JP3573315B2 - 光送受信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバを用いた一芯双方向光通信回線に用いられる光送受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを用いた双方向光通信の方式として、1本の光ファイバを用いて双方向の光信号の伝送を行う一芯双方向光通信回線方式がある。一芯双方向光通信回線では、2つの光送受信装置間が1本の光ファイバで接続される。一芯双方向光通信回線における光送受信装置としては、図12および図13に示すようなものが考えられている。図12は光送受信装置の一例の要部を示す側面図、図13は図12に示した光送受信装置の要部の斜視図である。この光送受信装置は、例えばシリコン半導体やガリウムヒ素半導体からなり、上面部に受光素子としてのフォトダイオード102が形成された半導体基板101と、この半導体基板101上に接合されたプリズム103と、半導体基板101上に接合された直方体形状の半導体素子104と、この半導体素子104上に接合された発光素子としてのレーザダイオード105と、レーザダイオード105から出射され、他の光送受信装置に対して送信するための第1の光信号Lを、通信回線となる光ファイバ106の端面に入射させると共に、光ファイバ106を介して他の光送受信装置から送られ、光ファイバ106の端面より出射される第2の光信号Lを集光してフォトダイオード102に導くためのレンズ107とを備えている。
【0003】
プリズム103は、半導体基板101上において、フォトダイオード102の上に配置されている。半導体素子104は、プリズム103の側方に配置され、レーザダイオード105は、プリズム103側に向けて第1の光信号Lを出射するように配置されている。プリズム103は、レーザダイオード105に対向する側に、例えば半導体基板101の上面に対して45°をなす斜面が形成され、この斜面にハーフミラー面103aが形成されている。なお、光ファイバ106としては、例えば大口径のプラスチック光ファイバが用いられる。
【0004】
このように構成された光送受信装置では、図示しない駆動回路によってレーザダイオード105が駆動されて、このレーザダイオード105より第1の光信号Lが出射される。この第1の光信号Lは、例えば開口数0.1でプリズム103のハーフミラー面103aに入射し、ここで例えば光量の略50%が反射され、レンズ107に入射する。この第1光信号Lは、レンズ107で集光され、例えば開口数0.1で光ファイバ106に入射する。なお、レーザダイオード105から出射する際の第1の光信号Lの開口数は、レーザダイオード105によって決まる。
【0005】
一方、光ファイバ106を介して他の光送受信装置から送られてきた第2の光信号Lは、例えば開口数0.3で光ファイバ106より出射される。この第2の光信号Lは、レンズ107で例えば開口数0.3となるように集光され、プリズム103のハーフミラー面103aに入射し、例えば光量の略50%が透過して、フォトダイオード102に入射し、このフォトダイオード102によって電気信号に変換される。なお、光ファイバ106から出射する際の第2の光信号Lの開口数は、光ファイバ106によって決まる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図12および図13に示した光送受信装置では、ハーフミラー面103aにおいて、第1の光信号L,第2の光信号Lそれぞれについて光量が略50%ずつ損失するため、光送受信装置における光出力の効率が悪いという問題点がある。
【0007】
また、第1の光信号Lに関しては、レーザダイオードは発光量が大きいほど動作寿命が短くなるため、単にレーザダイオード105の発光量を倍加して第1の光信号Lの光量の損失を補うようにすると、レーザダイオード105の信頼性が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
また、第2の光信号Lに関しては、フォトダイオードは光感度が大きいほど動作速度が遅くなるため、単にフォトダイオード102の光感度を倍加して第2の光信号Lの光量の損失を補うようにすると、フォトダイオード102の信頼性が低下してしまうという問題点がある。
【0009】
また、光ファイバ106による通信回線に関しては、光信号の光量の損失により、光信号の伝送可能距離が短小化するので、光信号の伝送距離の保証を含む高信頼性の確保が困難になるという問題点がある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光出力の効率を向上させることによって、高信頼性の確保を可能とした光送受信装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の光送受信装置は、一芯双方向光通信回線における通信回線となる光ファイバに接続され、送信する第1の光信号を光ファイバに入射させると共に光ファイバを介して送られてくる第2の光信号を受信する光送受信装置であって、第1の光信号を出射するための発光素子と、第2の光信号を受光するための受光素子と、発光素子より出射される第1の光信号を集光して光ファイバの端面に入射させ且つ光ファイバの端面より出射される第2の光信号を集光して受光素子に導く光学系とを備え、光学系が、発光素子より出射される第1の光信号の光路と受光素子に入射する第2の光信号の光路とを分離すると共に、主に第1の光信号が入射し、他の領域に比べて第1の光信号に対する通過率が大きい第1の領域と、主に第2の光信号が入射し、他の領域に比べて第2の光信号に対する通過率が大きい第2の領域とを有する分離手段を含むものである。
ここで、分離手段に対する入射時において第2の光信号の光径は第1の光信号の光径よりも大きく、分離手段は、分離手段に対する第1の光信号の入射位置および入射光径に対応して設けられて発光素子より出射される第1の光信号を光ファイバに導く光学素子を有しているものである。この光学素子は、円柱をその中心軸に交差する面で切断して斜面が形成された形状のプリズムをなしており、かつ斜面が発光素子側を向くように配置され、この光学素子によって第1の領域が形成され、光学素子の周囲が第2の領域となっているものである。
【0012】
この光送受信装置では、発光素子より出射された第1の光信号は、光学系によって集光されて光ファイバの端面に入射する。また、光ファイバを介して送られてくる第2の光信号は、光学系によって集光されて受光素子に導かれ、受光素子によって受光される。ここで、光学系内の分離手段は、発光素子より出射される第1の光信号の光路と受光素子に入射する第2の光信号の光路とを分離すると共に、主に第1の光信号が入射し、他の領域に比べて第1の光信号に対する通過率が大きい第1の領域と、主に第2の光信号が入射し、他の領域に比べて第2の光信号に対する通過率が大きい第2の領域とを有するので、第1の光信号は第1の領域を通過することで光量の損失が抑えられ、第2の光信号は第2の領域を通過することで光量の損失が抑えられる。なお、本発明において、通過とは反射,透過,屈折,回折等のいずれの場合をも含む。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る光送受信装置の構成を示す断面図、図2は図1に示した光送受信装置の要部の斜視図である。本実施の形態に係る光送受信装置は、大口径のプラスチックファイバを通信回線とした宅内・構内通信網等に用いるのに好適なものである。この光送受信装置は、ハウジング11を備え、このハウジング11にはコネクタ部12が設けられている。このコネクタ部12には、一芯双方向光通信回線における通信回線となる光ファイバ1の端部に設けられたコネクタ2が着脱自在に接続されるようになっている。なお、光ファイバ1としては、例えば大口径のプラスチック光ファイバが用いられる。
【0014】
ハウジング11内には、例えばシリコン半導体やガリウムヒ素半導体からなる半導体基板21と、この半導体基板21の上面部に形成された受光素子としてのフォトダイオード22と、半導体基板21上に接合された分離手段としてのプリズム23と、半導体基板21上に接合された直方体形状の半導体素子24と、この半導体素子24上に接合された発光素子としてのレーザダイオード25と、レーザダイオード25から出射され、他の光送受信装置に対して送信するための第1の光信号Lを光ファイバ1の端面に入射させると共に、光ファイバ1を介して他の光送受信装置から送られ、光ファイバ1の端面より出射される第2の光信号Lを集光してフォトダイオード22に導くためのレンズ27とが設けられている。レンズ27は、第1の光信号Lおよび第2の光信号Lと光ファイバ1とを最適に結合するようになっている。
【0015】
プリズム23は、半導体基板21上において、フォトダイオード22の上に配置されている。半導体素子24は、プリズム23の側方に配置され、レーザダイオード25は、プリズム23側に向けて第1の光信号Lを出射するように配置されている。プリズム23は、レーザダイオード25に対向する側に、例えば半導体基板21の上面に対して45°をなす斜面が形成され、この斜面に、レーザダイオード25より出射された第1の光信号Lとレンズ27通過後の第2の光信号Lとが入射するようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る光送受信装置は、プリズム23の斜面に対する入射時において第2の光信号Lの光径は第1の光信号Lの光径よりも大きく、プリズム23の斜面上には、第1の光信号Lの入射位置に、第1の光信号Lの入射光径に対応した大きさのミラー面23aが設けられている。ミラー面23aは、入射光量のほとんどを反射するようになっている。プリズム23の斜面上において、ミラー面23a以外の部分は、ミラー面23aの周囲に囲うように形成された透過面23bになっている。透過面23bは、入射光量のほとんどを透過するようになっている。
【0017】
ハウジング11内の上記各構成部材は、パッケージ13によって一体化されている。すなわち、半導体基板21はパッケージ13内の底部に固着され、レンズ27はパッケージ13の上面部に取り付けられている。パッケージ13は、ハウジング11の内面に対して固定されている。
【0018】
次に、本実施の形態に係る光送受信装置の作用について説明する。レーザダイオード25は、図示しない駆動回路によって駆動されて、第1の光信号Lを出射する。この第1の光信号Lは、例えば開口数0.1でプリズム23のミラー面23aに入射し、ここで光量のほとんどが反射され、レンズ27に入射する。この第1光信号Lは、レンズ27によって、例えば開口数0.1で集光され、光ファイバ1の端面に入射する。なお、光ファイバ1の端面位置は、第1光信号Lの入射光径が光ファイバ1のコアの径を越えないように設定される。また、レーザダイオード25から出射する際の第1の光信号Lの開口数は、レーザダイオード25によって決まる。
【0019】
一方、光ファイバ1を介して他の光送受信装置から送られてきた第2の光信号Lは、例えば開口数0.3で光ファイバ1の端面より出射される。この第2の光信号Lは、レンズ27によって例えば開口数0.3で集光されて、プリズム23の斜面に入射する。このときの第2の光信号Lの光径は、プリズム23の斜面上のミラー面23aに比べて大きいので、第2の光信号Lの一部(光束の中央部分)はミラー面23aによって反射されるが、大部分(光束の外側部分)は透過面23bを透過して、フォトダイオード22に入射し、このフォトダイオード22によって電気信号に変換される。なお、光ファイバ1から出射する際の第2の光信号Lの開口数は、光ファイバ1によって決まる。
【0020】
第1の光信号Lは、ミラー面23aでその光量のほとんどが反射されて光ファイバ1に入射するので、第1の光信号Lのミラー面23aでの反射損失を5%、光ファイバ1への結合損失を5%とすると、第1の光信号Lは、その光量の95%×95%≒90%が光ファイバ1に入射することになる。
【0021】
一方、第1の光信号Lと第2の光信号Lの開口数がそれぞれ上述の例の場合、プリズム23の斜面上における第1の光信号Lの開口面積と第2の光信号Lの開口面積との比は、1:9(開口数の2乗比)となるので、第2の光信号Lのうち、ミラー面23aを回避する光量は、(9−1)/9≒89%となる。第2の光信号Lは、光ファイバ1から拡散して、プリズム23の斜面中央のミラー面23a外に面積比9倍に開口して、プリズム23の斜面に入射するので、第2の光信号Lの光ファイバ1からの結合損失を5%、プリズム23の透過面23bでの透過損失を5%とすると、第2の光信号Lは、その光量の95%×89%×95%≒80%がフォトダイオード22に入射することになる。
【0022】
このように、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、第1の光信号Lの光量の損失を略10%以下に抑えることができると共に、第2の光信号Lの光量の損失を略20%以下に抑えることができる。
【0023】
図12および図13に示した光送受信装置では、第1の光信号Lの光ファイバへの入射および第2の光信号Lのフォトダイオードへの入射は、共に最大で50%にしかならない。従って、図12および図13に示した光送受信装置と比較すると、本実施の形態に係る光送受信装置では、第1の光信号Lの光ファイバ1への入射光量は約1.8倍、第2の光信号Lのフォトダイオード22への入射光量は約1.6倍となる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、装置内における第1の光信号Lの光量の損失を最小とし、且つ第2の光信号Lの光量の損失も抑えることができ、第1の光信号Lの光ファイバ1への入射光量を最大とし、且つ第2の光信号Lのフォトダイオード22への入射光量を増大することができる。
【0025】
特に、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、レーザダイオード25から光ファイバ1への第1の光信号Lの入射光量を、図12および図13に示した光送受信装置と比べて約2倍に増大することができるので、レーザダイオード25の発光量に対する負担が軽減され、信頼性の確保が容易になる。また、光ファイバ1からフォトダイオード22への第2の光信号Lの入射光量も増大することができるので、フォトダイオード22の光感度に対する負担が軽減され、信頼性の確保が容易になる。以上のことから、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、装置自体の光出力の高効率化が容易になり、光送受信装置の高信頼性の確保が容易になる。更に、光ファイバ1による通信回線に関しては、光信号の伝送可能距離が長大化するので、光信号の伝送距離の保証を含む一芯双方向光通信回線における高信頼性の確保が容易になる。
【0026】
図3は、本実施の形態に係る光送受信装置の第1の変形例における要部を示す説明図である。図1および図2に示した光送受信装置では、1枚の半導体基板21上にフォトダイオード22,プリズム23およびレーザダイオード25を集積して、装置の小型化を図っているが、これらの構成部材は、互いに分離されていても良い。図3に示した第1の変形例は、プリズム23の代わりにプレートガラス31を設けると共に、フォトダイオード22,レーザダイオード25およびプレートガラス31を一体化せずに分離して設けた例である。なお、フォトダイオード22,レーザダイオード25およびプレートガラス31の位置関係は、図1におけるフォトダイオード22,レーザダイオード25およびプリズム23の斜面の位置関係と同様である。プレートガラス31上には、第1の光信号Lの入射位置に、第1の光信号Lの入射光径に対応した大きさのミラー面32が設けられている。プレートガラス31において、ミラー面32以外の部分は透過面となっている。この第1の変形例における作用は、第1の実施の形態と同様である。
【0027】
図4は、本実施の形態に係る光送受信装置の第2の変形例における要部を示す説明図である。この第2の変形例は、第1の変形例におけるフォトダイオード22とレーザダイオード25の位置を入れ替えた例である。この第2の変形例では、プレートガラス31上において、第1の光信号Lが入射する部分を除いてミラー面33が設けられ、第1の光信号Lが入射する部分は透過面になっている。この第2の変形例では、レーザダイオード25から出射された第1の光信号Lは、プレートガラス31における透過面を透過してレンズ27に入射し、第2の光信号Lは、その大部分(光束の外側部分)がプレートガラス31上のミラー面33で反射されてフォトダイオード22に入射する。
【0028】
図5は本発明の第2の実施の形態に係る光送受信装置の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る光送受信装置では、レンズ27は、第1の光信号Lを、光ファイバ1の端面の手前の所定位置で一旦収束させた後、光ファイバ1の端面に入射させるようになっている。更に、本実施の形態に係る光送受信装置では、第1の光信号Lが収束される位置に配置され、第2の光信号Lの見かけの出射位置を光ファイバ1の端面位置よりもレンズ27に対して遠ざけるレンズ28が設けられている。レンズ28は、レンズ27を囲うようにパッケージ13の上面部に固着されたレンズ支持枠14によって支持されている。第2の光信号Lは、プリズム23の斜面近傍で収束するように、レンズ28およびレンズ27により集光されるようになっている。また、レンズ27およびレンズ28は、第1の光信号Lおよび第2の光信号Lと光ファイバ1とを最適に結合するようになっている。
【0029】
本実施の形態に係る光送受信装置では、プリズム23の斜面に対する入射時において第1の光信号Lの光径は第2の光信号Lの光径よりも大きく、プリズム23の斜面上には、第2の光信号Lの入射位置に、第2の光信号Lの入射光径に対応した大きさの透過面23cが形成されている。透過面23cは、入射光量のほとんどを透過するようになっている。プリズム23の斜面上における透過面23c以外の部分には、透過面23cの周囲を囲うようにミラー面23dが設けられている。ミラー面23dは、入射光量のほとんどを反射するようになっている。
【0030】
本実施の形態に係る光送受信装置では、レーザダイオード25より出射された第1の光信号Lは、例えば開口数0.1でプリズム23の斜面に入射し、一部(光束の中央部分)は透過面23cを透過するが、大部分(光束の外側部分)はミラー面23dによって光量のほとんどが反射され、レンズ27に入射する。この第1光信号Lは、レンズ27によって、例えば開口数0.1で集光され、光ファイバ1の端面の手前の所定位置、すなわちレンズ28の中心位置で一旦収束した後、光ファイバ1の端面に入射する。なお、光ファイバ1の端面位置は、第1光信号Lの入射光径が光ファイバ1のコアの径を越えないように設定される。
【0031】
一方、光ファイバ1より出射された第2の光信号Lは、まずレンズ28によって集光され、更にレンズ27によってプリズム23の斜面近傍で収束するように集光されて、プリズム23の斜面に入射し、その光量のほとんどが透過面23cを透過して、フォトダイオード22に入射し、このフォトダイオード22によって電気信号に変換される。
【0032】
ここで、第2の光信号Lが、レンズ28およびレンズ27によって、プリズム23の斜面近傍で収束するように集光されることについて説明する。本実施の形態に係る光送受信装置では、第1の光信号Lの出射位置であるレーザダイオード25の位置と、第1の光信号Lの収束位置であるレンズ28の位置は、レンズ27に対して対象な位置関係にある。すなわち、レーザダイオード25の位置をレンズ27に対する物点、レンズ28の位置をレンズ27に対する像点とすると、レンズ27の中心から物点までの距離とレンズ27の中心から像点までの距離は等しくなっている。従って、第1の光信号Lのレンズ27入射前後の開口数は、共に例えば0.1であり、等しくなっている。一方、第2の光信号Lの出射位置である光ファイバ1の端面の位置は、第1の光信号Lの収束位置であるレンズ28の位置よりもレンズ27に対して若干遠くなっている。更に、レンズ28の作用により、第2の光信号Lの見かけの出射位置は、光ファイバ1の端面位置よりもレンズ27に対して遠ざけられている。従って、第2の光信号Lの見かけの出射位置をレンズ27に対する物点、レンズ27通過後の第2の光信号Lの収束位置を像点とすると、レンズ27の中心から像点までの距離は、レンズ27の中心から物点までの距離よりも短くなり、光ファイバ1より開口数0.3で出射された第2の光信号Lは、レンズ27によって開口数0.3+α(αは正の数)で集光されることになる。ここで、αは、第2の光信号Lの見かけの出射位置がレンズ27に対して遠ざけられていることによる効果分である。その結果、プリズム23の斜面上における第2の光信号Lの光径は、図7および図8に示した光送受信装置に比べて極めて小さくなる。
【0033】
例えばα=0.15とし、プリズム23の斜面上における第1の光信号Lの開口面積と第2の光信号Lの開口面積との比を、9:1とすると、第1の光信号Lのうち、ミラー面23dで反射される光量は、(9−1)/9≒89%となる。つまり、第1の光信号Lは、レーザダイオード25から拡散して、プリズム23の斜面中央の透過面23c外に面積比9倍に開口して、ミラー面23dに入射するので、ミラー面23dでの反射損失を5%とすると、第1の光信号Lは、その光量の89%×95%≒85%がミラー面23dで反射してレンズ27に向かうことになる。更に、第1の光信号Lは、レンズ27で集光され、レンズ28の中心位置で収束してレンズ28を通過するので、レンズ28の中心部分はほとんど平坦であるとみなすと、第1の光信号Lは、そのままレンズ28を通過することになり、第1の光信号Lの光ファイバ1への結合損失を5%とすると、第1の光信号Lは、その光量の85%×95%≒80%が光ファイバ1に入射することになる。なお、レンズ28の中心部分を平坦に加工するか、レンズ28の中心部分に微小な孔をあければ、レンズ28の第1の光信号Lに与える影響を完全を除去することができる。
【0034】
一方、第2の光信号Lは、光ファイバ1から拡散して、レンズ28に入射し、更にレンズ27によって開口数0.45で集光されて、プリズム23の透過面23cへ入射するので、第2の光信号Lの光ファイバ1からの結合損失を5%、プリズム23の透過面23cでの透過損失を5%とすると、第2の光信号Lは、その光量の95%×95%≒90%がフォトダイオード22に入射することになる。
【0035】
このように、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、第2の光信号Lの光量の損失を略10%以下に抑えることができると共に、第1の光信号Lの光量の損失を略20%以下に抑えることができる。従って、図12および図13に示した光送受信装置と比較すると、本実施の形態に係る光送受信装置では、第2の光信号Lのフォトダイオード22への入射光量は約1.8倍、第1の光信号Lの光ファイバ1への入射光量は約1.6倍となる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、装置内における第2の光信号Lの光量の損失を最小とし、且つ第1の光信号Lの光量の損失も抑えることができ、第2の光信号Lのフォトダイオード22への入射光量を最大とし、且つ第1の光信号Lの光ファイバ1への入射光量を増大することができる。
【0037】
特に、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、光ファイバ1からフォトダイオード22への第2の光信号Lの入射光量を、図12および図13に示した光送受信装置と比べて約2倍に増大することができるので、フォトダイオード22の光感度に対する負担が軽減され、信頼性の確保が容易になる。また、レーザダイオード25から光ファイバ1への第1の光信号Lの入射光量をも増大することができるので、レーザダイオード25の発光量に対する負担が軽減され、信頼性の確保が容易になる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は第1の実施の形態と同様である。
【0038】
なお、本実施の形態において、レンズ28を、第1の光信号Lの収束位置よりもレンズ27側に配置し、レンズ27およびレンズ28によって、第1の光信号Lを光ファイバ1の端面の手前の所定位置で一旦収束させた後、光ファイバ1の端面に入射させると共に、レンズ28によって第2の光信号Lの見かけの出射位置を光ファイバ1の端面位置よりもレンズ27に対して遠ざけるようにして、第2の光信号Lがプリズム23の斜面近傍で収束するように構成しても良い。
【0039】
図7は、本実施の形態に係る光送受信装置の第1の変形例における要部を示す説明図である。図5および図6に示した光送受信装置では、1枚の半導体基板21上にフォトダイオード22,プリズム23およびレーザダイオード25を集積して、装置の小型化を図っているが、これらの構成部材は、互いに分離されていても良い。図7に示した第1の変形例は、プリズム23の代わりにプレートガラス31を設けると共に、フォトダイオード22,レーザダイオード25およびプレートガラス31を一体化せずに分離して設けた例である。なお、フォトダイオード22,レーザダイオード25およびプレートガラス31の位置関係は、図5におけるフォトダイオード22,レーザダイオード25およびプリズム23の斜面の位置関係と同様である。プレートガラス31上には、第2の光信号Lの入射位置に、第2の光信号Lの入射光径に対応した大きさの透過面が形成され、他の部分にミラー面34が設けられている。この第1の変形例における作用は、第2の実施の形態と同様である。
【0040】
図8は、本実施の形態に係る光送受信装置の第2の変形例における要部を示す説明図である。この第2の変形例は、第1の変形例におけるフォトダイオード22とレーザダイオード25の位置を入れ替えた例である。この第2の変形例では、プレートガラス31上において、第2の光信号Lが入射する部分にミラー面35が設けられ、他の部分は透過面になっている。この第2の変形例では、レーザダイオード25から出射された第1の光信号Lは、その大部分がプレートガラス31における透過面を透過してレンズ27に入射し、第2の光信号Lは、プレートガラス31上のミラー面35で反射されてフォトダイオード22に入射する。
【0041】
図9は本発明の第3の実施の形態に係る光送受信装置の構成を示す断面図、図10は図9に示した光送受信装置の要部の斜視図である。本実施の形態に係る光送受信装置では、ハウジング11内に、例えばシリコン半導体やガリウムヒ素半導体からなる半導体基板41と、この半導体基板41の上面部に形成された受光素子としてのフォトダイオード42と、半導体基板41上に接合され、分離手段の一部を構成するプリズム43と、半導体基板41上に接合された直方体形状の半導体素子44と、この半導体素子44上に接合された発光素子としてのレーザダイオード45と、レーザダイオード45から出射され、他の光送受信装置に対して送信するための第1の光信号Lを光ファイバ1の端面に入射させると共に、光ファイバ1を介して他の光送受信装置から送られ、光ファイバ1の端面より出射される第2の光信号Lを集光してフォトダイオード42に導くためのレンズ27と、このレンズ27のプリズム43側の面における中央部の近傍に配置され、分離手段の一部を構成するプリズム46とを備えている。プリズム46は、円柱をその中心軸に交差する面で切断して斜面が形成された形状をなしており、斜面がレーザダイオード45側を向くように配置されている。このプリズム46は、例えば、透明な連結部材47を介してレンズ27のプリズム43側の面における中央部に連結されて固定されている。
【0042】
プリズム43は、半導体基板41上において、フォトダイオード42の上に配置されている。半導体素子44は、プリズム43の側方に配置され、レーザダイオード45は、プリズム43側に向けて第1の光信号Lを出射するように配置されている。プリズム43は、レーザダイオード25に対向する側に、半導体基板41の上面に対して45°未満の角度をなす斜面が形成され、この斜面に、レーザダイオード25より出射された第1の光信号Lをプリズム46の斜面に向けて反射するミラー面43aが設けられている。ミラー面43aは、入射光量のほとんどを反射するようになっている。なお、プリズム46は、その斜面が、プリズム43のミラー面43aで反射された第1の光信号Lの光径に対応した大きさとなるように形成されている。また、プリズム43の上面は、半導体基板41の上面と平行な平面になっており、この上面は、レンズ27によって集光される第2の光信号Lを透過する透過面43bになっている。透過面43bは、入射光量のほとんどを透過するようになっている。
【0043】
ハウジング11内の上記各構成部材は、パッケージ13によって一体化されている。すなわち、半導体基板41はパッケージ13内の底部に固着され、レンズ27はパッケージ13の上面部に取り付けられている。パッケージ13は、ハウジング11の内面に対して固定されている。
【0044】
次に、本実施の形態に係る光送受信装置の作用について説明する。レーザダイオード45は、図示しない駆動回路によって駆動されて、第1の光信号Lを出射する。この第1の光信号Lは、例えば開口数0.1でプリズム43のミラー面43aに入射し、ここで光量のほとんどが反射され、プリズム46の斜面に入射し、このプリズム46によって、レンズ27の光軸と平行なるように光路が曲折されてレンズ27に入射する。この第1光信号Lは、レンズ27によって、例えば開口数0.1で集光され、光ファイバ1の端面に入射する。なお、光ファイバ1の端面位置は、第1光信号Lの入射光径が光ファイバ1のコアの径を越えないように設定される。
【0045】
一方、光ファイバ1を介して他の光送受信装置から送られてきた第2の光信号Lは、例えば開口数0.3で光ファイバ1の端面より出射される。この第2の光信号Lは、レンズ27によって例えば開口数0.3で集光されて、プリズム46側に出射される。ここで、プリズム46に対する入射時において第2の光信号Lの光径は第1の光信号Lの光径よりも大きく、第2の光信号Lの一部(光束の中央部分)はプリズム46によって屈折されるが、大部分(光束の外側部分)はプリズム46の周囲を通過して、プリズム43の透過面43bに入射し、プリズム43を透過して、フォトダイオード42に入射し、このフォトダイオード42によって電気信号に変換される。
【0046】
第1の光信号Lは、プリズム43のミラー面43aでその光量のほとんどが反射され、プリズム46で屈折し、レンズ27を経て、光ファイバ1に入射するので、第1の光信号Lのミラー面43aでの反射損失を5%、プリズム46での屈折および光ファイバ1への結合による損失を5%とすると、第1の光信号Lは、その光量の95%×95%≒90%が光ファイバ1に入射することになる。
【0047】
一方、第1の光信号Lと第2の光信号Lの開口数がそれぞれ上述の例の場合、プリズム46通過時における第1の光信号Lの開口面積と第2の光信号Lの開口面積との比は、1:9(開口数の2乗比)となるので、第2の光信号Lのうちプリズム46を回避する光量は、(9−1)/9≒89%となる。第2の光信号Lは、光ファイバ1から拡散して、プリズム46外に面積比9倍に開口して、プリズム43の上面の透過面43bに入射するので、第2の光信号Lの光ファイバ1からの結合損失を5%、プリズム43の透過面43bでの透過損失を5%とし、第2の光信号Lの開口面積の11%がプリズム46によって遮断されるとすると、第2の光信号Lは、その光量の95%×89%×95%≒80%がフォトダイオード42に入射することになる。
【0048】
このように、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、第1の光信号Lの光量の損失を略10%以下に抑えることができると共に、第2の光信号Lの光量の損失を略20%以下に抑えることができる。
【0049】
図12および図13に示した光送受信装置では、第1の光信号Lの光ファイバへの入射および第2の光信号Lのフォトダイオードへの入射は、共に最大で50%にしかならない。従って、図12および図13に示した光送受信装置と比較すると、本実施の形態に係る光送受信装置では、第1の光信号Lの光ファイバ1への入射光量は約1.8倍、第2の光信号Lのフォトダイオード22への入射光量は約1.6倍となる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係る光送受信装置によれば、装置内における第1の光信号Lの光量の損失を最小とし、且つ第2の光信号Lの光量の損失も抑えることができ、第1の光信号Lの光ファイバ1への入射光量を最大とし、且つ第2の光信号Lのフォトダイオード42への入射光量を増大することができる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
図11は、本実施の形態に係る光送受信装置の変形例における要部を示す説明図である。図9および図10に示した光送受信装置では、1枚の半導体基板41上にフォトダイオード42,プリズム43およびレーザダイオード45を集積して、装置の小型化を図っているが、これらの構成部材は、互いに分離されていても良い。図11に示した変形例は、プリズム43の代わりにミラー51を設けると共に、フォトダイオード42,レーザダイオード45およびミラー51を一体化せずに分離して設けた例である。なお、フォトダイオード42,レーザダイオード45およびミラー51の位置関係は、図9におけるフォトダイオード42,レーザダイオード45およびプリズム43のミラー面43aの位置関係と同様である。この変形例における作用は、第3の実施の形態と同様である。
【0052】
なお、本実施の形態におけるプリズム46の代わりに、このプリズム46と同様の機能を有する回折格子,ホログラム等を設けても良い。また、図9におけるプリズム43や図11におけるミラー51を設けずに、レーザダイオード45から出射される第1の光信号Lを直接、プリズム46に入射させるようにしても良い。
【0053】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、例えば、発光素子としては、レーザダイオードの代わりに発光ダイオード(LED)等を用いても良い。また、また、本発明は、プラスチック光ファイバ以外の大口径光ファイバを通信回線とした宅外・公衆通信網等、一芯双方向光通信回線全般に適用することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の光送受信装置によれば、発光素子より出射される第1の光信号の光路と受光素子に入射する第2の光信号の光路とを分離すると共に、主に第1の光信号が入射し、他の領域に比べて第1の光信号に対する通過率が大きい第1の領域と、主に第2の光信号が入射し、他の領域に比べて第2の光信号に対する通過率が大きい第2の領域とを有する分離手段を設けたので、第1の光信号は第1の領域を通過することで光量の損失が抑えられ、第2の光信号は第2の領域を通過することで光量の損失が抑えられる。その結果、光送受信装置における光出力の効率を向上させることができ、また、発光素子の発光量に対する負担および受光素子の光感度に対する負担を軽減でき、光送受信装置の高信頼性の確保が可能となるという効果を奏する。更に、本発明の光送受信装置によれば、光ファイバによる通信回線における光信号の伝送可能距離を長大化することができ、光信号の伝送距離の保証を含む一芯双方向光通信回線における高信頼性の確保が容易になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光送受信装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した光送受信装置の要部の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光送受信装置の第1の変形例における要部を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る光送受信装置の第2の変形例における要部を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る光送受信装置の構成を示す断面図である。
【図6】図5に示した光送受信装置の要部の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る光送受信装置の第1の変形例における要部を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る光送受信装置の第2の変形例における要部を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る光送受信装置の構成を示す断面図である。
【図10】図9に示した光送受信装置の要部の斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る光送受信装置の変形例における要部を示す説明図である。
【図12】光送受信装置の一例の要部を示す側面図である。
【図13】図12に示した光送受信装置の要部の斜視図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ、21…半導体基板、22…フォトダイオード、23…プリズム、23a…ミラー面、23b…透過面、25…レーザダイオード、27…レンズ、L…第1の光信号、L…第2の光信号

Claims (1)

  1. 一芯双方向光通信回線における通信回線となる光ファイバに接続され、送信する第1の光信号を前記光ファイバに入射させると共に前記光ファイバを介して送られてくる第2の光信号を受信する光送受信装置であって、
    前記第1の光信号を出射するための発光素子と、
    前記第2の光信号を受光するための受光素子と、
    前記発光素子より出射される第1の光信号を集光して前記光ファイバの端面に入射させ且つ前記光ファイバの端面より出射される第2の光信号を集光して前記受光素子に導く光学系とを備え、
    前記光学系は、前記発光素子より出射される第1の光信号の光路と前記受光素子に入射する第2の光信号の光路とを分離すると共に、主に第1の光信号が入射し、他の領域に比べて第1の光信号に対する通過率が大きい第1の領域と、主に第2の光信号が入射し、他の領域に比べて第2の光信号に対する通過率が大きい第2の領域とを有する分離手段を含み、
    前記分離手段に対する入射時において第2の光信号の光径は第1の光信号の光径よりも大きく、前記分離手段は、前記分離手段に対する第1の光信号の入射位置および入射光径に対応して設けられて前記発光素子より出射される第1の光信号を前記光ファイバに導く光学素子を有し、
    前記光学素子は、円柱をその中心軸に交差する面で切断して斜面が形成された形状のプリズムをなしており、かつ斜面が前記発光素子側を向くように配置され、
    この光学素子によって前記第1の領域が形成され、前記光学素子の周囲が前記第2の領域となっている
    ことを特徴とする光送受信装置。
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