JP3568123B2 - 自転車リアディレーラのケージ板調節機構 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自転車のリアディレーラに関し、特に、自転車の多段スプロケットアセンブリに対しチェーンガイドの位置を軸方向に調節する調節機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
サイクリングは、移動手段としてのみでなく、レクリエーションの形態としてもますます一般化している。また、サイクリングは、アマチュアの選手にとってもプロの選手にとっても非常に一般化した競争スポーツになっている。自転車の使用目的がレクリエーション、移動または競争のいずれであるかに関わらず、自転車産業では、自転車の種々の構成部材が絶えず改良されている。広く設計変更されている自転車の1部分は、自転車の駆動列である。
【0003】
現在の自転車の大部分は、走行時に直面する特定の走行条件に適応するために、乗り手が適切なギア比を選択できる多段変速自転車である。多段変速自転車のギアアセンブリの最も一般的なタイプの1つとして、回転のためにペダルが取り付けられる1セットのフロントスプロケットと、回転のために後輪のリアハブに取り付けられる1セットのリアスプロケットとの間に掛け渡されるチェーンを利用したものがある。スプロケット(ギア)間のチェーンを移動させるのに、通常、2つのディレーラが用いられている。一般に、ディレーラ(フロントまたはリアのディレーラ)の大部分は、自転車フレームに固定される固定またはベース部材と、リンク機構アセンブリにより固定またはベース部材に対し移動するよう支持されるチェーンガイドを有する可動部材とを備えている。チェーンガイドは、チェーンに当接しチェーンをスプロケット間で移動させるためのチェーン受けスロットを形成する1対のガイド板を有する。
【0004】
リアディレーラの場合、チェーンガイドは、ガイド板の間に回転自在に装着された1対のプーリーを有する。また、リアディレーラにおけるベース部材は、水平シャフト(軸)を介して自転車フレームに揺動自在に支持され、チェーンガイドは、水平シャフト(軸)を介して可動部材に揺動自在に装着されている。可動部材とチェーンガイドとの間には、チェーンガイドに張力を加えるために、バネが介在している。ベース部材は、チェーンガイドが多段スロットアセンブリの外周側に配置された状態で、自転車フレームのフォーク端部に固定されている。
【0005】
乗り手がフロントディレーラシフト機構のシフト操作装置を操作すると、操作コンジット(ケーブル)は、チェーンが1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ外側に移動するようフロントディレーラを引っ張るか、またはチェーンが1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ内側に移動するようフロントディレーラを解放する。同様に、乗り手がリアディレーラシフト機構のシフト操作装置を操作すると、操作コンジット(ケーブル)は、チェーンを1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ内側に移動するようリアディレーラを引っ張るか、またはチェーンを1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ外側に移動するようリアディレーラを解放する。すなわち、シフト操作装置がディレーラを解放するよう動かされると、フロントディレーラは自転車の中心へ向けて内側に移動し、一方、リアディレーラは自転車の中心から離れるよう外側へ移動する。
【0006】
多段スプロケットアセンブリに対し軸方向位置に調節され得るチェーンガイドを備えた従来のディレーラは、Naganoに付与され株式会社シマノに譲渡された米国特許第4,850,940号に開示されるように周知である。具体的にはシマノの先行米国特許第4,850,940号には、筒状部材に調節ネジを介して回転不能に装着されたハウジング(可動部材)を有するチェーンガイドの調節機構が示されている。筒状部材は、固定ピン及びブッシュを介してチェーンガイドに連結されている。バネは、筒状部材の内側に配置され、筒状部材及びハウジングを回転させるよう付勢する。ハウジングは、筒状部材に摺動自在な外筒部を有する。ハウジングは固定ピンには連結されていない。外筒部が筒状部材に摺動するようサイズが決められるるとともにハウジングが固定ピンに連結されていないため、これらの部材の間には多少の遊びまたは緩みが存在する。そして、この緩みにより、ハウジングが筒状部材上で振動する場合がある。このような振動は、調節ネジの不適切な回転を生じさせる場合がある。調節ネジのこのような回転は、チェーンガイドをフリーホイールスプロケットからのずれを生じさせ得る。
【0007】
したがって、ハウジングと筒状部材との間の遊びまたは緩みを無くしたハウジングを備えた調節機構を有するのが望ましい。固定ピンに摺動自在な内筒部を有するハウジングを設ければ、この緩みを無くすことができる。振動により不適切に回転しない調節ネジを設けることもまた望ましい。
【0008】
上記観点から、ディレーラに対し、従来技術における上述の問題を克服したものへのニーズが存在する。本発明は、他のニーズのみでなく従来技術におけるこのニーズに言及し、この開示から当業者にとって明らかとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の1つの目的は、従来技術の調節機構よりも遊びが少ないリアディレーラの調節機構を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、組立てが容易なリアディレーラの調節機構を提供することにある。
本発明の他の目的は、緩み防止機構を有するリアディレーラの調節機構を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上述の目的は、自転車ディレーラのチェーンガイドの位置を軸方向に調節する調節機構を設けることにより、基本的に達成できる。調節機構は、軸と、ハウジングと、固定エレメントと、付勢部材と、及び前記ハウジングと前記固定エレメントとの間に連結され、前記ハウジングを前記軸上で軸方向に移動自在に支持する調節部材とから基本的に構成される。軸は第1端部と第2端部を有する。ハウジングは、取付部と第1筒状ガイド部と第1タブ部材とを有する。取付部は、自転車ディレーラのリンク機構アセンブリに連結するのに適合している。第1筒状ガイド部は、軸の第1端部に回動自在に連結される。第1タブ部材は、第1孔を有する。固定エレメントは、軸の第2端部に連結される第2筒状ガイド部を有する。第2筒状ガイド部は、固定エレメントから延び、第1筒状ガイド部の回りに同軸で配置されるとともに、第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を有する。付勢部材は、第1及び第2筒状ガイド部の間に配置され、また固定エレメントに対し軸の回りの回転方向にハウジングを付勢するよう配置される。調節部材は、第1孔及び第2孔に連結可能なネジと、ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと第1タブ部材に対し保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する。そして、第1タブ部材は、第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有している。また、保持ワッシャーは、複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している、
【0012】
本発明の上述の目的は、自転車ディレーラのチェーンガイドの位置を軸方向に調節する調節機構を有する自転車のディレーラを設けることにより、基本的に達成できる。ディレーラは、ベース部材、チェーンガイドを有する可動部材、及びリンク機構アセンブリから基本的に構成される。ベース部材は、自転車の一部に連結され、かつ固定エレメントで第1軸上に回動自在に支持されるよう配置され、第1孔を有する第1タブ部材を含む。可動部材は、自転車のチェーンを横方向に移行するのに適合している。可動部材は、チェーンガイドの板部材に連結される第2軸上に回動自在に支持される。リンク機構アセンブリは、チェーンガイドを引込み位置と張出し位置との間に動かすよう、ベース部材と可動部材との間に移動自在に連結される。ベース部材または可動部材は、それを、対応する第1または第2軸上で軸方向に移動自在に支持する調節機構を有する。その調節機構は、対応する第1または第2軸と回動自在に係合するよう、選択された部材から延びる第1筒状ガイド部を有する。第2筒状ガイド部が、選択された部材から延び、第1筒状ガイド部の回りに同軸で配置されるとともに、第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を含む。付勢部材は、第1及び第2筒状ガイド部の間に配置され、かつ選択された部材を選択された部材に対し対応する軸の回りの回転方向に付勢するよう配置される。調節部材が、選択された部材と選択された部材との間に連結され、第1及び第2孔内に連結されるネジと、ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと第1タブ部材に対し保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する。そして、第1タブ部材は、第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有している。また、保持ワッシャーは、複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している。
【0013】
好ましい実施形態においてディレーラは、ベース部材、チェーンガイドを有する可動部材、及びリンク機構アセンブリから構成される。ベース部材は、自転車の一部に連結され、かつ固定エレメントで第1軸上に回動自在に支持されるよう配置され、第1孔を有する第1タブ部材を含む。可動部材は、自転車のチェーンを横方向に移行するようになっている。可動部材は、チェーンガイドに連結される第2軸上に回動自在に支持される。リンク機構アセンブリは、チェーンガイドを引込み位置と張出し位置との間に動かすよう、ベース部材と可動部材との間に移動自在に連結される。1つの実施形態において可動部材は、第2軸上で軸方向に前記可動部材を移動自在に支持する調節機構を有する。その調節機構は、可動部材から延びて第2軸と回動自在に係合する第1筒状ガイド部と、チェーンガイドから延び、かつ第1筒状ガイド部の回りに配置されるとともに、第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を含む第2筒状ガイド部と、第1及び第2筒状ガイド部の間に配置され、かつチェーンガイドに対し可動部材を第2軸回りの回転方向に付勢するよう配置される付勢部材と、及び可動部材とチェーンガイドとの間に連結される調節部材とを基本的に備えている。調節部材は、第1孔及び第2孔に連結可能なネジと、ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと第1タブ部材に対し保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する。そして、第1タブ部材は、第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有してる。また、保持ワッシャーは、複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している。他の実施形態においてベース部材は、ベース部材を第1軸上で軸方向に移動自在に支持する調節機構を有する。
【0014】
本発明のこれらと他の目的、特徴、態様及び利点は、添付図面と連係して、本発明の好ましい実施形態を開示する以下の詳細な説明から、当業者にとり明らかになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1及び図2は、自転車(図1に一部のみ図示)のフレーム12に連結された本発明のリアディレーラ10を示す。より具体的には、自転車のフレーム12のリアフォーク端部に連結されたリアディレーラ10が示されており、このリアディレーラ10は、チェーンCが、自転車の後輪に所望の回転トルクを伝達するよう、従来の方法でリアスプロケットSを1セットのフロントギア(スプロケット、図示せず)に連結する多段リアギア(スプロケット)Sを備えたリアギアアセンブリを有している。
【0016】
リアディレーラ10は、リアディレーラシフト機構(図示せず)に従来の方法でリアディレーラケーブル14を介して連結されている。より具体的には、ディレーラ10は、外側に普通に付勢されるよう設計され、これにより、チェーンCが最も外側のギア(スプロケット)S上に普通に位置決めされる。すなわち、乗り手がリアディレーラシフト機構を動かすと、ケーブル14は、チェーンCを内側へ移動させて隣のギアと係合するようリアディレーラ10を引っ張る。すなわち、チェーンCは、自転車の中心に向けて内側に移動し、隣の大きいギア(スプロケット)と係合する。
【0017】
リアディレーラ10は、ベース部材20と、可動部材22と、リンク機構アセンブリ24と、チェーンガイド26とを備えている。ベース部材20または可動部材22は、後述するように、自転車のスプロケットSに対しチェーンガイド26の位置を軸方向に調節するための調節機構を有してもよい。機械式ディレーラを示すが、この調節機構は、空気式ディレーラ、電気式ディレーラまたは電気機械式ディレーラのような他の形式のディレーラが採用されてもよい。
【0018】
一般に、ベース部材20は、限定された回転移動をするようフレーム12に堅く連結され、可動部材22は、リンク機構アセンブリ24を介してベース部材20に連結されている。チェーンガイド26は、後述するように、可動部材22に回動自在に連結される。リアディレーラ10の基本動作は、従来技術において周知である。したがって、リアディレーラ10の詳細な説明は省略する。むしろ本開示は、可動部材22及び第2実施形態のベース部材20′の調節機構に重点を置くこととする。
【0019】
図1及び図2に示すように、ベース部材20は、従来の方法で第1水平シャフト(軸)32に回転自在に支持されるハウジング30を有している。ベース部材20は、従来の方法で第1軸32とフレーム12とに固定される固定エレメント(止め板)34をさらに備えている。第1コイルバネ(付勢部材)36は、軸32の周囲に同軸で装着されている。第1バネ36は、ハウジング30に連結される第1端36aと、止め板34に連結される第2端36bと、第1軸32の周囲に同軸で配置されるコイル部36cとを有している。第1軸32は、回動軸を形成するよう自転車のフレーム12にネジ込まれて連結されたボルトである。ベース部材20は、比較的従来のものであり、米国特許第4,690,663号によりさらに理解できる。第1バネ36は、第1端36aがハウジング30の軸方向を向く孔の内部に固定され、第2自由端36bが止め板34の軸方向を向く孔の内部に受容される従来のコイルバネであるのが好ましい。第1コイルバネ36は、固定ボルト(軸)32のシャフトの周囲に位置決めされるようサイズが決められる。
【0020】
ベース部材20のハウジング30は、第1水平軸32に回転自在に支持される。ハウジング30は、リンク機構アセンブリ24及び可動部材22を第1軸32の周囲に揺動自在に支持する取付部を有する。
【0021】
リンク機構アセンブリ24は、ベース部材20のハウジング30に第1端で回動自在に連結され、可動部材22に他端で回動自在に連結される1対のリンク40a,40bを備えている。具体的には、4つのピン43は、リンク40a,40bをベース部材20と可動部材22とに回動自在に連結するのに用いられる。コイルバネ(図示せず)は、リンク40a,40bの間に連結され、チェーンガイド26を適切なギア位置へ付勢する。
【0022】
外側リンク40aには、シフトケーブル14の内側ワイヤの自由端を装着するためのケーブル固定ボルト41が設けられている。したがって、乗り手がリアディレーラシフト機構を操作してシフトケーブル14の内側ワイヤを引っ張ると、リンク40a,40bがコイルバネ(図示せず)の付勢力に抗して内側に回動し、可動部材22及びチェーンガイド26が自転車の中心に向けて内側へ移動する。これにより、チェーンCが外側ギアから隣の内側ギアに移動する。リアディレーラシフト機構が動いてシフトケーブル14の内側ワイヤを解放した場合は、バネ(図示せず)は、リンク機構部材40a,40bを動かし、これにより、チェーンガイド26がチェーンCを大きい方のギアから小さい方のギアに外側に動く。
【0023】
図1及び図2に示すように、チェーンガイド26は、ガイドスプロケット(プーリー)48がガイド板46a,46bの間に回転自在に連結されるとともにテンションスプロケット(プーリー)50がガイド板46a,46bの間に回転自在に連結される1対のガイド板46a,46bを有している。ガイドスプロケット48及びテンションスプロケット50は、従来の方法でチェーンCと係合する。したがって、チェーンガイド26のこの付加的な部材の詳細な説明は省略する。プーリー48,50は、逆S字状に駆動チェーンCと係合し、チェーンCを多段スプロケットアセンブリの所望のスプロケットSに案内する。
【0024】
チェーンガイド26は、可動部材22上に移動自在に第2水平シャフト(軸)52により支持される。具体的には、水平シャフト(軸)52の一端は、ガイド板46bの孔内に堅く連結される。チェーンガイド26は、第2軸52に沿って軸方向に移動可能であるとともに、第2軸52の回りに回動可能である。本実施形態では、水平シャフト(軸)52は、ガイド板46bにリベット留めされている。軸52は、他の方法でガイド板46bに装着されてもよい。
【0025】
可動部材22は、第1水平軸32にほぼ平行な水平軸52上に回動自在に取り付けられる。水平軸52には、可動部材22が軸52上を円滑に回動及び/または摺動し得るよう、その中心に、潤滑剤(グリース)を受ける環状溝52a(図3等参照)が設けられるのが好ましい。可動部材22は、1対の回動ピン43を介してリンク40a,40bに回動自在に連結される取付部を有している。
【0026】
可動部材22は、ハウジング60と、調節機構62と、固定エレメント64と、第2バネ66とを有している。ハウジング60はリンク機構アセンブリ24に回動自在に連結され、固定エレメント64は第2軸52を介してガイド板46bに堅く固定される。
【0027】
調節機構62は、ハウジング60と固定エレメント64との間に連結されており、これにより、チェーンガイド26は、第2軸52に沿って軸方向に移動してチェーンガイド26の軸方向位置を変更する。調節機構62について以下にさらに詳細に説明する。
【0028】
ハウジング60は、空洞をさらに含んでおり、空洞内に固定エレメント64を受ける。ハウジング60の空洞は、第2軸52の第1端を内部に回動自在かつ摺動自在に受ける盲孔を形成する中心に配置された第1筒状ガイド部70を有する。環状筒状凹部72は、第1筒状ガイド部70の周囲に形成され、内部に固定エレメント64を摺動自在に受ける。
【0029】
固定エレメント64は、環状フランジ88を有する第2筒状ガイド部80と、第2筒状ガイド部80の一端に装着される第1ブッシュ82と、第2筒状ガイド部80の他端に装着される第2ブッシュ84と、第2ブッシュ84と第2筒状ガイド部80との間に配置される少なくとも1つのワッシャー86とを有している。固定エレメント64は、第2軸52を介してガイド板46bに固定される。具体的には、第2軸52の第2端は減径部を有しており、これにより、ガイド板46bに対し固定エレメント64を保持するための接当肩部が形成される。
【0030】
第2筒状ガイド部80は、第2軸52回りに回転するよう設計されている。特に、第2筒状ガイド部80は、ハウジング60に回転不能に連結されており、これにより、第2水平軸52回りに一体に回転する。第2筒状ガイド部80は、第2ブッシュ84と係合する内側に延びる環状フランジ88を有する。フランジ88及びブッシュ84は、これらの間に介在するワッシャー86と共に、第2筒状ガイド部80を軸52回りに回転自在に固定する。
【0031】
第1ブッシュ82は、ボルト90を介して第2筒状ガイド部80の第1端(自由端)に堅く連結される環状リング状部材である。第1ブッシュ82は、第2筒状ガイド部80を摺動自在に受ける中心孔82aと、第2バネ66の第1端66aを受ける軸方向に延びる孔82bとを有する。したがって、第2バネ66の第1端66aは、第2筒状ガイド部80と、第2筒状ガイド部80に回転不能に連結されるハウジング60とに回転付勢力を加える。
【0032】
第2ブッシュ84は、第2軸52を内部に有する中心孔84aを有するリング状部材である。第2ブッシュ84は段付き外周部を有する。第2ブッシュ84の外周部は、第2筒状ガイド部80の環状フランジ88と重なるようサイズが決められる環状肩部84bを形成する。
【0033】
第2ガイド部80の環状フランジ88と第2ブッシュ84の環状肩部84bとの間には、この間の摩擦を低減するワッシャー86が介在する。したがって、第2筒状ガイド部80は、第2ブッシュ84回りに回転自在に固定される。第2ブッシュ84は、ガイド板46bから第2ブッシュ84の軸方向に延びる開口部84c内に延びるピン96を介して、ガイド板46bに回転不能に固定されている。第2ブッシュ84はまた、第2バネ66の第2端66bを受ける第2軸方向に延びる開口84dを有している。第2軸方向開口84dは、ガイド板46b内の孔94と一直線上に配置されており、これにより、第2バネ66の第1端66aもガイド板46bと直接係合する。したがって、チェーンガイド26は、第2バネ66を介して第2軸52の周囲に付勢される。
【0034】
可動部材22の調節機構62は、ハウジング60に連結される第1タブ部材100と、第2筒状ガイド部80に連結される第2タブ部材101と、緩み防止機構104を有する調節部材(ネジ)103とを有している。第1及び第2タブ部材100,101は、ハウジング60の壁及び第2筒状ガイド部80の壁から、それぞれ外側へ延びている。第1及び第2タブ部材100,101は、ネジ溝孔105,106をそれぞれ有し、調節ネジ103がネジ込まれて受容される。調節ネジ103は、タブ部材100,101に挿入される。調節ネジ103は、ハウジング60に対し第2筒状ガイド部80の軸方向位置を調節し、これにより、調節手段を構成する。
【0035】
調節ネジ103は、ヘッド部110と、シャフト部111とを有する。ヘッド部110は、ネジ103を回す工具を受ける工具受け凹部110aを有する。シャフト部111は、第1セットの右ネジ111aと第2セットの左ネジ111bとを有する。したがって、タブ部材100,101のネジ溝孔105,106は、互いに異なる螺旋方向を有する。これにより、調節ネジ103の第1セットのネジ111aとネジ溝孔105とは、調節ネジ103の第2セットのネジ111bとネジ溝孔106とは異なる方向に螺旋状になっている。すなわち、ネジ溝孔105,106は、対応する右ネジ溝及び左ネジ溝をそれぞれ有する。調節ネジ103が回転すると、ハウジング60から離れるかまたはハウジング60に向けて、第2筒状ガイド部80の軸方向移動が生じる。
【0036】
緩み防止機構104は、調節ネジ103のシャフト部111の周囲に設置される。緩み防止機構104は、調節ネジ103のシャフト部111の環状溝115内に受容されるスナップリング114と、コイルバネ116と、調節ネジ103のシャフト部111に回転不能に固定される保持ワッシャー117とを有している。バネ116は、タブ部材100に対し保持ワッシャー117を保持するよう設計されており、孔105,106と共に軸方向の圧縮においてネジ103のネジ部111a,111bを配置させる。
【0037】
保持ワッシャー117は、調節ネジ103のシャフト部の1対の平坦面111cと係合する対向して離間した1対の平坦面119が設けられた非円形孔118を有する。したがって、保持ワッシャー117は、調節ネジ103に回転不能に連結されるが、調節ネジ103のシャフト部111上で軸方向に摺動自在である。保持ワッシャー117は、第1タブ部材100上に形成される4つの突起部100aと係合する4つの凹部120も有しているのが好ましい。これらの凹部120と突起部100aとは協働して、調節ネジ103の回転移動を防止する。これにより、調節ネジ103は、タブ部材101の孔106から誤って離脱するのが防止される。
【0038】
調節機構62の組立ては、本発明の構成により容易に達成される。先ず、固定エレメント64が組立てられる。ワッシャー86及び第2ブッシュ84は、先ず第2筒状ガイド部80に挿入され、これにより、第2ブッシュ84とワッシャー86とが第2筒状ガイド部80の環状フランジ88上に載置される。次に、バネ66は、第2筒状ガイド部80に挿入され、これにより、バネ66の第2端66bが第2ブッシュ84内の孔84dと係合する。このとき、第1ブッシュ82を第2筒状ガイド部80の端部に挿入でき、これにより、バネ66の第1端66aは、第1ブッシュ82の孔82bに係合される。このとき、第1ブッシュ82を、ネジ90を介して第2筒状ガイド部80に固定できる。
【0039】
ここで、固定エレメント64を、チェーンガイド板46bにリベット留めされる第1軸52によりチェーンガイド板46bに固定できる。固定エレメント64をガイド板46bに設置する場合、第2ブッシュ84がピン96に固定され、バネ66の第2端66bがガイド板46bの孔94に挿入されることが重要である。
【0040】
次に、調節ネジ103は、バネ116と保持ワッシャー117が付けられて、ハウジング60の第1タブ部材100に先ずネジ込まれる。このとき、ハウジング60は、固定エレメント64と第2軸52とに設置され、これにより、第1筒状ガイド部70が第2軸52と密接に係合する。特に、第1筒状ガイド部70は、第2軸52と一直線上に配置され、第2軸52に挿入される。また、第1ブッシュ82は、第1筒状ガイド部70の外面と係合する。したがって、このとき、第2筒状ガイド部80は、第1筒状ガイド部70の周囲に同軸で装着され、第1ブッシュ82によりこれらの間にスムーズな摺動がもたらされる。この構成により、軸52とハウジング60との間の不適切な遊びがほとんどなくなる。
【0041】
次に、調節ネジ103の自由端が第2タブ部材101のネジ溝孔106に当接する。したがって、このとき、調節ネジ103は回転し、これにより、第1セットのネジ部111aにより調節ネジ103が第1タブ部材100の軸方向に動かされ、第2セットのネジ部111bが第2タブ部材101の第2ネジ溝孔106内に同時にねじ込まれる。一旦ネジ103が、第2タブ部材101の第2ネジ溝孔106に十分に係合されると、バネ116は圧縮可能となり、スナップリング114は調節ネジ103の溝115に挿入される。これにより、軸方向力が保持ワッシャー117へ加えられ、調節ネジ103の誤った回転が防止される。このとき、ネジ103は、移送のためにさらに緩めてもよい。
【0042】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態によるディレーラ10′を示す。ディレーラ10′の残りの部材は、周知であり第1実施形態を参照すれば理解できるため、ディレーラ10′のベース部材20′のみを図示する。
【0043】
ディレーラ10′のベース部材20′は、第1実施形態と同様の調節機構62′が設けられているが、可動部材22の代わりにベース部材20′に設置されている。ベース部材20′の調節機構62′の構造は、第1実施形態の可動部材22の調節機構62と実質的に同一であるため、本実施形態では詳細な説明は省略する。また、2つの実施形態間のこれらの類似に鑑みて、この実施形態の同一または実質的に同一の部材は、第1実施形態と同一の符号でプライム符号「′」を付けた参照番号で識別される。
【0044】
この第2実施形態では、第1水平シャフト(軸)32′は、自転車フレーム12に堅く連結される。より具体的には、第1軸32′の一端が、自転車フレーム12の孔にネジ込まれる。図8に示すように、ベース部材20′は、第1水平シャフト(軸)32′に回転自在に支持されるハウジング30′を有する。ベース部材20′は、軸32′とフレーム12′とに固定される固定エレメント(止め板)34′をさらに有している。第1コイルバネ(付勢部材)36′が、軸32′の周囲に同軸で取り付けられる。第1バネ36′は、ハウジング30′に連結される第1端36a′と、固定板34′に連結される第2端36b′と、ボルト32′の軸の周囲に同軸で配置されるコイル部36c′とを有する。
【0045】
軸32′は、軸32′が回動軸を形成するよう自転車のフレーム12にネジ込まれるための連結されるボルトである。ベース部材20′のハウジング30′は、第1水平軸32′を回転してフレーム12に装着するキャップ30a′を有する。ハウジング30′は、リンク機構アセンブリ及び可動部材を軸32′の回りに揺動自在に支持する取付部を有する。
【0046】
水平軸32′には、ベース部材20′が軸32′に円滑に回動及び/または摺動できるよう、中心に、潤滑剤(グリース)を受ける環状溝32a′が設けられるのが好ましい。ベース部材20′は、リンク機構アセンブリのリンクに回動自在に取り付けられる取付部を有する。
【0047】
ベース部材20′は、ハウジング30′と、調節機構62′と、固定エレメント64′と、第2バネ36′とを有している。ハウジング30′はリンク機構アセンブリに回動自在に連結され、固定エレメント64′は軸32′を介してフレーム12に堅く装着される。
【0048】
調節機構62′は、ハウジング30′と固定エレメント64′との間に連結されるため、チェーンガイドを、第2軸32′に沿って軸方向に移動して、チェーンガイドの軸方向位置を変更できる。
【0049】
ハウジング30′は、固定エレメント64′を内部に受ける空洞を有する。ハウジング30′の空洞は、第2軸32′の第1端を内部に回動自在にかつ摺動自在に受ける盲孔を形成する中心に配置される第1筒状ガイド部70′を有する。環状筒状凹部72′が第1筒状ガイド部70′の周囲に形成され、固定エレメント64′を内部に摺動自在に受ける。
【0050】
固定エレメント64′は、止め板34′と、第2筒状ガイド部80′と、第2筒状ガイド部80′の一端に取り付けられる第1ブッシュ82′と、第2筒状ガイド部80′の他端に取り付けられる第2ブッシュ84′と、第2ブッシュ84′と第2筒状ガイド部80′との間に配置される少なくとも1つのワッシャー86′とを有している。
【0051】
可動部材22′の調節機構62′は、ハウジング30′に連結される第1タブ部材100′と、第2タブ部材101′と、緩み防止機構104′を有する調節部材(ネジ)103′とを有している。第1及び第2タブ部材100′101′は、ハウジング30′の片側の壁及び第2筒状ガイド部80′の片側の壁に、それぞれ設けられている。第1及び第2タブ部材100′,101′は、ネジ溝孔105′,106′をそれぞれ有し、調節ネジ103′がネジ込まれて受容される。調節ネジ103′は、タブ部材100′,101′に挿入される。調節ネジ103′は、ハウジング30′に対し第2筒状ガイド部80′の軸方向位置を調節する。
【0052】
調節ネジ103′は、ヘッド部110′と、シャフト部111′とを有する。ヘッド部110′は、ネジ103′を回す工具を受ける工具受け凹部110a′を有する。シャフト部111′は、第1セットの右ネジ111a′と、第2セットの左ネジ111b′とを有する。したがって、タブ部材100′,101′のネジ溝孔105′,106′は、互いに異なる螺旋方向を有する。これにより、調節ネジ103′の第1セットのネジ111a′及びネジ溝孔105′は、調節ネジ103′の第2セットのネジ111b′及びネジ溝孔106′とは異なる方向に螺旋状に動かされる。すなわち、ネジ溝孔105′,106′は、対応する右ネジ及び左ネジをそれぞれ有する。調節ネジ103′の回転により、ハウジング30′から離れるかまたはハウジング30′に向けて第2筒状ガイド部80′の軸方向の移動が生じる。ベース部材20′の調節機構62′の構造は、第1実施形態の可動部材22の調節機構62とほぼ同一であるため、本実施形態の調節機構62′の詳細な説明は省略する。
【0053】
緩み防止機構104′は、調節ネジ103′のシャフト部111′の周囲に設置される。緩み防止機構104′は、調節ネジ103′のシャフト部111′の環状溝115′内で受容されるスナップリング114′と、コイルバネ116′と、調節ネジ103′のシャフト部111′に回転不能に固定される保持ワッシャー117′とを有している。ベース部材20′の緩み防止機構104′の構造がは、第1実施形態の可動部材22の緩み防止機構104とほぼ同一であるため、本実施形態の緩み防止機構104′の詳細に説明は省略する。
【0054】
選択された実施形態のみを選んで本発明を説明したが、種々の変更態様と変形態様が、添付の請求項に明示される本発明の範囲から逸脱することなく実施できることは、この開示から当業者にとって明らかである。また、本発明による実施形態の先の説明は、単なる説明のもためのものであり、また添付の請求項及びこれらと同等の事項により明示される本発明を、限定しようとするもためのものではない。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、調節機構に、固定ピンに摺動自在な内筒部を有するハウジングが設けられているため、従来技術の調節機構に比べ遊びまたは緩みが少なくなる。また、本発明によれば、調節機構の組立てが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるリアディレーラを有する、従来の自転車の一部の部側面図。
【図2】自転車のフレームに装着された本発明のリアディレーラを有する、図1の従来の自転車の一部の後部端立面図。
【図3】図示の目的で所定の部分を切断した、図1及び2の本発明によるリアディレーラの可動部材の部分断面図。
【図4】図3の本発明による可動部材の分解断面図。
【図5】図示の目的で所定の部分を切断した、図1〜4の本発明によるリアディレーラの調節機構の分解斜視図。
【図6】第1設置位置を示す図示の目的で所定の部分を切断した、図3〜5の本発明による可動部材の部分断面図。
【図7】他の設置位置を示す図示の目的で所定の部分を切断した、図3〜5の本発明による可動部材の部分断面図。
【図8】図示の目的で所定の部分を切断した、本発明の他の実施形態により変更されたベースの部分断面図。
【符号の説明】
10 ディレーラ
24 リンク機構アセンブリ
26 チェーンガイド
52 軸
60 ハウジング
62 調節機構
64 固定エレメント
66 付勢部材
70 第1筒状ガイド部
80 第2筒状ガイド部
103 調節部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、自転車のリアディレーラに関し、特に、自転車の多段スプロケットアセンブリに対しチェーンガイドの位置を軸方向に調節する調節機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
サイクリングは、移動手段としてのみでなく、レクリエーションの形態としてもますます一般化している。また、サイクリングは、アマチュアの選手にとってもプロの選手にとっても非常に一般化した競争スポーツになっている。自転車の使用目的がレクリエーション、移動または競争のいずれであるかに関わらず、自転車産業では、自転車の種々の構成部材が絶えず改良されている。広く設計変更されている自転車の1部分は、自転車の駆動列である。
【0003】
現在の自転車の大部分は、走行時に直面する特定の走行条件に適応するために、乗り手が適切なギア比を選択できる多段変速自転車である。多段変速自転車のギアアセンブリの最も一般的なタイプの1つとして、回転のためにペダルが取り付けられる1セットのフロントスプロケットと、回転のために後輪のリアハブに取り付けられる1セットのリアスプロケットとの間に掛け渡されるチェーンを利用したものがある。スプロケット(ギア)間のチェーンを移動させるのに、通常、2つのディレーラが用いられている。一般に、ディレーラ(フロントまたはリアのディレーラ)の大部分は、自転車フレームに固定される固定またはベース部材と、リンク機構アセンブリにより固定またはベース部材に対し移動するよう支持されるチェーンガイドを有する可動部材とを備えている。チェーンガイドは、チェーンに当接しチェーンをスプロケット間で移動させるためのチェーン受けスロットを形成する1対のガイド板を有する。
【0004】
リアディレーラの場合、チェーンガイドは、ガイド板の間に回転自在に装着された1対のプーリーを有する。また、リアディレーラにおけるベース部材は、水平シャフト(軸)を介して自転車フレームに揺動自在に支持され、チェーンガイドは、水平シャフト(軸)を介して可動部材に揺動自在に装着されている。可動部材とチェーンガイドとの間には、チェーンガイドに張力を加えるために、バネが介在している。ベース部材は、チェーンガイドが多段スロットアセンブリの外周側に配置された状態で、自転車フレームのフォーク端部に固定されている。
【0005】
乗り手がフロントディレーラシフト機構のシフト操作装置を操作すると、操作コンジット(ケーブル)は、チェーンが1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ外側に移動するようフロントディレーラを引っ張るか、またはチェーンが1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ内側に移動するようフロントディレーラを解放する。同様に、乗り手がリアディレーラシフト機構のシフト操作装置を操作すると、操作コンジット(ケーブル)は、チェーンを1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ内側に移動するようリアディレーラを引っ張るか、またはチェーンを1つのギア(スプロケット)から隣のギア(スプロケット)へ外側に移動するようリアディレーラを解放する。すなわち、シフト操作装置がディレーラを解放するよう動かされると、フロントディレーラは自転車の中心へ向けて内側に移動し、一方、リアディレーラは自転車の中心から離れるよう外側へ移動する。
【0006】
多段スプロケットアセンブリに対し軸方向位置に調節され得るチェーンガイドを備えた従来のディレーラは、Naganoに付与され株式会社シマノに譲渡された米国特許第4,850,940号に開示されるように周知である。具体的にはシマノの先行米国特許第4,850,940号には、筒状部材に調節ネジを介して回転不能に装着されたハウジング(可動部材)を有するチェーンガイドの調節機構が示されている。筒状部材は、固定ピン及びブッシュを介してチェーンガイドに連結されている。バネは、筒状部材の内側に配置され、筒状部材及びハウジングを回転させるよう付勢する。ハウジングは、筒状部材に摺動自在な外筒部を有する。ハウジングは固定ピンには連結されていない。外筒部が筒状部材に摺動するようサイズが決められるるとともにハウジングが固定ピンに連結されていないため、これらの部材の間には多少の遊びまたは緩みが存在する。そして、この緩みにより、ハウジングが筒状部材上で振動する場合がある。このような振動は、調節ネジの不適切な回転を生じさせる場合がある。調節ネジのこのような回転は、チェーンガイドをフリーホイールスプロケットからのずれを生じさせ得る。
【0007】
したがって、ハウジングと筒状部材との間の遊びまたは緩みを無くしたハウジングを備えた調節機構を有するのが望ましい。固定ピンに摺動自在な内筒部を有するハウジングを設ければ、この緩みを無くすことができる。振動により不適切に回転しない調節ネジを設けることもまた望ましい。
【0008】
上記観点から、ディレーラに対し、従来技術における上述の問題を克服したものへのニーズが存在する。本発明は、他のニーズのみでなく従来技術におけるこのニーズに言及し、この開示から当業者にとって明らかとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の1つの目的は、従来技術の調節機構よりも遊びが少ないリアディレーラの調節機構を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、組立てが容易なリアディレーラの調節機構を提供することにある。
本発明の他の目的は、緩み防止機構を有するリアディレーラの調節機構を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上述の目的は、自転車ディレーラのチェーンガイドの位置を軸方向に調節する調節機構を設けることにより、基本的に達成できる。調節機構は、軸と、ハウジングと、固定エレメントと、付勢部材と、及び前記ハウジングと前記固定エレメントとの間に連結され、前記ハウジングを前記軸上で軸方向に移動自在に支持する調節部材とから基本的に構成される。軸は第1端部と第2端部を有する。ハウジングは、取付部と第1筒状ガイド部と第1タブ部材とを有する。取付部は、自転車ディレーラのリンク機構アセンブリに連結するのに適合している。第1筒状ガイド部は、軸の第1端部に回動自在に連結される。第1タブ部材は、第1孔を有する。固定エレメントは、軸の第2端部に連結される第2筒状ガイド部を有する。第2筒状ガイド部は、固定エレメントから延び、第1筒状ガイド部の回りに同軸で配置されるとともに、第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を有する。付勢部材は、第1及び第2筒状ガイド部の間に配置され、また固定エレメントに対し軸の回りの回転方向にハウジングを付勢するよう配置される。調節部材は、第1孔及び第2孔に連結可能なネジと、ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと第1タブ部材に対し保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する。そして、第1タブ部材は、第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有している。また、保持ワッシャーは、複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している、
【0012】
本発明の上述の目的は、自転車ディレーラのチェーンガイドの位置を軸方向に調節する調節機構を有する自転車のディレーラを設けることにより、基本的に達成できる。ディレーラは、ベース部材、チェーンガイドを有する可動部材、及びリンク機構アセンブリから基本的に構成される。ベース部材は、自転車の一部に連結され、かつ固定エレメントで第1軸上に回動自在に支持されるよう配置され、第1孔を有する第1タブ部材を含む。可動部材は、自転車のチェーンを横方向に移行するのに適合している。可動部材は、チェーンガイドの板部材に連結される第2軸上に回動自在に支持される。リンク機構アセンブリは、チェーンガイドを引込み位置と張出し位置との間に動かすよう、ベース部材と可動部材との間に移動自在に連結される。ベース部材または可動部材は、それを、対応する第1または第2軸上で軸方向に移動自在に支持する調節機構を有する。その調節機構は、対応する第1または第2軸と回動自在に係合するよう、選択された部材から延びる第1筒状ガイド部を有する。第2筒状ガイド部が、選択された部材から延び、第1筒状ガイド部の回りに同軸で配置されるとともに、第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を含む。付勢部材は、第1及び第2筒状ガイド部の間に配置され、かつ選択された部材を選択された部材に対し対応する軸の回りの回転方向に付勢するよう配置される。調節部材が、選択された部材と選択された部材との間に連結され、第1及び第2孔内に連結されるネジと、ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと第1タブ部材に対し保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する。そして、第1タブ部材は、第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有している。また、保持ワッシャーは、複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している。
【0013】
好ましい実施形態においてディレーラは、ベース部材、チェーンガイドを有する可動部材、及びリンク機構アセンブリから構成される。ベース部材は、自転車の一部に連結され、かつ固定エレメントで第1軸上に回動自在に支持されるよう配置され、第1孔を有する第1タブ部材を含む。可動部材は、自転車のチェーンを横方向に移行するようになっている。可動部材は、チェーンガイドに連結される第2軸上に回動自在に支持される。リンク機構アセンブリは、チェーンガイドを引込み位置と張出し位置との間に動かすよう、ベース部材と可動部材との間に移動自在に連結される。1つの実施形態において可動部材は、第2軸上で軸方向に前記可動部材を移動自在に支持する調節機構を有する。その調節機構は、可動部材から延びて第2軸と回動自在に係合する第1筒状ガイド部と、チェーンガイドから延び、かつ第1筒状ガイド部の回りに配置されるとともに、第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を含む第2筒状ガイド部と、第1及び第2筒状ガイド部の間に配置され、かつチェーンガイドに対し可動部材を第2軸回りの回転方向に付勢するよう配置される付勢部材と、及び可動部材とチェーンガイドとの間に連結される調節部材とを基本的に備えている。調節部材は、第1孔及び第2孔に連結可能なネジと、ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと第1タブ部材に対し保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する。そして、第1タブ部材は、第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有してる。また、保持ワッシャーは、複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している。他の実施形態においてベース部材は、ベース部材を第1軸上で軸方向に移動自在に支持する調節機構を有する。
【0014】
本発明のこれらと他の目的、特徴、態様及び利点は、添付図面と連係して、本発明の好ましい実施形態を開示する以下の詳細な説明から、当業者にとり明らかになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1及び図2は、自転車(図1に一部のみ図示)のフレーム12に連結された本発明のリアディレーラ10を示す。より具体的には、自転車のフレーム12のリアフォーク端部に連結されたリアディレーラ10が示されており、このリアディレーラ10は、チェーンCが、自転車の後輪に所望の回転トルクを伝達するよう、従来の方法でリアスプロケットSを1セットのフロントギア(スプロケット、図示せず)に連結する多段リアギア(スプロケット)Sを備えたリアギアアセンブリを有している。
【0016】
リアディレーラ10は、リアディレーラシフト機構(図示せず)に従来の方法でリアディレーラケーブル14を介して連結されている。より具体的には、ディレーラ10は、外側に普通に付勢されるよう設計され、これにより、チェーンCが最も外側のギア(スプロケット)S上に普通に位置決めされる。すなわち、乗り手がリアディレーラシフト機構を動かすと、ケーブル14は、チェーンCを内側へ移動させて隣のギアと係合するようリアディレーラ10を引っ張る。すなわち、チェーンCは、自転車の中心に向けて内側に移動し、隣の大きいギア(スプロケット)と係合する。
【0017】
リアディレーラ10は、ベース部材20と、可動部材22と、リンク機構アセンブリ24と、チェーンガイド26とを備えている。ベース部材20または可動部材22は、後述するように、自転車のスプロケットSに対しチェーンガイド26の位置を軸方向に調節するための調節機構を有してもよい。機械式ディレーラを示すが、この調節機構は、空気式ディレーラ、電気式ディレーラまたは電気機械式ディレーラのような他の形式のディレーラが採用されてもよい。
【0018】
一般に、ベース部材20は、限定された回転移動をするようフレーム12に堅く連結され、可動部材22は、リンク機構アセンブリ24を介してベース部材20に連結されている。チェーンガイド26は、後述するように、可動部材22に回動自在に連結される。リアディレーラ10の基本動作は、従来技術において周知である。したがって、リアディレーラ10の詳細な説明は省略する。むしろ本開示は、可動部材22及び第2実施形態のベース部材20′の調節機構に重点を置くこととする。
【0019】
図1及び図2に示すように、ベース部材20は、従来の方法で第1水平シャフト(軸)32に回転自在に支持されるハウジング30を有している。ベース部材20は、従来の方法で第1軸32とフレーム12とに固定される固定エレメント(止め板)34をさらに備えている。第1コイルバネ(付勢部材)36は、軸32の周囲に同軸で装着されている。第1バネ36は、ハウジング30に連結される第1端36aと、止め板34に連結される第2端36bと、第1軸32の周囲に同軸で配置されるコイル部36cとを有している。第1軸32は、回動軸を形成するよう自転車のフレーム12にネジ込まれて連結されたボルトである。ベース部材20は、比較的従来のものであり、米国特許第4,690,663号によりさらに理解できる。第1バネ36は、第1端36aがハウジング30の軸方向を向く孔の内部に固定され、第2自由端36bが止め板34の軸方向を向く孔の内部に受容される従来のコイルバネであるのが好ましい。第1コイルバネ36は、固定ボルト(軸)32のシャフトの周囲に位置決めされるようサイズが決められる。
【0020】
ベース部材20のハウジング30は、第1水平軸32に回転自在に支持される。ハウジング30は、リンク機構アセンブリ24及び可動部材22を第1軸32の周囲に揺動自在に支持する取付部を有する。
【0021】
リンク機構アセンブリ24は、ベース部材20のハウジング30に第1端で回動自在に連結され、可動部材22に他端で回動自在に連結される1対のリンク40a,40bを備えている。具体的には、4つのピン43は、リンク40a,40bをベース部材20と可動部材22とに回動自在に連結するのに用いられる。コイルバネ(図示せず)は、リンク40a,40bの間に連結され、チェーンガイド26を適切なギア位置へ付勢する。
【0022】
外側リンク40aには、シフトケーブル14の内側ワイヤの自由端を装着するためのケーブル固定ボルト41が設けられている。したがって、乗り手がリアディレーラシフト機構を操作してシフトケーブル14の内側ワイヤを引っ張ると、リンク40a,40bがコイルバネ(図示せず)の付勢力に抗して内側に回動し、可動部材22及びチェーンガイド26が自転車の中心に向けて内側へ移動する。これにより、チェーンCが外側ギアから隣の内側ギアに移動する。リアディレーラシフト機構が動いてシフトケーブル14の内側ワイヤを解放した場合は、バネ(図示せず)は、リンク機構部材40a,40bを動かし、これにより、チェーンガイド26がチェーンCを大きい方のギアから小さい方のギアに外側に動く。
【0023】
図1及び図2に示すように、チェーンガイド26は、ガイドスプロケット(プーリー)48がガイド板46a,46bの間に回転自在に連結されるとともにテンションスプロケット(プーリー)50がガイド板46a,46bの間に回転自在に連結される1対のガイド板46a,46bを有している。ガイドスプロケット48及びテンションスプロケット50は、従来の方法でチェーンCと係合する。したがって、チェーンガイド26のこの付加的な部材の詳細な説明は省略する。プーリー48,50は、逆S字状に駆動チェーンCと係合し、チェーンCを多段スプロケットアセンブリの所望のスプロケットSに案内する。
【0024】
チェーンガイド26は、可動部材22上に移動自在に第2水平シャフト(軸)52により支持される。具体的には、水平シャフト(軸)52の一端は、ガイド板46bの孔内に堅く連結される。チェーンガイド26は、第2軸52に沿って軸方向に移動可能であるとともに、第2軸52の回りに回動可能である。本実施形態では、水平シャフト(軸)52は、ガイド板46bにリベット留めされている。軸52は、他の方法でガイド板46bに装着されてもよい。
【0025】
可動部材22は、第1水平軸32にほぼ平行な水平軸52上に回動自在に取り付けられる。水平軸52には、可動部材22が軸52上を円滑に回動及び/または摺動し得るよう、その中心に、潤滑剤(グリース)を受ける環状溝52a(図3等参照)が設けられるのが好ましい。可動部材22は、1対の回動ピン43を介してリンク40a,40bに回動自在に連結される取付部を有している。
【0026】
可動部材22は、ハウジング60と、調節機構62と、固定エレメント64と、第2バネ66とを有している。ハウジング60はリンク機構アセンブリ24に回動自在に連結され、固定エレメント64は第2軸52を介してガイド板46bに堅く固定される。
【0027】
調節機構62は、ハウジング60と固定エレメント64との間に連結されており、これにより、チェーンガイド26は、第2軸52に沿って軸方向に移動してチェーンガイド26の軸方向位置を変更する。調節機構62について以下にさらに詳細に説明する。
【0028】
ハウジング60は、空洞をさらに含んでおり、空洞内に固定エレメント64を受ける。ハウジング60の空洞は、第2軸52の第1端を内部に回動自在かつ摺動自在に受ける盲孔を形成する中心に配置された第1筒状ガイド部70を有する。環状筒状凹部72は、第1筒状ガイド部70の周囲に形成され、内部に固定エレメント64を摺動自在に受ける。
【0029】
固定エレメント64は、環状フランジ88を有する第2筒状ガイド部80と、第2筒状ガイド部80の一端に装着される第1ブッシュ82と、第2筒状ガイド部80の他端に装着される第2ブッシュ84と、第2ブッシュ84と第2筒状ガイド部80との間に配置される少なくとも1つのワッシャー86とを有している。固定エレメント64は、第2軸52を介してガイド板46bに固定される。具体的には、第2軸52の第2端は減径部を有しており、これにより、ガイド板46bに対し固定エレメント64を保持するための接当肩部が形成される。
【0030】
第2筒状ガイド部80は、第2軸52回りに回転するよう設計されている。特に、第2筒状ガイド部80は、ハウジング60に回転不能に連結されており、これにより、第2水平軸52回りに一体に回転する。第2筒状ガイド部80は、第2ブッシュ84と係合する内側に延びる環状フランジ88を有する。フランジ88及びブッシュ84は、これらの間に介在するワッシャー86と共に、第2筒状ガイド部80を軸52回りに回転自在に固定する。
【0031】
第1ブッシュ82は、ボルト90を介して第2筒状ガイド部80の第1端(自由端)に堅く連結される環状リング状部材である。第1ブッシュ82は、第2筒状ガイド部80を摺動自在に受ける中心孔82aと、第2バネ66の第1端66aを受ける軸方向に延びる孔82bとを有する。したがって、第2バネ66の第1端66aは、第2筒状ガイド部80と、第2筒状ガイド部80に回転不能に連結されるハウジング60とに回転付勢力を加える。
【0032】
第2ブッシュ84は、第2軸52を内部に有する中心孔84aを有するリング状部材である。第2ブッシュ84は段付き外周部を有する。第2ブッシュ84の外周部は、第2筒状ガイド部80の環状フランジ88と重なるようサイズが決められる環状肩部84bを形成する。
【0033】
第2ガイド部80の環状フランジ88と第2ブッシュ84の環状肩部84bとの間には、この間の摩擦を低減するワッシャー86が介在する。したがって、第2筒状ガイド部80は、第2ブッシュ84回りに回転自在に固定される。第2ブッシュ84は、ガイド板46bから第2ブッシュ84の軸方向に延びる開口部84c内に延びるピン96を介して、ガイド板46bに回転不能に固定されている。第2ブッシュ84はまた、第2バネ66の第2端66bを受ける第2軸方向に延びる開口84dを有している。第2軸方向開口84dは、ガイド板46b内の孔94と一直線上に配置されており、これにより、第2バネ66の第1端66aもガイド板46bと直接係合する。したがって、チェーンガイド26は、第2バネ66を介して第2軸52の周囲に付勢される。
【0034】
可動部材22の調節機構62は、ハウジング60に連結される第1タブ部材100と、第2筒状ガイド部80に連結される第2タブ部材101と、緩み防止機構104を有する調節部材(ネジ)103とを有している。第1及び第2タブ部材100,101は、ハウジング60の壁及び第2筒状ガイド部80の壁から、それぞれ外側へ延びている。第1及び第2タブ部材100,101は、ネジ溝孔105,106をそれぞれ有し、調節ネジ103がネジ込まれて受容される。調節ネジ103は、タブ部材100,101に挿入される。調節ネジ103は、ハウジング60に対し第2筒状ガイド部80の軸方向位置を調節し、これにより、調節手段を構成する。
【0035】
調節ネジ103は、ヘッド部110と、シャフト部111とを有する。ヘッド部110は、ネジ103を回す工具を受ける工具受け凹部110aを有する。シャフト部111は、第1セットの右ネジ111aと第2セットの左ネジ111bとを有する。したがって、タブ部材100,101のネジ溝孔105,106は、互いに異なる螺旋方向を有する。これにより、調節ネジ103の第1セットのネジ111aとネジ溝孔105とは、調節ネジ103の第2セットのネジ111bとネジ溝孔106とは異なる方向に螺旋状になっている。すなわち、ネジ溝孔105,106は、対応する右ネジ溝及び左ネジ溝をそれぞれ有する。調節ネジ103が回転すると、ハウジング60から離れるかまたはハウジング60に向けて、第2筒状ガイド部80の軸方向移動が生じる。
【0036】
緩み防止機構104は、調節ネジ103のシャフト部111の周囲に設置される。緩み防止機構104は、調節ネジ103のシャフト部111の環状溝115内に受容されるスナップリング114と、コイルバネ116と、調節ネジ103のシャフト部111に回転不能に固定される保持ワッシャー117とを有している。バネ116は、タブ部材100に対し保持ワッシャー117を保持するよう設計されており、孔105,106と共に軸方向の圧縮においてネジ103のネジ部111a,111bを配置させる。
【0037】
保持ワッシャー117は、調節ネジ103のシャフト部の1対の平坦面111cと係合する対向して離間した1対の平坦面119が設けられた非円形孔118を有する。したがって、保持ワッシャー117は、調節ネジ103に回転不能に連結されるが、調節ネジ103のシャフト部111上で軸方向に摺動自在である。保持ワッシャー117は、第1タブ部材100上に形成される4つの突起部100aと係合する4つの凹部120も有しているのが好ましい。これらの凹部120と突起部100aとは協働して、調節ネジ103の回転移動を防止する。これにより、調節ネジ103は、タブ部材101の孔106から誤って離脱するのが防止される。
【0038】
調節機構62の組立ては、本発明の構成により容易に達成される。先ず、固定エレメント64が組立てられる。ワッシャー86及び第2ブッシュ84は、先ず第2筒状ガイド部80に挿入され、これにより、第2ブッシュ84とワッシャー86とが第2筒状ガイド部80の環状フランジ88上に載置される。次に、バネ66は、第2筒状ガイド部80に挿入され、これにより、バネ66の第2端66bが第2ブッシュ84内の孔84dと係合する。このとき、第1ブッシュ82を第2筒状ガイド部80の端部に挿入でき、これにより、バネ66の第1端66aは、第1ブッシュ82の孔82bに係合される。このとき、第1ブッシュ82を、ネジ90を介して第2筒状ガイド部80に固定できる。
【0039】
ここで、固定エレメント64を、チェーンガイド板46bにリベット留めされる第1軸52によりチェーンガイド板46bに固定できる。固定エレメント64をガイド板46bに設置する場合、第2ブッシュ84がピン96に固定され、バネ66の第2端66bがガイド板46bの孔94に挿入されることが重要である。
【0040】
次に、調節ネジ103は、バネ116と保持ワッシャー117が付けられて、ハウジング60の第1タブ部材100に先ずネジ込まれる。このとき、ハウジング60は、固定エレメント64と第2軸52とに設置され、これにより、第1筒状ガイド部70が第2軸52と密接に係合する。特に、第1筒状ガイド部70は、第2軸52と一直線上に配置され、第2軸52に挿入される。また、第1ブッシュ82は、第1筒状ガイド部70の外面と係合する。したがって、このとき、第2筒状ガイド部80は、第1筒状ガイド部70の周囲に同軸で装着され、第1ブッシュ82によりこれらの間にスムーズな摺動がもたらされる。この構成により、軸52とハウジング60との間の不適切な遊びがほとんどなくなる。
【0041】
次に、調節ネジ103の自由端が第2タブ部材101のネジ溝孔106に当接する。したがって、このとき、調節ネジ103は回転し、これにより、第1セットのネジ部111aにより調節ネジ103が第1タブ部材100の軸方向に動かされ、第2セットのネジ部111bが第2タブ部材101の第2ネジ溝孔106内に同時にねじ込まれる。一旦ネジ103が、第2タブ部材101の第2ネジ溝孔106に十分に係合されると、バネ116は圧縮可能となり、スナップリング114は調節ネジ103の溝115に挿入される。これにより、軸方向力が保持ワッシャー117へ加えられ、調節ネジ103の誤った回転が防止される。このとき、ネジ103は、移送のためにさらに緩めてもよい。
【0042】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態によるディレーラ10′を示す。ディレーラ10′の残りの部材は、周知であり第1実施形態を参照すれば理解できるため、ディレーラ10′のベース部材20′のみを図示する。
【0043】
ディレーラ10′のベース部材20′は、第1実施形態と同様の調節機構62′が設けられているが、可動部材22の代わりにベース部材20′に設置されている。ベース部材20′の調節機構62′の構造は、第1実施形態の可動部材22の調節機構62と実質的に同一であるため、本実施形態では詳細な説明は省略する。また、2つの実施形態間のこれらの類似に鑑みて、この実施形態の同一または実質的に同一の部材は、第1実施形態と同一の符号でプライム符号「′」を付けた参照番号で識別される。
【0044】
この第2実施形態では、第1水平シャフト(軸)32′は、自転車フレーム12に堅く連結される。より具体的には、第1軸32′の一端が、自転車フレーム12の孔にネジ込まれる。図8に示すように、ベース部材20′は、第1水平シャフト(軸)32′に回転自在に支持されるハウジング30′を有する。ベース部材20′は、軸32′とフレーム12′とに固定される固定エレメント(止め板)34′をさらに有している。第1コイルバネ(付勢部材)36′が、軸32′の周囲に同軸で取り付けられる。第1バネ36′は、ハウジング30′に連結される第1端36a′と、固定板34′に連結される第2端36b′と、ボルト32′の軸の周囲に同軸で配置されるコイル部36c′とを有する。
【0045】
軸32′は、軸32′が回動軸を形成するよう自転車のフレーム12にネジ込まれるための連結されるボルトである。ベース部材20′のハウジング30′は、第1水平軸32′を回転してフレーム12に装着するキャップ30a′を有する。ハウジング30′は、リンク機構アセンブリ及び可動部材を軸32′の回りに揺動自在に支持する取付部を有する。
【0046】
水平軸32′には、ベース部材20′が軸32′に円滑に回動及び/または摺動できるよう、中心に、潤滑剤(グリース)を受ける環状溝32a′が設けられるのが好ましい。ベース部材20′は、リンク機構アセンブリのリンクに回動自在に取り付けられる取付部を有する。
【0047】
ベース部材20′は、ハウジング30′と、調節機構62′と、固定エレメント64′と、第2バネ36′とを有している。ハウジング30′はリンク機構アセンブリに回動自在に連結され、固定エレメント64′は軸32′を介してフレーム12に堅く装着される。
【0048】
調節機構62′は、ハウジング30′と固定エレメント64′との間に連結されるため、チェーンガイドを、第2軸32′に沿って軸方向に移動して、チェーンガイドの軸方向位置を変更できる。
【0049】
ハウジング30′は、固定エレメント64′を内部に受ける空洞を有する。ハウジング30′の空洞は、第2軸32′の第1端を内部に回動自在にかつ摺動自在に受ける盲孔を形成する中心に配置される第1筒状ガイド部70′を有する。環状筒状凹部72′が第1筒状ガイド部70′の周囲に形成され、固定エレメント64′を内部に摺動自在に受ける。
【0050】
固定エレメント64′は、止め板34′と、第2筒状ガイド部80′と、第2筒状ガイド部80′の一端に取り付けられる第1ブッシュ82′と、第2筒状ガイド部80′の他端に取り付けられる第2ブッシュ84′と、第2ブッシュ84′と第2筒状ガイド部80′との間に配置される少なくとも1つのワッシャー86′とを有している。
【0051】
可動部材22′の調節機構62′は、ハウジング30′に連結される第1タブ部材100′と、第2タブ部材101′と、緩み防止機構104′を有する調節部材(ネジ)103′とを有している。第1及び第2タブ部材100′101′は、ハウジング30′の片側の壁及び第2筒状ガイド部80′の片側の壁に、それぞれ設けられている。第1及び第2タブ部材100′,101′は、ネジ溝孔105′,106′をそれぞれ有し、調節ネジ103′がネジ込まれて受容される。調節ネジ103′は、タブ部材100′,101′に挿入される。調節ネジ103′は、ハウジング30′に対し第2筒状ガイド部80′の軸方向位置を調節する。
【0052】
調節ネジ103′は、ヘッド部110′と、シャフト部111′とを有する。ヘッド部110′は、ネジ103′を回す工具を受ける工具受け凹部110a′を有する。シャフト部111′は、第1セットの右ネジ111a′と、第2セットの左ネジ111b′とを有する。したがって、タブ部材100′,101′のネジ溝孔105′,106′は、互いに異なる螺旋方向を有する。これにより、調節ネジ103′の第1セットのネジ111a′及びネジ溝孔105′は、調節ネジ103′の第2セットのネジ111b′及びネジ溝孔106′とは異なる方向に螺旋状に動かされる。すなわち、ネジ溝孔105′,106′は、対応する右ネジ及び左ネジをそれぞれ有する。調節ネジ103′の回転により、ハウジング30′から離れるかまたはハウジング30′に向けて第2筒状ガイド部80′の軸方向の移動が生じる。ベース部材20′の調節機構62′の構造は、第1実施形態の可動部材22の調節機構62とほぼ同一であるため、本実施形態の調節機構62′の詳細な説明は省略する。
【0053】
緩み防止機構104′は、調節ネジ103′のシャフト部111′の周囲に設置される。緩み防止機構104′は、調節ネジ103′のシャフト部111′の環状溝115′内で受容されるスナップリング114′と、コイルバネ116′と、調節ネジ103′のシャフト部111′に回転不能に固定される保持ワッシャー117′とを有している。ベース部材20′の緩み防止機構104′の構造がは、第1実施形態の可動部材22の緩み防止機構104とほぼ同一であるため、本実施形態の緩み防止機構104′の詳細に説明は省略する。
【0054】
選択された実施形態のみを選んで本発明を説明したが、種々の変更態様と変形態様が、添付の請求項に明示される本発明の範囲から逸脱することなく実施できることは、この開示から当業者にとって明らかである。また、本発明による実施形態の先の説明は、単なる説明のもためのものであり、また添付の請求項及びこれらと同等の事項により明示される本発明を、限定しようとするもためのものではない。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、調節機構に、固定ピンに摺動自在な内筒部を有するハウジングが設けられているため、従来技術の調節機構に比べ遊びまたは緩みが少なくなる。また、本発明によれば、調節機構の組立てが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるリアディレーラを有する、従来の自転車の一部の部側面図。
【図2】自転車のフレームに装着された本発明のリアディレーラを有する、図1の従来の自転車の一部の後部端立面図。
【図3】図示の目的で所定の部分を切断した、図1及び2の本発明によるリアディレーラの可動部材の部分断面図。
【図4】図3の本発明による可動部材の分解断面図。
【図5】図示の目的で所定の部分を切断した、図1〜4の本発明によるリアディレーラの調節機構の分解斜視図。
【図6】第1設置位置を示す図示の目的で所定の部分を切断した、図3〜5の本発明による可動部材の部分断面図。
【図7】他の設置位置を示す図示の目的で所定の部分を切断した、図3〜5の本発明による可動部材の部分断面図。
【図8】図示の目的で所定の部分を切断した、本発明の他の実施形態により変更されたベースの部分断面図。
【符号の説明】
10 ディレーラ
24 リンク機構アセンブリ
26 チェーンガイド
52 軸
60 ハウジング
62 調節機構
64 固定エレメント
66 付勢部材
70 第1筒状ガイド部
80 第2筒状ガイド部
103 調節部材
Claims (12)
- 自転車ディレーラのチェーンガイドの位置を軸方向に調節するための調節機構であって、
第1端部と第2端部とを有する軸と、
自転車ディレーラのリンク機構アセンブリに連結される取付部と、前記軸の第1端部に回動自在に連結される第1筒状ガイド部と、第1孔を有する第1タブ部材とを有するハウジングと、
前記軸の第2端部に連結される第2筒状ガイド部を有する固定エレメントであって、第2筒状ガイド部は、前記固定エレメントから延び、前記第1筒状ガイド部の周囲に配置されるとともに、前記第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を有する前記固定エレメントと、
前記第1及び第2筒状ガイド部間に配置され、前記ハウジングを前記固定エレメントに対し前記軸回りの回転方向に付勢するよう配置される付勢部材と、
前記ハウジングと前記固定エレメントとの間に連結され、前記ハウジングを前記軸上で軸方向に移動自在に支持するとともに、前記第1孔及び第2孔に連結可能なネジと、前記ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと前記第1タブ部材に対し前記保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する調節部材とを備え、
前記第1タブ部材は、前記第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有し、
前記保持ワッシャーは、前記複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している、
調節機構。 - 前記第1孔は第1ネジ方向にネジ山が設けられ、前記第2孔は前記第1ネジ方向と逆方向の第2ネジ方向にネジ山が設けられ、
前記ネジは、前記第1孔の第1ネジ方向に対応する第1セットのネジ山と、前記第2孔の第2ネジ方向に対応する第2セットのネジ山とを有する、
請求項1に記載の調節機構。 - 前記調節部材は緩み防止機構をさらに含んでいる、請求項2に記載の調節機構。
- 前記調節部材は、前記第1セットのネジと第2セットのネジとに軸方向の力を加えるよう、前記ネジの周囲に配置されるバネをさらに含んでいる、請求項2に記載の調節機構。
- 前記軸は、そこに潤滑剤が配置される溝を含んでいる、請求項1に記載の調節機構。
- 前記第2筒状ガイド部は、前記第2筒状ガイド部に連結される第1ブッシュを有し、前記第1ブッシュは前記第1及び第2筒状ガイド部間に配置されている、請求項1に記載の調節機構。
- 前記軸と前記固定エレメントとの間に配置される第2ブッシュをさらに含んでいる、請求項6に記載の調節機構。
- 前記付勢部材は、前記固定エレメントに連結される第1端部と、前記ハウジングに連結される第2端部と、前記第1及び第2筒状ガイド部間に軸方向に配置されるコイル部とを有するバネである、請求項1に記載の調節機構。
- 前記バネの第2端部は、前記ハウジングに回転不能に連結される前記第1ブッシュに固定されている、請求項8に記載の調節機構。
- 自転車の一部に連結されるよう配置され、固定エレメントと共に第1軸に回動自在に支持され、第1孔を有する第1タブ部材を含むベース部材と、
自転車のチェーンを横方向に移動させるとともに、チェーンガイドの板エレメントに連結される第2軸に回動自在に支持される可動部材と、
前記ベース部材と前記可動部材との間に移動自在に連結され、前記チェーンガイドを引込み位置と張出し位置との間で移動させるリンク機構アセンブリとを備え、
前記部材の1つは、前記部材の1つを前記軸の対応する1つに軸方向に移動自在に支持する調節機構を有しており、
前記調節機構は、
前記軸の前記対応する1つと回動自在に係合するよう前記部材の前記1つから延びる第1筒状ガイド部と、
前記エレメントの1つから延び、前記第1筒状ガイド部の周囲に配置されるとともに、前記第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を含む第2筒状ガイド部と、
前記第1及び第2筒状ガイド部間に配置され、前記部材の前記1つを前記エレメントの前記1つに対し前記軸の前記対応する1つの回転方向に付勢するよう配置される付勢部材と、
前記部材の前記1つと前記エレメントの前記1つとの間に連結され、前記第1及び第2孔内に連結されるネジと、前記ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと前記第1タブ部材に対し前記保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する調節部材とを含み、
前記第1タブ部材は、前記第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有し、
前記保持ワッシャーは、前記複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している、
自転車用ディレーラ。 - 前記リンク機構アセンブリは、前記リンク機構アセンブリに連結された付勢部材を有する1対のリンク機構部材を有している、請求項10に記載の自転車用ディレーラ。
- 自転車の一部に連結されるよう配置され、第1軸に回動自在に支持され、第1孔を有する第1タブ部材を含むベース部材と、
自転車のチェーンを横方向に移動させるとともにチェーンガイドに連結される第2軸に回動自在に支持される可動部材と、
前記ベース部材と前記可動部材との間に移動自在に連結され、前記チェーンガイドを引込み位置と張出し位置との間で移動させるリンク機構アセンブリとを備え、
前記可動部材は、前記可動部材を前記第2軸に軸方向に移動自在に支持する調節機構を有しており、
前記調節機構は、
前記第2軸と回動自在に係合するよう前記可動部材から延びる第1筒状ガイド部と、
前記チェーンガイドから延び、前記第1筒状ガイド部の周囲に配置されるとともに、前記第1タブ部材に対向しかつ第2孔を有する第2タブ部材を含む第2筒状ガイド部と、
前記第1及び第2筒状ガイド部間に配置され、チェーンガイドに対し前記第2軸の回転方向に前記可動部材を付勢するよう配置される付勢部材と、
前記可動部材と前記チェーンガイドとの間に連結され、前記第1及び第2孔内に連結されるネジと、前記ネジに対し回転不能に固定される保持ワッシャーと前記第1タブ部材に対し前記保持ワッシャーを保持させるためのコイルばねとを含む緩み防止機構とを有する調節部材とを含み、
前記第1タブ部材は、前記第1孔の周りに周方向に間隔をあけて形成された複数の突起を有し、
前記保持ワッシャーは、前記複数の突起に対し係合可能な複数の凹部を有している、
自転車用ディレーラ。
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