JP3574793B2 - 非放射性誘電体線路およびミリ波送受信器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばミリ波等の高周波帯域で用いられる非放射性誘電体線路であって、ミリ波集積回路等に好適に使用される非放射性誘電体線路に関するものであり、また非放射性誘電体線路型のミリ波集積回路,ミリ波レーダーモジュール等のミリ波送受信器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の非放射性誘電体線路(Nonradiative Dielectric Waveguideで、以下、NRDガイドという)S1の構成を図2に示す。図2のNRDガイドS1は、使用周波数において空気中を伝搬する電磁波(高周波信号)の波長λに対して、間隔dがλ/2以下である一対の平行平板導体11、13の間に誘電体線路12を介装することにより、その誘電体線路12に沿って電磁波が伝搬でき、放射波は平行平板導体11、13の遮断効果によって抑制されるという動作原理に基づいている。
【0003】
このNRDガイドS1の電磁波伝搬モードとしては、LSMモード,LSEモードの2種類があることが知られているが、損失の小さいLSMモードが一般的に使用されている。また、NRDガイドの他のタイプとして、図3のような曲線状の誘電体線路14を設けたNRDガイドS2もあり、これにより電磁波を容易に曲線的に伝搬させることができ、ミリ波集積回路の小型化や自由度の高い回路設計ができるという利点を持っている。
【0004】
なお、図2および図3において、上側の平行平板導体13は内部を透視するように一部を切り欠くか、破線で示した。また、11は下側の平行平板導体である。
【0005】
また、従来、NRDガイドS1、S2の誘電体線路12、14の材料としては、手軽に加工できるという簡便さと低損失という点で、テフロン(登録商標),ポリスチレン等の比誘電率2〜4の樹脂材料が使われてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来用いられてきたテフロン,ポリスチレン等の比誘電率2〜4の誘電体からなる誘電体線路12、14でNRDガイドS1、S2を構成すると、曲線部での曲げ損失や、誘電体線路12、14の接合部での損失が大きいという欠点があった。このため、急峻な曲線部を設けることができなかった。また、緩やかな曲線部とした場合にも、その曲線部の曲率半径を精密に決定する必要があった。さらに、小さい曲げ損失でもって使用可能な周波数範囲が、例えば60GHz付近では1〜2GHzと十分ではなかった。これは、比誘電率が2〜4の誘電体を用いてNRDガイドS1、S2を構成した場合、上記LSMモードとLSEモードの分散曲線が非常に近いため、LSMモードの電磁波の1部がLSEモードに変換されてしまい、損失が増大するためであった。
【0007】
また、誘電体線路12、14の材料として、アルミナ(Al2O3)セラミックス等の比誘電率が10程度のセラミックスを用いたものもあるが、50GHz以上の高周波で使用するためには、誘電体線路12、14の幅を非常に細くしなければならず、加工性および実装上実用的ではない。
【0008】
また、セラミックス等の無機化合物からなる誘電体線路12、14を用いたNRDガイドにより高周波デバイス、高周波回路モジュールを作製した場合には、誘電体線路12、14に急峻な曲線部を設けることはできるが、複数の直線部と曲線部からなるような複雑形状を作製することは困難であった。さらに、平行平板導体11、13と誘電体線路12、14との熱膨張係数の差、さらには衝撃により誘電体線路12、14の破損が生じる等の問題があった。
【0009】
また、従来用いられてきたテフロン等の樹脂材料からなる誘電体線路12,14でNRDガイドを構成すると、誘電体線路12,14と平行平板導体11,13との接着が難しく、振動や熱膨張差によって誘電体線路12,14が位置ずれを起こし、正常に機能しなくなるという問題があった。
【0010】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換が少なく、従って誘電体線路に小さい曲率半径で使用周波数範囲が広い急峻な曲線部を作製することができ、その結果、ミリ波集積回路等を小型化でき、信頼性が高く、また高周波信号の損失が小さい高性能なNRDガイドを提供することである。また、このようなNRDガイドを用いることにより、高周波信号の伝送損失が小さく、小型化されたミリ波送受信器を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の非放射性誘電体線路は、高周波信号の波長λの2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に誘電体線路を介装してなる非放射性誘電体線路において、前記誘電体線路は、モル比組成式をxMgO・yAl2O3・zSiO2と表したときに、x=10〜40モル%,y=10〜40モル%,z=20〜80モル%,x+y+z=100モル%を満足する、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とするセラミックスから成り、複数の誘電体線路部分の端面同士をλ/8以下の間隔で対向させて構成されているとともにインピーダンス整合用の前記誘電体線路部分を含んでおり、前記インピーダンス整合用の前記誘電体線路部分の比誘電率は他の前記誘電体線路部分の比誘電率の1/2〜2倍であり、前記インピーダンス整合用の前記誘電体線路部分の幅は隣接する前記誘電体線路部分の幅と前記波長の8分の1以下の範囲内で相違していることを特徴とする。
【0012】
本発明のNRDガイドによれば、複数の誘電体線路部分を端面同士をλ/8以下の間隔で対向させて連続的に接続するように構成することで、直線部と曲線部とからなる複雑形状の誘電体線路を容易に作製することができる。このようにして、より自由度と信頼性が高く、小型で安価で損失が小さい高性能なNRDガイドを構成することができる。また、誘電体線路はインピーダンス整合用の誘電体線路部分を含んでおり、インピーダンス整合用の誘電体線路部分の比誘電率は他の誘電体線路部分の比誘電率の1/2〜2倍であり、そのインピーダンス整合用の誘電体線路部分の幅が隣接する誘電体線路部分の幅と波長の8分の1以下の範囲内で相違していることにより、サーキュレータ等の他の部品等との接続部でのインピーダンス整合を高精度に行うことができ、その結果、高周波信号の伝送損失が改善されるという作用効果を有する。
【0013】
本発明のミリ波送受信器は、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、高周波ダイオード発振器が一端部に付設され、前記高周波ダイオード発振器から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの接続部から入力された前記ミリ波信号を前記フェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接合されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の接続部に接合され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナを有する第3の誘電体線路と、前記送受信アンテナで受信され前記第3の誘電体線路を伝搬して前記サーキュレータの前記第3の接続部より出力した受信波をミキサー側へ伝搬させる第4の誘電体線路と、前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と前記受信波とを混合して中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、前記第1〜第4の誘電体線路のうち少なくとも一つが前記平行平板導体とともに本発明の非放射性誘電体線路を構成することを特徴とする。
【0014】
本発明のミリ波送受信器によれば、上記の構成により、信頼性が高く、高性能かつ小型のミリ波送受信器とすることができる。また、高周波信号の伝送損失が改善され、伝送特性の向上したものとなる。
【0015】
また、本発明のミリ波送受信器は、ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、高周波ダイオード発振器が一端部に付設され、前記高周波ダイオード発振器から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの接続部から入力された前記ミリ波信号を前記フェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の接続部に接続され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナを有する第3の誘電体線路と、先端部に受信アンテナ、他端部にミキサーが各々設けられた、前記受信アンテナで受信された受信波を伝搬させる第4の誘電体線路と、前記サーキュレータの前記第3の接続部に接続され、前記送信アンテナで受信混入したミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に設けられた無反射終端部で前記受信混入したミリ波信号を減衰させる第5の誘電体線路と、前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と前記受信波とを混合して中間周波信号を発生させるミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、前記第1〜5の誘電体線路のうち少なくとも一つが前記平行平板導体とともに本発明の非放射性誘電体線路を構成することを特徴とする。
【0016】
本発明のミリ波送受信器によれば、上記の構成により、信頼性が高く、高性能かつ小型のミリ波送受信器とすることができる。また、高周波信号の伝送損失が改善され、伝送特性の向上したものとなる。さらに、送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果、受信信号のノイズが低減し、ミリ波レーダーに適用した場合に探知距離が増大し、ミリ波信号の伝送特性に優れたものとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のNRDガイドについて以下に詳細に説明する。図1は本発明のNRDガイドSの斜視図であり、同図において、1、3は伝搬させる高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した下側、上側の平行平板導体、2は誘電体線路であり、複数の誘電体線路部分2a、2bの端面同士をλ/8(λは高周波信号の波長)以下の間隔で対向配置させて構成させており、2つの誘電体線路部分2a、2bの高周波信号伝搬方向に略垂直な端面同士を対向配置することにより一連のものとして構成される。
【0018】
本発明のNRDガイドSにおいて、誘電体線路2は複数の誘電体線路部分2a、2bの端面同士を対向させて構成されているとともにインピーダンス整合用の誘電体線路部分(例えば誘電体線路部分2b)を含んでおり、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの幅(W+L)は隣接する誘電体線路部分2aの幅(W)とλ/8以下(L)の範囲内で相違している。
【0019】
インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの幅と隣接する誘電体線路部分2aの幅との差Lがλ/8よりも大きいと、高周波信号の伝送損失が大きくなるからである。誘電体線路部分2a、2bの個数を増加させたり、さらなる低伝送損失を求める場合には、幅の差Lをλ/16以下にすることが好ましい。なお、幅の差Lについては、大きくしてもよく(W+Lとする)、または小さくしてもよい(W−Lとする)。
【0020】
また、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bと誘電体線路部分2aとは、それらの伝送方向の中心軸が合致した状態で幅が相違していることが好ましい。この場合、高周波信号の伝送損失の増大を抑えることができる。
【0021】
インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの長さは0.1〜20mm程度がよく、0.1mm未満では、加工が困難な点で問題がある。20mmを超えると、NRDガイドSおよびそれを用いたモジュールが大きくなり過ぎて小型化に不向きなものとなる。
【0022】
また、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bは他の誘電体線路部分2aと比誘電率が異なっていてもよく、その異なる程度は1/2〜2倍が好ましい。1/2未満では、インピーダンスの整合をとるために、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの幅を大きくする必要が生じ、その結果、幅の差が大きくなり伝送損失が大きくなる。2倍を超えると、インピーダンスの整合をとるために、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの幅を小さくする必要が生じ、その結果、幅の差が大きくなり伝送損失が大きくなる。
【0023】
このインピーダンス整合用の誘電体線路部分2bは、他の部品との接続部に配置されるのがよい。例えば、誘電体線路部分2bとサーキュレータ,カプラー,金属導波管との接続部、誘電体線路部分2bと同軸線との接続部、誘電体線路部分2bと各種ダイオードの電磁気的結合部分,サプレッサ,NRDガイドフィルタとの接続部等に配置される。勿論、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bが誘電体線路部分間に配置されていてもよい。
【0024】
また、誘電体線路部分2a、2bの端面は高周波信号伝搬方向に略垂直であればよく、完全な垂直でなくともよい。また、それらの端面は平面状でなくともよく、ある程度の曲面状とされていても構わない。さらには、端面同士の間隔がλ/8以下であれば直接接していなくともよい。なお、波長λは、使用周波数における高周波信号の空気中での波長に相当する。
【0025】
NRDガイドS用の平行平板導体1、3は、高い電気伝導度および加工性等の点で、Cu,Al,Fe,SUS(ステンレススチール),Ag,Au,Pt等からなり、鍛造、鋳造、ダイカスト、研削等で加工された金属板、あるいはセラミックス,樹脂等から成る絶縁板の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0026】
本発明のNRDガイドSを構成する誘電体線路2は、使用周波数60GHzでのQ値が1000以上である、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分としたセラミックスを用いるのがよい。このセラミックスは比誘電率が4.5〜8程度であるのがよい。比誘電率が4.5未満の場合は、上記したようにLSMモードの電磁波のLSEモードへの変換が大きくなるからである。また、比誘電率が8を超えると、50GHz以上の周波数で使用する際に、誘電体線路2の幅を非常に細くしなければならず、加工が困難になって形状精度が劣化し、強度の点でも問題が生じる。
【0027】
また、使用周波数60GHzでのQ値が1000以上である、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分としたセラミックスを誘電体線路2に用いた場合には、これは、近年におけるマイクロ波帯域,ミリ波帯に含まれる60GHzで使用される誘電体線路2として、十分な低損失性を実現するものである。
【0028】
そして、誘電体線路2の組成および組成比は、モル比組成式をxMgO・yAl2O3・zSiO2と表したときに、x=10〜40モル%,y=10〜40モル%,z=20〜80モル%,x+y+z=100モル%を満足する、Mg,Al,Siの複合酸化物を
成分とする。
【0029】
本発明のNRDガイドSを構成する誘電体線路2の材料であるセラミックス(誘電体磁器組成物)の主成分の組成比を上記範囲に限定したのは、次の理由による。即ち、xを10〜40モル%としたのは、10モル%未満では良好な焼結体が得られず、また40モル%を超えると比誘電率が大きくなるからである。特にxは、60GHzでのQ値を2000以上とするという点から15〜35モル%が好ましい。
【0030】
また、yを10〜40モル%としたのは、yが10モル%よりも小さい場合には良好な焼結体が得られず、40モル%を超えると比誘電率が大きくなるからである。yは、60GHzでのQ値を2000以上とするという点から17〜35モル%が好ましい。
【0031】
zを20〜80モル%としたのは、zが20モル%よりも小さい場合には比誘電率が大きくなり、80モル%を超えると良好な焼結体が得られずQ値が低下するからである。zは、60GHzでのQ値を2000以上とするという点から30〜65モル%が好ましい。
【0032】
これらMgO,Al2O3,SiO2のモル%を示すx,y,zは、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)法,XRD(X−ray Diffraction:X線回折)法等の分析方法で特定できる。
【0033】
また、本発明のNRDガイドSを構成する誘電体線路2用のセラミックス(誘電体磁器組成物)は、主結晶相がコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)であり、他の結晶相としてムライト(3Al2O3・2SiO2),スピネル(MgO・Al2O3),プロトエンスタタイト{メタ珪酸マグネシウム(MgO・SiO2)を主成分とするステアタイトの一種},クリノエンスタタイト{メタ珪酸マグネシウム(MgO・SiO2)を主成分とするステアタイトの一種},フォルステライト(2MgO・SiO2),クリストバライト{珪酸(SiO2)の一種},トリジマイト{珪酸(SiO2)の一種},サファリン(Mg,Alの珪酸塩の一種)等が析出する場合があるが、組成によってその析出相が異なる。なお、本発明のNRDガイドSを構成する誘電体線路2用の誘電体磁器組成物ではコーディエライトのみからなる結晶相であってもよい。
【0034】
本発明のNRDガイドSを構成する誘電体線路2用の誘電体磁器組成物は、以下のようにして製造する。原料粉末として、例えばMgCO3粉末,Al2O3粉末,SiO2粉末を用い、これらを所定割合で秤量し、湿式混合した後乾燥し、この混合物を大気中において1100〜1300℃で仮焼した後、粉砕し粉末状とする。得られた粉末に適量の樹脂バインダを加えて成形し、この成形体を大気中1300〜1450℃で焼成することにより得られる。
【0035】
原料粉末中に含まれるMg,Al,Siの元素から成る原料粉末は、それぞれ酸化物,炭酸塩,酢酸塩等の無機化合物、もしくは有機金属等の有機化合物のいずれであってもよく、焼成により酸化物となるものであれば良い。
【0036】
なお、本発明のNRDガイドSを構成する誘電体線路2用の誘電体磁器組成物の主成分は、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とし、60GHzでのQ値を1000以上であるという特性を損なわない範囲で、上記元素以外に、粉砕ボールや原料粉末の不純物が混入したり、焼結温度範囲の制御、機械的特性向上を目的に他の成分を含有させてもよい。例えば、希土類元素化合物、Ba,Sr,Ca,Ni,Co,In,Ga,Ti等の酸化物、ならびに窒化ケイ素等の窒化物などの非酸化物である。これらは単独または複数種が含まれていてもよい。
【0037】
本発明でいう高周波帯域は、数10〜数100GHz帯域のマイクロ波帯域およびミリ波帯域に相当し、例えば30GHz以上、特に50GHz以上、更には70GHz以上の高周波帯域が好適である。
【0038】
さらに、誘電体線路2のその他の材料としては、テフロン,ポリスチレン,ガラスエポキシ樹脂等の樹脂系のもの、アルミナセラミックス,ガラスセラミックス,フォルステライトセラミックス等のものでもよいが、誘電特性、加工性、強度、小型化、信頼性等の点でコーディエライトセラミックスが好ましい。
【0039】
本発明のNRDガイドSは、無線LAN,自動車のミリ波レーダー等に使用されるものであり、例えば自動車の周囲の障害物および他の自動車に対しミリ波を照射し、反射波を元のミリ波と合成して中間周波信号を得て、この中間周波信号を分析することにより、障害物及び他の自動車までの距離、それらの移動速度等が測定できる。
【0040】
かくして、本発明のNRDガイドSによれば、信頼性が高く、高性能で小型なNRDガイドを構成することができる。また、従来のアルミナセラミックス等よりも低比誘電率のセラミックスからなる誘電体線路2を用いているため、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換を少なくでき、高周波信号の損失が抑えられる。さらに、誘電体線路2はインピーダンス整合用の誘電体路部分2bを含んでおり、そのインピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの幅が隣接する誘電体線路部分2aの幅とλ/8以下の範囲内で相違していることにより、サーキュレータ等の他の部品等との接続部でのインピーダンス整合を高精度に行うことができ、その結果、高周波信号の伝送損失が改善されるという作用効果を有する。
【0041】
本発明のNRDガイドを用いたミリ波送受信器について、以下に説明する。図4,図5は本発明のミリ波送受信器としてのミリ波レーダーを示すものであり、図4は送信アンテナと受信アンテナが一体化されたものの平面図、図5は送信アンテナと受信アンテナが独立したものの平面図である。
【0042】
図4において、51は本発明の一方の平行平板導体(他方は省略する)、52は第1の誘電体線路53の一端に設けられた、高周波ダイオード発振器を有する電圧制御型のミリ波信号発振部(電圧制御発振部)であり、バイアス電圧印加方向が高周波信号の電界方向に合致するように、第1の誘電体線路53の高周波ダイオード近傍に配置された可変容量ダイオードのバイアス電圧を周期的に制御して、三角波,正弦波等とすることにより、周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する。
【0043】
53は、高周波ダイオード発振器が一端部に付設され、高周波ダイオード発振器から出力されたミリ波信号が変調された送信用のミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路、54は、第1,第3,第4の誘電体線路53,55,57にそれぞれ結合される第1,第2,第3の接続部54a,54b,54cを有する、フェライト円板等から成るサーキュレータ、55は、サーキュレータ54の第2の接続部54bに接続され、送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナ56を有する第3の誘電体線路、56は、第3の誘電体線路55の先端をテーパー状等とすることにより構成された送受信アンテナである。
【0044】
なお、送受信アンテナ56は、平行平板導体51に形成された貫通孔を通して高周波信号を入出力させ、平行平板導体51の外面に貫通孔に接続された金属導波管を介して設置されたホーンアンテナ等であってもよい。
【0045】
また57は、送受信アンテナ56で受信され第3の誘電体線路55を伝搬してサーキュレータ54の第3の接続部54cより出力した受信波をミキサー59側へ伝搬させる第4の誘電体線路、58は、第1の誘電体線路53に一端側が電磁結合するように近接配置されて、送信用のミリ波信号の一部をミキサー59側へ伝搬させる第2の誘電体線路、58aは、第2の誘電体線路58のミキサー59と反対側の一端部に設けられた無反射終端部(ターミネータ)である。また、図中M1は、第2の誘電体線路58の中途と第4の誘電体線路57の中途とを近接させて電磁結合させることにより、送信用のミリ波信号の一部と受信波を混合して中間周波信号を発生するミキサー部である。
【0046】
本発明のミリ波送受信器を構成するサーキュレータ54は、平行平板導体51、51間に平行に配設された一対のフェライト円板の周縁部に所定間隔、例えばフェライト円板の中心点に関して角度で120°間隔で配置され、かつそれぞれミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部54a,第2の接続部54bおよび第3の接続部54cを有し、一つの接続部から入力されたミリ波信号をフェライト円板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するものである。また、平行平板導体51の外側主面のフェライト円板に相当する部位には、フェライト円板を伝搬する電磁波の波面を回転させるための磁石が、磁力線がフェライト円板に対し略垂直方向(略上下方向)に通過するように設けられる。なお、サーキュレータ54のフェライト板は円板状のものに限らず、多角形状等のものでもよい。
【0047】
た、本発明のミリ波送受信器の他の実施の形態として、送信アンテナと受信アンテナを独立させた図5のタイプがある。同図において、61は一方の平行平板導体(他方は省略する)、62は第1の誘電体線路63の一端に設けられた、高周波ダイオード発振器を有する電圧制御型のミリ波信号発振部であり、バイアス電圧印加方向が高周波信号の電界方に合致するように第1の誘電体線路63の高周波ダイオード近傍に配置された可変容量ダイオードのバイアス電圧を周期的に制御して、三角波,正弦波等とすることにより、周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する。
【0048】
63は、高周波ダイオード発振器が一端部に付設され、高周波ダイオード発振器から出力されたミリ波信号が変調された送信用のミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路、64は、第1、第3、第5の誘電体線路63、65、67にそれぞれ接続される第1、第2、第3の接続部(図3と同様であり図示せず)を有する、フェライト円板等から成るサーキュレータ、65は、サーキュレータ64の第2の接続部に接続され、送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナ66を有する第3の誘電体線路、66は、第3の誘電体線路65の先端をテーパー状等とすることにより構成された送信アンテナ、67は、サーキュレータ64の第3の接続部に接続され、送信用のミリ波信号を減衰させる無反射終端部67aが先端に設けられた第5の誘電体線路である。
【0049】
また68は、第1の誘電体線路63に一端側が電磁結合するように近接配置されて、送信用のミリ波信号の一部をミキサー71側へ伝搬させる第2の誘電体線路、68aは、第2の誘電体線路68のミキサー71と反対側の一端部に設けられた無反射終端部、69は、受信アンテナ70で受信された受信波をミキサー71側へ伝搬させる第4の誘電体線路である。また、図中M2は、第2の誘電体線路68の中途と第4の誘電体線路69の中途とを近接させて電磁結合させることにより、送信用のミリ波信号の一部と受信波とを混合して中間周波信号を発生するミキサー部である。
【0050】
なお、送信アンテナ66および受信アンテナ70は、平行平板導体61に形成された貫通孔を通して高周波信号を入力または出力させ、平行平板導体61の外面に貫通孔に接続された金属導波管を介して設置されたホーンアンテナ等であってもよい。
【0051】
本発明のミリ波送受信器では、図4において、第1の誘電体線路53に第2の誘電体線路58の一端側を近接配置するかまたは一端部を接合するが、接合する場合には、接合部において、第1の誘電体線路53を直線状とし、第2の誘電体線路58を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上とする。これにより、高周波信号を損失を小さくして均等の出力で分岐させ得る。また、接合部において、第2の誘電体線路58を直線状とし、第1の誘電体線路53を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上としてもよく、この場合も上記と同様の効果が得られる。
【0052】
また、ミキサー部M1において、第2の誘電体線路58と第4の誘電体線路57とを接合することもでき、この場合には、上記と同様に、これらの誘電体線路58,57のいずれか一方の接合部を円弧状となし、その円弧状部の曲率半径rを高周波信号の波長λ以上とするのがよい。また、第2の誘電体線路58と第4の誘電体線路57とを電磁結合するように近接配置する場合は、その近接部において、第2の誘電体線路58と第4の誘電体線路57との近接部の少なくとも一方を円弧状とすることにより、近接配置の構成とすることができる。
【0053】
また好ましくは、上記の接合部の曲率半径rは3λ以下がよく、3λを超えると接合構造が大きくなり小型化のメリットが得られない。接合部の曲率半径rを波長λより小さく設定すると、円弧状の接合部を有する誘電体線路への分岐強度は小さくなる。
【0054】
このような第1の誘電体線路53と第2の誘電体線路58との接合構造、および第2の誘電体線路58と第4の誘電体線路57との接合構造、並びに第2の誘電体線路58と第4の誘電体線路57との近接配置の構成については、図5の場合も上記と同様である。
【0055】
そして、これらの各種部品は、ミリ波信号の波長λの2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体51、51間に設けられる。
【0056】
図4のものにおいて、第1の誘電体線路53の中途にスイッチを設け、それをオン−オフ(ON−OFF)することでパルス変調制御することもできる。例えば、図7に示すような、配線基板88の一主面に第2のチョーク型バイアス供給線路112を形成し、その中途に半田実装されたビームリードタイプのPINダイオードやショットキーバリアダイオードを設けたスイッチである。なお、図7においてEは誘電体線路77内を伝搬する高周波信号の電界方向を示し、111はPINダイオード,ショットキーバリアダイオード等のパルス変調用ダイオード110を接続するための接続パッドである。
【0057】
この配線基板88を、第1の誘電体線路53の第2の誘電体線路58との信号分岐部とサーキュレータ54との間に、PINダイオードやショットキーバリアダイオードのパルス変調用ダイオード110のバイアス電圧印加方向がLSMモードの高周波信号の電界方向に合致するように配置し、第1の誘電体線路53に介在させるものである。また、第1の誘電体線路53にもう一つのサーキュレータを介在させ、その第1、第3の接続部に第1の誘電体線路53を接続し、第2の接続部に他の誘電体線路を接続し、その誘電体線路の先端部の端面に、図7のような構成でショットキーバリアダイオードを設けたスイッチを設置してもよい。
【0058】
図5のものにおいて、サーキュレータ64をなくし、第1の誘電体線路63の先端部に送信アンテナ66を接続した構成とすることもできる。この場合は、小型化されたものとなるが、送信アンテナ66で受信混入したミリ波信号が電圧制御発振部(ミリ波信号発振部)62に混入してノイズ等の原因となり易いため、図5のタイプが好ましい。
【0059】
また、図5のタイプにおいて、第2の誘電体線路68は、第3の誘電体線路65に一端側が電磁結合するように近接配置されるか第3の誘電体線路65に一端が接合されて、送信用のミリ波信号の一部をミキサー71側へ伝搬させるように配置されていてもよい。この構成においても、図5のものと同様の機能、作用効果を有する。
【0060】
図5のものにおいて、第1の誘電体線路63の中途に、図7のものと同様に構成したスイッチを設け、それをオン−オフすることでパルス変調制御することもできる。例えば、図7のような、配線基板88の一主面に第2のチョーク型バイアス供給線路112を形成し、その中途に半田実装されたビームリードタイプのPINダイオードやショットキーバリアダイオードを設けたスイッチである。この配線基板88を、第1の誘電体線路63の第2の誘電体線路68との信号分岐部と、サーキュレータ64との間に、PINダイオードやショットキーバリアダイオードのバイアス電圧印加方向がLSMモードの高周波信号の電界方向に合致するように配置し、第1の誘電体線路63に介在させるものである。
【0061】
また、第1の誘電体線路63にもう一つのサーキュレータを介在させ、その第1、第3の接続部に第1の誘電体線路63を接続し、第2の接続部に他の誘電体線路を接続し、その誘電体線路の先端部の端面に、図7のような構成のショットキーバリアダイオードを設けたスイッチを設置してもよい。
【0062】
また、これらのミリ波送受信器において、平行平板導体51、51,61、61間の間隔は、ミリ波信号の空気中での波長であって、使用周波数での波長λの2分の1以下となる。
【0063】
また、図4、図5のミリ波送受信器はFMCW(Frequency Modulation Continuous Waves)方式であり、FMCW方式の動作原理は以下のようなものである。電圧制御発振部の変調信号入力用のMODIN端子に、電圧振幅の時間変化が三角波等となる入力信号を入力し、その出力信号を周波数変調し、電圧制御発振部の出力周波数偏移を三角波等になるように偏移させる。そして、送受信アンテナ56,送信アンテナ66より出力信号(送信波)を放射した場合、送受信用アンテナ56,送信アンテナ66の前方にターゲットが存在すると、電波の伝搬速度の往復分の時間差をともなって、反射波(受信波)が戻ってくる。この時、受信波は送受信アンテナ56,受信アンテナ70で受信され、ミキサー59,71の出力側のIFOUT端子には、送信波と受信波との周波数差が出力される。
【0064】
このIFOUT端子の出力周波数等の周波数成分を解析することで、Fif=4R・fm・Δf/c{Fif:IF(Intermediate Frequency)出力周波数,R:距離,fm:変調周波数,Δf:周波数偏移幅,c:光速}という関係式から距離を求めることができる。
【0065】
このように、自動車のミリ波レーダー等に適用した場合には、自動車の周囲の障害物および他の自動車に対しミリ波を照射し、反射波を元のミリ波と合成して中間周波信号を得て、この中間周波信号を分析することにより、障害物および他の自動車までの距離、それらの移動速度等が測定できる。
【0066】
本発明のミリ波送受信器を構成する高周波ダイオード発振器を用いた電圧制御発振部52、62について以下に説明する。図6、図7はNRDガイド型の高周波ダイオード発振器を示し、これらの図において、71は一対の平行平板導体、72はガンダイオード73を設置(マウント)するための略直方体状の金属ブロック等の金属部材、73はマイクロ波,ミリ波を発振する高周波ダイオードの1種であるガンダイオード、74は金属部材72の一側面に設置され、ガンダイオード73にバイアス電圧を供給するとともに高周波信号の漏れを防ぐローパスフィルタとして機能するチョーク型バイアス供給線路74aを形成した配線基板、75はチョーク型バイアス供給線路74aとガンダイオード73の上部導体とを接続する金属箔リボン等の帯状導体、77はガンダイオード73の近傍に配置され高周波信号を受信し外部へ伝搬させる誘電体線路(第1の誘電体線路53、63に相当するもの)である。
【0067】
また図6において、チョーク型バイアス供給線路74aは、幅の広い線路および幅の狭い線路の長さがそれぞれ略λ/4であり、また帯状導体75の長さは略{(3/4)+m}λ(mは0以上の整数)である。この帯状導体75の長さは略3λ/4〜略{(3/4)+3}λが良く、略{(3/4)+3}λを超えると帯状導体75が長くなり、撓み、捩じれ等が生じ易くなり、個々の高周波ダイオード発振器間で発振周波数等の特性のばらつきが大きくなるとともに、種々の共振モードが発生して、所望の発振周波数と異なる周波数の信号が発生するという問題が生じる。より好ましくは、略3λ/4,略{(3/4)+1}λである。
【0068】
また、略{(3/4)+m}λとしたのは、{(3/4)+m}λから多少ずれていても共振は可能だからである。例えば、帯状導体5を{(3/4)+m}λよりも10〜20%程度長く形成してもよく、その場合であれば、帯状導体75の接するチョーク型バイアス供給線路74aの1パターン目の長さλ/4のうち一部が共振に寄与すると考えられるからである。従って、帯状導体5の長さは{(3/4)+m}λ±20%程度の範囲内で変化させることができる。
【0069】
これらチョーク型バイアス供給線路74aおよび帯状導体75の材料は、Cu,Al,Au,Ag,W,Ti,Ni,Cr,Pd,Pt等から成り、特にCu,Agが、電気伝導度が良好であり、損失が小さく、発振出力が大きくなるといった点で好ましい。
【0070】
また、帯状導体75は金属部材72の表面から所定間隔をあけて金属部材72と電磁結合しており、チョーク型バイアス供給線路74aとガンダイオード73間に架け渡されている。即ち、帯状導体75の一端はチョーク型バイアス供給線路74aの一端に半田付け等により接続され、帯状導体75の他端はガンダイオード73の上部導体に半田付け等により接続されており、帯状導体75の接続部を除く中途部分は宙に浮いた状態となっている。
【0071】
そして、金属部材72は、ガンダイオード73の電気的な接地(アース)を兼ねているため金属導体であればよく、その材料は金属(合金を含む)導体であれば特に限定するものではなく、真鍮(黄銅:Cu−Zn合金),Al,Cu,SUS(ステンレススチール),Ag,Au,Pt等から成る。また金属部材72は、全体が金属から成る金属ブロック、セラミックスやプラスチック等の絶縁基体の表面全体または部分的に金属メッキしたもの、絶縁基体の表面全体または部分的に導電性樹脂材料等をコートしたものであってもよい。
【0072】
また、誘電体線路77は、図4、図5の第1の誘電体線路53、63に相当するものであり、その材料は上記の通りコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)セラミックス(比誘電率4〜5)等が好ましく、これらは高周波帯域において低損失である。ガンダイオード73と誘電体線路77との間隔は1.0mm程度以下が好ましく、1.0mmを超えると損失を小さくして電磁的結合が可能な最大離間幅を超える。
【0073】
また、本発明の高周波ダイオードとしては、インパット(impatt:impact ionisation avalanche transit time)・ダイオード,トラパット(trapatt:trapped plasma avalanche triggered transit)・ダイオード,ガンダイオード等のマイクロ波ダイオードおよびミリ波ダイオードが好適に使用される。
【0074】
図7のスイッチは、バラクタダイオード等の可変容量ダイオードから成る周波数変調用ダイオード110を設けたものであり、配線基板88の一主面に第2のチョーク型バイアス供給線路112を形成し、その中途に半田実装された周波数変調用ダイオード110を設けたスイッチである。周波数変調用ダイオード110に印加するバイアス電圧を制御することにより、ガンダイオード73の発振周波数を制御することができる。なお、図7においてEは誘電体線路77内を伝搬する高周波信号の電界方向を示し、111は周波数変調用ダイオード110を接続するための接続パッドである。
【0075】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。
【0076】
(実施例)
図1のNRDガイドSを以下のように構成した。誘電体線路2の材料として、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分としたセラミックスであって、種々の組成比としたものを作製した。それらの比誘電率と周波数60GHzにおけるQ値を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
一対の平行平板導体1、3として、アルミニウムから成る、縦80mm×横80mm×厚さ2mmの金属板を1.8mmの間隔dで配置し、表1のNO.24のコーディエライトセラミックスからなる誘電体線路2を介装した。誘電体線路2は、誘電体線路部分2a、2bの端面同士を対向させて一連のものとして構成した。誘電体線路部分2aの断面形状は、高さが約1.8mm、幅が0.8mmの長方形状であり、インピーダンス整合用の誘電体線路部分2bの断面形状は、高さが約1.8mm、幅が0.8+Lmmの長方形状である。このNRDガイドSについて、周波数特性を測定した結果を図8に示す。同図は、周波数77GHzにおける線路幅の差Lと伝送損失(|S21|)との関係を示すものであり、誘電体線路部分2a、2bの幅の差Lがλ/8以下の場合には、誘電体線路2全体の挿入損失が0.5dB以下となった。
【0079】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
【0080】
【発明の効果】
本発明のNRDガイドによれば、誘電体線路は複数の誘電体線路部分の端面同士をλ/8以下の間隔で対向させて構成されているとともにインピーダンス整合用の誘電体線路部分を含んでおり、インピーダンス整合用の誘電体線路部分の比誘電率は他の誘電体線路部分の比誘電率の1/2〜2倍であり、インピーダンス整合用の誘電体線路部分の幅は隣接する誘電体線路部分の幅と波長の8分の1以下の範囲内で相違していることにより、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換を少なくすることができ、また、直線部と曲線部からなる複雑形状の誘電体線路を容易に作製することができる。さらに、誘電体線路に急峻な曲線部を設けて小型化できるので全体を小型化できる。そして、樹脂材料で誘電体線路の支持用ジグや回路基板等を作製し、誘電体線路近傍に配置してもその影響を受けにくくなる。
【0081】
また、直線部からなる誘電体線路の組み合わせでも、曲線でなければ描けなかった形状の線路を、接合端面の形状を変更することなく、断続的な直線部の組み合わせで作製することができる。また、誘電体線路はインピーダンス整合用の誘電体線路部分を含んでおり、インピーダンス整合用の誘電体線路部分の比誘電率は他の誘電体線路部分の比誘電率の1/2〜2倍であり、そのインピーダンス整合用の誘電体線路部分の幅が隣接する誘電体線路部分の幅と波長の8分の1以下の範囲内で相違していることにより、サーキュレータ等の他の部品等との接続部でのインピーダンス整合を高精度に行うことができ、その結果、高周波信号の伝送損失が改善されるという作用効果を有する。
【0082】
また本発明のNRDガイドは、好ましくは誘電体線路がMg,Al,Siの複合酸化物を主成分とするセラミックスからなるとともに測定周波数60GHzでのQ値が1000以上であることにより、従来のアルミナセラミックス等よりも低比誘電率のセラミックスからなる誘電体線路を用いることで、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換を少なくでき、高周波信号の損失が抑えられる。また、LSMモードの電磁波のLSEモードへの変換が少ないため、小さい曲率半径で使用周波数範囲が広い急峻な曲線部を誘電体線路に作製することができ、その結果、ミリ波集積回路等を小型化でき、しかも加工が容易で作製の自由度の高いNRDガイドを作製できる。また、高周波信号の伝送損失が小さいものとなり、また形状精度が精密で安定した誘電体線路をセラミックスにより容易に多数個作製できるため安価なものとなる。また、誘電体線路の比誘電率がテフロン等の樹脂材料と比して高いので、例えばこれらの樹脂材料を用いて誘電体線路の支持用治具や回路基板等を作製し、誘電体線路近傍に配置してもその影響を受けにくくなる。
【0083】
また、複合酸化物のモル比組成式がxMgO・yAl2O3・zSiO2(但し、x=10〜40モル%,y=10〜40モル%,z=20〜80モル%,x+y+z=100モル%を満足する)で表されることにより、さらに伝送損失が少なく、かつ安価で高い形状精度の誘電体線路を用いたNRDガイドを作製できる。
【0084】
本発明のミリ波送受信器によれば、送受信アンテナを備えたタイプ、および送信アンテナと受信アンテナとが独立したタイプにおいて、各誘電体線路のうち少なくとも一つが上記本発明の非放射性誘電体線路を構成することにより、誘電体線路を伝搬するLSMモードの電磁波のLSEモードへの変換が少なく、従って誘電体線路に小さい曲率半径で使用周波数範囲が広い急峻な曲線部を作製することができ、その結果、ミリ波送受信器を使用周波数範囲が広く、小型化でき、しかも加工が容易で作製の自由度の高いものとすることができる。さらに、送信アンテナと受信アンテナとが独立したタイプでは、送信用のミリ波信号がサーキュレータを介してミキサーへ混入することがなく、その結果、受信信号のノイズが低減し探知距離が増大し、さらにミリ波信号の伝送特性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のNRDガイドについて実施の形態の例を示し、内部を透視した斜視図である。
【図2】従来のNRDガイドの内部を透視した斜視図である。
【図3】従来の他のNRDガイドの内部を透視した斜視図である。
【図4】本発明のNRDガイドを備えたミリ波レーダーについて実施の形態の例を示す平面図である。
【図5】本発明のNRDガイドを備えたミリ波レーダーについて実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図6】本発明のミリ波レーダー用のミリ波発振部の斜視図である。
【図7】図6のミリ波発振部に組み込まれる可変容量ダイオードを設けた配線基板の斜視図である。
【図8】本発明のNRDガイドの誘電体線路部分の幅の差と高周波信号の減衰量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:下側の平行平板導体
2: 誘電体線路
2a、2b:線路部分
3:上側の平行平板導体
Claims (3)
- 高周波信号の波長λの2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に誘電体線路を介装してなる非放射性誘電体線路において、前記誘電体線路は、モル比組成式をxMgO・yAl 2 O 3 ・zSiO 2 と表したときに、x=10〜40モル%,y=10〜40モル%,z=20〜80モル%,x+y+z=100モル%を満足する、Mg,Al,Siの複合酸化物を主成分とするセラミックスから成り、複数の誘電体線路部分の端面同士をλ/8以下の間隔で対向させて構成されているとともにインピーダンス整合用の前記誘電体線路部分を含んでおり、前記インピーダンス整合用の前記誘電体線路部分の比誘電率は他の前記誘電体線路部分の比誘電率の1/2〜2倍であり、前記インピーダンス整合用の前記誘電体線路部分の幅は隣接する前記誘電体線路部分の幅と前記波長の8分の1以下の範囲内で相違していることを特徴とする非放射性誘電体線路。
- ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、
高周波ダイオード発振器が一端部に付設され、前記高周波ダイオード発振器から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、
バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、
前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、
前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの接続部から入力された前記ミリ波信号を前記フェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接合されるサーキュレータと、
該サーキュレータの前記第2の接続部に接合され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送受信アンテナを有する第3の誘電体線路と、
前記送受信アンテナで受信され前記第3の誘電体線路を伝搬して前記サーキュレータの前記第3の接続部より出力した受信波をミキサー側へ伝搬させる第4の誘電体線路と、
前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と前記受信波とを混合して中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、
前記第1〜第4の誘電体線路のうち少なくとも一つが前記平行平板導体とともに請求項1記載の非放射性誘電体線路を構成することを特徴とするミリ波送受信器。 - ミリ波信号の波長の2分の1以下の間隔で配置した平行平板導体間に、
高周波ダイオード発振器が一端部に付設され、前記高周波ダイオード発振器から出力されたミリ波信号を伝搬させる第1の誘電体線路と、
バイアス電圧印加方向が前記ミリ波信号の電界方向に合致するように配置され、前記バイアス電圧を周期的に制御することによって前記ミリ波信号を周波数変調した送信用のミリ波信号として出力する可変容量ダイオードと、
前記第1の誘電体線路に、一端側が電磁結合するように近接配置されるかまたは一端が接合されて、前記送信用のミリ波信号の一部をミキサー側へ伝搬させる第2の誘電体線路と、
前記平行平板導体に平行に配設されたフェライト板の周縁部に所定間隔で配置され、かつそれぞれ前記ミリ波信号の入出力端とされた第1の接続部,第2の接続部および第3の接続部を有し、一つの接続部から入力された前記ミリ波信号を前記フェライト板の面内で時計回りまたは反時計回りに隣接する他の接続部より出力するサーキュレータであって、前記第1の誘電体線路の前記ミリ波信号の出力端に前記第1の接続部が接続されるサーキュレータと、
該サーキュレータの前記第2の接続部に接続され、前記送信用のミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に送信アンテナを有する第3の誘電体線路と、
先端部に受信アンテナ、他端部にミキサーが各々設けられた、前記受信アンテナで受信された受信波を伝搬させる第4の誘電体線路と、
前記サーキュレータの前記第3の接続部に接続され、前記送信アンテナで受信混入したミリ波信号を伝搬させるとともに先端部に設けられた無反射終端部で前記受信混入したミリ波信号を減衰させる第5の誘電体線路と、
前記第2の誘電体線路の中途と前記第4の誘電体線路の中途とを近接させて電磁結合させるかまたは接合させて成り、前記送信用のミリ波信号の一部と前記受信波とを混合して中間周波信号を発生するミキサー部と、を設けたミリ波送受信器において、
前記第1〜5の誘電体線路のうち少なくとも一つが前記平行平板導体とともに請求項1記載の非放射性誘電体線路を構成することを特徴とするミリ波送受信器。
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