JP3577611B2 - クラッチ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自己増力手段を備えたボークリング(baulkring) 形シンクロナイザに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多段比変速機に用いられるボークリング形シンクロナイザ機構は公知である。そのような機構には、それぞれ歯車を軸に同期させて噛み合いクラッチ連結させる摩擦及びジョー部材の複数対と、シフトスリーブの初期係合移動に応じて摩擦部材を係合させるプレエナージャイザ(pre−energizer) アセンブリと、軸に回転可能に固定されたハブとが設けられており、ハブに形成された外側スプライン歯が、ジョー部材の複数対の1つを形成していることが多いシフトスリーブの内側スプライン歯を摺動可能に収容しており、さらに同期が達成されるまでシフトスリーブの係合移動を拘束し、またスリーブからシフト力を伝達して摩擦部材の係合力を増加させるブロッカー歯を備えたボークリングが設けられている。
【0003】
多段比変速機の技術では、シンクロナイザ機構を用いて変速歯車比の全部または一部のシフト時間を減少させることは公知である。また、自己増力形のシンクロナイザ機構を用いることによって、運転者に必要とされるシフト作動力すなわちシフトレバーに加えられる力を減少させることも公知である。運転者のシフト作動力は、一般的に車両の大きさ及び重量に伴って増大するので、自己増力形のシンクロナイザ機構は特に重量形トラックに特に重要である。自己増力形のボークリング形シンクロナイザが米国特許第3,548,983 号に示されており、この特許は参考として本説明に含まれる。自己増力形のピン形シンクロナイザも米国特許第5,092,439 号に示されており、この特許も参考として本説明に含まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、改良した自己増力手段を備えたボークリング形シンクロナイザクラッチを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴によれば、クラッチが、共通軸線回りに相対回転可能に配置された第1,第2駆動部を摩擦的に同期させて噛み合い連結させる。クラッチに設けられた第1ジョー手段が、軸方向のシフト力Fo によって係合移動するのに応じて、ニュートラル位置から第2ジョー部材との係合位置へ移動して、駆動部を噛み合い連結させる。第1ジョー手段の中央開口に形成された内側スプラインの軸方向に延びるフランク表面が、外側スプラインの軸方向に延びるフランク表面と連続して摺動可能にかみ合うことによって、内側及び外側スプライン間の相対回転が防止されている。外側スプラインは第1駆動部に対して回転及び軸方向移動できないように取付けられている。
【0006】
第1ジョー手段の係合移動に応じて、第1摩擦表面が第2摩擦表面と係合する位置へ軸方向に移動することによって、同期トルクを発生することができる。第1,第2ブロッカー手段が、第1ジョー手段の係合移動に応じて係合位置へ移動可能な傾斜表面を備えて、ジョー手段の非同期係合を防止し、シフト力Fo を第1摩擦手段に伝達して摩擦表面の係合力を発生し、また同期が達成された時に第1及び第1ブロッカー手段を離脱させるために同期トルクとは反対のトルクを発生することができる。第1,第2自己増力手段が係合時に作動して同期トルクを反作用させることによって、シフト力Fo の方向に付加軸方向力Fa を発生して、摩擦表面の係合力を増加させることができる。第1,第2自己増力手段には、付加軸方向力Fa をブロッカー手段を介して第1摩擦表面へ送る手段が設けられている。
【0007】
クラッチは、外周に外側スプラインを形成しているハブを特徴としている。ボークリングが、第1摩擦表面と、第2ブロッカー手段を形成している複数の第2ブロッカー表面とを備えている。ボークリングは、ハブからから離れて第2摩擦表面の方へ軸方向に移動可能である。第1ジョー手段の中央開口及び内側スプラインはシフトスリーブに形成されている。第1自己増力手段には、ハブ外周に形成された複数の第1自己増力傾斜面が設けられている。複数の剛性部材がシフトスリーブに、それに対して制限回転可能に、かつほぼ軸方向移動ができないように取付けられている。各剛性部材は、第2自己増力手段の第2傾斜自己増力傾斜面を形成する一側部と、第1ブロッカー手段の第1ブロッカー表面を形成する別の一側部を有している。各剛性部材は、1つの第2ブロッカー表面と1つの第1自己増力傾斜面との間に配置されて、軸方向のシフト力Fo 及び付加軸方向力Fa の両方が剛性部材を介して伝達されるようにしている。
【0008】
【作用】
本発明のシンクロナイザクラッチは、第1ジョー手段が、軸方向のシフト力によって係合移動するのに応じて、ニュートラル位置から第2ジョー手段との係合位置へ軸方向に移動して駆動部を噛み合い連結する。シフトスリーブが、ハブに対して摺動可能にスプライン連結されており、このシフトスリーブに取付けられた複数の剛性部材が、ボークリングに取付けられたブロッカー表面とハブの外周に形成された自己増力傾斜面の間に配置されて、運転者シフト力及び自己増力傾斜面から発生した付加力によって移動する。この両方の力が、ブロッカー表面に対して反作用して摩擦表面を係合させることになる。
【0009】
【実施例】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ここで、使用する「シンクロナイザクラッチ機構」とは、噛み合いクラッチに関連した同期摩擦クラッチによって噛み合いクラッチの部材がほぼ同期回転するまでその噛み合いクラッチの連結の試行が防止される、噛み合いクラッチによって選択比歯車を軸に非回転可能に連結するために用いられるクラッチ機構のことである。「自己増力」とは、同期クラッチの係合力を摩擦クラッチの同期トルクに比例して増大させるために傾斜面またはカム等を含むシンクロナイザクラッチ機構のことである。
【0010】
次に、主に図1〜図8を参照しながら、多段変速比変速機の一部を形成している歯車及びシンクロナイザアセンブリ10について説明する。アセンブリ10には、中心軸線12a回りに回転可能に取り付けられた軸12と、互いに軸方向に離して軸上に、それに対して回転可能に支持され、また公知の方法で軸に対して軸方向移動できないように固定されている歯車14、16と、複動シンクロナイザクラッチ18とが設けられている。
【0011】
シンクロナイザクラッチ18には、公知の方法で歯車14、16に軸方向及び回転方向に固定された環状部材20、22と、本実施例では部材20、22と一体になった歯車摩擦表面24、26と、本実施例では部材20、22と一体になった歯車ジョー歯28、30と、中央開口32a で軸12に軸方向及び回転方向に固定されたハブ32と、シフトスリーブ34と、スリーブ34の中央開口に形成され、かつハブ32の外周に形成された外側スプライン歯38と常時噛み合っている内側スプライン歯36と、ボークリング40、42と、本例ではボークリング40、42と一体になっているブロッカー歯組44、46及び摩擦表面48、50と、プレエナージャイザアセンブリ52と、自己増力/ブロッカーアセンブリ54とが設けられている。
【0012】
本実施例では、シンクロナイザには、各ボークリングに設けられた同数のブロッカー歯と協働する、円周方向に離間した3つの自己増力/ブロッカーアセンブリ54と、円周方向に離間した3つのプレエナージャイザアセンブリとが設けられている。各ブロッカー歯44、46には、それぞれ傾斜ブロッカー表面44a、44b、46a、46b が設けられている。
【0013】
図面から明らかなように、摩擦表面24、48及び26、50が組み合わされて、ジョークラッチ部材の係合に先立って歯車を軸に同期させる摩擦クラッチを形成している。円錐クラッチが好ましいが、他の形式の摩擦クラッチを用いることもできる。広範囲の円錐角度を用いることができる。
【0014】
本実施例では、7.5 度の円錐角度を用いている。摩擦表面は幾つかの公知の摩擦素材のいずれかを基材に取付けて形成することができ、例えば、米国特許第4、700、823 号、第4,844,218 号及び第4,778,548 号に開示されているような熱分解炭素摩擦材を用いることができる。これらの特許は参考として本説明に含まれる。
【0015】
スプライン歯36及び38は、シフトスリーブ34と軸12との間にほぼまったく自由遊びがなくなるように、密接摺動関係で連続して組み合わされている、軸方向に延びるフランク表面36a 、38a を備えている。スプライン36の両端部に、それぞれ歯車を軸に噛み合いクラッチ連結させるために歯車歯28、30と噛み合うジョー歯36b 、36c が形成されている。
【0016】
図9に示されているように、ジョー歯36b 、36c 及び歯車ジョー歯28、30のフランク側部には、誤って歯が離脱するのを防止するバックアウト防止すなわちロッキング角度機構が設けられている。この機構の詳細は、米国特許第4,727,968 号に記載されており、この特許は参考として本説明に含まれる。図9hに示されているように、ジョー歯36c 、30が完全に係合している時、伝達トルクからの力を分散させて摩耗を最小限に抑えることができる十分な係合長さがフランク表面36a 、38a に残っている。
【0017】
各プレエナージャイザアセンブリ52は公知であり、ハブ32内の半径方向に延びる盲孔内に配置された圧縮コイルばね58及びプランジャ60が、ローラまたはボール62(本実施例ではローラ)をシフトスリーブスプライン36の環状のデテント溝36d 内へ付勢している。プレエナージャイザアセンブリ52は、シフトスリーブ34を図1及び9aに示されているニュートラル位置へ弾性的に位置決めする。ローラ62は、ボークリング40、42と一体に形成された複数のタブ64、66(本実施例では3個)の当接表面64a 、66a 間に軸方向に離して設けられている。タブはハブ32のリセス36b 内へ延びて、ハブ及び軸に対するボークリングの回転を制限する。
【0018】
いずれかの歯車を軸に連結したい場合、参考として本説明に含まれる米国特許第4,920,815 号に開示されているような適当な図示しないシフト機構が、部分的に図示されているシフトフォーク68を介してシフトスリーブ34を軸12の軸線に沿って軸方向に、歯車14を連結するためには左に、歯車16を連結するためには右に移動させる。
【0019】
シフト機構は、リンク装置によって運転者が手動で移動させてもよいが、アクチュエータで選択的に移動させたり、シフト機構の移動を自動的に開始させると共にシフト機構によって加えられる力の大きさを制御する手段によって移動させることもできる。
【0020】
シフト機構を手動で移動させる時、プレエナージャイザアセンブリは運転者がシフトスリーブに加える力に比例したプレエナージャイザ力を加える。手動または自動のいずれで加える場合でも、力は軸方向にシフトスリーブに加えられ、図10の力Fo に比例している。シフト力Fo によるシフトスリーブの移動方向に応じて、プレエナージャイザ力が摩擦表面48または50のいずれかをそれに対応した摩擦表面と初期係合する位置へ移動させることによって、後述するようにして自己増力/ブロッカーアセンブリ54を位置決めできるようにするハブ32に対応した位置に対応のボークリングをクロックすることができる。
【0021】
自己増力/ブロッカーアセンブリ54の各々には、ハブ32の外周に形成されてハブ32の回転面に対して傾斜した自己増力すなわちブースト傾斜面70a、70b、70c、70d 及び回転面に直交する方向に延びる非ブースト表面70e 、72f 備えている自己増力手段70と、ブロッカー歯44、46と、ブロッカー及び自己増力の力を反作用させる剛性部材72とが設けられている。部材72には、シフトスリーブ34の円周方向に延びるスロット34a 内にはめ込まれている円周方向に延びる部分78によって互いに固着された端部分74、76が円周方向に離して設けられている。スロット34a は、部材72をその内部でスリーブに対して制限円周方向移動できるが、その内部でスリーブに対して軸方向移動できないようにしている。
【0022】
端部分74には、シフトスリーブ34が軸方向に左または右移動した時にそれぞれ表面70b 、70a に対して反作用する自己増力傾斜面74a 、74b と、シンクロナイザクラッチ機構18が図1及び図7のニュートラル位置にある時に表面70e に対して反作用する非ブースト表面74c と、それぞれブロッカー歯44、46の表面44a 、46a 対して反作用するブロッカー表面74d 、74e とが設けられている。
【0023】
同様に、端部分76には、それぞれ表面70d 、70c に対して反作用する自己増力傾斜面76a 76b と、表面70f に対して反作用する非ブースト表面76c と、それぞれ表面44b 46b に対して反作用するブロッカー表面76d 、76e とが設けられている。
【0024】
円錐クラッチの1つがある程度のトルクを発生する場合、例えば円錐クラッチ摩擦表面間のオイルの粘性剪断によってランプを作動させようとするトルクが発生するような場合に、非ブースト表面70e 、70f 、74c 、76c が係合位置にあることによって、自己増力傾斜面の必要としない作動を防止することができる。
【0025】
次に、図9a〜図9hの自己増力/ブロッカーアセンブリ80を参照しながら説明すると、ここに概略的に示されている実施例は、ブロッカー歯44、46に設けられた軸方向延長部分44c 、46c が、ハブ32に形成された自己増力傾斜面と同様に円周方向に大きく離れた剛性部材端部74、76間にはまっている点で、先行の実施例とは異なっている。延長部分44c 、46c は、端部74、76間に歯44、46を確実に位置決めすることができる。
【0026】
両方の自己増力/ブロッカーアセンブリの作用を図9a〜図9hを参照しながら説明する。以下の説明では、軸12と歯車16との間に図示の表面を係合させる方向の非同期状態が存在すると仮定する。反対方向すなわち歯車14に対する非同期状態は、以下の説明から明らかになる表面係合を生じる。
【0027】
図9aは、シンクロナイザクラッチのすべての構成部材の「ニュートラル位置」を示している。しかし、開始時のシフト延長部分44c 、46c は、円周方向において端部74、76間のいずれの位置にあってもよい。運転者のシフト力Fo によるシフトスリーブ34の初期軸方向右移動がプレエナージャイザローラ62によってタブ当接表面66a を介してボークリング42に伝達されることによって、可動円錐表面50が歯車円錐表面26と初期摩擦係合する。もちろん、円錐表面の初期係合力は、ばね58の力及びデテント溝36d の壁の角度の関数である。
【0028】
図9bは、シフトスリーブ34が歯車16に取り付けられたジョー歯30の方へ軸方向移動するのに応じた剛性部材72のニュートラル位置からの初期移動を示している。図9bの部材は、プレエナージャイザアセンブリが、円錐クラッチ摩擦表面26、50を係合させることができるまで十分にボークリング42を移動させていない「予増力前位置」にあると考えることができる。
【0029】
図9cの部材は、トルクの伝達を開始し、またブロッカー表面74e 、46a を係合させるが、シフトスリーブスロット34a 内で剛性部材72をその円周方向中間位置から移動させるほどではない程度にボークリング42をハブ及びシフトスリーブに対して回転させ始める程度に摩擦表面が係合している「予増力位置」にある。図6を参照されたい。
【0030】
図9dの「ブロッキング/自己増力位置」にある時、トルクが、自己増力表面70b 、74a も係合させる程度にボークリング42及び剛性部材72を回転させている。このため、図9dでは、表面74e 、74a がボークリングのブロッカー表面46a とハブの自己増力傾斜面70b との間に捕らえられる。これらの表面がそのように捕らえられており、自己増力傾斜面の効果を無視する時、シフトスリーブ34から剛性部材72に加えられた運転者の全シフト力Fo がブロッカー表面74e 、46a で伝達されて、摩擦表面26、50を力Fo で係合させることによって、同期トルクTo を発生する。
【0031】
自己増力傾斜面70b 、74a がハブ32の回転面に直交する場合、自己増力の力はまったく発生しないで、トルクTo だけが軸12に反作用するであろう。また、ブロッカー表面74e 、46a が回転面に対して傾斜しているので、それらはジョー歯36a 、30の非同期係合を防止し、シフト力Fo を摩擦表面26、50に伝達するのに加えて、非同期状態では同期トルクに対向するがそれよりも小さい逆トルクすなわち非ブロッキングトルクを発生する。ほぼ同期が達成されると、同期トルクが非ブロッキングトルク以下まで低下することから、ブロッカー歯が離脱するため、シフトスリーブ34が連続的に軸方向移動して、可動ジョー歯36c が歯車ジョー歯30と噛み合うことができる。
【0032】
やはり自己増力傾斜面の効果を無視すると、力Fo によって与えられる円錐クラッチトルクは次式で表される。
【0033】
To =Fo Rc μC /sinα
但し、Rc =円錐摩擦表面の平均半径
μC =円錐摩擦表面の摩擦係数
α =円錐摩擦表面の角度
次に、自己増力傾斜面の作用を説明すると、運転者が加えた軸方向シフト力Fo による同期トルクTo は、もちろん傾斜面で反作用し、これらの表面によって運転者シフト力Fo と同じ方向に作用する、やはりブロッカー表面で伝達される軸方向力成分すなわち軸方向付加力Fa が発生し、それによってさらに摩擦表面の係合力が増大して、トルクTo に追加される付加同期トルクTa が発生する。図10は、クラッチ摩擦表面を係合させる軸方向力の合計Fo +Fa と、クラッチ摩擦表面によって発生した同期トルクの合計To +Ta とを示している。任意の運転者シフト力Fo 及び運転者同期トルクTo に対する軸方向付加力の大きさは、係合した自己増力傾斜面の角度の関数であることが好ましい。この角度は、運転者による適度なシフト作動力に応じて同期トルクを増加させ、同期時間を短縮することができる十分な大きさの付加力Fa を発生できる大きさであることが好ましい。
【0034】
しかし、この角度はまた、制御された軸方向付加力Fa を発生できる程度に小さいことも好ましい、すなわち力Fa は力Fo の増減に応じて増減しなければならない。傾斜面角度が大き過ぎる場合、傾斜面は自己増力ではなく自己固着する。このため、円錐クラッチが初期係合を行うと、力Fa が力Fo に無関係に無制御状態で急激に増大し、そのため円錐クラッチはロックアップ状態へ押し進められる。自己増力ではなく自己固着することによって、シフト特性すなわちシフト感が低下し、シンクロナイザ部品に過度の応力が加わったり、円錐クラッチ表面の過熱や急激な摩耗を発生させたり、さらに運転者のシフトレバー移動を無効化することもある。
【0035】
歯車のアップまたはダウンシフトに対して付加軸方向力が望まれない場合、アップまたはダウンシフト用の傾斜面をスプラインに平行にすることができる。例えば、傾斜面70b 、74a をスプライン38に平行に形成した場合、(その方向のシフトに対して)付加力Fa が生じない。
【0036】
自己増力傾斜面角度θを計算し、運転者の作動力Fo に比例して増減する付加軸方向力Fa を発生するための主要な変数は、円錐クラッチの角度α、円錐クラッチの摩擦係数μC 、円錐クラッチの平均半径比Rc 及び自己増力傾斜面の平均半径比Rr 、傾斜面の摩擦係数μr 、及び自己増力傾斜面の角度である。自己増力すなわちブースト力の計算及び制御についてのさらなる詳細は、参考として本説明に含まれる米国特許第5,092,439 号に記載されている。
【0037】
図9eは、非ブロッキングトルクがブロッカー表面を離脱させた直後に生じる「ブースト/非ブロッキング位置」を示している。この位置で生じる自己増力は、ボークリング42の慣性及び/または円錐クラッチの不完全切り離しによるものであろう。この自己増力現象は、図9fの「歯車へブーストされた位置」の間は継続し、シフトスリーブ34にシフト力Fo の方向に作用する軸方向補助力を発生する。
【0038】
歯36a 及び30のV字形端部が係合した時、非ブロッキング状態になって係合位置へのジョー歯の移動を助けるので、補助力はジョー歯36c がジョー歯30と係合する位置へ向かう軸方向係合移動の再開を助ける。この補助力は、非ブロッキング状態になった時にシフトを終了するために運転者が過大な作動力でシフトレバーを移動させる必要を減じることによっていわゆるシフトノッチネス(shift notchiness)を軽減する、すなわち補助力はシフトを滑らかに比較的小さい作動力で完了させることができるようにする。図9gは「ブースト終了位置」を示し、図9hはジョー歯36c 、30の完全「係合位置」を示している。
【0039】
延長部分44c 、46c は、シンクロナイザ部材が図9aのニュートラル位置にある時、及び図9b〜図9eに示されているようにブロッカー歯44、46のブロッカー表面が剛性部材端部74、76のブロッカー表面と係合している間、剛性部材端部74、76間に捕らえられたままになるように十分に軸方向に長くなっている。しかし、図9f〜図9hからわかるように、図示のシフトに対して非ブロッキング状態になった時、延長部分46c は各剛性部材の端部間に捕らえられなくなる、すなわちその間の円周方向空間と整合した状態に物理的に維持されなくなるため、延長部分46c は端部76と自己増力手段70との間の位置へ任意に移動できる、すなわちその移動が妨害されない。この状態の時、シンクロナイザの部品はニュートラルへ戻ることができず、歯車14へのシフトを行うことができない。
【0040】
図11〜図13は、剛性部材72の端部74、76間における延長部分の円周方向位置決めを保持することによって、剛性部材間の円周方向空間との整合を維持して、シフト変化の開始時にブロッカー表面を確実に係合させることができる3つの変更実施例を概略的に示している。
【0041】
図11では、変更形延長部分が144c、146cで示されており、少なくとも1対の延長部分144c、146cに軸方向の孔144d、146dが設けられて、それにピン90を摺動可能にはめ込むことによって、延長部分を相対円周方向移動できないが、延長部分を相対軸方向移動できるようにしている。図12では変更形延長部分が244c、246cで示されており、少なくとも一方の延長部分244cが、延長部分246cの円周方向に離れた部分内へ摺動可能に延びている。
【0042】
図13a及び13bでは、変更形延長部分がそれぞれ344c、346c及び444c、446cで示されている。図13aでは、少なくとも1対の延長部分344c、346cが軸方向に重合して、一方向への相対円周方向移動を防止している。図13bでは、少なくとも他の1対の延長部分444c、4346c が逆になって、他方向への相対円周方向移動を防止している。
【0043】
自己増力を伴ったシンクロナイザ機構の幾つかの実施例が以上に開示されている。本発明の精神の範囲内において、好適な実施例の様々な変更及び変化が考えられる。開示された機構及び本発明の精神の範囲内であると考えられる変更及び変化の発明部分は、請求項によって定義される。
【0044】
【発明の効果】
本発明のクラッチは、第1ジョー手段の係合移動に応じて第1摩擦表面と第2摩擦表面とが軸方向に移動することによって同期トルクを発生し、また、第1,第2自己増力手段が係合時に作動して同期トルクを反作用させることによってシフト力の方向に付加軸方向力を発生して摩擦表面の係合力を増加させることができるが、さらに、改良した構成として、第2自己増力傾斜面と第1ブロッカー表面を有して、第2ブロッカー表面と第1自己増力傾斜面との間に配置された、複数の剛性部材をシフトスリーブに取り付けたので、軸方向のシフト力及び付加軸方向の両方が、剛性部材を介して伝達されることから、摩擦表面の係合力をさらに増加させることができ、確実なクラッチ動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニュートラル位置にある、軸の軸線回りに回転可能に配置された複動ボークリング形シンクロナイザの断面図である。
【図2】図1の部材の一部分の、軸に対して軸方向に見た部分図である。
【図3】図1の部材の一部分の、軸に対して軸方向に見た部分図である。
【図4】図1のシンクロナイザの構成要素の平面図であり、構成要素は、図1及び図6のシフトスリーブを除いて図1に対して90度回転、図5〜図7に対して60度回転した状態を示す図である。
【図5】図1、図4及び図7に示すボークリングの平面図である。
【図6】図1のシンクロナイザのシフトスリーブの平面図である。
【図7】図4の部品に図8の剛性部材を組み付けたものを図4に対して60度回転させた図である。
【図8】図1及び図7に示す剛性部材の斜視図である。
【図9】図1〜図8のブロッカー及び自己増力部材の変更実施例、及び図1〜図8の実施例にも適用できる部材の幾つかの作動段階 (a)〜(h) を概略的に示している図である。
【図10】シンクロナイザ機構のブロッカー表面に作用する軸方向力及びトルクのグラフ図である。
【図11】図9のシンクロナイザの一部の第1変更例を示している図である。
【図12】図9のシンクロナイザの一部の第2変更例の延長部分を示す図である。
【図13】図9のシンクロナイザの一部の第3変更例の延長部分を示す図である。
【符号の説明】
12 軸
14、16 歯車
18 ボークリング形シンクロナイザ
24,48;26,50 円錐クラッチ摩擦表面
32 ハブ
34 シフトスリーブ
36b,28;36c,30 ジョークラッチ歯
40、42 ボークリング
44、46 ブロッカー歯
44a,44b,46a,46b ブロッカー表面
70a 〜70d 自己増力傾斜面
72 剛性部材
74a,74b,76a,76b 自己増力傾斜面
74d,74e,76d,76e ブロッカー表面
【産業上の利用分野】
本発明は、自己増力手段を備えたボークリング(baulkring) 形シンクロナイザに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多段比変速機に用いられるボークリング形シンクロナイザ機構は公知である。そのような機構には、それぞれ歯車を軸に同期させて噛み合いクラッチ連結させる摩擦及びジョー部材の複数対と、シフトスリーブの初期係合移動に応じて摩擦部材を係合させるプレエナージャイザ(pre−energizer) アセンブリと、軸に回転可能に固定されたハブとが設けられており、ハブに形成された外側スプライン歯が、ジョー部材の複数対の1つを形成していることが多いシフトスリーブの内側スプライン歯を摺動可能に収容しており、さらに同期が達成されるまでシフトスリーブの係合移動を拘束し、またスリーブからシフト力を伝達して摩擦部材の係合力を増加させるブロッカー歯を備えたボークリングが設けられている。
【0003】
多段比変速機の技術では、シンクロナイザ機構を用いて変速歯車比の全部または一部のシフト時間を減少させることは公知である。また、自己増力形のシンクロナイザ機構を用いることによって、運転者に必要とされるシフト作動力すなわちシフトレバーに加えられる力を減少させることも公知である。運転者のシフト作動力は、一般的に車両の大きさ及び重量に伴って増大するので、自己増力形のシンクロナイザ機構は特に重量形トラックに特に重要である。自己増力形のボークリング形シンクロナイザが米国特許第3,548,983 号に示されており、この特許は参考として本説明に含まれる。自己増力形のピン形シンクロナイザも米国特許第5,092,439 号に示されており、この特許も参考として本説明に含まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、改良した自己増力手段を備えたボークリング形シンクロナイザクラッチを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴によれば、クラッチが、共通軸線回りに相対回転可能に配置された第1,第2駆動部を摩擦的に同期させて噛み合い連結させる。クラッチに設けられた第1ジョー手段が、軸方向のシフト力Fo によって係合移動するのに応じて、ニュートラル位置から第2ジョー部材との係合位置へ移動して、駆動部を噛み合い連結させる。第1ジョー手段の中央開口に形成された内側スプラインの軸方向に延びるフランク表面が、外側スプラインの軸方向に延びるフランク表面と連続して摺動可能にかみ合うことによって、内側及び外側スプライン間の相対回転が防止されている。外側スプラインは第1駆動部に対して回転及び軸方向移動できないように取付けられている。
【0006】
第1ジョー手段の係合移動に応じて、第1摩擦表面が第2摩擦表面と係合する位置へ軸方向に移動することによって、同期トルクを発生することができる。第1,第2ブロッカー手段が、第1ジョー手段の係合移動に応じて係合位置へ移動可能な傾斜表面を備えて、ジョー手段の非同期係合を防止し、シフト力Fo を第1摩擦手段に伝達して摩擦表面の係合力を発生し、また同期が達成された時に第1及び第1ブロッカー手段を離脱させるために同期トルクとは反対のトルクを発生することができる。第1,第2自己増力手段が係合時に作動して同期トルクを反作用させることによって、シフト力Fo の方向に付加軸方向力Fa を発生して、摩擦表面の係合力を増加させることができる。第1,第2自己増力手段には、付加軸方向力Fa をブロッカー手段を介して第1摩擦表面へ送る手段が設けられている。
【0007】
クラッチは、外周に外側スプラインを形成しているハブを特徴としている。ボークリングが、第1摩擦表面と、第2ブロッカー手段を形成している複数の第2ブロッカー表面とを備えている。ボークリングは、ハブからから離れて第2摩擦表面の方へ軸方向に移動可能である。第1ジョー手段の中央開口及び内側スプラインはシフトスリーブに形成されている。第1自己増力手段には、ハブ外周に形成された複数の第1自己増力傾斜面が設けられている。複数の剛性部材がシフトスリーブに、それに対して制限回転可能に、かつほぼ軸方向移動ができないように取付けられている。各剛性部材は、第2自己増力手段の第2傾斜自己増力傾斜面を形成する一側部と、第1ブロッカー手段の第1ブロッカー表面を形成する別の一側部を有している。各剛性部材は、1つの第2ブロッカー表面と1つの第1自己増力傾斜面との間に配置されて、軸方向のシフト力Fo 及び付加軸方向力Fa の両方が剛性部材を介して伝達されるようにしている。
【0008】
【作用】
本発明のシンクロナイザクラッチは、第1ジョー手段が、軸方向のシフト力によって係合移動するのに応じて、ニュートラル位置から第2ジョー手段との係合位置へ軸方向に移動して駆動部を噛み合い連結する。シフトスリーブが、ハブに対して摺動可能にスプライン連結されており、このシフトスリーブに取付けられた複数の剛性部材が、ボークリングに取付けられたブロッカー表面とハブの外周に形成された自己増力傾斜面の間に配置されて、運転者シフト力及び自己増力傾斜面から発生した付加力によって移動する。この両方の力が、ブロッカー表面に対して反作用して摩擦表面を係合させることになる。
【0009】
【実施例】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ここで、使用する「シンクロナイザクラッチ機構」とは、噛み合いクラッチに関連した同期摩擦クラッチによって噛み合いクラッチの部材がほぼ同期回転するまでその噛み合いクラッチの連結の試行が防止される、噛み合いクラッチによって選択比歯車を軸に非回転可能に連結するために用いられるクラッチ機構のことである。「自己増力」とは、同期クラッチの係合力を摩擦クラッチの同期トルクに比例して増大させるために傾斜面またはカム等を含むシンクロナイザクラッチ機構のことである。
【0010】
次に、主に図1〜図8を参照しながら、多段変速比変速機の一部を形成している歯車及びシンクロナイザアセンブリ10について説明する。アセンブリ10には、中心軸線12a回りに回転可能に取り付けられた軸12と、互いに軸方向に離して軸上に、それに対して回転可能に支持され、また公知の方法で軸に対して軸方向移動できないように固定されている歯車14、16と、複動シンクロナイザクラッチ18とが設けられている。
【0011】
シンクロナイザクラッチ18には、公知の方法で歯車14、16に軸方向及び回転方向に固定された環状部材20、22と、本実施例では部材20、22と一体になった歯車摩擦表面24、26と、本実施例では部材20、22と一体になった歯車ジョー歯28、30と、中央開口32a で軸12に軸方向及び回転方向に固定されたハブ32と、シフトスリーブ34と、スリーブ34の中央開口に形成され、かつハブ32の外周に形成された外側スプライン歯38と常時噛み合っている内側スプライン歯36と、ボークリング40、42と、本例ではボークリング40、42と一体になっているブロッカー歯組44、46及び摩擦表面48、50と、プレエナージャイザアセンブリ52と、自己増力/ブロッカーアセンブリ54とが設けられている。
【0012】
本実施例では、シンクロナイザには、各ボークリングに設けられた同数のブロッカー歯と協働する、円周方向に離間した3つの自己増力/ブロッカーアセンブリ54と、円周方向に離間した3つのプレエナージャイザアセンブリとが設けられている。各ブロッカー歯44、46には、それぞれ傾斜ブロッカー表面44a、44b、46a、46b が設けられている。
【0013】
図面から明らかなように、摩擦表面24、48及び26、50が組み合わされて、ジョークラッチ部材の係合に先立って歯車を軸に同期させる摩擦クラッチを形成している。円錐クラッチが好ましいが、他の形式の摩擦クラッチを用いることもできる。広範囲の円錐角度を用いることができる。
【0014】
本実施例では、7.5 度の円錐角度を用いている。摩擦表面は幾つかの公知の摩擦素材のいずれかを基材に取付けて形成することができ、例えば、米国特許第4、700、823 号、第4,844,218 号及び第4,778,548 号に開示されているような熱分解炭素摩擦材を用いることができる。これらの特許は参考として本説明に含まれる。
【0015】
スプライン歯36及び38は、シフトスリーブ34と軸12との間にほぼまったく自由遊びがなくなるように、密接摺動関係で連続して組み合わされている、軸方向に延びるフランク表面36a 、38a を備えている。スプライン36の両端部に、それぞれ歯車を軸に噛み合いクラッチ連結させるために歯車歯28、30と噛み合うジョー歯36b 、36c が形成されている。
【0016】
図9に示されているように、ジョー歯36b 、36c 及び歯車ジョー歯28、30のフランク側部には、誤って歯が離脱するのを防止するバックアウト防止すなわちロッキング角度機構が設けられている。この機構の詳細は、米国特許第4,727,968 号に記載されており、この特許は参考として本説明に含まれる。図9hに示されているように、ジョー歯36c 、30が完全に係合している時、伝達トルクからの力を分散させて摩耗を最小限に抑えることができる十分な係合長さがフランク表面36a 、38a に残っている。
【0017】
各プレエナージャイザアセンブリ52は公知であり、ハブ32内の半径方向に延びる盲孔内に配置された圧縮コイルばね58及びプランジャ60が、ローラまたはボール62(本実施例ではローラ)をシフトスリーブスプライン36の環状のデテント溝36d 内へ付勢している。プレエナージャイザアセンブリ52は、シフトスリーブ34を図1及び9aに示されているニュートラル位置へ弾性的に位置決めする。ローラ62は、ボークリング40、42と一体に形成された複数のタブ64、66(本実施例では3個)の当接表面64a 、66a 間に軸方向に離して設けられている。タブはハブ32のリセス36b 内へ延びて、ハブ及び軸に対するボークリングの回転を制限する。
【0018】
いずれかの歯車を軸に連結したい場合、参考として本説明に含まれる米国特許第4,920,815 号に開示されているような適当な図示しないシフト機構が、部分的に図示されているシフトフォーク68を介してシフトスリーブ34を軸12の軸線に沿って軸方向に、歯車14を連結するためには左に、歯車16を連結するためには右に移動させる。
【0019】
シフト機構は、リンク装置によって運転者が手動で移動させてもよいが、アクチュエータで選択的に移動させたり、シフト機構の移動を自動的に開始させると共にシフト機構によって加えられる力の大きさを制御する手段によって移動させることもできる。
【0020】
シフト機構を手動で移動させる時、プレエナージャイザアセンブリは運転者がシフトスリーブに加える力に比例したプレエナージャイザ力を加える。手動または自動のいずれで加える場合でも、力は軸方向にシフトスリーブに加えられ、図10の力Fo に比例している。シフト力Fo によるシフトスリーブの移動方向に応じて、プレエナージャイザ力が摩擦表面48または50のいずれかをそれに対応した摩擦表面と初期係合する位置へ移動させることによって、後述するようにして自己増力/ブロッカーアセンブリ54を位置決めできるようにするハブ32に対応した位置に対応のボークリングをクロックすることができる。
【0021】
自己増力/ブロッカーアセンブリ54の各々には、ハブ32の外周に形成されてハブ32の回転面に対して傾斜した自己増力すなわちブースト傾斜面70a、70b、70c、70d 及び回転面に直交する方向に延びる非ブースト表面70e 、72f 備えている自己増力手段70と、ブロッカー歯44、46と、ブロッカー及び自己増力の力を反作用させる剛性部材72とが設けられている。部材72には、シフトスリーブ34の円周方向に延びるスロット34a 内にはめ込まれている円周方向に延びる部分78によって互いに固着された端部分74、76が円周方向に離して設けられている。スロット34a は、部材72をその内部でスリーブに対して制限円周方向移動できるが、その内部でスリーブに対して軸方向移動できないようにしている。
【0022】
端部分74には、シフトスリーブ34が軸方向に左または右移動した時にそれぞれ表面70b 、70a に対して反作用する自己増力傾斜面74a 、74b と、シンクロナイザクラッチ機構18が図1及び図7のニュートラル位置にある時に表面70e に対して反作用する非ブースト表面74c と、それぞれブロッカー歯44、46の表面44a 、46a 対して反作用するブロッカー表面74d 、74e とが設けられている。
【0023】
同様に、端部分76には、それぞれ表面70d 、70c に対して反作用する自己増力傾斜面76a 76b と、表面70f に対して反作用する非ブースト表面76c と、それぞれ表面44b 46b に対して反作用するブロッカー表面76d 、76e とが設けられている。
【0024】
円錐クラッチの1つがある程度のトルクを発生する場合、例えば円錐クラッチ摩擦表面間のオイルの粘性剪断によってランプを作動させようとするトルクが発生するような場合に、非ブースト表面70e 、70f 、74c 、76c が係合位置にあることによって、自己増力傾斜面の必要としない作動を防止することができる。
【0025】
次に、図9a〜図9hの自己増力/ブロッカーアセンブリ80を参照しながら説明すると、ここに概略的に示されている実施例は、ブロッカー歯44、46に設けられた軸方向延長部分44c 、46c が、ハブ32に形成された自己増力傾斜面と同様に円周方向に大きく離れた剛性部材端部74、76間にはまっている点で、先行の実施例とは異なっている。延長部分44c 、46c は、端部74、76間に歯44、46を確実に位置決めすることができる。
【0026】
両方の自己増力/ブロッカーアセンブリの作用を図9a〜図9hを参照しながら説明する。以下の説明では、軸12と歯車16との間に図示の表面を係合させる方向の非同期状態が存在すると仮定する。反対方向すなわち歯車14に対する非同期状態は、以下の説明から明らかになる表面係合を生じる。
【0027】
図9aは、シンクロナイザクラッチのすべての構成部材の「ニュートラル位置」を示している。しかし、開始時のシフト延長部分44c 、46c は、円周方向において端部74、76間のいずれの位置にあってもよい。運転者のシフト力Fo によるシフトスリーブ34の初期軸方向右移動がプレエナージャイザローラ62によってタブ当接表面66a を介してボークリング42に伝達されることによって、可動円錐表面50が歯車円錐表面26と初期摩擦係合する。もちろん、円錐表面の初期係合力は、ばね58の力及びデテント溝36d の壁の角度の関数である。
【0028】
図9bは、シフトスリーブ34が歯車16に取り付けられたジョー歯30の方へ軸方向移動するのに応じた剛性部材72のニュートラル位置からの初期移動を示している。図9bの部材は、プレエナージャイザアセンブリが、円錐クラッチ摩擦表面26、50を係合させることができるまで十分にボークリング42を移動させていない「予増力前位置」にあると考えることができる。
【0029】
図9cの部材は、トルクの伝達を開始し、またブロッカー表面74e 、46a を係合させるが、シフトスリーブスロット34a 内で剛性部材72をその円周方向中間位置から移動させるほどではない程度にボークリング42をハブ及びシフトスリーブに対して回転させ始める程度に摩擦表面が係合している「予増力位置」にある。図6を参照されたい。
【0030】
図9dの「ブロッキング/自己増力位置」にある時、トルクが、自己増力表面70b 、74a も係合させる程度にボークリング42及び剛性部材72を回転させている。このため、図9dでは、表面74e 、74a がボークリングのブロッカー表面46a とハブの自己増力傾斜面70b との間に捕らえられる。これらの表面がそのように捕らえられており、自己増力傾斜面の効果を無視する時、シフトスリーブ34から剛性部材72に加えられた運転者の全シフト力Fo がブロッカー表面74e 、46a で伝達されて、摩擦表面26、50を力Fo で係合させることによって、同期トルクTo を発生する。
【0031】
自己増力傾斜面70b 、74a がハブ32の回転面に直交する場合、自己増力の力はまったく発生しないで、トルクTo だけが軸12に反作用するであろう。また、ブロッカー表面74e 、46a が回転面に対して傾斜しているので、それらはジョー歯36a 、30の非同期係合を防止し、シフト力Fo を摩擦表面26、50に伝達するのに加えて、非同期状態では同期トルクに対向するがそれよりも小さい逆トルクすなわち非ブロッキングトルクを発生する。ほぼ同期が達成されると、同期トルクが非ブロッキングトルク以下まで低下することから、ブロッカー歯が離脱するため、シフトスリーブ34が連続的に軸方向移動して、可動ジョー歯36c が歯車ジョー歯30と噛み合うことができる。
【0032】
やはり自己増力傾斜面の効果を無視すると、力Fo によって与えられる円錐クラッチトルクは次式で表される。
【0033】
To =Fo Rc μC /sinα
但し、Rc =円錐摩擦表面の平均半径
μC =円錐摩擦表面の摩擦係数
α =円錐摩擦表面の角度
次に、自己増力傾斜面の作用を説明すると、運転者が加えた軸方向シフト力Fo による同期トルクTo は、もちろん傾斜面で反作用し、これらの表面によって運転者シフト力Fo と同じ方向に作用する、やはりブロッカー表面で伝達される軸方向力成分すなわち軸方向付加力Fa が発生し、それによってさらに摩擦表面の係合力が増大して、トルクTo に追加される付加同期トルクTa が発生する。図10は、クラッチ摩擦表面を係合させる軸方向力の合計Fo +Fa と、クラッチ摩擦表面によって発生した同期トルクの合計To +Ta とを示している。任意の運転者シフト力Fo 及び運転者同期トルクTo に対する軸方向付加力の大きさは、係合した自己増力傾斜面の角度の関数であることが好ましい。この角度は、運転者による適度なシフト作動力に応じて同期トルクを増加させ、同期時間を短縮することができる十分な大きさの付加力Fa を発生できる大きさであることが好ましい。
【0034】
しかし、この角度はまた、制御された軸方向付加力Fa を発生できる程度に小さいことも好ましい、すなわち力Fa は力Fo の増減に応じて増減しなければならない。傾斜面角度が大き過ぎる場合、傾斜面は自己増力ではなく自己固着する。このため、円錐クラッチが初期係合を行うと、力Fa が力Fo に無関係に無制御状態で急激に増大し、そのため円錐クラッチはロックアップ状態へ押し進められる。自己増力ではなく自己固着することによって、シフト特性すなわちシフト感が低下し、シンクロナイザ部品に過度の応力が加わったり、円錐クラッチ表面の過熱や急激な摩耗を発生させたり、さらに運転者のシフトレバー移動を無効化することもある。
【0035】
歯車のアップまたはダウンシフトに対して付加軸方向力が望まれない場合、アップまたはダウンシフト用の傾斜面をスプラインに平行にすることができる。例えば、傾斜面70b 、74a をスプライン38に平行に形成した場合、(その方向のシフトに対して)付加力Fa が生じない。
【0036】
自己増力傾斜面角度θを計算し、運転者の作動力Fo に比例して増減する付加軸方向力Fa を発生するための主要な変数は、円錐クラッチの角度α、円錐クラッチの摩擦係数μC 、円錐クラッチの平均半径比Rc 及び自己増力傾斜面の平均半径比Rr 、傾斜面の摩擦係数μr 、及び自己増力傾斜面の角度である。自己増力すなわちブースト力の計算及び制御についてのさらなる詳細は、参考として本説明に含まれる米国特許第5,092,439 号に記載されている。
【0037】
図9eは、非ブロッキングトルクがブロッカー表面を離脱させた直後に生じる「ブースト/非ブロッキング位置」を示している。この位置で生じる自己増力は、ボークリング42の慣性及び/または円錐クラッチの不完全切り離しによるものであろう。この自己増力現象は、図9fの「歯車へブーストされた位置」の間は継続し、シフトスリーブ34にシフト力Fo の方向に作用する軸方向補助力を発生する。
【0038】
歯36a 及び30のV字形端部が係合した時、非ブロッキング状態になって係合位置へのジョー歯の移動を助けるので、補助力はジョー歯36c がジョー歯30と係合する位置へ向かう軸方向係合移動の再開を助ける。この補助力は、非ブロッキング状態になった時にシフトを終了するために運転者が過大な作動力でシフトレバーを移動させる必要を減じることによっていわゆるシフトノッチネス(shift notchiness)を軽減する、すなわち補助力はシフトを滑らかに比較的小さい作動力で完了させることができるようにする。図9gは「ブースト終了位置」を示し、図9hはジョー歯36c 、30の完全「係合位置」を示している。
【0039】
延長部分44c 、46c は、シンクロナイザ部材が図9aのニュートラル位置にある時、及び図9b〜図9eに示されているようにブロッカー歯44、46のブロッカー表面が剛性部材端部74、76のブロッカー表面と係合している間、剛性部材端部74、76間に捕らえられたままになるように十分に軸方向に長くなっている。しかし、図9f〜図9hからわかるように、図示のシフトに対して非ブロッキング状態になった時、延長部分46c は各剛性部材の端部間に捕らえられなくなる、すなわちその間の円周方向空間と整合した状態に物理的に維持されなくなるため、延長部分46c は端部76と自己増力手段70との間の位置へ任意に移動できる、すなわちその移動が妨害されない。この状態の時、シンクロナイザの部品はニュートラルへ戻ることができず、歯車14へのシフトを行うことができない。
【0040】
図11〜図13は、剛性部材72の端部74、76間における延長部分の円周方向位置決めを保持することによって、剛性部材間の円周方向空間との整合を維持して、シフト変化の開始時にブロッカー表面を確実に係合させることができる3つの変更実施例を概略的に示している。
【0041】
図11では、変更形延長部分が144c、146cで示されており、少なくとも1対の延長部分144c、146cに軸方向の孔144d、146dが設けられて、それにピン90を摺動可能にはめ込むことによって、延長部分を相対円周方向移動できないが、延長部分を相対軸方向移動できるようにしている。図12では変更形延長部分が244c、246cで示されており、少なくとも一方の延長部分244cが、延長部分246cの円周方向に離れた部分内へ摺動可能に延びている。
【0042】
図13a及び13bでは、変更形延長部分がそれぞれ344c、346c及び444c、446cで示されている。図13aでは、少なくとも1対の延長部分344c、346cが軸方向に重合して、一方向への相対円周方向移動を防止している。図13bでは、少なくとも他の1対の延長部分444c、4346c が逆になって、他方向への相対円周方向移動を防止している。
【0043】
自己増力を伴ったシンクロナイザ機構の幾つかの実施例が以上に開示されている。本発明の精神の範囲内において、好適な実施例の様々な変更及び変化が考えられる。開示された機構及び本発明の精神の範囲内であると考えられる変更及び変化の発明部分は、請求項によって定義される。
【0044】
【発明の効果】
本発明のクラッチは、第1ジョー手段の係合移動に応じて第1摩擦表面と第2摩擦表面とが軸方向に移動することによって同期トルクを発生し、また、第1,第2自己増力手段が係合時に作動して同期トルクを反作用させることによってシフト力の方向に付加軸方向力を発生して摩擦表面の係合力を増加させることができるが、さらに、改良した構成として、第2自己増力傾斜面と第1ブロッカー表面を有して、第2ブロッカー表面と第1自己増力傾斜面との間に配置された、複数の剛性部材をシフトスリーブに取り付けたので、軸方向のシフト力及び付加軸方向の両方が、剛性部材を介して伝達されることから、摩擦表面の係合力をさらに増加させることができ、確実なクラッチ動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニュートラル位置にある、軸の軸線回りに回転可能に配置された複動ボークリング形シンクロナイザの断面図である。
【図2】図1の部材の一部分の、軸に対して軸方向に見た部分図である。
【図3】図1の部材の一部分の、軸に対して軸方向に見た部分図である。
【図4】図1のシンクロナイザの構成要素の平面図であり、構成要素は、図1及び図6のシフトスリーブを除いて図1に対して90度回転、図5〜図7に対して60度回転した状態を示す図である。
【図5】図1、図4及び図7に示すボークリングの平面図である。
【図6】図1のシンクロナイザのシフトスリーブの平面図である。
【図7】図4の部品に図8の剛性部材を組み付けたものを図4に対して60度回転させた図である。
【図8】図1及び図7に示す剛性部材の斜視図である。
【図9】図1〜図8のブロッカー及び自己増力部材の変更実施例、及び図1〜図8の実施例にも適用できる部材の幾つかの作動段階 (a)〜(h) を概略的に示している図である。
【図10】シンクロナイザ機構のブロッカー表面に作用する軸方向力及びトルクのグラフ図である。
【図11】図9のシンクロナイザの一部の第1変更例を示している図である。
【図12】図9のシンクロナイザの一部の第2変更例の延長部分を示す図である。
【図13】図9のシンクロナイザの一部の第3変更例の延長部分を示す図である。
【符号の説明】
12 軸
14、16 歯車
18 ボークリング形シンクロナイザ
24,48;26,50 円錐クラッチ摩擦表面
32 ハブ
34 シフトスリーブ
36b,28;36c,30 ジョークラッチ歯
40、42 ボークリング
44、46 ブロッカー歯
44a,44b,46a,46b ブロッカー表面
70a 〜70d 自己増力傾斜面
72 剛性部材
74a,74b,76a,76b 自己増力傾斜面
74d,74e,76d,76e ブロッカー表面
Claims (20)
- 共通軸線(12a) 回りに相対回転可能に配置された第1,第2駆動部(12、16) を摩擦的に同期させて噛み合い連結させるクラッチ(18)であって、
前記駆動部を噛み合い連結するために、第1ジョー手段(36c) が、軸方向のシフト力(Fo )によって係合移動するのに応じて、ニュートラル位置から第2ジョー手段(30)との係合位置へ軸方向に移動可能であり、前記第1ジョー手段(36c) の中央開口に形成された内側スプライン(36)の軸方向に延びるフランク表面(36a) が、外側スプライン(38)の軸方向に延びるフランク表面(38a) と連続して摺動可能にかみ合うことによって、内側及び外側スプライン間の相対回転が防止され、また外側スプライン(38)は第1駆動部(12)に対して回転及び軸方向移動ができないように取付けられており、
第1ジョー手段(36c) の係合移動に応じて、同期トルク(To )を発生するために、第1摩擦表面(50)が第2摩擦表面(26)と係合する位置へ軸方向に移動可能であり、
第1ジョー手段(36c) の係合移動に応じて、傾斜した第1,第2ブロッカー表面(74e、46a)が移動して係合することによって、ジョー手段(36c,30)の非同期係合を防止し、シフト力(Fo )を第1摩擦表面(50)に伝達して摩擦表面(50、26) の係合力を発生し、また同期が達成された時に第1,第2ブロッカー手段(74 、46) を離脱させるために同期トルクとは反対のトルクを発生させ、
第1,第2自己増力手段(70、74) が係合時に作動して同期トルクを反作用させることによって、シフト力(Fo )の方向に付加軸方向力(Fa )を発生して、摩擦表面(50、26) の係合力を増加させ、第1,第2自己増力手段(70、74) には、付加軸方向力(Fa )を前記ブロッカー表面(74e、46a )を介して第1摩擦表面(50)へ向ける手段が設けられており、前記クラッチが、
外周に外側スプライン(38)を形成しているハブ(32)と、
第1摩擦表面(50)と複数の第2ブロッカー表面(46a) とを有し、前記ハブ(32)から離れて第2摩擦表面(26)の方へ軸方向に移動可能な第1ボークリング(42)と、
シフトスリーブ(34)に形成される、第1ジョー手段(36c) の中央開口及び内側スプライン(36)とを備えており、
前記第1自己増力手段(70)が、ハブ(32)の外周に形成された複数の第1自己増力傾斜面(70b) を備え、
さらに、制限回転可能で、かつ軸方向に移動できないようにシフトスリーブに取付けられた複数の剛性部材(72)を備えて、この剛性部材(72)の各々が、第2自己増力手段(74)の傾斜した第2自己増力傾斜面(74a) を形成する一側部(74a) と、第1ブロッカー表面(74e) を形成する別の一側部(74e) を有し、各剛性部材(72)が1つの第2ブロッカー表面(46a) と1つの第1自己増力傾斜面(70b) との間に配置されて、軸方向のシフト力(Fo )及び付加軸方向力(Fa )の両方が、前記剛性部材(72)に介して伝達されることを特徴とするクラッチ。 - ハブ(32)及び少なくとも1つの剛性部材(72)の各々は、それぞれ、ハブの回転面に直交する方向に延び、かつシフトスリーブ(34)がニュートラル位置にある時に係合する、非ブースト表面(70e、74c)を有していることを特徴とする請求項1のクラッチ。
- 第1,第2ブロッカー表面(74e、46a)が離脱した後も自己増力傾斜面(70b、74a)が係合状態にあることによって、第1ジョー手段(36c) を第2ジョー手段(30)と係合する位置へ移動させる補助力を発生することを特徴とする請求項1のクラッチ。
- ハブ(32)及び少なくとも1つの剛性部材(72)の各々は、それぞれ、ハブの回転面に直交する方向に延び、かつシフトスリーブ(34)がニュートラル位置にある時に係合する、非ブースト表面(70e、74c)を有していることを特徴とする請求項3のクラッチ。
- さらに、第1,第2駆動部(12、16) に対して共通軸線(12a) 回りに回転可能に配置され、かつ第2駆動部(16)から軸方向に離間した第3駆動部(14)と、
第1シフト力(Fo )とは逆向きの軸方向の第2シフト力(Fo )によってシフトスリーブ(34)が係合移動するのに応じて、第1及び第3駆動部(12、14) を噛み合い連結するために、第4ジョー手段(28)とともにニュートラル位置から噛み合い位置に軸方向に移動する第3ジョー手段(36b) を形成するシフトスリーブ(34)の内側スプライン(36)と、
第3摩擦表面(48)と複数の第4ブロッカー表面(44a) とを備え、ハブ(32)から離れて第4摩擦表面(24)の方へ軸方向に移動可能な第2ボークリング(40)とを有しており、
第1自己増力手段(70)は、ハブ(32)の外周に形成された複数の第3自己増力傾斜面(70a) を有し、
各剛性部材(72)は、第2自己増力手段(74)の傾斜した第4自己増力傾斜面(74a) を形成する一側部(74b) と、第3ブロッカー表面(74d) を形成する別の一側部(74d) を有し、各剛性部材(72)は、1つの第4ブロッカー表面(44a) と1つの第3自己増力傾斜面(70a) との間に配置されて、軸方向のシフト力(Fo )及び付加軸方向力(Fa )の両方が、剛性部材(72)を介して第2ボークリング(40)に伝達されるようにしたことを特徴とする請求項1のクラッチ。 - 各剛性部材の第1端部(74)が、第2及び第4自己増力傾斜面(74a、74b)と第1及び第3ブロッカー表面(74e、74d)を形成し、前記剛性部材の第1端部(74)の表面は、第1,第2自己増力傾斜面(70b、70a )と第2及び第4ブロッカー表面(44a、46a )とに対して反作用して、第1駆動部が最初に第2及び第3駆動部より高速で回転している時、第2及び第3駆動部を第1駆動部に同期させることを特徴とする請求項5のクラッチ。
- 各剛性部材は、第1端部(74)から円周方向に離間し、かつシフトスリーブ(34)に対して制限相対回転可能で、かつ軸方向移動ができないようにシフトスリーブ(34)内のスロット(34a) 内に摺動可能にはめ込まれている円周方向に延びた部分(78)によって固着された第2端部(76)を有し、この第2端部は、それぞれハブに形成されたさらなる自己増力傾斜面(70d、70c)と第1,第2ボークリング(42、40) に形成されたブロッカー表面(46b、44b)とに対して反作用する自己増力傾斜面(76a、76b)とブロッカー表面(76e、76d)とを有し、第1駆動部が最初に第2及び第3駆動部より低速で回転している時、第2端部に形成された表面及びさらなる表面(70d、70c)が、第2及び第3駆動部を第1駆動部に同期させることを特徴とする請求項6のクラッチ。
- 少なくとも1つの剛性部材(72)の第1,第2端部(74、76) は、それぞれハブ(32)の回転面に直交する方向に延びる非ブースト表面(74c、76c)を有し、前記ハブには、回転面に直交する方向に延び、かつシフトスリーブ(34)がニュートラル位置にある時に剛性部材の非ブースト表面と係合する非ブースト表面(70e、70f)が設けられていることを特徴とする請求項7のクラッチ。
- 自己増力傾斜面は、対応のブロッカー表面が離脱した後も係合状態にあることによって、シフトスリーブの対応のジョー手段を、第2及び第3駆動部の対応のジョー手段と係合する位置へ移動させる補助力を発生することを特徴とする請求項7のクラッチ。
- 少なくとも1つの剛性部材(72)の第1,第2端部(74、76) は、それぞれハブ(32)の回転面に直交する方向に延びる非ブースト表面(74c、76c)を有し、前記ハブには、回転面に直交する方向に延び、かつシフトスリーブ(34)がニュートラル位置にある時に剛性部材の非ブースト表面と係合する非ブースト表面(70e、70f)が設けられていることを特徴とする請求項9のクラッチ。
- 第1,第2ボークリングブロッカー表面(44a,44b;46a,46b) を各剛性部材(72)の端部(74、76) 間の円周方向空間に整合した状態に維持するための手段(90)を有していることを特徴とする請求項7のクラッチ。
- 中央手段(12)を、中央手段(12)の軸線(12a) 回りに相対回転可能に配置され、かつこれに対して軸方向に固定された、軸方向に離間した第1,第2駆動部(14、16) のいずれかと選択的に同期させて噛み合い連結させるクラッチ(18)であって、
駆動部(14、16) の間において軸線(12a) と同軸の中央手段(12)に取付けられ、外周に外側スプライン(38)を設けているハブ(32)と、
各駆動部(14、16) に取付けられたジョー歯(28、30) と、
各駆動部(14、16) に取付けられた摩擦表面(24、26) と、
ハブの外側スプライン(38)と噛み合う内側スプライン(36)と、スリーブ(34)が運転者のシフト力Fo によってニュートラル位置から前後軸方向へ係合移動するのに応じて駆動部(14、16) のいずれか一方のジョー歯(28、30) と噛み合うジョー歯(36b、36c)とを有しているシフトスリーブ(34)と、
各駆動部に対応して、各々が、ハブ(32)と対応の駆動部(14、16) との間に配置され、かつ同期トルクを発生するために対応の駆動部(14、16) の摩擦表面(24、26) と係合可能な複数対のブロッカー表面(44a,44b;46a,46b) 及び摩擦表面(48、50) を有しているボークリング(40、42) と、
スリーブ(34)に軸方向に取付けられて、それぞれスリーブの前後移動に応じていずれかのボークリング(40、42) のブロッカー表面(44a,44b;46a,46b) と係合することによって、係合可能なジョー歯(36b、36c)の非同期係合を防止し、運転者シフト力(Fo )を係合したブロッカー表面を介して伝達して対応の摩擦表面を係合させ、また同期トルクとは反対のトルクを発生するようにしたブロッカー表面(74d,74e;76d,76e) と、
係合時に作動して同期トルクを反作用させることによって、係合したブロッカー表面間でシフト力(Fo )の方向に付加軸方向力(Fa )を発生して、係合した摩擦表面の係合力を増加させる自己増力手段(70、74) とを有しており、
この自己増力手段(70、74) は、ハブの外周に円周方向に離間した複数のリセスと、この各リセス内に配置された剛性部材(72)とを有し、各リセスは、円周方向長さを定める、円周方向に離間した端部(70e、70f)を有し、該端部の少なくとも一方には、それぞれ軸方向において第1,第2駆動部(14、16) の方向に角度を付けて面している第1,第2自己増力傾斜面(70a、70b)が設けられ、各剛性部材(72)は、スリーブ(34)に対して制限回転可能で、かつ軸方向移動ができないようにスリーブ(34)のスロット(34a) 内に摺動可能にはめ込まれている円周方向に延びる部分(78)によって固着された、円周方向に離間した第1,第2端部(74、76) を有しており、各第1端部(74)には、それぞれ第1,第2傾斜面(70a、70b)と係合可能な第3及び第4自己増力傾斜面(74b、74a )が設けられ、各端部(74、76) には、シフトスリーブ(34)に軸方向に固着されたブロッカー表面(74d,74e;76d,76e) が設けられて、同期中は各第1端部(74)が,リセスの1つの自己増力傾斜面(70a、70b)とボークリングの1つのブロッカー表面(44a、46a )の1つとの間に配置されて、軸方向のシフト力及び付加軸方向力の両方が剛性部材(72)を介して伝達されるようにしたことを特徴とするクラッチ。 - 各対のブロッカー表面(44a,44b;46a,46b) を各剛性部材(72)の端部(74、76) 間の円周方向空間に整合した状態に維持するための手段(90)が設けられていることを特徴とする請求項12のクラッチ。
- 各ボークリング(40、42) は、ブロッカー歯(44、46) を有し、このブロッカー歯は、それぞれ対のブロッカー表面(44a,44b;46a,46b) を形成し、かつスリーブ(34)がニュートラル位置にある間、軸方向において各剛性部材(72)の円周方向に離間した端部(74、76) 間に延在していることを特徴とする請求項13のクラッチ。
- 少なくとも1つの剛性部材(72)の円周方向に離間した端部(74、76) 間に軸方向に延びる各ボークリング(40、42) のブロッカー歯(44、46) は、前記整合を維持するために軸方向に重なり合う延長部分(244c 、246c) を有していることを特徴とする請求項14のクラッチ。
- 共通軸線(12a) 回りに相対回転可能に配置された第1,第2駆動部(12、16) を摩擦的に同期させて噛み合い連結させるクラッチ(18)であって、
軸方向の第1シフト力(Fo )によって第1ジョー手段(36c) が係合移動するのに応じて、駆動部を噛み合い連結するために、ニュートラル位置から第2ジョー手段(30)との係合位置へ軸方向に移動可能な第1ジョー手段(36c) と、
第1ジョー手段(36c) の係合移動に応じて、同期トルク(To )を発生するために、第2摩擦表面(26)と係合する位置へ軸方向に移動可能な第1摩擦表面(50)と、
第1ジョー手段(36c) をハブに対して軸方向移動できるが、第1ジョー手段(36c) をハブに対して回転移動できないように、第1ジョー手段(36c) との連結手段を備えるハブ(32)と、
第1摩擦表面(50)と複数の第1ブロッカー表面(46a) とを有し、ハブ(32)から離れて第2摩擦表面(26)の方へ軸方向に移動可能な第1ボークリング(42)と、を備えているクラッチにおいて、
前記ハブ(32)は、複数の第1傾斜ハブ表面(70b) が設けられており、
複数のブロッカー部材(72)が、第1ジョー手段(36c) に固定して軸方向移動可能に、かつ第1ジョー手段(36c) 及びハブ(32)に対して制限回転可能に取付けられて、傾斜ハブ表面(70b) 及びボークリング(42)のブロッカー表面(46a) と接触するように位置決めされることによって、ボークリング(42)のブロッカー表面(46a) を介して伝達された摩擦表面(50)のトルクに対する反作用によって前記シフト力(Fo )の方向に付加軸方向力(Fa )を発生し、それによって摩擦表面(50)に加えられる軸方向力を増加させ、また前記シフト力(Fo )だけから得られる場合よりも大きい同期トルクを発生するようにしたことを特徴とするクラッチ。 - ハブ(32)及び少なくとも1つのブロッカー部材(74)は、それぞれ、ハブの回転面に直交する方向に延び、かつ第1ジョー手段(36c) がニュートラル位置にある時に係合する、非ブースト表面(70e、74c)を有していることを特徴とする請求項16のクラッチ。
- 傾斜ハブ表面(70b) は、第1ジョー手段(36c) を第2ジョー手段(30)と係合する位置へ移動させる補助力を発生するために、ブロッカー表面(46a) がブロッカー部材(74)から離脱した後もこのブロッカー部材(74)と接触状態にあることを特徴とする請求項16のクラッチ。
- ハブ(32)及び少なくとも1つのブロッカー部材(74)は、それぞれ、ハブの回転面に直交する方向に延び、かつ第1ジョー手段(36c) がニュートラル位置にある時に係合する、非ブースト表面(70e、74c)を有していることを特徴とする請求項18のクラッチ。
- さらに、第2駆動部材(16)から軸方向に離間し、第1,第2駆動部材(12、16) に対して共通軸線(12a) 回りを回転するように配置された第3駆動部材(14)と、
第1シフト力(Fo )とは反対の軸方向の第2シフト力(Fo )による第3ジョー手段(36b) の係合移動に応じて、第1及び第3駆動部(12、14) を噛み合い連結するためにニュートラル位置から第4ジョー手段(28)との係合位置へ軸方向移動可能な第3ジョー手段(36b) と、
この第3ジョー手段(36b) の係合移動に応じて、同期トルク(To )を発生するために、第4摩擦表面(24)との係合位置へ軸方向移動可能な第3摩擦表面(48)と、
第3摩擦表面(48)及び複数の第2ブロッカー表面(44a) を有し、ハブ(32)から離れて第4摩擦表面(24)に向かって軸方向に移動可能な第2ボークリング(40)と、を有しており、さらに、
ハブ(32)が、複数の第2傾斜ハブ表面(70a) を有し、
前記第2ボークリングのブロッカー表面(44a) を介して伝達された摩擦表面(48)のトルクに対する反作用によって第2シフト力の方向に付加軸方向力(Fa )を発生するために、ブロッカー部材(74)が、第2傾斜ハブ表面(70a) 及び第2ボークリングのブロッカー表面(44a) と接触するように配置されており、これによって第3摩擦表面(48)に加えられる軸方向力を増加させ、また第2シフト力(Fo )だけから得られる場合よりも大きい同期トルクを発生させるようにしたことを特徴とする請求項16のクラッチ。
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