JP3577649B2 - 消臭機能を備えた共重合体溶液 - Google Patents
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Description
この発明は消臭機能を備えた共重合体の水及至水性媒体溶液に係るものである。本発明よって提供される共重合体溶液は、紙、繊維、衣料、寝具をはじめ衛生材に至る各種製品に、消臭の目的で加工を施すために使用される。
【0002】
【従来の技術】
消臭を目的とした繊維用加工剤として多数検討され特許出願がなされているところ、これらは以下のとおりである。
分子内に存在する−COOHがアンモニア、アミンと塩を造りそれによって加工剤の中へアンモニア、アミンを取り込み飛散を防ごうとするものである。
特開昭63−85177号はアクリル酸とエチレンとの共重合体エマルジョン(樹脂濃度20%)を使用して又はこれに銅粉末を混合したものを使用して、布帛を加工しこれに消臭性能を賦与することを開示し、消臭機序が物理的吸着脱臭ではなく、化学的消臭であることを主張している。
【0003】
特開昭64−5553号は有機酸又は無機酸とキトサンとから調整される水溶液を使用せんとするものである。特開平1−314784号はアクリル酸又はメタクリル酸を主体とする重合体に架橋剤を加えたものを使用し、被加工物たる繊維への固着を強め耐久性の向上を図らんとするものである。特開平2−307970号は繊維に−COOHを持つビニルモノマーをメラミン誘導体と共に付着熱処理を行い、これに金属イオンを−COOHに配位させ、これによって耐洗濯性のある消臭性繊維(又は布帛)を得んとするものである。特開平4−174765号はL−アスコルビン酸又はクエン酸と第一鉄塩又は第二銅塩、N−メチロールアクリルアミド及び重合触媒から成る処理液をポリアミド繊維につけて繊維上で重合させ、もって消臭性を賦与しようとするものである。
特開昭64−11555号は酸性基とアルカリ金属で置換された酸性基が夫々特定当量以上の化合物とビニルポリマーの配合物が消臭効果を発揮することを明らかにしている。
【0004】
これら数多くの消臭性能を持つ加工用剤、又は組成物が提供されているが、アンモニア系、硫化水素系いづれてあっても効力を発揮するものは事実上見当たらないのが実情であり、加工液の化学的安定性が不足したり(例えば使用している金属が沈降)、加工後における耐久性が十分でない(洗濯すると効果が出なくなる)など問題点があり、加工し易くて、効果が持続する優れものが求められており、試行錯誤を繰り返し検討がなされている状況にある。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は水及至水性媒体に可溶であって、且つ洗濯によって有効成分が離脱することのないもので、更に被処理物への加工が簡単で、アンモニア、アミン、メルカプタン、硫化水素等の臭気を滅することが可能な共重合体樹脂水溶液及至水性媒体溶液を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によって提供される共重合体樹脂水溶液乃至水性媒体溶液は以下のとおりにして造られる。即ち、水又は水溶性媒体或いはその混合物中、A成分としてイタコン酸又はシトラコン酸の-COOHの一つをアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩に変えたもの、B成分として末端ヒドロキシがアルキルエーテル化されている(ポリ)アルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいづれか一つを加え、更にC成分として末端がヒドロキシ基であるアルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいづれか一つを加え、重合触媒を加え、加熱し、重合反応を行い、得られた共重合体溶液に金属塩を加える。
【0007】
又は、水又は水溶性媒体あるいはその混合物中、A成分としてイタコン酸又はシトラコン酸のいずれか一つ、B成分として末端ヒドロキシがアルキルエーテル化されている(ポリ)アルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいずれか一つ、更にC成分として末端がヒドロキシ基であるアルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸またはメタクリル酸のいずれか一つとを重合触媒と共に、加熱し、重合反応を行い、得られた共重合体溶液にアルカリ金属水酸化物又はアンモニア水を加え、更に金属塩を加える。これによって本発明が目的とする共重合体樹脂水溶液乃至水性媒体溶液は提供される。
【0008】
ここにおいて、A成分であるイタコン酸又はシトラコン酸は−COOHを2個備えているのでそのうちの一つを金属塩との反応に当て、他を遊離の状態におくことによりアンモニア系、アミン系の消臭に機能する。当該成分の含有量は共重合体中30〜70重量%となるように組成されるのが、溶液の安定性と消臭性能の保持から、好都合である。−COOHを2個備えているカルボン酸で共重合体に組み込まれるものとしてマレイン酸、フマール酸は多用されているのであるけれども、本件発明においては、これらは重合物のゲル化、金属塩との反応時に沈降物を生じる或いはゲル化などのために使用できない。
【0009】
次に、B成分である末端ヒドロキシがアルキルエーテル化されている(ポリ)アルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸は重合体溶液の安定性に関係し、(ポリ)アルキレンオキシドの繰り返し単位が5以上好ましくは9以上であることが、重合時の反応系の安定性及び保存時の溶液の長期安定性を保つうえで、望まれるところである。C成分である末端がヒドロキシ基であるアルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸は加工後における被加工物の熱処理によって、架橋等をするので、重合体樹脂の不溶化のために機能する。
【0010】
用いられる水性媒体とはアルコール、具体的にはエタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの水溶性媒体と水との混合物を水性媒体と呼ぶ。次にB成分としての末端ヒドロキシがアルキルエーテル化されている(ポリ)アルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸とは末端ヒドロキシ基がメチル基、エチル基でエーテル化され、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが5個以上連鎖したものでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、具体例を例示すればメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレートなどが挙げられる。
【0011】
C成分としての末端がヒドロキシ基であるアルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メチル-2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メチル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート、そのほかエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが2〜4モル付加したアクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。
【0012】
重合に際し用いられる触媒はベンゾイルパーオキシド、ブチルパーオキシド、過硫酸アンモン、過硫酸カリなどが挙げられる。これらは水又はイソプロピルアルコール、プロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水溶性溶媒又はこれらと水の混合物等)に溶かし重合系に加え、少なくとも過酸化物からラジカルが生成する温度に加熱して重合を行う。重合終了の判断は重合による発熱により系の温度の上昇が見られなくなった時点をもって終了とするが、重合時間は重合物の重合度と関係するので2〜6時間かけて行うのがよい。
【0013】
重合反応は水あるいは水性媒体若しくは水溶性媒体中で行うことができるが、かかる場合において、当該重合体溶液はそのままでこれに金属塩を加え金属塩と重合体とを反応させることもできるが、水溶性媒体中で重合反応を行った場合には使用する媒体によっては添加した金属塩が反応しないこともあるので、一旦水溶性媒体を減圧下に留去し、水を加えるなどしてから金属塩を加えるとよい。使用される金属塩としては硫酸銅、塩化第二銅、硝酸銅、塩化第一銅、炭酸銅などの銅塩、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などの亜鉛塩などの金属塩が挙げられる。これら銅及び亜鉛の金属塩は本発明におけるA成分であるイタコン酸又はシトラコン酸と塩を造り、メルカプタン、硫化水素系の消臭に有効である。
【0014】
かくして得られる本発明目的共重合体樹脂水溶液乃至水性媒体溶液は、場合によっては、殊に金属との接触によるイオン化が問題となるようなときは、アンモニア水にて液性を調整して使用に供されるところ、ウエットタイプのティッシュペーパー、カーペット、クッション、スポーツ衣料、衛生材料、壁紙等を対象として加工を施しておけば、アミン、アンモニア臭は勿論のこと特にメルカプタン、硫化水素等への優れた消臭性を発揮し、洗濯等に対する耐久性、とりわけ被加工物が洗濯をして反復使用することを予定している衣料、カーペット等である場合、本発明の目的物で加工を施した被加工物の加熱処理を行っておけば、洗濯後においても優れた消臭性を保持できるという性能を備えると共に水主体の媒体での溶液として提供されるので加工作業の簡便さ、安全な作業環境維持などの副次的効果もある。
【0015】
【実施例】
実施例1
2000mlの四つ口フラスコにイタコン酸50g、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル10g、イオン交換水200g、予め温水浴中で溶融させておいたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰り返し単位23)50g、を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら温水浴上で70度に加熱した。次いで2gの過硫酸アンモニウムを38gのイオン交換水に溶解させた開始剤を4等分し、30分間隔で順次4回にわたって添加し、重合を行った。開始剤の添加を完了した後、2時間30分加熱撹拌を続行し重合を完結した。10%水酸化ナトリウム水溶液154gを添加し30分撹拌後、イオン交換水400gを加えて希釈した。内温を40度まで冷却し、48gの硫酸銅5水和物を300gのイオン交換水に溶解させたものを添加し1時間撹拌を行った。次いでアンモニア水32gを添加し、更に30分撹拌を行うことにより消臭性樹脂水溶液を得た。
【0016】
実施例2
2000mlの四つ口フラスコにイタコン酸 50g、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル10g、イオン交換水 200g、予め温水浴中で溶融させておいたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰り返し単位9)50g、を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら温水浴上で70度に加熱した。次いで2gの過硫酸アンモニウム38gのイオン交換水に溶解させた開始剤を4等分し、30分間隔で順次4回にわたって添加し、重合を行った。開始剤の添加を完了した後、2時間30分加熱撹拌を続行し重合を完結した。10%水酸化ナトリウム水溶液 154gを添加し30分撹拌後、イオン交換水 400gを加えて希釈した。内温を40度まで冷却し、48gの硫酸銅5水和物を300gのイオン交換水に溶解させたものを添加し1時間撹拌を行った。次いでアンモニア水 32gを添加し、更に30分攪拌を行うことにより消臭性樹脂水溶液を得た。
【0017】
実施例3
2000mlの四つ口フラスコにシトラコン酸50g、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル10g、イオン交換水200g、予め温水浴中で溶融させておいたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰り返し単位23)50g、を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら温水浴上で70度に加熱した。次いで2gの過硫酸アンモニウムを38gのイオン交換水に溶解させた開始剤を4等分し、30分間隔で順次4回にわたって添加し、重合を行った。開始剤の添加を完了した後、2時間30分加熱撹拌を続行し重合を完結した。10%水酸化ナトリウム水溶液154gを添加し30分撹拌後、イオン交換水400gを加えて希釈した。内温を40度まで冷却し、48gの硫酸銅5水和物を300gのイオン交換水に溶解させたものを添加し1時間撹拌を行った。次いでアンモニア水32gを添加し、更に30分攪拌を行うことにより消臭性樹脂水溶液を得た。
【0018】
実施例4
2000mlの四つ口フラスコにイタコン酸50g、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル10g、イオン交換水200g、予め温水浴中で溶融させておいたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰り返し単位23)50g、を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら温水浴上で70度に加熱した。次いで2gの過硫酸アンモニウムを38gのイオン交換水に溶解させた開始剤を4等分し、30分間隔で順次4回にわたって添加し、重合を行った。開始剤の添加を完了した後、2時間30分加熱撹拌を続行し重合を完結した。10%水酸化ナトリウム水溶液154gを添加し30分撹拌後、イオン交換水400gを加えて希釈した。内温を40度まで冷却し、55.3gの硫酸亜鉛7水和物を300gのイオン交換水に溶解させたものを添加し1時間撹拌を行った。次いでアンモニア水32gを添加し、更に30分攪拌を行うことにより消臭性樹脂水溶液を得た。
【0019】
比較例1
2000mlの四つ口フラスコにイタコン酸50g、イオン交換水200g、予め温水浴中で溶融させておいたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰り返し単位23)50g、を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら温水浴上で70度に加熱した。次いで2gの過硫酸アンモニウムを38gのイオン交換水に溶解させた開始剤を4等分し、30分間隔で順次4回にわたって添加し、重合を行った。開始剤の添加を完了した後、2時間30分加熱撹拌を続行し重合を完結した。10%水酸化ナトリウム水溶液154gを添加し30分撹拌後、イオン交換水400gを加え希釈した。内温を40度まで冷却し、48gの硫酸銅5水和物を300gのイオン交換水に溶解させたものを添加し1時間撹拌を行った。次いでアンモニア水32gを添加し、更に30分攪拌を行うことにより消臭性樹脂水溶液を得た。
【0020】
比較例2
2000mlの四つ口フラスコにイタコン酸50g、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル10g、イオン交換水200g、予め温水浴中で溶融させておいたメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰り返し単位4)50g、を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら温水浴上で70度に加熱した。次いで2gの過硫酸アンモニウムを38gのイオン交換水に溶解させた開始剤を4等分し、30分間隔で順次4回にわたって添加し、重合を行ったが、途中において重合物の凝析現象が現れ、
重合物の溶液状態を維持できなかった。
【0021】
消臭性の評価は以下に記述するところに従い行った。即ち、
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた消臭性樹脂をそれぞれ固形分換算で2.0%wf(固形分:2.0%)付着させる溶液を調製し、木綿を浸漬させた後、マングルで絞り、50℃で2時間乾燥したもの、更に110℃、130℃、150℃の条件で10分の乾熱処理を行ったものを試料とした。
かくて得られた各試料について、消臭性を評価した。
この場合、評価結果は処理後及び下記洗濯方法により5回洗濯後の消臭率で示した。
【0021】
消臭性の評価方法:
500mlのポリプロピレン製瓶に試料3gを入れ、悪臭として硫化水素またはメチルメルカプタンを注入し密栓した。その際の注入量は硫化水素の場合初期濃度を200ppm、メチルメルカプタンの場合初期濃度を40ppmとなるようにした。硫化水素であれば20分、メチルメルカプタンであれば2時間後の悪臭濃度をガス検知管にて測定した。
【0022】
500mlのポリプロピレン製瓶に試料3gを入れ、悪臭としてアンモニア水を注入し密栓した。その際の注入量はアンモニアの場合初期濃度を200ppmとなるようにした。20分後悪臭濃度をガス検知管にて測定した。
【0023】
洗濯方法:
家庭用洗濯機PS−545(日立(株)製)を用い、中性洗剤”ザブ”(花王(株)製0.2%、温度50℃±2℃、で5分間強反転で洗濯した後、排液、オーバーフローさせながらすすぎを5分間行う操作を洗濯1回とする。
【0024】
金属腐蝕性の評価方法:
表面を磨いた金属(鋼鉄)をアセトンで洗浄したものに消臭性樹脂水溶液をつけて5時間放置し、錆等の発生状況を観察した。○:錆の発生が認められないことを示す。
評価結果を表1、表2に示す。
【表1】
【表2】
Claims (4)
- 銅イオン又は亜鉛イオンを含んでなる消臭加工に適した樹脂水溶液乃至水性媒体溶液であって、当該樹脂溶液が
A成分として
イタコン酸又はシトラコン酸のいづれか一つ
B成分として
末端ヒドロキシがアルキルエーテル化されている(ポリ)アルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいづれか一つ
C成分として
末端がヒドロキシ基であるアルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいづれか一つ
の三成分を組成した共重合体の水溶液乃至水性媒体溶液であって、銅イオン又は亜鉛イオンを含有している共重合樹脂水溶液乃至水性媒体溶液。 - 請求項1において、A成分がイタコン酸である請求項1記載の重合体樹脂溶液。
- 請求項1において、A成分であるイタコン酸又はシトラコン酸がそのカルボキシル基一つをアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を形成している請求項1記載の共重合体樹脂溶液。
- B成分である末端ヒドロキシがアルキルエーテル化されている(ポリ)アルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいづれか一つと、A成分であるイタコン酸又はシトラコン酸の一つの-COOHがアルカリ金属塩又はアンモニウム塩に変えられているイタコン酸又はシトラコン酸のいづれか一つと、更にC成分である末端がヒドロキシ基であるアルキレンオキシドでエステル化されているアクリル酸又はメタクリル酸のいづれか一つとを、水乃至水性媒体中で重合反応を行い、得られた共重合体溶液に金属塩を加えることにより得られる共重合体の水乃至水性媒体溶液の製造方法。
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