JP3575198B2 - 正孔輸送材料およびその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はトリフェニルアミン構造を有する正孔輸送材料に関し、該トリフェニルアミン化合物は、感光材料、有機光導電材料として使用でき、さらに具体的には、平面光源や表示に使用される有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子もしくは電子写真感光体等の正孔輸送材料として利用できる。
【0002】
【従来の技術】
感光材料や正孔輸送材料として開発されている有機光導電材料は、低コスト、加工性が多様であり、無公害性などの多くの利点があり、多くの化合物が提案されている。例えば、オキサジアゾール誘導体(米国特許第3,189,447号)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号、特開昭54−59,143号、米国特許第4,150,978号)、トリアリールピラゾリン誘導体(米国特許第3,820,989号、特開昭51−93,224号、特開昭55−108,667号)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,180,730号、米国特許第4,232,103号、特開昭55−144,250号、特開昭56−119,132号)、スチルベン誘導体(特開昭58−190,953号、特開昭59−195,658号)などの有機光導電性材料が開示されている。
【0003】
正孔輸送材料を利用した技術の一つとしては、有機EL素子が挙げられる。有機物質を使用したEL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般にELは発光層および該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0004】
従来の有機EL素子は、無機EL素子に比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。
近年、10V以下の低電圧で発光する高い蛍光量子効率を持った有機化合物を含有した薄膜を積層した有機EL素子が報告され、関心を集めている(アプライド・フィジクス・レターズ、51巻、913ページ、1987年参照)。
この方法は、金属キレート錯体を蛍光体層、アミン系化合物を正孔注入層に使用して、高輝度の緑色発光を得ており、6〜7Vの直流電圧で輝度は1000(cd/m)、最大発光効率は1.5(lm/W)を達成して、実用領域に近い性能を持っている。
【0005】
有機EL素子は、金属陰極層と透明陽極層との間に、有機蛍光化合物を含有する発光層を備えた素子である。また、低電圧で高輝度の発光を得るために、電子注入層や正孔注入層を加えて素子化している。これら有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔との再結合により励起子が生じ、この励起子が放射失活する過程で光を放出している(特開昭59−194393号公報、特開昭63−295695号公報)。しかしながら、直流電圧を印加して長時間にわたり発光し続けると、有機化合物の結晶化などが促進され、素子にリーク電流が流れ易くなり素子が破壊される。そのため、正孔注入層に使用する正孔輸送材料として、4,4’,4”−トリス(N,N’−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)等の化合物を使用して改良している(特開平4−308688号公報)。これらの化合物は、分子がねじれて立体形状をとるために結晶化しにくく、薄膜形成性も優れているが充分なものではない。そのために、長時間発光させた場合に、素子が容易に劣化するという問題があった。
【0006】
このように、現在までの有機EL素子は、発光輝度や繰り返し使用時の発光安定性は未だ充分ではなく、より大きな発光輝度を持ち、発光効率が高く繰り返し使用時での安定性の優れた有機EL素子の開発のために、優れた正孔輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料の開発が望まれている。
【0007】
さらに、正孔輸送材料を利用した技術としては、電子写真感光体が挙げられる。電子写真方式は、カールソンにより発明された画像形成法の一つである。この方式は、コロナ放電により感光体を帯電した後、光像露光して感光体に静電潜像を得、該静電潜像にトナーを付着させて現像し、得られたトナー像を紙へ転写することからなる。このような電子写真感光体に要求される基本的な特性としては、暗所において適当な電位が保持されること、暗所における電荷の放電が少ないこと、光照射により速やかに電荷を放電することなどが挙げられる。従来までの電子写真感光体は、セレン、セレン合金、酸化亜鉛、硫化カドミウムおよびテルルなどの無機光導電体が使用されてきた。これらの無機光導電体は、耐久性が高く、耐刷枚数が多いなどの利点を有しているが、製造コストが高く、加工性が劣り、毒性を有するなどの問題点が指摘されている。これらの欠点を克服するために有機化合物を使用した感光体の開発が行われているが、従来までの有機光導電材料を正孔輸送材料として用いた電子写真感光体は、帯電性、感度および残留電位などの電子写真特性が、必ずしも満足されているとは言えないのが現状であり、優れた電荷輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた正孔輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料を提供することにあり、さらにこの正孔輸送材料を使用することにより、長寿命の有機EL素子、繰り返し使用時での安定性の優れた電子写真感光体等を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、一般式[1]で示される少なくとも一種の正孔輸送材料は、正孔輸送能力が大きく、これを用いて作製した有機EL素子もしくは電子写真感光体等の素子特性や繰り返し使用時での安定性が優れていることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明は下記一般式[1]で示される正孔輸送材料である。
一般式[1]
【化2】
Figure 0003575198
[式中、R〜Rは、置換基を有して良いアリール基を表し、ただしR〜Rの少なくとも1つは、隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成したアリール基を表す。Ar〜Arは、置換基を有して良いアリーレン基を表す。]
【0010】
更に、本発明は、一般式[1]において、R、RおよびRが隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成したアリール基である正孔輸送材料である。
【0011】
更に、本発明は、隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成したアリール基が、置換基を有して良いテトラヒドロキシナフタレン基である上記正孔輸送材料である。
【0012】
更に、本発明は、一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、少なくとも一層が上記正孔輸送材料を含有する層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0013】
更に、本発明は、一対の電極間に、正孔輸送層と発光層とを含む有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、正孔輸送層が上記正孔輸送材料を含有する層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0014】
更に、本発明は、一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層が上記正孔輸送材料を含有する層である有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0015】
更に、本発明は、導電性支持体上に、電荷発生材料および正孔輸送材料を使用してなる電子写真感光体において、上記正孔輸送材料が上記正孔輸送材料である電子写真感光体である。
【発明の実施の形態】
【0016】
一般式[1]のR〜Rはアリール基であり、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、アセナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、ピレニル基、ビフェニル基、4−エチルビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ベンズ〔a〕アントラニル基、トリフェニレニル基、2,3−ベンゾフルオレニル基、3,4−ベンゾピレニル基等がある。Ar〜Arはアリーレン基であり、フェニレン基、2−メチルフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナントレニレン基、フルオレニレン基、アセナフチレン基、ピレニレン基、ビフェニレン基、2,2’−ジメチルビフェニレン基、3,3’−ジクロロビフェニレン基、ターフェニレン基、クオーターフェニレン基等がある。また、隣接する置換基同士で形成する脂肪族式環としては、炭素数4〜8の脂肪族式環であり、シクロブチル環、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、シクロオクチル環等がある。
【0017】
本発明における一般式[1]で示されるアリール基、および、アリーレン基に置換してもよい置換基の代表例としては、以下に示す置換基がある。ハロゲン原子としては弗素、塩素、臭素、ヨウ素がある。置換もしくは未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基等がある。置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等がある。置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0018】
モノまたはジ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等がある。置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基等がある。置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等がある。置換もしくは未置換のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノリル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。
【0019】
置換もしくは未置換の複素環基としては、チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等があるが、上記置換基に具体的に限定されるものではない。
【0020】
また、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよいシクロアルキル環、アリール環、複素環を形成してもよく、これらの環の任意の位置にさらに置換基を有してもよく、これらの代表例としては、フェニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。複素環としては、チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等がある。
【0021】
本発明の一般式[1]で示される化合物は、例えば以下の方法により合成することができる。ニトロベンゼン溶媒中、トリス(p−ブロモフェニル)アミンに、5〜8倍モルの置換芳香族ジアミン化合物を、炭酸カリウム、銅等の触媒と共に200℃で50時間反応させて、一般式[1]で示される芳香族アミン化合物を合成する。
【0022】
一般式[1]で示される化合物の代表例を具体的に表1に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0023】
【表1】
Figure 0003575198
【0024】
Figure 0003575198
【0025】
Figure 0003575198
【0026】
Figure 0003575198
【0027】
Figure 0003575198
【0028】
Figure 0003575198
【0029】
本発明の正孔輸送材料は、同一層中で他の正孔もしくは電子輸送性化合物と混合して使用してもさしつかえない。本発明の化合物は正孔輸送性に優れているので、正孔輸送性材料として極めて有効に使用することができる。
【0030】
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機薄膜を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために正孔輸送材料もしくは電子輸送材料を含有しても良い。発光材料が、正孔輸送性もしくは電子輸送性を有している場合もある。多層型は、(陽極/正孔注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極)の多層構成で積層した有機EL素子がある。一般式[1]の化合物は、どの素子構成においても使用することが出来る。一般式[1]の化合物は、大きな正孔輸送能力をもっているので、正孔注入層もしくは発光層のいずれの層においても、正孔輸送材料として使用できる。本発明の正孔輸送材料は、陽極からの正孔注入機能、および注入した正孔を輸送する機能を有しているので、正孔注入層が二層以上の場合でも、いずれの層に使用することが出来る。一般式[1]の化合物により形成される薄膜は非晶質性があるので、薄膜にした場合の長期間の保存や素子を駆動させた場合の発光寿命等においても有利である。また、一般式[1]の化合物は、ITO等の金属電極に対する密着性も良好であり、膜膜のイオン化ポテンシャルも低いことから、陽極からの正孔注入に有利であるので、正孔注入層を二層以上にした場合、一般式[1]の化合物を金属電極(陽極)側の正孔注入層に使用した方がさらに有利である。
【0031】
発光層には、必要があれば、本発明の一般式[1]の化合物に加えて、発光材料、ドーピング材料、キャリア輸送を行う正孔輸送材料や電子輸送材料を使用することもできる。二層構造の場合、発光層と正孔注入層を分離している。この構造により、正孔注入層から発光層への正孔注入効率が向上して、発光輝度や発光効率を増加させることができる。この場合、発光のためには、発光層に使用される発光物質自身が電子輸送性であること、または発光層中に電子輸送材料を添加することが望ましい。もう一つの層構成として、発光層と電子注入層による二層構造がある。この場合、発光材料自身が正孔輸送性であること、または発光層中に正孔輸送材料を添加することが望ましい。
【0032】
また、三層構造の場合は、発光層、正孔注入層、電子注入層を有し、発光層での正孔と電子の再結合の効率を向上させている。このように、有機EL素子を多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。このような多層構造の素子においても、必要があれば、発光材料、ドーピング材料、キャリア輸送を行う正孔輸送材料や電子輸送材料を組み合わせて使用することが出来る。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上で形成されていても良い。
【0033】
有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板と称される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
陰極に使用される導電性材料としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが好適であり、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられる。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウムなどがあるが、これらに限定されるものではない。陽極および陰極は必要があれば二層以上で形成されていても良い。
【0034】
有機EL素子では、効率良く発光させるために、少なくとも一方は素子の発光波長領域において充分透明であることが望ましい。また、基板も透明であることが望ましい。透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性を確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば限定されるものではないが、例示すると、ガラス基板、ポリエチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン等の透明性樹脂があり、板状、フィルム状のいずれでも良い。
【0035】
本発明に係わる有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することもできる。膜厚は特に限定されるものではないが、各層は適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nmから10μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0036】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解または分散して薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであっても良い。また、いずれの薄膜においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用しても良い。
本発明において使用される樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げることができる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0037】
本発明の有機EL素子に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、トリフェニルアミン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミンピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
一般式[1]の正孔輸送材料と併せて使用できる正孔輸送材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
電子輸送材料としては、電子を輸送する能力を持ち、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層または正孔輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。例えば、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサジアゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。また、正孔輸送材料に電子受容材料を、電子輸送材料に電子供与性材料を添加して増感させることもできる。
【0040】
本発明の一般式[1]の化合物は、いずれの層に使用することができ、一般式[1]の化合物の他に、発光材料、ドーピング材料、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくとも1種が同一層に含有されてもよい。また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル等を封入して素子全体を保護することも可能である。
以上のように、本発明では有機EL素子に一般式[1]の化合物を用いたため、発光効率と発光輝度を高くできた。また、この素子は熱や電流に対して安定であり、さらには低い駆動電圧で実用的に使用可能の発光輝度が得られるため、従来まで大きな問題であった連続発光時の輝度劣化も大幅に改良することができた。
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや、平面発光体として、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、その工業的価値は非常に大きい。
【0041】
次に、本発明の一般式[1]で示される化合物を電子写真感光体として用いる場合について説明する。本発明の一般式[1]で示される化合物は、電子写真感光体の何れの層においても使用できるが、高い正孔輸送特性を有することから正孔輸送材料として使用することが望ましい。該化合物は正孔輸送材料として作用し、光を吸収することにより発生した電荷を極めて効率よく輸送でき、高速応答性の感光体を得ることができる。また、該化合物は、耐オゾン性、光安定性に優れているので、耐久性に優れた感光体を得ることができる。
【0042】
電子写真感光体は、導電性基板上に電荷発生材料と、必要があれば電荷輸送材料を結着樹脂に分散させてなる感光層を設けた単層型感光体、導電性基板上に下引き層、電荷発生層、正孔輸送層の順に積層した、もしくは導電性基板または下引き層上に正孔輸送層、電荷発生層の順に積層した積層型感光体等がある。ここで、下引き層は必要がなければ使用しなくても良い。上記感光体は、必要があれば活性ガスからの表面保護およびトナーによるフィルミング防止等の意味でオーバーコート層を設けることも出来る。
【0043】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、キナクリドン、ジケトピロロピロール、インジゴ、ペリレン、ペリノン、多環キノン、スクアリリウム塩、アズレニウム塩、フタロシアニン、ナフタロシアニン等の有機化合物、もしくは、セレン、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン等の無機材料が挙げられる。
【0044】
感光体の各層は蒸着もしくは分散塗工方式により成膜することが出来る。分散塗工は、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、浸漬コーター、ローラーコーター、カーテンコーターおよびビードコーター等を用いて行い、乾燥は室温から200℃、10分から6時間の範囲で静止または送風条件下で行う。乾燥後の感光層の膜厚は単層型感光体の場合、5μmから50μm、積層型感光体の場合、電荷発生層は0.01μmから5μm、好ましくは0.1μmから1μmであり、正孔輸送層は5μmから50μm、好ましくは10μmから20μmが適している。
【0045】
単層型感光体の感光層、積層型感光体の電荷発生層もしくは正孔輸送層を形成する際に使用する樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択出来る。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリシラン類などの有機光導電性ポリマーから選択出来る。好ましくは、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ、アクリル、ポリアミド、ウレタン、エポキシ、シリコン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、塩酢ビ共重合体、フェノールおよびメラミン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることが出来る。電荷発生層もしくは正孔輸送層を形成するために使用される樹脂は、電荷発生材料もしくは正孔輸送材料に対して、100重量%以下が好ましいがこの限りではない。樹脂は2種類以上組み合わせて使用しても良い。また、必要があれば樹脂を使用しなくてもよい。また、電荷発生層を蒸着、スパッタリング等の物理的成膜法により形成させることも出来る。蒸着、スパッタリング法では、好ましくは10−5Toor以下の真空雰囲気下で成膜することが望ましい。また、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中で成膜することも可能である。
【0046】
電子写真感光体の各層を形成する際に使用する溶剤は、下引き層や他の感光層に影響を与えないものから選択することが好ましい。具体的には、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、メチルセロソルブ等のエステル類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が用いられるがこれらに限られるものではない。
【0047】
正孔輸送層は正孔輸送材料のみ、もしくは正孔輸送材料を絶縁性樹脂に溶解させた塗液を塗布する方法、もしくは蒸着等の乾式成膜法により形成される。本感光体に使用される正孔輸送材料は、一般式[1]の化合物に加えて他の正孔輸送材料を組み合わせて使用することもできる。更に、耐熱性、耐磨耗性を向上させるために絶縁性樹脂を併用した場合においても、他の樹脂との相溶性が良く、形成された薄膜が結晶として析出しにくいので、感度、耐久性の向上のために有利である。
【0048】
電子写真特性、画像特性等の向上のために、必要があれば基板と有機層の間に下引き層を設けることができ、下引き層としてはポリアミド類、カゼイン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルブチラール等の樹脂類、酸化アルミニウム等の金属酸化物などが用いられる。
本発明の材料は、有機EL素子もしくは電子写真感光体等の正孔輸送材料としのみでなく、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等有機光導電材料のいずれの分野においても使用できる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。
DSC分析によれば、本発明の一般式[1]で示される化合物は、ガラス転移点温度100℃、融点250℃以上、分解点300℃以上であり、非結晶性正孔輸送材料として従来まで使用されている4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンに比べて、ガラス転移点温度、融点、分解点が高く、有機EL素子の正孔輸送材料として、高耐熱性であることがわかる。また、この一般式[1]で示される全ての化合物は、結晶性が低く、非結晶性化合物であるので、陽極基板や有機薄膜層との密着性も良好であり、有機薄膜としての環境に対する耐性や、有機EL素子にした時の径時寿命、発光寿命に関しても大きな優位性がある。
【0050】
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(1)を真空蒸着して、膜厚30nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚50nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して、有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度120(cd/m)、発光効率1.2(lm/W)が得られた。
【0051】
実施例2
正孔注入層を、クロロホルムに溶解した化合物(2)をスピンコート法で形成する以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度130(cd/m)、発光効率1.9(lm/W)が得られた。
【0052】
実施例3
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(3)を真空蒸着して、膜厚30nmの正孔注入層を得た。次いで、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を真空蒸着して、膜厚10nmの正孔輸送層を得た。さらに、下記構造で示される化合物(19)を真空蒸着して膜厚50nmの電子注入型発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して、有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度270(cd/m)、発光効率2.1(lm/W)が得られた。
【化3】
Figure 0003575198
化合物(19)
【0053】
実施例4〜21
洗浄したITO電極付きガラス板上に、表1に示した化合物をクロロホルムに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、化合物(16)を真空蒸着して膜厚50nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して有機EL素子を得た。発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで表2に示した発光特性を得た。
【0054】
【表2】
Figure 0003575198
【0055】
実施例22
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(3)を真空蒸着して、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を真空蒸着して、膜厚10nmの正孔輸送層を得た。さらに、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚50nmの発光層を作成し、さらに化合物(16)を真空蒸着して膜厚50nmの電子注入層を作成し、その上に、アルミニウムとリチウムを25:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して、有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度500(cd/m)、発光効率2.7(lm/W)が得られた。
【0056】
実施例23
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(6)を真空蒸着して、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を真空蒸着して、膜厚10nmの正孔輸送層を得た。さらに、下記化合物(20)を真空蒸着して膜厚50nmの発光層を作成し、さらにトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚50nmの電子注入層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して、有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度400(cd/m)、発光効率2.4(lm/W)が得られた。
【化4】
Figure 0003575198
化合物(20)
【0057】
実施例24
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(3)およびルブレンを重量比20:1で真空蒸着して膜厚60nmの正孔注入型発光層を得た。さらに、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚20nmの電子注入層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して、有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度660(cd/m)、発光効率3.4(lm/W)が得られた。
【0058】
比較例1
正孔注入層の化合物(1)に代えて、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを使用する以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作成した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度約160(cd/m)、発光効率1.2(lm/W)が得られた。
【0059】
比較例2
正孔注入層の化合物(3)に代えて、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを使用する以外は、実施例22と同様の方法で有機EL素子を作成した。この素子は、直流電圧5Vで発光輝度約220(cd/m)、発光効率1.5(lm/W)が得られた。
【0060】
本実施例で示された全ての有機EL素子について、3(mA/cm)で連続発光させたところ、1000時間以上初期輝度の50%以上の輝度を観測出来たが、比較例1および比較例2の素子を同様の条件で連続発光させたところ、共に200時間で初期輝度の50%以下になり、ダークスポットの数も増加した。以上の結果の理由としては、本発明の化合物は非平面性化合物であるので、薄膜形成の際には、非結晶性薄膜を形成することが可能であること、化合物中に多くの縮合芳香族環を有しているために、正孔輸送性が向上し、有機EL素子の正孔注入性および正孔輸送性が良好になることが挙げられる。さらには、正孔輸送材料の耐熱性も向上しているので、連続発光時の発熱に対しても耐性が向上している。一般式[1]の化合物は、アリール基の隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成しているので、非結晶性が高くなり、基板からの正孔注入との基板との密着性も向上することになる。
本発明の有機EL素子は、発光効率、発光輝度の向上と長寿命化を達成するものであり、併せて使用される発光材料、ドーピング材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、増感剤、樹脂、電極材料等および素子作製方法を限定するものではない。
【0061】
次に、本発明の正孔輸送材料を電子写真感光体に使用した場合の実施例を以下に示す。
【0062】
実施例25
ε型銅フタロシアニン4g、化合物(3)2g、ポリエステル樹脂(東洋紡:バイロン200)14gをテトラヒドロフラン80gと共にボールミルで5時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚20μmの単層型電子写真感光体を作製した。
【0063】
実施例26
ジブロモアントアントロン6g、化合物(6)2g、ポリエステル樹脂(東洋紡:バイロン200)12gをテトラヒドロフラン80gと共にボールミルで5時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚20μmの単層型電子写真感光体を作製した。
【0064】
実施例27
N,N’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド2g、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学:BH−3)2gをテトラヒドロフラン96gと共にボールミルで2時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を作製した。次に化合物(10)10g、ポリカーボネート樹脂(帝人化成:パンライトL−1250)10gをジクロロメタン80gに溶解した。この塗液を電荷発生層上に塗工、乾燥して、膜厚20μmの正孔輸送層を形成し、積層型電子写真感光体を作製した。
【0065】
実施例28〜45
τ型無金属フタロシアニン2g、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学:BH−3)2gをテトラヒドロフラン96gと共にボールミルで2時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を作製した。次に表3に示した化合物10g、ポリカーボネート樹脂(帝人化成:パンライトL−1250)10gをジクロロメタン80gに溶解した。この塗液を電荷発生層の上に塗工、乾燥して、膜厚20μmの正孔輸送層を形成し、積層型電子写真感光体を作製した。
【0066】
電子写真感光体の電子写真特性は以下の方法で測定した。静電複写紙試験装置(川口電機製作所:EPA−8100)により、スタティックモード2、コロナ帯電は−5.2(kV)、5(lux)の白色光を照射して、初期表面電位(V0 )、V0 と2秒間暗所に放置した時の表面電位(V2 )の比(暗減衰率:DDR=V2 /V0 )、光露光後に帯電量が初期の1/2まで減少する時間から半減露量感度(E1/2 )および光露光3秒後の表面電位(VR3 )を調べた。本実施例の電子写真感光体の電子写真特性を表3に示す。
【0067】
【表3】
Figure 0003575198
【0068】
本実施例で示された全ての電子写真感光体は、1万回以上繰り返して使用した前後での表面電位、感度等の電子写真特性や画像濃度の変化率が2%以内であることから、安定な電子写真特性を有し高品質の画像が保持できる電子写真感光体であることがわかる。
【0069】
比較例3
正孔輸送層に、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを使用する以外は、実施例27〜44と同様の方法で電子写真感光体を作製した。この電子写真感光体の電子写真特性は、初期電位(V0 )=−75(V)、2秒後の電位保持率(DDR2 )=90(%)、半減露光量感度(E1/2 )=1.0(lux・s)、3秒後の残留電位(VR3 )=−25(V)であり、本発明の正孔輸送材料に比べて劣っていた。また、この電子写真感光体を1万回以上繰り返して使用した前後での表面電位、感度等の電子写真特性や画像濃度は10%以上の変化率を示し、高品質の画像を安定して得ることができなかった。
【0070】
【発明の効果】
本発明により、優れた正孔輸送能力を有する化合物を得ることができた。本発明が提供した化合物により、従来に比べて高発光効率、高輝度であり、長寿命の有機EL素子、および感度、正孔輸送特性、初期表面電位、暗減衰率等の電子写真特性に優れ、繰り返し使用に対する疲労も少ない電子写真感光体を得ることができた。

Claims (7)

  1. 下記一般式[1]で示される正孔輸送材料。
    一般式[1]
    Figure 0003575198
    [式中、R〜Rは、置換基を有して良いアリール基を表し、ただしR〜Rの少なくとも1つは、隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成したアリール基を表す。Ar〜Arは、置換基を有して良いアリーレン基を表す。]
  2. 一般式[1]において、R、RおよびRが隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成したアリール基である請求項1記載の正孔輸送材料。
  3. 隣接する置換基同士でシクロアルキル環を形成したアリール基が、置換基を有して良いテトラヒドロキシナフタレン基である請求項1または2記載の正孔輸送材料。
  4. 一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、少なくとも一層が請求項1ないし3いずれか記載の正孔輸送材料を含有する層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 一対の電極間に、少なくとも正孔注入層と発光層とを含む有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記正孔注入層が請求項1ないし3いずれか記載の正孔輸送材料を含有する層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層が請求項1ないし3いずれか記載の正孔輸送材料を含有する層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 導電性支持体上に、電荷発生材料および正孔輸送材料を使用してなる電子写真感光体において、正孔輸送材料が請求項1ないし3いずれか記載の正孔輸送材料である電子写真感光体。
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