JP3578667B2 - カルボニル化反応方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、カルボニル化反応に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、超臨界状態にある二酸化炭素中で一酸化炭素が炭素源であるカルボニル化反応に関するものである。またこの出願の発明は超臨界状態にある二酸化炭素中で貴金属有機リン配位錯体を触媒として用いてカルボニル化を行う方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、金属触媒を用いたカルボニル化反応は、増炭素反応の代表的な一例として知られており、工業的には入手が容易な一酸化炭素を炭素源として行われてきた。しかし、反応性や触媒活性を向上させるためには、一酸化炭素を反応溶媒である有機溶媒や水に対して高濃度に溶解させることが必要であることから、必然的に高い一酸化炭素圧力下で反応を行うこととなり、そのための装置や操作性の負担、コストの増大、毒性等の観点から問題が多かった。
【0003】
一方、液体と気体の中間的性質を示す新たな均一系触媒の反応場として超臨界流体が注目されている。一般に気体分子は超臨界流体に対して高い溶解性および拡散性を示すことから各種の反応の高速化が期待されるが、現状では超臨界流体でのカルボニル化反応の例は全く知られていないのが実状である。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、超臨界流体の有用性に着目しつつ、少ない一酸化炭素量で高速、かつ高効率にカルボニル化反応を行うことのできる新しい方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわちこの出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には超臨界流体中で一酸化炭素を炭素源とするカルボニル化反応方法を提供する。
【0006】
また、この出願の発明は第2には貴金属有機リン配位錯体を触媒とすることを特徴とするカルボニル化反応方法を提供する。
さらに、この出願の発明はアミン化合物を反応系に用いるカルボニル反応方法も提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
この出願の発明は、超臨界流体が気体成分と容易に均一相を形成することに着目し、従来よりカルボニル化反応の炭素源として用いられている一酸化炭素の圧力を極力小さくして、なおかつ高効率でカルボニル化反応を行うものである。
【0008】
この出願の発明が対象としているカルボニル化反応とは、増炭素反応の代表的なものとして、一般に、ハロゲン化合物、オレフィン、あるいはアルコールなどの有機化合物にカルボニル基を導入する反応をいう。従来では、工業的にも重要な反応として様々な反応系が知られており、金属カルボニル、ヨウ化コバルト、ホスフィン修飾パラジウム、PdCl−CuCl系Ru、Rh触媒などの触媒系が用いられている。
【0009】
この出願の発明では上記カルボニル化反応の溶媒系として超臨界状態の二酸化炭素が使用される。二酸化炭素は、一般に圧力72.9atm 、温度31℃が臨界点であり、これ以上の圧力、温度で超臨界状態となる。実際には、超臨界二酸化炭素は75〜500atmの範囲で、好ましくは80〜200atmの範囲で用いるのが望ましい。
【0010】
この出願の発明のカルボニル化反応方法では、炭素源としては、最も一般的には一酸化炭素ガスを用いるのが好ましいが、反応系において一酸化炭素を発生させることのできる化合物を用いてもよい。
【0011】
カルボニル反応の出発物質としては、ヨウ素などのハロゲンを結合している鎖状または環状のハロゲン化合物、オレフィン、アルコール、などが例示される。一方、生成物としては、原料化合物、触媒や反応の種類等に対応して、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、酸ハロゲン化物、酸無水物、エステル、ラクトン、アミド、ラクタム等のカルボニル基あるいはアシル基を有する鎖状および環状の化合物が例示される。
【0012】
また、この出願の発明では、反応に触媒を用いることを好ましい形態としてもいる。触媒としては各種の金属化合物が考慮される。なかでも、貴金属有機リン錯体を触媒として用いることが好ましい。貴金属有機リン錯体の中心金属は、たとえば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)の中から選択され、とくに触媒作用が高いPt、Rh、Pdが好ましい。さらに超臨界二酸化炭素への溶解性が高いパラジウム有機リン錯体が最も好ましい。
【0013】
一方、配位子である有機リンは、一般式(PR)で表わされ、R、R、Rはそれぞれ同一でも異なってもよく、アルキル基、アリル基、アリール基、アルコキシル基、アミノ基などを表わすことができる。具体的には、たとえば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリフルオロホスフィンなどのリン−炭素結合を有する第3ホスフィンや、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイトなどのリンー酸素結合を有する第3ホスファイトがあげられる。また、前記のR、R、Rは二座配位の第3ホスフィン化合物でもよく、具体的には、ビスジフェニルホスフィノメタン、ビスジフェニルホスフィノプロパン、ビスジメチルホスフィノメタン、ビスジメチルホスフィノエタン、ビスジメチルホスフィノプロパン、ビスジイソプロピルホスフィノメタン、ビスジイソプロピルホスフィノエタンなどがあげられる。さらに、R、R、Rとしては、アンモニア、もしくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のC〜C10 のアルキルアミン、または水素でもよい。
【0014】
以上の例の中でも、とくにアルキルホスファイト配位錯体が好ましいが、この発明に用いられる貴金属有機リン錯体触媒はこれらに何等限定されるものではない。
【0015】
均一反応系を構成するために、触媒は有機溶媒に溶解した状態で反応系に供給することができる。この場合の触媒の濃度は、とくに限定しないが、有機溶媒(ジメチルホルムアミドなど、溶解するものであればよく、とくに限定しない)に対して1.0 ×10−3〜1.0 ×10−1M の範囲内にあるものとして反応系に供給するのが好ましい。
【0016】
また、この出願の発明では、アミン化合物存在下で反応を行うことを態様としている。このアミン化合物の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどがあげられるが、これらに限定されない。好ましくは超臨界二酸化炭素への溶解性の高いものがよい。
【0017】
二酸化炭素は超臨界状態を形成するものとして、前記のように、75〜500atmの圧力範囲、好ましくは、80〜200atmの圧力範囲で用いるが、炭素源としての一酸化炭素については、たとえばこれをガスとして反応系にバッチ方式で供給する場合には、その圧力は、0.5 〜50atm 程度でよく、1 〜20atm の範囲であってもよい。
【0018】
反応温度は反応系が超臨界状態を維持できる温度以上が必要であり、好ましくは、40〜150 ℃の範囲である。
反応装置の形式については特に限定はなく、各種の耐圧性のオートクレーブ反応装置が採用される。この装置では、たとえば触媒溶液と、原料化合物とを区分された領域に装入し、次いで二酸化炭素および一酸化炭素をガス状で供給することが好ましい形態の一つとして考慮される。
【0019】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0020】
【実施例】
(実施例1)
次の反応式に沿ってのカルボニル化反応として、フタリドの合成を行った。
【0021】
【化1】
Figure 0003578667
【0022】
この場合、図1に例示したように、脱気し、不活性ガス雰囲気に保持した耐圧オートクレーブ(1)(50ml)にガラス製サンプル管(2)(1ml) を入れ、パラジウム触媒(PdCl[P(OC)0.1 μmol のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF) との触媒溶液(3)(10 μl)を調製し、これをサンプル管内に移送する。反応容器を反応温度(130℃) に設定したオーブンに入れ、恒温にする。2−ヨードベンジルアルコール(0.5mmol) とトリエチルアミン(1.1mmol) の原料混合物(4)を反応容器内(サンプル管の外)に入れ、直ちに一酸化炭素(1〜10atm)および、二酸化炭素(200atm)を導入する。18時間攪拌後、反応容器を冷却して、ガス成分を除去した後、残渣から触媒を除去し、生成物を単離した。収率は出発物質2−ヨードベンジルアルコールに対して96% であった。
【0023】
得られた生成物の構造解析を行った。NMR 、IR分析より、生成物がフタリドであることが明らかになった。
図2には、カルボニル化反応の経時変化を示した。超臨界二酸化炭素中では、約2時間の誘導期の後、3〜4時間で反応がほぼ完結することがわかった。
(実施例2〜7)
実施例1と同様の方法で、触媒を、PdCl[P(OC(実施例2)、(CHCN)(実施例3)、PdCl[P(CH(実施例4)、PdCl[P(C(実施例5)、PdCl[P(C(OCH)](実施例6)、PdCl[P(C)(OCH(実施例7)としてフタリドを合成した。
【0024】
実施例1〜7におけるフタリドのTurnover Number(TON=生成物mol/触媒mol)を表1に示した。
【0025】
【表1】
Figure 0003578667
【0026】
これにより、アルキルホスファイトを有するパラジウム錯体(PdCl[P(OR))が超臨界二酸化炭素中でのカルボニル化反応において高い活性を示すことがわかった。特にトリエチルホスファイト(実施例1)では触媒活性が高いことが確認された。
(比較例1)
次に実施例1と同様の条件で超臨界二酸化炭素の代わりにトルエンを溶媒として、カルボニル化反応を行った。
【0027】
トルエン中、および超臨界二酸化炭素中でのカルボニル化反応の経時変化を調べたところ、図2に示すように、トルエン中では20時間経過後も反応が100%に至らなかったのに対し、超臨界二酸化炭素中では、約2時間の誘導期の後、3〜4時間で反応がほぼ完結することが分かった。つまり、超臨界二酸化炭素中では反応が高速化されていることが明らかとなった。
【0028】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、有毒な一酸化炭素の使用量を少なく保ちながらも、高い反応速度と反応効率でカルボニル化を行うことが可能となった。特に、超臨界二酸化炭素を溶媒とすることと、その中で高い触媒活性を示す有機リンパラジウム錯体、なかでもアルキルホスファイトパラジウム錯体を用いることによって、従来では考えられなかった高効率のカルボニル化反応が可能となった。
【0029】
【図面の簡単な説明】
【図1】超臨界二酸化炭素におけるカルボニル化反応のため実施例の反応装置を例示した断面図である。
【図2】分子内カルボニル化反応の経時変化を示した図である。●はトルエン溶媒中、□は超臨界二酸化炭素中での反応を表わしている。
【符号の説明】
1 耐圧オートクレーブ
2 ガラス製サンプル管
3 触媒溶液
4 原料混合物

Claims (3)

  1. 超臨界状態にある二酸化炭素中で、一酸化炭素を炭素源として、2−ヨードベンジルアルコールとの反応によるフタリドの合成を行うことを特徴とするカルボニル化反応方法。
  2. 貴金属有機リン配位錯体を触媒とすることを特徴とする請求項1のカルボニル化反応方法。
  3. アミン化合物存在下で反応させることを特徴とする請求項1または2のカルボニル化反応方法。
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