JP3567678B2 - 通電発熱体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通電発熱体にかかわり、更に詳しくは、セラミック絶縁基材の表面に抵抗発熱材料の被膜が溶融融着した構造の通電発熱体に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
伝熱性の良いセラミック板にヒーター回路を焼き付けると温度むらの小さい面状発熱体が得られる。セラミックヒーターと称せられるこの種のヒーターには次のような構造と特性が求められている。
(イ)回路とセラミックの密着強度が高い。
(ロ)ヒーター回路材が耐酸化性に優れ、高温でも使用できること。
(ハ)ヒーターの発熱密度の大きなこと。つまりヒーター回路の電気抵抗が高いこと、そして最も重要なことは安価に大型品を製造できることである。
しかしながら現状では次の二つのタイプがあるに過ぎない。すなわち、
(1)あらかじめ焼結されたセラミック板に電熱金属の回路を焼き付けたタイプ。
このタイプは白金や白金合金あるいは銀等の貴金属の粉末にガラスを混合したペ一ストを回路模様に焼結した構造である。
欠点は、
(イ)セラミックの片面に焼き付けるタイプ(片面焼付け)に限られる。つまり回路を焼き付けられた面はむき出しになっているので、用途によってはこの部分を絶縁する必要がある。
(ロ)電熱回路の密着強度が弱く剥がれやすい欠点がある。
(ハ)最高使用温度はバインダーに使ったガラスの融点に制限され、せいぜい400〜500℃で,1000℃以上の様な高温使用は不可能である。
(2)セラミック焼結時に電熱回路を一体的に焼き付けるタイプ
このタイプはセラミックのグリーンシートにタングステン等の高融点金属の粉末ペ一ストを回路模様に印刷し、印刷回路の上にさらにグリーンシートを重ね、加圧して一体的に焼結した構造である。最終的な構造はセラミックの板の中に電熱回路が内蔵された構造(両面焼付け)で、電熱回路の両面はセラミック板である。このタイプは、(1)の欠点、つまり電熱回路がむき出しになる欠点は解消されるが、
(イ)逆に回路をセラミックでくるむ必要があるために、周端部まで回路を形成できず、周端部の温度が下がる欠点がある。均一な温度分布が得難い。
(ロ)薄肉の平板状のものは、焼成時ソリが発生する。ソリのないもの得るためには加圧焼結が必要である。
この方法にはセラミックの焼成時に発生する変形の問題が根源的に存在する。変形のない大型寸法のものは得難い。また三次元形状体も不可能である。金型が必要なために、少量品ではコストが極めて高くなる。
(ハ)電熱金属はセラミックの焼成温度で溶融しないタングステン、モリブデン等の高融点金属に限定される。タングステン、モリブデンは酸化に弱い欠点があり、電熱回路を包むセラミックには無欠陥、完全機密性が要求される。大気中での高温長時間使用に問題がある。また、タングステン、モリブデン等は電気抵抗が小さく、発熱密度も小さい問題もある。
セラミックヒーターには以上のような問題がある。
【0003】
一方、二珪化モリブデン(MoSi2)に代表される珪化物は、耐酸化性に極めて優れ、大気中、高温まで通電発熱できる材料としてよく知られるところである。
これら珪化物発熱体の最大の欠点は非常に脆いことである。この脆さゆえに通常ガラス粉末を混ぜてある程度の強度を持つ板や棒に焼結して使用しているが、このバインダーにガラスを使用しているために、耐熱性にも問題がある。また、珪化物そのものが高温で軟化する性質があり、発熱体が垂れて変形する問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、
(イ)基材として予め焼結されたセラミックを使用し、目的に応じて電熱回路の片面焼付け、両面焼付けのいずれにも適用でき、
(ロ)加圧も必要とせず、上記したセラミック焼成時の歪みの問題も解消でき、
(ハ)回路とセラミックの密着強度が高く、
(ニ)耐酸化性に優れ、大気中高温でも使用でき、
(ホ)大型品、三次元形状体でも安価に製造でき、
(ヘ)抵抗が高く、ワット密度の高いヒーターも可能な新しい構造の通電発熱体を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題は次の手段によって解決できる。すなわち、
1.電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミック基材の表面に、ミクロ組織がCo珪化物とSiからなる混在組織からなる抵抗発熱材料の被膜が融着した構造からなることを特徴とする通電発熱体。
2.二枚の電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミック基材の間に、ミクロ組織がCo珪化物とSiからなる混在組織からなる抵抗発熱材料の被膜が挟まれて融着している構造からなることを特徴とする通電発熱体。
【0006】
本発明の電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミックは熱伝導性に優れているので、通電発熱体の基材として最も好適に使用できる。
電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミック基材の表面に形成する抵抗発熱材料の膜の線膨張係数は近似することが好ましい。
【0007】
Siと全率固溶体を作る元素、例えばGeを除いて、Siはほとんどの金属と珪化物を作る。
XはSiと珪化物を作る元素とすると、X-Si合金のSiの変化によるミクロ組織の基本的な変化は次のようになる。
(a)Siが徐々に増えていくと、ある組成のところで最初の珪化物を形成する。
ここの組成をSi(1)とする。S i<Si(1)の区域では、Xなる金属のマトリックスにXなる金属の珪化物相が混在する組織。あるいはSiが多少固溶したXなる金属のマトリックスにXなる金属の珪化物相が混在する組織。
(b)Si(1)からさらにSiが増加すると、組成の異なる珪化物が次々と現れ、ある組成Si(2)を過ぎたところから珪化物とSiの混在する共晶が現れる。
Si(1)はX元素の最もリッチな珪化物、Si(2)はSiの最もリッチな珪化物である。
Si(1)≦Si≦Si(2)の区域、
この区域は、一種あるいは二種以上の珪化物の混在組織。
(c)Si(2)を過ぎてSi(100%)未満までの間
Si(2)<Si<Si(100%)
この区域は、Siと珪化物の混在する組織。
(d)Si=100%ではSiの多結晶組織となる。
ここで、上記したX-Siの二元系に第3,第4,第5,…元素が添加されても、組織そのものの基本的な骨格、つまりマトリックスに珪化物が存在するという基本的な骨格は変わらない。つまり第3,第4,第5,…元素はマトリックスに固溶されるか、珪化物に固溶されて複珪化物を形成するか、あるいは、ほかの化合物を形成してマトリックスに晶出、あるいは析出するかであり、少なくとも珪化物(あるいは複珪化物)がマトリックスから消滅することはない。
なお、本発明では「珪化物」なる表現は、本来の珪化物と複珪化物を含めた総称として使用した。
【0008】
(a)の一部(Si≧5%)、(b)、(c)、(d)の組成範囲は溶融すると窒化物系セラミックに濡れて融着する。
【0009】
通電発熱体としては、(a)の融着する組成(Si≧5%)、および(b)、(c)、(d)の組成範囲が使用できる。とりわけ(c)の組成範囲が好適である。
(c)の組成は、上記した電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミックに対して融着性がある上に、
1.線膨張係数が4〜8×10-6(とくに(c)の組成範囲は4〜6×10-6)で、必要に応じて、ミクロ組織の中の珪化物の量を調整することによって線膨張係数を調整でき、基材の窒化アルミニウム系セラミックと整合させることができ、融着界面での熱応力を極小に抑制し、高温まで安定し、発熱体の剥離防止に対して極めて有利である。また(c)の組成範囲は、融点も低いので融着温度を低くできる利点がある。
そして珪化物は高温(おおむね1000℃以上)では軟化、変形するという発熱体として欠点があるが、窒化アルミニウム系セラミックに融着させることによって変形は防止され、しかも融着界面で応力緩和がなされるので、欠点はむしろ有利な性質になる。つまり珪化物とSiからなる混在組織の抵抗発熱材料は高温使用のヒーターを目的としてセラミックに融着させる被膜としては極めて好適である。
2.大気中、高温(1000℃以上)での耐酸化性に優れている。
大気中、高温使用を考えた場合、(a)の区域より(b)、(c)、(d)の組成範囲が耐酸化性に優れ、しかも
3.電気抵抗が大きいので抵抗回路の長さを短くでき、単位面積当たりのワット
密度の大きいヒーターが得られる。
【0010】
以上の様な理由で、通電発熱体としては(a)の区域より(b)、(c)、(d)の組成範囲、とりわけ(c)の組成範囲が好ましい。
【0011】
上記したX-Si合金のX元素としては、Coを選択することが好ましい。Coの添加量は、Co珪化物とSiを形成する範囲であれば適宜選択できるが、最も好ましい範囲は(c)のミクロ組織になる範囲、つまりCo珪化物とSiの混在する組成範囲である。(c)の範囲はミクロ組織の中のCo珪化物の量を調整することによって線膨張係数と電気抵抗を適宜調整でき、しかも融点が低く、低い温度でセラミックに融着させることができるので、この点でも有利である。
【0012】
また、上記元素以外の元素でもミクロ組織を変えない範囲なら添加してもよい。
たとえばSiに固溶してSiの電気抵抗を下げる元素、あるいはCo珪化物の中に侵入してその珪化物の特性(電気抵抗、線膨張係数、融点等)を変化させる元素は目的に応じて極微量(ppm〜ppb単位)適宜添加してよい。
【0013】
不純物半導体の製造で、P形半導体、N型半導体を作るために高純度Siに3価、5価の金属を極微量(ppm〜ppb単位)添加して電気抵抗を低下させることが行われているが、これは本発明でも有効であり、これは前者の場合に相当する。すなわち、ミクロ組織の一部を構成するSiの中に3価、5価の元素を微量含有させることによってその電気抵抗を変える方法は本発明融着膜の電気抵抗の調節法としても有効な方法である。なお、その他電気抵抗を下げる方法としては、使用するSiの原料素材に微量元素(Fe,P,Al,C等)が含有されている鋳造用Si原料を使用するのも効果的である。
【0014】
Siは本来半導体で極めて高抵抗であるが、不純物として見倣される微量元素はSiの導電性を著しく改良するので、本発明Si原料には上記したような微量元素が含まれるSiがむしろ好適である。
【0015】
基材セラミックに融着させる融着膜の厚さは、薄いほど有利である。
薄いほど電気抵抗が大きくなるので発熱回路の長さを短くできる利点がある。
また、融着界面での熱応力が小さくなり、高温、長期間使用が可能になる。融着膜の厚さはおおむね数μm〜500μmの範囲が最もよい。
【0016】
本発明の抵抗発熱膜は、一枚の窒化アルミニウム系セラミック基材の片面に融着させる片面融着タイプ、二枚の窒化アルミニウム系セラミックの間に挟んで両方のセラミックに融着させる両面融着タイプのいずれにも適用できる。
【0017】
両面融着タイプでは、回路と回路の間の隙間に抵抗発熱材料の溶融金属が浸透して回路が短絡する場合がある。
この問題に対しては、回路と回路の間、二枚のセラミックの隙間を抵抗発熱材料の融着膜の厚さよりも広く開けておくと短絡防止に効果がある。具体的には、融着する前に回路と回路の間部分にあらかじめ溝を形成して重ね合わして融着するとよい。
【0018】
抵抗発熱材料膜の融着は、所定の成分組成に調整した金属粉末をセラミック融着面に塗着して、あるいは所定成分に調整した金属箔を回路模様に貼着し、これを加熱、溶融、融着させる。
また融着面に溶射、スパッタリング、PVD,CVD等の成膜手段で抵抗発熱材料の膜を成膜しておき、これを加熱、溶融、融着させるようにしてもよい。また、成分の一部を成膜しておき、ほかの元素は粉末塗着、金属箔貼着して溶融、融着させてもよい。融着するときの雰囲気は不活性雰囲気がよい。
【0019】
抵抗発熱材料膜を窒化アルミニウム系セラミック基材の片面に融着させる片面融着タイプと二枚の窒化アルミニウム系セラミックに挟んで融着させる両面融着タイプでは、抵抗発熱材料膜の厚さの均一性、平坦性、均一融着性は両面融着タイプが優れている。また片面融着タイプでは窒化アルミニウム系セラミック基材と抵抗発熱膜の線膨張係数に違いがあると融着後セラミックが多少変形することもある。また加熱時窒化アルミニウム系セラミック面が多少変形することもある。一方線膨張係数が同じあるいは近似した二枚の窒化アルミニウム系セラミックに挟んで融着させると、抵抗発熱膜と窒化アルミニウム系セラミック基材の線膨張係数に多少の違いがあっても融着後変形が発生しない、また加熱時に変形が発生しない特徴がある。均一加熱、温度分布の均一性の観点からは、両面融着構造が好ましい。
【0020】
また、両面融着構造では、発熱回路の外にむき出しの部分は融着膜の厚さに相当する部分(端面)だけであるので、耐蝕、耐酸化に関しては極めて好適な構造である。さらに厚さに相当する部分のむきだしになった部分はゾルーゲル法でセラミック膜を被覆したり、あるいは無機接着剤を隙間に埋めたり、あるいはガラス封着したり、あるいは窒化アルミニウム系セラミック基材の周囲を融着金属で封止したりして外部から保護できる。
【0021】
融着させる温度は少なくとも融液の出現する温度、つまり固相線温度以上が必要で、最も好ましくは液相温度以上がよい。
【0022】
抵抗発熱材料のSi原料としては、半導体用途のSiから、金属鋳物で成分調整に使用するSiまで適宜選択使用できる。
鋳物用途ではFe,C,P,A1等の微量元素が含有されており、これら微量元素はSiの導電性をよくするので、本発明には有効である。また半導体用途の不純物が添加されたSi(P型半導体、N型半導体)も本発明では有効である。
【0023】
なお、ここで本発明の抵抗発熱材料の融着膜は、ほかの抵抗発熱材料の膜と途中で適宜つなぎ合わせて(つまり本発明融着膜にほかの抵抗発熱材料の膜を重ねて焼き付けてつなぎ合わせる構造)使用しても良い。すなわち、従来のセラミック板に抵抗発熱材料の膜を焼き付けた構造のセラミックヒーターの途中の一部を本発明の抵抗発熱材料の融着膜にしてつなぎ合わせる構造にしても良い。また本発明の抵抗発熱材料の融着膜の途中の一部を従来の抵抗発熱材料の膜を焼き付けたものにして、これをつなぎ合わせて使用しても良い。とくに端子部分は本発明の抵抗発熱材料の融着膜にするのが有効である。すなわち端子をセラミックに接合する材料として本発明の抵抗発熱材料は好適であるので、この端子は本発明の抵抗発熱材料の融着し、この端子に従来の抵抗発熱材料の膜を焼き付けて使用するようにすると良い。あるいは端子接合と端子付近の発熱回路の一部を本発明の抵抗発熱材料の融着膜で形成し、本発明の抵抗発熱材料の融着回路に従来の抵抗発熱材料の膜を焼き付けて使用するようにすると良い。
また、従来のタングステン同時焼成構造型セラミックヒーターの端子接合用ろう材としても本発明の抵抗発熱材料は好適である。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に本発明の構造を図面によって説明する。
図1〜3は本発明の片面融着構造の実施の形態を説明した図である。
図1はパイプ状の窒化アルミニウム系セラミック基材の表面全面に珪化物+Siの抵抗発熱材料の膜を融着させた構造、図2は窒化アルミニウム系セラミックの丸棒に螺旋状に珪化物+Siの抵抗発熱材料の膜を融着させた構造、図3は板状の窒化アルミニウム系セラミック基材に回路模様に融着させた構造を説明した図である。
【0025】
図1で、1は窒化アルミニウムのセラミックパイプからなるセラミック基材、2は基材に融着した珪化物+Siの抵抗発熱材料からなる融着層である。
融着層の両端は、機械的あるいは冶金的な手段で、外部電源に連結された導体と接続される。
【0026】
図2は丸棒の窒化アルミニウム系セラミック基材に螺旋状の融着膜が形成された例であり、図3は板状窒化アルミニウム系セラミック基材に配線回路模様の融着膜が形成された例であるが、これらの模様の形成は、抵抗発熱材料の粉末を模様状に塗布して融着させるような方法でもよいし、いったん全面に融着膜を形成し、エッチング、ブラスト等の除去加工によって不要な部分を除去して目的の模様を形成するようにしてもよい。
【0027】
図5〜16は本発明の両面融着構造の実施の形態を説明した図である。
図5は抵抗発熱材料を融着させたヒーター回路の一例を示した図であり、実際の構造は、このヒーター回路が二枚の窒化アルミニウム系セラミック基材に挟まれ、セラミックの両面に融着した構造である。
図5で、1は抵抗発熱材料を融着させたヒーター回路、2,3は電源との接続端子である。
図6はこの様なヒーター回路が二枚のセラミック基材に挟まれた構造のものであり、その、A−A断面図である。
図7は図6の構造の製造工程の一例を示した図である。
図8は、ヒーター回路の短絡防止の構造を説明した図である。
【0028】
図6で、抵抗発熱材料を融着させたヒーター回路3は二枚の窒化アルミニウム系セラミック基材4,5の間に挟まれ、融着している。融着した抵抗発熱材料はヒーター回路であると同時に、二枚の窒化アルミニウム系セラミックを接合するろう材の役割も果たしている。回路の形成は、例えば次のような方法でなされる。
(イ)二枚の窒化アルミニウム系セラミックの一方、あるいは両方に融着させた抵抗発熱材料の組成に調整した金属粉末を回路模様に塗着して、二枚の窒化アルミニウム系セラミックを重ね合わせて加熱、溶解して融着させる。あるいは
(ロ)二枚の窒化アルミニウム系セラミックの一方、あるいは両方に抵抗発熱材料の膜を回路模様に被覆し、二枚の窒化アルミニウム系セラミックを重ね合わせて加熱、溶解して融着させる。抵抗発熱材料の膜はスパッタリング、PVD,CVD等の方法で形成する。
(ハ)前記(イ)と(ロ)を折衷した方法、つまり成膜と粉末の塗布の両方を使って回路模様を描き、加熱、溶解して融着させる。あるいは
(ニ)それぞれの窒化アルミニウム系セラミックの接合面にあらかじめ金属を融着させて融着膜を形成しておき、この膜をショットブラスト等の方法で除去加工して回路模様を形成する。模様を形成された二枚の窒化アルミニウム系セラミックを位置をよく合わせて重ね合わせ、加熱、再溶融して二枚の窒化アルミニウム系セラミックを接合する。以上のような方法である。
【0029】
図7のように、それぞれの窒化アルミニウム系セラミックの接合面にあらかじめ金属を融着させて融着膜6を形成しておき、この膜をショットブラスト、エッチング等の方法で除去加工して回路模様を形成した後、重ね合わせて、加熱して(必要に応じて加圧加熱して)融点以下の温度で焼結する方法でもよい。
【0030】
図6,7の構造のように二枚の窒化アルミニウム系セラミックにヒーター回路を挟んで融着させる構造では、抵抗発熱材料の融着金属が横に浸透し、回路が短絡する場合がある。融着膜が厚くなるほど短絡が起こりやすくなる。短絡に対しては、図8のように、回路と回路の間の隙間に溝7を形成して、窒化アルミニウム系セラミック板の間隙を広くするよい。
【0031】
二枚の窒化アルミニウム系セラミックにヒーター回路を挟んで融着させた場合、二枚のセラミックの間には抵抗発熱材料の融着膜のヒーター回路の厚さに相当する隙間が残る。隙間があると、用途によっては異物が混入して回路の短絡が起こることもある。端面の隙間の封止は重要な問題になることがある。
端面封止には、窒化アルミニウム系セラミック端面の周りを図9のような融着金属の帯で囲って、閉回路8を形成し、この閉回路8を窒化アルミニウム系セラミックの両面に融着させることによって封止することも有効な方法である。
封止閉回路8の融着はヒーター回路を融着させるときに同時に行い。ヒーター回路の融着金属と同じ金属を融着させてもよいし、あるいはヒーター回路の融着金属と同じ融着条件で融着できる材料を使用すればよい。
また、他の封止方法としては、セラミック接着剤を含浸させて固化させてもよい。また、ガラスを融着させてもよい。
【0032】
図9は、二枚の窒化アルミニウム系セラミックの一方あるいは両方のヒーター回路形成面にヒーター回路の融着金属を図のように塗着し同時に金属閉回路8模様にヒーター回路の融着金属と同じ金属あるいはヒーター回路の融着金属と同じ融着条件で融着できる材料を塗着し、重ね合わせて同時に加熱、融着させた構造を示した図である。ヒーター回路、閉回路8共にセラミックの中に隠され表には出てこないので点線で表示した。ヒーター回路と閉回路は互いに電気的に絶縁されている。
【0033】
ヒーター回路の端末と外部電源との接続には次のような接続構造が有効である。使用したセラミック基材の線膨張係数と近似した線膨張係数を有する金属の端子をロー付して、該金属端子とリード線を接続する。
図10は回路の端末に直接端子金属をロー付した構造の一部断面図であり、図11は回路の端末をセラミック基材の外表面まで引き出し、外表面でロー付した構造である。すなわちセラミック基材の一方に回路引き出し用の二つの孔(単相の場合)、三つの孔(三相の場合)を穿孔し、孔の内面に沿って融着金属でメタライズして外まで回路を引き出し、引き出したところでロー付する。あるいは引き出し用の孔に近似した線膨張係数を有する金属(Mo,W等)のリード線を直接差し込みリード線と孔の隙間もロー材で埋めて回路の端末と直接ロー付した構造でもよい。あるいは孔を細径孔にし、融着金属で孔を埋めてしまい、外に導通させ、リード線とロー付する。片面融着構造では、回路端末にセラミック基材と線膨張係数が近似した金属のリボン端子をロー付し、リボン端子と外部リード線を電気的に接続する方法もよい。また、図12のようにセラミック小片9をヒーター回路の上に接合しておき、小片9の孔にリード線を差込み、ロー付けして固定するようにしてもよい。
ろう付けは、融着金属そのものを使用して回路形成時、端子も同時にロー付してもよいし、あるいは回路形成後耐酸化性の優れた高温ろう、たとえばNiろう等を使用してロー付してもよい。
セラミック基材が窒化アルミニウム系セラミック場合、端子材料はMo,W、あるいは窒化アルミニウム系セラミックの多孔体に融着金属を含浸させて作った複合材料の端子等も好適である。金属端子、リード線は、中実材のほか、線を束ねたもの、箔を重ねたもの、あるいは織布状等々、適宜選定してよい。
【0034】
【実施例】
実施例によって本発明を説明する。
実施例1(両面融着タイプ)
表1の「粉末の組成」に示されるSi-10%Coとなる割合に調合した金属混合粉末をポリビニルアルコールのエタノール溶液と混ぜてペ一ストを作製した。Siの原料は、99.999%純度(Al,Mg,Ca,Na≦1ppm)の粉末を使用した。
さらに、セラミック基材として 10×30×0.6mmの寸法を有する窒化アルミニウム(ALN)板を用意した。
上記セラミック基材(窒化アルミニウム)の上に、図13に示すように、幅:2mm、長さ22mmのペースト層を塗布し、図14に示した両端に孔(φ1mm)の開いた同じセラミック基材を重ね合わせ、乾燥後、表1に示されるアルゴン雰囲気および温度:1450℃で加熱し、図15のように二枚のセラミック基材の間に表1に示される膜厚:20μmの抵抗発熱材料を挟んで加熱融着させ、それにより表1のミクロ組織として示されるCo珪化物とSiの混在組織からなる抵抗発熱材料を二枚の窒化アルミニウム(ALN)板で挟んでなる両面融着ヒーター試料を作製した。孔間の距離は20mmとした。
次に、図15の両面融着試料の二つの孔に抵抗測定用の電極を差し込んで電気抵抗は測定し、その結果を表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例2(加熱テスト)
実施例1で得られた両面融着ヒーター試料に交流電圧を印加して5分で500℃まで加熱したのち常温まで放冷し、これを100回繰り返す加熱テストを行った。その結果、いずれの両面融着ヒーター試料に剥離および割れは生じなかった。
【0037】
実施例3(片面融着タイプ)
表2の「粉末の組成」の欄に示されるSi-10%Coとなる割合に調合した金属混合粉末をポリビニルアルコールのエタノール溶液と混ぜてペ一ストを作製した。Siの原料は、99 .999%純度の粉末を使用した。
さらに、セラミック基材として 10×30×0.6mmの寸法を有する窒化アルミニウム(ALN)板を用意した。
上記セラミック基材の片面に、図4に示すように、幅:2mm、長さ:22mのペ一スト層を塗布し、乾燥後、表2に示されるあるアルゴン雰囲気および温度:1450℃で加熱し溶融して融着させることにより表2のミクロ組織として示されるCo珪化物とSiの混在組織からなる膜厚:60μmの抵抗発熱材料被膜を形成することにより片面融着ヒーター試料を作製した。
この片面融着試料の融着膜に電極を距離:20mmの間隔をおいて当て、電気抵抗を測定し、その結果を表2に示した。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例4(加熱テスト)
実施例3の試料に交流電圧を印加して5分で500℃まで加熱したのち常温まで放冷し、これを100回繰り返す加熱テストを行った。その結果、いずれの片面融着ヒーター試料に剥離および割れは生じなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明は以上詳記したように、Coの珪化物とSiからなる混合組織の電熱材料の膜を窒化アルミニウム系セラミック基材に融着させた複合構造の電熱材料であって、電熱材料の脆さと高温で軟化する欠点が改良され、しかも薄膜化されたもので、ヒーター被膜の密着強度、耐剥離性、大気中での耐酸化性に優れ、急加熱、高温加熱に耐え、耐久性に優れ、構造が簡単で安価に製造できる利点も有し、産業上極めて有意義な発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態を説明した図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態を説明した図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態を説明した図である。
【図4】図4は実施例の説明図。
【図5】図5は融着金属のヒーター回路の一例を示した図である。
【図6】図6は図5のA-A一断面図である。
【図7】図7は図6の構造の製造工程の一例を示した図である。
【図8】図8はヒーター回路の短絡防止の構造の説明図。
【図9】図9はセラミック端面の封止構造の説明図。
【図10】図10はヒーター回路の端末に端子を接続した構造の説明図。
【図11】図11はヒーター回路の端末に端子を接続した構造の説明図。
【図12】図12はヒーター回路の端末にリード線を接続した構造の説明図。
【図13】図13は実施例の説明図。
【図14】図14は実施例の説明図。
【図15】図15は実施例の説明図。
【図16】図16は実施例の説明図。
【符号の説明】
1…セラミック基材 2…融着層
3…ヒーター回路 4,5…窒化アルミニウム系セラミック基材
6…融着膜 7…溝 8…閉回路
9…セラミック小片
Claims (2)
- 電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミック基材の表面に、ミクロ組織がCo珪化物とSiからなる混在組織からなる抵抗発熱材料の被膜が融着した構造からなることを特徴とする通電発熱体。
- 二枚の電気絶縁性の窒化アルミニウム系セラミック基材の間に、ミクロ組織がCo珪化物とSiからなる混在組織からなる抵抗発熱材料の被膜が挟まれて融着している構造からなることを特徴とする通電発熱体。
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