JP3572733B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた帯電防止性を有し、かつ、加工時の耐熱性のみならずリサイクルした際のように度重なる熱履歴に対しても優れた耐熱性を有する樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、帯電防止能とその持続性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得るためには、熱可塑性樹脂に対し、帯電防止能を有する高分子化合物を配合する方法が行なわれている。
【0003】
このような高分子化合物を例示すると、メトキシ基の20〜80モル%がジエタノールアミン変性されたポリメチルメタクリレート(特開平1−170603号)、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレートのグラフト共重合体(特公昭58−39860号)、ポリアルキレンオキサイド鎖を含むポリエーテルエステルアミド(特公平4−5691号)等が提案されているが、いずれも帯電防止能について不充分であった。
【0004】
それに対し、4級アンモニウム基含有アクリルアミド共重合体(特開平4−198308号)、アミノアルキルアクリル酸エステル共重合体の4級化物(特開昭62−121717号)等に示されるカチオン性帯電防止剤は、先に述べた非イオン性のものと比較して優れたものであった。
【0005】
しかし、充分な帯電防止能を持つ熱可塑性樹脂組成物を得るために上記4級アンモニウム塩基含有共重合体を用いた場合、組成物の熱安定性の低下のみならず、帯電防止剤自体の熱劣化に伴って性能の低下も引き起こされることがあった。その安定化方法としては、特開平6−329923号に、加工安定剤を用いることによる一定の効果が見出されている。
【0006】
しかし、近年、樹脂のリサイクル性に対する要求の高まりから、度重なる熱履歴に対する熱安定性といったより高度な耐熱性が要求されるようになってきており、それに対して前述の安定化方法では不充分となってきた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、以下の構成からなる。
【0008】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂100重量部、(B)第四級アンモニウム塩基含有共重合体1〜30重量部および(C)メルカプトベンゾチア ゾール誘導体又はメルカプトベンズイミダゾール誘導体0.01〜5重量部からなる。
【0009】
特に、(C)成分を熱安定剤として配合することが本発明の特徴であり、上記問題の解決に寄与している。
【0010】
【発明の実施の形態】
[(A)成分]
本発明において(A)成分として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテルなどが例示できるが、これらのうち、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が、本発明をより効果的に実施できるという点で好ましい。
【0011】
ここでポリオレフィン樹脂とは、ポリオレフィン類、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体などであり、これらの各種ポリオレフィンおよび共重合体のブレンドも含まれる。なかでもポリオレフィン類が、本発明において(C)成分との相溶性がより優れたものとなるという点で好ましい。
【0012】
より詳細には、上記ポリオレフィン類とは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレンとα−オレフィンの共重合体などであり、このようなポリオレフィン類のうち、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、その数平均分子量としては通常5,000〜500,000のものが用いられるが、好ましくは10,000〜200,000のものが用いられる。
【0013】
また、ABS樹脂については、種類は特に限定されず、グラフト法やポリマーブレンド法によるものが使用できる。また、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル−EPDM−スチレン樹脂)なども使用可能であるが、どちらかと言えば、ABS樹脂を使用することが好ましい。
【0014】
ポリアミド樹脂についても特に限定されず、各種のものを使用することができ、脂肪酸、芳香族、いずれのポリアミド樹脂であってもよい。分子量については特に制限はないが、得られる組成物の成形性や物性を考慮すると数平均分子量としては、4,000〜50,000、好ましくは5,000〜30,000が適合する。
【0015】
このようなポリアミド樹脂は、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、三員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの閉環(共)重合や(共)重縮合などによって製造することができる。
【0016】
上述のポリアミド樹脂としては、様々なものを充当することができるが、その具体例を挙げれば、ナイロン6;ナイロン6−6;ナイロン6−10;ナイロン11;ナイロン12;ナイロン6−12;ナイロン4−6などの脂肪族ポリアミド、ナイロン6/6;ナイロン6/6,10;ナイロン6/6,12などの脂肪族共重合ポリアミド、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド;ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド;キシレン基含有ポリアミドなどの芳香族ポリアミドなどがある。さらには、ポリエステルアミド、ポリエステルエーテルアミドなどを挙げることができる。このうち好ましいポリアミド樹脂はナイロン6およびナイロン6−6である。
【0017】
本発明の樹脂組成物では、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはそれらのブレンド系樹脂を用いることができる。
【0018】
上記ポリエステル樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など、結合単位がエステルである樹脂のことである。
【0019】
また、上記ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAなどのビスフェノール類をホスゲンもしくは炭酸エステルなどで重縮合させて得られる樹脂である。
【0020】
ポリスチレン樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンの単独重合体または共重合体が挙げられ、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−マレイミド共重合体や、さらには、スチレン系熱可塑性エラストマーであるスチレン−ブタジエン−スチレンのブロック共重合体の水素添加物(SEBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレンのブロック共重合体の水素添加物(SEPS樹脂)を例示することができる。このような、ポリスチレン樹脂のうち、汎用ポリスチレン(GPPS)、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)が好ましく、その平均分子量としては、20,000〜300,000が好ましく、30,000〜200,000がさらに好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル樹脂としては、アセトン−シアノヒドリン法イソブチレンの硝酸酸化もしくは直接酸化法によって得られたメタクリル酸メチルを塊状、懸濁、乳化重合して得られた樹脂が挙げられ、物性改良のため、ブタジエンやスチレン等を部分的に共重合しているものであっても差しつかえない。
【0022】
また、変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、2,6−キシリレノールの酸化重合法で得られたポリフェニレンエーテルとポリスチレン樹脂とのブレンド、もしくはポリフェニレンエーテルへのスチレンのグラフト重合によって変性されたものである。
【0023】
[(B)成分]
本発明の(B)成分には、次の構造単位からなる第四級アンモニウム塩基含有共重合体が用いられる。すなわち、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位と、一般式(III)〜(V)で表わされる四級アンモニウム塩基含有カチオン性第四級アンモニウム塩構造単位とが線状に配列した、重量平均分子量1,000〜500,000の共重合体である。さらに前記共重合体には一般式(II)で表わされるアクリレート構造単位またはメタクリレート構造単位が含まれていてもよい。
【0024】
請求項2に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、ポリα−オレフィン構造単位、(メタ)アクリレート構造単位および第四級アンモニウム塩基含有構造単位からなる。
【0025】
前記ポリα−オレフィン構造単位は下記一般式(I)で表わされ、
【化17】
前記共重合体中での割合は50〜98.9モル%である。
【0026】
一般式(I)において、R1は水素原子、C1〜C18のアルキル基またはフェニル基であり、R1が水素原子のものとアルキル基、フェニル基のものとが混在していても構わない。すなわち本明細書におけるポリα−オレフィン構造単位とは、狭義のポリα−オレフィン構造単位のみならず、ポリエチレン構造単位、ポリスチレン構造単位、およびこれらのうちの任意のものの共重合構造単位を含むものである。
【0027】
上記ポリα−オレフィン構造単位の割合が50モル%未満である場合には、前記共重合体の軟化点が低くなって、熱可塑性樹脂に配合したときに、タックやベタツキに基づく粘着性が生じ、また98.9モル%を超える場合には、前記共重合体の帯電防止性が小さくなりすぎる。なお、前記ポリα−オレフィン構造単位の割合は、軟化点および帯電防止性の釣り合いの点から68〜97.9モル%であることが特に好ましい。
【0028】
前記(メタ)アクリレート構造単位は下記一般式(II)で表わされ、
【化18】
前記共重合体中での割合は15モル%以下である。
【0029】
上記一般式(II)において、R2は水素原子またはメチル基であり、R3は炭素数1〜18のアルキル基である。このようなR3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−オクチル基、n−ラウリル基、ステアリル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混在してもよい。なお、これらの基の中では、メチル基およびエチル基が軟化点を維持する上で特に好ましいものである。
【0030】
上記(メタ)アクリレート構造単位が含まれている場合には、帯電防止性が向上するので好ましい。この構造単位の割合が15モル%を超えると、前記共重合体の軟化点が低くなって熱可塑性樹脂に配合したときに、タックやベタツキに基づく粘着性が生じるようになる。(メタ)アクリレート構造単位の割合は、帯電防止性、成形された組成物の物性の点から、0.1〜12モル%であることが特に好ましい。
【0031】
前記四級アンモニウム塩基含有カチオン性第四級アンモニウム塩構造単位は、下記一般式(III)または(V)で表わされる構造単位である。
【0032】
まず、一般式(III)で表わされる第四級アンモニウム塩構造単位は下記の構造を有し、
【化19】
前記共重合体での割合は1〜35モル%である。
【0033】
上記一般式(III)において、R4は水素原子またはメチル基である。R5は炭素数2〜8のアルキレン基である。このようなR5の具体例としては、たとえばエチレン基、プロピレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基などが挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、これらの基の中では、製造の容易性および経済性の面からエチレン基およびプロピレン基が好ましく、特にプロピレン基が好ましい。
【0034】
Yは酸素原子またはNHである。
【0035】
また式中、R6およびR7はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基である。このようなR6およびR7の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、これらの基の中では、帯電防止性付与の点からメチル基およびエチル基が好ましい。
【0036】
さらに式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリールアルキル基または炭素数6〜12の脂環アルキル基である。このようなR8の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−オクチル基、n−ラウリル基などのアルキル基;ベンジル基、4−メチルベンジル基などのアリールアルキル基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などの脂環アルキル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、前記R8としては、耐熱性の点から、直鎖状アルキル基およびアリールアルキル基が好ましく、また帯電防止性付与の点から低級アルキル基が好ましい。特に好ましいR8としては、メチル基およびエチル基が挙げられる。
【0037】
Xはハロゲン原子、CH3OSO3、C2H5OSO3またはR9−SO3であり、ここでR9は炭素数1〜18のアルキル基または炭素数6〜18のアリールアルキル基である。
【0038】
この一般式(III)で表わされる構造単位の割合が1モル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりすぎ、また35モル%を超える場合には、前記共重合体を熱可塑性樹脂に配合したとき、吸湿性が生じるようになり、得られた成形製品が着色を帯び、しかも帯電防止性の耐久性が損なわれる。なお、前記構造単位の割合は、帯電防止性、その耐久性および吸湿性との釣り合いの点から、2〜20モル%であることが特に好ましい。
【0039】
一般式(V)で表わされる構造単位は下記の構造を有し、
【化20】
その割合は1〜35モル%である。
【0040】
式(V)中、Xは、前記と同じである。なお、これらの中では、帯電防止性の点からCl、CH3OSO3、C2H5OSO3およびR9−SO3が好ましい。式中、R6、R7、R8は、前記と同じである。R9は炭素数1〜18のアルキル基または炭素数6〜18のアリールアルキル基である。
【0041】
本構造単位の割合が1モル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりすぎ、また35モル%を超える場合には、前記共重合体を熱可塑性樹脂に配合したときに、吸湿性が生じるようになり、得られた成形製品が着色を帯び、しかも帯電防止性の耐久性が損なわれる。本構造単位の割合は、帯電防止性、その耐久性および吸湿性との釣り合いの点から、2〜20モル%であることが特に好ましい。
【0042】
請求項3に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、第四級アンモニウム塩基含有構造単位として下記一般式(IV)で表わされる構造単位を含む。すなわち、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位30〜98.9モル%、一般式(II)で表わされる(メタ)アクリレート構造単位15モル%以下および一般式(IV)で表わされる構造単位1〜55モル%からなる。
【0043】
一般式(IV)で表わされる構造単位は下記の構造を有し、
【化21】
前記共重合体中での割合は1〜55モル%である。
【0044】
式(IV)中、R5、R6、R7、R8およびXは、前記と同じである。
【0045】
本構造単位が1モル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりすぎ、55モル%を超える場合には、タックおよび温度依存性が大きくなり、また樹脂との相溶性が悪化する。
【0046】
共重合体中での好ましい割合は、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位38〜97.9モル%、一般式(II)で表わされる(メタ)アクリレート構造単位0.1〜12モル%、一般式(IV)で表わされる構造単位2〜50モル%である。
【0047】
請求項4に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位65〜99モル%および一般式(III)または(V)で表わされる第四級アンモニウム塩基含有構造単位1〜35モル%からなる。好ましい割合は、それぞれ、65〜98モル%、2〜35モル%である。
【0048】
請求項5に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位45〜99モル%および一般式(IV)で表わされる第四級アンモニウム塩基含有構造単位1〜55モル%からなる。好ましい割合は、それぞれ、50〜98モル%、2〜50モル%である。
【0049】
(B)成分の重量平均分子量は、1,000〜500,000の範囲のものが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことであり、超高温GPC(絹川、高分子論文集、第44巻、2号、139〜141頁(1987年))に準じて測定することができる。この分子量が1,000未満である場合には、分子量が小さすぎて、熱可塑性樹脂に配合して加熱したときに揮散するおそれがあり、また500,000を超える場合には、溶融したときの粘度が大きくなりすぎ、作業性が悪くなる。
【0050】
[(C)成分]
(C)成分の熱安定剤は、メルカプトベンゾチアゾール誘導体として、
【化22】
【化23】
メルカプトベンズイミダゾール誘導体として、
【化24】
について効果が認められる。中でも、2−メルカプトベンゾチアゾール[C−a]、ジベンゾチアジルジスルフィド[C−d]、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−f]、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール[C−g]、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−h]、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−i]、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−j]、2−メルカプトベンズイミダゾール[C−k]、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール[C−l]が好ましい効果を示す。この(C)成分は2種以上を併用してもよい。
【0051】
前述の(B)成分および(C)成分の配合割合は、(A)成分100重量部に対して(B)成分が1〜30重量部、(C)成分が0.01〜5重量部である。
【0052】
(B)成分の配合割合が1重量部未満であると、帯電防止効果が小さく、30重量部を超えると、帯電防止効果は充分であるが、経済的に不利となる。帯電防止能と経済性とのバランスを考慮した場合、特に望ましい範囲は2〜20重量部である。
【0053】
(C)成分の配合割合が0.01重量部未満であると、熱履歴に対する熱安定性が充分に得られず、5重量部を超えると、効果は認められるものの不経済なものとなる。
【0054】
[(D)成分]
また、加工安定剤としてリン系安定剤を用いてもよいが、このリン系安定剤としては、
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
等が挙げられる。この中でも特に、トリス−(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト[D−f]、トリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト[D−g]、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスフォナイト[D−n]、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキシド[D−o]等が着色性、加工時の性能保持といった観点から有効である。
【0055】
リン系安定剤の添加量の範囲は0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部である。
【0056】
また、フェノール系安定剤をこれらの系へ配合しても差しつかえなく、その場合は以下のものが効果的である。
【化29】
【化30】
フェノール系安定剤の添加量は、0.01〜0.5重量部が適当である。
【0057】
上記の(A)〜(C)および(D)成分の配合方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法、すなわち一軸、二軸押出し機または加圧ニーダー等を用いて溶融混練することにより、樹脂組成物とすることができる。
【0058】
【実施例】
本発明における(B)成分である第四級アンモニウム塩基含有カチオン性共重合体は以下のようにして製造した。
【0059】
[製造例1(アクリルアミド系共重合体[B−a]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、キシレン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸=93/3/4)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0060】
次に、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン21.1gを仕込み、オイルバスを用いて140℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、140℃で17時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化反応を継続した。
【0061】
得られた反応物458gを80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからヨウ化メチル28.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリルアミド系共重合体を製造した。
【0062】
[製造例2(アクリル酸エステル系共重合体[B−b]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、トルエン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸=93/3/4)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0063】
次に、N,N−ジメチルアミノプロパノール21.1gを仕込み、オイルバスを用いて110℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、110℃で5時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでエステル化反応を継続した。
【0064】
得られた反応物460gを80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからヨウ化メチル28.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノールの中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリル酸エステル系共重合体を製造した。
【0065】
[製造例3(コハクイミド系共重合体[B−c]製造)]
温度計、滴下ロート、撹拌機およびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、トルエン400ml、スチレン−無水マレイン酸共重合体(スチレン/無水マレイン酸=3/1モル)100gを仕込み、加熱、溶解した。
【0066】
次いで、N,N′−ジメチルアミノプロピルアミン25.4gを徐々に滴下した。終了後、110℃まで昇温し、還流しながら脱水反応を4時間行なった。
【0067】
得られた反応物を80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからジエチル硫酸38.3gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。こうして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してコハクイミド系共重合体を製造した。
【0068】
[製造例4(ベンジル型カチオン共重合体[B−d]製造)]
温度計、撹拌機、N2ガス導入管および冷却管を備えた1リットルの四ツ口フラスコにトルエン400ml、スチレンモノマー104g、ビニルベンジルクロライド76.2gを仕込み、N2ガスを導入しながら80℃まで昇温した。そのまま1時間持続し、系内の空気を除去した。
【0069】
次に、ラウロイルパーオキサイド0.88gを少量のトルエンに溶解し、上記溶液に添加した。
【0070】
反応初期において発熱がみられるが、冷却などにより内温度を80〜90℃に保ちながら6時間反応を行なった。
【0071】
次に、得られた反応物にオクチルジメチルアミン80gを添加し、90〜100℃で5時間四級化反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してベンジル型カチオン共重合体を製造した。
【0072】
[製造例5(アクリルアミド系共重合体[B−e]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、キシレン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸=93/3/4)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0073】
次に、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン21.1gを仕込み、オイルバスを用いて140℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、140℃で17時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化反応を継続した。
【0074】
得られた反応物458gを80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからメタンスルホン酸メチル22.2gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリルアミド系共重合体を製造した。
【0075】
[製造例6(アクリルアミド系共重合体[B−f]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、キシレン400ml、エチレン−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸=90/10)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0076】
次に、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン39.2gを仕込み、オイルバスを用いて140℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、140℃で17時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化反応を継続した。
【0077】
得られた反応物を80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからパラトルエンスルホン酸メチル59.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリルアミド系共重合体を製造した。
【0078】
[製造例7(コハクイミド系共重合体[B−g]の製造)]
温度計、滴下ロート、撹拌機およびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、トルエン400ml、スチレン−メタクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(スチレン/メタクリル酸エチル/無水マレイン酸=5/1/4モル)85.2gを仕込み、加熱、溶解した。
【0079】
次いで、N,N′−ジメチルアミノプロピルアミン25.4gを徐々に滴下した。終了後、110℃まで昇温し、還流しながら脱水反応を4時間行なった。
【0080】
得られた反応物を80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからジエチル硫酸38.3gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノールの中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してコハクイミド系共重合体を製造した。
【0081】
[製造例8(ベンジル型カチオン共重合体[B−h]の製造)]
温度計、撹拌機、N2ガス導入管および冷却管を備えた1リットルの四ツ口フラスコにトルエン400ml、スチレンモノマー72.8g、メタクリル酸エチル13.7g、ビニルベンジルクロライド27.5gを仕込み(スチレン/メタクリル酸エチル/ビニルベンジルクロライド=70/12/18モル)、N2ガスを導入しながら80℃まで昇温した。そのまま1時間持続し、系内の空気を除去した。
【0082】
次に、ラウロイルパーオキサイド0.88gを少量のトルエンに溶解し、上記溶液に添加した。
【0083】
反応初期において発熱がみられるが、冷却などにより内温度を80〜90℃に保ちながら6時間反応を行なった。
【0084】
次に、得られた反応物にオクチルジメチルアミン80gを添加し、90〜100℃で5時間四級化反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してベンジル型カチオン共重合体を製造した。
【0085】
上記の製造例1〜8で得られた共重合体[B−a]〜[B−h]の重量平均分子量、および構造単位(I)〜(V)の割合(モル%)を下記の方法で求めた。結果を表1に示す。
【0086】
[B−a]、[B−e]、[B−f]:赤外吸収スペクトルを測定し、オレフィン共重合体のアルキル基に基づく1400〜1500cm−1の吸収とアクリレートのカルボニルに基づく1730〜1735cm−1の吸収およびN−置換アミドに基づく1650cm−1の吸光度の比より求めた。
【0087】
[B−b]:赤外吸収スペクトルを測定し、オレフィン共重合体のアルキル基に基づく1400〜1500cm−1の吸収とアクリレートのカルボニルに基づく1730〜1735cm−1の吸収、および元素分析による窒素の微量分析より求めた。
【0088】
[B−c]、[B−d]:一般式(IV)、(V)のモル%を、元素分析による窒素の微量分析により求めた。一般式(I)のモル%は100よりその数値を引いたものである。
【0089】
[B−g]、[B−h]:赤外吸収スペクトルを測定し、スチレン共重合体のフェニル基に基づく1600〜1620cm−1の吸収とアクリレートのカルボニルに基づく1730〜1735cm−1の吸収、および元素分析による窒素の微量分析より求めた。
【0090】
【表1】
[実施例1〜17および比較例1〜15]
上記の製造例1〜8で得た[B]成分、下記表2、表3に記載した熱可塑性樹脂([A]成分)、安定剤([C]成分)およびリン化合物([D]成分)を、同表に記載した割合で配合し、二軸押出し機(KRCニーダー、栗本鉄工所製)を用いて混練温度を変えて溶融、混練してペレット化した。
【0091】
また、熱履歴に対する安定性を調べるため、押出し機による押出し回数を変えて(1回、3回、5回)溶融、混練してペレット化した。
【0092】
ここで使用した押出し機の平均滞留時間は3.04分であった。
【0093】
次いで、得られたペレットを射出成形機(Hipershot3000,新潟鉄工所製)を用いて加工し、60mm×60mm×3mmの平板(試験片)を作製した。
【0094】
【表2】
【表3】
上記により得た試験片を用いて、下記のように帯電防止性と着色性を評価した。
【0095】
(帯電防止性)
上記で得られた試験片を、アドバンテスト社製超絶縁抵抗計を用い、20℃、60%RHの条件で24時間調湿した後、表面固有抵抗を測定して行なった。
【0096】
(着色性)
日本電子社製の色差計Z−1001DPにより、実施例、比較例で作製した試験片のYI値を測定し、熱可塑性樹脂([A]成分)のみで作製した試験片の測定値との差を色差(ΔYI)として示した。なお、この値が小さい程、黄変度が小さいことを示す。
【0097】
結果を表4、表5に併記する。
【0098】
【表4】
【表5】
[実施例18〜29および比較例16〜26]
リサイクル性試験を以下のようにして行なった。
【0099】
熱可塑性樹脂([A]成分)、製造例1〜8で得た[B]成分、安定剤([C]成分)およびリン化合物([D]成分)を、表6に記載した割合で配合し、二軸押出し機(KRCニーダー、栗本鉄工所製)を用いて混練してペレット化した。
【0100】
得られたペレットを前述と同様に射出成形し、それを破砕機にかけて破砕した。
【0101】
ここで得られた破砕物を再度射出成形し、60mm×60mm×3mm平板とJIS K−7110による2号A試験片を作製し、試験に供した。表面固有抵抗は前述と同様にして測定し、耐衝撃性はアイゾッド衝撃強度をJIS K−7110に従って測定して評価した。結果を表6に併記する。
【0102】
【表6】
【0103】
【発明の効果】
本発明における樹脂組成物は、従来知られていた加工安定剤を含有する組成物と比較して、度重なる熱履歴に対しても優れた耐熱性を示す。従って、近年、要求の高まっているプラスチックのリサイクル性に対応し得るものである。
【0104】
さらに、射出成形時のランナーやTダイフィルム成形時の両側カット品をリサイクルできる等の経済的効果をも併せ持つものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性に優れた帯電防止性を有し、かつ、加工時の耐熱性のみならずリサイクルした際のように度重なる熱履歴に対しても優れた耐熱性を有する樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、帯電防止能とその持続性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得るためには、熱可塑性樹脂に対し、帯電防止能を有する高分子化合物を配合する方法が行なわれている。
【0003】
このような高分子化合物を例示すると、メトキシ基の20〜80モル%がジエタノールアミン変性されたポリメチルメタクリレート(特開平1−170603号)、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレートのグラフト共重合体(特公昭58−39860号)、ポリアルキレンオキサイド鎖を含むポリエーテルエステルアミド(特公平4−5691号)等が提案されているが、いずれも帯電防止能について不充分であった。
【0004】
それに対し、4級アンモニウム基含有アクリルアミド共重合体(特開平4−198308号)、アミノアルキルアクリル酸エステル共重合体の4級化物(特開昭62−121717号)等に示されるカチオン性帯電防止剤は、先に述べた非イオン性のものと比較して優れたものであった。
【0005】
しかし、充分な帯電防止能を持つ熱可塑性樹脂組成物を得るために上記4級アンモニウム塩基含有共重合体を用いた場合、組成物の熱安定性の低下のみならず、帯電防止剤自体の熱劣化に伴って性能の低下も引き起こされることがあった。その安定化方法としては、特開平6−329923号に、加工安定剤を用いることによる一定の効果が見出されている。
【0006】
しかし、近年、樹脂のリサイクル性に対する要求の高まりから、度重なる熱履歴に対する熱安定性といったより高度な耐熱性が要求されるようになってきており、それに対して前述の安定化方法では不充分となってきた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、以下の構成からなる。
【0008】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂100重量部、(B)第四級アンモニウム塩基含有共重合体1〜30重量部および(C)メルカプトベンゾチア ゾール誘導体又はメルカプトベンズイミダゾール誘導体0.01〜5重量部からなる。
【0009】
特に、(C)成分を熱安定剤として配合することが本発明の特徴であり、上記問題の解決に寄与している。
【0010】
【発明の実施の形態】
[(A)成分]
本発明において(A)成分として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテルなどが例示できるが、これらのうち、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が、本発明をより効果的に実施できるという点で好ましい。
【0011】
ここでポリオレフィン樹脂とは、ポリオレフィン類、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体などであり、これらの各種ポリオレフィンおよび共重合体のブレンドも含まれる。なかでもポリオレフィン類が、本発明において(C)成分との相溶性がより優れたものとなるという点で好ましい。
【0012】
より詳細には、上記ポリオレフィン類とは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレンとα−オレフィンの共重合体などであり、このようなポリオレフィン類のうち、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、その数平均分子量としては通常5,000〜500,000のものが用いられるが、好ましくは10,000〜200,000のものが用いられる。
【0013】
また、ABS樹脂については、種類は特に限定されず、グラフト法やポリマーブレンド法によるものが使用できる。また、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル−EPDM−スチレン樹脂)なども使用可能であるが、どちらかと言えば、ABS樹脂を使用することが好ましい。
【0014】
ポリアミド樹脂についても特に限定されず、各種のものを使用することができ、脂肪酸、芳香族、いずれのポリアミド樹脂であってもよい。分子量については特に制限はないが、得られる組成物の成形性や物性を考慮すると数平均分子量としては、4,000〜50,000、好ましくは5,000〜30,000が適合する。
【0015】
このようなポリアミド樹脂は、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、三員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの閉環(共)重合や(共)重縮合などによって製造することができる。
【0016】
上述のポリアミド樹脂としては、様々なものを充当することができるが、その具体例を挙げれば、ナイロン6;ナイロン6−6;ナイロン6−10;ナイロン11;ナイロン12;ナイロン6−12;ナイロン4−6などの脂肪族ポリアミド、ナイロン6/6;ナイロン6/6,10;ナイロン6/6,12などの脂肪族共重合ポリアミド、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド;ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド;キシレン基含有ポリアミドなどの芳香族ポリアミドなどがある。さらには、ポリエステルアミド、ポリエステルエーテルアミドなどを挙げることができる。このうち好ましいポリアミド樹脂はナイロン6およびナイロン6−6である。
【0017】
本発明の樹脂組成物では、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはそれらのブレンド系樹脂を用いることができる。
【0018】
上記ポリエステル樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など、結合単位がエステルである樹脂のことである。
【0019】
また、上記ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAなどのビスフェノール類をホスゲンもしくは炭酸エステルなどで重縮合させて得られる樹脂である。
【0020】
ポリスチレン樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンの単独重合体または共重合体が挙げられ、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−マレイミド共重合体や、さらには、スチレン系熱可塑性エラストマーであるスチレン−ブタジエン−スチレンのブロック共重合体の水素添加物(SEBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレンのブロック共重合体の水素添加物(SEPS樹脂)を例示することができる。このような、ポリスチレン樹脂のうち、汎用ポリスチレン(GPPS)、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)が好ましく、その平均分子量としては、20,000〜300,000が好ましく、30,000〜200,000がさらに好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル樹脂としては、アセトン−シアノヒドリン法イソブチレンの硝酸酸化もしくは直接酸化法によって得られたメタクリル酸メチルを塊状、懸濁、乳化重合して得られた樹脂が挙げられ、物性改良のため、ブタジエンやスチレン等を部分的に共重合しているものであっても差しつかえない。
【0022】
また、変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、2,6−キシリレノールの酸化重合法で得られたポリフェニレンエーテルとポリスチレン樹脂とのブレンド、もしくはポリフェニレンエーテルへのスチレンのグラフト重合によって変性されたものである。
【0023】
[(B)成分]
本発明の(B)成分には、次の構造単位からなる第四級アンモニウム塩基含有共重合体が用いられる。すなわち、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位と、一般式(III)〜(V)で表わされる四級アンモニウム塩基含有カチオン性第四級アンモニウム塩構造単位とが線状に配列した、重量平均分子量1,000〜500,000の共重合体である。さらに前記共重合体には一般式(II)で表わされるアクリレート構造単位またはメタクリレート構造単位が含まれていてもよい。
【0024】
請求項2に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、ポリα−オレフィン構造単位、(メタ)アクリレート構造単位および第四級アンモニウム塩基含有構造単位からなる。
【0025】
前記ポリα−オレフィン構造単位は下記一般式(I)で表わされ、
【化17】
前記共重合体中での割合は50〜98.9モル%である。
【0026】
一般式(I)において、R1は水素原子、C1〜C18のアルキル基またはフェニル基であり、R1が水素原子のものとアルキル基、フェニル基のものとが混在していても構わない。すなわち本明細書におけるポリα−オレフィン構造単位とは、狭義のポリα−オレフィン構造単位のみならず、ポリエチレン構造単位、ポリスチレン構造単位、およびこれらのうちの任意のものの共重合構造単位を含むものである。
【0027】
上記ポリα−オレフィン構造単位の割合が50モル%未満である場合には、前記共重合体の軟化点が低くなって、熱可塑性樹脂に配合したときに、タックやベタツキに基づく粘着性が生じ、また98.9モル%を超える場合には、前記共重合体の帯電防止性が小さくなりすぎる。なお、前記ポリα−オレフィン構造単位の割合は、軟化点および帯電防止性の釣り合いの点から68〜97.9モル%であることが特に好ましい。
【0028】
前記(メタ)アクリレート構造単位は下記一般式(II)で表わされ、
【化18】
前記共重合体中での割合は15モル%以下である。
【0029】
上記一般式(II)において、R2は水素原子またはメチル基であり、R3は炭素数1〜18のアルキル基である。このようなR3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−オクチル基、n−ラウリル基、ステアリル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混在してもよい。なお、これらの基の中では、メチル基およびエチル基が軟化点を維持する上で特に好ましいものである。
【0030】
上記(メタ)アクリレート構造単位が含まれている場合には、帯電防止性が向上するので好ましい。この構造単位の割合が15モル%を超えると、前記共重合体の軟化点が低くなって熱可塑性樹脂に配合したときに、タックやベタツキに基づく粘着性が生じるようになる。(メタ)アクリレート構造単位の割合は、帯電防止性、成形された組成物の物性の点から、0.1〜12モル%であることが特に好ましい。
【0031】
前記四級アンモニウム塩基含有カチオン性第四級アンモニウム塩構造単位は、下記一般式(III)または(V)で表わされる構造単位である。
【0032】
まず、一般式(III)で表わされる第四級アンモニウム塩構造単位は下記の構造を有し、
【化19】
前記共重合体での割合は1〜35モル%である。
【0033】
上記一般式(III)において、R4は水素原子またはメチル基である。R5は炭素数2〜8のアルキレン基である。このようなR5の具体例としては、たとえばエチレン基、プロピレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基などが挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、これらの基の中では、製造の容易性および経済性の面からエチレン基およびプロピレン基が好ましく、特にプロピレン基が好ましい。
【0034】
Yは酸素原子またはNHである。
【0035】
また式中、R6およびR7はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基である。このようなR6およびR7の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、これらの基の中では、帯電防止性付与の点からメチル基およびエチル基が好ましい。
【0036】
さらに式中、R8は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリールアルキル基または炭素数6〜12の脂環アルキル基である。このようなR8の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−オクチル基、n−ラウリル基などのアルキル基;ベンジル基、4−メチルベンジル基などのアリールアルキル基;シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基などの脂環アルキル基が挙げられ、これらの基は1分子中に混在していてもよい。なお、前記R8としては、耐熱性の点から、直鎖状アルキル基およびアリールアルキル基が好ましく、また帯電防止性付与の点から低級アルキル基が好ましい。特に好ましいR8としては、メチル基およびエチル基が挙げられる。
【0037】
Xはハロゲン原子、CH3OSO3、C2H5OSO3またはR9−SO3であり、ここでR9は炭素数1〜18のアルキル基または炭素数6〜18のアリールアルキル基である。
【0038】
この一般式(III)で表わされる構造単位の割合が1モル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりすぎ、また35モル%を超える場合には、前記共重合体を熱可塑性樹脂に配合したとき、吸湿性が生じるようになり、得られた成形製品が着色を帯び、しかも帯電防止性の耐久性が損なわれる。なお、前記構造単位の割合は、帯電防止性、その耐久性および吸湿性との釣り合いの点から、2〜20モル%であることが特に好ましい。
【0039】
一般式(V)で表わされる構造単位は下記の構造を有し、
【化20】
その割合は1〜35モル%である。
【0040】
式(V)中、Xは、前記と同じである。なお、これらの中では、帯電防止性の点からCl、CH3OSO3、C2H5OSO3およびR9−SO3が好ましい。式中、R6、R7、R8は、前記と同じである。R9は炭素数1〜18のアルキル基または炭素数6〜18のアリールアルキル基である。
【0041】
本構造単位の割合が1モル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりすぎ、また35モル%を超える場合には、前記共重合体を熱可塑性樹脂に配合したときに、吸湿性が生じるようになり、得られた成形製品が着色を帯び、しかも帯電防止性の耐久性が損なわれる。本構造単位の割合は、帯電防止性、その耐久性および吸湿性との釣り合いの点から、2〜20モル%であることが特に好ましい。
【0042】
請求項3に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、第四級アンモニウム塩基含有構造単位として下記一般式(IV)で表わされる構造単位を含む。すなわち、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位30〜98.9モル%、一般式(II)で表わされる(メタ)アクリレート構造単位15モル%以下および一般式(IV)で表わされる構造単位1〜55モル%からなる。
【0043】
一般式(IV)で表わされる構造単位は下記の構造を有し、
【化21】
前記共重合体中での割合は1〜55モル%である。
【0044】
式(IV)中、R5、R6、R7、R8およびXは、前記と同じである。
【0045】
本構造単位が1モル%未満である場合には、帯電防止性が小さくなりすぎ、55モル%を超える場合には、タックおよび温度依存性が大きくなり、また樹脂との相溶性が悪化する。
【0046】
共重合体中での好ましい割合は、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位38〜97.9モル%、一般式(II)で表わされる(メタ)アクリレート構造単位0.1〜12モル%、一般式(IV)で表わされる構造単位2〜50モル%である。
【0047】
請求項4に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位65〜99モル%および一般式(III)または(V)で表わされる第四級アンモニウム塩基含有構造単位1〜35モル%からなる。好ましい割合は、それぞれ、65〜98モル%、2〜35モル%である。
【0048】
請求項5に記載された第四級アンモニウム塩基含有共重合体は、一般式(I)で表わされるポリα−オレフィン構造単位45〜99モル%および一般式(IV)で表わされる第四級アンモニウム塩基含有構造単位1〜55モル%からなる。好ましい割合は、それぞれ、50〜98モル%、2〜50モル%である。
【0049】
(B)成分の重量平均分子量は、1,000〜500,000の範囲のものが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことであり、超高温GPC(絹川、高分子論文集、第44巻、2号、139〜141頁(1987年))に準じて測定することができる。この分子量が1,000未満である場合には、分子量が小さすぎて、熱可塑性樹脂に配合して加熱したときに揮散するおそれがあり、また500,000を超える場合には、溶融したときの粘度が大きくなりすぎ、作業性が悪くなる。
【0050】
[(C)成分]
(C)成分の熱安定剤は、メルカプトベンゾチアゾール誘導体として、
【化22】
【化23】
メルカプトベンズイミダゾール誘導体として、
【化24】
について効果が認められる。中でも、2−メルカプトベンゾチアゾール[C−a]、ジベンゾチアジルジスルフィド[C−d]、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−f]、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール[C−g]、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−h]、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−i]、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド[C−j]、2−メルカプトベンズイミダゾール[C−k]、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール[C−l]が好ましい効果を示す。この(C)成分は2種以上を併用してもよい。
【0051】
前述の(B)成分および(C)成分の配合割合は、(A)成分100重量部に対して(B)成分が1〜30重量部、(C)成分が0.01〜5重量部である。
【0052】
(B)成分の配合割合が1重量部未満であると、帯電防止効果が小さく、30重量部を超えると、帯電防止効果は充分であるが、経済的に不利となる。帯電防止能と経済性とのバランスを考慮した場合、特に望ましい範囲は2〜20重量部である。
【0053】
(C)成分の配合割合が0.01重量部未満であると、熱履歴に対する熱安定性が充分に得られず、5重量部を超えると、効果は認められるものの不経済なものとなる。
【0054】
[(D)成分]
また、加工安定剤としてリン系安定剤を用いてもよいが、このリン系安定剤としては、
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
等が挙げられる。この中でも特に、トリス−(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト[D−f]、トリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト[D−g]、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスフォナイト[D−n]、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキシド[D−o]等が着色性、加工時の性能保持といった観点から有効である。
【0055】
リン系安定剤の添加量の範囲は0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部である。
【0056】
また、フェノール系安定剤をこれらの系へ配合しても差しつかえなく、その場合は以下のものが効果的である。
【化29】
【化30】
フェノール系安定剤の添加量は、0.01〜0.5重量部が適当である。
【0057】
上記の(A)〜(C)および(D)成分の配合方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法、すなわち一軸、二軸押出し機または加圧ニーダー等を用いて溶融混練することにより、樹脂組成物とすることができる。
【0058】
【実施例】
本発明における(B)成分である第四級アンモニウム塩基含有カチオン性共重合体は以下のようにして製造した。
【0059】
[製造例1(アクリルアミド系共重合体[B−a]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、キシレン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸=93/3/4)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0060】
次に、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン21.1gを仕込み、オイルバスを用いて140℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、140℃で17時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化反応を継続した。
【0061】
得られた反応物458gを80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからヨウ化メチル28.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリルアミド系共重合体を製造した。
【0062】
[製造例2(アクリル酸エステル系共重合体[B−b]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、トルエン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸=93/3/4)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0063】
次に、N,N−ジメチルアミノプロパノール21.1gを仕込み、オイルバスを用いて110℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、110℃で5時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでエステル化反応を継続した。
【0064】
得られた反応物460gを80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからヨウ化メチル28.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノールの中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリル酸エステル系共重合体を製造した。
【0065】
[製造例3(コハクイミド系共重合体[B−c]製造)]
温度計、滴下ロート、撹拌機およびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、トルエン400ml、スチレン−無水マレイン酸共重合体(スチレン/無水マレイン酸=3/1モル)100gを仕込み、加熱、溶解した。
【0066】
次いで、N,N′−ジメチルアミノプロピルアミン25.4gを徐々に滴下した。終了後、110℃まで昇温し、還流しながら脱水反応を4時間行なった。
【0067】
得られた反応物を80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからジエチル硫酸38.3gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。こうして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してコハクイミド系共重合体を製造した。
【0068】
[製造例4(ベンジル型カチオン共重合体[B−d]製造)]
温度計、撹拌機、N2ガス導入管および冷却管を備えた1リットルの四ツ口フラスコにトルエン400ml、スチレンモノマー104g、ビニルベンジルクロライド76.2gを仕込み、N2ガスを導入しながら80℃まで昇温した。そのまま1時間持続し、系内の空気を除去した。
【0069】
次に、ラウロイルパーオキサイド0.88gを少量のトルエンに溶解し、上記溶液に添加した。
【0070】
反応初期において発熱がみられるが、冷却などにより内温度を80〜90℃に保ちながら6時間反応を行なった。
【0071】
次に、得られた反応物にオクチルジメチルアミン80gを添加し、90〜100℃で5時間四級化反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してベンジル型カチオン共重合体を製造した。
【0072】
[製造例5(アクリルアミド系共重合体[B−e]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、キシレン400ml、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸エチル/アクリル酸=93/3/4)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0073】
次に、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン21.1gを仕込み、オイルバスを用いて140℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、140℃で17時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化反応を継続した。
【0074】
得られた反応物458gを80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからメタンスルホン酸メチル22.2gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリルアミド系共重合体を製造した。
【0075】
[製造例6(アクリルアミド系共重合体[B−f]の製造)]
温度計、撹拌機、滴下ロートおよびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、キシレン400ml、エチレン−アクリル酸共重合体(不規則に配列しており、そのモル比はエチレン/アクリル酸=90/10)150gおよびパラトルエンスルホン酸1.0gを仕込んだ。
【0076】
次に、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン39.2gを仕込み、オイルバスを用いて140℃に加熱し、生成した水をキシレンとの共沸により連続的に除去し、さらに、140℃で17時間、水が生成しなくなり水の共沸が認められなくなるまでアミド化反応を継続した。
【0077】
得られた反応物を80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからパラトルエンスルホン酸メチル59.7gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してアクリルアミド系共重合体を製造した。
【0078】
[製造例7(コハクイミド系共重合体[B−g]の製造)]
温度計、滴下ロート、撹拌機およびディーン・スターク分水器を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、トルエン400ml、スチレン−メタクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(スチレン/メタクリル酸エチル/無水マレイン酸=5/1/4モル)85.2gを仕込み、加熱、溶解した。
【0079】
次いで、N,N′−ジメチルアミノプロピルアミン25.4gを徐々に滴下した。終了後、110℃まで昇温し、還流しながら脱水反応を4時間行なった。
【0080】
得られた反応物を80℃まで冷却し、その反応混合物に滴下ロートからジエチル硫酸38.3gを1時間かけて徐々に滴下した。この間、発熱が認められたが、冷却することにより反応温度を90℃に維持した。滴下終了後、100℃で4時間熟成反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノールの中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してコハクイミド系共重合体を製造した。
【0081】
[製造例8(ベンジル型カチオン共重合体[B−h]の製造)]
温度計、撹拌機、N2ガス導入管および冷却管を備えた1リットルの四ツ口フラスコにトルエン400ml、スチレンモノマー72.8g、メタクリル酸エチル13.7g、ビニルベンジルクロライド27.5gを仕込み(スチレン/メタクリル酸エチル/ビニルベンジルクロライド=70/12/18モル)、N2ガスを導入しながら80℃まで昇温した。そのまま1時間持続し、系内の空気を除去した。
【0082】
次に、ラウロイルパーオキサイド0.88gを少量のトルエンに溶解し、上記溶液に添加した。
【0083】
反応初期において発熱がみられるが、冷却などにより内温度を80〜90℃に保ちながら6時間反応を行なった。
【0084】
次に、得られた反応物にオクチルジメチルアミン80gを添加し、90〜100℃で5時間四級化反応を行なった。このようにして得られた反応物を多量のメタノール中へ投入し、生成した沈殿物を回収、乾燥してベンジル型カチオン共重合体を製造した。
【0085】
上記の製造例1〜8で得られた共重合体[B−a]〜[B−h]の重量平均分子量、および構造単位(I)〜(V)の割合(モル%)を下記の方法で求めた。結果を表1に示す。
【0086】
[B−a]、[B−e]、[B−f]:赤外吸収スペクトルを測定し、オレフィン共重合体のアルキル基に基づく1400〜1500cm−1の吸収とアクリレートのカルボニルに基づく1730〜1735cm−1の吸収およびN−置換アミドに基づく1650cm−1の吸光度の比より求めた。
【0087】
[B−b]:赤外吸収スペクトルを測定し、オレフィン共重合体のアルキル基に基づく1400〜1500cm−1の吸収とアクリレートのカルボニルに基づく1730〜1735cm−1の吸収、および元素分析による窒素の微量分析より求めた。
【0088】
[B−c]、[B−d]:一般式(IV)、(V)のモル%を、元素分析による窒素の微量分析により求めた。一般式(I)のモル%は100よりその数値を引いたものである。
【0089】
[B−g]、[B−h]:赤外吸収スペクトルを測定し、スチレン共重合体のフェニル基に基づく1600〜1620cm−1の吸収とアクリレートのカルボニルに基づく1730〜1735cm−1の吸収、および元素分析による窒素の微量分析より求めた。
【0090】
【表1】
[実施例1〜17および比較例1〜15]
上記の製造例1〜8で得た[B]成分、下記表2、表3に記載した熱可塑性樹脂([A]成分)、安定剤([C]成分)およびリン化合物([D]成分)を、同表に記載した割合で配合し、二軸押出し機(KRCニーダー、栗本鉄工所製)を用いて混練温度を変えて溶融、混練してペレット化した。
【0091】
また、熱履歴に対する安定性を調べるため、押出し機による押出し回数を変えて(1回、3回、5回)溶融、混練してペレット化した。
【0092】
ここで使用した押出し機の平均滞留時間は3.04分であった。
【0093】
次いで、得られたペレットを射出成形機(Hipershot3000,新潟鉄工所製)を用いて加工し、60mm×60mm×3mmの平板(試験片)を作製した。
【0094】
【表2】
【表3】
上記により得た試験片を用いて、下記のように帯電防止性と着色性を評価した。
【0095】
(帯電防止性)
上記で得られた試験片を、アドバンテスト社製超絶縁抵抗計を用い、20℃、60%RHの条件で24時間調湿した後、表面固有抵抗を測定して行なった。
【0096】
(着色性)
日本電子社製の色差計Z−1001DPにより、実施例、比較例で作製した試験片のYI値を測定し、熱可塑性樹脂([A]成分)のみで作製した試験片の測定値との差を色差(ΔYI)として示した。なお、この値が小さい程、黄変度が小さいことを示す。
【0097】
結果を表4、表5に併記する。
【0098】
【表4】
【表5】
[実施例18〜29および比較例16〜26]
リサイクル性試験を以下のようにして行なった。
【0099】
熱可塑性樹脂([A]成分)、製造例1〜8で得た[B]成分、安定剤([C]成分)およびリン化合物([D]成分)を、表6に記載した割合で配合し、二軸押出し機(KRCニーダー、栗本鉄工所製)を用いて混練してペレット化した。
【0100】
得られたペレットを前述と同様に射出成形し、それを破砕機にかけて破砕した。
【0101】
ここで得られた破砕物を再度射出成形し、60mm×60mm×3mm平板とJIS K−7110による2号A試験片を作製し、試験に供した。表面固有抵抗は前述と同様にして測定し、耐衝撃性はアイゾッド衝撃強度をJIS K−7110に従って測定して評価した。結果を表6に併記する。
【0102】
【表6】
【0103】
【発明の効果】
本発明における樹脂組成物は、従来知られていた加工安定剤を含有する組成物と比較して、度重なる熱履歴に対しても優れた耐熱性を示す。従って、近年、要求の高まっているプラスチックのリサイクル性に対応し得るものである。
【0104】
さらに、射出成形時のランナーやTダイフィルム成形時の両側カット品をリサイクルできる等の経済的効果をも併せ持つものである。
Claims (9)
- (A)熱可塑性樹脂100重量部、
(B)第四級アンモニウム塩基含有共重合体1〜30重量部および
(C)メルカプトベンゾチアゾール誘導体又はメルカプトベンズイミダゾール誘導体0.01〜5重量部
からなる熱可塑性樹脂組成物。 - ホスファイト、ホスホナイトおよびホスファンオキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種のリン化合物0.01〜5重量部を配合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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JP19142595A JP3572733B2 (ja) | 1995-07-27 | 1995-07-27 | 熱可塑性樹脂組成物 |
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- 1995-07-27 JP JP19142595A patent/JP3572733B2/ja not_active Expired - Lifetime
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