JP3568349B2 - 水硬性無機材料用混和剤及び水硬性無機材料用プライマー - Google Patents
水硬性無機材料用混和剤及び水硬性無機材料用プライマー Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントなど水硬性無機材料の混和剤などとして有用なアクリル酸エステル系ポリマーエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用混和剤及び水硬性無機材料用プライマーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリマーエマルジョンは、セメント混和剤としてモルタルなどのセメント組成物の性質を改善するために用いられてきた。このようなポリマーエマルジョンとしては、エチレン−酢酸ビニル系、スチレン−ブタジエン系、アクリル酸エステル系などを挙げることができる。これらを混和することにより、セメントモルタル硬化体中に樹脂フィルムが形成されて亀裂防止能が付与され(特公昭52−25406号公報)、曲げ強さ、引っ張り強さ、圧縮強さなどの機械的強度が向上し(特公昭47−33054号公報)、耐衝撃性、耐磨耗性(特開昭62−52154号公報)、耐水性、耐候性などを改善できることが知られている。また、ポリマーエマルジョンは、プライマーとしてコンクリートなど構造物素地表面に塗布することにより、この素地表面に塗工されるモルタルなどとの付着性を向上させる(特公昭44−18757号公報)ことを目的として使用される場合もある。
【0003】
このような用途に供されるポリマーエマルジョンとして、アクリル酸エステル系のポリマーエマルジョンは、エチレン−酢酸ビニル系やスチレン−ブタジエン系と比べると、耐候性には優れているがセメント混和性および付着性能に劣るため、広く受け入れられてはいなかった。近年、これらの欠点を改善するため、保護コロイド効果の利用(特開昭58−55355号公報)、ボールベアリング効果の利用(特開平3−205333号公報)、コンクリート用流動化剤の知見の利用(特開平8−217808号公報、特開平8−217513号公報)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記に提案されているアクリル酸エステル系ポリマーエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用混和剤は、いずれもセメント混和性を改善するが付着性能を向上させるものではなかった。一方、付着性を向上させるためにカチオン性の官能基を導入することも提案されているが(特開昭62−83346号公報)、セメント混和性の改善までには至っておらず、混和性と付着性の両性能を十分に満たすアクリル酸エステル系ポリマーエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用混和剤は未だ得られていない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、セメントなどとの混和性に優れ、かつ付着性においても優れた性能を有するポリマーエマルジョンを必須成分とする水硬性無機材料用混和剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明のポリマーエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用混和剤は、カルボキシル基を有する不飽和単量体と、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つの不飽和単量体とを含み(ただし、塩化ビニル単量体を含む場合は、その含有量が単量体混合物合計に対して、20質量%以上である場合を除く)、前記不飽和単量体の共重合体について重量分率法により算出したガラス転移温度が220〜270Kである混合物を、エチレン性不飽和結合とポリオキシアルキレン基とを有する分子を含む乳化剤を用いて乳化重合して得られることを特徴とする。
【0007】
このような構成にすることにより、混和性能および付着性能を向上させ得る水硬性無機材料用混和剤とすることができる。ポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基などのポリオキシアルキレン基は、セメント粒子などの無機粒子を立体反発効果により分散させる能力に優れるが、この立体反発効果は無機材料どうしの付着性能を低下させるという側面も持ちあわせている。一方、カルボキシル基は、無機材料どうしの付着性能を向上させる点においては効果があるが、無機粒子の分散安定性を阻害する傾向を有するものである。本発明の水硬性無機材料用混和剤が前記効果を発揮するのは、ポリマーエマルジョンの粒子表面に、ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基とを効果的に化学修飾できたことが一因であると考えられる。
【0008】
ここで、重量分率法により算出したガラス転移温度とは、下記に示すフォックス(Fox)の式に基づいて算出したガラス転移温度(Tg)のことをいう。
【0009】
【数1】
【0010】
ただし、Tgは共重合体のガラス転移温度(K)、Tgnは不飽和単量体nのガラス転移温度(K)、Wgnは不飽和単量体の重量分率である。
【0011】
一般に、ガラス転移温度で示される転移領域においてポリマーの諸性質は大きく変化することが知られているが、本発明において、上記式(1)により算出したガラス転移温度を220〜270Kとしたのは、270Kを超えると付着性能や耐水性などの硬化体性能が低下するからであり、220K未満では皮膜の弾性が低下して付着強さが低下したり皮膜の機械的強度が低下するからである。同様の観点から、前記方法により算出されたガラス転移温度は、240K以上であることがさらに好ましい。
【0012】
さらに、前記構成においては、エチレン性不飽和結合を有する反応性乳化剤を用いることにより、フリーの乳化剤による硬化体の耐水性の低下が抑制されるなどの効果が得られている。
【0013】
また、前記構成においては、ポリマーエマルジョンの平均粒子径が30〜200nmであることが好ましい。平均粒子径が200nmを超えるとポリマーの比表面積が小さくなって、カルボキシル基やポリオキシアルキレン基をポリマー表面に効果的に化学修飾することができなくなるからであり、30nm未満ではポリマーエマルジョンの濃度が著しく増加して製造時や使用時の取り扱いが容易ではなくなるからである。平均粒子径は、50nm以上がさらに好ましく、また、150nm以下さらには100nm以下が一層好ましい。このように平均粒子径が小さく、ガラス転移温度が270K以下であるポリマーエマルジョンを用いることにより、機械的強度、耐水性などの皮膜特性が向上する。
【0014】
また、前記構成においては、前記混合物において、カルボキシル基を有する不飽和単量体を全不飽和単量体の0.1〜10重量%とすることが好ましい。10重量%を超えると皮膜の耐水性が低下したり、セメント硬化反応が阻害されるおそれがあるからであり、0.1重量%未満ではカルボキシル基に起因する付着性能が十分に発揮されないおそれがあるからである。カルボキシル基を適切な割合で導入することにより良好な硬化体性能などを得ることができる。
【0015】
また、前記構成においては、乳化剤を全不飽和単量体の0.5〜10重量%として乳化重合することが好ましい。10重量%を超えると付着性能や硬化体性能が低下するおそれがあるからであり、0.5重量%未満では所望の粒子径を有するポリマーエマルジョンが得がたくなるからである。ポリオキシアルキレン基をカルボキシル基に対して適切な割合で導入することにより混和性および付着性を調整することができる。
【0016】
また、本発明の水硬性無機材料用プライマーは、カルボキシル基を有する不飽和単量体と、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つの不飽和単量体とを含み(ただし、塩化ビニル単量体を含む場合は、その含有量が単量体混合物合計に対して、20質量%以上である場合を除く)、前記不飽和単量体の共重合体について重量分率法により算出したガラス転移温度が220〜270Kである混合物を、エチレン性不飽和結合とポリオキシアルキレン基とを有する分子を含む乳化剤を用いて乳化重合して得られるポリマーエマルジョンを必須成分として含有することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明において用い得る不飽和単量体について説明する。
【0018】
カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、不飽和カルボン酸が好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などを用いることができる。アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも一つがさらに好ましい。なお、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸の場合には、これらのモノエステルやモノアマイドを用いてもよい。
【0019】
アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとしては、特に制限されるものではないが、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、この場合のアルキル基としては炭素数が1〜18のものが好適であり、さらに具体的に例示すれば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどを用いることができる。
【0020】
なお、これらの不飽和単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、これら不飽和単量体を含む混合物には、強度、耐水性、耐薬品性など樹脂皮膜に由来する性能を向上させるために、1分子中に複数の官能基を有する架橋剤を含ませて共重合させることが好ましい。架橋剤としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレン付加体ジアクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレン付加体ジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジビニルベンゼンなどを用いることができる。
【0022】
さらに、この混合物には、ポリマーエマルジョンの性能を損なわない範囲で、前記以外の不飽和単量体、例えばスチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン類、ブタジエンやイソプレンなどのジエン類、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリロニトリルやα−メチルアクリロニトリルなどのニトリル類を適宜併用してもかまわない。
【0023】
次に、本発明で用い得るポリオキシアルキレン基とエチレン性不飽和結合とを一分子内に有する乳化剤について説明する。このような反応性乳化剤としては、例えば、下記化学式(1)、(2)に示されるアニオン性またはノニオン性乳化剤を好適に使用することができる。
【0024】
[アニオン性乳化剤の例]
【0025】
【化1】
【0026】
[ノニオン性乳化剤の例]
【0027】
【化2】
【0028】
ただし、化学式(1)および(2)において、Aは炭素数が2または3のアルキレン基(例えば、−CH2−CH2−または−CH2−CH(CH3)−)、M1は1価または2価の陽イオン、nは3〜100、好ましくは5〜40、R0は炭素数が6〜18のアルキル基(例えば、オクチル基、ノニル基)、アルケニル基またはアラルキル基(アリール化アルキル基)である。
【0029】
前記乳化剤は、アニオン性乳化剤またはノニオン性乳化剤の1種または2種以上と併用してもよい。
【0030】
併用できる乳化剤の具体例を以下に例示する。
【0031】
[アニオン性乳化剤の例]
下記化学式(3)に示すポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルスルホネート・サルフェート塩
【0032】
【化3】
【0033】
下記化学式(4)に示すポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート塩
【0034】
【化4】
【0035】
下記化学式(5)に示すポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルサルフェート塩
【0036】
【化5】
【0037】
下記化学式(6)〜(11)に示す乳化剤
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
ただし、化学式(3)〜(11)において、mは0または1、R1は炭素数が6〜20のアルキル基、R2 は水素原子またはメチル基、R3は炭素数が1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキル基もしくはアルケニル基を有するフェニル基、または脂肪酸残基、R4はメチレン基、エチレン基またはフェニレン基であり、A、nおよびM1は前記と同様である。
【0045】
[ノニオン性乳化剤の代表例]
下記化学式(12)に示すポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル
【0046】
【化12】
【0047】
下記化学式(13)に示すポリオキシアルキレンアルキルエーテル
【0048】
【化13】
【0049】
ただし、化学式(12)および(13)において、A、nおよびR1は前記と同様である。
【0050】
併用する乳化剤は、分子内にオキシエチレン基、オキシプロピレン基などのオキシアルキレン基を有するアニオン性乳化剤が好ましい。
【0051】
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素単独、または過酸化水素と酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸などのカルボン酸との組み合わせや、過酸化水素とシュウ酸、スルフィン酸およびこれらの塩類またはオキシアルデヒド類、水溶性鉄塩などとの組み合わせ、さらには過硫酸塩、過炭酸塩、過硼酸塩類などの過酸化物、または2,2’アゾビス(2−アミジノプロパン)とその塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)とその塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)とその塩などの水溶性アゾ系開始剤が使用可能である。本発明のポリマーエマルジョンの調整には、前記水溶性アゾ系開始剤を、ポリマーエマルジョンを構成する不飽和単量体に対して、0.1〜3重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0052】
本発明において含有されるポリマーエマルジョンは、不飽和単量体、乳化剤、重合開始剤を適宜用いて、下記の一般的な乳化重合により調整することができる。すなわち、水相に乳化剤を溶解し、不飽和単量体混合物の一部を乳化・可溶化させた後、重合開始剤を添加し、次いで残りの不飽和単量体をそのまま滴下するモノマー滴下法、あるいは乳化剤、水の一部と不飽和単量体混合物を予め混合乳化し、乳化物を滴下するプレ乳化法などにより調製できるが、乳化重合の欠点である重合釜あるいは撹拌羽根等への重合物の付着量を低減するという観点からは、プレ乳化法の採用が好ましい。
【0053】
本発明において含有されるポリマーエマルジョンは、固形分40重量%時の粘度が50〜200cP(ブルックフィールド型粘度計法)であるときに作業性が良好である。また、低粘度のものは固形分を50重量%以上含有させることも可能である。
【0054】
本発明において含有されるポリマーエマルジョンは、乳化重合によって得られたエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用混和剤の形態でセメントなどの組成物中に配合することができる。この場合の水硬性無機材料用混和剤の使用量はセメントなどの水硬性組成物100重量部に対して、固形分として0.1〜50重量部が好ましい。50重量部を超えると水硬性組成物が本来持っている性能を阻害するおそれがあり、0.1重量部未満ではポリマー性能が硬化体に十分反映されないからである。
【0055】
本発明の水硬性無機材料用混和剤を適用する対象は、ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、高炉セメント、石膏セメントなどのセメント類のほか、半水、2水、6水石膏などの石膏類であってもよい。また、セメント類は、普通硬化型、速硬型、超速硬型のいずれであってもよい。
【0056】
また、本発明において、ポリマーセメント硬化体の性能を高めるために、シルカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、細骨材、再生細骨材、硅砂、雲母、石粉末、ガラス粉末、アルミ粉末などの無機混和材料、あるいはリグニンスルフォン酸(塩)、樹脂酸(塩)、高級脂肪酸(塩)、ナフタレンスルフォン酸(塩)、ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルフォン酸(塩)系化合物、ポリスチレン系スルフォン酸(塩)、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系化合物、ポリアルキレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、亜硝酸塩、1−ヒドロキシエタン1、1−ジスルフォン酸など公知のセメント用化学混和剤(AE剤、減水剤、流動化剤、消泡剤、保湿剤、防錆剤、収縮低減剤など)を併用することができる。これらのセメント用化学混和剤は、ポリマーエマルジョンの性能を損なわない範囲で、予めエマルジョン中に混和して用いることができる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、以下の各実施例において示す「部」および「%」はそれぞれ「重量部」および「重量%」である。
〔ポリマーエマルジョンの調製〕
(1)ポリマーエマルジョンNo.1
温度計、撹拌機、環流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に表2にNo.1として示す乳化剤8.0部と水140.0部を仕込んで溶解し、系内を窒素ガスで置換する。表1にNo.1として示す不飽和単量体混合物100.0部と先に溶解した乳化剤水溶液148.0部のうち、50.0部を乳化混合し、このうち5.0部を反応容器に加え65℃まで昇温する。昇温の後、2、2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.3部を水0.8部に溶解し、前記の反応容器に添加し、直ちに残不飽和単量体乳化物145.0部を60分間にわたって反応容器内に連続滴下し、65℃で重合を行う。滴下終了後、65℃で180分間熟成を行い重合を完結させる。室温まで冷却後、固形分を40%に調製し、ポリマーエマルジョンNo.1とした。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
(2)ポリマーエマルジョンNo.2〜No.7
表2の乳化剤および表1の不飽和単量体を用いてポリマーエマルジョンNo.1に準じて調製した。
(3)ポリマーエマルジョンNo.8
市販されているEVA(エチレン−酢酸ビニル)系エマルジョン[商品名:NSハイフレックスHF−1000(日本化成品)]を使用した。
〔ポリマーエマルジョンの性状確認〕
得られたポリマーエマルジョンの平均粒子径を光散乱光度計(大塚電子社製ELS−800)により測定した。なお、表1の各不飽和単量体について、ガラス転移温度を前述のフォックスの式により算出した。各不飽和単量体の単独重合体のガラス転移温度としては、下記の値を用いた(単位:K)。
【0061】
アクリル酸ブチル:219、アクリル酸エチル:249、メタクリル酸メチル:378、メタクリル酸:501、N−メチロールアクリルアミド:373
〔ポリマーセメントモルタルの性能評価〕
(1)混和性試験
JIS R5201(セメントの物理試験方法)に規定する練り混ぜ機、市販されている補修材(ハイモルスーパー#20、昭和電工社製)を用いて、フロー値の測定と単位容積重量試験を行った。試験実条件は40℃、混和条件は6倍水希釈ポリマーエマルジョン(ポリマーエマルジョン:水=1:5)を補充材に対して38重量%となるように加え、90秒間混練りしたものを供試体とした。
【0062】
フロー値は、JIS A6915(厚付け仕上塗材)5.6軟度変化試験に準じて測定した。フロー値は、練り直後および40℃で60分間放置とした後について測定した。
【0063】
単位容積重量は、JIS A1116(まだ固まらないコンクリートの単位容積重量試験方法及び空気量の重量法による試験方法(重量方法))に準じて測定した。
(2)硬化体性能試験
JIS A6203に準じて曲げ強さ、圧縮強さ、付着強さ、吸水率、透水量を測定した。
(3)プライマー評価
日本建築仕上学会規格M−101「セメントモルタル塗り用吸水調整材の品質基準」に準じて付着強さ試験をおこなった。但し、3倍希ポリマーエマルジョン水(ポリマーエマルジョン:水=1:2)をプライマーとし、100g/m2となるように塗りつけた。塗付けモルタルの組成はセメント:川砂=1:1とし、養生7日目の供試体を評価した。温度20℃、湿度80%にて14日間養生したものを標準試験用供試体とし、温度20℃、湿度80%7日間養生後、20℃水中7日間浸漬したものを耐水試験用供試体とした。
【0064】
評価は、付着強さおよび破断面状況を前記規格に準じて算出することにより行い、また、付着強さ測定用ジグを取り付けるための切り込みを供試体面に40×40mmの大きさで入れたときに付着不良で剥離した割合を算出して、浮き率とした。
【0065】
以上の結果を表1および表3〜表5に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
エマルジョンNo.1〜No.5を含む混和剤を用いたセメントモルタルの流動性および硬化体性能は良好であった。特に、エマルジョンNo.1〜No.5を用いた場合には、エマルジョンNo.6およびNo.8を用いた場合よりも付着強度に優れ、エマルジョンNo.7およびNo.8を用いた場合よりもフローロスが小さく、エマルジョンNo.1〜No.5を用いると、混和性と付着性能の両性能が両立することがわかる。
【0070】
また、表5より、エマルジョンNo.1〜No.5を含む混和剤は、得られる皮膜特性が優れており、プライマー組成物として用いた場合も優れた付着性能を示すことがわかる。
【0071】
【発明の効果】
本発明のポリマーエマルジョンを必須成分とする水硬性無機材料用混和剤を用いることにより、混和性、付着性能とも良好なセメントモルタルなどを得ることができる。この混和剤は、従来のアクリル酸エステル系ポリマーエマルジョンを用いた場合よりも、混和性に優れていてフローロスや空気連行性が小さく、コテ作業性にも優れており、得られたセメントモルタル硬化体の付着強さ、圧縮強さ、曲げ強さ、吸水率、透水率など硬化体性能の点でも優れた性能を発揮するものである。
Claims (5)
- カルボキシル基を有する不飽和単量体と、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つの不飽和単量体とを含み(ただし、塩化ビニル単量体を含む場合は、その含有量が単量体混合物合計に対して、20質量%以上である場合を除く)、前記不飽和単量体の共重合体について重量分率法により算出したガラス転移温度が220〜270Kである混合物を、エチレン性不飽和結合とポリオキシアルキレン基とを有する分子を含む乳化剤を用いて乳化重合して得られるポリマーエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用混和剤。
- 前記ポリマーエマルジョンの平均粒子径が30〜200nmである請求項1に記載の水硬性無機材料用混和剤。
- 前記混合物において、カルボキシル基を有する不飽和単量体を全不飽和単量体の0.1〜10重量%とした請求項1または2に記載の水硬性無機材料用混和剤。
- 乳化剤を全不飽和単量体の0.5〜10重量%として乳化重合した請求項1〜3のいずれか一つに記載の水硬性無機材料用混和剤。
- カルボキシル基を有する不飽和単量体と、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つの不飽和単量体とを含み(ただし、塩化ビニル単量体を含む場合は、その含有量が単量体混合物合計に対して、20質量%以上である場合を除く)、前記不飽和単量体の共重合体について重量分率法により算出したガラス転移温度が220〜270Kである混合物を、エチレン性不飽和結合とポリオキシアルキレン基とを有する分子を含む乳化剤を用いて乳化重合して得られるポリマーエマルジョンを必須成分として含有する水硬性無機材料用プライマー。
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