JP3572120B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性スチレン系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、樹脂組成物の熱分解時に腐食性のガス又は有毒性のガスの発生がなく、且つ、物理的特性の低下のない、高度の難燃性を有した樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スチレン系樹脂に難燃性を付与する方法として、デカブロモジフェニルエ−テルに代表されるハロゲン系難燃剤を充填している。しかし、ハロゲン系難燃剤は、加工時あるいは燃焼時に腐食性または有毒性のガスが発生するという欠点を有する。
【0003】
近年、環境問題に対する関心が高まるなか、これらの欠点を解決する方法として、ハロゲンを使用せずにスチレン系樹脂を難燃化する方法が挙げられる。しかし通常、UL94V−0レベルの難燃性が得られるまでにはスチレン系樹脂材料に多量の添加剤を充填する必要がある。このように多量の添加剤を充填すると材料の物理的特性を低下させると言う問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加工時あるいは燃焼時に腐食性または有毒性のガスの発生がなく、優れた難燃性を有し、物理的特性の低下が小さく、ハロゲンを含有しない難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、スチレン系樹脂に対してリン酸メラミン、多価アルコ−ル、一般式(Ι)で示されるビシクロリン酸エステル化合物及び場合によりシリコ−ンオイルを含有せしめることで、組成物の熱分解時に腐食性のガス又は有毒性のガスの発生がなく、且つ、物理的特性の低下のない難燃性樹脂組成物を見出し、本発明を完成するに至った。また、前記難燃性樹脂組成物にモリブデン化合物、ホスフェート系難燃化化合物及びフッ素化されたポリオレフィンを添加することで、より高度の難燃性を付与することを見出した。
【0006】
即ち、本発明は、(a)スチレン系樹脂 100重量部に対して、(b)リン酸メラミン 10〜50重量部、(c)多価アルコール 1〜20重量部(d)一般式(I)
【化2】
Figure 0003572120
(式中、lは0〜2の整数、mおよびnはそれぞれ1〜3の整数、Rはメチン基、又は炭素数1〜20のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、及びヒドロキシメチル基から選ばれた置換基を有するメチン基を表す。)で示されるビシクロリン酸エステル化合物 1〜20重量部、(e)シリコーンオイル 0〜20重量部 を含有してなる難燃性樹脂組成物に関する。
【0007】
また、前記難燃性樹脂組成物にさらに(f)モリブデン化合物 0.01〜10重量部を含有してなる難燃性樹脂組成物。
【0008】
また、前記難燃性樹脂組成物にさらに(g)ホスフェート系難燃化化合物 0.1〜20重量部並びに(h)フッ素化されたポリオレフィン0.01〜10重量部を含有してなる難燃性樹脂組成物を提供することである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(a)成分であるスチレン系樹脂とは、スチレンまたはα−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン誘導体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレ−トなどのビニルモノマ−との共重合体、ポリブタジエンなどのジエン系ゴム、エチレン/プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンまたはスチレン誘導体及び他のビニルモノマ−をグラフト重合させたものであり、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂などである。
【0010】
本発明で使用する(b)成分であるリン酸メラミンとは、メラミンとリン酸化合物との反応生成物であり、代表例として、オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ジメラミン、メタリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンなどが挙げられる。
【0011】
本発明で使用する(c)成分である多価アルコールとは、複数個のヒドロキシル基が結合している非環式および環式化合物であり、たとえば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンチトール類(アドニトール、アラビトールなど)、ヘキシトール類(ズルシトール、イノシトールなど)、およびサッカリド類(アミロース、キシランなど)、ならびに、これらの誘導体(N−メチルグルカミンなど)などである。
【0012】
本発明で使用する(d)成分であるビシクロリン酸エステル化合物は一般式(Ι)
【化3】
Figure 0003572120
(式中、lは0〜2の整数、mおよびnはそれぞれ1〜3の整数、Rは炭素数1〜20のメチン基またはその誘導体を表す。)
で示される。
【0013】
ビシクロリン酸エステル化合物の代表的な例としては、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−メチル−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−エチル−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヘキシル−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヘキサデシル−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ニトロ−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−アミノ−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヒドロキシメチル−1−オキシド、2,8,9−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(3,3,1)ノナン−5−メチル−1−オキシド、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,1)ヘプタン−4−メチル−1−オキシドおよび同等物である。特に好適な化合物は2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヒドロキシメチル−1−オキシドである。この化合物はリン酸メラミンと組み合わせることにより発泡性組成物を生成することが知られている(特公平4−57707)。しかし、UL94V−0レベルの難燃性を付与するために、この特許に示されているような配合比率と配合量でスチレン系樹脂に2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヒドロキシメチル−1−オキシドを添加した系では、成型品表面のべとつきおよび強度低下により射出成形が困難であった。また、リン酸メラミンに対して2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヒドロキシメチル−1−オキシドを過剰に添加すると成型品表面のべとつきが観察された。ここでは、2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヒドロキシメチル−1−オキシド/リン酸メラミンの比の値が1:1より小さい値である方が好ましい。また、ビシクロリン酸エステル化合物の溶融物がリン酸メラミンを溶解させることが判っており、ビシクロリン酸エステル化合物と併用することにより、リン酸メラミンの分散性が改善され成型品表面の外観が良好になる。
【0014】
本発明で使用する(e)成分であるシリコーンオイルとは、広範囲のポリシロキサン材料全体に対する総称である。典型的な場合の有効なシリコーンとは、次のようなシリコーン流体またはガムである。
【0015】
すなわち、典型的にはRSiO0.5 、RSiO、RSiO1.5 、RSiO0.5 、RRSiO、(R)2 SiO、RSiO1.5 およびSiOならびにこれらの混合物より成る群の中から選択される化学的に結合したシロキシ単位から構成されているオルガノポリシロキサンポリマーである。ただしここで、各Rはそれぞれ独立して飽和か不飽和で一価の炭化水素基を表しており、Rは、Rのような基か、または水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリール基、ビニル基またはアリル基などより成る群の中から選択された基を表している。また、上記のオルガノポリシロキサンは25℃でおよそ600〜300,000,000センチポイズの粘度を有している。好ましいシリコーンオイルは25℃でおよそ90,000〜150,000センチポイズの粘度を有するポリジメチルシロキサンである。
【0016】
本発明で使用する(f)成分であるモリブデン化合物とは、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、ジモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸ナトリウム、等の酸化物、硫化物、モリブデン酸塩等である。
【0017】
本発明で使用する(g)成分であるホスフェート系難燃化化合物とは、モノホスフェート化合物及びジホスフェート化合物であり、好ましい難燃化化合物はトリアリールホスフェート、アルキルアリールホスフェート及びトリアルキルホスフェートなどである。これらのホスフェートの例としてはトリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート及びイソプロピルトリフェニルホスフェートが挙げられる。特に、難燃効果が気相で作用するホスフェート系難燃化化合物が有効である。
【0018】
本発明で使用する(h)成分であるフッ素化されたポリオレフィンとは、高分子量のものであり、そして−30℃以上、好ましくは100℃以上のガラス転移温度、65〜76重量%、より好ましくは70〜76重量%のフッ素含有量、0.05〜1,000μm、好ましくは0.08〜20μmの平均粒径及び1.2〜2.3g/cmの密度を有する。好適なフッ素化されたポリオレフィンはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン及びエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体である。
【0019】
本発明の樹脂組成物において、(b)成分のリン酸メラミンの配合量は、前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して、10〜50重量部である。配合量が10重量部未満では難燃効果が十分ではなく、また、50重量部を越えると組成物の機械的特性を損ない、機械的強度が低下し、さらに、電気特性も低下させるため好ましくない。好ましくは20〜40重量部である。(c)成分である多価アルコ−ルは前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部である。配合量が1重量部未満では難燃効果が十分ではなく、また、20重量部を越えると組成物の機械的特性を損ない、機械的強度が低下し、さらに、電気特性も低下させるため好ましくない。好ましくは5〜10重量部である。
【0020】
(d)成分である一般式(Ι)で示されるビシクロリン酸エステル化合物の配合量は、前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。配合量が1重量部未満では、充分な分散性改良効果および難燃性向上効果を期待できない。また、20重量部を超えるとブリ−ドアウトによる成型品表面のべとつきが発生し外観上問題となる。
【0021】
(e)成分であるシリコーンオイルの配合量は、前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して0〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。シリコーンオイルを添加しなくても難燃効果に対する影響はほとんどないが、添加することで衝撃強度の改善がみられる。一方、20重量部を超えると組成物の機械的特性を損ない、コストが高くなる。(f)成分のモリブデン化合物の配合量は、前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。モリブデン化合物の配合量は0.01重量部未満では、充分な難燃性向上効果を期待できない。一方、10重量部を超えると、機械的強度の点で問題がある。(g)成分のホスフェート系難燃化化合物の配合量は、前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜10重量部である。ホスフェート系難燃化化合物の配合量は0.1重量部未満では、充分な難燃性向上効果および可塑化による衝撃強度改良効果を期待できない。一方、20重量部を超えると、熱変形温度が低くなり実用上問題である。(h)成分のフッ素化されたポリオレフィンの配合量は、前記(a)成分のスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜1重量部である。フッ素化されたポリオレフィンの配合量は0.01重量部未満では、ホスフェート系難燃化化合物を添加した時に生じる樹脂の可塑化によるドリッピングを防止する機能が充分でない。一方、10重量部を超えると、機械的特性を損ない、コストが高くなる。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、これらの各成分を所定量配合することによって得られるが、その製造法は常法に従えばよい。例えば、(a)〜(e)及び場合によっては、(f)、(g)、(h)の各成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で混練したり、あるいは加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練することによって製造する。なお、この際必要に応じてスチレン系樹脂に一般的に配合されている各種添加剤、例えば充填剤、滑剤、補強剤、安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、衝撃改良剤、色相改良剤等を添加してもよい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例、比較例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
尚、以下の実施例及び比較例の難燃性スチレン系樹脂組成物の評価は下記の要領で行った。
【0025】
(1)耐衝撃強度
耐衝撃強度は、ノッチ無しのアイゾット衝撃強度を尺度とし、厚み1/4インチの試験片を評価した。
【0026】
(2)難燃性
難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL94に規定されている垂直燃焼性試験(94V−0)に準拠し、厚み1/8インチの試験片を評価した。
【0027】
(3)ブリ−ド性
成型品表面に染み出てくる物(添加物など)があるか目視で判断する
異常がないもの:○
ベトツキのあるもの:×
(4)分散性
成型品表面に白点や黒点などの分散不良に伴う凝集物の存在を目視で判断する
分散良好(外観良好):○
分散不良(外観不良):×
実施例1〜5、比較例1〜6
スチレン系樹脂としてハイインパクトポリスチレン(HIPS)、リン酸メラミンとしてリン酸メラミン(大日ケミカル(株))、多価アルコールとしてペンタエリスリトール(日本合成化学工業(株))、ビシクロリン酸エステル化合物として2,6,7−トリオキサ−1−ホスホビシクロ(2,2,2)オクタン−4−ヒドロキシメチル−1−オキシド(PEPA)、シリコーンオイルとしてTSF451−10M(東芝シリコーン(株))、モリブデン化合物として三酸化モリブデン(日本無機化学工業(株))、ホスフェート系難燃化化合物としてトリフェニルホスフェート(大八化学工業(株))、フッ素化されたポリオレフィンとしてテフロン(登録商標)6−J(三井デュポンフロロケミカル(株))、を第1表に示すような組合せと比率にてタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練しペレット状の樹脂組成物を得た。次に、射出成形機(シリンダー温度200℃、金型温度50℃)で一般物性用試験片を作成し、定法に従い物性を測定した。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003572120
【0029】
【発明の効果】
スチレン系樹脂にリン酸メラミンと多価アルコールおよびビシクロリン酸エステル化合物それにシリコーンオイルを組み合わせることによって、また、場合によっては、モリブデン化合物、ホスフェート系難燃化化合物、フッ素化されたポリオレフィンを添加することによって、加工時あるいは燃焼時に腐食性または有毒性のガスの発生がなく、優れた難燃性を有し、物理的特性の低下が小さく、ハロゲンを含有しない難燃性スチレン系樹脂組成物を得ることができる。

Claims (3)

  1. (a)スチレン系樹脂 100重量部
    (b)リン酸メラミン 10〜50重量部
    (c)多価アルコール 1〜20重量部
    (d)一般式(I)
    Figure 0003572120
    (式中、lは0〜2の整数、およびnはそれぞれ1〜3の整数、Rはメチン基、又は炭素数1〜20のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、及びヒドロキシメチル基から選ばれた置換基を有するメチン基を表す。)で示されるビシクロリン酸エステル化合物 1〜20重量部
    (e)シリコーンオイル 0〜20重量部、を含有してなる難燃性樹脂組成物。
  2. さらに(f)モリブデン化合物 0.01〜10重量部を含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  3. さらに(g)ホスフェート系難燃化化合物 0.1〜20重量部並びに(h)フッ素化されたポリオレフィン 0.01〜10重量部を含有する請求項1、2記載の難燃性樹脂組成物。
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