JP3573398B2 - 複写伝票用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は重ね合わせして上位側の紙片に記載した情報が下位の紙片にも同時複写できるようにした複写伝票を得るための複写伝票用紙に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
従来、現金の受け渡しを行った場合に発行する領収書などにおいては複写形式の伝票が多く利用されており、この複写伝票としては金額などの情報を記載する情報記入部を有する上紙片と同じく情報記入部を有して複写を得るための下紙片とを重ね合わせたものとされ、上紙片と下紙片との間にカーボン紙を挟み込んで上紙片に記載した情報が下紙片側の情報記入部にも同時複写されるようにしたり、また、昨今においては前記カーボン紙を必要とする手間を考慮して上紙片と下紙片との間で構成されたカーボンシステムやノンカーボンシステムによって上紙片への記載情報が下紙片に同時複写されるようにしていたものが多く利用されている。
しかしながら、一般に流通している上記構造の複写伝票にあっては上紙片裏面に設けたカーボン層が単に下紙片表面に転移する構成であったり、一種類の発色剤と顕色剤とを単に組み合わせて下紙片表面で発色作用を生じさせるようにしただけの構成であったため、上紙片側に書き込んだ情報部分や下紙片側に複写された情報部分を薄く削り取るなどして記載情報が改竄され易く、さらに、その改竄を発見し難いという問題があった。
そこで本発明は上記事情に鑑み、顕色剤に対して複数の発色剤を作用させて着色、書き込みなどの方法からでは再現困難な色彩の混合色による複写情報が得られるようにすることを課題とし、記載情報の改竄を防止することを目的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、折り部を介して折り合わせ可能に連接された上紙片と下紙片とからなる複写伝票用紙であって、上紙片と下紙片との対向面の対応する少なくも所定部それぞれに顕色剤層を設け、上紙片側の顕色剤層の上に、顕色剤との接触で発色する第一発色剤を含有したマイクロカプセルと前記第一発色剤の発色とは異なる色彩で発色する第二発色剤を含有したマイクロカプセルとが混在してなる発色剤マイクロカプセル層を設けて上紙片側自己発色部を形成し、かつ、下紙片側の顕色剤層の上に、前記発色剤マイクロカプセル層と同じ発色剤マイクロカプセル層を設けて下紙片側自己発色部を形成し、前記上紙片と下紙片とを折り合わせて上紙片側から記載した情報が、前記第一発色剤による発色と前記第二発色剤による発色との混合色で、上紙片側自己発色部と下紙片側自己発色部とに同時複写する構成としたことを特徴とする複写伝票用紙を提供して、上記課題を解消するものである。そして、前記顕色剤層は上紙片と下紙片との対向面全面に設けられているものとすることが可能である。
【0004】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明を図1から図5に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図中1は複写伝票用紙で、上紙片2と下紙片3とが折り部4を介して並列状態にして連接されている。前記折り部4はミシン目からなるものであって、この折り部4を境として連接されていることから前記上紙片2と下紙片3とは分離可能に連接されたものとなっている。また、この複写伝票用紙1を折り部4から折り合わせたときに外面側として表れる上紙片2の表面2aには金額などの情報を記載するための情報記入面5を有しているとともに、折り合わせたときに下紙片3が上紙片2と対向する対向面6においても、前記情報記入面5と対応する位置(折り合わせたときに上下に重なる位置)に情報記入面7を有している。
図において符号8は複写伝票用紙1を折り合わせたときに対向する上紙片2の対向面9と下紙片3の上記対向面6、そして、上紙片2の表面2a及び下紙片3の表面3aそれぞれに設けられた情報記入部であり、これら情報記入部8に対しては、伝票に関する管理情報、取り扱い商品情報、顧客情報などの各種の情報が印刷、印字され、また、手書きにても記載できるようにしたものである。
【0005】
この複写伝票用紙1は対向面9,6を合わせるように折り部4から上紙片2と下紙片3とを折り合わせ、上紙片2の情報記入面5に記載した情報が下紙片3の対向面6における情報記入面7に同時複写されるように設けられている。この複写構成を説明すると、まず、図3に示されるように、上紙片2の対向面9と下紙片3との対向面6とのそれぞれ全面に顕色剤を塗布してなる顕色剤層10が設けられている(即ち、複写伝票用紙1の片面全面にこの顕色剤層が設けられている)。そして、上紙片2の対向面9においては上紙片側自己発色部11が設定されており、この自己発色部11は前記顕色剤層10の上に発色剤マイクロカプセル層12を塗布形成したものである。この発色剤マイクロカプセル層12は、顕色剤層を構成している顕色剤との接触で発色作用をする第一発色剤を含有したカプセルAと前記第一発色剤とは異なる色彩で顕色剤との接触の下で発色作用をする第二発色剤を含有したカプセルBとを混在させたものである。このカプセル層では用紙を重ね合わせなどした程度の外力ではマイクロカプセルが破壊せず、筆圧を加えたときに破壊されて発色剤がマイクロカプセルから出るように設定されている。
また、一方、下紙片3の対向面6においても上記上紙片側自己発色部に対応するようにして下紙片側自己発色部13が設定されている。この自己発色部13は上記上紙片側自己発色部11と同様に顕色剤層10の上に上記発色剤マイクロカプセル層12を塗布形成したものである。そして、この発色剤マイクロカプセル層12も、用紙を重ね合わせなどした程度の外力ではマイクロカプセルが破壊せず、筆圧を加えたときに破壊されて発色剤がマイクロカプセルから出るように設定されているものである。
【0006】
上記発色剤マイクロカプセル層12の第一発色剤と第二発色剤とは異なる色彩で発色するようにしているため、図4に示すように、折り部4からこの複写伝票用紙1を折り合わせて上紙片2の情報記入部5に情報を記入すると、相対向した発色剤マイクロカプセル層12,12の第一発色剤と第二発色剤とが共に、上紙片側自己発色部11の顕色剤層10と下紙片側自己発色部13の顕色剤層10とに接触するようになる。
そして、上紙片側自己発色部11の顕色剤層10では第一発色剤による発色と第二発色剤による発色との混合色で情報が反転状態にして形成されるとともに、下紙片側自己発色部13の顕色剤層10においても、第一発色剤による発色と第二発色剤による発色との混合色で情報が情報記入部7に複写形成される。例えば、第一発色剤による発色が青色で、第二発色剤による発色が赤色である場合、上紙片側自己発色部11と下紙片側自己発色部13とには紫色の情報が現出するようになる。
このように、上紙片側自己発色部11と下紙片側自己発色部13とに現れる情報は共に混合色にて表示されるため、通常の単一の発色剤による発色作用では得られない色彩で情報が表示されるようになり、仮に偽造目的で上紙片、或は下紙片の自己発色部における情報を削り取って新たな書き込みを行おうとしても、混合色に合致した色彩による書き込みは不可能なものとなる。
よって、上紙片2の情報記入面5に記載した情報を偽造しようとしても、裏面の上紙片側自己発色部で保有されている情報が変えられないため、情報記入面5における情報の改竄が防止される。同様に、下紙片3の情報記入面7、即ち、下紙片側自己発色部13が保有する情報も変えることができず、複写された情報に対する改竄が防止できる。
【0007】
上記実施の例では顕色剤層を上紙片2の対向面9と下紙片3の対向面6との全面に設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示すように、記入情報の複写に関わる上紙片側自己発色部11と下紙片側自己発色部13とに限定して設けるようにしてもよい。勿論、図示されているように、各一箇所に限定されるということもない。また、上記情報記入部8も各自己発色部の領域内に配置されて複写記入できるようにすることも可能である。
【0008】
上記第一発色剤と第二発色剤とは顕色剤に対して発色する色彩が異なり、混合色として色合いが確認できるものであればよく、公知のものが使用できる。例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリドなどのトリアリルメタン系染料、4,4′−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリルベンジルエーテル、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミンなどのジフェニルメタン系染料、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどのチアジン系染料、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピランなどのスピロ系染料、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(o−クロロアニリノ)ラクタムなどのラクタム系染料、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオラン、3−ピペリジノ−メチル−7−フェニルアミノフルオランなどのフルオラン系染料及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0009】
発色剤をマイクロカプセル化する例を述べる。通常、これら発色剤を油性物質に溶解し、これを芯物質として用いるが、油性物質としては例えば、綿実油などの植物油類、灯油、パラフィン、ナフテン油、塩素化パラフィンなどの鉱物油類、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、アルキル化ナフタレン、ジアリールエタン、トリアリールメタン、ジフェニルアルカンなどの芳香族系炭化水素類、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ−n−プロピル、アジピン酸ジ−n−ブチル、アジピン酸ジオクチルなどのエステル類及びこれらの混合物などが挙げらえる。なお、油性物質に対する発色剤の配合量の例としては、油性物質100重量部に対して1〜200重量部、より好ましくは2〜100重量部である。
顕色剤層を構成する顕色剤としては、例えば酸性白土、活性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、ベントナイトのような粘土類、さらに、フェノール樹脂、各種芳香族カルボン酸の多価金属塩、2,2′−ビスフェノールスルホン化合物の亜鉛塩などの有機顕色剤及びこれらの混合物が挙げられる。
【0010】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、折り部を介して折り合わせ可能に連接された上紙片と下紙片とからなる複写伝票用紙であって、上紙片と下紙片との対向面の対応する少なくも所定部それぞれに顕色剤層を設け、上紙片側の顕色剤層の上に、顕色剤との接触で発色する第一発色剤を含有したマイクロカプセルと前記第一発色剤の発色とは異なる色彩で発色する第二発色剤を含有したマイクロカプセルとが混在してなる発色剤マイクロカプセル層を設けて上紙片側自己発色部を形成し、かつ、下紙片側の顕色剤層の上に、前記発色剤マイクロカプセル層と同じ発色剤マイクロカプセル層を設けて下紙片側自己発色部を形成し、前記上紙片と下紙片とを折り合わせて上紙片側から記載した情報が、前記第一発色剤による発色と前記第二発色剤による発色との混合色で、上紙片側自己発色部と下紙片側自己発色部とに同時複写する構成としたことを特徴とするものである。
このように複写伝票用紙にあっては折り部を介して上紙片と下紙片とが連接されているものであるため、複写時に折り合わせるという簡易な操作で複写可能な伝票となり、見開く際にも従来の接着剤を用いて上紙片と下紙片とを綴じ合わせてなる複写伝票のような綴じ部側の開き難さを生じさせることがない。そして、複写伝票用紙として全体形状が薄形となり、多数枚に束ねられた複写伝票用紙の取り扱いも容易であって、従来の接着剤を用いた綴じ合わせ型の複写伝票のように綴じ部が厚くなって束ねたときの綴じ部が嵩張って取り扱い難くなるという問題を生じさせない。
また、第一発色剤による発色と第二発色剤による発色とが互いに異なってこれらの発色の混合色で自己発色部に情報が得られるようにしており、混合色による微妙な色合いの形成は着色などによっては行えず、下紙片の情報記入面に複写形成された情報に対する改竄が防止できる。そして、上紙片の情報記入面と対向する裏面側の自己発色部にも記入情報が混合色による複写形式で残るため、上紙片に記入された情報に対する改竄も防止できる。さらに、これらの正規な情報が仮に改竄されたとしてもその行為を混合色との色合いの違いから容易に判断できるようになるなど、実用性に優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複写伝票用紙の一例を示すもので、(イ)は対向面側を示す説明図、(ロ)は折り合わせ時に外表面となる面を示す説明図である。
【図2】一例を折り合わせた状態を示す説明図である。
【図3】一例の上紙片から下紙片に亘る断面を示す説明図である。
【図4】折り合わせた状態を断面で示す説明図である。
【図5】他の例を断面で示す説明図である。
【符号の説明】
1…複写伝票用紙
2…上紙片
3…下紙片
4…折り部
5,7…情報記入面
6,9…対向面
10…顕色剤層
11…上紙片側自己発色部
12…発色剤マイクロカプセル層
13…下紙片側自己発色部
A…第一発色剤のマイクロカプセル
B…第二発色剤のマイクロカプセル
Claims (2)
- 折り部を介して折り合わせ可能に連接された上紙片と下紙片とからなる複写伝票用紙であって、
上紙片と下紙片との対向面の対応する少なくも所定部それぞれに顕色剤層を設け、
上紙片側の顕色剤層の上に、顕色剤との接触で発色する第一発色剤を含有したマイクロカプセルと前記第一発色剤の発色とは異なる色彩で発色する第二発色剤を含有したマイクロカプセルとが混在してなる発色剤マイクロカプセル層を設けて上紙片側自己発色部を形成し、
かつ、下紙片側の顕色剤層の上に、前記発色剤マイクロカプセル層と同じ発色剤マイクロカプセル層を設けて下紙片側自己発色部を形成し、
前記上紙片と下紙片とを折り合わせて上紙片側から記載した情報が、前記第一発色剤による発色と前記第二発色剤による発色との混合色で、上紙片側自己発色部と下紙片側自己発色部とに同時複写する構成としたことを特徴とする複写伝票用紙。 - 上記顕色剤層は上紙片と下紙片との対向面全面に設けられている請求項1に記載の複写伝票用紙。
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