JP3569622B2 - 軸物ワークのクランプ方法 - Google Patents

軸物ワークのクランプ方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械の主軸ヘッドに軸物ワークを支持するための軸物ワークのクランプ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのクランクシャフトのような軸物ワークを工作機械の主軸ヘッドにクランプする場合、従来は軸物ワークの軸方向両端面に形成したテーパー状のセンター孔に一対のテーパー状のワークセンターをそれぞれ嵌合させ、センター孔にワークセンターを圧接して支持していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記従来のものは、刃具や砥石から軸物ワークに作用する荷重を支持すべくセンター孔にワークセンターを強く圧接すると、軸物ワークに作用する圧縮方向の軸力によって該ワークに撓みが発生して加工精度が低下する問題がある。これを避けるためにワークセンターの押圧力を低下させると、軸物ワークの保持力が減少するために加工取り代を充分に確保することができず、加工効率が減少する問題がある。
【0004】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、軸物ワークに撓みを発生させることなく充分な保持力でクランプできるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、軸物ワークの軸方向両端面にそれぞれテーパー状の第1センター孔および第2センター孔を形成し、第1主軸に設けたテーパー状の第1ワークセンターおよび第2主軸に設けた第2ワークセンターをそれぞれ前記第1センター孔および第2センター孔に嵌合させてワークを支持する軸物ワークのクランプ方法において、第1センター孔の先端に雌ねじを同軸に連設し、第1ワークセンターの中心を摺動自在に貫通してその先端に突出する雄ねじを前記雌ねじに螺入させ、次いでその雄ねじを軸物ワークから離反する方向に移動させて第1ワークセンターを第1センター孔に圧接させることにより、軸物ワークの第1端面を第1主軸にクランプし、次い で第1および第2主軸を、第2ワークセンターおよび軸物ワーク相互に接近する方向に相対移動させて、軸物ワークの撓みが最小限に抑えられる圧縮方向の軸力で該第2ワークセンターを第2センター孔に圧接させることにより、該軸物ワークの第2端面を第2主軸にクランプすることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、軸物ワークの軸方向一端側の端面に形成した雌ねじに螺合する雄ねじを軸物ワークから離反する方向に移動させて第1ワークセンターを第1センター孔に圧接させることにより、軸物ワークの第1端面を第1主軸にクランプし、これにより、軸物ワークに圧縮方向の軸力を作用させずに軸物ワークの軸方向一端側を強固に保持することができる。次いで第1および第2主軸を、第2ワークセンターおよび軸物ワークが相互に接近する方向に相対移動させて、軸物ワークの撓みが最小限に抑えられる圧縮方向の軸力で該第2ワークセンターを第2センター孔に圧接させることにより、該軸物ワークの第2端面を第2主軸にクランプし、これにより、軸物ワークの軸方向他端側の端面に形成した第2センター孔に第2ワークセンターを圧接する際の圧縮方向の軸力を特別に強めることなく、軸物ワークを充分な保持力でクランプすることができる。その結果、軸物ワークの撓みを最小限に抑えて加工精度を高めることが可能になるだけでなく、加工取り代を充分に確保して加工効率を高めることが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図9は本発明の一実施例を示すもので、図1はクランクシャフト研削盤の全体斜視図、図2は図1の2方向矢視図、図3は第1主軸台の側断面図、図4ー図3の要部拡大図、図5は第2主軸台の側断面図、図6は図5の要部拡大図、図7は図4に対応する作用説明図、図8は図6に対応する作用説明図、図9は研削加工の各工程を示す図である。
【0008】
図1に示すように、クランクシャフト研削盤は、主ベッド1と、主ベッド1の上面に沿って左右方向に往復動自在に支持されたトラバーステーブル2と、トラバーステーブル2を往復駆動するトラバーステーブル送り装置3と、トラバーステーブル2の左端側上面に左右方向に往復動自在に支持された第1主軸台4と、トラバーステーブル2の右端側上面に固定された第2主軸台5と、主ベッド1の側部に連設された副ベッド6と、副ベッド6の上面に前記主ベッド1に対して接近・離間するように前後移動自在に支持された砥石ユニット7と、砥石ユニット7を往復駆動する砥石ユニット送り装置8と、砥石ユニット7の前端に設けられた砥石ヘッド9とを備える。
【0009】
第1主軸台4の第1主軸ヘッド10および第2主軸台5の第2主軸ヘッド11にクランクシャフトWの両端を支持して回転させながら、砥石ユニット送り装置8で砥石ヘッド9を移動させて回転する砥石12をクランクシャフトWに当接させ、これと同時にトラバーステーブル送り装置3でトラバーステーブル2を移動させることにより、クランクシャフトWのジャーナル部、ピン部あるいは端面の研削を行う。
【0010】
図2に示すように、主ベッド1に支持したモータ13に接続された雄ねじ部材14がトラバーステーブル2の下面に固定した雌ねじ部材15に螺合しており、モータ13で雄ねじ部材14を回転させて雌ねじ部材15を押し引きすることにより、トラバーステーブル2が主ベッド1に対して左右に往復移動する。第2主軸台5はトラバーステーブル2に固定されているが、第1主軸台4はトラバーステーブル2の上面に左右移動自在に支持されており、その下面に固定した雌ねじ部材16に螺合する雄ねじ部材17をトラバーステーブル2に支持したモータ18で回転駆動することにより、第1主軸台4は第2主軸台5に対して接近・離反するように左右に往復移動する。
【0011】
次に、図3および図4に基づいて第1主軸ヘッド10の構造を説明する。
【0012】
図3に示すように、第1主軸ヘッド10はモータ18により往復移動するスライドベース20を備えており、その上面にモータブラケット21を介してモータ22が支持される。モータ22の右側には減速機23および主軸ハウジング24が配置され、モータ22と減速機23の入力側が継手25で接続され、主軸ハウジング24に回転自在に支持された第1主軸26と減速機23の出力側が継手27で接続される。主軸ハウジング24とモータブラケット21とに両端を支持したカバー28により減速機23が覆われる。
【0013】
図4を併せて参照すると明らかなように、第1主軸26は大径円筒状の主軸本体部29と、主軸本体部29の左端にボルト30…で固定されて減速機23に接続される主軸入力部31と、主軸本体部29の右端にボルト32…で固定される主軸出力部33とを備えており、主軸ハウジング24の内周面にボルト34…で固定された円筒状の軸受けハウジング35の内周面に、前記主軸本体部29が回転自在に支持される。主軸本体部29は、軸受けハウジング35に設けた油静圧ベアリングよりなる一対のラジアルベアリング36,36および一対のスラストベアリング37,37によりフローティング状態で支持される。
【0014】
シリンダ本体38、フロントカバー39およびリヤカバー40をボルト41…,42…で組み立てたシリンダユニット43がボルト44…で主軸本体部29の内部に固定されており、そのシリンダ本体38の内部にピストン45が摺動自在に嵌合する。ピストン45はキー46を介してシリンダユニット43に係合しており、従って、ピストン45はシリンダユニット43と一体に回転しながら軸方向の摺動を許容される。スプリング47でクランクシャフトWに接近する方向(右向き)に付勢されたピストン45は、その右側に形成された室48にエアーを供給することによりクランクシャフトWから離反する方向(左向き)に駆動される。
【0015】
主軸出力部33にテーパー状の第1ワークセンター49が固定されており、ピストン45から右向きに突出して先端に雄ねじ50が形成されたロッド51が、前記第1ワークセンター49の中心を摺動自在に貫通する。クランクシャフトWの左側の第1端面52には、第1ワークセンター49に嵌合可能なテーパー状の第1センター孔53と、この第1センター孔53に同軸に連設されて前記雄ねじ50に螺合可能な雌ねじ54とが形成される。
【0016】
次に、図5および図6に基づいて第2主軸ヘッド11の構造を説明する。
【0017】
図5に示すように、第2主軸ヘッド11はトラバーステーブル2の上面に固定した主軸ハウジング60を備えており、主軸ハウジング60に回転自在に支持した第2主軸61が継手62を介して減速機63の出力側に接続されるとともに、モータブラケット64を介して支持したモータ65が継手66を介して減速機63の入力側に接続される。主軸ハウジング60とモータブラケット64とに両端を支持したカバー67により減速機63が覆われる。
【0018】
図6を併せて参照すると明らかなように、第2主軸61は、大径円筒状の主軸本体部68と、主軸本体部68の右端にボルト69…で固定されて減速機63に接続される主軸入力部70と、主軸本体部68の左端にボルト71…で固定される主軸出力部72と、主軸出力部72の左端にボルト73…で固定されるカバー部74とを備えており、主軸ハウジング60の内周面にボルト75…で固定された円筒状の軸受けハウジング76の内周面に、前記主軸本体部68が回転自在に支持される。主軸本体部68は、軸受けハウジング76に設けた油静圧ベアリングよりなる一対のラジアルベアリング77,77および一対のスラストベアリング78,78によりフローティング状態で支持される。
【0019】
第2主軸61の内部に同軸に収納されたガイド軸79の両端が、継手80,81を介して主軸本体部68および主軸出力部72に固定される。ガイド軸79および主軸本体部68間に形成された環状のシリンダ82にピストン83が摺動自在に嵌合する。ピストン83の後面に臨む室96にエアーを供給すると、スプリング97の弾発力に抗してピストン83がクランクシャフトWに接近する方向(左向き)に駆動される。
【0020】
主軸出力部72およびカバー部74を3本のロッド84…が摺動自在に貫通しており、ロッド84…の右端にボルト85…で固定したプレート86が前記ピストン83の左端に当接するとともに、ロッド84…の左端にボルト87…で固定したプレート88にドライブケレー89がボルト90…で固定される。
【0021】
クランクシャフトWの右側の第2端面91に形成したテーパー状の第2センター孔92に嵌合可能なテーパー状の第2ワークセンター93が、主軸出力部72の先端に設けられる。また前記クランクシャフトWの第2端面91に形成したピン孔94に嵌合可能なピン95が、前記ドライブケレー89の先端面に突設される。
【0022】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0023】
クランクシャフトWのクランプは以下の手順で行われる。先ず、モータ18を駆動して左側の第1主軸ヘッド10を右側の第2主軸ヘッド11から離反するように移動させ、第1、第2主軸ヘッド10,11の間隔を広げる。続いて、第1主軸ヘッド10のモータ22を駆動して第1主軸26を回転させ、第1主軸26の先端に突出する雄ねじ50をクランクシャフトWの第1端面52の雌ねじ54に螺入する(図7参照)。
【0024】
次に、第1主軸ヘッド10のシリンダユニット43の室48にエアーを供給し、スプリング47の弾発力に抗してピストン45を後退させることにより、雄ねじ50と共にクランクシャフトWを第1主軸ヘッド10側に牽引する。その結果、クランクシャフトWの第1端面52に開口するテーパー状の第1センター孔53が第1主軸26に設けたテーパー状の第1ワークセンター49に嵌合して圧接され、クランクシャフトWの第1端面52が第1主軸26にクランプされる(図4参照)。
【0025】
次に、モータ18を駆動して第1主軸ヘッド10をクランクシャフトWと共に第2主軸ヘッド11に向けて右側に移動させる。その結果、クランクシャフトWの第2端面91に開口するテーパー状の第2センター孔92が第2主軸ヘッド11に設けた第2ワークセンター93に嵌合して圧接される(図8参照)。而して、クランクシャフトWの軸方向両端の第1端面52および第2端面91が、それぞれ第1ワークセンター49および第2ワークセンター93によりクランプされる。
【0026】
次に、第2主軸ヘッド11のシリンダ82の室96にエアーを供給し、スプリング97の弾発力に抗してピストン83を前進させることにより、プレート86、ロッド84…およびプレート88を介してドライブケレー89が前進し、そのピン95がクランクシャフトWの第2端面91に形成したピン孔94に嵌合する(図6参照)。
【0027】
而して、第1主軸ヘッド10のモータ22を駆動して第1主軸26を回転させると、第1主軸26と一体の第1ワークセンター49および雄ねじ50が回転してクランクシャフトWの第1端面52が駆動され、第2主軸ヘッド11のモータ65を駆動して第2主軸61を回転させると、第2主軸61と一体の第2ワークセンター93およびドライブケレー89が回転してクランクシャフトWの第2端面91が駆動される。
【0028】
次に、図9を参照しながらクランクシャフトWの各研削工程を説明する。
【0029】
先ず、図9(A),(B)に示すように、トラバーステーブル2と共に第1、第2主軸ヘッド10,11を左右に移動させることにより、回転する砥石12の外周面で回転するクランクシャフトWの5個のジャーナル部98…を順次研削する。続いて、回転する砥石12の外周面でクランクシャフトWの4個のピン部99…を順次研削する。このとき、クランクシャフトWの回転に伴ってピン部99…は該クランクシャフトWの軸線周りに偏心回転するため、それに応じて砥石ユニット7を前後に往復移動させることにより、砥石12をピン部99…の偏心回転に追従させる。
【0030】
ところで、面積が狭いクランクシャフトWの第1端面52は研削を行う必要はないが、第1端面52に比べて面積の広い第2端面91は研削を行う必要がある。第2端面91の研削を行う際には、図8および図9(D)に示すように、ドライブケレー89をクランクシャフトWから離反する方向に後退させ、そのピン95を第2端面91のピン孔94から離脱させた状態で、砥石12の側面で第2端面91を研削する。このとき、ドライブケレー89の駆動力をクランクシャフトWに伝達することができなくなるが、クランクシャフトWは第1主軸ヘッド10により支障なく駆動される。
【0031】
以上のように、クランクシャフトWの第1端面52に螺合する雄ねじ50を牽引して第1センター孔53を第1ワークセンター49に圧接するので、クランクシャフトWに圧縮方向の軸力を作用させることなく、該クランクシャフトWを強固にクランプすることができる。その結果、クランクシャフトWの第2端面91に形成した第2センター孔92に第2ワークセンター93を圧接する際の圧縮方向の軸力を特別に強めずとも、クランクシャフトWを充分な保持力でクランプすることができる。これにより、圧縮方向の軸力によるクランクシャフトWの撓みが最小限に抑えて加工精度を高めることが可能になり、しかも保持力が増加した分だけ加工取り代を増加させて加工効率を高めることが可能となる。
【0032】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、本発明の研削盤が対象とする軸物ワークはクランクシャフトWに限定されるものではない。
【0033】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、軸物ワークの軸方向一端側の端面に形成した雌ねじに螺合する雄ねじを軸物ワークから離反する方向に移動させて第1ワークセンターを第1センター孔に圧接させることにより、軸物ワークの第1端面を第1主軸にクランプし、これにより、軸物ワークに圧縮方向の軸力を作用させずに軸物ワークの軸方向一端側を強固に保持することができる。次いで第1および第2主軸を、第2ワークセンターおよび軸物ワークが相互に接近する方向に相対移動させて、軸物ワークの撓みが最小限に抑えられる圧縮方向の軸力で該第2ワークセンターを第2センター孔に圧接させることにより、該軸物ワークの第2端面を第2主軸にクランプし、これにより、軸物ワークの軸方向他端側の端面に形成した第2センター孔に第2ワークセンターを圧接する際の圧縮方向の軸力を特別に強めることなく、全体として軸物ワークを充分な保持力でクランプすることができその結果、軸物ワークの撓みを最小限に抑えて加工精度を高めることが可能になるだけでなく、加工取り代を充分に確保して加工効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクシャフト研削盤の全体斜視図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】第1主軸台の側断面図
【図4】図3の要部拡大図
【図5】第2主軸台の側断面図
【図6】図5の要部拡大図
【図7】図4に対応する作用説明図
【図8】図6に対応する作用説明図
【図9】研削加工の各工程を示す図
【符号の説明】
26 第1主軸
49 第1ワークセンター
50 雄ねじ
52 第1端面(端面)
53 第1センター孔
54 雌ねじ
61 第2主軸
91 第2端面(端面)
92 第2センター孔
93 第2ワークセンター
W クランクシャフト(軸物ワーク)

Claims (1)

  1. 軸物ワーク(W)の軸方向両端面(52,91)にそれぞれテーパー状の第1センター孔(53)および第2センター孔(92)を形成し、第1主軸(26)に設けたテーパー状の第1ワークセンター(49)および第2主軸(61)に設けた第2ワークセンター(93)をそれぞれ前記第1センター孔(53)および第2センター孔(92)に嵌合させてワーク(W)を支持する軸物ワークのクランプ方法において、
    第1センター孔(53)の先端に雌ねじ(54)を同軸に連設し、
    第1ワークセンター(49)の中心を摺動自在に貫通してその先端に突出する雄ねじ(50)を前記雌ねじ(54)に螺入させ、
    次いでその雄ねじ(50)を軸物ワーク(W)から離反する方向に移動させて第1ワークセンター(49)を第1センター孔(53)に圧接させることにより、軸物ワーク(W)の第1端面(52)を第1主軸(26)にクランプし、
    次いで第1および第2主軸(26,61)を、第2ワークセンター(93)および軸物ワーク(W)相互に接近する方向に相対移動させて、軸物ワーク(W)の撓みが最小限に抑えられる圧縮方向の軸力で該第2ワークセンター(93)を第2センター孔(92)に圧接させることにより、該軸物ワーク(W)の第2端面(91)を第2主軸(61)にクランプすることを特徴とする、軸物ワークのクランプ方法。
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