JP3573813B2 - 地下構造物の蓋用受枠およびその剥離方法 - Google Patents

地下構造物の蓋用受枠およびその剥離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、マンホール等の地下構造物の蓋用受枠およびその剥離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マンホール等の地下構造物においては、その開口部の周囲を囲むように環状の蓋用受枠を設置してこの蓋用受枠に蓋体を設置して開閉可能としており、このような地下構造物の開口部を構成する蓋体や蓋用受枠は、地表の交通の便宜等から地表に一致させて設置することが一般的である。
【0003】
このように蓋用受枠等を地表に合わせて設置する場合、通常、地下構造物の開口部そのものを、そこに設置される蓋用受枠等が地表と高精度に一致した状態となるように形成することが困難であることから、かかる地下構造物の開口部にモルタル等を用いて設置レベルの調整を行って蓋用受枠を設置している。
【0004】
ところで、例えば、路面の補修や再舗装等の場合には、このように設置された蓋用受枠をモルタルから剥離し、その蓋用受枠を所要の高さに位置させてそのまま再使用したい場合があり、このような場合、従来の蓋用受枠においては蓋用受枠を金てこでこじ起こす等の方法でモルタルから剥離させるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、前記のように従来の場合には、蓋用受枠を金てこでこじ起こす等の方法でモルタルから剥離させるようにしており、このような剥離方法では剥離作業が面倒であるうえ、その剥離作業によって蓋用受枠の断面に大きなねじりモーメントを作用させて蓋用受枠を変形,損傷させるおそれもある。
【0006】
この発明は、このような事情に基づいてなされたもので、地下構造物の開口部のモルタル上に設置された蓋用受枠をモルタルから剥離する作業が容易であって、その剥離作業によりその蓋用受枠に変形や損傷を与えるおそれを軽減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載の発明の地下構造物の蓋用受枠は、地下構造物の開口部の周囲を囲むように形成された蓋用受枠であって、平面視で環状に形成された主部と、その主部の下部に前記蓋用受枠の全周に渡って形成され,主部の半径方向に張り出した取付部と、前記取付部より上方に位置させて前記主部から前記取付部の張り出し方向と同方向に張り出され且つ前記主部と同様に全周に渡って環状に形成された上部張り出し部とを有し、前記取付部に上下に貫通する貫通穴を形成するとともに、当該貫通穴の上方を覆うように前記上部張り出し部を位置させ、前記上部張り出し部の下面に前記貫通穴の直上に位置する厚肉の着力部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明の地下構造物の蓋用受枠の剥離方法は、地下構造物の開口部の周囲を囲むように形成された蓋用受枠であって、平面視で環状に形成された主部と、その主部の下部に前記蓋用受枠の全周に渡って形成され,主部の半径方向に張り出した取付部と、前記取付部より上方に位置させて前記主部から前記取付部の張り出し方向と同方向に張り出され且つ前記主部と同様に全周に渡って環状に形成された上部張り出し部とを有し、前記取付部に上下に貫通する貫通穴を形成するとともに、当該貫通穴の上方を覆うように前記上部張り出し部を位置させ、前記上部張り出し部の下面に前記貫通穴の直上に位置する厚肉の着力部が設けられた蓋用受枠を、前記取付部の下面にモルタル層を介して地下構造物の開口部に設置したものにおいて、前記取付部の貫通穴と当該貫通穴の上方の前記着力部との間に伸長手段を配し、当該伸長手段を伸長させることにより、蓋用受枠をモルタル層から剥離させることを特徴とする。
【0009】
【作用】
請求項1記載の地下構造物の蓋用受枠によれば、取付部に形成された貫通穴とその上方の上部張り出し部に設けた厚肉の着力部との間に渡って、小型の伸張手段を設置することができ、これを動作させることにより蓋用受枠にモルタル層との間に剥離力を作用させて剥離作業を行うことができるので、剥離作業が容易となる。
【0010】
そして、前記貫通穴とその上方の上部張り出し部に設けた厚肉の着力部との間に渡って設置した伸長手段の伸長による剥離力は、概ね前記主部に沿った垂直方向の力であるので、蓋用受枠の断面に対して作用するねじりモーメントが小さく、剥離作業に伴う蓋用受枠の変形や損傷を軽減することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、前記の他、取付部に形成された貫通穴とその上方の上部張り出し部に設けた厚肉の着力部との間に渡って小型の伸長手段等の伸張手段を設置して動作させるので、蓋用受枠にモルタル層との間に垂直方向の剥離力を容易に作用させることができる利点がある。
【0012】
【実施例】
以下、図面に示す実施例によりこの発明を説明するが、この実施例は地下構造物としての丸型消火栓ボックスに関するものである。
【0013】
まず、図2により消火栓ボックスの全体概略を説明する。
【0014】
消火栓ボックス1は地表2から縦穴として形成されており、消火栓ボックス1の底部には地下に埋設された不図示の消火栓が位置するように設置される。
【0015】
消火栓ボックス1の底部には、既製のプラスチック成型品からなる底板3を不図示の消火栓の左右に分離して配置し、その底板3上には既製のコンクリート成形品からなる下部ユニット4,中部ユニット5,および上部ユニット6を順次積み重ねて消火栓ボックス1の躯体7が形成されている。
【0016】
このようにして形成された躯体7は、前記のように既製の各ユニットを用いるものであるため、底板3を地中に埋設された消火栓に対応する位置(深さ)に設置した場合にその躯体7の上端部を常に前記地表2と高精度に一致させた状態とすることはできない。
【0017】
また、地盤の耐力や土圧に起因して躯体7の沈み込み量が変化する等によっても躯体7の上端部を高精度に地表2に一致させることが難しいものである。
【0018】
そのため、この実施例の消火栓ボックス1の躯体7の上端部である開口部8においては、前記上部ユニット6の上面にモルタル層11を形成してレベル調整を行い、そのモルタル層11上に蓋用受枠12を設置し、この蓋用受枠12およびこれにより開閉可能とされた蓋体13を地表2に一致した状態とされている。
【0019】
この実施例において、蓋用受枠12は平面視で円環状に形成されたものであって、その断面形状は次のようである。
【0020】
すなわち、蓋用受枠12は、図1に拡大して示すように、蓋用受枠12の外周側に沿って上下方向に延在され,平面視で環状に形成された主部14を有する。
【0021】
そして、この主部14の下部には、前記主部14の半径方向内側に張り出した取付部15が一体に形成されており、この取付部15も蓋用受枠12の全周に渡って連続して形成されている。
【0022】
そして、この実施例においては、蓋用受枠12の全周に渡る取付部15を8等分する位置に取付部15を上下に貫通する貫通穴16が合計8箇所に形成されている(図3参照)。
【0023】
なお、この実施例においては、取付部15の内周側および外周側縁部にはそれぞれ下方に向けて延在する屈曲縁部17,18が一体に形成されたものであり、とくにこの実施例では外側の屈曲縁部18を前記主部14の延長上に位置させたものとされている。そのため、これらの取付部15と前記内周側および外周側の屈曲縁部17,18との間に、前記上部ユニット6の上部を挿入するように装着して前記躯体7への蓋用受枠12の設置が行われる。
【0024】
また、前記取付部15より上方の主部14には、上部張り出し部21が一体的に形成されている。
【0025】
この実施例において、上部張り出し部21は前記主部14と同様に全周に渡って環状に形成されており、その張り出し方向は前記取付部15の張り出し方向と同様に主部14の半径方向内側である。
【0026】
そして、この上部張り出し部21の内周側縁部には、上開きのテーパ面で形成された蓋体受け部22が全周に渡って形成されている。
【0027】
また、その上部張り出し部21の下面側には、厚肉に形成され,下面を水平面とした着力部23が前記貫通穴16の直上に位置するように対応して形成されており、このような着力部23を有する上部張り出し部21は平面視において前記貫通穴16を覆うように位置している(図4参照)。
【0028】
この実施例においては、上部張り出し部21は格別に形成させた着力部23によって前記貫通穴16を完全に覆いつくしたものであるが、本願の実施に際しては、必ずしも完全に覆いつくさなくともよく、上部張り出し部21に格別に着力部を形成せずともよい。
【0029】
このような蓋用受枠12は、上部ユニット6の内周側で直径上の2箇所に設置されたナット部材24のそれぞれに固定ボルト25を用いて所要のレベルとなるように支持させ、上部ユニット6の上面と前記取付部15と前記内周側および外周側の屈曲縁部17,18との間に形成される空間内に、貫通穴16から未硬化のモルタルを注入して充填することにより形成されたモルタル層11上に蓋用受枠12を設置したものである。
【0030】
なお、この実施例において、モルタル層11はいわゆるグラウチング材料からなるものであって、そのモルタル材料は未硬化時の流動性が良好なものである。
【0031】
このように設置された前記蓋用受枠12を上部ユニット6の前記モルタル層11からの剥離作業は次のように行われる。
【0032】
まず、蓋用受枠12から蓋体13を外し、前記固定ボルト25をナット部材24から外す。
【0033】
その後、前記取付部15の全ての貫通穴16にそれぞれ小型の伸長手段としてのねじ式の豆ジャッキ26を配置して、各貫通穴16の上方に位置するそれぞれの着力部23との間に渡るように豆ジャッキ26を装着する。
【0034】
なお、この豆ジャッキ26の基底面は、前記貫通穴16より小さく、豆ジャッキ26は各貫通穴16の周囲の取付部15上にかからず各貫通穴16内のモルタル部分の上に配置して装着される。
【0035】
このように豆ジャッキ26を装着する場合、前記のように着力部23が貫通穴16の上方に配置されているので、各豆ジャッキ26は容易に垂直状態に設置することができる。
【0036】
そして、このように装着した各豆ジャッキ26を順次徐々に操作して伸長動作させると、各豆ジャッキ26の伸長方向は概ね前記主部14に沿って垂直上方となるので、各豆ジャッキ26は共動して蓋用受枠12の各着力部23を垂直上方に押し上げ、蓋用受枠12の全体にモルタル層11に対する垂直上方への剥離力を作用させて蓋用受枠12をモルタル層11から容易に剥離する。
【0037】
そして、この剥離の際、蓋用受枠12の断面に作用するねじりモーメントを小さい状態に維持することができるので、ねじりモーメントに起因して蓋用受枠12が変形,損傷することを軽減しつつ、蓋用受枠12をモルタル層11から剥離することができる。
【0038】
なお、このような剥離作業に用いる豆ジャッキ26は、前記したように剥離作業の際に貫通穴16に設置することとしてもよいが、予めその位置に常備しておくこととしてもよい。また、伸長手段としてはねじ式の豆ジャッキ26を用いたものを説明したが、本願はこれに限らず,空圧式あるいは油圧式ジャッキやその他各種の伸長倍力機構や伸長駆動装置を使用することとしてもよい。
【0042】
以上説明した実施例は、消火栓ボックスに関するものであるが、本願発明はこれに限らず、その他下水道用マンホールやこれに類する各種の地下構造物の開口に用いる蓋用受枠にも適用することができ、蓋用受枠の平面視形状が角型の環状のものであってもよい。
【0043】
また、前記実施例において、上部張り出し部21は主部14の上端部に設置したものを示したが、上部張り出し部を主部14の側面から突設するようにしてもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の地下構造物の蓋用受枠によれば、取付部に形成された貫通穴とその上方の上部張り出し部に設けた厚肉の着力部との間に渡って、小型の伸張手段を設置することができ、これを動作させることにより蓋用受枠にモルタル層との間に剥離力を作用させて剥離作業を行うことができるので、剥離作業が容易となる。
【0045】
そして、前記貫通穴とその上方の上部張り出し部に設けた厚肉の着力部との間に渡って設置した伸長手段の伸長による剥離力は、概ね前記主部に沿った垂直方向の力であるので、蓋用受枠の断面に対して作用するねじりモーメントが小さく、剥離作業に伴う蓋用受枠の変形や損傷を軽減することができる。
【0046】
また、請求項2記載の発明によれば、前記の他、取付部に形成された貫通穴とその上方の上部張り出し部に設けた厚肉の着力部との間に渡って小型の伸長手段等の伸張手段を設置して動作させるので、蓋用受枠にモルタル層との間に垂直方向の剥離力を容易に作用させることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】蓋用受枠の拡大断面図である。
【図2】消火栓ボックスの概略断面図である。
【図3】貫通穴の配置を説明する蓋用受枠の上面概略図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 消火栓ボックス(地下構造物)
8 開口部
11 モルタル層
12 蓋用受枠
14 主部
15 取付部
16 貫通穴
21 上部張り出し部
26 豆ジャッキ(伸長手段)

Claims (2)

  1. 地下構造物の開口部の周囲を囲むように形成された蓋用受枠であって、平面視で環状に形成された主部と、その主部の下部に前記蓋用受枠の全周に渡って形成され,主部の半径方向に張り出した取付部と、前記取付部より上方に位置させて前記主部から前記取付部の張り出し方向と同方向に張り出され且つ前記主部と同様に全周に渡って環状に形成された上部張り出し部とを有し、前記取付部に上下に貫通する貫通穴を形成するとともに、当該貫通穴の上方を覆うように前記上部張り出し部を位置させ、前記上部張り出し部の下面に前記貫通穴の直上に位置する厚肉の着力部が設けられていることを特徴とする地下構造物の蓋用受枠。
  2. 地下構造物の開口部の周囲を囲むように形成された蓋用受枠であって、平面視で環状に形成された主部と、その主部の下部に前記蓋用受枠の全周に渡って形成され,主部の半径方向に張り出した取付部と、前記取付部より上方に位置させて前記主部から前記取付部の張り出し方向と同方向に張り出され且つ前記主部と同様に全周に渡って環状に形成された上部張り出し部とを有し、前記取付部に上下に貫通する貫通穴を形成するとともに、当該貫通穴の上方を覆うように前記上部張り出し部を位置させ、前記上部張り出し部の下面に前記貫通穴の直上に位置する厚肉の着力部が設けられた蓋用受枠を、前記取付部の下面にモルタル層を介して地下構造物の開口部に設置したものにおいて、前記取付部の貫通穴と当該貫通穴の上方の前記着力部との間に伸長手段を配し、当該伸長手段を伸長させることにより、蓋用受枠をモルタル層から剥離させることを特徴とする地下構造物の蓋用受枠の剥離方法。
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