JP3572440B2 - インバータ溶接機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータ溶接機の制御装置に係り、特に、一次電圧の変動に応じてスイッチングのデューティー比を変化させるようにしたインバータ溶接機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、溶接品質の向上の要請から、インバータ溶接機が一般的に用いられるようになってきている。このインバータ溶接機を制御する制御装置は、概略図6に示すような回路構成になっている。
【0003】
図中の整流回路10は、三相交流電圧を整流、平滑して直流電圧を生成するものである。この直流電圧は、4つのスイッチングトランジスタから構成されるスイッチング回路20のスイッチング動作によって任意の電圧及び周波数の交流電圧に変換される。このスイッチングを制御するのが溶接タイマ30である。スイッチング回路20を介してトランス40の一次巻線に供給される二次電流は、電流検出器50によって監視され、検出電流値を溶接タイマ30にフィードバックしている。設定器60には、その溶接に最適な設定電流値とその時のスイッチングのデューティー比及び前記検出電流値が設定電流値から外れている場合のデューティー比補正量が記憶されている。
【0004】
したがって、溶接タイマ30は、設定器60に記憶されている設定電流値とその電流値に対応するデューティー比に基づいて4つのスイッチングトランジスタをそれぞれスイッチング動作させ、二次電流が前記設定電流から外れている場合にはその程度に応じて前述のデューティー比補正量によりデューティー比を調整し、二次電流が常に設定電流値に一致するように制御している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来のインバータ溶接機の制御装置にあっては、上記したように、また図6に具体的に示してあるように、トランス40に流れる二次電流の変動のみを見てスイッチング回路20に与えるスイッチングパルスのデューティー比を調整していたので、一次電圧が変動した場合には、必ずしも二次電流を設定値に維持することができないという問題がある。
【0006】
図6に示すように、電流検出器50によって検出された二次電流値が設定値よりも低い場合には、その程度(検出値が設定値よりも何アンペア低いか)に応じて、スイッチングトランジスタに供給するスイッチングパルス(PWMスイッチング指令)のデューティー比を増加している。すなわちパルス幅を広くする。
【0007】
溶接タイマ30に記憶されている補正データ、すなわち、検出される二次電流が設定値よりもどの程度低い場合にはデューティー比をどの程度増加するのかというデータ又はこの逆の場合のデータは、一次電圧が変動しないことを条件に設定されているものである。
【0008】
したがって、一次電圧の変動がたとえば1%程度の小さなものであれば、従来の制御装置でも対応は可能であるが、この変動が5%というような大きなものになると、二次電流だけを見て補正をする従来の制御装置では対応できなくなる。この結果、溶接品質が低下する恐れがでてくるのである。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、一次電圧の変動に応じてスイッチングのデューティー比を変化させるようにしたインバータ溶接機の制御装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は次のように構成される。
請求項1に記載の発明は、整流回路とスイッチング回路とを有するインバータ溶接機の制御装置において、前記整流回路から出力される電圧を検出する電圧検出手段と、前記スイッチング回路から出力される電流を検出する電流検出手段と、前記電圧検出手段によって検出された電圧値及び前記電流検出手段によって検出された電流値に基づいて前記スイッチング回路に供給すべきスイッチングパルスを生成するスイッチングパルス生成手段とを有し、前記スイッチングパルス生成手段は、前記電流検出手段によって検出された電流値と設定電流値との差に基づいて前記スイッチングパルスのデューティー比を決定するデューティー比決定手段と、前記電圧検出手段によって検出された電圧値と設定電圧値との差に基づいて、前記デューティー比決定手段によって決定されたデューティー比を補正するデューティー比補正手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインバータ溶接機の制御装置において、前記整流回路は、その一時側が三相交流電源又は単相交流電源に接続されることを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明に係るインバータ溶接機の制御装置は、請求項毎に次のような効果を奏する。
【0016】
請求項1に記載の発明においては、整流回路から出力される電圧値とスイッチング回路から出力される電流値とに基づいてスイッチング回路に供給すべきスイッチングパルスを生成するようにし、また、スイッチングパルス生成手段を、スイッチング回路から出力された電流値と設定電流値との差からスイッチングパルスのデューティー比を決定するデューティー比決定手段と、整流回路から出力される電圧値と設定電圧値との差から前記デューティー比決定手段によって決定されたデューティー比を補正するデューティー比補正手段とによって構成したので、整流回路から出力される電圧が変動したとしても、その影響を受けずに、スイッチング回路からは所望の電流値の電流を出力することが可能になる。この結果、良好な溶接品質の溶接をすることができるようになる。
【0018】
請求項に記載の発明において、整流回路を三相交流電源又は単相交流電源に接続した場合には、これらの電源に電圧変動が生じた場合でも、良好な溶接品質の溶接をすることができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、図面に基づいて本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインバータ溶接器の制御装置の回路構成を示す図である。この回路の構成要素の動作及び回路全体の動作は次の通りである。
図中の電源5は、三相交流電源であり、通常200V又は400V程度の電圧である。なお、この図では三相交流電源を用いているが、もちろん単相交流電源の接続も可能である。
【0020】
整流回路10は、この三相交流電源5から出力される電圧を整流、平滑して直流電圧を生成する回路であり、6つの整流ダイオード10A〜10Fと平滑コンデンサ15とから構成される。この平滑コンデンサ15によってリップルの少ない直流電圧が生成される。平滑コンデンサ15を介して出力される直流電圧の電圧値は、電圧検出手段として機能する電圧検出センサ70によって検出され、後述の溶接タイマ30に出力される。
【0021】
スイッチング回路20は、4つのスイッチングトランジスタ20A〜20Dから構成され、これらのスイッチングトランジスタのON,OFFを制御することによって、入力される直流電圧を所望の周波数のパルス状の交流電圧に変換する。これらのスイッチングトランジスタのスイッチングの制御は溶接タイマ30が行なうが、このスイッチング制御については後で詳しく説明する。
【0022】
スイッチング回路20には溶接トランス40の一次巻線40Aが接続され、スイッチング回路20から出力される所望の周波数の交流電圧がこの一次巻線40Aに印加されることになる。この一次巻線40Aに流れる電流の大きさ(電流値)は、電流検出手段として機能する電流検出センサ50によって検出され、後述の溶接タイマ30にフィードバックされる。
【0023】
溶接トランス40の二次巻線40Bには溶接ガン45が取り付けられ、この溶接ガン45によって所望の溶接がされる。なお、この二次巻線40Bには交流電圧が誘起されるが、2つのダイオード42A,42Bによって整流され、溶接ガン45には直流電圧が印加される。
【0024】
設定器60には、最適な溶接ができる電流値として設定した設定電流値と、その電流値に対応するスイッチングパルスのデューティー比と、電源電圧値として設定した設定電圧とが設定されている。なお、設定電流値と設定電圧値とは作業者が任意に設定可能であるが、スイッチングパルスのデューティー比は、設定電流値に応じたデータを予め記憶しておく。
【0025】
溶接タイマ30は、電流検出センサ50によって検出された検出電流値、電圧検出センサ70によって検出された検出電圧値、設定器60に設定されている設定電流値、設定電圧値、スイッチングパルスのデューティー比に基づいて、各スイッチングトランジスタ20A〜20Dに出力するスイッチングパルスのデューティー比を演算するものである。
【0026】
この溶接タイマ30内には、電流検出センサ50によって検出された電流値と設定電流値との差に基づいて前記スイッチングパルスのデューティー比を決定するデューティー比決定手段と、電圧検出センサ70によって検出された電圧値と設定電圧値との差に基づいて、前記デューティー比決定手段によって決定されたデューティー比を補正するデューティー比補正手段とが設けられている。
なお、スイッチング回路20、溶接タイマ30及び設定器60によってスイッチングパルス生成手段を構成する。
【0027】
次に、本発明装置の具体的な動作を、図1から図4に基づいて説明する。
整流回路10からは、三相交流電源5から出力された電圧が整流されるが、完全にはリップルの除去ができないので、その出力電圧は若干の変動をする。図2は、単相交流電源を用いた場合の実測例を示してある。
【0028】
図(A)は、単相交流電源を接続した場合における整流回路10の出力電圧の変動状況とスイッチング回路20から出力される電流の変動状況を示している。図符Aで示す曲線が整流回路10の出力電圧の変動状況を示し、図符Bで示す曲線がスイッチング回路20から出力される電流の変動状況を示しているこの図を見ればわかるように、一次電圧の変動が溶接電流に悪影響を与えていることがわかる。
【0029】
図(B)は、単相交流電源を接続した場合における整流回路10の出力電圧の変動状況とスイッチング回路20の出力電圧の変動状況を示している。図符Cで示す曲線が整流回路10の出力電圧の変動状況を示し、図符Dで示す曲線がスイッチング回路20の出力電圧の変動状況を示しているこの図を見ればわかるように、一次電圧の変動が溶接電圧にも影響を与えていることがわかる。
【0030】
本発明の装置では、電源電圧の変動をスイッチングパルスのデューティー比を制御することによって溶接に悪影響が及ばないようにしている。まず、溶接タイマ30には、前述のようにデューティー比決定手段とデューティー比補正手段とが設けられているが、デューティー比決定手段では、電流検出センサ50によって検出された電流値と設定電流値との差に基づいて前記スイッチングパルスのデューティー比を決定している。たとえば、設定電流値が1000Aであ、検出電流値が970Aであったときには、30A不足しているのであるから、現在スイッチングトランジスタ20A〜20Dに供給しているスイッチングパルスのデューティー比を記憶されているデータにしたがって大きくする。このデータは、たとえば、「検出された電流値と設定電流値との差が何アンペア(不足、超過)のときにはデューティー比を何%変化(増加、減少)させなさい」というものである。このデータが、30A不足している場合に5%デューティー比を増加させるというものであれば、現在のスイッチングパルスのデューティー比を5%増加する
【0031】
電源電圧が変動して、整流回路10の出力電圧が変動した場合には、以上のように決定されたデューティー比をさらにデューティー比補正手段によって補正する。デューティー比補正手段では、電圧検出センサ70によって検出された電圧値と設定電圧値との差に基づいてスイッチングパルスのデューティー比を補正する。この補正に使用される補正データは、具体的には、図3に示すように作られる。
【0032】
図3に示すように、検出された電圧値hが設定電圧値よりも小さい(−10V)場合には、パルスの高さが電圧の変動分(10V分)だけ下がるので、パルスの面積がその分だけ小さくなる。したがって、このパルスの面積が同じくなるようにパルス幅を大きくする。すなわち、スイッチングパルスのデューティー比を大きくする。この例のように、10V低下したときには、デューティー比をたとえば2%増加する。この演算をさせるためには、デューティー比決定手段と同じようなデータが必要であるが、このデータは、たとえば、「検出された電圧値と設定電圧値との差が何ボルト(不足、超過)のときにはデューティー比を何%変化(増加、減少)させなさい」というものである。このデータが、10V不足している場合に2%デューティー比を増加させるというものであれば、現在のスイッチングパルスのデューティー比を2%増加する
【0033】
検出された電圧値がh′であるときには上記とは逆にスイッチングパルスのデューティー比を減少させる。
したがって、上記のように、設定電流値と検出電流値との差が30Aであり、かつ、設定電圧値と検出電圧値との差が10Vであれば、今供給しているスイッチングパルスのデューティー比を7%増加して、以降のスイッチングパルスとする。
このようにすれば、図4のように電源電圧、すなわち一次電圧が変動しても、溶接電流を安定して供給することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインバータ溶接器の制御装置の回路構成を示す図である。
【図2】一次電圧と二次電流の実際の変動状況を示す図である。
【図3】スイッチングパルス(PWMスイッチング指令)のデューティー比の補正に関する説明図である。
【図4】実際のデューティー比の補正状態を示す図である。
【図5】従来のインバータ溶接器の制御装置の回路構成を示す図である。
【図6】従来のインバータ溶接器の制御装置におけるデューティー比の補正状態を示す図である。
【符号の説明】
5…三相交流電源、
10…整流回路、
20…スイッチング回路、
30…溶接タイマ、
40…溶接トランス、
50…電流検出センサ、
60…設定器、
70…電圧検出センサ、

Claims (2)

  1. 整流回路とスイッチング回路とを有するインバータ溶接機の制御装置において、
    前記整流回路から出力される電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記スイッチング回路から出力される電流を検出する電流検出手段と、
    前記電圧検出手段によって検出された電圧値及び前記電流検出手段によって検出された電流値に基づいて前記スイッチング回路に供給すべきスイッチングパルスを生成するスイッチングパルス生成手段とを有し、
    前記スイッチングパルス生成手段は、前記電流検出手段によって検出された電流値と設定電流値との差に基づいて前記スイッチングパルスのデューティー比を決定するデューティー比決定手段と、前記電圧検出手段によって検出された電圧値と設定電圧値との差に基づいて、前記デューティー比決定手段によって決定されたデューティー比を補正するデューティー比補正手段とを有することを特徴とするインバータ溶接機の制御装置。
  2. 前記整流回路は、その一時側が三相交流電源又は単相交流電源に接続されることを特徴とする請求項1に記載のインバータ溶接機の制御装置。
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