JP3574879B2 - 二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、二輪車のエキゾーストパイプシステムの被覆構造に関し、詳しくは、エキゾーストパイプシステムにおける集合部ないしテールパイプの外周部に設けられる被覆構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のエンジンは、座席下方に設けられており、このエンジンの排気ポートから排出される排気ガスが、エキゾーストパイプシステムを介してサイレンサーに導かれ、車体後方に向けて排出される。
【0003】
たとえば、複数の気筒を備えるエンジンのエキゾーストパイプシステムは、エンジンに設けられる各排気ポートから下方に向けて延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備えて構成されている。
【0004】
上記集合部は、上記前部排気パイプの後端部に溶接等によって接合される一方、上記テールパイプおよびサイレンサーは、端部が着脱可能に嵌め合わされ、運転中に車体からはずれないように、バネ等によって互いに係着されている。
【0005】
上記エキゾーストパイプシステムの内部には、エンジンから排出される高温の排気ガスが流動しているため、エキゾーストパイプシステムを構成する各部の外面が高温になる。特に、乗員の足が載置される車体中央部下方には、上記集合部およびテールパイプが設けられるため、これら部位に足が接触すると火傷をする危険もある。
【0006】
また、これらの部分は外面が高温になるためよごれ易く、表面が変色することも多い。しかも、外面に塗料等を塗着して装飾を施すことも困難である。
【0007】
このため、たとえば、実開平2−97185号公報に記載されているもののように、排気パイプ自体に断熱構造を形成したものがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、車体前部ないし側部に大きな車体カバーを設け、表面に種々の模様や色彩を施して、斬新なデザインを採用したものが多い。これら車体カバーには、樹脂材料が採用されることが多い。
【0009】
ところが、エンジンからサイレンサーに至るエキゾーストパイプシステムは、その外周部が高温になるため、熱に弱い樹脂製のカバーを設けるのは困難である。
【0010】
エキゾーストパイプのうち、前部排気パイプは、車体側部等に設けられるカバーによってほとんどの部分が覆われてしまうため、車体のデザインを損なうことは少ない。
【0011】
また、サイレンサーは車体後部側方に露出状態で配置されるが、、エンジンから遠く離れているとともに消音材料が内部に充填されて外周部の温度がそれほど高くなることはない。このため、サイレンサー外周部に樹脂製カバーを設けて見栄えを向上させたものも多い。
【0012】
したがって、前部排気パイプとサイレンサーとの間に配置される集合部ないしテールパイプが金属表面を露出したままの状態で放置されることになる。しかも、集合部ないしテールパイプは、乗員の座席下方に位置するため、大きなカバーを設けると、乗員の乗降に邪魔になるだけでなく車体外観の見栄えに悪影響がでてしまう。
【0013】
この結果、上記集合部ないしテールパイプの部分がデザイン的に取り残され、車体全体のデザイン性を低下させるという問題があった。
【0014】
しかも、上記集合部ないしテールパイプは、乗員の足が載置される部分の近傍に位置するため、乗員の足が誤って接触することも多く、この部分で火傷をすることも多かった。
【0015】
本願発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、上記従来の問題を解決し、集合部ないしテールパイプを、大きな空間をとることなく樹脂製カバーで被覆して車体外観を向上させ、しかも、集合部ないしテールパイプの外面の温度を低下させて火傷を防止することのできる、二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造を提供することをその課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願発明では次の技術的手段を講じている。
【0017】
本願の請求項1に記載した発明は、エンジン排気ポートから延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備える二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造であって、内部に強化繊維編成シートを備える繊維強化樹脂で形成されているとともに、上記強化繊維編成シートの編み目模様を、外側から透視できるように構成された樹脂製カバーを、上記集合部ないしテールパイプの一部又は全部の外周部に、断熱構造を介して設けたことを特徴とする。
【0018】
本願の請求項2に記載した発明は、上記断熱構造が、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置したことを特徴とする。
【0019】
本願の請求項3に記載した発明は、上記樹脂製カバーが、集合部ないしテールパイプの軸線に沿って分割可能なパイプ状に形成されているとともに、前後端部が、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成された鍔部に止着されていることを特徴とする。
【0020】
本願の請求項4に記載した発明は、上記集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に環状閉空間を形成したことを特徴とする。
【0021】
本願の請求項5に記載した発明は、上記樹脂製カバーの内面に、断熱層が一体形成されていることを特徴とする。
【0022】
本願の請求項6に記載した発明は、上記樹脂製カバーが、サイレンサーの外周部に設けられる樹脂製カバーと一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本願の請求項7に記載した発明は、エンジン排気ポートから延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備える二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造であって、上記集合部ないしテールパイプの一部又は全部の外周部に、断熱構造を介して樹脂製カバーを設ける一方、上記集合部の管路内面を上記テールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に、環状閉空間を形成したことを特徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本願発明は、二輪車のエキゾーストパイプにおける集合部ないしテールパイプの外周に樹脂製カバーを設け、車体外観の見栄えを向上させるとともに、これら部位の表面温度を下げて、火傷を防止しようとするものである。
【0025】
一般に、排気ポートにおける排気温度は、700℃〜900℃であり、前部排気パイプを通過する間に冷却されて、集合部ないしテールパイプにおける排気温度は、400℃〜500℃程度になっている。
【0026】
したがって、集合部ないしテールパイプの外面温度は、少なくとも200℃を超え、樹脂製カバーを直接取り付けることは不可能である。
【0027】
本願発明は、上記集合部ないしテールパイプの外周部に、断熱構造を介して樹脂製カバーを設ける。なお、樹脂製カバーを設ける部位は、外観デザイン等の必要に応じて上記集合部ないしテールパイプの一部または全部に設けることができる。
【0028】
断熱構造を介して樹脂製カバーを設けるため、樹脂製カバーが上記集合部ないしテールパイプの外面に直接接触することはない。したがって、樹脂製カバーが熱で溶けたり、変形したり、変色したりするのを有効に防止することができる。
【0029】
また、断熱構造を設けることにより、上記集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーとを大きく離間させる必要がなくなる。したがって、上記集合部ないしテールパイプの外周部に沿うコンパクトな樹脂製カバーを設けることが可能となる。
【0030】
また、上記集合部ないしテールパイプに樹脂製カバーを設けることにより、これらの部位が外部に直接露出することがなくなる。このため、車体の見栄えが大幅に向上する。
【0031】
さらに、本願発明では、上記樹脂製カバーとして、機械的強度、耐久性等の高い繊維強化樹脂を採用する。繊維強化樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等で機械的強度等を強化した材料であり、機械的強度のみならず寸法安定性が高く、また耐熱性を高めることもできる。しかも、強化繊維編成シートの編み目模様を、樹脂製カバーの外側から透視できるように構成することにより、いままでにない高級感のある美観を得ることも可能となる。
【0032】
また、樹脂製カバーの表面温度が低くなるため、乗員の足が誤って接触した場合にも、火傷をするのを有効に防止することができる。
【0033】
さらに、上記集合部ないしテールパイプ部分において排気ガスの温度が低下しないことから、高速域でエンジン出力がのびる効果も期待できる。
【0034】
本願発明に係る断熱構造は、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバー内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置することにより構成することができる。
【0035】
上記断熱材を、集合部ないしテールパイプの外周部に被覆等することにより、断熱被覆層を容易に形成することができる。これにより、集合部ないしテールパイプからの熱の流れを減少させて、熱が樹脂製カバーに作用するのを有効に防止することができる。
【0036】
上記断熱被覆層は、種々の断熱材を集合部ないしテールパイプの外周部に貼着等することにより形成することができる。断熱材として、たとえば、石綿シート、セラミックシート、耐熱グラスウール等のシート材、石綿系断熱被覆材、セメントモルタル系断熱被覆材等を採用することができる。
【0037】
さらに、上記断熱被覆層の外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱材が充填されていない閉空間を設けることにより断熱効果をさらに高めることができる。空気が充填された閉空間は高い断熱性能を備えるとともに、重量が少ない。このため、断熱効果を高めつつ軽量化を図ることもできる。
【0038】
これにより、長時間の運転によって断熱被覆層の表面温度が上昇しても、樹脂カバーの内面に作用する温度を低く抑えることが可能となる。
【0039】
上記構成によって、樹脂カバーの美麗な表面を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0040】
上記集合部ないしテールパイプは、車体の構造等によって不定型に湾曲させられている場合が多い。このため、上記樹脂製カバーは、集合部ないしテールパイプの軸線に沿って分割可能なパイプ状に形成するのが好ましい。これにより、樹脂製カバーの取付け作業を容易に行うことができる。
【0041】
また、樹脂製カバーの前後端部を、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成した鍔部に止着するのが望ましい。集合部ないしテールパイプの外面から離れた鍔部に樹脂製カバーを止着することにより熱の影響をさらに小さくすることができる。また、上記鍔部を設けることにより、樹脂製カバーを集合部ないしテールパイプの外面から離間して設けることが可能となり、上記断熱空間を容易に形成することができる。
【0042】
エキゾーストパイプシステムにおいては、前方にいくほど外面温度が高くなる。このため、上記樹脂製カバーの少なくとも前端部は、断熱材を介して上記鍔部に止着することが望ましい。
【0043】
さらに、上記樹脂製カバーを確実に止着するため、環状の鍔部を設けるのが好ましい。
【0044】
上記集合部とテールパイプの接合部近傍においては、各前部排気パイプを流動する排気ガスが集合させられて管路の断面積が減少し、管路内面近傍の流速が高まる。このため、上記接合部近傍の外面温度が高くなる。
【0045】
しかも、従来の構造においては、この部分に集合部とテールパイプを接合するための段差等が生じることが多く、この部分に排気ガスが衝突して接合部の外面温度をさらに上昇させていた。
【0046】
本願発明においては、上記集合部とテールパイプの接合部に、上記集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に環状閉空間を形成する。
【0047】
上記案内部を設けることによって、集合部の後部内面をテールパイプ前部内面に滑らかに連続させることができる。このため、排気ガスが上記接合部において段差等に衝突することはなくなる。したがって、集合部ないしテールパイプの外面温度をさらに低下させることができる。
【0048】
しかも、排気ガスをスムーズに流すことができるため、排気効率が高まり、エンジン性能の向上も期待することができる。
【0049】
上記環状閉空間は、温度が最も高くなる上記集合部とテールパイプの接合部において断熱構造を構成し、接合部の外周温度の上昇を有効に防止することができる。
【0050】
上記環状閉空間は、たとえば、集合部の後端部あるいはテールパイプの前端部を二重構造にする等して容易に形成することができる。また、集合部の後端部をテールパイプの前端部に所定の環状空間を介して突入させて接続する等によっても形成することができる。上記環状閉空間は、排気ガスの排気流路から独立して形成されているため断熱性が高く、外周温度の上昇を有効に防止することができる。
【0051】
さらに、樹脂カバー自体の耐熱性を向上させるため、上記樹脂製カバーの内面に、断熱層を一体形成することができる。
【0052】
上記断熱層は、樹脂カバーの内面に断熱材を貼着したり塗着したりすることによって形成することができる。
【0053】
上記断熱材として、樹脂に対する接着性の高いものを選定する必要があり、たとえば、石綿等のセラミック系断熱被覆材、樹脂セメントモルタル等のセメント系断熱被覆材等を採用することができる。
【0054】
上記樹脂製カバーとして、機械的強度、耐久性等の高い繊維強化樹脂を採用するのが望ましい。繊維強化樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等で機械的強度等を強化した材料であり、機械的強度のみならず寸法安定性が高く、また耐熱性を高めることもできる。
【0056】
さらにまた、従来は、上記集合部ないしテールパイプとサイレンサーとは熱的な影響からも別個のものとして考えられており、デザイン的にも統一されていなかった。
【0057】
本願発明においては、上記集合部ないしテールパイプにおける外面の温度を低下させることが可能となるため、上記樹脂製カバーを、サイレンサーの外周部に設けられる樹脂製カバーと一体的に連続形成することも可能となる。
【0058】
したがって、デザイン的に統一された優れた美観を備えるエキゾーストパイプシステムを構成することが可能となる。
【0059】
【実施例】
以下、本願発明に係る実施例を図に基づいて具体的に説明する。
【0060】
図1は本願発明に係るエキゾーストパイプシステムを適用した自動二輪車の外観を示す斜視図である。また、図2は、エキゾーストパイプシステムの要部およびサイレンサーの外観を示す斜視図である。
【0061】
図1及び図2に示すように、自動二輪車のエキゾーストパイプシステム1は、エンジン2の排気ポートからそれぞれ延出する複数の前部排気パイプ3,4,5,6と、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部7と、この集合部7から車体後方に延びて後端部がサイレンサー9に接続されるテールパイプ部8とを備える。
【0062】
上記集合部7の前端部は、上記前部排気パイプ3,4,5,6の後端部に溶接等によって接合される一方、後端部に上記テールパイプ部8の前端部が着脱可能に套挿され、バネによって互いに係着されている。
【0063】
上記テールパイプ部8の後端部はサイレンサー9の前端部に着脱可能に挿入されるとともに、運転中に車体からはずれないように、バネによって互いに係着されている。
【0064】
上記集合部7ないしテールパイプ部8は、図1に示すように、座席シート10の下方に設けられており、乗員の足が接触しやすい。
【0065】
本実施例に係るエキゾーストパイプシステム1の被覆構造は、上記テールパイプ部8の外周部に設けられている。
【0066】
図3は、図2におけるIII −III 線に沿う断面図である。この図に示すように、本実施例に係る断熱構造は、ステンレス製テールパイプ11の外面と樹脂製カバー12の内面との間に筒状の断熱空間13を設けるとともに、この断熱空間内において上記テールパイプ11の外周に石綿シートからなる断熱材14を貼着することにより構成されている。
【0067】
さらに、断熱材14の外面と樹脂製カバー12の内面との間には、断熱材が充填されていない筒状の隙間15が設けられている。
【0068】
上記断熱材14と上記筒状の隙間15とを設けることによって、テールパイプ11の外周面が高温になっても、樹脂製カバー12の内面に熱が伝わるのを防止することが可能となる。
【0069】
上記樹脂製カバー12は、図3に示すように、テールパイプ11の軸線に沿って二つに分割可能なパイプ状に形成されているとともに、図4及び図5に示すように、前後端部が、テールパイプ11の前後端部に延出形成された環状の鍔部16,16に断熱材17,17を介して止着されている。
【0070】
実施例においては、上記鍔部16,16の外周部に環状の取付け凹部を形成して、上記樹脂製カバー12の両端部を差し込むようにして止着している。
【0071】
なお、樹脂製カバー12の止着構造は実施例に限定されることはなく、たとえば、リベット等によって鍔部に止着することもできる。
【0072】
上記構成によって、上記樹脂製カバー12のテールパイプ11に対する止着部分に熱が作用するのを有効に防止することが可能となり、取付け部分が変形したり、変色したりするのを有効に防止することができる。
【0073】
なお、実施例においては、樹脂製カバー12の前後端部を断熱材17,17を介して上記凹部に止着したが、前端の止着部位のみに断熱材17を設けることもできる。
【0074】
後方の止着部位は、サイレンサー9に流入する部分にあたるため管路が拡大しており、排気ガスの温度が低下しているものと考えられるためである。
【0075】
さらに、図4に示すように、上記集合部7の管路内面をテールパイプ11の管路内面に滑らかに接続させる案内部20を設けるとともに、この案内部20の外周に環状閉空間18を形成している。
【0076】
上記案内部20は、集合部7の後方内面にロート状のパイプ19を接合して形成されているとともに、上記パイプ19の外周部に上記環状閉空間18が形成されている。
【0077】
上記案内部20は、上記集合部7の後方内面から上記テールパイプ11の前方内面へ向けて排気管路を滑らかに連続させている。このため、接合部分において排気ガスの流れがスムーズになり、接合部における温度上昇を防止することができる。
【0078】
さらに、排気がスムーズになることから、エンジンの特性を向上させることも期待できる。
【0079】
上記環状閉空間18を形成することによって、上記集合部7とテールパイプ11の接合部に断熱構造を構成できる。このため、熱が接合部の外面等に伝わるのを有効に防止し、樹脂製カバー12の取付け部分等に熱が作用するのを防止することが可能となる。
【0080】
さらに図6に示すように、樹脂製カバー12の内面に断熱層22を一体的に形成することができる。
【0081】
上記断熱層22を形成することによって、樹脂製カバー12自体の耐熱性を格段に向上させることができる。
【0082】
上記断熱層22には、石綿系断熱被覆材あるいは樹脂モルタル系断熱被覆材等を樹脂製カバー12の内面に塗着等することによって容易に形成することができる。
【0083】
また、上記樹脂製カバー12を透明に形成する一方、上記断熱層22を構成する断熱被覆材に色彩等を施すことによって、樹脂製カバー12に着色を施すことができる。
【0084】
これにより、熱等の影響によって変色しにくい着色を施すことができるとともに、カバー内面に色彩を施すという従来にない外観を備える被覆構造を提供することができる。
【0085】
樹脂製カバー12として、炭素繊維シートによって強化したポリエステル強化樹脂を採用するのが望ましい。炭素繊維シートを採用することにより、耐熱性及び熱に対する寸法安定性が向上する。
【0086】
さらに、上記炭素繊維シートの編み目模様を樹脂製カバーの外側から透視できるように構成することによって、樹脂製カバー12のデザインを斬新なものとすることができる。
【0087】
また、図7に示すように、上記テールパイプ部8からサイレンサー9まで、一体的なカバー21を形成することにより、いままでにない外観を備えるエキゾーストパイプシステムを構成することができる。
【0088】
また、サイレンサー9と集合部ないしテールパイプ部8とを一体的に取り扱うことが可能となり、組み付け作業性も改善される。
【0089】
本願発明は上記実施例に限定されることはない。実施例においては、テールパイプの外周全体に樹脂製カバーを設けたが、外部から見える部分にのみ樹脂製カバーを設けることもできる。
【0090】
また、実施例においては、テールパイプの外周にのみ樹脂製カバーを設けたが、集合部ないしテールパイプ部の全体に樹脂製カバーを設けることもできる。
【0091】
また、断熱材も実施例に限定されることはなく、種々のものを採用できる。
【0092】
【発明の効果】
上述したように、集合部ないしテールパイプの外周部に断熱構造を介して樹脂製カバーを設けることにより、樹脂製カバーが変形したり、変色したりするのを有効に防止できる。特に、繊維強化樹脂から形成された樹脂製カバーを採用し、その強化繊維編成シートの編み目模様を、外側から透視できるように構成することにより、機械的強度、耐熱性を高めることができるばかりでなく、いままでにない高級感のある二輪車用エキゾーストパイプシステムを形成することができる。
【0093】
集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置することにより、少ないスペースで高い断熱効果を発揮させることができる。したがって、上記集合部ないしテールパイプに沿ったコンパクトな樹脂製カバーを装着することが可能となる。
【0094】
上記樹脂製カバーの前後端部を、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成した鍔部に止着することにより、樹脂製カバーの止着部分に熱が作用するのを有効に防止できる。また、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に、断熱空間を形成することができる。
【0095】
さらに、集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けることにより排気ガスをスムーズに流動させ、接合部分外面温度を低下させることができる。
【0096】
また、上記接合部に環状閉空間を設けることにより、さらに断熱効果を高めることができる。
【0097】
また、樹脂製カバーの内面に断熱層を一体形成することにより、樹脂製カバーの耐熱性自体を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る被覆構造を適用した自動二輪車の外観斜視図である。
【図2】本願発明に係る被覆構造を適用したエキゾーストパイプシステムの要部を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2におけるV−V線に沿う断面図である。
【図6】他の実施例における図3に相当する断面図である。
【図7】エキゾーストパイプシステムの他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 エキゾーストパイプシステム
3 前部排気パイプ
4 前部排気パイプ
5 前部排気パイプ
6 前部排気パイプ
7 集合部
8 テールパイプ部
9 サイレンサー
11 テールパイプ
12 樹脂製カバー
13 断熱空間
14 断熱材
16 鍔部
17 断熱材
18 環状閉空間
20 案内部
22 断熱層
【発明の属する技術分野】
本願発明は、二輪車のエキゾーストパイプシステムの被覆構造に関し、詳しくは、エキゾーストパイプシステムにおける集合部ないしテールパイプの外周部に設けられる被覆構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のエンジンは、座席下方に設けられており、このエンジンの排気ポートから排出される排気ガスが、エキゾーストパイプシステムを介してサイレンサーに導かれ、車体後方に向けて排出される。
【0003】
たとえば、複数の気筒を備えるエンジンのエキゾーストパイプシステムは、エンジンに設けられる各排気ポートから下方に向けて延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備えて構成されている。
【0004】
上記集合部は、上記前部排気パイプの後端部に溶接等によって接合される一方、上記テールパイプおよびサイレンサーは、端部が着脱可能に嵌め合わされ、運転中に車体からはずれないように、バネ等によって互いに係着されている。
【0005】
上記エキゾーストパイプシステムの内部には、エンジンから排出される高温の排気ガスが流動しているため、エキゾーストパイプシステムを構成する各部の外面が高温になる。特に、乗員の足が載置される車体中央部下方には、上記集合部およびテールパイプが設けられるため、これら部位に足が接触すると火傷をする危険もある。
【0006】
また、これらの部分は外面が高温になるためよごれ易く、表面が変色することも多い。しかも、外面に塗料等を塗着して装飾を施すことも困難である。
【0007】
このため、たとえば、実開平2−97185号公報に記載されているもののように、排気パイプ自体に断熱構造を形成したものがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、車体前部ないし側部に大きな車体カバーを設け、表面に種々の模様や色彩を施して、斬新なデザインを採用したものが多い。これら車体カバーには、樹脂材料が採用されることが多い。
【0009】
ところが、エンジンからサイレンサーに至るエキゾーストパイプシステムは、その外周部が高温になるため、熱に弱い樹脂製のカバーを設けるのは困難である。
【0010】
エキゾーストパイプのうち、前部排気パイプは、車体側部等に設けられるカバーによってほとんどの部分が覆われてしまうため、車体のデザインを損なうことは少ない。
【0011】
また、サイレンサーは車体後部側方に露出状態で配置されるが、、エンジンから遠く離れているとともに消音材料が内部に充填されて外周部の温度がそれほど高くなることはない。このため、サイレンサー外周部に樹脂製カバーを設けて見栄えを向上させたものも多い。
【0012】
したがって、前部排気パイプとサイレンサーとの間に配置される集合部ないしテールパイプが金属表面を露出したままの状態で放置されることになる。しかも、集合部ないしテールパイプは、乗員の座席下方に位置するため、大きなカバーを設けると、乗員の乗降に邪魔になるだけでなく車体外観の見栄えに悪影響がでてしまう。
【0013】
この結果、上記集合部ないしテールパイプの部分がデザイン的に取り残され、車体全体のデザイン性を低下させるという問題があった。
【0014】
しかも、上記集合部ないしテールパイプは、乗員の足が載置される部分の近傍に位置するため、乗員の足が誤って接触することも多く、この部分で火傷をすることも多かった。
【0015】
本願発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、上記従来の問題を解決し、集合部ないしテールパイプを、大きな空間をとることなく樹脂製カバーで被覆して車体外観を向上させ、しかも、集合部ないしテールパイプの外面の温度を低下させて火傷を防止することのできる、二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造を提供することをその課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願発明では次の技術的手段を講じている。
【0017】
本願の請求項1に記載した発明は、エンジン排気ポートから延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備える二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造であって、内部に強化繊維編成シートを備える繊維強化樹脂で形成されているとともに、上記強化繊維編成シートの編み目模様を、外側から透視できるように構成された樹脂製カバーを、上記集合部ないしテールパイプの一部又は全部の外周部に、断熱構造を介して設けたことを特徴とする。
【0018】
本願の請求項2に記載した発明は、上記断熱構造が、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置したことを特徴とする。
【0019】
本願の請求項3に記載した発明は、上記樹脂製カバーが、集合部ないしテールパイプの軸線に沿って分割可能なパイプ状に形成されているとともに、前後端部が、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成された鍔部に止着されていることを特徴とする。
【0020】
本願の請求項4に記載した発明は、上記集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に環状閉空間を形成したことを特徴とする。
【0021】
本願の請求項5に記載した発明は、上記樹脂製カバーの内面に、断熱層が一体形成されていることを特徴とする。
【0022】
本願の請求項6に記載した発明は、上記樹脂製カバーが、サイレンサーの外周部に設けられる樹脂製カバーと一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本願の請求項7に記載した発明は、エンジン排気ポートから延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備える二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造であって、上記集合部ないしテールパイプの一部又は全部の外周部に、断熱構造を介して樹脂製カバーを設ける一方、上記集合部の管路内面を上記テールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に、環状閉空間を形成したことを特徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本願発明は、二輪車のエキゾーストパイプにおける集合部ないしテールパイプの外周に樹脂製カバーを設け、車体外観の見栄えを向上させるとともに、これら部位の表面温度を下げて、火傷を防止しようとするものである。
【0025】
一般に、排気ポートにおける排気温度は、700℃〜900℃であり、前部排気パイプを通過する間に冷却されて、集合部ないしテールパイプにおける排気温度は、400℃〜500℃程度になっている。
【0026】
したがって、集合部ないしテールパイプの外面温度は、少なくとも200℃を超え、樹脂製カバーを直接取り付けることは不可能である。
【0027】
本願発明は、上記集合部ないしテールパイプの外周部に、断熱構造を介して樹脂製カバーを設ける。なお、樹脂製カバーを設ける部位は、外観デザイン等の必要に応じて上記集合部ないしテールパイプの一部または全部に設けることができる。
【0028】
断熱構造を介して樹脂製カバーを設けるため、樹脂製カバーが上記集合部ないしテールパイプの外面に直接接触することはない。したがって、樹脂製カバーが熱で溶けたり、変形したり、変色したりするのを有効に防止することができる。
【0029】
また、断熱構造を設けることにより、上記集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーとを大きく離間させる必要がなくなる。したがって、上記集合部ないしテールパイプの外周部に沿うコンパクトな樹脂製カバーを設けることが可能となる。
【0030】
また、上記集合部ないしテールパイプに樹脂製カバーを設けることにより、これらの部位が外部に直接露出することがなくなる。このため、車体の見栄えが大幅に向上する。
【0031】
さらに、本願発明では、上記樹脂製カバーとして、機械的強度、耐久性等の高い繊維強化樹脂を採用する。繊維強化樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等で機械的強度等を強化した材料であり、機械的強度のみならず寸法安定性が高く、また耐熱性を高めることもできる。しかも、強化繊維編成シートの編み目模様を、樹脂製カバーの外側から透視できるように構成することにより、いままでにない高級感のある美観を得ることも可能となる。
【0032】
また、樹脂製カバーの表面温度が低くなるため、乗員の足が誤って接触した場合にも、火傷をするのを有効に防止することができる。
【0033】
さらに、上記集合部ないしテールパイプ部分において排気ガスの温度が低下しないことから、高速域でエンジン出力がのびる効果も期待できる。
【0034】
本願発明に係る断熱構造は、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバー内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置することにより構成することができる。
【0035】
上記断熱材を、集合部ないしテールパイプの外周部に被覆等することにより、断熱被覆層を容易に形成することができる。これにより、集合部ないしテールパイプからの熱の流れを減少させて、熱が樹脂製カバーに作用するのを有効に防止することができる。
【0036】
上記断熱被覆層は、種々の断熱材を集合部ないしテールパイプの外周部に貼着等することにより形成することができる。断熱材として、たとえば、石綿シート、セラミックシート、耐熱グラスウール等のシート材、石綿系断熱被覆材、セメントモルタル系断熱被覆材等を採用することができる。
【0037】
さらに、上記断熱被覆層の外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱材が充填されていない閉空間を設けることにより断熱効果をさらに高めることができる。空気が充填された閉空間は高い断熱性能を備えるとともに、重量が少ない。このため、断熱効果を高めつつ軽量化を図ることもできる。
【0038】
これにより、長時間の運転によって断熱被覆層の表面温度が上昇しても、樹脂カバーの内面に作用する温度を低く抑えることが可能となる。
【0039】
上記構成によって、樹脂カバーの美麗な表面を長期間にわたって保持することが可能となる。
【0040】
上記集合部ないしテールパイプは、車体の構造等によって不定型に湾曲させられている場合が多い。このため、上記樹脂製カバーは、集合部ないしテールパイプの軸線に沿って分割可能なパイプ状に形成するのが好ましい。これにより、樹脂製カバーの取付け作業を容易に行うことができる。
【0041】
また、樹脂製カバーの前後端部を、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成した鍔部に止着するのが望ましい。集合部ないしテールパイプの外面から離れた鍔部に樹脂製カバーを止着することにより熱の影響をさらに小さくすることができる。また、上記鍔部を設けることにより、樹脂製カバーを集合部ないしテールパイプの外面から離間して設けることが可能となり、上記断熱空間を容易に形成することができる。
【0042】
エキゾーストパイプシステムにおいては、前方にいくほど外面温度が高くなる。このため、上記樹脂製カバーの少なくとも前端部は、断熱材を介して上記鍔部に止着することが望ましい。
【0043】
さらに、上記樹脂製カバーを確実に止着するため、環状の鍔部を設けるのが好ましい。
【0044】
上記集合部とテールパイプの接合部近傍においては、各前部排気パイプを流動する排気ガスが集合させられて管路の断面積が減少し、管路内面近傍の流速が高まる。このため、上記接合部近傍の外面温度が高くなる。
【0045】
しかも、従来の構造においては、この部分に集合部とテールパイプを接合するための段差等が生じることが多く、この部分に排気ガスが衝突して接合部の外面温度をさらに上昇させていた。
【0046】
本願発明においては、上記集合部とテールパイプの接合部に、上記集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に環状閉空間を形成する。
【0047】
上記案内部を設けることによって、集合部の後部内面をテールパイプ前部内面に滑らかに連続させることができる。このため、排気ガスが上記接合部において段差等に衝突することはなくなる。したがって、集合部ないしテールパイプの外面温度をさらに低下させることができる。
【0048】
しかも、排気ガスをスムーズに流すことができるため、排気効率が高まり、エンジン性能の向上も期待することができる。
【0049】
上記環状閉空間は、温度が最も高くなる上記集合部とテールパイプの接合部において断熱構造を構成し、接合部の外周温度の上昇を有効に防止することができる。
【0050】
上記環状閉空間は、たとえば、集合部の後端部あるいはテールパイプの前端部を二重構造にする等して容易に形成することができる。また、集合部の後端部をテールパイプの前端部に所定の環状空間を介して突入させて接続する等によっても形成することができる。上記環状閉空間は、排気ガスの排気流路から独立して形成されているため断熱性が高く、外周温度の上昇を有効に防止することができる。
【0051】
さらに、樹脂カバー自体の耐熱性を向上させるため、上記樹脂製カバーの内面に、断熱層を一体形成することができる。
【0052】
上記断熱層は、樹脂カバーの内面に断熱材を貼着したり塗着したりすることによって形成することができる。
【0053】
上記断熱材として、樹脂に対する接着性の高いものを選定する必要があり、たとえば、石綿等のセラミック系断熱被覆材、樹脂セメントモルタル等のセメント系断熱被覆材等を採用することができる。
【0054】
上記樹脂製カバーとして、機械的強度、耐久性等の高い繊維強化樹脂を採用するのが望ましい。繊維強化樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等で機械的強度等を強化した材料であり、機械的強度のみならず寸法安定性が高く、また耐熱性を高めることもできる。
【0056】
さらにまた、従来は、上記集合部ないしテールパイプとサイレンサーとは熱的な影響からも別個のものとして考えられており、デザイン的にも統一されていなかった。
【0057】
本願発明においては、上記集合部ないしテールパイプにおける外面の温度を低下させることが可能となるため、上記樹脂製カバーを、サイレンサーの外周部に設けられる樹脂製カバーと一体的に連続形成することも可能となる。
【0058】
したがって、デザイン的に統一された優れた美観を備えるエキゾーストパイプシステムを構成することが可能となる。
【0059】
【実施例】
以下、本願発明に係る実施例を図に基づいて具体的に説明する。
【0060】
図1は本願発明に係るエキゾーストパイプシステムを適用した自動二輪車の外観を示す斜視図である。また、図2は、エキゾーストパイプシステムの要部およびサイレンサーの外観を示す斜視図である。
【0061】
図1及び図2に示すように、自動二輪車のエキゾーストパイプシステム1は、エンジン2の排気ポートからそれぞれ延出する複数の前部排気パイプ3,4,5,6と、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部7と、この集合部7から車体後方に延びて後端部がサイレンサー9に接続されるテールパイプ部8とを備える。
【0062】
上記集合部7の前端部は、上記前部排気パイプ3,4,5,6の後端部に溶接等によって接合される一方、後端部に上記テールパイプ部8の前端部が着脱可能に套挿され、バネによって互いに係着されている。
【0063】
上記テールパイプ部8の後端部はサイレンサー9の前端部に着脱可能に挿入されるとともに、運転中に車体からはずれないように、バネによって互いに係着されている。
【0064】
上記集合部7ないしテールパイプ部8は、図1に示すように、座席シート10の下方に設けられており、乗員の足が接触しやすい。
【0065】
本実施例に係るエキゾーストパイプシステム1の被覆構造は、上記テールパイプ部8の外周部に設けられている。
【0066】
図3は、図2におけるIII −III 線に沿う断面図である。この図に示すように、本実施例に係る断熱構造は、ステンレス製テールパイプ11の外面と樹脂製カバー12の内面との間に筒状の断熱空間13を設けるとともに、この断熱空間内において上記テールパイプ11の外周に石綿シートからなる断熱材14を貼着することにより構成されている。
【0067】
さらに、断熱材14の外面と樹脂製カバー12の内面との間には、断熱材が充填されていない筒状の隙間15が設けられている。
【0068】
上記断熱材14と上記筒状の隙間15とを設けることによって、テールパイプ11の外周面が高温になっても、樹脂製カバー12の内面に熱が伝わるのを防止することが可能となる。
【0069】
上記樹脂製カバー12は、図3に示すように、テールパイプ11の軸線に沿って二つに分割可能なパイプ状に形成されているとともに、図4及び図5に示すように、前後端部が、テールパイプ11の前後端部に延出形成された環状の鍔部16,16に断熱材17,17を介して止着されている。
【0070】
実施例においては、上記鍔部16,16の外周部に環状の取付け凹部を形成して、上記樹脂製カバー12の両端部を差し込むようにして止着している。
【0071】
なお、樹脂製カバー12の止着構造は実施例に限定されることはなく、たとえば、リベット等によって鍔部に止着することもできる。
【0072】
上記構成によって、上記樹脂製カバー12のテールパイプ11に対する止着部分に熱が作用するのを有効に防止することが可能となり、取付け部分が変形したり、変色したりするのを有効に防止することができる。
【0073】
なお、実施例においては、樹脂製カバー12の前後端部を断熱材17,17を介して上記凹部に止着したが、前端の止着部位のみに断熱材17を設けることもできる。
【0074】
後方の止着部位は、サイレンサー9に流入する部分にあたるため管路が拡大しており、排気ガスの温度が低下しているものと考えられるためである。
【0075】
さらに、図4に示すように、上記集合部7の管路内面をテールパイプ11の管路内面に滑らかに接続させる案内部20を設けるとともに、この案内部20の外周に環状閉空間18を形成している。
【0076】
上記案内部20は、集合部7の後方内面にロート状のパイプ19を接合して形成されているとともに、上記パイプ19の外周部に上記環状閉空間18が形成されている。
【0077】
上記案内部20は、上記集合部7の後方内面から上記テールパイプ11の前方内面へ向けて排気管路を滑らかに連続させている。このため、接合部分において排気ガスの流れがスムーズになり、接合部における温度上昇を防止することができる。
【0078】
さらに、排気がスムーズになることから、エンジンの特性を向上させることも期待できる。
【0079】
上記環状閉空間18を形成することによって、上記集合部7とテールパイプ11の接合部に断熱構造を構成できる。このため、熱が接合部の外面等に伝わるのを有効に防止し、樹脂製カバー12の取付け部分等に熱が作用するのを防止することが可能となる。
【0080】
さらに図6に示すように、樹脂製カバー12の内面に断熱層22を一体的に形成することができる。
【0081】
上記断熱層22を形成することによって、樹脂製カバー12自体の耐熱性を格段に向上させることができる。
【0082】
上記断熱層22には、石綿系断熱被覆材あるいは樹脂モルタル系断熱被覆材等を樹脂製カバー12の内面に塗着等することによって容易に形成することができる。
【0083】
また、上記樹脂製カバー12を透明に形成する一方、上記断熱層22を構成する断熱被覆材に色彩等を施すことによって、樹脂製カバー12に着色を施すことができる。
【0084】
これにより、熱等の影響によって変色しにくい着色を施すことができるとともに、カバー内面に色彩を施すという従来にない外観を備える被覆構造を提供することができる。
【0085】
樹脂製カバー12として、炭素繊維シートによって強化したポリエステル強化樹脂を採用するのが望ましい。炭素繊維シートを採用することにより、耐熱性及び熱に対する寸法安定性が向上する。
【0086】
さらに、上記炭素繊維シートの編み目模様を樹脂製カバーの外側から透視できるように構成することによって、樹脂製カバー12のデザインを斬新なものとすることができる。
【0087】
また、図7に示すように、上記テールパイプ部8からサイレンサー9まで、一体的なカバー21を形成することにより、いままでにない外観を備えるエキゾーストパイプシステムを構成することができる。
【0088】
また、サイレンサー9と集合部ないしテールパイプ部8とを一体的に取り扱うことが可能となり、組み付け作業性も改善される。
【0089】
本願発明は上記実施例に限定されることはない。実施例においては、テールパイプの外周全体に樹脂製カバーを設けたが、外部から見える部分にのみ樹脂製カバーを設けることもできる。
【0090】
また、実施例においては、テールパイプの外周にのみ樹脂製カバーを設けたが、集合部ないしテールパイプ部の全体に樹脂製カバーを設けることもできる。
【0091】
また、断熱材も実施例に限定されることはなく、種々のものを採用できる。
【0092】
【発明の効果】
上述したように、集合部ないしテールパイプの外周部に断熱構造を介して樹脂製カバーを設けることにより、樹脂製カバーが変形したり、変色したりするのを有効に防止できる。特に、繊維強化樹脂から形成された樹脂製カバーを採用し、その強化繊維編成シートの編み目模様を、外側から透視できるように構成することにより、機械的強度、耐熱性を高めることができるばかりでなく、いままでにない高級感のある二輪車用エキゾーストパイプシステムを形成することができる。
【0093】
集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置することにより、少ないスペースで高い断熱効果を発揮させることができる。したがって、上記集合部ないしテールパイプに沿ったコンパクトな樹脂製カバーを装着することが可能となる。
【0094】
上記樹脂製カバーの前後端部を、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成した鍔部に止着することにより、樹脂製カバーの止着部分に熱が作用するのを有効に防止できる。また、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に、断熱空間を形成することができる。
【0095】
さらに、集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けることにより排気ガスをスムーズに流動させ、接合部分外面温度を低下させることができる。
【0096】
また、上記接合部に環状閉空間を設けることにより、さらに断熱効果を高めることができる。
【0097】
また、樹脂製カバーの内面に断熱層を一体形成することにより、樹脂製カバーの耐熱性自体を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る被覆構造を適用した自動二輪車の外観斜視図である。
【図2】本願発明に係る被覆構造を適用したエキゾーストパイプシステムの要部を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図2におけるV−V線に沿う断面図である。
【図6】他の実施例における図3に相当する断面図である。
【図7】エキゾーストパイプシステムの他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 エキゾーストパイプシステム
3 前部排気パイプ
4 前部排気パイプ
5 前部排気パイプ
6 前部排気パイプ
7 集合部
8 テールパイプ部
9 サイレンサー
11 テールパイプ
12 樹脂製カバー
13 断熱空間
14 断熱材
16 鍔部
17 断熱材
18 環状閉空間
20 案内部
22 断熱層
Claims (7)
- エンジン排気ポートから延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備える二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造であって、
内部に強化繊維編成シートを備える繊維強化樹脂で形成されているとともに、上記強化繊維編成シートの編み目模様を、外側から透視できるように構成され樹脂製カバーを、上記集合部ないしテールパイプの一部又は全部の外周部に、断熱構造を介して設けたことを特徴とする、二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造。 - 上記断熱構造は、集合部ないしテールパイプの外面と樹脂製カバーの内面との間に断熱空間を設けるとともに、この断熱空間に断熱材を配置したことを特徴とする、請求項1に記載の二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造。
- 上記樹脂製カバーは、集合部ないしテールパイプの軸線に沿って分割可能なパイプ状に形成されているとともに、前後端部が、集合部ないしテールパイプの外面に延出形成された鍔部に止着されていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造。
- 上記集合部の管路内面をテールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に環状閉空間を形成したことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造。
- 上記樹脂製カバーの内面に、断熱層が一体形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造。
- 上記樹脂製カバーが、サイレンサーの外周部に設けられる樹脂製カバーと一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の二輪車用エキゾーストパイプの被覆構造。
- エンジン排気ポートから延出する複数の前部排気パイプと、これら前部排気パイプを車体下方において集合させる集合部と、この集合部から車体後方に延びて後端部がサイレンサーに接続されるテールパイプとを備える二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造であって、
上記集合部ないしテールパイプの一部又は全部の外周部に、断熱構造を介して樹脂製カバーを設ける一方、
上記集合部の管路内面を上記テールパイプの管路内面に滑らかに接続させる案内部を設けるとともに、この案内部の外周に環状閉空間を形成したことを特徴とする、二輪車用エキゾーストパイプシステムの被覆構造。
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