JP3570546B2 - 高分子フィルム及びこれを用いた表面保護フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂板などの表面保護、特に偏光板や位相差板などの液晶表示装置の構成部材のプロテクトフィルムやセパレーターとして好適に用いられる高分子フィルム及びこれを用いた表面保護フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、一般的には、バックライト側から、偏光板、液晶セル、偏光板を積層することにより構成されている。さらには、表示モードや視野角を改善する目的で、位相差板等の各種補償板が挿入される。この偏光板や位相差板の積層には、通常は粘着剤層付きの偏光板、あるいは粘着剤層付きの位相差板を対象物に貼り合わせることにより行われている。
【0003】
上記の偏光板は、偏光膜をトリアセチルセルロースでサンドイッチした構成からなり、通常その片面に貼り合わせ用の粘着剤層が設けられている。さらに、偏光板のトリアセチルセルロースは耐擦傷性や耐湿性が劣るため、取扱中や液晶表示装置の作製工程中の損傷、湿気、あるいはほこりの付着を防ぐ目的で、両面に表面保護フィルムが設けられる。偏光板の粘着剤層側とは反対面には粘着剤層を積層した表面保護フィルム(プロテクトフィルム)が、また粘着剤層側には離型層を積層した表面保護フィルム(セパレーター)が使用される。
【0004】
また、位相差板等の各種補償板も通常その片面に貼り合わせ用の粘着剤層が設けられており、取扱中や液晶表示装置の作製工程中の損傷、ほこりの付着を防ぐ目的で、上記偏光板と同様に、各種補償板の両面に表面保護フィルム(プロテクトフィルムおよびセパレーター)が使用されている。
【0005】
そして、偏光板、位相差板等を液晶セルに貼り合わせる際には、表面保護フィルムは剥離除去されて用いられる。
【0006】
従来、前記の粘着剤層が積層された表面保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルムやエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等の熱圧着タイプのもの、粘着剤層を設けたポリエステルフィルム等の感圧接着タイプのものが使われている。
【0007】
また、従来の離型層が積層された表面保護フィルムとしては、ポリエステル、ポリプロピレン等の二軸延伸されたフィルムの少なくとも片面にシリコーン等の離型剤を塗布したものが使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
作製した液晶表示装置の構成部材等は、表示能力、色相、コントラスト等の評価のために、適時に検査を行うのが通例である。ところが、従来から汎用されている表面保護フィルムは、それらの基材が異方性を有するため、このような表面保護フィルムが貼り付けられた構成部材について、光学的評価を伴う検査には支障となるので、検査に先立ち一旦この表面保護フィルムを剥離除去し、検査終了後にもう一度新しい表面保護フィルムを貼り直すことが行われる。新しい表面保護フィルムで貼り直すのは、表面保護フィルムが再貼着可能でも再貼着すると美麗さが損なわれるからである。
【0009】
上述の検査において、表面保護フィルムの剥離および再貼着は、工程に2工程を要し、極限までコストダウンが追求されるこの分野においては、大きな支障となる。
【0010】
上記の従来の問題点を解消し、表面保護フィルムを被覆したまま粘着剤層が設けられた偏光板または位相差板の検査を行う試みとして、例えば、特開平4−30120号公報等には、ポリカーボネート、ポリアリレート等の光等方性基材の片面に粘着性樹脂層を設けた表面保護フィルム等が、また、特開平6−148431号公報には、ポリエステル、ポリプロピレン等の無配向フィルムからなる基材の少なくとも片面に離型層が設けられた表面保護フィルムが、また、特開平7−101026号公報において二軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸の方向を偏光板または位相差板の配向軸の方向と実質的に同じにするか、90°となるように積層する方法が提案されている。
【0011】
このような無配向フィルムは光等方性を有することから、検査時に剥離を要しないという大きな利点を有するが、通常の溶融押出し法では、配向を抑えることが困難であるため、流延法のような製法を用いる必要があり、基材フィルム自体が高価なものになるため、最終的に剥離除去される表面保護フィルムには、ほとんど使われていないのが現状である。また、二軸配向ポリエステルフィルムを用いる方法では、配向主軸の方向を厳密に制御することが困難なことから、歩留まりが悪くなるという問題がある。
【0012】
また、本発明者らは、これらの問題点を解決する方法として、特願平11−118685号において、コントラストの最低値が70以上を有する高分子フィルムにより上記問題点が解決でき、特に一軸延伸高分子フィルムを用いた場合にはその効果が顕著となることを見出した。この方法は検査時に剥離を必要とせず、検査性が良好で、低コストとなるような表面保護フィルムが得られる。しかしながら、前記高分子フィルムはコントラストが高すぎるため、高分子フィルム自身の傷、異物が存在した場合、偏光板の検査時にフィルム起因の欠点が目立ち、偏光板の検査をしているのか表面保護フィルムの検査をしているのか分からなくなり、かえって偏光板や位相差板などの検品の効率が低下するという新たな問題点が生じてきた。
【0013】
そのため、表面保護フィルムの傷を高度なレベルまで低減すること(大きな傷のみならず、微小な傷も可能な限り少なくすること)が必要となり、低コストが要望される本用途では歩留まりの低下が余儀なくされる場合がある。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、前記従来の問題点を解決し、液晶表示装置の構成部材等に貼り付けて使用する際、検査時に剥離を必要とせず、検査性が良好な表面保護フィルム、及びその基材となる高分子フィルムを提供するものである。
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みが7度以下であり、かつヘイズ値が10〜25%の範囲の、不活性粒子を0.05〜1.5重量%含有する有機高分子からなる一軸延伸または二軸延伸された高分子フィルムを表面保護フィルムの基材フィルムとして使用することで、液晶表示装置の構成部材等の検査時に剥離をしなくても、検査時に不具合を見易くでき、さらに低コスト化が可能なことを見いだし、本発明に至った。
【0016】
即ち、本発明は以下の通りである。
1.不活性粒子を0.05〜1.5重量%含有する有機高分子からなる一軸延伸または二軸延伸された高分子フィルムであって、前記高分子フィルムはマイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みが7度以下であり、かつヘイズ値が10〜25%であることを特徴とする高分子フィルム。
【0017】
2.マイクロ波透過型分子配向計で測定したマイクロ波透過強度の最大/最小比(MOR値)の最低値が1.8より大きいことを特徴とする前記1の発明に記載の高分子フィルム。
【0018】
3.120℃における熱収縮率が5.0%以下であることを特徴とする前記1または2の発明に記載の高分子フィルム。
【0020】
4.前記高分子フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする前記1、2、または3の発明のいずれかに記載の高分子フィルム。
【0021】
5.ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステルから構成されるフィルムであることを特徴とする前記4記載の高分子フィルム。
【0022】
6.前記1、2、3、4、または5の発明のいずれかに記載の高分子フィルムの片面に粘着剤層を積層していることを特徴とする表面保護フィルム。
【0023】
7.高分子フィルムの粘着剤層側とは反対面に、帯電防止層を積層していることを特徴とする前記6の発明に記載の表面保護フィルム。
【0024】
8.粘着剤層と高分子フィルムの間に帯電防止層を積層していることを特徴とする前記6の発明に記載の表面保護フィルム。
【0025】
9.前記1、2、3、4、または5の発明のいずれかに記載の高分子フィルムの片面に離型層を積層していることを特徴とする表面保護フィルム。
【0026】
10.高分子フィルムの離型層側とは反対面に、帯電防止層を積層していることを特徴とする前記9の発明に記載の表面保護フィルム。
【0027】
11.離型層と高分子フィルムの間に帯電防止層を積層していることを特徴とする前記9の発明に記載の表面保護フィルム。
【0028】
12.前記9の発明に記載の離型層が、シリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする表面保護フィルム。
【0029】
13.前記12の発明に記載のシリコーン樹脂が、熱硬化型シリコーン樹脂または放射線硬化型シリコーン樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする表面保護フィルム。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子フィルムは、マイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みが7度以下であり、かつヘイズ値が10〜25%の範囲にある、不活性粒子を0.05〜1.5重量%含有する有機高分子からなる一軸延伸または二軸延伸された高分子フィルムであり、以下の方法によって製造することができる。但し、この方法に限定されるものではない。
【0031】
本発明の高分子フィルムとは、有機高分子を溶融押出又は溶液押出して、必要に応じ、長手方向または幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムであり、使用する有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン6,6、ナイロン12等のポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアクリル、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチクポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーなどがあげられる。また、これらの有機高分子は他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0032】
これらの中でも、特にポリエチレンテレフタレートは、不純物が少なく透明性、機械的性質、表面平滑性、耐溶剤性、耐スクラッチ性、非透湿性、コストなどの総合性能から最も好適に用いられる。
【0033】
本発明の高分子フィルムは、常法により製膜することにより得ることができる。なかでも、ホモポリマーあるいはコポリマーの融液あるいは溶液を、押出法、カレンダー法や流延法などによりフィルム状に成形し、次いで、ロール法、テンター法、チューブラー法などにより縦あるいは横方向に一軸延伸する方法が好適である。しかしながら、本発明のフィルム特性の範囲を満足すれば、二軸延伸してもかまわない。
【0034】
本発明の高分子フィルムは、マイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みは少なくとも7度以下、より好ましくは少なくとも5度以下であることが必要である。配向主軸の最大歪みが7度を超える高分子フィルムでは、検査時に検体中の異物、傷の発見等に支障をきたす。
【0035】
本発明において、マイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みとは、以下の方法により測定されるものである。まず、フィルム形状がロール状の場合は、長手方向に500mm、幅方向には全幅の長方形を切り出す。そして、図8に示すように、同一端辺を含む幅方向(テンター方向)に100mm四方の正方形を該長方形の2頂点およびその中心を含む3箇所以上で切り出す。図8において、21は長手方向、22は幅方向、23は端辺、24は頂点、25は頂点の中心である。次に、各々の配向主軸をマイクロ波透過型分子配向計で測定し、各々の分子配向角が45度より小さいときは0度からの差、また45度より大きいときは90度からの差の絶対値が最も大きいものから最大値を求め、配向主軸の最大歪みとした。マイクロ波透過型分子配向計には、神崎製紙(株)製の分子配向計(MOA−2001A)を用いた。
【0036】
本発明において、高分子フィルムのマイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みを上記範囲とする方法としては、後述するように、縦延伸における温度および延伸倍率、横延伸における温度および延伸倍率、および横延伸後熱固定処理を行う前に、フィルムを長手方向に90〜200℃で1〜10%の弛緩処理を行う方法、130〜250℃で熱固定処理する方法、熱固定処理後幅方向に1〜10%で弛緩処理する方法、等が好適である。
【0037】
また、本発明の高分子フィルムにおいては、そのヘイズ値は10〜25%の範囲にする必要があり、好ましくは14〜21%の範囲である。ヘイズ値が10%未満では、高分子フィルムを光が透過する際の散乱光が少なく、検査時に剥離を必要とせず、検査性が良好であるが、高分子フィルム表面に傷が存在した場合に、検査時に高分子フィルム表面の傷が目立ち、検体自身の欠点の検査が正確に行えなくなる。また、高分子フィルムの可視光線透過率は、75%以上であることが好ましい。
【0038】
本発明において、高分子フィルムのヘイズ値を上記範囲とする方法としては、高分子フィルムに含有させる不活性粒子の含有量を調整する方法を用いる。
【0040】
高分子フィルムに含有させる不活性粒子としては、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナ、クレー、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト等の無機粒子、架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋ポリアクリル酸、ポリイミド、シリコン樹脂等の耐熱性樹脂粒子、および高分子の重合時に生成させる、いわゆる析出粒子が挙げられる。これらは合成品でも、天然品でもよい。また、粒子の形状も限定されないが、球形、ライス形、板形、無定形等が好ましい。さらに、平均粒径も一概には限定されないが、好ましくは、0.01〜1.5μm、更に好ましくは、0.01〜1.0μmの粒子が用いられる。また、高分子フィルムは、少なくとも1種類以上の不活性粒子を含有し、2種類以上を含有する場合には、粒子種が異なっていてもよく、同じ粒子種で平均粒径が異なる組み合わせを用いてもよい。
【0041】
また、高分子フィルム中の不活性粒子の含有量は、高分子フィルムのヘイズ値を前記範囲となるように設定する必要があり、高分子フィルムのフィルム厚み、不活性粒子含有層の厚みなどを鑑み適宜設定される。不活性粒子の含有量は、フィルムに対して、0.05〜1.5重量%であり、好ましくは、0.06〜1.5重量%、特に好ましくは、0.1〜1.0重量%である。不活性粒子の含有量が0.05重量%未満では、高分子フィルムの滑り性が低下し、傷が入りやすくなるため好ましくない。逆に、含有量が1.5重量%を越えると、フィルム中で微粒子の凝集により粗大突起が発生し、フィルム表面に傷が入りやすくなる。その結果、検査性が低下するため好ましくない。
【0042】
本発明の高分子フィルムは、マイクロ波透過型分子配向計で測定したMOR値の最低値が1.8より大きいことが好ましい。より好ましくは、2.0以上、さらに好ましくは、2.2以上である。MOR値の最低値が1.8以下では高分子フィルムの製造時に、原反の中央部と端部で配向軸の斑が大きくなりやすく好ましくない。
【0043】
また、本発明の高分子フィルムは、その120℃における熱収縮率は5%以下であることが好ましく、1%以下が特に好ましい。熱収縮率が5%を超えると、粘着剤層、帯電防止層の形成時等の加熱を伴うプロセスを通過したときに、平面性の乱れ等を生じやすくなるため好ましくない。
【0044】
本発明において、120℃における熱収縮率とは、以下の方法により測定されるものである。まず、一辺100mmの正方形に切ったフィルムの対角線の交点を中心に直径50mmの円を描く。次いでこれを120℃に加熱した熱風乾燥機中に無荷重の状態で30分放置する。これを取り出し、デジタイザーによって寸法変化を読み取り、対角線の交点をとおる収縮の最大位置の長さ(B;mm)から下式により求める。
120℃における熱収縮率=(50−B)/50×100(%)
【0045】
本発明において、高分子フィルムの120℃における熱収縮率を上記範囲とする方法としては、横延伸後、熱固定処理を行う前に、フィルムを長手方向に120〜180℃で1〜5%の弛緩処理を行う方法、熱固定処理温度を130〜250℃とする方法、熱固定処理後、幅方向に2〜5%の弛緩処理を行う方法、等が好適である。
【0046】
本発明における高分子フィルムの製造方法は、本発明で定義する上記のフィルム特性を有するフィルムが得られる限り、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、縦延伸、横延伸を行い、その後熱固定処理を施す方法が挙げられる。
【0047】
縦延伸温度は、90〜135℃が好ましく、特に好ましくは100〜130℃である。縦延伸倍率は、1.1〜4.0倍が好ましく、特に好ましくは1.5〜3.5倍である。横延伸温度は80〜130℃が好ましく、特に好ましくは90〜120℃である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、特に好ましくは3.0〜5.5倍である。
【0048】
本発明において、横延伸後熱固定処理を行う前にフィルムを長手方向に弛緩処理することは、配向主軸の最大歪みを抑制するのに有効である。この長手方向の弛緩処理時の温度は90〜200℃が好ましく、特に好ましくは120〜180℃の範囲である。弛緩量は横延伸条件により異なるが1〜10%程度であり、弛緩処理後のフィルムの、120℃における熱収縮率が5%以下となるように、弛緩量及び弛緩温度を設定することが好ましい。
【0049】
続く熱固定処理において、その熱固定処理温度は130〜250℃が好ましく、特に好ましくは180〜245℃の範囲である。熱固定処理において、まず幅方向の長さを変えずに熱固定処理を行い、さらに幅方向の弛緩処理を1〜10%、特に2〜5%にすることによって、配向主軸の最大歪みを抑制することができる。
【0050】
本発明における高分子フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、用途や作業性を考慮すると、300μm以下に設定することが適当である。厚さが300μmを越える場合、薄いという高分子フィルムの利点がなくなる。
【0051】
また、高分子フィルムは、単層構造のみならず、積層構造であっても良い。特に、不活性粒子によりヘイズ値の増加を行う場合には、不活性粒子による高分子フィルムへの表面性の低下等の悪影響を考慮すると、表面層よりも厚みの大きい中心層に不活性粒子の含有量を多くした、少なくとも3層からなる積層フィルムが好適である。
【0052】
本発明の高分子フィルムは、公知の添加剤を必要に応じて含有させることができる。例えば、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤などを含有させてもよい。
【0053】
本発明の高分子フィルムは、粘着剤層、離型層、帯電防止層などの当該フィルム上に形成される層との接着性、耐水性、耐薬品性等が改良する目的で、フィルム表面を公知の方法で表面処理、すなわちコロナ放電処理(空気中、窒素中、炭酸ガス中など)や易接着処理を行なってもよい。易接着処理は、公知の各種の方法を用いることができ、フィルム製造工程中で、あるいは一軸または二軸延伸後のフィルムに公知の各種易接着剤を塗布する方法などが好適に採用される。
【0054】
本発明における表面保護フィルムは、本発明の高分子フィルムの片面に粘着剤層または離型層を形成してなるフィルムである。
【0055】
粘着剤層としては、光学用部材に対して粘着性を有する層、例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系等の感熱接着樹脂からなる層;アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の感圧接着樹脂からなる層;あるいは飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール、官能基含有アクリル共重合体等の官能基を有する樹脂に硬化剤を配合して製膜し、部分架橋または不完全架橋させたフィルム;ポリ塩化ビニルに可塑剤を例えば20重量%以上配合した軟質ポリ塩化ビニルフィルム;飽和ポリエステル樹脂フィルム;アクリル系共重合体フィルム;ブチルゴム、ウレタンゴム、ブタジエン系ゴム(ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等)、スチレン−イソプレン−スチレンゴムなどの合成ゴムを製膜して得られたフィルム;低分子量ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、塩素化ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を製膜して得られたフィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのエチレン系共重合体を製膜して得られたフィルムなどが挙げられる。
【0056】
表面保護フィルムにリワーク(rework)性が求められる場合には、粘着剤層は可剥性(剥離が容易)を有する材料を選択し、表面保護フィルムに永久接着が求められる場合には強い接着力または粘着力が得られる材料を選択する。粘着剤層の厚さは、通常1〜50μm程度に設定する。
【0057】
また、本発明の表面保護フィルムを偏光板の粘着剤層側に貼りつけて使用するる場合には、上記の高分子フィルムの片面(偏光板の粘着剤層側)に離型層を形成させることが必要である。前記離型層は、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂の中から選ばれた1種以上を主成分として含有することが好ましい。
【0058】
シリコーン樹脂としては、一般に離型剤として知られたものを用いることができ、「シリコーン材料ハンドブック」(東レダウコーニング編、1993.8)などに記載の中から選んで使用することができる。一般的なシリコーン樹脂としては、熱硬化型または電離放射線硬化型が用いられる。熱硬化型としては、例えば縮合反応型および付加反応型のもの、電離放射線硬化型としては、紫外線もしくは電子線硬化型のもの等、いずれの反応型のものも用いることができる。
【0059】
上記縮合反応型のシリコーン樹脂としては、例えば、末端−OH基を持つポリジメチルシロキサンと末端−H基を持つポリジメチルシロキサン(ハイドロジェンシラン)を有機錫触媒(例えば、有機錫アシレート触媒)を用いて縮合反応させ、三次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0060】
付加反応型のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシランを白金触媒を用いて反応させ、三次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0061】
紫外線硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば、最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、アクリル基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これによりエポキシ環を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋させるもの等が挙げられる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いずともラジカルによる架橋反応が起こる。
【0062】
上記の硬化型シリコーン樹脂は、その重合度が50〜20万程度、特に1000〜10万程度のものが好ましく、これらの具体例としては、信越化学工業(株)製のKS−718、−774、−775、−778、−779H、−830、−835、−837、−838、−839、−841、−843、−847、−847H、X−62−2418、−2422、−2125、−2492、−2494、−5048、−470、−2366、−630、X−92−140、−128、KS−723A・B、−705F、−708A、−883、−709、−719、東芝シリコン(株)製のTPR−6701、−6702、−6703、−3704、−6705、−6721、−6722、−6700、XSR−7029、YSR−3022、YR−3286、ダウコーニング(株)製のDK−Q3−202、−203、−204、−205、−210、−240、−3003、−3057、SFXF−2560、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSD−7226、−7229、−7320、BY−24−900、−171、−312、−374、SRX−375、SYL−OFF23、SRX−244、SEX−290、アイ・シー・アイ・ジャパン(株)製のSILCOLEASE425等を挙げることができる。
【0063】
また、特開昭47−34447号公報、特公昭52−40918号公報等に記載のシリコーン樹脂も用いることができる。更には、これらの硬化型シリコーン樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0064】
フッ素樹脂としては、公知の離型用のものを用いることができる。この様なフッ素樹脂としては、例えばフッ素含有ビニル重合性単量体からなる重合体(オリゴマーを含む)またはその共重合体、またはフッ素含有ビニル重合性単量体とフッ素原子で置換されたアルキル基、官能基等を含まないビニル重合性単量体の少なくとも1種との共重合体、または、これらの混合物であってフッ素原子を5〜80モル%有するものが挙げられる。
【0065】
上記フッ素含有ビニル重合性単量体からなる重合体としては、これらの具体例として、ポリ[2−(パーフルオロノネニルオキシ)エチルメタクリレート]、ポリ[2−(パーフルオロノネニルオキシ)エチルアクリレート]、ポリ[2−(パーフルオロノネニルオキシベンゾイルオキシ)エチルメタクリレート]、ポリ[2−(パーフルオロノネニルオキシベンゾイルオキシ)エチルアクリレート]、ポリ[2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート]、ポリ[2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート]、ポリ[2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート]、ポリ[2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート]、ポリ[1−メチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート]、ポリ[1−メチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート]、ポリ[パーフルオロヘプチルエチルメタクリレート]、ポリ[パーフルオロヘプチルエチルアクリレート]、ポリ[パーフルオロヘプチルビニルエーテル]、ポリ[α,β,β−トリフルオロスチレン]、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0066】
上記フッ素含有ビニル重合性単量体と共重合し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基、官能基等を含まないビニル重合性単量体としては、炭化水素系ビニル重合性単量体、炭化水素系非共役ジビニル重合性単量体、官能基含有ビニル重合性単量体等の化合物が挙げられる。具体的には、下記に例示した化合物の中から選択されるが、特に限定されるものではない。
【0067】
炭化水素系ビニル重合性単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸セシル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸セシル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、ヘプタン酸アリル、酢酸アリル、カプリン酸アリル、カプロン酸アリル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0068】
炭化水素系非共役ジビニル重合性単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ビニルアクリレート、ジブロモネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0069】
官能基含有ビニル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチロールダイアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0070】
本発明の高分子フィルムの片面に離型層を設ける場合、離型層の厚みは特に限定されないが、0.05〜5μmの範囲が好ましい。塗膜の厚みがこの範囲より薄くなると、離型性能が低下し、満足すべき性能が得られない。逆に、塗膜の厚みがこの範囲より厚くなるとキュアリングに時間がかかり生産上好ましくない。
【0071】
また、離型層には、本発明の目的を損なわない範囲で公知の添加剤、例えば消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化剤、染料等を含有させてもよい。
【0072】
本発明の粘着剤層または離型層を基材フィルムである上記高分子フィルム表面に形成させる方法は、特に限定されないが、コーティング法が好ましく用いられる。例えば、コーティング法としては、エアドクタコート法、ナイフコート法、ロッドコート法、正回転ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ビードコート法、スリットオリフェスコート法、キャストコート法などが挙げられる。
【0073】
また、粘着剤層または離型層の塗膜の乾燥および/または硬化(熱硬化、電離放射線硬化等)は、それぞれ個別又は同時に行うことができる。同時に行う場合には、80℃以上の温度で行うことが好ましい。乾燥および硬化の条件としては、80℃以上で10秒以上が好ましい。乾燥温度が80℃未満または硬化時間が10秒未満では塗膜の硬化が不完全であり、塗膜が脱落しやすくなるため好ましくない。
【0074】
さらに、本発明の粘着剤層を設けた表面保護フィルム及び離型層を設けた表面保護フィルムには、静電気の発生を抑制する目的で帯電防止層を設けることが好ましい。帯電防止層は、帯電防止樹脂組成物を塗布することによって形成される。
【0075】
この帯電防止樹脂組成物に含まれる帯電防止剤には、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤;アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤;アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性の帯電防止剤等の各種界面活性剤型帯電防止剤;更には上記のような帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤等が挙げられる。また、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有し、電離放射線により重合可能なモノマーやオリゴマー、例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー、それらの第4級化合物等の重合性帯電防止剤も使用できる。
【0076】
帯電防止層中には、帯電防止樹脂組成物の他に帯電防止層の塗膜の強度、基材フィルムへの密着性、耐水性、耐溶剤性、ブロッキング性等の向上のために、バインダーとして熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等の高分子化合物を含有させることが好ましい。さらに、架橋剤として、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系等の化合物、エポキシ化合物、ポリイソシアネートの少なくとも1種類を含有させることが特に好ましい。
【0077】
帯電防止層の表面固有抵抗値は、使用する目的に応じ任意に設定することができる。例えば、通常のほこりが付着しない程度の場合には、1×1011Ω/□程度である。
【0078】
帯電防止層を基材フィルム表面に形成させる方法としては、特に限定されないが、コーティング法が好ましく用いられる。例えばコーティング法としては、エアドクタコート法、ナイフコート法、ロッドコート法、正回転ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ビードコート法、スリットオリフェスコート法、キャストコート法などが挙げられる。
【0079】
また、帯電防止層の乾燥温度は、60〜150℃の範囲であればよく、80〜130℃の範囲が好ましい。乾燥温度が60℃未満であると、硬化時間が長くなり、生産性が低下するので好ましくない。
【0080】
帯電防止層は基材フィルム表面に形成されるが、粘着剤層または離型層は、前記帯電防止層上に形成しても、基材フィルムの帯電防止層形成面と反対面上に形成してもよい。
【0081】
本発明の粘着剤層を設けた表面保護フィルムの層構成の例を図1〜図3に、本発明の離型層を設けた表面保護フィルムの層構成の例を図4〜図6にそれぞれ示す。ここで、1は粘着剤層を設けた表面保護フィルム、2は離型層を設けた表面保護フィルム、11は高分子フィルム、12は粘着剤層、13は帯電防止層、14は離型層である。
【0082】
ここで示される粘着剤層を設けた表面保護フィルムの層構成は、粘着剤層/高分子フィルム、粘着剤層/高分子フィルム/帯電防止層、粘着剤層/帯電防止層/高分子フィルムである。また、離型層を設けた表面保護フィルムの層構成は、離型層/高分子フィルム、離型層/高分子フィルム/帯電防止層、離型層/帯電防止層/高分子フィルムである。
【0083】
また、本発明の粘着剤層を設けた表面保護フィルムおよび離型層を設けた表面保護フィルムを光学用部材に貼り付けた状態を図7に示す。ここで3は光学用部材、15はトリアセチルセルロース(TAC)、16は偏光膜、17は偏光板の粘着剤層である。ここでは、粘着剤層/高分子フィルムの層構成を有する表面保護フィルム、離型層/高分子フィルムの層構成を有する表面保護フィルムを使用している。
【0084】
【実施例】
次に、実施例をあげて本説明をさらに説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0085】
<配向主軸の最大歪み>
フィルム形状がロール状の場合は、長手方向に500mm、幅方向には全幅の長方形を切り出す。そして、図8に示すように、同一端辺を含む幅方向(テンター方向)に100mm四方の正方形を該長方形の2頂点およびその中心を含む3箇所以上で切り出す。図8中、21は長手方向、22は幅方向、23は端辺、24は頂点、25は頂点の中心である。次に、各々の配向主軸をマイクロ波透過型分子配向計で測定し、各々の分子配向角が45度より小さいときは0度からの差、また45度より大きいときは90度からの差の絶対値が最も大きいものから最大値を求め、配向主軸の最大歪みとした。マイクロ波透過型分子配向計には、神崎製紙(株)製の分子配向計(MOA−2001A)を用いた。
【0086】
<ヘイズ値および全光線透過率>
日本電色工業株式会社製濁度計(NDH−300)を用い、5個所のサンプルをとり、その平均値を求めた。
【0087】
<120℃における熱収縮率>
一辺100mmの正方形に切ったフィルムの対角線の交点を中心に直径50mmの円を描き、120℃に加熱した熱風乾燥機中に無荷重の状態で30分放置した後取り出し、デジタイザーによって寸法変化を読み取り、対角線の交点をとおる収縮の最大位置の長さ(B)から下式により求めた。
120℃における熱収縮率=(50−B)/50×100(%)
【0088】
実施例1
不活性粒子として、シリカ微粒子を0.2重量%含有するポリエチレンテレフタレートを水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを縦方向に124℃で2.5倍延伸し、続いて幅方向に90℃で4.0倍延伸した後、120℃で10秒間アニール処理を行った。テンターを出た後、フィルムの両端部を端から20mmの位置でトリミングし、熱収縮量の小さい部位を切除した。続いて、セラミックロールによりフィルムを100℃に加熱し、更に表面温度が700℃の赤外線ヒーターを4本用い加熱しながら、縦方向に3%弛緩処理を行った。続いてセラミックロールでフィルムを160℃に加熱しながら、2%弛緩処理を行った。その後、フィルムの両端部をクリップで把持し、200℃で熱固定処理を施し、更に180℃から120℃に冷却しながら、幅方向に4%弛緩処理を行った。このようにして、厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが4度、ヘイズ値が16.1%、MOR値の最低値が2.74、120℃における熱収縮率が0.27%、全光線透過率が89%であった。
【0089】
この厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、エチレン−酢酸ビニル系接着剤100重量部に対して溶剤としてトルエン400重量部を加えた塗布液を、乾燥膜厚10μmになるように塗布して乾燥固化させ、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好でありまた、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに起因する表面の傷、異物等の隠蔽性も良好であった。
【0090】
実施例2
不活性粒子として、シリカ微粒子を0.2重量%含有するポリエチレンテレフタレートを水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを縦方向に111℃で1.8倍延伸し、続いて幅方向に90℃で4.3倍延伸した。さらに、180℃で幅方向に熱固定し、続いて170℃で4%弛緩処理をして、厚み39μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが5度、ヘイズ値が17.0%、またMOR値の最低値が2.79、120℃における熱収縮率が1.22%、全光線透過率が89%であった。実施例1と同様にして、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得、この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性の評価を行ったところ実施例1と同様に良好であった。
【0091】
実施例3
実施例1において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みのみ38μmから25μmに変更した以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。前記厚み25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが4度、ヘイズ値が15.1%、またMOR値の最低値が2.76、120℃における熱収縮率が0.25%、全光線透過率が90%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は実施例1と同様に良好であった。
【0092】
実施例4
実施例1において、不活性粒子であるシリカ微粒子の含有量を0.2重量%から0.15重量%に変更した以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが4度、ヘイズ値が12.4%、またMOR値の最低値が2.76、120℃における熱収縮率が0.25%、全光線透過率が89%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は実施例1と同様に良好であった。
【0093】
実施例5
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、不活性粒子として、シリカ微粒子を0.2重量%含有する、厚み38μmの二軸延伸ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを用いた以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。前記の厚み38μmの二軸延伸ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが5度、ヘイズ値が16.3%、またMOR値の最低値が2.83、120℃における熱収縮率が0.29%、全光線透過率が89%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であり、また、二軸延伸ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムに起因する表面の傷、異物等の隠蔽性も良好であった。
【0094】
実施例6
不活性粒子として、シリカ微粒子を0.2重量%含有するポリエチレンテレフタレートを水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを幅方向に90℃で3.7倍延伸した後、120℃で10秒間アニール処理を行った。テンターを出た後、フィルムの両端部を端から20mmの位置でトリミングし、熱収縮量の小さい部位を切除した。続いて、セラミックロールによりフィルムを100℃に加熱し、更に表面温度が700℃の赤外線ヒーターを4本用い加熱しながら、縦方向に3%弛緩処理を行った。続いてセラミックロールでフィルムを160℃に加熱しながら、2%弛緩処理を行った。その後、フィルムの両端部をクリップで把持し、220℃で熱固定処理を施し、更に180℃から120℃に冷却しながら、幅方向に3%弛緩処理を行った。このようにして、厚さ40μmの一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。この一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが4度、ヘイズ値が17.1%、またMOR値の最低値が2.61、120℃における熱収縮率が0.8%、全光線透過率が89%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であり、また、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム内の傷、異物等の隠蔽性も良好であった。
【0095】
実施例7
実施例1と同様にして厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが4度、ヘイズ値が16.1%、またMOR値の最低値が2.74、120℃における熱収縮率が0.27%、全光線透過率が90%であった。
【0096】
この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、第4級アンモニウム塩型カチオン性高分子化合物(日東紡績(株)製;PAS10L)35重量部、共重合ポリエステル樹脂50重量部、メチロール化メラミン樹脂(住友化学工業(株)製;SUMIMALM−40W)10重量部、エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製;Poln MF−18)5重量部を混合し、2重量%の帯電防止層用の塗工液を作成し、この塗液を4g/m2(塗液量ベース)の塗布量で塗布し、120℃、1分間加熱乾燥および硬化反応を行わせ帯電防止層を形成した。引き続き、この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの帯電防止層を形成していない面に実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は実施例1と同様に良好であった。また、この表面保護フィルムは、剥離する際に静電気の発生がなく、ゴミの付着がほとんどなく良好であった。
【0097】
実施例8
実施例7において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの帯電防止層を形成した面に実施例1と同様の粘着剤層を形成し、表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であった。また、この表面保護フィルムは、剥離する際に静電気の発生がなく、ゴミの付着がほとんどなく良好であった。
【0098】
実施例9
実施例1において、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤の代わりに、付加反応型の離型剤(信越化学工業(株)製;KS−778、固形分30%トルエン溶解液)100重量部と、白金触媒(信越化学工業(株)製;PL−50T)1重量部とをトルエンに溶解して、全体の固形分が3重量%のトルエン溶液(離型層塗設用塗液)を調整した。この離型層用塗工液を6g/m2(塗液量ベース)の塗布量で塗布し、120℃、1分間加熱乾燥および付加重合反応を行わせ、偏光板の粘着剤層に貼りつける表面保護フィルムを作製した。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は実施例1と同様に良好であった。
【0099】
実施例10
実施例9において、付加反応型の離型剤の代わりに、UV硬化型の離型剤(信越化学工業(株)製;X−62−5048)を用い、この離型層用塗工液を6g/m2(塗液量ベース)の塗布量で塗布し、1.0J/cm2の条件でUV硬化し、偏光板の粘着剤層に貼りつける表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であった。
【0100】
実施例11
実施例9において、付加反応型の離型剤の代わりに、フッ素系溶剤(3M社製;FC−77「フロリナート」)を希釈溶媒として、これにフッ素含有樹脂として含フッ素アクリル樹脂(ネオス(株)製;RBX−725NF「フリリース」)とフッ素系オイル(デュポン社製;157FS−M「クライトックス」)を重量固形分比20:80の組成で均一分散させた濃度3.0重量%の塗液を0.4μm/dryとなるように塗布し、120℃、1分間加熱乾燥させ偏光板の粘着剤層に貼りつける表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であった。
【0101】
実施例12
実施例7同様にして、得られた帯電防止層付きの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの帯電防止層を形成していない面に実施例9と同様の付加反応型の離型層を形成し、偏光板の粘着剤層に貼りつける表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であった。また、この表面保護フィルムは、剥離する際に静電気の発生がなく、ゴミの付着がほとんどなく良好であった。
【0102】
実施例13
実施例12において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの帯電防止層を形成した面に実施例9と同様の付加反応型の離型層を形成し、偏光板の粘着剤層に貼りつける表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は良好であった。また、この表面保護フィルムは、実施例12と同様に剥離する際に静電気の発生がなく、ゴミの付着がほとんどなく良好であった。
【0103】
比較例1
不活性粒子として、シリカ微粒子を0.2重量%含有するポリエチレンテレフタレートを水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを縦方向に90℃で3.0倍延伸し、続いて幅方向に90℃で3.8倍延伸した。さらに、200℃で幅方向に熱固定し、続いて180℃で4%リラックスして、厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。前記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、配向主軸の最大歪みが17度、ヘイズ値が16.2%、MOR値の最低値が1.36、120℃における熱収縮率が0.9%、全光線透過率が89%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板は、幅方向で黒化濃度に斑があり、更に幅方向で表面保護フィルムに起因する光の干渉による虹が観察され、検品性は不良であった。
【0104】
比較例2
実施例1において、不活性粒子であるシリカ微粒子の含有量を0.2重量%から0.06重量%に変更した以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。ここで、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸の最大歪みは4度、ヘイズ値は6.3%、またMOR値の最低値は2.76、120℃における熱収縮率は0.25%、全光線透過率は89%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は実施例1と同様に良好であったが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに起因する表面の傷、異物等の隠蔽性が不足しており、歩留まりが低下した。
【0105】
比較例3
実施例1において、不活性粒子であるシリカ微粒子の含有量を0.2重量%から0.35重量%に変更した以外は実施例1と同様に実施し、表面保護フィルムを得た。ここで、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸の最大歪みは4度、ヘイズ値は26.3%、またMOR値の最低値は2.76、120℃における熱収縮率は0.25%、全光線透過率は89%であった。実施例1と同様に、粘着剤層を積層した表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムを用いた偏光板の検品性は黒化濃度が不足しており不良であった。
【0106】
【発明の効果】
本発明の高分子フィルムは、マイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みが7度以下であり、かつヘイズ値が10〜25%の範囲の高分子フィルムを用いることで、光学的評価等の検査時に、偏光板や位相差板などの検品の両面に設けられた表面保護フィルムを剥離することなしに、検品の欠点を見易くすることが可能である。さらに、高分子フィルムの傷や異物の発生を高度に低減する必要がなく、さらにポリエチレンテレフタレートのような安価で総合性能の優れた樹脂を用いることで、コストダウンが可能となり、検査後廃棄される表面保護フィルムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粘着剤層を設けた表面保護フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の粘着剤層を設けた表面保護フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明の粘着剤層を設けた表面保護フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の離型層を設けた表面保護フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の離型層を設けた表面保護フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の離型層を設けた表面保護フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図7】図1、図4の粘着剤層を設けた表面保護フィルム、離型層を設けた表面保護フィルムを、光学用部材の一例として偏光板に貼り合わせた例を模式的に示した断面図である。
【図8】<配向主軸の最大歪み>の評価における、サンプリング方法の概略図である。
【符号の説明】
1 粘着剤層を設けた表面保護フィルム
2 離型層を設けた表面保護フィルム
3 光学用部材
11 高分子フィルム
12 粘着剤層
13 帯電防止層
14 離型層
15 トリアセチルセルロース(TAC)
16 偏光膜
17 偏光板の粘着剤層
21 長手方向
22 幅方向
23 端辺
24 頂点
25 頂点の中心
Claims (13)
- 不活性粒子を0.05〜1.5重量%含有する有機高分子からなる一軸延伸または二軸延伸された高分子フィルムであって、前記高分子フィルムはマイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みが7度以下であり、かつヘイズ値が10〜25%であることを特徴とする高分子フィルム。
- マイクロ波透過型分子配向計で測定したマイクロ波透過強度の最大/最小比(MOR値)の最低値が1.8より大きいことを特徴とする請求項1記載の高分子フィルム。
- 120℃における熱収縮率が5.0%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の高分子フィルム。
- 前記高分子フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1、2、または3のいずれかに記載の高分子フィルム。
- ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステルから構成されるフィルムであることを特徴とする請求項4記載の高分子フィルム。
- 請求項1、2、3、4、または5のいずれかに記載の高分子フィルムの片面に粘着剤層を積層していることを特徴とする表面保護フィルム。
- 高分子フィルムの粘着剤層側とは反対面に、帯電防止層を積層していることを特徴とする請求項6記載の表面保護フィルム。
- 粘着剤層と高分子フィルムの間に帯電防止層を積層していることを特徴とする請求項6記載の表面保護フィルム。
- 請求項1、2、3、4、または5のいずれかに記載の高分子フィルムの片面に離型層を積層していることを特徴とする表面保護フィルム。
- 高分子フィルムの離型層側とは反対面に、帯電防止層を積層していることを特徴とする請求項9記載の表面保護フィルム。
- 離型層と高分子フィルムの間に帯電防止層を積層していることを特徴とする請求項9記載の表面保護フィルム。
- 請求項9記載の離型層が、シリコーン樹脂及び/又はフッ素樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする表面保護フィルム。
- 請求項12記載のシリコーン樹脂が、熱硬化型シリコーン樹脂または放射線硬化型シリコーン樹脂を主たる構成成分とすることを特徴とする表面保護フィルム。
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