JPH094653A - 自己増力式同期クラッチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 改良した自己増力式のボークリング形同期ク
ラッチを提供する。 【解決手段】 クラッチ機構18は、ギヤ14，16を軸12に
摩擦的に同期させて噛み合い連結させるために、同期ト
ルクを発生させる円錐クラッチ摩擦面24，26；26，50
と、ジョークラッチ歯組28，30とを備えており、ボーク
リング40，42のブロッカ歯44，46がシフトスリーブ34の
ジョークラッチ歯の非同期係合を防止するとともに、運
転者によるシフト力Ｆ₀ を摩擦表面24，26；26，50に伝
達する。傾斜した自己増力表面がハブ32の外周部32d に
設けられており、シフトスリーブ34の内周部34c に設け
られた自己増力表面と係合して、同期トルクの反作用に
よって付加軸方向力Ｆ_a を発生させ、シフト力Ｆ₀ に加
えることにより、摩擦面24，26；26，50の係合力を増大
させて運転者にによるシフト操作力を軽減するとともに
同期時間を短縮する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自己増力式のボー
クリング形同期装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】多段ギヤ比変速機に使用されるボークリ
ング式の同期装置機構は、公知である。このような機構
は、ギヤを軸に同期させ、かつ、噛み合い連結させるた
めのそれぞれ対になった摩擦部材及びジョー部材と、シ
フトスリーブの初期の係合移動に応じて摩擦部材を係合
させる初期付勢機構(pre-energizer) アセンブリと、対
になったジョー部材の一つを形成する場合が多いシフト
スリーブの内部スプライン歯を摺動可能に収容する外側
スプライン歯を有し、軸に共転可能に取付けられたハブ
と、同期が達成されるまでシフトスリーブの係合移動を
拘束し、また、スリーブからのシフト力を伝達して摩擦
部材の係合力を増加させるブロッカ歯とを有するボーク
リングとを備えている。

【０００３】多段ギヤ比変速機の技術においては、同期
装置機構を用いることによって、変速ギヤ比の全てまた
は一部のシフト時間を短縮することは公知である。ま
た、自己増力式の同期装置機構を用いることによって、
車両運転者に対して要求されるシフト操作力、すなわ
ち、シフトレバーに加えられる力を軽減させることがで
きることも公知である。運転者のシフト操作力は、一般
に、車両の寸法と重量が増加すると増大するので、自己
増力式の同期装置機構は、トラック、特に重量形トラッ
クにとっては重要である。自己増力式のボークリング形
同期装置は、米国特許第3,548,983 号に記載されてお
り、その開示内容は参考として本説明に含まれる。自己
増力式のピン形同期装置も米国特許第5,092,439 号に記
載されており、その開示内容も参考として本説明に含ま
れる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、改良
した自己増力式のボークリング形同期装置を提供するこ
とである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の特徴によれば、
クラッチ機構は、共通軸線の回りを相対回転するように
配置された第１駆動部材と第２駆動部材とを摩擦的に同
期させ噛み合い連結させる。クラッチ機構は、円周上に
互いに距離をおいて配置された複数の第１駆動歯および
第１駆動摩擦面を含み第１駆動部材に取り付けられた第
１駆動手段を備えている。第２駆動部材に取り付けられ
たハブは、外周部及び軸方向両側の第１端部および第２
端部を含んでいる。ハブの外周部は、円周上に互いに距
離をおいて配置された外側スプラインの側表面によって
形成された複数の第１溝を含んでいる。

【０００６】ボークリングは、軸方向においてハブと第
１駆動手段との間に配置され、その間を軸方向に移動可
能となっている。このボークリングは、円周上に互いに
距離をおいて配置された複数のブロッカ歯を含み、ブロ
ッカ歯は、軸方向においてハブに面している端部に第１
傾斜ブロッカ表面を有している。ボークリングは、さら
に、第１駆動摩擦面と係合して同期トルクを発生させる
第２摩擦面と、ハブに対するボークリングの回転を制限
するための当接手段とを含んでいる。

【０００７】また、シフトスリーブは、内周部と、それ
ぞれハブの第１、第２端部と同一軸方向に面した第１、
第２端部とを備えている。内周部は、円周方向に距離を
置いて配置された複数の第１歯を備えており、この第１
歯は、スリーブに加えられる軸方向のシフト力（＋Ｆ
₀ ）に応じて、第１溝に配置されるニュートラル位置か
ら第１駆動歯と係合する位置へ軸方向移動可能になって
いる。そして、この第１歯は、ボークリングの軸方向に
面してスリーブの第１端部側に傾斜ブロッカ表面を備え
た端部を有している。

【０００８】初期付勢手段は、シフトスリーブがニュー
トラル位置から初期軸方向移動するのに応じて作動し
て、ボークリングの第２摩擦面を第１駆動摩擦面と係合
する位置へ移動させることによって、ボークリングの傾
斜ブロッカ表面をスリーブの第１傾斜ブロッカ表面と係
合する位置へ回転させて、第１駆動歯とスリーブの第１
歯との非同期係合を阻止し、係合したブロッカ表面によ
ってシフト力を伝達して第１駆動摩擦面に対するボーク
リングの第２摩擦面の係合力を増加させ、また、同期が
達成された時に、ボークリングとスリーブの第１歯の傾
斜ブロッカ表面とを離脱させるために同期トルクとは反
対のトルクを傾斜ブロッカ表面で発生する。

【０００９】自己増力手段は、スリーブ及びハブに取り
付けられて、ブロッカ表面の係合及びスリーブとハブと
の相対回転に応じて係合位置へ移動可能である傾斜した
自己増力表面を含んでいる。傾斜した自己増力表面は、
軸線に直交する平面に対して傾斜して設けられており、
係合時に作動して同期トルクを反作用させることによっ
て、ブロッカ表面によってシフト力（＋Ｆ₀ ）の方向に
伝達される付加軸方向力（＋Ｆ_a ）を発生して、摩擦面
の係合力をさらに増加させることができる。

【００１０】クラッチ機構は、シフトスリーブの第１歯
が、スリーブの第１端部から第２端部に向かって軸方向
に延びる長さ部分を有していることを特徴としている。
スリーブ内周部には、スリーブの第２端部から第１端部
に向かって軸方向に延びる複数の第２歯が円周方向に間
隔をもって配置されている。第１、第２歯の隣接する対
の合計長さは、スリーブの軸方向長さ以下である。ハブ
には、スプラインの側表面によって形成された複数の第
２溝が第１溝間に互い違いに配置されて、スリーブの第
２歯を摺動可能に収容している。ブロッカ表面がニュー
トラル位置及び係合位置にある間、第１、第２溝の軸方
向に延びる部分の側表面内にスリーブの第１、第２歯の
少なくとも一部分が配置されている。軸方向に延びる部
分の側表面と内部の歯との間に円周方向の空隙があっ
て、自己増力表面を係合させるためにスリーブとハブと
を相対回転させることができるようになっており、ま
た、第１駆動歯とスリーブの第１歯とが係合している
時、第２溝の別の軸方向に延びる部分の側表面がスリー
ブの第２歯を密接状態に受け入れることによって、スリ
ーブとハブとの間の相対回転を阻止できるようにしてい
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の実施形態を図面に基づい
て説明する。ここで使用する「同期クラッチ機構」とい
う用語は、噛み合いクラッチに関連した同期摩擦クラッ
チによって、噛み合いクラッチの部材がほぼ同期回転す
るまで、そのクラッチ連結の試行を阻止するようにした
選択ギヤ比に対応するギヤを軸に共転するように連結す
るために用いられるクラッチ機構を示している。また、
「自己増力」という用語は、同期クラッチの係合力を摩
擦クラッチの同期トルクに比例して増大させるために傾
斜面またはカム等を含む同期クラッチ機構を示してい
る。

【００１２】次に、主に図１〜図８を参照しながら、多
段ギヤ比変速機の一部を形成しているギヤ及び同期装置
アセンブリ10について説明する。アセンブリ10は、中心
軸線12a 回りに回転可能に取付けられた部分的に図示さ
れた軸12と、この軸12に回転可能に支持され、軸方向に
間隔をもって配置され、かつ、公知の方法で軸12に対し
て軸方向移動できないように取付けられたギヤ14、16
と、複動同期クラッチ機構18とを備えている。

【００１３】同期クラッチ機構18は、公知の方法でギヤ
14、16に軸方向及び回転方向に固定された環状部材20、
22と、本実施形態では環状部材20、22と一体になったギ
ヤ摩擦面24、26と、本実施形態では環状部材20、22と一
体になったギヤジョー歯28、30と、中央開口32a で軸12
に軸方向及び回転方向に固定されて、軸方向両側の端部
32b、32c 及び外周部32d を備えているハブ32と、軸方向
両側の端部34a,34b で長さが定められているシフトスリ
ーブ34と、スリーブ34の中央開口すなわち内周部34c に
形成された内側スプライン歯組36と、ハブ32の外周部32
d に形成された外側スプライン歯組38、39（図２参照）
と、ボークリング40、42と、本実施形態ではボークリン
グ40、42と一体になっているブロッカ歯44、46及び摩擦
面48、50と、初期付勢アセンブリ52と、図３〜図８にわ
かりやすく示されている自己増力アセンブリ54とを備え
ている。

【００１４】本実施形態では、同期装置には、円周方向
に間隔をもって配置された３つの初期付勢アセンブリ
と、円周方向において初期付勢アセンブリ間に配置され
た３つの自己増力アセンブリとが設けられている。各ブ
ロッカ歯44、46には、それぞれ傾斜ブロッカ表面44a 、
44b 及び46a 、46b （図４(A) 参照）が設けられてい
る。

【００１５】内側スプライン歯組36は、シフトスリーブ
34の軸方向長さに渡って延びる３つの歯56と、円周方向
において３つの歯56のそれぞれの間に８個の歯を配置し
てなる３つの第１組58と、同様に、歯56のそれぞれの間
に８個の歯を配置してなる３つの第２組60とを有してい
る。各組の歯数は、増減させることもできる。図３〜図
８の各々は、２つの歯56と、その間に配置された第１、
第２組58、60のそれぞれの８個の歯を示している。各歯
56には、両端部のジョー歯部分56a 、56b と、初期付勢
アセンブリ52用のデテント溝56c （図１参照）とが設け
られている。第１、第２組の歯58、60には、４つの中間
長さの歯58a 、60a と、２つの短い歯58b 、60b と、２
つの長い歯58c 、60c とが含まれている（図６参照）。
第１、第２組の歯58、60およびジョー歯部分56a 、56b
の各々には、公知のようにブロッカ歯44、46のブロッカ
表面と協働する傾斜ブロッカ表面58d 、58e 及び60d 、
60e が設けられている（図７および図８参照）。なお、
歯58、60は、全て中間長さにしてもよい。また、第１、
第２歯58，60の軸方向長さは、ぞれぞれシフトスリーブ
34の軸方向長さの半分よりも短くなっている。

【００１６】本実施形態では、長い歯は、図８からわか
るように、歯58及び60を歯28及び30から確実に切り離す
ためのものである。ここで、長い歯は、ジョー歯28と係
合している間、ブロッカ歯44と係合したままになってい
るので、ブロッカ歯の傾斜ブロッカ表面の裏側によって
干渉されることなく、スリーブ34の切り離し移動を確実
に行うことができる。ブロッカ歯の裏側に傾斜面を設け
る等の他の方法を用いて確実に切り離しが行われるよう
にすることもできる。歯56a 、56b 、58、60及び28、30
の側表面には、誤って歯が切り離されることを防止する
ためのアンチバックアウト機構、すなわちロッキング角
度が設けられている。この機構の詳細は、参考として本
説明に含まれる米国特許第4,727,968 号に記載されてい
る。

【００１７】外側スプライン組38、39は、それぞれ歯5
8、60の第１、第２組を収容する第１、第２組の溝62、6
4を交互に間隔を置いて配置している（図８参照）。各
第１、第２溝62、64の軸方向に延びる部分のスプライン
側表面38a 、39a 及び38c 、39c は、歯58、60との間に
円周方向の隙間を備えており、以下に説明するように自
己増力アセンブリ54の係合を行うためにスリーブ及びハ
ブ間で制限された相対回転ができるようにしている。本
実施形態では、第１、第２溝62，64の円周方向幅は、そ
れぞれ歯58，60の円周方向幅の約1.5 倍になっている。
各第２溝64及び第１溝62の他端部側の軸方向に延びる部
分の側表面38b 、39b 及び38d 、39d は、歯60、58との
間の円周方向の隙間が狭くなっており、１組の歯がギヤ
の１つに取り付けられた対応のジョー歯と係合した時に
スリーブとハブとが相対回転できないようにしている。

【００１８】各初期付勢アセンブリ52は、公知であり、
ハブ32内の半径方向に延びる盲孔内に配置された圧縮コ
イルばね66及びプランジャ68が、ローラ70またはボール
（本実施形態ではローラ70）をシフトスリーブのスプラ
イン36内の環状デテント溝56c 内へ付勢している。初期
付勢アセンブリ52は、シフトスリーブ34を図１及び図３
に示されているニュートラル位置へ弾性的に位置決めす
る。ハブに対するボークリングの相対回転を制限するた
め、ローラ70は、ボークリング40、42から公知のように
円周方向の自由遊びをもってハブ32の当接凹所32e （図
２参照）内へ延びているタブ40b 、42b によって形成さ
れた当接表面40a 、42a 間に軸方向に離して設けられて
いる。

【００１９】自己増力アセンブリ54の各々には、ハブの
外周表面32d から半径方向外向きに延びて、円周方向に
おいて一方向を向いて軸の軸線12a に直交する平面に対
して斜めのＶ字形すなわち傾斜した自己増力表面72a 、
72b を備えている第１突起72と、ハブの外周表面32d か
ら半径方向外向きに延びて、前記平面に対して斜めで、
表面72a 、72b と円周方向に向き合って、軸線に対して
半径方向に見たときにくびれた形状の凹所をその間に形
成しているＶ字形すなわち傾斜した自己増力表面74a 、
74b を備えている第２突起74と、スリーブの内周表面34
c から半径方向内向きにくびれた形状の凹所内へ延びて
いる突起76とが設けられている（図２ないし図４参
照）。

【００２０】突起76には、それぞれ表面72a 、72b 、74
a 、72b に平行に配置された傾斜した自己増力表面76a
、76b 、76c 、76d が設けられている（図６参照）。
平行に配置された自己増力表面は、係合時に付加軸方向
力（Ｆ_a ）を発生して、同期時間を短縮及び／または運
転者のシフト操作力を軽減することができる。各突起76
は、また、前記平面に直交する方向の非自己増力表面76
e 、76f を備えており（図７参照）、これらは、シフト
スリーブがニュートラル位置にある時、それに平行な非
自己増力表面72c 、74c と係合するようになっている。
非自己増力表面は、ニュートラル状態において円錐クラ
ッチの１つがある程度のトルクを発生する場合、すなわ
ち円錐クラッチ摩擦面間のオイルの粘性剪断によって傾
斜面を作動させるトルクが発生するような場合に、自己
増力表面の不要の作動を防止する。

【００２１】いずれかのギヤを軸に連結したい場合、参
考として本説明に含まれる米国特許第4,920,815 号に開
示されているような適当な図示しないシフト機構が、部
分的に図示されているシフトフォーク78を介してシフト
スリーブ34を軸12の軸線に沿って軸方向に、ギヤ14を連
結するためには左に、ギヤ16を連結するためには右に移
動させる。ここで、左右方向をそれぞれ正負方向とす
る。

【００２２】シフト機構は、リンク装置によって運転者
が手動で移動させてもよいが、アクチュエータで選択的
に移動させたり、シフト機構の移動を自動的に開始させ
ると共にシフト機構によって加えられる力の大きさを制
御する手段によって移動させることもできる。シフト機
構を手動で移動させる時、初期付勢アセンブリは運転者
がシフトスリーブに加える力に比例した初期付勢力を加
える。手動または自動のいずれで加える場合でも、力は
軸方向にシフトスリーブに加えられ、図９の矢印Ｆ₀ に
比例している。シフト力Ｆ₀ によるシフトスリーブの移
動方向に応じて、初期付勢力が摩擦面48または50のいず
れかをそれに対応した摩擦面と初期係合する位置へ移動
させることによって、後述するようにしてブロッカ表面
及び自己増力表面を位置決めできるように対応のボーク
リングをハブ32に対応した位置に変位させることができ
る。

【００２３】運転者のシフト力（＋Ｆ₀ ）によるシフト
スリーブ34の初期軸方向左移動（正方向）が、初期付勢
ローラ70によって、ボークリング40に、タブ当接表面40
a を介して伝達されることによって、可動円錐摩擦面48
がギヤ円錐摩擦24と初期摩擦係合する。もちろん、円錐
摩擦面の初期係合力は、ばね66の力及びデテント溝56c
の壁面の角度の関数である。初期摩擦係合（非同期状態
が存在するとして、また自己増力表面の効果を一時的に
無視する）によって、初期円錐クラッチ係合力及び同期
トルクＴ₀ が発生し、この同期トルクＴ₀ によってシフ
トスリーブ34とボークリング40との間で制限された相対
回転を行い、これによってブロッカ歯の適正傾斜のブロ
ッカ表面がスプライン歯58の適正傾斜のブロッカ表面と
係合する位置へブロッカ歯44を移動させることができ
る。

【００２４】図４(A) 及び図５に示されているように、
ブロッカ表面が係合した時、シフトスリーブ34に加えら
れている運転者の全シフト力（＋Ｆ₀ ）が傾斜ブロッカ
表面44b 、58d を介して摩擦面24、48に伝達されるた
め、円錐クラッチが運転者のシフト力（＋Ｆ₀ ）の全力
で係合して、運転者による同期トルクＴ₀ を発生する。
この運転者による同期トルクＴ₀ は、図９に矢印Ｔ₀ で
表されている。ブロッカ表面は、運転者によるシフト力
（＋Ｆ₀ ）の軸方向に対して角度を付けて配置されてい
るので、それらは、非同期状態では円錐クラッチから生
じる同期トルクに対抗するがそれよりも小さい対抗力す
なわち非ブロッキングトルクを発生する。ほぼ同期が達
成されると、同期トルクが非ブロッキングトルク以下ま
で低下することにより、ブロッカ歯が離脱するため、シ
フトスリーブが継続的に軸方向移動して、可動ジョー歯
58がギヤジョー歯28と噛み合うことができる。

【００２５】タブ40b 、42b は通常は、傾斜ブロッカ表
面44a 、44b 及び46a 、46b がそれぞれの対応の傾斜ブ
ロッカ表面58d 、58e 及び60d 、60e と初期完全接触す
るまで十分に回転できるようにする十分な自由遊びを備
えている。表面44b 、58d のそのような初期完全接触状
態が図４(A) に示されている。そのようにブロッカ表面
が初期完全接触した状態で同期クラッチ機構18をテスト
したとき、早期ブロッキング不良が時々発生した。早期
ブロッキング不良は、ブロッカ表面が図４(B)に示され
ているように初期接触するように自由遊びの量を増加さ
せることによって防止された。本実施形態では、これは
図２に示されているようにタブの円周方向幅を小さくす
ることによって行われ、図２では、破線42b が元の円周
方向幅を示し、実線 42b′が小さくした円周方向幅を示
している。

【００２６】上記と同様に、傾斜した自己増力表面の効
果を無視すると、力Ｆ₀ によって与えられる円錐クラッ
チトルクは、次式で表される。 Ｔ₀ ＝Ｆ₀ Ｒ_C μ_C ／ｓｉｎα 但し、Ｒ_C ＝円錐摩擦面の平均半径 μ_C ＝円錐摩擦面の摩擦係数 α ＝円錐摩擦面の角度

【００２７】次に、特に図３〜図８を参照しながら自己
増力表面の作用を説明すると、運転者が加えた軸方向シ
フト力（＋Ｆ₀ ）による同期トルクＴ₀ は、もちろん傾
斜ブロッカ表面によってシフトスリーブ34に伝達され、
自己増力表面によって軸12に反作用する。この自己増力
表面の傾斜面は、係合時に軸12に対するシフトスリーブ
の回転を制限して、シフト力Ｆ₀ と同じ方向でシフトス
リーブに作用する軸方向力成分すなわち軸方向付加力Ｆ
_a を発生し、それによってさらに円錐クラッチの係合力
を増大させて、トルクＴ₀ に追加される付加同期トルク
Ｔ_a を発生する。

【００２８】図３は、同期装置の全ての構成部材のニュ
ートラル位置を示している。しかし、初期のシフトブロ
ッカ歯44、46は、円周方向においてボークリングのタブ
40b、42b 及びハブの凹所32e によって許容される範囲
内のいずれの位置にあってもよい。前述したように、運
転者のシフト力（＋Ｆ₀ ）によるシフトスリーブ34の初
期軸方向左移動によって、円錐クラッチ摩擦表面24、48
が係合する。図４(A)の構成部材は、トルクの伝達を開
始し、またブロッカ表面44b 、58d を係合させるが、自
己増力表面74a 、76c を係合させるほどではない程度に
ボークリング40をハブ32及びシフトスリーブ34に対して
回転させ始める程度に摩擦面が係合している「初期自己
増力位置」にある。図５の「ブロッキング／自己増力位
置」にある時、運転者の全シフト力（＋Ｆ₀ ）がブロッ
カ表面によって伝達されて、それから生じるトルクＴ₀
が、この時には係合している自己増力表面74a 、76c を
介して軸12に反作用する。

【００２９】前述したように、係合した自己増力表面
が、運転者のシフト力と同じ方向に作用する付加軸方向
力（＋Ｆ_a ）を発生し、それが係合ブロッカ表面によっ
て伝達されるため、摩擦面の係合力がさらに増大して、
トルクＴ₀ に追加される付加同期トルクＴ_a を発生す
る。

【００３０】図９は、クラッチ摩擦面を係合させる軸方
向力の合計（＋Ｆ₀ ）＋（＋Ｆ_a ）と、クラッチ摩擦面
によって発生した同期トルクの合計（Ｔ₀ ＋Ｔ_a ）とを
示している。任意の運転者シフト力（＋Ｆ₀ ）及び運転
者による同期トルク（Ｔ₀ ）に対する軸方向付加力の大
きさは、係合した自己増力表面の傾斜面の角度の関数で
あることが好ましい。この角度は、運転者による適度な
シフト操作力に応じて同期トルクを増加させ、同期時間
を短縮することができる十分な大きさの付加力（＋Ｆ
_a ）を発生できる大きさであることが好ましい。しか
し、この角度はまた、制御された軸方向付加力（＋Ｆ
_a ）を発生できる程度に小さいことが好ましい。すなわ
ち、力（＋Ｆ_a ）は力（Ｆ₀ ）の増減に応じて増減しな
ければならない。傾斜面角度が大き過ぎる場合、傾斜面
は自己増力ではなくセルフロックする。このため、円錐
クラッチが初期係合を行うと、力（＋Ｆ_a ）が力（＋Ｆ
₀ ）に無関係に無制御状態で急激に増大し、そのため円
錐クラッチはロックアップ状態へ押し進められる。自己
増力ではなくセルフロックすることによって、シフト特
性すなわちシフト感が低下し、同期装置の部品に過度の
応力が加わったり、円錐クラッチ摩擦面の過熱や急激な
摩耗を発生させたり、さらに、運転者のシフトレバー移
動を無効化することもある。

【００３１】なお、ギヤのアップまたはダウンシフトに
対して付加軸方向力が望まれない場合、アップまたはダ
ウンシフト用の傾斜面を軸12の軸線に平行にすることが
できる。例えば、傾斜面74a 、76c を平行に形成した場
合、そのシフトに対して付加力（Ｆ_a ）は生じない。

【００３２】付加軸方向力（Ｆ_a ）を発生するように自
己増力表面角度を計算するための主要な変数は、円錐ク
ラッチの角度、円錐クラッチの摩擦係数、円錐クラッチ
と自己増力傾斜面との平均半径比、傾斜面の摩擦係数、
及び自己増力表面の角度である。自己増力すなわちブー
スト力の計算及び制御についてのさらなる詳細は、参考
として本説明に含まれる前述の米国特許第5,092,439 号
に記載されている。

【００３３】図６は、非ブロッキングトルクがブロッカ
表面を離脱させた直後に生じる「ブースト／非ブロッキ
ング位置」を示している。この位置で生じる自己増力
は、慣性及び／または円錐クラッチの不完全切り離しに
よるものであろう。ジョー歯58と28とのＶ字形端部が係
合した時、非ブロッキング状態になって係合位置へのジ
ョー歯の移動を促すので、自己増力による補助力はジョ
ー歯58がジョー歯28と係合する位置へ向かう軸方向係合
移動の再開を助ける。この補助力は、非ブロッキング状
態になった時に、シフトを終了するために運転者が過大
な操作力でシフトレバーを移動させる必要を減じること
によって、いわゆるシフトの引っかかり(shift notchin
ess)を軽減する。すなわち、この補助力は、シフトを滑
らかに比較的小さい操作力で完了させることができる。
図７は「ブースト終了位置」を示し、図８はジョー歯5
8、28の完全「係合位置」を示している。

【００３４】図10を参照すると、図10には、本発明の他
の実施形態として、図１〜図８におけるブロッカ歯44の
代わりにピン形のブロッカ140 を用い、また、初期付勢
機構52の代わりに割りピン形の初期付勢機構142 を用い
た同期装置アセンブリ110 が示されている。アセンブリ
110 は、図１〜図８の実施形態における歯38、39、58及び
60に類似する歯138、139、158 及び160 と、自己増力機構
54に類似する図示しない自己増力機構とを用いている。

【００３５】より具体的には、同期装置アセンブリ110
は、軸線112aを有する回転可能に取付けられた軸112
と、間隔をもって配置されて軸112 に回転可能に支持さ
れ、公知の方法で軸112 に固定された環状のスラスト部
材118、120 によって軸112 に対する軸方向移動を規制さ
れた変速比ギヤ114、116 と、複動ピン形同期装置クラッ
チ機構122 を備えている。ギヤ114、116 は、ギヤ14、16
と類似しており、カウンタ軸ギヤ115、117 と常時噛み合
っている歯114a、116a を有している。

【００３６】同期装置機構122 は、環状の摩擦部材124、
126 及びギヤ114、116 に固定された環状のジョー歯114
b,116b と、半径方向に外側に延びるフランジ132 を有
するシフトスリーブ128 と、軸方向に延ばされフランジ
の開口 132b に挿通されて円周方向に間隔をもって配置
された３つのピン140 によって、互いに連結され固定さ
れた環状の摩擦部材すなわち摩擦リング136、138 とを備
えている。

【００３７】容易に理解できるように、摩擦部材124、13
6 及び126、138 は、それぞれ対になっており、ジョーク
ラッチが係合する前にギヤを軸と同期させるための摩擦
クラッチを形成している。円錐型の摩擦クラッチが望ま
しいが、他のタイプの摩擦クラッチを使用してもよい。
摩擦部材124、126 は、複数の方法のいずれか、例えば、
溶接によって関連するギヤに固定することもできるし、
あるいは、公知のようにギヤと一体形成することもでき
る。摩擦部材124、126 は、内部歯を有し、内部歯は、ギ
ヤに対して円周方向の保持力を得るためにジョー歯114
a、116b と噛み合っている。軸方向の保持力は、公知の
方法で保持力リングによって提供される。摩擦部材124、
126 は、内部円錐摩擦面124a、126a を有しており、内部
円錐摩擦面124a、126a は、それぞれ外部円錐摩擦面136
a、138a と噛み合う。摩擦部材124、126 及び136、138
は、それぞれ同期装置カップ及びリングと呼ぶこともで
きる。

【００３８】各ピン140 は、フランジ開口132bの直径よ
りもわずかに小さい直径を有する主直径部140aと、摩擦
リング136、138 の間に配置された縮径部分140b（ここで
は、中央部分）と、ピン軸から径方向に外側に延ばさ
れ、ピン軸に垂直な線に対して互いに角度を有する円錐
ブロッカ肩部すなわちブロッカ表面140c、140d とを備え
ている。ブロッカ表面140c、140d は、同期が実質的に達
成されるまでシフトのブロックを行う。縮径部分140b
は、それぞれのフランジ開口内に配置されて、結合され
た摩擦リング及びピンアセンブリのフランジに対する回
転を制限し、ピンブロッカ肩部140c、140d をフランジ開
口の回りに形成された面取りしたブロッカ肩部132d、132
e に係合させる。

【００３９】初期付勢機構アセンブリ142 は、米国特許
第4,252,222 号に開示されたスプリットピン形であり、
その開示内容は、参考として本説明に含まれる。各アセ
ンブリ142 は、圧縮されると開口132cの直径より小さく
なる主直径を有する一対の半円筒形の二分割部分144
と、面取りされた端部144bを有する半環状溝144aと、半
環状溝144aの面取り部を開口132cの対向する端部回りに
形成されたフランジ面取り部132fにそれぞれ係合させる
ために環状を付勢する板ばね146 とを備えている。半円
筒状の二分割部分144 の端部は、摩擦リング136、138 に
隣接しており、細長い凹所136b、138b 内にはめ込まれて
いる。

【００４０】シフトスリーブ128 は、ハブ148 の外周部
の回りに摺動可能に配置されており、ギヤ114、116 の間
に軸方向に保持されている。ハブ148 は、軸112 の外側
スプライン歯112bと噛み合う内側スプライン歯148aを有
し、これらの間の相対回転を防止している。スリーブ12
8 とハブ148 との間のスプラインの配置は、ブロッカ歯
44およびスリーブスプライン歯56が必要とされない点を
除くと、図１〜図８に示すものと実質的に同じである。
図１〜図８の機構の作動と図10の機構の作動とは、実質
的に同じである。

【００４１】以上に自己増力式の同期装置機構の好適実
施形態を２つ開示されている。この好適実施形態の様々
な変更や修正は本発明の技術的思想に含まれる。特許請
求の範囲は、開示された機構の発明部分を含んでおり、
これらの変更や修正は、本発明の技術的思想に含まれ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る複動式ボークリング
形同期装置の縦断面図である。

【図２】図１のハブ部材を破断して示す左側面図であ
る。

【図３】図１の３−３線に沿って半径方向内向きに見た
場合の同期装置要素のニュートラル位置を示す図であ
る。

【図４】(A) は、図３と同様な同期装置要素が「初期自
己増力位置」にある状態を示す図であり、(B) は、早期
ブロッキング不良を防止するためにボークリングとハブ
との遊びを大きくした場合を示す図である。

【図５】図３と同様な同期装置要素が「ブロッキング／
自己増力位置」にある状態を示す図である。

【図６】図３と同様な同期装置要素が「ブースト／非ブ
ロッキング位置」にある状態を示す図である。

【図７】図３と同様な同期装置要素が「ブースと終了位
置」にある状態を示す図である。

【図８】図３と同様な同期装置要素が「完全係合位置」
にある状態を示す図である。

【図９】同期機構のブロッカ表面に作用する軸方向力及
びトルクを示す線図である。

【図１０】本発明の他の実施形態に係る複動式ピン形同
期装置の縦断面図である。

【符号の説明】

12 軸 14，16 ギヤ 18 ボークリング形同期装置機構 24，26 ギヤ摩擦面 28，30 ギヤジョー歯 32 ハブ 34 シフトスリーブ 34a スリーブの第１端部 34b スリーブの第２端部 34c スリーブの内周部 38，39 外側スプライン 40 ボークリング 44，46 ブロッカ歯 58 スリーブの第１歯 60 スリーブの第２歯 72a ，72b ，74a ，74b ハブの自己増力傾斜面 76a ，76b ，76c ，76d スリーブの自己増力傾斜面

フロントページの続き (71)出願人 390033020 Ｅａｔｏｎ Ｃｅｎｔｅｒ，Ｃｌｅｖｅｌ ａｎｄ，Ｏｈｉｏ 44114，Ｕ．Ｓ．Ａ. (72)発明者 オティス ジョン オルソン アメリカ合衆国，ミシガン 48334，ファ ーミングトン ヒルズ，ダンダルク 26360

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 共通軸線(12a) の回りを相対回転するよ
   うに配置された第１駆動部材（12）と第２駆動部材（1
   4）とを摩擦的に同期させて噛み合い連結させるための
   クラッチ（18）であって、 ニュートラル位置から第２ジョー手段（28）との係合位
   置へ軸方向に移動可能に設けられ、ニュートラル位置か
   ら前記第２ジョー手段（28）へ向かう軸方向のシフト力
   （Ｆ₀ ）による係合移動に応じて、前記第１駆動部材
   （12）と前記第２駆動部材（14）とを噛み合い連結させ
   る第１ジョー手段（58）と、 前記第１ジョー手段（58）の係合移動に応じて軸方向に
   移動して、第２摩擦面（24）と係合することによって、
   同期トルク（Ｔ₀ ）を発生させる第１摩擦面（48）と、 前記第１ジョー手段（58）に対して軸方向の移動を許容
   し、かつ、制限された回転移動を許容する連結手段と、
   円周上に間隔をおいて配置され、軸方向に延ばされて、
   前記第１ジョー手段（58）から半径方向に延びる第１歯
   を摺動可能に収容する複数の第１溝（62）を有する外周
   部と、複数の第１傾斜ハブ面（74a ）とを備え、第１駆
   動部材（12）に固定されたハブ（32）と、 前記第１摩擦面（48）及び複数の第１ブロッカ面（44b
   ）を含み、前記ハブ（32）から前記第２摩擦面（24）
   へ軸方向に移動可能に設けられ、前記第１ブロッカ面
   （44b ）を前記第１ジョー手段（58）のブロッカ面（58
   d ）に係合させることによって、前記第１ジョー手段
   （58）と前記第２ジョー手段（28）との非同期係合を阻
   止する第１ボークリング（40）と、 前記第１ジョー手段（58）と共に移動し、かつ、前記ハ
   ブ（32）に対して回転移動範囲が制限されるように設け
   られ、さらに、前記第１傾斜ハブ面（74a ）と接触する
   ように配置されて、前記第１ボークリング（40）の第１
   ブロッカ面（44b ）を介して伝達される摩擦面（48）の
   反作用によって、シフト力（Ｆ₀ ）の方向に付加軸方向
   力（Ｆ_a ）を発生させて、シフト力（Ｆ₀ ）のみよりも
   増大させた軸方向力を摩擦面（48）に作用させて同期ト
   ルクを増大させるようにした複数の自己増力要素（76）
   とを備えており、 前記ハブ（32）は、前記複数の第１溝（62）の間に配置
   されて軸方向に延ばされ、前記第１ジョー手段（58）か
   ら半径方向に延びる第２歯を摺動可能に収容する複数の
   第２溝（64）を含み、前記第１及び第２溝（62，64）
   は、それぞれ、複数のブロッカ（44、58d）がニュートラ
   ル位置及び係合位置にある間、第１及び第２歯（58、60
   ）の少なくとも一部を内部に収容し、前記第１及び第
   ２溝（62，64）は、前記第１ジョー手段（58）の係合移
   動の際に自己増力手段（72，74）を係合させるために、
   前記第１ジョー手段と前記ハブとの間の相対回転を許容
   するための前記第１ジョー手段の歯に対する円周方向幅
   （38a、39a 及び38c、39c ）を有しており、さらに、前記
   第１及び第２ジョー手段が係合するとき、前記第２溝
   （64）の一部（38b ，39b ）が前記第２歯（60) を密接
   的に収容して前記第１ジョー手段と前記ハブとの間の相
   対回転を阻止するようになっていることを特徴とする自
   己増力式同期クラッチ。
2. 【請求項２】 第１ジョー手段（58）は、軸方向長さを
   有するシフトスリーブ（34）に取付けられ、前記第１ジ
   ョー手段は、第１歯を形成しており、該第１歯の長さ
   は、前記シフトスリーブの長さの半分より短いことを特
   徴とする請求項１に記載の自己増力式同期クラッチ。
3. 【請求項３】 第２歯は、シフトスリーブ（34）に取付
   けられ、その長さは、前記シフトスリーブの長さの半分
   より短いことを特徴とする請求項２に記載の自己増力式
   同期クラッチ。
4. 【請求項４】 第１溝の円周方向幅は、シフトスリーブ
   がニュートラル位置にあるとき、第１ジョー手段（58）
   の円周方向幅の約 1.5倍であることを特徴とする請求項
   １に記載の自己増力式同期クラッチ。
5. 【請求項５】 第１溝は、第２歯が第４ジョー手段（3
   0) と係合しているとき、制限された回転を阻止して第
   １駆動部材（12）と第３駆動部材（16）との間のバック
   ラッシュすなわち自由遊びを制限することを特徴とする
   請求項１に記載の自己増力式同期クラッチ。
6. 【請求項６】 自己増力要素（76）は、シフトスリーブ
   内周面（34c ）に形成され、かつ、円周上に間隔をもっ
   て配置された複数の自己増力面（76d ）を含んでいるこ
   とを特徴とする請求項１に記載の自己増力式同期クラッ
   チ。
7. 【請求項７】 ハブ（32）及び少なくとも一つの自己増
   力要素（76）は、それぞれ前記ハブの回転面に対して垂
   直に延ばされ、第１ジョー手段がニュートラル位置にあ
   るときに係合する非ブースト面（72c ，76e ）を含んで
   いることを特徴とする請求項１に記載の自己増力式同期
   クラッチ。
8. 【請求項８】 第１ボークリング（40）は、そのハブ
   （32）に対する回転範囲を制限するための当接手段（40
   b ）と、そのハブ（32）に対する回転範囲を増大させ
   て、ブロッカ面の初期の接触を、ほぼ完全な初期接触か
   ら減じられた初期接触に変換する回転範囲増大手段（42
   b'）とを含んでいることを特徴とする請求項１に記載の
   自己増力式同期クラッチ。
9. 【請求項９】 ニュートラル位置から第４ジョー手段
   （30）と係合する係合位置へ軸方向に移動可能に設けら
   れ、前記第４ジョー手段（30）へ向かう軸方向のシフト
   力（Ｆ₀ ）による第１ジョー手段の係合移動に応じて、
   第１駆動部材と第３駆動部材とを噛み合い連結させる第
   ２歯を形成する第３ジョー手段（60）と、 前記第１ジョー手段の係合移動に応じて軸方向に移動し
   て、第４摩擦面（26）と係合することによって同期トル
   ク（Ｔ₀ ）を発生させる第３摩擦面（50）と、 第３摩擦面（50）及び複数の第２ブロッカ面（46b ）を
   含み、ハブ（32）から前記第４摩擦面（26）へ軸方向に
   移動可能に設けられ、前記第２ブロッカ面（46b ）を前
   記第３ジョー手段（60）のブロッカ面（60d ）に係合さ
   せるように作動して、第３ジョー手段（60）と第４ジョ
   ー手段（30）の非同期係合を阻止する第２ボークリング
   （42）と、 第２ジョー手段（60）と共に移動し、かつ、前記ハブ
   （32）に対して回転移動範囲が制限されるように設けら
   れ、さらに、傾斜ハブ表面（74）と接触するように配置
   されて、前記第２ボークリング（42）の第２ブロッカ面
   （46b ）を介して伝達される摩擦面のトルクの反作用に
   よって、第４ジョー手段（30）に向かうシフト力（Ｆ
   ₀ ）の方向に付加軸方向力（Ｆ_a ）を発生させて、シフ
   ト力（Ｆ₀ ）のみよりも増大させた軸方向力を摩擦面
   （50）に作用させて同期トルクを増大させるようにした
   複数の自己増力要素（76）とを備えていることを特徴と
   する請求項１に記載の自己増力式同期クラッチ。
10. 【請求項１０】 共通軸線（12a または112a）の回りを
    相対回転するように配置された第１駆動部材（12または
    112 ）と第２駆動部材（14または114 ）とを摩擦的に同
    期させて噛み合い連結させるためのクラッチ（18または
    122 ）であって、 ニュートラル位置から第２歯（28）との係合位置へ軸方
    向に移動可能に設けられ、第２歯（28）へ向かう軸方向
    のシフト力（Ｆ₀ ）による係合移動に応じて、第１駆動
    部材（12または112 ）と第２駆動部材（14または114 ）
    とを噛み合い連結させる第１歯（58）を有するスリーブ
    （34，128 ）と、 前記スリーブの係合移動に応じて軸方向に移動して、第
    ２摩擦手段の第２摩擦面（24または124a）と係合するこ
    とによって、同期トルク（Ｔ₀ ）を発生させる第１摩擦
    面（48または136a）を有する第１摩擦手段と、 円周上に間隔をおいて配置され、軸方向に延ばされて、
    前記第１歯（58）を摺動可能に収容する複数の溝（62）
    を有する外周部（32d ）を含み、前記第１駆動部材（12
    または112 ）に取付けられたハブ（32または148 ）と、 前記第１摩擦手段に取付けられた第１ブロッカ（44また
    は140c）と、 前記スリーブ（34または128 ）に取付けられ、前記第１
    ブロッカ（44または140c）と係合して、前記第１歯（5
    8）と第２歯（28）との非同期係合を阻止する第２ブロ
    ッカ（58d または132d）と、 前記スリーブ（34または128 ）及び前記ハブ（32または
    148 ）に取付けられ、前記第１ブロッカ（44または140
    c）と前記第２ブロッカ（58d または132d）との係合及
    び前記スリーブとハブとの相対回転に応じて係合するよ
    うに移動可能で、同期トルクの反作用によって係合した
    とき、シフト力（＋Ｆ₀ ）の方向に前記第１及び第２ブ
    ロッカ（44,58dまたは140c,132d ）を介して伝達される
    付加軸力（＋Ｆ_a ）を発生させて、前記摩擦面（48,24
    または136a,124a ）の係合力をさらに増大させる自己増
    力手段（72,74 及び76）とを備えており、 さらに、前記スリーブ（34または128 ）は第３歯（60）
    を含み、 前記ハブ（32または148 ）は、前記複数の第１溝（62）
    の間に配置されて軸方向に延ばされ、第３歯（60）を摺
    動可能に収容する複数の第２溝（64）を含み、前記第１
    及び第２溝（62，64）は、それぞれ、前記第１及び第２
    ブロッカ（44、58dまたは140c、132d ）がニュートラル位
    置及び係合位置にある間、第１及び第３歯（58、60 ）の
    少なくとも一部を内部に収容し、前記第１及び第２溝
    （62，64）は、スリーブ（34または128 ）の係合移動の
    際に自己増力手段（72、74 及び76）を係合させるため
    に、前記スリーブとハブとの間で相対回転を許容するた
    めの前記収容された歯に対する円周方向幅（38a、39a 及
    び38c、39c)を有しており、さらに、前記第１歯（58）と
    第２歯（28）とが係合するとき、第２溝（64）の一部
    （38b、39b ）が、第３歯（60）を密接的に収容して、前
    記スリーブと前記ハブとの間の相対回転を阻止するよう
    になっていることを特徴とする自己増力式同期クラッ
    チ。
11. 【請求項１１】 スリーブ（128 ）は、半径方向に延び
    るフランジ（132）を含み、 第１ブロッカ手段（140c）は、円周上に間隔をおいて配
    置され、第１摩擦部材（136)から軸方向に延ばされて固
    定され、前記フランジの開口（132b) に挿通された複数
    のピン式手段（140 ）によって形成され、 第２ブロッカ手段（132d）は、前記開口の周囲に形成さ
    れていることを特徴とする請求項10に記載の自己増力式
    同期クラッチ。