JP3572884B2 - 転写画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写フィルム上に積層形成された薄膜フィルム状の受像層上に書き込まれた画像を、加圧ドラムの加熱加圧によりその受像層とともに被転写体に転写して画像形成する転写画像形成装置において、被転写体に転写された受像層の端縁に亘って転写切れ悪くフィルム状に突出して発生するバリを取り除くためのバリ除去機構を備えた転写画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の転写画像形成装置については、先に特願平6−318003号として出願されており、この装置は、染料や顔料を色材とした画像を中間記録媒体としての転写フィルムを介した間接転写によって被転写体に形成するための画像形成装置であり、特に、転写フィルムの画像とその画像の書き込まれた受像層とを、被転写体に加熱加圧して転写するに際して、被転写体に残る受像層による不要なバリや箔カスの発生を極力低減することに有用な装置である。
【0003】
転写画像形成装置による画像形成法が、例えば熱昇華性染料を使用した感熱 転写法による場合には、基材フィルム上に熱昇華性染料がコーティングしてある感熱転写リボンと、記録媒体となり得る被転写体とを直接重ねあわせて、用意した画像データに基づきサーマルヘッド等を用いて感熱転写リボンか又は被転写体を選択的に加熱し、被転写体上に所望の画像を転写記録する技術が既に公知となっている。
【0004】
このような場合の被転写体としては、免許証、身分証明書、IDカード、クレジットカード、銀行系カード、キャッシュカード、社員証、学生証、メンバーズカード、又は光カードなど、カード状の形態をもつカード類、あるいは、預金通帳やパスポートなどの冊子状の形態をもつ冊子類が代表的な例である。
【0005】
しかし、上記昇華性染料を使用した感熱転写記録法にも欠点がある。つまり、昇華性材料で染色できる材料(可染性材料)はあまり多くなく、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、又は塩化ビニル系樹脂等の限られた材料が使用されている被転写体に対してしか適応できない。
【0006】
そこで、被転写体として、これら可染性材料以外の材料を用いようとするにも関わらず、昇華性染料を使用した感熱昇華転写記録を行おうとする場合の手段としては、例えば特開昭63−81093号公報にて開示されているように、昇華性染料の転写リボンとサーマルヘッドを用いた画像書込み部において、まず、基材フィルム上に可染性材料層(例えば可染性樹脂層、可染性接着層)を積層した中間記録媒体としての転写フィルム上の可染性材料層上に画像を書込み(第1次記録)、次に、転写部において、この転写フィルムの可染性材料層上の画像を加圧ドラムを用いて前記可染性材料層と共に被転写体に加熱加圧して前記画像を被転写体に転写する(第2次記録)方式が提案されている。
【0007】
このような第1次記録と第2次記録とによる間接転写法において重要な要素技術の一つとなる中間記録媒体としての転写フィルムについては、その基本的な積層構成の一例は、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルム基材層と、画像保護機能を持たせた保護層と、画像を受像する機能と被転写体に接着させる機能を併せ持つ受像兼接着層と、前記基材層と保護層との間で剥離されるように設けられた剥離層などから構成される。ここで、画像はこの受像兼接着層に形成され、前記第2次記録により受像兼接着層が保護層とともに基材層より剥離して、被転写体上の被転写面に転写される。
【0008】
尚、ここでは受像兼接着層を層構成中に備える例を示したが、使用する材料によっては、被転写体に対して接着性を発揮しない受像層も現実には存在し得る。そのような場合には画像は受像層に形成するが、接着性を発揮する材料からなる接着層を受像層上か又は被転写体の被転写面上に塗工するか、接着性を発揮する材料からなるフィルムを受像層上に貼付けるか、被転写体の被転写面と受像層との間に接着層を発揮する材料からなるフィルムを挟んだ状態で転写フィルムと被転写体とを互いに加熱加圧することなどにより、適宜に転写又は貼付け可能である。
【0009】
前記第2次記録の例では、画像が形成された転写フィルムと被転写体とを位置合わせして重ね合わせた状態で加熱加圧することにより、画像は前記受像兼接着層と保護層とを伴って被転写体上に接着される。その際に、転写フィルムと被転写体とは装置内で引き離されるが、加熱加圧された領域の転写フィルムの画像を伴う前記受像兼接着層と保護層とは、転写フィルムの基材に対して剥離層部分で分離されて被転写体上に転写されることになる。そして、被転写体上の被転写領域は、被転写体のセキュリティ性、耐久性、デザイン性などが考慮され、一般に仕様上で設定されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、被転写領域は様々であるが、昨今では、被転写領域が被転写体の端部にまで及ぶ例が少なくない。そして、被転写領域がその端部にまで及ぶ場合は、転写フィルムの受像兼接着層及び保護層である受像層の一部が、被転写体の端部にて転写切れ悪くフィルム状に突出してバリとなって残った場合には、外観上で目立ち易く、また見苦しい感が生じることなどから、このバリの存在は製品として画像が形成された被転写体の品質の面からは、いわゆる不良となるのが普通である。
【0011】
加熱加圧による転写を行うと、中間記録媒体としての転写フィルムの各層の特性(じん性、弾性、粘弾性、等。)や、あるいは加熱加圧部材に関する各種の条件等の様々な要因によって、特に被転写体の端部に、中間記録媒体を構成する材料の一部が十分に切れずにバリや箔カスとなって残ってしまうという問題が発生する。いわゆる「箔切れ」が十分に実現出来ずにバリが残る状態である。
【0012】
このようなバリや箔カスは製品の美観を損ねることなどから、前記のように製品仕様の面からも、残っていると不良とされる。そこで、もし発生した場合は、転写後に不良発生部分を手作業で除去しなければならなず、作業能率に大きな悪影響を来すという問題点があった。
【0013】
また、箔カスの一部が取れて装置内に留まり、引き続き行われる作業で被転写体の被転写部分に混入してしまったり、画像の外観を大きく損ねてしまう恐れもあったりして大きな問題になる。
【0014】
本発明の課題は、上記のような従来の技術が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、被転写体の端部に転写フィルムの受像層の一部が転写切れ悪くフィルム状に突出してバリとなる現象を解消できる技術を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、 ステージ14上に被転写体12を支持し、該被転写体12上に転写画像を印字形成した転写フィルム2を介在させてヒートローラ20をステージ14側に加熱加圧しつつ、このステージ14とヒートローラ20とを転写フィルム2の長手方向に相対的に移動させることにより前記転写画像を被転写体12の所定位置に転写する転写画像形成装置において、
前記ステージ14に、被転写体12をスライド移動を許容するように支持し、上面にベースラバーが配設された固定ベース15と、該ステージ14の移動方向前後にスライド移動・復帰可能なスライドベース17とが互いに転写フィルム2の幅方向に隣接した位置に設けられ、前記固定ベース15の幅方向の外端部に移動方向に沿って、被転写体12の転写面より高位に上面を有するステー15aが設けられ、
転写の際には、ヒートローラ20は被転写体が載置された固定ベース15とステー15aとに対して転写フィルム2を挟んで離間・接触動作する
ことを特徴とする転写画像形成装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態を説明する転写画像形成装置1の全体概要側面図である。
この転写画像形成装置1を概略説明すると、中間記録媒体となる転写フィルム2の巻出しリール3、巻取りリール4と、サーマルヘッド5と、昇華性インク又は熱溶融性(熱接着性)インクを転写フィルム2に転写するためのイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの昇華性又は熱溶融性インク層を有するインクリボン6(熱昇華性インクリボン、熱溶融性インクリボン)と、インクリボン6の巻出しリール7及び巻取りリール8と、転写ドラム9と、後述する転写機構10と、制御装置11とを備えている。
【0017】
巻出しリール3、巻取りリール4、ピンチローラ3a、4a、転写ドラム9、ローラ9a、9b、インクリボン6の巻出しリール7、巻取りリール8の回転軸は、それぞれ電磁クラッチを介して動力源となるモータに接続され、制御装置11(マイクロプロセッサ、プログラマブルコントローラ)の命令による電磁クラッチの断続が行われて回転する。
【0018】
被転写体としては、本実施の形態においては冊子12が転写対象(被転写体)とされているが、ほかにも単一枚のシート体でもよく、また、使用するインクリボン6が昇華性インクリボンの場合には、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、アクリル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、ABS樹脂、ポリブチルテレフタレート等の昇華性染料に対して可染性の樹脂、あるいはこれらの樹脂を紙や金属製の基材シートに塗布したもの等が使用でき、他方、使用するインクリボン6が熱溶融性インクリボンの場合には、その熱溶融性インクを接着可能な材料であれば、転写対象(被転写体)は特に限定されるものではない。
【0019】
転写画像形成装置1において、巻出しリール3から繰り出される転写フィルム2は、ピンチローラ3a及びガイドローラ3b、ピンチローラ4a、ガイドローラ4b、4cを介して、巻取りリール4に巻き取られる。転写フィルム2は、巻出しリール3と巻取りリール4との間において、巻取りリール4方向の一方向に送行移動可能であり、また、必要に応じて往復移動できるようになっており、転写フィルム2の一方向動又は往復移動に合わせて同期回転可能な転写ドラム9に支えられる。
【0020】
転写ドラム9上の転写フィルム2は、回転する転写ドラム9の外周に周接して一体的に回転速度と同速度で送行移動可能であり、さらに転写ドラム9に対して接触・離間可能なローラ9a、9bによって転写ドラム9側に固定される。ローラ9a、9bは、インクリボン6の印字が解除されている時に、転写フィルム2を開放し、サーマルヘッド5によってインクリボン6の印字を行うときに転写フィルム2を固定する。
【0021】
11aは転写フィルム2の印字検知マークを検知する光学式センサである。センサ11aにて検知マークを検知することによって検出された転写フィルム2の送り量は制御装置11に送られる。転写フィルム2の転写画像は、センサ11aのマーク検知から転写機構10での転写フィルム2の剥離までの移送距離に合わせて接着層上に形成され、転写フィルム2の所定位置に転写画像の検知マークが設けられている。
【0022】
印字検知マークは、転写画像を印字する時に同時に印字される。転写画像と検知マークの距離は一定であり、検知マークを検出した信号を受けて転写フィルムが所定量送られ、転写される位置に搬送される。
【0023】
インクリボン6の巻出しリール7、巻取りリール8は、転写フィルム2上に画像形成される領域の開始部分がサーマルヘッド5の先端部に位置したら、インクリボン6をリール8側に送り、サーマルヘッド5はインクリボン6を介して転写ドラム9の転写フィルム2に転写を行う。転写機構10は印字処理が終わった転写フィルム2表面の転写画像をヒートローラ20により被転写体である冊子12に転写する。
【0024】
前記転写機構10には、冊子など被転写体12をクランプして固定し、転写動作の際には転写フィルム2の巻取りリール4方向への一方送行方向に転写フィルム2と同速度で所定のリニアガイドに沿ってタイミングベルト若しくは送りネジシャフト13により送行移動するステージ14を備え、該ステージ14は、被転写体12の供給側1aより送行移動し、転写動作を終了した後は搬出側1bに移行するか、若しくは供給側1aの元の位置に復帰する。
【0025】
被転写体12は、転写機構10のステージ14上に載置され、その被転写体12の転写すべき領域以外の領域上に固定プレート24を重ね合わせ押し付けクランプして固定できるようになっている。なお、詳細は後述する。
【0026】
上記転写画像形成装置1の動作を概略説明すると、初期操作は巻出しリール3から転写フィルム2を引き出し、ピンチローラ3a、ガイドローラ3b、転写ドラム9、ガイドローラ4b、転写機構10、ガイドローラ4c、ピンチローラ4aを経由させて巻取りリール4に巻き付け、また、インクリボン6を巻出しリール7からサーマルヘッド5を介して巻取りリール8に巻き付ける。サーマルヘッド5は転写ドラム9から離しておく。
【0027】
転写画像に使用する画像データは、ワンショットカメラ、ビデオカメラなど画像撮影手段にて撮影されたものが使用され、予め記録媒体に記録されている画像データを使用してもよい。
【0028】
予めホストコンピュータ(図示せず)に転写画像の特定、間隔、転写色、印字範囲、印字内容等の印字に必要なデータを設定記憶させておき、メインスイッチを入れると、制御装置11のイニシャライズが終了する。このとき、巻出しリール3、巻取りリール4、ピンチローラ3a、4aはクラッチが切られており、停止している。また、サーマルヘッド5は転写ドラム9から離れており、巻出しリール7、巻取りリール8は停止し、また、転写機構10のステージ14も冊子12の挿入口1a側に停止している。
【0029】
被転写体12の供給側1aにて転写機構10のステージ14上に冊子12を固定し、前記ホストコンピュータの命令により、各電磁クラッチの断続が行われ、巻出しリール3、巻取りリール4、ピンチローラ3a、4aが回転すると共に、転写機構10のステージ14が所定位置に移動して停止する。
【0030】
転写フィルム2は検知マークがセンサ11aに検知されたら、転写画像の印字範囲が転写ドラム9の所定位置に搬送され、ここでローラ9a、9bを転写ドラム9に当接させて転写フィルム2を固定する。転写ドラム9を巻取りリール4側に回転させ、リール7、8を回転させてインクリボン6の所定インク層をサーマルヘッド5の前に位置させ、サーマルヘッド5を転写ドラム9に当接させて、転写フィルム2の受像層の表面に転写画像を印字する。
【0031】
インクリボン6の印字が多色であるときは、ローラ9a、9bを転写ドラム9に着けたまま、サーマルヘッド5を転写ドラム9から退避させ、インクリボン6を送って、再度転写ドラム9を巻取りリール4側に回転させる動作を繰り返す。この転写ドラム9の一方向回転動作又は往復回転動作はステッピングモータの所定パルス数に応じて行う。
【0032】
所定の4色の印字が完了したら、ローラ9a、9bを転写ドラム9より解放して、サーマルヘッド5を転写ドラム9から離し、新しい4色の最初の1色目がサーマルヘッド5の前面に来るようにインクリボン6を送って停止させる。
【0033】
転写画像の印字された転写フィルム2は、巻出しリール3から所定量だけ巻取りリール4方向に送られ、転写機構10において冊子12と転写画像とが対向する位置で転写が行われる。転写機構10では、ヒートローラ20の加熱加圧により転写フィルム2の透明な受像層表面に形成された転写画像が、その受像層を表面保護層として冊子12に転写される。
【0034】
冊子12への転写画像及び受像層の転写後、剥がしローラPによって、転写フィルム2は転写された転写画像を伴う受像層と基材シートとに分離し、基材シートは巻取りリール4側に巻き取られる。
【0035】
次に、転写機構10のステージ14の構成を詳細に説明する。ステージ14は図2(a)に示すように、ハウジング16によって前部と後部及び下部をホールドされて、それぞれ幅方向の近傍に併置した転写用プレスベース盤となる固定ベース15と、被転写体12の一端部を固定支持するスライドベース17とにより構成される。
【0036】
固定ベース15はハウジング16に固定状態で取り付けられ、他方のスライドベース17はハウジング16内にて水平前後方向に僅かな距離だけスライド可能に取り付けられている。
【0037】
図2(a)に示すハウジング16は、図1に示す送りネジシャフト13に螺合するナット部14aを下面に有し、送りネジシャフト13の回転により送行移動する。又は前記ハウジング16はエンドレス状のタイミングベルト若しくはタイミングベルトの両端部に一体的に取り付けられ、そのタイミングベルトの両端により巻回されたタイミングプーリーの回転により矢印方向(前後方向)に送行移動する。
【0038】
図2(a)に示すように、固定ベース15の幅方向の外端部の上面には、移動方向に沿って、少なくとも表面が合成樹脂製の所定の厚さを有する直線状のステー15aが取り付けられている。このステー15aの上面は被転写体12の被転写面よりも少なくとも高くなるように設定されている。なお、冊子の外端部に相当する小口部など被転写体12の幅方向の外端部が直線形状であれば、ステー15aの内端部は、それに当接する直線形状であるのが適当である。
【0039】
また、この固定ベース15の上面には、耐熱性のあるベースラバー15b(例えばシリコーンラバーなど)が配設されている。このベースラバー15bには、非粘着処理を施した耐熱性のあるベースラバーを用いてもよい。また、ベースラバー15bの表面はグラインダにより研削されて凹凸のある粗面に形成されていてもよく、これによって被転写体12を固定ベース15面上に適度に保持し、被転写体12にスライド方向に一定の応力が働いた場合に、スライド移動を許容するようになっている。また、凹凸により冊子などの被転写体12のワークがベースラバー15bに密着することを防止している。
【0040】
前記ステー15aの上面とベースラバー15bの上面のそれぞれ表面滑性は、同一であってもよいが、できれば前記ステー15aの上面の方が滑り難いことが適当である。
【0041】
固定ベース15上に設けたベースラバー15bの上面には冊子12(被転写体)が、その幅方向の外端部をステー15aの内端部に当接して搭載される。被転写体としての冊子12として、例えばパスポートや銀行通帳などの冊子であってもよい。
【0042】
前記ベースラバー15b上面に搭載した冊子12の上方及びステー15aの上方には転写フィルム2が送られる。転写フィルム2はハウジング16の移動方向に沿って移送される。固定ベース15の近傍に併設した被転写体支持手段としてのスライドベース17は転写フィルム2の移動方向に沿ってハウジング16に対してその前進移動方向に微動できるようになっており、スライドベース17は、その下面に溝17bが形成されており、ハウジング16に設けた図示しない突起からなるリニアガイドに沿って直線的に移動する。このリニアガイドは、図2(b)に示すようにストレートなシャフト状のガイドバー17d及び滑り軸受け17eであってもよい。
【0043】
図2(a)に示すようにスライドベース17の上面の前後及び側端部には被転写体12の位置決めブロック21、22、23が設けられ、さらに前後に固定板24がヒンジ24aを介して開閉可能に結合されている。固定板24の開放端部には係止金具25が設けられている。係止金具25には係合孔が孔設され、この係合孔にはスライドベース17の前部に突設した係止バネ26の突起が係合し、被転写体12の端部を挟んで閉鎖した固定板26の開放端部側をロックするようになっている。
【0044】
図2(a)、図3、図4に示すように、スライドベース17の前部には弾性体としての一対のコイルスプリング18、18が設けられている。弾性体としてはコイルスプリングの代わりに板バネや合成ゴムなどでもよい。弾性体を合成ゴムなどのエラストマーとすることにより、バネと違って不要なバネ振動が発生しないというメリットがある。またコイルスプリング18もエラストマーも単独で使用しなければならないといったわけではなく、両方の部材を直列的あるいは並列的に用いて、冊子12に対するショックや移動の吸収・保持を効果的に実施することができる。
【0045】
スライドベース17の後部にはストッパー19が設けられ、該スライドベース17は、弾性体18によって常にストッパー19側に接するように付勢されている。
【0046】
ヒートローラ20はベースラバー15bに対して上下動可能になっている。このヒートローラ20は、図示しない直径50mm程度の円筒形状のアルミニウム芯金を有しており、ヒートローラ20の表面に50μmのテトラ・フルオロ・エチレンとパー・フルオロ・アルキル・ビニル・エーテルとの共重合体による被覆層が設けられている。ヒートローラ20の内面にはプライマー層を介して加熱加硫型のシリコーンゴム層1mmをアルミニウム芯金上に設けている。ヒートローラ20のアルミニウム芯金の内部には、熱源としてのハロゲンランプヒータが設置されており、さらにアルミニウム芯金の内部は黒色塗料による内面黒化処理を施している、ヒートローラ20は、図示しない温度センサと温度コントローラにより温度調整され、表面温度は150℃程度に保持されている。
【0047】
この実施の形態では、ヒートローラ20が上下に移動して被転写体12を載せたステージ14が移動するように構成したが、その他にステージ14及び被転写体12及び転写フィルム2が一定位置に固定されて、ヒートローラ20のみが上下動並びに矢印方向に回転移動してもよく、また、ヒートローラ20及び転写フィルム2とステージ14及び被転写体12との双方が移動してもよい。
【0048】
ヒートローラ20は定位置にて固定ベース15とステー15aとに対して転写フィルム2を挟んで離間・接触動作する。この実施の形態においては、図3に示すようにヒートローラ20は、駆動移動するステージ14の固定ベース15とステー15a上に転写フィルム2を挟んで押圧しながら移動し、まず固定ベース15の前部Aに接触して転動しながら、図4に示すように後部B方向に転動する。なお、本実施例では、駆動系をステージ14側に設けたものであるが、ヒートローラ20側に駆動系にも駆動系を設けてもよい。
【0049】
図4に示すように、ヒートローラ20により転写フィルム2及び被転写体12を加熱加圧すると、ニップ圧の発生やヒートローラ20と冊子12との相対的な移動によりヒートローラ20の回転方向に被転写体12の収縮・移動が発生するが、被転写体12を保持するスライドベース17が微動することによって、転写フィルム2上に印字形成されている転写画像の位置と被転写体12の転写位置との位置決めが良好に実現できる。
【0050】
なお、被転写体12には、通常厚さのばらつきがあるが、透かしなど意図的に厚さに変化を持たせることもある。この場合、ヒートローラ20の接触表面若しくは表面近傍にゴム層を設けると、加圧の均一化を図ることができる。転写フィルム2にホログラフィック格子による画像を予め内在させておいて接着層と共に被転写体12に転写する場合も、加圧の均一化を図るとホログラフィック格子を破壊せず、被転写体12には良好な転写画像が得られる。
【0051】
次に、本発明の転写画像形成装置1の転写動作を、図3〜図4に従って以下に詳細に説明する。
図3において、ステージ14の固定ベース15上に載置固定した被転写体12とヒートローラ20とが所定の押圧力(ニップ圧)にて転写フィルム2を挟んだ状態でステージ14が左から右(矢印方向)に移動するとき、ヒートローラ20は相対的に反対方向に移動する。
【0052】
転写フィルム2は、図3に示すように被転写体12の幅方向外端部12a(冊子12の場合は小口部)が少なくとも完全に被覆されるように導入ガイドされ、他方、被転写体12の幅方向内端部側が適宜位置まで被覆されるように導入されるが、少なくとも冊子12の場合は、小口部12aから見開き綴部12bまでを被覆するように、又は見開き綴部12bを除外して単一ページ面の適宜位置まで被覆されるように導入ガイドされる。その際にヒートローラ20の一端部が少なくともステー15aの上面を押圧し、その他端部が転写フィルム2の内端部を完全に押圧する程度の長さのヒートローラ20が選択される。
【0053】
例えば、前記固定ベース15とヒートローラ20が互いにクッション性のない硬質の表面であって、ニップ幅のきわめて微細な一次元パターンの線接触にて接触した状態で、ステージ14が直線距離Lだけ移動して、半径Rのヒートローラ20が同時に回転中心角θ1 だけ回転する場合、この線接触によりヒートローラ20の円周が回転接触する際の接触円弧長さK1 (回転接触距離)と直線距離Lと回転中心角θ1 との関係は、
中心角θ=円弧長さK/円弧の半径R (単位;rad.)のラジアンの一般公式より、
θ1 =K1 /R
K1 =R×θ1
となる。
また、これは一次元パターンの線接触であるので、
K1 =L 又は、K1 ≒Lとなる。
また、固定ベース15とニップローラ20との押圧接触による転写フィルム2と被転写体12との転写領域における転写方向の長さT1 は、ヒートローラ20の回転接触円弧長さに相当するものであり、よって、
T1 =K1 =L
又は、
T1 =K1 ≒L
となる。
【0054】
ところが、本発明においては、ステージ14の固定ベース15上にはクッション性のベースラバー15bが設けられており、ヒートローラ20はこれに対して押圧接触して回転移動するので、ヒートローラ20の周面と固定ベース15のベースラバー15bの表面とはニップ幅の大きい二次元パターン面による面接触にて接触しながらヒートローラ20は回転する。
【0055】
このように、クッション性のある固定ベース15のベースラバー15b上をヒートローラ20が面接触にて接触した状態でステージ14が直線距離Lだけ移動し、半径Rのヒートローラ20が同時に回転中心角θ1 だけ回転する場合、この面接触によりヒートローラ20の円周が回転接触する際の接触円弧長さK2 (回転接触距離)と直線距離Lと回転中心角θとの関係を下記に説明する。
【0056】
まず、ヒートローラ20の円周が面接触により接触する接触円弧長さδKと、この円弧の中心角δθとの関係は、
中心角θ=円弧長さK/円弧の半径R (単位;rad.)のラジアンの一般公式より、
δθ=δK/R
δK=R×δθ
となる。
また、面接触による移動であっても、ベースラバー15bとヒートローラ20の境界面で互いにずれが発生しない限り、ステージ14が直線距離Lだけ移動した際には、上記線接触の場合と同様に半径Rのヒートローラ20は回転中心角θ1だけ回転する。したがって、面接触による回転によりヒートローラ20が接触する接触円弧長さK2は、
K2=K1+δK
となる。
また、固定ベース15とニップローラ20との押圧接触による転写フィルム2と被転写体12との転写領域における転写方向の長さT2 は、ヒートローラ20の回転接触円弧長さに相当するものであり、よって、
T2=K2=L+δK
又は、
T2=K2≒L+δK
δK=K2−L
となる。
【0057】
したがって、固定ベース15とニップローラ20との押圧接触による転写動作を終了する迄のニップローラ20が固定ベース15から離間する迄に、被転写体12は、ステージ14の移動距離Lに対してずれ量δLだけステージ14の移動方向に送られることになる。
【0059】
そのため、ステー15aの内端部と被転写体12の外端部(冊子12の場合は小口部12a)との境界線にて、転写フィルム2の被転写体12側に転写された受像層はシャープに切断されるものである。
【0060】
図5、図6は本発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態ではコイルスプリング18、18の代わりにパルスモータ30がベース17に取り付けられ、送りネジ31がスライドベース17のナット部32に螺合している。パルスモータ30は制御装置11により回転方向、回転数が制御される。パルスモータ30はハウジング16の移動開始と共に予め計算されたスライドベース17のずれ量だけハウジング16の移動量に対応してスライドベース17を移動させる。そのほかの構成は前述の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0061】
図7は第3の実施の形態であり、この実施の形態は固定ベース14とスライドベース17の両方の上面に補助スライドベース33が設けられ、該補助スライドベース33は、スライドベース17上面に取り付け固定されて固定ベース14上面に対してスライド可能となっている。
【0062】
補助スライドベース33には、その幅方向の外端部より内側に亘って冊子などのブックレット形状とは異なる構造のプラスチックカード34などの平坦なシート状の被転写体12を固定するためのカード34の厚さより浅い凹部33aが平面視で矩形状に形成され、該凹部33a内にはベースラバー33bが設けられ、ステージ14の進行方向前部と後部のいずれか一方若しくは両方にはカード34上面より低い上面を有するクランプ突起35が設けられ、カード34の一端部を水平方向に押圧してその対向するカード他端部を凹部33aの内端部又は他方のクランプ突起35に当接させて挟み付け固定してプラスチックカード34を支持している。なお、クランプ突起35は平面視でL字型であってもよい。
【0063】
スライドベース17及び補助スライドベース33は、ステージ14の前後方向に移動可能となっており、コイルスプリング18によりストッパー19側に付勢されている。ヒートローラ20は加熱加圧開始時に、図7のようにステージ14の右側に位置し、ステージ14が図7の右に移動するにつれて転動しながら左側に移動して転写動作する。このとき第1、第2の実施の形態と同様にスライドベース17及び補助スライドベース33は、コイルスプリング18に抗して図7の右側に押し出されてステージ14の移動距離Lに対してステージ14の移動方向に送られて、ずれ量δLが吸収される。
【0064】
図8は本発明の第4の実施の形態を示しており、この実施の形態では、前述した第2の実施の形態と同様に、ステージ14側にパルスモータ40及びパルスモータ40の軸に固定された送りネジ41が設けられ、スライドベース17の下面に第2の実施の形態と同様に、図示しないナット部が設けられている。前記ステージ14のスライドベース17及びクランプ構造などは第3の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0065】
【発明の効果】
本発明の転写画像形成装置は、従来の技術が抱える問題点を解消して、被転写体の端部に転写フィルムから剥離した受像層の一部が転写切れ悪くフィルム状に突出してバリとなる現象を解消でき、被転写体の端部に受像層のバリを生じさせることなく転写画像を形成できる効果があり、預金通帳やパスポートなどの冊子状の形態をもつ冊子類をはじめとして、免許証、身分証明書、IDカード、クレジットカード、銀行系カード、キャッシュカード、社員証、学生証、メンバーズカード、又は光カードなどカード状の形態をもつカード類に対する転写画像の形成に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転写画像形成装置の全体側面図。
【図2】(a)〜(b)は本発明の転写画像形成装置のステージ14を示す斜視図。
【図3】本発明の転写画像形成装置のステージ14を示す平面図。
【図4】本発明の転写画像形成装置のステージ14を示す平面図。
【図5】本発明の転写画像形成装置の第2の実施の形態のステージ14を示す平面図。
【図6】図5の本発明の転写画像形成装置の他の実施の形態のステージ14を示す側面図。
【図7】本発明の転写画像形成装置の第3の実施の形態のステージ14を示す平面図。
【図8】本発明の転写画像形成装置の第4の実施の形態のステージ14を示す平面図。
【符号の説明】
1…画像形成装置 2…転写フィルム 3…巻出しリール 4…巻取りリール
5…サーマルヘッド 6…インクリボン 7…巻出しリール 8…巻取りリール
9…印字ドラム 10…転写機構 11…制御装置 12…被転写体
14…ステージ 15…固定ベース 15a…ステー 15b…ベースラバー
16…ハウジング 17…スライドベース
20…ヒートローラ 24…固定プレート
Claims (1)
- ステージ14上に被転写体12を支持し、該被転写体12上に転写画像を印字形成した転写フィルム2を介在させてヒートローラ20をステージ14側に加熱加圧しつつ、このステージ14とヒートローラ20とを転写フィルム2の長手方向に相対的に移動させることにより前記転写画像を被転写体12の所定位置に転写する転写画像形成装置において、
前記ステージ14に、被転写体12をスライド移動を許容するように支持し、上面にベースラバーが配設された固定ベース15と、該ステージ14の移動方向前後にスライド移動・復帰可能なスライドベース17とが互いに転写フィルム2の幅方向に隣接した位置に設けられ、前記固定ベース15の幅方向の外端部に移動方向に沿って、被転写体12の転写面より高位に上面を有するステー15aが設けられ、
転写の際には、ヒートローラ20は被転写体が載置された固定ベース15とステー15aとに対して転写フィルム2を挟んで離間・接触動作する
ことを特徴とする転写画像形成装置。
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- 1997-09-02 JP JP23692497A patent/JP3572884B2/ja not_active Expired - Fee Related
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