JP3571748B2 - 高物性ゼラチンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高物性ゼラチンの製造方法に関し、詳しくは、動物骨から製造されるオセインや動物皮を原料にして、ゼリー強度などの物性に優れたゼラチンを抽出製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、ゼラチンの製造に用いるゼラチン原料としては、動物の骨から製造されるオセイン、あるいは、動物皮などの何れの場合も、取り扱いが容易な程度の大きさに細断した状態で、抽出のための前処理工程および抽出工程に供されていた。具体的には、ゼラチン原料の大きさとしては、オセインの場合は4〜20mm程度、皮の場合は2〜5cm程度のものが一般的であった。
【0003】
ゼラチンの抽出原理から考えて、ゼラチン原料を小さくしておくほど、原料からの成分の溶け出しが効率的に行われることが予測された。同じ量のゼラチン原料を用いた場合、ゼラチン原料が小さくなっているほど、ゼラチンの収率は高まり、抽出時間も短くて済むものと考えられた。
そこで、ゼラチン原料を、細かく粉砕してから、ゼラチンの抽出を行うことが提案されている。
【0004】
ところが、細かく粉砕されたゼラチン原料を用いて抽出を行うと、目的とするゼラチンだけでなく、ゼラチン分子の断片やゼラチン原料に含まれている不純物なども大量に抽出されてしまい、得られたゼラチン製品の物性が低下してしまうという問題がある。
なお、従来の比較的寸法の大きなゼラチン原料を用いて抽出を行う方法では、ゼラチンの収率を高めるために、石灰漬などの前処理を長時間行ったり、抽出時間を長くしたり、抽出温度を高く設定したりすることが行われていた。しかし、このような手段を取ると、ゼラチン原料からは、目的とするゼラチンだけではなく、前記したようなゼラチン断片やゼラチン以外の不純物の抽出も行われ易くなってしまい、前記同様の問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明の課題は、前記したゼラチンの製造方法において、ゼラチン原料を微細化することによって抽出の効率化を図りつつ、物性の点でも優れたゼラチンを得ることのできる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する、本発明にかかる高物性ゼラチンの製造方法は、ゼラチン原料を、水の存在下で衝撃によって粉砕した後、固液分離を行い、得られた微細原料を用いて抽出を行うとともに、前記粉砕が、粉砕開始時の前記ゼラチン原料の温度が常温以下で、粉砕終了時の前記微細原料の温度が40℃以下である
ゼラチン原料としては、従来のゼラチン製造でも使用されていたような、通常の原料が用いられる。例えば、牛や豚などの各種動物の骨から得られたオセイン、このオセインを、例えば石灰漬などでアルカリ処理したアルカリ処理オセイン、各種動物の皮、この皮に前記同様のアルカリ処理あるいは酸処理などの前処理を行った前処理皮などが用いられる。動物の骨からオセインを製造する加工処理工程や、動物皮をゼラチン原料に用いるための加工処理工程などは、通常のゼラチン製造の場合と同様でよく、例えば、大まかな粉砕、脱脂、乾燥あるいは脱灰などの処理が行われる。
【0007】
微細原料を得るためのゼラチン原料の粉砕は、ゼラチン原料に衝撃を与えて、ゼラチン原料を繊維状や粒子状に細かくする作用を果たせる手段であれば、通常の各種粉砕装置が使用できる。通常の粉砕装置は、衝撃のみで粉砕する装置のほか、衝撃と圧縮、剪断、摩擦などの作用を複合的に組み合わせて粉砕する装置がある。この発明では、主に衝撃で粉砕する装置が好ましいが、その他の作用を併用して粉砕する装置も使用できる。但し、粉砕装置として、粉砕原料を水の存在下で粉砕することのできる、いわゆる湿式粉砕が可能な装置を用いる。また、粉砕能力としては、後述する好ましい微細原料の寸法が得られる程度の粉砕能率を有していればよい。具体的な粉砕装置の例を挙げれば、ジューサー、カッターミル、ハンマーミルおよび製紙用解砕機が好ましい。
【0008】
ゼラチン原料を、上記のような微細化のための粉砕装置に送り込む前に、肉挽機などで粗く粉砕しておけば、粉砕が能率的に行える。
ゼラチン原料は、水と別々に、あるいは、水と一緒に粉砕装置に投入すればよい。ゼラチン原料を水に対してスラリー状に分散させた状態で粉砕装置に投入すれば、粉砕および不純物の除去が効率的に行える。何れにしても、ゼラチン原料の粉砕作用が、水の存在下で行われるようにしておく。
【0009】
水は、ゼラチンの製造にとって有害な不純物の含まれない新鮮な水が好ましい。水の量は、ゼラチン原料や粉砕装置の種類などの条件によっても異なるが、通常は、粉砕時におけるゼラチン原料の重量Sに対する水Lの割合で示す固液比L/Sが0.5以上になるように、水の量を設定するのが好ましい。望ましくは、L/S=0.5〜10、より望ましくは、L/S=2〜5である。水が少な過ぎても多過ぎても、粉砕が良好に行われず、特に、水が少ないと、不純物の除去がうまく行われない。
【0010】
ゼラチン原料の粉砕は、オセインまたはアルカリ処理オセインの場合には粒子径2mm以下、動物皮原料または前処理皮原料の場合には長さ3mm以下で太さ0.5mm以下に粉砕して微細原料とするのが好ましい。より望ましくは、オセインまたはアルカリ処理オセインの場合には粒子径1mm以下、動物皮原料または前処理皮原料の場合には長さ2mm以下で太さ0.5mm以下である。微細原料の寸法が大き過ぎると、この発明の目的である高物性ゼラチンを得ることが難しく、微細原料の寸法を小さくするのは、粉砕に手間がかかるとともに、ゼラチン原料中のゼラチン成分までが除去されてしまったりする問題が生じる。
【0011】
粉砕時の温度として、粉砕開始温度が常温以下、具体的には20℃以下であり、粉砕終了温度が40℃以下になるようにしておくのが好ましい。より望ましくは、粉砕終了温度を15℃以下になるようにする。粉砕時の温度が高過ぎると、原料中のコラーゲンが損傷して、最終的に得られるゼラチンの品質が悪くなる。粉砕時の温度を制御するには、ゼラチン原料とともに粉砕装置に供給する水の量および温度を調整したり、冷却剤となる氷を供給したり、粉砕装置に冷却手段を設けておいたりすればよい。
【0012】
粉砕時のpHを、pH2〜12にしておくのが好ましい。pH12を超えるアルカリ性、あるいは、pH2に満たない酸性では、ゼラチン原料中のコラーゲンの膨潤が大きくなり過ぎ、また、粉砕における温度上昇によってコラーゲン損傷が進行し易くなる。
ゼラチン原料を粉砕して微細原料を得られた後、固液分離を行い、微細原料と水および水に含まれる不純物とを分離する。固液分離装置としては、通常の各種化学処理で利用されているのと同様の装置が利用できる。具体的には、遠心分離機、回転式スクリーン、ウェッジワイヤースクリーンおよびベルトフィルターなどが好ましい装置となる。固液分離装置では、粉砕された微細原料の大きさに合わせて、微細原料のみを確実に回収できるように、フィルターやスクリーンの目開きを設定しておくことが好ましい。目開きが大き過ぎると、微細原料の流出ロスが増大してしまう。
【0013】
上記のような粉砕工程と固液分離工程は、1度行うだけでもよいが、複数回繰り返すことによって、より微細な原料を得たり、不純物の除去をより確実に行ったりすることができる。繰り返し回数は、実用上、最高で5回ぐらいまで行うことができる。
粉砕および固液分離によって得られた微細原料は、そのままゼラチン抽出に用いることができるが、抽出の前処理として、通常のゼラチン抽出でも採用されている石灰漬処理あるいは酸漬処理を行うことができる。具体的な使用材料や処理条件は、通常の抽出前処理の場合と同様でよいが、本発明では、抽出前処理に要する期間が、比較的短くてもよく、使用する薬剤の量も比較的少なくてもよい。
【0014】
石灰漬処理は、石灰などのアルカリ可溶化薬品を原料に浸透させて、ゼラチンの可溶化促進を行う。具体的には、例えば、飽和石灰液中に微細原料を投入して、随時攪拌や溶液交換を行いながら、一定期間保持しておくことで、ゼラチンの可溶化促進と原料の精製が行われる。石灰漬処理された微細原料は、中和および水洗した後、ゼラチンの抽出を行う。中和および水洗の具体的処理条件は、通常の石灰漬処理の場合と同様でよいが、前記した石灰漬の場合と同様に、比較的短時間の処理で十分である。具体的には、石灰漬を終えた微細原料から、余分な石灰分を除去するとともにpHを中性付近に調整する。
【0015】
酸漬処理には、硫酸や塩酸、リン酸などの無機酸あるいは有機酸を用いる。
石灰漬などの抽出前処理は、粉砕および固液分離で微細原料を得る前のゼラチン原料に対して行っておくこともできる。石灰漬と中和水洗の間に、粉砕および固液分離を行うこともできる。また、粉砕および固液分離のサイクルを複数回繰り返す場合には、任意のサイクル間の適当な時機に、前記のような抽出前処理を行えばよい。
【0016】
ゼラチン抽出工程は、前記のような微細原料を用いる以外は、通常の抽出装置および抽出条件が採用できる。具体的には、バッチ法およびカラムを用いた連続抽出法の何れの方法も採用できる。連続抽出法は、アップフロー法、ダウンフロー法および向流法の何れでもよい。本発明では、第1回目の抽出が非常に効率的に行われるので、第1回目の抽出温度を比較的低く設定したり、抽出時間を比較的短く設定したりすることができる。
【0017】
ゼラチン抽出工程で得られたゼラチン溶液は、従来のゼラチン製造の場合と同様に、濃縮や精製、乾燥などの処理を経て、ゼラチン製品となる。ゼラチン製品の用途は、写真、食品、医薬用品など、従来のゼラチン製品と同様の用途に用いられ、特に、高物性を要求される場合に好ましい。
【0018】
【作用】
ゼラチン原料を、水の存在下で衝撃によって粉砕すると、ゼラチン原料が微細化されるとともに、ゼラチン原料のうち、ゼラチンの材料となるコラーゲン組織と、それ以外の不純物である不純蛋白質や多糖類、油脂などが、衝撃の作用で良好に分離される。油脂などの不純物は、水に溶解または分散するので、粉砕後に固液分離を行えば、固体部分であるゼラチン原料の主要部分から、水に溶解したり分散している不純物が良好に除去されることになる。衝撃による粉砕を行うと、多量の熱を発生して、ゼラチン原料に含まれるコラーゲンの損傷などが生じる可能性があるが、水が存在していれば、ゼラチン原料の昇温を防ぐことができる。また、粉砕過程でゼラチン原料から分離された不純物は、直ぐに水に回収されるので、再びゼラチン原料側に取り込まれ難い。
【0019】
粉砕および固液分離によって得られた微細原料は、従来のゼラチン原料に比べて、その大きさが均一で特性も均質であるので、その後に行う石灰漬などの抽出前処理および抽出処理も均一に安定した条件で行える。
石灰漬処理では、従来の比較的大きなゼラチン原料の場合、処理薬品を原料中に十分に浸透させるために、2〜3ヶ月間浸漬する必要があった。微細原料を用いる本発明では、個々の原料粒子が薬品などに触れる表面積が増大するため、薬品の浸透がきわめて迅速かつ均一に行われることになり、石灰漬期間を約1/2に短縮することができる。この間に使用する薬品の量や、溶液交換の作業も削減され、廃液量も少なくなる。石灰漬後の中和/水洗処理でも、中和剤などの薬品および洗浄水の浸透が迅速かつ均一に行われる。しかも、原料中に含まれる不純物が既に大部分除去されているため、少量の水および薬品で十分に処理でき、従来約1〜2日間かかっていたものが、約1/5〜1/10程度まで短縮化される。
【0020】
酸漬処理を行う場合でも、従来の原料では半日から数日間かかっていたのに対し、微細原料を用いる本発明では、原料への酸の浸透性が向上するので、酸漬期間を約1/2に短縮することができる。
つぎに、抽出工程では、原料全体の総合的な表面積が大きく、各原料粒子の大きさも均一なので、ゼラチンの抽出が効率的に行われる。その結果、抽出を比較的低い温度で行ったり、抽出時間が短くても、目的とするゼラチンが効率的に抽出されてくる。特に、初期抽出の段階から、ゼラチンが効率的に抽出されてくるので、初期に抽出される物性の優れたゼラチンを大量に得ることができる。また、抽出を複数回に分けて行う多段抽出では、少ない抽出回数でも、十分な量のゼラチンを抽出することができる。
【0021】
微細原料は、油脂などの不純物が相当程度まで除去されているので、抽出されるゼラチンに混入する不純物量が非常に少なくなる。微細原料に少量の不純物が含まれていても、前記したように抽出前処理を効果的に行うことで、残存する不純物も確実に除去できる。
しかも、前記したように、微細原料には不純物が少なく、目的とするゼラチンは抽出工程で効率的に抽出されるので、抽出工程を終えてゼラチンが抽出された後の残渣が非常に少なくなる。その結果、残渣の廃棄処理が簡単になり、環境汚染の問題も解消される。
【0022】
本発明で得られたゼラチンは、不純物の含有が少ないので、ゼリー強度などの物性が高くなる。具体的には、従来の製造方法に比べて、多段抽出法で得られたゼラチンの荷重平均ゼリー強度が20〜50ブルーム程度も高くなる。また、石灰漬および中和/水洗処理あるいは抽出処理が短時間で行われるので、これらの処理における加熱や薬品によるゼラチンの褐変その他の悪影響が生じ難く、色調などの特性に優れたゼラチンが得られる。
【0023】
【実施例】
−実施例1−
牛骨から粉砕/脱脂して得られたゼラチンボーンを、常法により脱灰・水洗して、オセイン10kgを得た。このオセインに、重量比で1/2量の氷を添加混合した後、肉挽機でミンチ状に粗粉砕した。粉砕後の温度は約5℃であった。
【0024】
ここに、重量比1/2量の水を添加混合した後、製紙用解砕機で粉砕して微細化した。粉砕後の温度は約15℃まで上昇していた。
微細化された材料を、家庭用洗濯機の脱水機を用いて、固液分離し、100メッシュナイロン網で固形分のみを回収した。さらに、水を原料と等重量添加混合し、前記製紙用解砕機で再び粉砕して微細化を行った。この粉砕処理と固液分離処理とを合計5回繰り返して、最終的に微細オセイン8kgを得た。この微細オセインは、湿潤状態で8メッシュのふるいを全て通過し、2mm以下の粒径になっていることが確認された。不純物として、油脂分の含有量を測定すると、粉砕前のオセインは5.7%であったのに対して、微細オセインは2.7%まで減少していた。
【0025】
このようにして得られた微細オセインを用い、常法により石灰漬を行った。一定期間の石灰漬の後、水洗・中和を行った。適切な石灰漬期間を調べるとともに従来法との比較を行うために、石灰漬期間が、最長50日まで10日毎に異なる試料を作った。
水洗/中和は、微細オセインを含む石灰水を、一度100メッシュ網で漉して石灰水を除去した後、原料の2倍量の水に分散して攪拌し、希釈した塩酸でpH6.0になるまで中和した。上記のような固液分離処理、水への分散処理、固液分離処理を、もう一度繰り返して、溶出してくる塩類を除去した。これらの工程に要した時間は、約3時間であった。
【0026】
抽出は、上記中和/水洗後の各試料1kgを用いて、バッチ式の多段階抽出を行った。1回目の抽出は、60℃で1時間行った。抽出工程を終えた試料は、回転式スクリーンを用いて、ゼラチン液と固形物とを分離し、得られたゼラチン液を濾過/乾燥して、ゼラチンを得た。2回目の抽出は、70℃で3時間行った。抽出後の処理は、1回目と同様であった。以後、3回目の抽出を80℃で3時間、4回目の抽出を90℃で3時間行い、5回目の抽出は穏やかな煮沸浴中で2時間行い、それぞれの段階でゼラチンを得た。得られた各ゼラチンの粘度とゼリー強度を常法によって測定した。
【0027】
処理条件とゼラチンの物性の違いを、表1〜3にまとめて表している。表中、比較例1は、前記同様にして牛骨から得られたオセインをそのまま用いた場合である。微細化処理以外の工程は、実施例1と同じであった。但し、1回目の抽出時間は3時間であった。収率は、抽出仕込時の原料重量に対する得られたゼラチンの割合を算出した値である。
【0028】
【表1】
Figure 0003571748
【0029】
【表2】
Figure 0003571748
【0030】
【表3】
Figure 0003571748
上記試験の結果をみると、微細化オセインを用いた実施例1は、通常のオセインを用いた比較例1に比べて、石灰漬期間が1/2以下で、しかも、1回目の抽出時間が1/3であるにもかかわらず、同等か少し高い収率と物性を示しており、残渣量も1/2程度まで削減された。実施例1のゼラチンについて各種特性を調べたところ、写真用、医薬カプセル用、食品用として使用可能であることが確認できた。
【0031】
−実施例2−
実施例1と同様のオセインを用い、常法にしたがって、石灰漬を60日間行い、同じく常法にしたがって、中和/水洗を行い、石灰漬オセイン10kgを得た。このオセインに、実施例1と同様、氷を加え、肉挽機で粗粉砕した。粉砕後の温度は約4℃であった。
【0032】
ここに、オセイン重量の3倍量の水を添加混合して、ラインカッター機で粉砕して微細化した。ラインカッター機のクリアランスを0.8mmに設定していた。粉砕後の温度は約13℃まで上昇していた。
実施例1と同様に、脱水機で固液分離し、固形分のみを回収した。さらに、3倍量の水を添加混合して、クリアランスを0.3mmに設定したラインカッター機で粉砕し微細化した。この操作を合計3回繰り返して、微細オセイン8.5kgを得た。
【0033】
得られた微細オセインを用いて、実施例1と同様に、ゼラチンの抽出を行い、その性能を評価した結果を、表2に示している。表中、比較例2は、微細化処理を行わないオセインを用いて抽出を行った以外は、実施例2と同じ条件でゼラチンを抽出した場合である。
【0034】
【表4】
Figure 0003571748
上記試験の結果をみると、微細化オセインを用いた実施例2は、通常のオセインを用いた比較例2に比べて、1回目の抽出時間が1/3であるにもかかわらず、収率は約1.7倍にも増え、しかも、物性は同等か少し優れていた。残渣量も半減している。
【0035】
−実施例3−
豚皮を、常法によって酸漬した後、中和/水洗を行った。得られた皮原料10kgを、実施例1と同様の条件で微細化処理し、微細皮原料8kgを得た。この原料の寸法は全て、長さ3mm以下、太さ0.5mm以下であった。油脂分含量は、処理前の20%から処理後の13%へと減少していた。
【0036】
この微細皮原料を用いて、実施例1と同様の条件で、ゼラチンの抽出を行った。1回目の抽出は60℃で2時間、2回目の抽出は75℃で4時間、3回目の抽出は90℃で4時間であった。得られたゼラチンの評価結果を、表5に示している。表中、比較例3は、微細化処理を行わなかった以外は、実施例3と同じ条件でゼラチンを抽出製造した場合である。なお、この表では、収率として、微細化処理する前の皮原料に対して得られたゼラチンの割合を算出した値を示している。
【0037】
【表5】
Figure 0003571748
上記試験の結果をみると、微細皮原料を用いた実施例3でも、通常の皮原料を用いた比較例3に比べて、前記各実施例と同様の優れた性能が発揮できていることが実証された。
【0038】
−参考例1−
牛骨から得られたオセインを、実施例1と同様の処理条件で微細化して、得られた微細オセインを乾燥した後、さらに、乾式乾燥機であるジェットミルで微粉化して、乾燥微細化オセインを製造した。
この乾燥微細化オセインを、魚肉ソーセージの充填用安定剤として使用したところ、におい、食感、安定性の何れの点でも、従来、充填用安定剤として使用されている牛皮から製造されたコラーゲンパウダーと遜色のない性能を発揮することができた。
【0039】
−参考例2−
参考例1と同じ乾燥微細化オセインを、揚げ菓子、豆腐、ドレッシングなどに練り込んで、いわゆるファイバー性食品を製造した。具体的には、各食品の製造過程の加温工程で、乾燥微細化オセインを練り込んだ。乾燥微細化オセインを構成するゼラチンやコラーゲン蛋白は、半分溶解固形性を有しており、食品中の残存不溶解繊維形状が、ダイエット性を有するファイバーとしての機能を発揮することができる。
【0040】
−参考例3−
参考例1と同じ乾燥微細化オセインを、果肉ジャムや果肉入りアイスクリームなどに練り込んだ。これらの食品を加熱殺菌する工程で、微細化オセインの一部が溶解して、安定剤として機能するとともに、製造された食品の舌ざわりが良好になった。
【0041】
−参考例4−
参考例1と同じ乾燥微細化オセインを、固形コンソメスープやポタージュスープに添加した。これらの固形スープを食するために温水で溶かすと、微細化オセインの働きで粘度が増加するとともに、微細化オセインに含まれる骨コラーゲンやゼラチンの風味が、スープ自体の風味に加わって、好ましいものとなった。
【0042】
−参考例5−
参考例1と同じ乾燥微細化オセインと、砂糖、色素および香料などを混ぜて、ティーバッグの包装袋に詰めたものを製造した。このティーバッグ状包装体に熱水を注いで、10分間後、ティーバッグ状包装体は抜き取り、液体分を冷蔵庫で30分間置いておいたところ、透明なゼリーが得られ、これを食したところ、ゼリー食品として好ましいものであった。このことから、ゼリー食品の材料セットを、ティーバッグ状包装体の形で、販売流通および調理に供することができ、消費者が手軽にゼリー食品を作ることが可能になる。
【0043】
【発明の効果】
以上に述べた、本発明にかかる高物性ゼラチンの製造方法によれば、ゼラチンの抽出に微細化された原料を用いることで、抽出の効率化を図れるとともに、得られたゼラチンのゼリー強度などの物性が優れたものとなる。
その結果、高物性のゼラチンを、生産性良く、低コストで製造できることになる。しかも、本発明の方法では、抽出工程で生じる残渣が少なくなるので、廃棄物の処理が簡単になり、廃棄物処理にかかるコストと手間も低減できる。

Claims (13)

  1. ゼラチン原料を、水の存在下で衝撃によって粉砕した後、固液分離を行い、得られた微細原料を用いて抽出を行うとともに、
    前記粉砕が、粉砕開始時の前記ゼラチン原料の温度が常温以下で、粉砕終了時の前記微細原料の温度が40℃以下である
    高物性ゼラチンの製造方法。
  2. 請求項1の方法において、ゼラチン原料として、動物骨から得られたオセイン、動物骨から得られたオセインをアルカリ処理したアルカリ処理オセイン、動物皮原料、および、動物皮原料にアルカリ処理または酸処理を行った前処理皮原料のうちの少なくとも何れか1種を用いる高物性ゼラチンの製造方法。
  3. 請求項2の方法において、ゼラチン原料を、オセインまたはアルカリ処理オセインは粒子径2mm以下、動物皮原料または前処理皮原料は長さ3mm以下で太さ0.5mm以下に粉砕して微細原料とする高物性ゼラチンの製造方法。
  4. 請求項1〜3の方法において、ゼラチン原料を、水に対しスラリー状に分散させて粉砕する高物性ゼラチンの製造方法。
  5. 請求項1〜4の方法において、粉砕および固液分離を、複数回繰り返す高物性ゼラチンの製造方法。
  6. 請求項1〜5の方法において、粉砕時におけるゼラチン原料の重量Sに対する水Lの割合で示す固液比L/Sが0.5以上である高物性ゼラチンの製造方法。
  7. 請求項1〜6の方法において、前記粉砕が、前記粉砕終了時の前記微細原料の温度が15℃以下になるように、前記ゼラチン原料を予め冷却しておく
    高物性ゼラチンの製造方法。
  8. 請求項1〜7の方法において、粉砕時のpHを、pH2〜12にしておく高物性ゼラチンの製造方法。
  9. 請求項1〜8の方法において、粉砕装置として、ジューサー、カッターミル、ハンマーミルおよび製紙用解砕機の何れかを用いる高物性ゼラチンの製造方法。
  10. 請求項1〜9の方法において、固液分離を行う装置として、遠心分離機、回転式スクリーン、ウェッジワイヤースクリーンおよびベルトフィルターの何れかを用いる高物性ゼラチンの製造方法。
  11. 請求項1〜10の方法において、微細原料を石灰漬処理または酸漬処理した後、ゼラチンの抽出を行う高物性ゼラチンの製造方法。
  12. 請求項11の方法において、石灰漬処理された微細原料を中和および水洗した後、ゼラチンの抽出を行う高物性ゼラチンの製造方法。
  13. 請求項1〜12の方法において、ゼラチンの抽出を、バッチ法およびカラムを用いた連続抽出法の何れかの方法で行う高物性ゼラチンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106634624A (zh) * 2016-12-21 2017-05-10 宁夏鑫浩源生物科技股份有限公司 一种从骨原料制造骨素和明胶的方法

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