JP3577945B2 - 内燃機関の動弁装置の異常診断装置 - Google Patents

内燃機関の動弁装置の異常診断装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置の異常(故障など)を診断する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の内燃機関における可変動弁装置としては、種々のものがあり、例えば、特開平7−197846号公報、前記特開平8−254126号公報等には、吸気弁の閉弁タイミング{即ち、開閉タイミング(位相角)}を制御するものが開示されている。
【0003】
また、前記特開平7−31106号公報等には、吸気弁の開弁から閉弁までの作動角を可変制御する可変バルブ作動角制御装置を備えると共に、排気弁に開閉タイミング(位相角)を制御するものを備えるようにしたものなどが開示されている。
更に、カムなどを用いることなく、電磁力とバネの反力を利用して吸気弁或いは排気弁を、任意の開閉タイミングと作動角で開閉させることができるようにした可変動弁装置(以下EMVという)として、例えば、特開平7−301105号公報や特開平7−324609号公報等に開示されるようなものも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の何れの可変動弁装置においても、一般に、リフトセンサや着座センサなど、吸気弁或いは排気弁の動作を検出するセンサを追加し、これらセンサの検出結果に基づいて可変動弁装置が正常に作動できているか否かを診断するようにしていたため、可変動弁装置の異常診断装置にあっては、センサ追加により製品コストが増加してしまう惧れがあった。特に、前記EMVなどにおいては、カムにより複数の吸気弁や排気弁を一連動作させる構造ではないため、吸気弁或いは排気弁の数だけセンサを追加する必要があり、その傾向は顕著となる。
【0005】
また、断線やショート検出などによって、可変動弁装置のアクチュエータの作動異常を検出する方法も考えられるが、かかる方法では、アクチュエータの作動異常を検出することはできても、吸気弁或いは排気弁のスティック{開固着、閉固着、或いは中間開度(中間リフト)での固着}や異物噛み込み等による吸気弁或いは排気弁の開閉異常を検出できないため、フェールセーフが十分でないと言った惧れがある。
【0006】
更に、特開平6−317117号公報に開示されるものでは、吸気脈動レベルに基づいて可変動弁装置の異常を診断するようにしているが、このものでは、運転状態変化やノイズ等に敏感で誤診断の惧れが高いと共に、異常気筒や異常形態(異常モード)等を特定できるものではなく、可変動弁装置の異常診断装置として十分なものとは言えなかった。
【0007】
なお、センサを追加設定することなく、簡単かつ安価な構成で、精度よく吸排気弁の駆動装置(動弁装置)の異常を診断できるようにすることは、可変動弁装置に限らず、一般的なカム駆動方式の動弁装置にあっても有意義なことである。本発明は、かかる実状に鑑みなされたものであり、動弁装置の異常診断のためのセンサを追加設定することなく、簡単かつ安価な構成で、精度よく動弁装置の異常を診断できるようにした内燃機関の動弁装置の異常診断装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明に係る内燃機関の動弁装置の異常診断装置は、図1に示すように、
機関の吸入空気流量を検出する吸入空気流量検出手段と、
前記吸入空気流量検出手段の検出結果を、特定期間内で積算する吸入空気流量積算手段と、
前記吸入空気流量積算手段の積算結果に基づいて、動弁装置の異常を診断する異常診断手段と、
を含んで構成した。ここで、前記吸入空気流量検出手段として、逆流検出が可能なものを採用し、前記特定期間は、該当気筒の吸気弁開時期から開始する期間として、気筒毎に対応させて設定した。
【0009】
かかる構成とすれば、動弁装置の異常により、何れかの気筒の吸気弁或いは排気弁の少なくとも一方が開弁固着或いは閉弁固着した場合には、必ず、ある気筒の特定期間の吸入空気流量の積算値が、他の気筒の特定期間の吸入空気流量の積算値と比較して十分小さくなると言う特性を利用して、何れかの気筒の吸気弁或いは排気弁延いては動弁装置に異常が生じたことを診断することができる。
【0010】
即ち、動弁装置の異常診断のためのセンサを追加設定することなく、既設の吸入空気流量検出手段を用いることで、簡単かつ安価な構成でありながら、精度良く動弁装置の異常を診断することができる。
請求項2に記載の発明では、前記異常診断手段を、少なくとも動弁装置に対する作動指令信号から求まる吸入空気流量期待値と、前記吸入空気流量積算手段の積算結果と、の差又は比が、所定レベルを越えたときに、動弁装置が異常であると診断するように構成した。
【0011】
かかる構成とすれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を奏することができるうえに、予め運転状態等に応じて定まる吸入空気流量期待値と、実際に算出された積算結果と、の比較に基づいて、異常を診断するので、機関運転状態が過渡状態にあっても、吸気弁或いは排気弁延いては可変動弁装置の異常を診断することができる。
【0013】
請求項に記載の発明では、前記異常診断手段を、気筒間における積算結果の差或いは比、又は気筒毎の積算結果の平均値と気筒毎の積算結果との差或いは比と、所定レベルと、の比較により、動弁装置の異常を診断するように構成した。
かかる構成とすれば、比較的簡単な構成で、精度良く、異常気筒の特定が可能となる。
【0014】
請求項に記載の発明では、前記異常診断手段を、動弁装置に異常があると診断された場合において、気筒別の積算結果が負の所定値を越えている場合には開故障と異常診断し、そうでない場合には閉故障と診断する機能を含んで構成するようにした。
かかる構成とすれば、上述した各種作用効果に加えて、動弁装置に異常があると診断された場合に、その異常形態が開故障(吸気弁や排気弁の開弁故障)であるのか、閉故障(吸気弁や排気弁の閉弁故障)であるのか、を区別して診断することが可能となる。
【0015】
請求項に記載の発明では、前記異常診断手段を、動弁装置に異常があると診断された場合において、1つ手前の特定期間に対応する気筒の積算結果又は2つ手前の特定期間に対応する気筒の積算結果に基づいて異常気筒を特定する機能を含んで構成するようにした。
かかる構成とすれば、上述した各種作用効果に加えて、動弁装置に異常があると診断された場合に、比較的簡単な構成で、高精度に異常気筒を特定することが可能となる。
【0016】
請求項に記載の発明では、特定期間内で積算途中の吸入空気流量積算の最小値を検出する手段を備え、
前記異常診断手段を、動弁装置に異常があると診断された場合において、前記最小値と所定レベルとの比較により、吸気弁の閉故障と排気弁の閉故障とを区別する機能を含んで構成するようにした。
【0017】
かかる構成とすれば、上述した各種作用効果に加えて、動弁装置に異常があると診断された場合に、比較的簡単な構成で、高精度に吸気弁の閉故障と排気弁の閉故障とを区別することが可能となる。
請求項に記載の発明では、前記特定期間が、吸気行程、或いは吸排気弁の開閉特性変化によって前記吸入空気流量検出手段の検出結果が影響される期間であることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明は、前記動弁装置が、吸気弁或いは排気弁の少なくとも一方の開閉特性を可変に制御することができる可変動弁装置であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、前記内燃機関が、スロットル弁を備えないノンスロットルエンジンであることを特徴とする。
【0019】
かかる構成では、スロットル弁がないので、動弁装置の異常に伴う吸入空気流量の検出結果の変化を、スロットル弁のある通常のエンジンに比べて、より高精度に検出できるため、異常診断精度を高めることが可能となる。延いては、本発明の利用価値、採用可能性などを一層高めることができる結果となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
本発明の第1の実施形態に係るシステム構成を示す図2において、内燃機関1の吸気通路2にはスロットル弁3が設けられると共に、このスロットル弁3をバイパスする補助空気通路4が設けられており、該補助空気通路4には電磁式の補助空気制御弁5が介装されている。前記補助空気制御弁5は、デューティ制御によって開度が調整される電磁式の開閉弁である。
【0021】
なお、本実施形態に係る内燃機関1が、例えば、後述する可変動弁装置13により、吸気弁の開閉時期を制御して吸気を大気圧状態で取り入れつつスロットル弁無しで吸入空気量を制御できるようにしたノンスロットルエンジン(例えば、ミラーサイクルエンジンなど)である場合には、前記スロットル弁3延いては前記補助空気通路4、前記補助空気制御弁5などは省略することができるものである。
【0022】
また、吸気通路2の吸気ポート部には各気筒毎(気筒別)に電磁式の燃料噴射弁6が設けられていて、該燃料噴射弁6によって燃料が機関に供給される。
前記補助空気制御弁5及び燃料噴射弁6の作動を制御するコントロールユニット7には各種のセンサ・スイッチから信号が入力される。
具体的には、基準ピストン位置{例えば、4気筒であれば180°ca(クランク角度)}毎の基準信号(Ref)と、単位クランク角毎の単位角度信号とをそれぞれ出力するクランク角センサ8が設けられ、これによりピストン位置を検出し得ると共に、機関の回転速度Neを算出可能である。
【0023】
また、機関の吸入空気流量を検出(逆流検出も可能)するエアフローメータ(AFM)9や、スロットル弁3の開度TVOを検出するスロットルセンサ10や、機関の冷却水温度Twを検出する水温センサ11等が設けられている。前記エアフローメータ9が、本発明に係る吸入空気流量検出手段に相当する。
コントロールユニット7は、前記エアフローメータ9で検出される吸入空気流量、及び、前記クランク角センサ8で検出される機関回転速度Neに基づいて基本燃料噴射量Tpを演算すると共に、該基本燃料噴射量Tpに冷却水温度Tw等に応じた各種補正を施して最終的な燃料噴射量Tiを設定し、該燃料噴射量Tiに相当するパルス幅の開弁駆動信号を、機関回転に同期したタイミングで前記燃料噴射弁6に出力して、機関吸入混合気の空燃比を制御する。
【0024】
更に、機関1には、図2に示すように、吸気弁12の開閉特性{開閉タイミング(位相角)、リフト量、作動角などの少なくとも1つ}を制御する可変動弁装置13が備えられている。
当該可変動弁装置13は、従来同様のものを用いることができ、例えば、カムを用いず電磁力等を利用した所謂EMVなどを用いることができる。
【0025】
加えて、機関1には、図2に示すように、排気弁14の開閉特性{開閉タイミング(位相角)、リフト量、作動角などの少なくとも1つ}を制御する可変動弁装置15が備えられている。
当該可変動弁装置15も、前記可変動弁装置13と同様に、電磁力等を利用した所謂EMVなどを用いることができる。
【0026】
なお、コントロールユニット7では、運転状態{機関負荷(QsやTpなど)、機関回転速度Ne、冷却水温度Twなど}に基づいて、最適な吸気弁12及び排気弁14の開閉特性{開閉タイミング(位相角)、リフト量、作動角など}を設定し、該開閉特性が得られるように、前記可変動弁装置13、15を制御するようになっている。
【0027】
また、本実施形態に係るコントロールユニット7は、前記可変動弁装置13、15延いては吸気弁12、排気弁14が正常に作動できているか否か(異常があるかないか)を診断する機能を有して構成されている。
ここで、本実施形態に係るコントロールユニット7が行なう可変動弁装置13、15(延いては吸気弁12、排気弁14)の異常診断制御を、図3,図4のフローチャートに従って説明する。なお、本発明に係る吸入空気流量積算手段、異常診断手段としての機能は、以下に説明するように、コントロールユニット7がソフトウェア的に備えることになる。
【0028】
即ち、図3のフローチャートにおいて、
ステップ1(図中ではS1と記してある。以下同様)では、Ref予約されているか否かを判断する。なお、Ref予約は、図5のフローチャートの実行により、クランク角センサ8からRef信号の入力があったときに行われる。
YES(Ref予約中)であれば、ステップ2へ進み、NO(Ref予約解除)であれば、ステップ2〜ステップ4を飛ばして、ステップ5へ進む。
【0029】
ステップ2では、Ref予約中であるので、Ref信号に基づいて、従来同様の手法により気筒判別を行う。例えば、Ref信号のON信号幅などを気筒毎に異ならせておくことで気筒判別することができる。
次のステップ3では、後述するステップ5〜ステップ7により算出されたエアフローメータ(AFM)9の検出値Qs(吸入空気流量に相当)の特定期間の積分値SQ(Qs積分用RAM)を、SQn(n;気筒番号)としてセットすると共に、次気筒の積分値SQの算出に備えてSQを0にリセットして、ステップ4へ進む。なお、SQ、SQnは、質量流量/気筒である。
【0030】
ステップ4では、Ref予約を解除して、ステップ5へ進む。
ステップ5では、エアフローメータ9の検出信号(電圧信号)をA/D変換する。
ステップ6では、従来同様の手法により、ステップ5で得られたA/D変換値をテーブルルックアップ等によりリニアライズして、Qsを算出する。
【0031】
ステップ7では、ステップ6で算出されたエアフローメータ9の検出値Qsを、特定期間(Ref信号間)での積算のために加算する。
即ち、積算値SQ=SQ保持値(前回値)+Qs
なる処理を行い、リターンする。
つまり、例えばRef信号が入力されてから次のRef信号が入力されるまでの特定期間(積分期間)、換言すれば、特定気筒の吸排気弁の開閉特性変化によってエアフローメータ9の検出値Qs(吸入空気流量相当値)が影響を受ける特定期間において、エアフローメータ9の検出値Qsを積算して、当該特定期間における積算値SQnを算出する。
【0032】
そして、本実施形態では、上記の図3のフローチャートの実行により得られた気筒毎(気筒別)の積算値SQnに基づいて、可変動弁装置13、15の異常診断を行うことになる。
即ち、図4のフローチャートに示すように、
ステップ11では、診断条件が成立したか否かを判断する。当該判断は、例えば、機関運転状態が定常状態であること{TVO変化度合い(ΔTVO)、機関回転速度Nの変化度合い(ΔN)などで判断}、エアフローメータ9の出力が正常であること(エアフローメータ9が故障等していないこと)、などに基づいて行うことができる。
【0033】
YESであればステップ12へ進み、NOであればステップ20へ進む。
ステップ12では、図3のフローチャートで求めた気筒毎の積算値SQnのうち、一番小さい値のものを選択し、Aにセットする。
ステップ13では、ステップ12で選択されなかった残りの積算値SQnを平均して、その平均値を、Bにセットする。
【0034】
ステップ14では、A/B≦LEMV♯(診断基準値)か否かを判断する。なお、A/Bは、偏差(=B−|A|)等としても良い。
YESであれば、可変動弁装置13、15の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断して、ステップ16へ進み、異常カウンタCEMVNGをインクリメントする。
【0035】
NOであれば、可変動弁装置13、15は共に正常であると判断して、ステップ15へ進み、正常カウンタCEMVOKをインクリメントする。
そして、ステップ17では、サンプル数(例えば、診断ルーチン実行回数)≧EMVS♯(所定値)となったか否かを判断する。
YESであれば、ステップ18へ進み、NOであれば、本フローを終了して、ステップ17でYES判定されるまで、図3のフローチャートや上記ステップ11〜16を繰り返す。
【0036】
ステップ18では、CEMVNG/CEMVOK>CEMVNG♯(所定値)であるか否かを判断する。
YESであれば、所定回数サンプリングし、その結果、可変動弁装置13、15の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断された比率が所定以上高い場合であるので、誤診断の惧れは少ないとして、可変動弁装置13、15の一方或いは両者に何らかの異常があると診断し、ステップ19で、異常フラグEMVNGを1(異常あり)にセットし、警告灯(MIL)を点灯等して運転者等に可変動弁装置に何らかの異常がある旨を認知させ修理等の処置を促すなどした後、ステップ20へ進む。
【0037】
一方、NOであれば、所定回数サンプリングし、その結果、可変動弁装置13、15の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断された比率が低い或いは無かった場合であるので、可変動弁装置13、15は正常であると診断して、ステップ20へ進む。
ステップ20では、異常カウンタCEMVNG=0、正常カウンタCEMVOK=0にリセットして、本フローを終了する。
【0038】
このように、本実施形態によれば、吸気弁12或いは排気弁14、延いては可変動弁装置13、15の異常診断のためのセンサを追加設定することなく、既設のエアフローメータ9の検出結果を用いることで、簡単かつ安価な構成としながら、精度良く、吸気弁12或いは排気弁14延いては可変動弁装置13、15の異常を診断することができる。
【0039】
ここで、本発明に係る可変動弁装置の異常診断の原理について、以下に説明する。
即ち、
▲1▼吸気弁12が閉弁固着した場合
図9のタイミングチャートに示したように、例えば、第2気筒の吸気弁12が閉弁固着した場合は、第2気筒に対応する特定期間(積分区間)、言い換えれば第2気筒の吸気行程中において、正常であれば増加するはずの吸入空気流量Qsが略0に維持されることになるから、第2気筒に対応する特定期間(積分区間)での積算値SQは、略0になる。
【0040】
一方、正常な気筒(第1、第3、第4気筒)に対応する特定期間(積分区間)での各積算値SQ、SQ、SQは、各気筒の吸気弁12の正常な開弁動作に伴う吸入空気流量Qsの増加に応じて、正常値まで増大される。
従って、第2気筒の吸気弁12が閉弁固着している場合、上記ステップ12において、Aには積算値SQ(=略0)がセットされ、上記ステップ13において、Bには正常値である各積算値SQ、SQ、SQの平均値がセットされることになる。
【0041】
このため、A/B=略0となるから、ステップ14においてA/B≦LEMV♯(診断基準値)となり、以って何れかの気筒(ここでは第2気筒)の吸気弁12に異常(閉弁固着)があると診断できることになる。
▲2▼吸気弁12が開弁固着した場合
図10のタイミングチャートに示したように、例えば、第2気筒の吸気弁12が開弁固着した場合は、常時、エアフローメータ9と、第2気筒のシリンダと、が連通することになるから、第2気筒のピストンの動き(シリンダ容積変化)による空気の動き(出し入れ)をエアフローメータ9が検出することになるから、第2気筒のピストンの動き(シリンダ容積変化)による空気の動き(出し入れ)がエアフローメータ9の検出値Qsに第2気筒のピストンの動きに合わせて現れる(重畳する)ことになる。
【0042】
このため、特定期間の積分値であるSQnが、正の値となる気筒(例えば、第2、第4気筒)と、負の値となる気筒(例えば、第1、第3気筒)と、に分かれることになる。
そして、吸気弁12が開弁固着している気筒は、SQn(ここではSQ)は正の値となるのであるが、吸気弁12が開弁固着している気筒のSQn(ここではSQ)には、SQnが正の値となる正常気筒(第4気筒)のように吸気弁12が開弁動作したときの吸入空気流量の増加分が重畳することはないので、SQnが正の値となる気筒のうち吸気弁12が開弁固着している気筒のSQn(ここではSQ)が一番小さな値となる。
【0043】
即ち、SQnが、正の値となる気筒のうちSQnが一番小さな値となる気筒が、吸気弁12が開弁固着した気筒と診断できることになる。
ところで、第2気筒の吸気弁12が開弁固着していると、第2気筒のピストン上昇による吸気のエアフローメータ9側への逆流の影響を受けて、第2気筒の特定期間より1つ手前の特定期間に対応する気筒(例えば第1気筒)のSQは負の値となるのであるが、当該第1気筒の特定期間にあっては、第1気筒の排気弁14の開弁期間とラップするため、前記ピストン上昇による吸気の逆流と、排気弁14の開弁による排気逆流の影響と、が相まって、SQnが負の値とはなるが排気の逆流の影響を受けない第3気筒のSQに比べると、一層第1気筒のSQは小さな値(負側に大きな値)となる。
【0044】
従って、第2気筒の吸気弁12が開弁固着している場合、上記ステップ12において、Aには積算値SQ(=負の大きな値)がセットされ、上記ステップ13において、Bには各積算値SQ、SQ、SQの平均値がセットされることになる。なお、図10のタイミングチャートに示すように、SQは第3気筒の吸気弁12の開弁動作による吸入空気流量の増加分で負の値が相殺されるから、SQ−|SQ|>0となるため、SQ、SQ、SQの平均値は正の値となる。
【0045】
このため、A/B=負値となるから、ステップ14においてA/B≦LEMV♯(診断基準値)となり、図4のフローチャートの実行によって、何れかの気筒の吸気弁12に異常があると診断できることになるのである。
なお、正の値となる気筒のうちSQnが一番小さな値となる気筒が、吸気弁12が開弁固着した気筒である、或いは積算値SQn(=負の大きな値)が一番小さい気筒(ここでは第1気筒)の次の気筒(ここでは第2気筒)が吸気弁12が開弁固着した気筒であると、故障形態や異常気筒を特定して診断することもできるものでもある。
【0046】
ところで、吸気弁12が開弁固着すると、既述したように、排気弁12の開弁に伴い排気が吸気側に逆流することになるため、フェールセーフのために、吸気弁12が開弁固着した気筒の排気弁14を常時閉じたままとなるように制御するようにすることが好ましい。
▲3▼排気弁14が閉弁固着した場合
図11のタイミングチャートに示したように、例えば、第2気筒の排気弁14が閉弁固着した場合は、第2気筒に対応する特定期間(積分区間)初期において、第2気筒の吸気弁12の開弁に伴い、第2気筒の排気行程で排気されなかった第2気筒のシリンダ内の燃焼ガスが吸気側へ逆流してエアフローメータ9の検出値Qsとしては大きな負の値となる一方、その後は第2気筒の吸気弁12の開弁に伴う吸気動作によってエアフローメータ9の検出値Qsは正常に増加される。
【0047】
従って、第2気筒に対応する特定期間(積分区間)での積算値SQは、特定期間開始初期の大きな負の値と、その後の正常な増加分(正の値)と、が相殺されることになるから、略0(或いは非常に小さな値)になる。
よって、第2気筒の排気弁14が閉弁固着している場合、上記ステップ12において、Aには積算値SQ(=略0)がセットされ、上記ステップ13において、Bには正常気筒の各積算値SQ、SQ、SQの平均値がセットされることになる。
【0048】
このため、A/B=略0となるから、ステップ14においてA/B≦LEMV♯(診断基準値)となり、以って何れかの気筒(ここでは第2気筒)の排気弁14に異常(閉弁固着)があると診断できることになる。
なお、図9のタイミングチャートと、図11のタイミングチャートと、の比較から理解されるように、異常気筒の特定期間におけるエアフローメータ9の検出値Qsの変化の様子、或いは積算値SQnの変化の様子を観察すれば、吸気弁12の閉弁固着であるのか、排気弁14の閉弁固着であるのか、を区別して異常を診断することもできるものである。
【0049】
▲4▼排気弁14が開弁固着した場合
図12のタイミングチャートに示したように、例えば、第2気筒の排気弁14が開弁固着した場合は、常時、第2気筒のシリンダと、排気通路と、が連通することになるから、第2気筒の特定期間において、吸気弁12が開弁しても、吸気弁12の開弁期間中、排気通路側の比較的圧力の高い排気がシリンダ内延いては吸気側へ逆流する(吹き返す)ことになるから、エアフローメータ9は、この逆流(吹き返し)分を負の値として検出することになる。
【0050】
従って、第2気筒の特定期間の積分値であるSQは、負の値或いは非常に小さな値となる。
よって、第2気筒の排気弁14が開弁固着している場合、上記ステップ12において、Aには積算値SQ(=負の値或いは非常に小さな値)がセットされ、上記ステップ13において、Bには正常気筒の各積算値SQ、SQ、SQの平均値がセットされることになる。
【0051】
このため、ステップ14においてA/B≦LEMV♯(診断基準値)となり、以って何れかの気筒(ここでは第2気筒)の排気弁14に異常(開弁固着)があると診断できることになる。
なお、図10のタイミングチャートと、図12のタイミングチャートと、の比較から理解されるように、異常気筒の特定期間におけるエアフローメータ9の検出値Qsの変化の様子、或いは積算値SQnの変化の様子を観察すれば、吸気弁12の開弁固着であるのか、排気弁14の開弁固着であるのか、を区別して異常を診断することもできるものである。
【0052】
即ち、本実施形態に係る異常診断制御は、何れかの気筒の吸気弁或いは排気弁の少なくとも一方が開弁固着或いは閉弁固着した場合には、必ず、ある気筒の特定期間の積算値SQnが、他の残りの気筒の特定期間の積算値SQnの平均値より十分小さくなると言う特性を利用して、何れかの気筒の吸気弁12或いは排気弁14延いては可変動弁装置13、15に異常が生じたことを診断できるようにしたので、可変動弁装置13、15の異常診断のためのセンサを追加設定することなく、簡単かつ安価な構成でありながら、精度良く可変動弁装置13、15の異常を診断することができる。
【0053】
ところで、上記では、特定期間の積算値SQnに基づいて異常診断する場合について説明したが、例えば特定期間の吸入空気流量Qsの平均値を気筒毎に求め、気筒間での前記平均値の偏差或いは比が所定レベル以上あることに基づいて、可変動弁装置の異常を診断することもできるものである。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0054】
第2の実施形態は、定常運転中の他、過渡運転中においても、可変動弁装置の異常を診断できるようにした場合の実施形態である。
第2の実施形態のシステム構成は第1の実施形態と同様で、図6のフローチャートのみが第1の実施形態における図4のフローチャートと異なるので、ここではシステム構成についての説明は省略し、第2の実施形態に特有の図6のフローチャートについてのみ説明することとする。なお、本フローは、SQn読み込み(例えば180°ca)毎に実行されるルーチンである。
【0055】
即ち、
ステップ21では、Ref信号に基づいて、気筒判別を行う(nに気筒番号をセットする)。
ステップ22では、図3のフローチャートで得られた該当気筒の積算値SQn(n;気筒番号)を読み込み、目標Q(吸入空気流量期待値)に対する積算値SQnの比A{或いは偏差(=目標Q−SQn)であっても良い}を求める。
【0056】
SQn/目標Q=A
ここで、目標Q(吸入空気流量期待値)は、アクセル開度(或いはTVO)と機関回転速度Neから所望のトルクを得るために設定される目標吸入空気量であり、該目標Qを達成可能な吸気弁12或いは排気弁14の開閉特性{開閉タイミング(位相角)、リフト量、作動角などの少なくとも1つ}延いては可変動弁装置13或いは可変動弁装置15の制御量(作動指令信号)が設定されることになる。なお、正常であれば、予め設定される目標Q(体積吸入空気量/気筒)と、積算値SQn(質量流量/気筒)と、は比例する。
【0057】
次のステップ23では、A<LEMV♯(診断基準値)か否かを判断する。
YESであれば、積算値SQnが、正常であれば得られるであろう目標Qに対して所定レベル以下の小さな値となっていると判断できるので、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断して、ステップ25へ進み、該当気筒の異常カウンタCEMVNGnをインクリメントする。
【0058】
NOであれば、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)は共に正常であろうと判断して、ステップ24へ進み、該当気筒の正常カウンタCEMVOKnをインクリメントする。
そして、ステップ26では、サンプル数≧EMVS♯(所定値)となったか否かを判断する。
【0059】
YESであれば、ステップ27へ進み、NOであれば、本フローを終了して、ステップ26でYES判定されるまで、上記ステップ21〜25を繰り返す。
ステップ27では、CEMVNGn/CEMVOKn>CEMVNG♯(所定値)であるか否かを判断する。
YESであれば、所定回数サンプリングし、その結果、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断された比率が所定レベルより高い場合であるので、誤診断の惧れは少ないとして、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の一方或いは両者に何らかの異常があると診断し、ステップ28で、該当気筒の異常フラグEMVNGnを1(異常あり)にセットし、警告灯(MIL)を点灯等して運転者等に可変動弁装置に何らかの異常がある旨を認知させ修理等の処置を促すなどした後、ステップ29へ進む。
【0060】
一方、NOであれば、所定回数サンプリングし、その結果、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断された比率が低い或いは無かった場合であるので、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)は正常であると診断して、ステップ29へ進む。
【0061】
ステップ29では、気筒毎の異常カウンタCEMVNGn=0、気筒毎の正常カウンタCEMVOKn=0にリセットして、次気筒の診断に備え、ステップ30ヘ進む。
そして、ステップ30では、全気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の異常診断が終了したか否かを判断し、終了していなければ、ステップ21へリターンし、終了していれば、本フローを終了する。
【0062】
このように、本実施形態によれば、異常診断のためのセンサを追加設定することなく、既設のエアフローメータ9の検出結果を用いることで、簡単かつ安価な構成としながら、気筒毎に、吸気弁12或いは排気弁14が正常に作動できているか否か(可変動弁装置13、15の異常)を診断することができる。
しかも、本実施形態では、運転状態に応じて設定される目標Q(吸入空気流量期待値)と、実際に検出された特定期間におけるある気筒の積算値SQnと、に基づいて、異常を診断する構成としたので、機関運転状態が過渡状態にあっても、吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の異常を診断することができる。
【0063】
つまり、本実施形態によれば、機関運転状態が過渡状態にあっても、異常気筒を特定しながら、吸気弁12或いは排気弁14の作動異常(延いては可変動弁装置13、15の異常)を診断することができる。
ところで、本発明に係る可変動弁装置の異常診断原理の上述の説明で明らかにしたように、本発明の異常診断原理には、簡単かつ安価な構成でありながら、異常気筒の特定や、故障形態(吸気弁側なのか排気弁側なのか、開弁固着であるのか閉弁固着であるのか)の特定も可能であるという特徴がある。
【0064】
そこで、上記特徴を活かした異常診断制御の一例である第3の実施形態について、以下に説明する。
第3の実施形態のシステム構成は第1の実施形態と同様であり、第3の実施形態にかかる異常診断制御の一例を示す図7、図8のフローチャートについてのみ説明することとする。
【0065】
なお、本実施形態に係る図7のフローチャートは、各気筒に対応させて、特定期間の積分値SQnと、該積分値SQnの最小値MSQnを求めるルーチンである。
ステップ31では、図3のフローチャートのステップ1と同様に、Ref予約されているか否かを判断する。YES(Ref予約中)であれば、ステップ32へ進み、NO(Ref予約解除)であれば、ステップ35へ進む。
【0066】
ステップ32では、図3のフローチャートのステップ2と同様に、気筒判別を行う。
次のステップ33では、エアフローメータ9の検出値Qs(吸入空気流量に相当)の特定期間の積分値SQ(Qs積分用RAM)を、SQn(n;気筒番号)としてセットすると共に、取得されたSQの最小値MSQをMSQn(n;気筒番号)としてセットする。そして、SQ、MSQを0にリセットした後、ステップ34へ進む。
【0067】
ステップ34では、Ref予約を解除して、ステップ35へ進む。
ステップ35では、図3のフローチャートのステップ5と同様に、エアフローメータ(AFM)9の検出信号(電圧信号)をA/D変換する。
ステップ36では、図3のフローチャートのステップ5と同様に、ステップ35で得られたA/D変換値をテーブルルックアップ等によりリニアライズして、Qsを算出する。
【0068】
ステップ37では、ステップ36で算出されたエアフローメータ9の検出値Qsを、特定期間(Ref信号間)での積算のために加算する。
即ち、積算値SQ=SQ保持値(前回値)+Qs
なる処理を行う。
次のステップ38では、SQ<MSQ(SQの最小値、初期値0)であるか否かを判断する。
【0069】
YESであれば、SQは負の最小値に向かって減少している途中であるとして、ステップ39へ進み、現在のSQを最小値MSQとしてMSQを更新して、リターンする。
一方、NOであれば、SQの値は正値か或いは最小値に向かって減少する傾向は無くなったので、既に最小値MSQは得られたとして、MSQを更新せず、そのままリターンする。
【0070】
このようにして、各気筒に対応させて、特定期間の積分値SQnと、該積分値SQnの最小値MSQnを求めた後、本実施形態では、図8のフローチャートを実行して、SQn、最小値MSQnに基づいて、可変動弁装置13、15の異常診断を行う。なお、本フローは、SQn読み込み(例えば180°ca)毎に実行されるルーチンである。
【0071】
即ち、
ステップ41では、図6のフローチャートのステップ21と同様に、気筒判別を行う。
ステップ42では、図7のフローチャートで得られた該当気筒の積算値SQn(n;気筒番号)を読み込み、図6のフローチャートのステップ22と同様に、目標Q(吸入空気流量期待値)に対する積算値SQnの比A{或いは偏差(=目標Q−SQn)であっても良い}を求める。
【0072】
SQn/目標Q=A
ステップ43では、図3のフローチャートのステップ11と同様にして、診断条件が成立したか否かを判断する。
YESであればステップ44へ進み、NOであれば本フローを終了する。
ステップ44では、A<LEMV♯(診断基準値;正の値)か否かを判断する。
【0073】
YESであれば、積算値SQnが、正常であれば得られるであろう目標Q(吸入空気流量期待値)に対して所定レベル以下の小さな値となっていると判断できるので、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)の一方或いは両者に何らかの異常が生じている惧れがあると判断して、ステップ45へ進む。
【0074】
NOであれば、該当気筒の吸気弁12或いは排気弁14(延いては可変動弁装置13、15)は共に正常(該当気筒の吸気弁14の開弁固着を除く)であろうと判断して、本フローを終了する。即ち、該当気筒(例えば第2気筒)の吸気弁12の開弁固着は、後述するように、他の気筒(例えば第1気筒)が該当気筒となっている異常診断実行時に診断されることになる。
【0075】
ステップ45では、異常気筒、異常の形態(吸気弁12或いは排気弁14の異常なのか、開弁固着或いは閉弁固着なのかなど)を特定する処理を進めるべく、A<LEMV2♯(診断基準値;負の値)か否かを判断する。
YESであれば、A延いてはSQnが負の値となっていると考えられるので、図10、図12のタイミングチャートに示したように、吸気弁12が開弁固着しているか、排気弁14が開弁固着している惧れがあるとして、ステップ46へ進む。
【0076】
NOであれば、A延いてはSQnは略0近傍の値となっていると考えられるので、図9、図11のタイミングチャートに示したように、吸気弁12が閉弁固着しているか、排気弁14が閉弁固着している惧れがあるとして、ステップ52へ進む。
ステップ46では、直前気筒(例えば第1気筒)のA(=直前気筒のSQn/目標Q)>LEMV3♯(診断基準値;正の値)か否かを判断する。
【0077】
NOであれば、図12のタイミングチャートにおける故障形態に該当すると判断できるので、即ち、該当気筒(例えば第2気筒)の排気弁14が開弁固着等している惧れがあると判断できるので、ステップ47へ進む。
ステップ47では、該当気筒(例えば第2気筒)の異常カウンタCEMVNGnをインクリメントすると共に、ステップ48で、排気弁14の開故障判定をして、ステップ57へ進む。
【0078】
一方、ステップ46でYES判定された場合は、図10のタイミングチャートにおける故障形態に該当すると判断できるので、即ち、該当気筒(ここでは例えば第1気筒)の次の気筒(例えば第2気筒)の吸気弁12が開弁固着等している惧れがあると判断できるので、ステップ49へ進む。
ステップ49では、『該当気筒(第2気筒の吸気弁12の開弁固着判定の場合、例えば第1気筒が該当気筒となる)のA(=SQ/目標Q)』<『2つ前の気筒(ここでは、例えば第3気筒)のA02(=SQ/目標Q)』であるか否かを判断する。
【0079】
YESであれば、ステップ50で、該当気筒の次の気筒(例えば第2気筒)の異常カウンタCEMVNGn+1をインクリメントすると共に、ステップ51で、吸気弁12の開故障判定をして、ステップ57へ進む。また、NOの場合には、異常カウンタCEMVNGn+1をインクリメントすることなく、ステップ51以降へ進む。
【0080】
なお、ステップ46でYES判定され、ステップ49へ進む場合は、図10のタイミングチャートにおける故障形態(吸気弁12の開弁固着)に該当すると判断できるのであるが、例えば第2気筒の吸気弁12が開弁固着している場合、SQnが負の値となりステップ46でYES判定されるケースが、該当気筒が第1気筒の場合と、第3気筒の場合と、2通り存在することになる。このため、第1気筒の次の気筒(第2気筒)の吸気弁12の開弁固着なのか、第3気筒の次の気筒(第4気筒)の吸気弁12の開弁固着なのか、を区別する必要がある。
【0081】
そこで、ステップ49では、A<A02を判断することで、第1気筒の次の気筒(第2気筒)の吸気弁12の開弁固着なのか、第3気筒の次の気筒(第4気筒)の吸気弁12の開弁固着なのか、を区別できるようにしているのである。
ところで、前記ステップ45で、NO判定された場合は、A延いてはSQnは略0近傍の値となっていると考えられるので、図9、図11のタイミングチャートに示したように、吸気弁12が閉弁固着しているか、排気弁14が閉弁固着している惧れがあるとして、ステップ52へ進むことになるが、
ステップ52では、最小値MSQn<LEMV4♯(診断基準値;負の値)であるか否かを判断する。
【0082】
YESであれば、SQnの最小値MSQnが所定レベルより大きな負の値となっていると考えられるので、図11のタイミングチャートに示したように、排気弁14が閉弁固着している惧れがあると判断できるので、ステップ53で、該当気筒(例えば、第2気筒)の異常カウンタCEMVNGnをインクリメントすると共に、ステップ51で、排気弁14の閉故障判定をして、ステップ57へ進む。
【0083】
これに対し、NOであれば、SQnの最小値MSQnは略0近傍の値になっていると考えられるので、図9のタイミングチャートに示したように、吸気弁12が閉弁固着している惧れがあると判断できるので、ステップ55で、該当気筒(例えば、第2気筒)の異常カウンタCEMVNGnをインクリメントすると共に、ステップ56で、吸気弁12の閉故障判定をして、ステップ57へ進む。
【0084】
そして、ステップ57では、異常カウンタCEMVNGn(或いは異常カウンタCEMVNGn+1)≧LFS♯(フェールセーフのための所定値)であるか否かを判断する。
YESであれば、ステップ58へ進み、警告灯(MIL)を点灯等して運転者等に可変動弁装置に何らかの異常がある旨を認知させ修理等の処置を促すなどした後、異常が生じているn番気筒(或いはn+1番気筒)に対して、吸気弁12及び排気弁14に全閉指令を送って、本フローを終了する。
【0085】
該ステップ58により、吸気弁12が異常のときには、排気弁14が全閉維持されるので、吸気系と排気系とが連通されるような事態を回避できるので、排気が吸気系延いては燃料噴射弁等へ逆流してしまうといった惧れを確実に回避でき、以ってフェールセーフ機能を向上させることができる。
また、排気弁14が異常のときには、吸気弁12が全閉維持されるので、吸気系と排気系とが連通されるような事態を回避できるので、排気が吸気系延いては燃料噴射弁等へ逆流してしまうといった惧れを確実に回避でき、以ってフェールセーフ機能を向上させることができる。
【0086】
以上のように、第3の実施形態によれば、吸気弁12或いは排気弁14、延いては可変動弁装置13、15の異常診断のためのセンサを追加設定することなく、既設のエアフローメータ9の検出結果を用いることで、簡単かつ安価な構成で、異常気筒の特定や故障形態を特定しながら吸気弁12或いは排気弁14、延いては可変動弁装置13、15の異常診断を行うことができる。
【0087】
しかも、本実施形態では、運転状態に応じて設定される目標Q(吸入空気流量期待値)と、実際に検出された特定期間におけるある気筒の積算値SQnと、に基づいて、異常を診断する構成としたので、機関運転状態が過渡状態にあっても、吸気弁12或いは排気弁14延いては可変動弁装置13、15の異常を診断することができる。
【0088】
つまり、本実施形態によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、機関運転状態が過渡状態にあっても、異常気筒や故障形態を特定しながら、吸気弁12或いは排気弁14の作動異常延いては可変動弁装置13、15の異常を診断することができる。
更に、本実施形態では、異常があると診断された場合には、該当気筒の吸気弁12及び排気弁14に全閉指令を送るようにしたので、排気が吸気系等へ逆流してしまうといった惧れを回避でき、以ってフェールセーフ機能(安全性、リンプホーム性など)を向上させることができる。
【0089】
ところで、上記各実施形態では、可変動弁装置13、15を備えた場合について説明したが、本発明は、可変動弁装置13、15のうち何れか一方を備えたものにも適用できるものである。
そして、上記各実施形態では、可変動弁装置として所謂EMVを採用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、カムシャフトと、これをクランクシャフト回転に連結するカムスプロケットと、の間の位相角を変化させる構成のもの、或いは、異なる位相角を備えた複数のカムを切換えて吸気弁12の開閉タイミング(位相角)を可変制御する構成のものなどにも適用できる。また、既存のカム駆動方式の吸気弁或いは排気弁の動弁装置であって、油圧ラッシュアジャスタ付のものなどにおいて、油圧系異常やラッシュアジャスタ異常による吸気弁或いは排気弁の開閉異常をも、本発明によれば、簡単かつ安価な構成で、精度良く診断することができるものである。
【0090】
そして、一般的な油圧ラッシュアジャスタ等を備えない吸排気弁の駆動装置(動弁装置)にあっても、本発明に係る異常診断によれば、別個新たにセンサを追加することなく、簡単かつ安価な構成で精度良く異常診断を行えるので、低コスト化等が図れ有意義なものとなる。
また、特定期間は、特定気筒の吸気弁或いは排気弁の開閉特性によってエアフローメータ9の検出値Qsが影響を受ける期間であって、診断精度を所定レベルとすることができる期間に設定すれば、各実施形態で説明したRef信号間(4気筒機関の場合、180°ca)に限定されるものではない。つまり、4気筒機関の場合でも、180°caより短くしたり長くしたりすることは可能であるし、他の多気筒機関の場合にも、特定気筒の吸気弁或いは排気弁の開閉特性によってエアフローメータ9の検出値Qsが影響を受ける期間であって、診断精度を所定レベルとすることができる期間に、適宜設定することができるものである。
【0091】
ところで、上記各実施形態においては、特定期間における積算値SQn(或いは平均値)を該当気筒に対応した積算値SQn(或いは平均値)として高精度に検出できるようにするために、吸気弁からエアフローメータ9までの距離(空気の移動距離)を、気筒間バラツキが最小となるようにすることが好ましく、例えば吸気弁からエアフローメータ9までの距離の気筒間バラツキを±10cm程度に管理することが好ましい。
【0092】
つまり、アフローメータ9の検出値に、吸気弁(或いは排気弁)の開閉特性変化に起因した変化が現れるまでの時間は、吸気弁からエアフローメータ9までの距離に応じて変化するから(吸気流速は音速)、吸気弁からエアフローメータ9までの距離に気筒間でバラツキがあると、該当気筒に対応した特定期間から外れたところで、エアフローメータ9の検出値に吸気弁(或いは排気弁)の開閉特性変化に起因した変化が現れる惧れがあり、かかる場合には、該当気筒の積算値SQn(或いは平均値)の算出精度が低下すると共に、他の気筒の積算値SQn(或いは平均値)の算出に影響を及ぼす惧れがあり、以って積算値SQn(或いは平均値)の算出精度の低下、延いては異常診断精度が低下する惧れがあるが、吸気弁からエアフローメータ9までの距離の気筒間バラツキを良好に管理すれば、このような惧れを排除することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態における可変動弁装置を備えた内燃機関のシステム構成図。
【図3】同上実施形態における特定期間の積算値SQnの算出ルーチンを説明するフローチャート。
【図4】同上実施形態における可変動弁装置(吸気弁或いは排気弁)の異常診断ルーチンを説明するフローチャート。
【図5】同上実施形態におけるRef予約ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】第2の実施形態における可変動弁装置(吸気弁或いは排気弁)の気筒毎の異常診断ルーチンを説明するフローチャート(過渡運転時対応)。
【図7】第3の実施形態における特定期間の積算値SQn、SQnの最小値MSQnの算出ルーチンを説明するフローチャート。
【図8】第3の実施形態における可変動弁装置(吸気弁或いは排気弁)の気筒毎の異常診断ルーチンを説明するフローチャート(異常気筒特定、異常形態特定)。
【図9】吸気弁の閉故障(閉弁固着)時のクランク角度に対する吸入空気流量Qsと積算値SQの変化の様子を示すタイミングチャート。
【図10】吸気弁の開故障(開弁固着)時のクランク角度に対する吸入空気流量Qsと積算値SQの変化の様子を示すタイミングチャート。
【図11】排気弁の閉故障(閉弁固着)時のクランク角度に対する吸入空気流量Qsと積算値SQの変化の様子を示すタイミングチャート。
【図12】排気弁の開故障(開弁固着)時のクランク角度に対する吸入空気流量Qsと積算値SQの変化の様子を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 吸気通路
3 スロットル弁
6 燃料噴射弁
7 コントロールユニット
8 クランク角センサ
9 エアフローメータ(AFM)
10 スロットルセンサ
11 水温センサ
12 吸気弁
13 可変動弁装置(吸気弁用)
14 排気弁
15 可変動弁装置(排気弁用)

Claims (9)

  1. 内燃機関の動弁装置の異常診断装置であって、
    機関の吸入空気流量を検出する吸入空気流量検出手段と、
    前記吸入空気流量検出手段の検出結果を、特定期間内で積算する吸入空気流量積算手段と、
    前記吸入空気流量積算手段の積算結果に基づいて、動弁装置の異常を診断する異常診断手段と、を含んで構成され、
    前記吸入空気流量検出手段は、逆流検出が可能であり、
    前記特定期間は、該当気筒の吸気弁開時期から開始する期間として、気筒毎に対応させて設定されたことを特徴とする内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  2. 前記異常診断手段が、少なくとも動弁装置に対する作動指令信号から求まる吸入空気流量期待値と、前記吸入空気流量積算手段の積算結果と、の差又は比が、所定レベルを越えたときに、動弁装置が異常であると診断することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  3. 前記異常診断手段が、気筒間における積算結果の差或いは比、又は気筒毎の積算結果の平均値と気筒毎の積算結果との差或いは比と、所定レベルと、の比較により、動弁装置の異常を診断することを特徴とする請求項に記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  4. 前記異常診断手段が、動弁装置に異常があると診断した場合において、気筒別の積算結果が負の所定値を越えている場合には開故障と異常診断し、そうでない場合には閉故障と診断する機能を含んで構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1つに記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  5. 前記異常診断手段が、動弁装置に異常があると診断した場合において、1つ手前の特定期間に対応する気筒の積算結果又は2つ手前の特定期間に対応する気筒の積算結果に基づいて異常気筒を特定する機能を含んで構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1つに記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  6. 特定期間内で積算途中の吸入空気流量積算の最小値を検出する最小値検出手段を備え、
    前記異常診断手段が、動弁装置に異常があると診断した場合において、前記最小値と所定レベルとの比較により、吸気弁の閉故障と排気弁の閉故障とを区別する機能を含んで構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1つに記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  7. 前記特定期間が、吸気行程、或いは吸排気弁の開閉特性変化によって前記吸入空気流量検出手段の検出結果が影響される期間であることを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1つに記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  8. 前記動弁装置が、吸気弁或いは排気弁の少なくとも一方の開閉特性を可変に制御することができる可変動弁装置であることを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1つに記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
  9. 前記内燃機関が、スロットル弁を備えないノンスロットルエンジンであることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の動弁装置の異常診断装置。
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