとともに調圧弁26が徐速排圧状態に切り替えられて、カフ18内の圧力が予め定められた5mmHg/sec程度の緩やかな速度で下降させられる。
【0071】
次に、足首血圧値決定手段82に相当するSD4の血圧値決定ルーチンが実行される。すなわち、脈波弁別回路32から逐次供給される脈波信号SMが表す足首脈波WLの振幅が一拍毎に決定され、その振幅の変化に基づいて、よく知られたオシロメトリック方式の血圧値決定アルゴリズムに従って右(左)足首最高血圧値BPLSYS、右(左)足首最低血圧値BPLDIA、右(左)足首平均血圧値BPLMEANが決定される。
【0072】
次に、カフ圧制御手段60に相当するSD5において調圧弁26が急速排圧状態に切り換えられることにより、カフ18内が急速に排圧させられる。
【0073】
続くSD6では、SD4で決定された右(左)足首最高血圧値BPLSYS等が表示器54に表示される。
【0074】
上述のフローチャートに基づく実施例では、足首血圧測定装置42による足首血圧値BPLの測定に先立って、SB3,SB4,SB5(狭窄関連脈波情報決定手段)において、脈波弁別回路32c,32dによって抽出される足首脈波WLから下肢脈波伝播速度baPWV,U-time,%MAPが決定され、SB6,SB9(予備判定手段76)において狭窄の疑いがあると判定された場合には、自動的に足首血圧測定装置42および上腕血圧測定装置40による血圧測定が実行されて、 ABI が算出されるが、狭窄の疑いがないと判定された場合には足首血圧測定装置42および上腕血圧測定装置40による血圧測定が実行されないので、下肢動脈の狭窄を診断する際の患者の苦痛が少なくなる。
【0076】
また、上述のフローチャートに基づく実施例では、SB2(正常範囲決定手段70)において、上肢脈波伝播速度hbPWVに基づいて図4の関係から下肢脈波伝播速度baPWVの正常範囲が決定される。そして、SB6(予備判定手段76)では、SB3(下肢脈波伝播速度情報算出手段68)において算出された下肢脈波伝播速度baPWVが正常範囲外であることに基づいて下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定される。上記正常範囲は、測定毎に実際に測定された上肢脈波伝播速度hbPWVに基づいて決定されるので、測定された下肢脈波伝播速度baPWVが多数の患者に当てはまるように設定された一般的な正常範囲に実際にあるか否かに基づいて下肢動脈の狭窄の疑いが判断される場合に比較して、下肢動脈における狭窄の有無の予備的判断がより精度よく行える。
【0077】
また、上述のフローチャートに基づく実施例では、左下肢脈波WLに基づく左下肢脈波伝播速度baPWV(L),U−time(L),%MAP(L)と右下肢脈波WLに基づく右下肢脈波伝播速度baPWV(R),U−time(R),%MAP(R)との相違値(ΔPWV,ΔU−time,Δ%MAP)の少なくとも一つが基準値以上である場合には、SB8(予備判定手段76)において、狭窄の疑いがあると判定されるので、下肢動脈における狭窄の有無の予備的判断がより精度よく行える。
【0078】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は他の態様においても適用される。
【0079】
例えば、前述した実施形態では、下肢脈波伝播速度baPWVの異常範囲は、正常範囲決定手段70により決定された正常範囲以外の範囲に決定されることにより、患者毎に決定されていたが、下肢脈波伝播速度baPWVの異常範囲は予め設定された一定値であってもよい。逆に、前述した実施形態では、U−timeおよび%MAPの異常範囲は予め決定されていたが、下肢脈波伝播速度baPWVの場合のように、上腕においてU−timeまたは%MAPを測定し、その上腕において測定したU−timeや%MAPに基づいて患者毎に下肢におけるU−timeまたは%MAPの異常範囲を決定してもよい。
【0081】
また、前述した実施形態では、上腕血圧測定装置40に備えられた脈波弁別回路32が上肢脈波検出装置としても機能し、足首血圧測定装置42に備えられた脈波弁別回路32が下肢脈波検出装置としても機能していたが、それら血圧測定装置40,42の脈波弁別回路32とは別に、脈波を検出するためにのみ上肢または下肢に脈波検出装置が装着されてもよい。脈波検出装置としては、たとえば、酸素飽和度測定用の光電脈波検出プローブ、撓骨動脈などの所定の動脈を表皮上からを押圧して圧脈波を検出する形式の圧脈波センサ、腕や指先などのインピーダンスを電極を通して検出するインピーダンス脈波センサ、脈拍検出などのために指尖部などに装着される光電脈波センサなどを用いることができる。
【0082】
また、前述した実施形態では、心音マイク44と上腕用カフ20との間の上腕脈波伝播速度情報を算出する例を説明したが、他の2部位間の上腕脈波伝播速度情報が算出されてもよい。たとえば、心臓は生体中心線上に位置しないので左右の上腕14に巻回された上腕用カフ20は心臓からの距離が異なる。そこで、左右の上腕用カフ20内に発生する上腕脈波WA,WAの時間差から上腕脈波伝播速度情報を算出してもよい。或いは、腕の指尖部に光電脈波センサが装着され、心臓(または上腕)と指先との間で上腕脈波伝播速度情報が算出されてもよい。
【0083】
また、前述した実施形態では、足首用カフ18と上腕用カフ20との間で下肢脈波伝播速度情報を算出する例を説明したが、心音マイク44と足首用カフ18との間の下肢脈波伝播速度情報が算出されてもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された足首上腕血圧測定装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】図1の演算制御装置の制御機能のうち、ABIの測定が必要なほどに狭窄の疑いがあるか否かを判定するための予備的な診断に関する機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図3】足首脈波WLを例示する図である。
【図4】心臓と上腕との間で算出された上肢脈波伝播速度hbPWVと、心臓と足首との間で算出された下肢脈波伝播速度baPWVとの間の関係を例示する図である。
【図5】図1の演算制御装置の制御機能のうち、図2に示す機能が実行されることによって下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定された場合に実行される機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図6】図2および図5に示した演算制御装置の制御機能の要部をさらに具体的に説明するためのフローチャートであって、予備判定のための信号を読み込む信号読み込みルーチンである。
【図7】図2および図5に示した演算制御装置の制御機能の要部をさらに具体的に説明するためのフローチャートであって、図6で読み込んだ信号に基づいて予備判定を行う予備判定ルーチンである。
【図8】図2および図5に示した演算制御装置の制御機能の要部をさらに具体的に説明するためのフローチャートであって、ABI測定ルーチンである。
【図9】図2および図5に示した演算制御装置の制御機能の要部をさらに具体的に説明するためのフローチャートであって、足首血圧測定ルーチンである。
【符号の説明】
10:足首上腕血圧指数測定装置(下肢上肢血圧指数測定装置)
32:脈波弁別回路(下肢脈波検出装置、上肢脈波検出装置)
40:上腕血圧測定装置(上肢血圧測定装置)
42:足首血圧測定装置(下肢血圧測定装置)
62:上昇特徴値決定手段(狭窄関連脈波情報決定手段)
64:先鋭度算出手段(狭窄関連脈波情報決定手段)
66:上肢脈波伝播速度情報算出手段
68:下肢脈波伝播速度情報算出手段(狭窄関連脈波情報決定手段)
70:正常範囲決定手段
76:予備判定手段
78:ABI測定起動手段(血圧測定起動手段)
84:足首上腕血圧指数算出手段(下肢上肢血圧指数算出手段)

Claims (5)

  1. 生体の下肢に巻回されるカフを用いて該下肢における血圧値である下肢血圧値を測定する下肢血圧測定装置と、該生体の上肢に巻回されるカフを用いて該上肢における血圧値である上肢血圧値を測定する上肢血圧測定装置と、該下肢血圧測定装置により測定された下肢血圧値と該上肢血圧測定装置により測定された上肢血圧値とに基づいて、下肢上肢血圧指数を算出する下肢上肢血圧指数算出手段とを備えた下肢上肢血圧指数測定装置であって、
    該生体の下肢に装着され、前記下肢血圧測定装置による下肢血圧値の測定に先立って、下肢脈波を検出する下肢脈波検出装置と、
    前記下肢脈波検出装置により検出された下肢脈波に基づいて、下肢の狭窄に関連して変動する狭窄関連脈波情報を決定する狭窄関連脈波情報決定手段と
    前記狭窄関連脈波情報決定手段により決定された狭窄関連脈波情報が、予め設定された異常範囲内の値であることに基づいて下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する予備判定手段と、
    該予備判定手段により狭窄の疑いがあると判定された場合には、下肢上肢血圧指数を算出するために、前記下肢血圧測定装置および前記上肢血圧測定装置により血圧測定を実行させる血圧測定起動手段と
    を含むことを特徴とする下肢上肢血圧指数測定装置。
  2. 前記狭窄関連脈波情報決定手段として、次の3つの手段のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の下肢上肢血圧指数測定装置。
    (1) 前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波に基づいて、前記下肢を脈波が伝播する速度に関連する下肢脈波伝播速度情報を算出する下肢脈波伝播速度情報算出手段
    (2) 前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波の先鋭度を算出する先鋭度算出手段
    (3) 前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波の上昇部分の特徴値である上昇特徴値を決定する上昇特徴値決定手段
  3. 前記狭窄関連脈波情報算出手段として、前記下肢脈波検出装置により検出される下肢脈波に基づいて、前記下肢を脈波が伝播する速度に関連する下肢脈波伝播速度情報を算出する下肢脈波伝播速度情報算出手段を含む請求項1に記載の下肢上肢血圧指数測定装置であって、
    前記生体の上肢に装着されて上肢脈波を検出する上肢脈波検出装置と、
    該上肢脈波検出装置により検出された上肢脈波に基づいて、前記上肢を脈波が伝播する速度に関連する上肢脈波伝播速度情報を算出する上肢脈波伝播速度情報算出手段と、
    該上肢脈波伝播速度情報算出手段により算出される上肢脈波伝播速度情報に基づいて、予め記憶された関係から下肢脈波伝播速度情報の正常範囲を決定する正常範囲決定手段と、
    前記下肢脈波伝播速度情報算出手段により算出された下肢脈波伝播速度情報が、前記正常範囲決定手段により決定された正常範囲外であることに基づいて、下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する予備判定手段と
    をさらに含むことを特徴とする下肢上肢血圧指数測定装置。
  4. 請求項1に記載の下肢上肢血圧指数測定装置であって、
    前記下肢脈波検出装置は、前記生体の左右の下肢にそれぞれ装着されており、
    前記狭窄関連脈波情報決定手段は、左下肢脈波および右下肢脈波に基づいて前記狭窄関連脈波情報をそれぞれ決定するものであることを特徴とする下肢上肢血圧指数測定装置。
  5. 前記狭窄関連脈波情報決定手段においてそれぞれ決定された左下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報と右下肢脈波に基づく狭窄関連脈波情報との相違値が予め設定された基準値以上である場合には、下肢動脈に狭窄の疑いがあると判定する予備判定手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の下肢上肢血圧指数測定装置。
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