JP3567598B2 - ブラシレスdcモータ駆動方法、圧縮機駆動方法およびこれらの装置 - Google Patents

ブラシレスdcモータ駆動方法、圧縮機駆動方法およびこれらの装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はブラシレスDCモータ駆動方法、圧縮機駆動方法およびこれらの装置に関し、さらに詳細にいえば、インバータを用いてブラシレスDCモータを駆動するブラシレスDCモータ駆動方法およびその装置、およびこのように駆動されるブラシレスDCモータによって圧縮機を駆動する方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ACモータに比べて高効率なモータとして、回転子巻線に代えて回転子に永久磁石を装着することにより、回転子巻線に電流が流れることに起因する二次銅損を皆無にしたブラシレスDCモータが知られている。
また、空気調和機の省電力化のニーズが高まり、圧縮機の駆動を従来のACモータ・インバータに代えて、主に、電圧形インバータを用いてブラシレスDCモータを駆動制御するブラシレスDCモータ駆動制御装置が用いられるようになってきている。
【0003】
このブラシレスDCモータ駆動制御装置には、大別して、位置検出を速度起電圧に基づいて行い、モータ電気角1回転中に60°毎のパルス信号を得て、(1)それ(正確には、速度指令と位置検出パルス間隔から得られるモータ速度)に応答してインバータの電圧を制御するもの(以下、電圧制御方式と称する)、(2)モータに流れる電流を検出し、これと前記位置検出パルス信号とに応答して電流を制御するもの(以下、電流制御方式と称する)とがある。
【0004】
前者は、電圧が制御量であるためにモータトルクを正確に制御することは困難であるが、構成が簡単であるという利点を有している。一方、後者は、電流(電磁トルク)検出器を追加することが必要になるので構成は複雑化するが、トルク制御精度が高いという利点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
空気調和機のように大量生産され、かつ低コストが強く要望される用途では、構成が簡単な電圧制御方式を採用することが好ましく、また空気調和機に組み込まれる圧縮機としては1シリンダロータリー方式の圧縮機を採用することが好ましい。
【0006】
この電圧制御方式を採用した場合には、インバータから出力すべき電圧を、速度指令値と速度検出値との比較により1回転程度もしくはそれ以上の比較的長い期間の平均値として算出し、電圧を制御する。
このため、1回転中の負荷トルクの増減によって回転速度の増減が生じ、これに応答してモータ速度起電圧も増減する。しかし、印加電圧はほぼ一定に保たれているので、モータ電流は前記速度起電圧の増減に合せて逆の変動を示す。即ち、速度起電圧の減少に伴なって電流が増加する。
【0007】
このとき、モータトルク変動に対して、回転子の慣性モーメントに起因して速度変動は約90°遅れ、速度変動と速度起電圧とは同相だが、巻線インダクタンスの効果で電流はこれに対しさらに遅れる。この遅れの大きさは、モータの内部インピーダンス、すなわち速度とインダクタンスとで決まり、最大約90°に達する。また、モータトルクは電流で決まるので、負荷トルクの最も必要な所でモータトルクが減ってしまうという不都合がある。図24中(A)は印加電圧とモータ速度起電圧との関係を示す、図24中(B)は負荷トルクの変動とモータトルクの変動との関係を示す図であり、負荷トルクの最も必要な所でモータトルクが減ってしまっていることが分かる。
【0008】
2シリンダロータリー方式の圧縮機やスクロール方式の圧縮機では、1回転中の負荷トルクの変動が圧縮機の構造上小さいので、上記の問題は殆どないが、図24に示すように負荷トルクの変動が著しく大きい1シリンダロータリー方式の圧縮機を用いる場合には、トルク不足によるモータ停止が発生してしまう。このような不都合を防止するためには、モータのインダクタンスを小さくし、電流/トルク比を大きくするなどの方策が考えられるが、一般にモータ体格が大きくなり、コストアップを招いてしまうという不都合がある。
【0009】
なお、2シリンダロータリー方式の圧縮機やスクロール方式の圧縮機においても低速運転で吸入と吐出の圧力差の極めて大きな、すなわち、圧縮負荷の非常に重い場合には負荷トルクの変動が大きくなり同様の問題が起こる。
【0010】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、負荷トルクのピーク点近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができるブラシレスDCモータ駆動方法、圧縮機駆動方法およびこれらの装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1のブラシレスDCモータ駆動方法は、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、インバータで電圧振幅を変化させることによってブラシレスDCモータの速度を制御するブラシレスDCモータ駆動方法であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動電圧を平均値電圧指令に重畳する方法である。
【0012】
請求項2のブラシレスDCモータ駆動方法は、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、インバータで電圧位相を変化させることによってブラシレスDCモータの速度を制御するブラシレスDCモータ駆動方法であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動位相を平均値位相指令に重畳する方法である。
【0013】
請求項3のブラシレスDCモータ駆動方法は、インバータの各相の出力端子に一方の端部が接続された抵抗の他方の端部を互いに接続して第1中性点電圧を得るとともに、ブラシレスDCモータの各相の固定子巻線の一方の端部を互いに接続して第2中性点電圧を得、第1中性点電圧と第2中性点電圧との差に基づいてブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、インバータで電圧位相を変化させることによってブラシレスDCモータの速度を制御する方法である。
【0014】
請求項4の圧縮機駆動方法は、請求項1から請求項3の何れかのブラシレスDCモータ駆動方法により駆動されるブラシレスDCモータによって1シリンダ圧縮機を駆動する方法である。
請求項5のブラシレスDCモータ駆動装置は、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、インバータで電圧振幅を変化させることによってブラシレスDCモータの速度を制御するブラシレスDCモータ駆動装置であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動電圧を平均値電圧指令に重畳する変動電圧重畳手段を含んでいる。
【0015】
請求項6のブラシレスDCモータ駆動装置は、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、インバータで電圧位相を変化させることによってブラシレスDCモータの速度を制御するブラシレスDCモータ駆動装置であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動位相を平均値位相指令に重畳する変動位相重畳手段を含んでいる。
【0016】
請求項7のブラシレスDCモータ駆動装置は、インバータの各相の出力端子に一方の端部が接続された抵抗の他方の端部を互いに接続して第1中性点電圧を得るとともに、ブラシレスDCモータの各相の固定子巻線の一方の端部を互いに接続して第2中性点電圧を得、第1中性点電圧と第2中性点電圧との差に基づいてブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、インバータで電圧振幅を変化させることによってブラシレスDCモータの速度を制御するものである。
【0017】
請求項8の圧縮機駆動装置は、請求項5から請求項7の何れかのブラシレスDCモータ駆動装置により駆動されるブラシレスDCモータによって1シリンダ圧縮機を駆動するものである。
【0018】
【作用】
請求項1のブラシレスDCモータ駆動方法であれば、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、ブラシレスDCモータをインバータで駆動するに当って、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動電圧を平均値電圧指令に重畳するのであるから、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができる。
【0019】
請求項2のブラシレスDCモータ駆動方法であれば、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、ブラシレスDCモータをインバータで駆動するに当って、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動位相を平均値位相指令に重畳するのであるから、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができる。
【0020】
請求項3のブラシレスDCモータ駆動方法であれば、インバータの各相の出力端子に一方の端部が接続された抵抗の他方の端部を互いに接続して第1中性点電圧を得るとともに、ブラシレスDCモータの各相の固定子巻線の一方の端部を互いに接続して第2中性点電圧を得、第1中性点電圧と第2中性点電圧との差に基づいてブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、ブラシレスDCモータをインバータで駆動するのであるから、ロータリーエンコーダなどの磁極位置検出装置を設ける必要がなく、全体として構成を簡単化することができる。
【0021】
請求項4の圧縮機駆動方法であれば、請求項1から請求項3の何れかのブラシレスDCモータ駆動方法により駆動されるブラシレスDCモータによって1シリンダ圧縮機を駆動することを特徴とするのであるから、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができる。
請求項5のブラシレスDCモータ駆動装置であれば、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、ブラシレスDCモータをインバータで駆動するに当って、変動電圧重畳手段によって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動電圧を平均値電圧指令に重畳するのであるから、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができる。
【0022】
請求項6のブラシレスDCモータ駆動装置であれば、ブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、ブラシレスDCモータをインバータで駆動するに当って、変動位相重畳手段によって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動位相を平均値位相指令に重畳するのであるから、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができる。
【0023】
請求項7のブラシレスDCモータ駆動装置であれば、インバータの各相の出力端子に一方の端部が接続された抵抗の他方の端部を互いに接続して第1中性点電圧を得るとともに、ブラシレスDCモータの各相の固定子巻線の一方の端部を互いに接続して第2中性点電圧を得、第1中性点電圧と第2中性点電圧との差に基づいてブラシレスDCモータの回転子の磁極位置を検出し、ブラシレスDCモータをインバータで駆動するのであるから、ロータリーエンコーダなどの磁極位置検出装置を設ける必要がなく、全体として構成を簡単化することができる。
【0024】
請求項8の圧縮機駆動装置であれば、請求項5から請求項7の何れかのブラシレスDCモータ駆動装置により駆動されるのであるから、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面によってこの発明の実施の態様を詳細に説明する。
図1はこの発明のブラシレスDCモータ駆動装置の一実施例を示す概略図であり、インバータ2の出力電圧をブラシレスDCモータ3に印加している。そして、ブラシレスDCモータ3の各相の固定子巻線をY結線することにより得られる第2中性点電圧とインバータ2の各相の出力端子間に抵抗をY結線することにより得られる第1中性点電圧との差電圧を入力とするモータ位置検出回路4からの出力信号を制御回路5に供給し、制御回路5により、電気的な通電幅を、例えば、120°を越え、180°以下の所定幅とすべく制御指令を生成してインバータ2に供給している。
【0026】
したがって、中性点電圧同士の差電圧に基づいてモータ位置検出回路4によりモータ回転子の磁極位置検出信号を得、磁極位置検出信号に基づいて制御回路5において制御指令を生成し、インバータ2のスイッチ(図示せず)を、例えば、120°を越え、180°以下の所定の通電幅となるように制御する。
図2は表面磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図であり、回転子3aの表面所定位置に永久磁石3bが装着されてある。また、固定子3cは、図示しない固定子巻線が巻回された多数のスロット3dを有している。また、図中矢印で示されたd軸は、永久磁石3bが発生する磁束の方向を示す軸であり、q軸はd軸と電気的に90°ずれた軸である。
【0027】
図3は埋込磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図であり、回転子3eの表面に露呈しない状態で永久磁石3fが装着されてある。但し、隣合う永久磁石3f同士の間には非磁性体3gが装着されてあり、隣合う永久磁石3f同士の間で磁束短絡が生じることを防止している。尚、固定子3cの構成は図2のブラシレスDCモータと同様であるから、説明を省略する。
【0028】
図4はブラシレスDCモータ駆動装置の構成を概略的に示す図、図5は図4のマイクロプロセッサ18の内部構成を示す図であり、直流電源11の端子間に3対のスイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2をそれぞれ直列接続してインバータ12を構成し、各対のスイッチングトランジスタ同士の接続点電圧をブラシレスDCモータ13の、Y接続された各相の固定子巻線13u,13v,13wにそれぞれ印加している。そして、各対のスイッチングトランジスタ同士の接続点電圧をY接続された抵抗14u,14v,14wにもそれぞれ印加している。尚、スイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2のコレクタ−エミッタ端子間にそれぞれ保護用のダイオード12u1d,12u2d,12v1d,12v2d,12w1d,12w2dが接続されている。尚、13eがブラシレスDCモータ13の回転子を示している。また、添え字u,v,wは、それぞれブラシレスDCモータ13のu相、v相、w相に対応させている。
【0029】
上記Y接続された固定子巻線13u,13v,13wの中性点13dの電圧が抵抗15aを介して増幅器15の反転入力端子に供給され、Y接続された抵抗14u,14v,14wの中性点14dの電圧がそのまま増幅器15の非反転入力端子に供給されている。そして、増幅器15の出力端子と反転入力端子との間に抵抗15bを接続することにより、差動増幅器として動作させるようにしている。
【0030】
増幅器15の出力端子から出力される出力信号は、抵抗16aとコンデンサ16bとを直列接続してなる積分器16に供給されている。
積分器16からの出力信号(抵抗16aとコンデンサ16bとの接続点電圧)は、反転入力端子に中性点13dの電圧が供給されたゼロクロスコンパレータ17の非反転入力端子に供給されている。
【0031】
したがって、ゼロクロスコンパレータ17の出力端子から磁極位置検出信号が出力される。換言すれば、上記差動増幅器、積分器16およびゼロクロスコンパレータ17で、ブラシレスDCモータ13の回転子13eの磁極位置を検出する位置検出器が構成される。
位置検出器から出力される磁極位置検出信号はマイクロプロセッサ18の外部割込端子に供給される。マイクロプロセッサ18においては、外部割込端子に供給された磁極位置検出信号により位相補正タイマ18a、周期測定タイマ18b、補償電圧振幅モード選択部19gに対する割込処理(図5中、割込処理1を参照)を行なう。ここで、位相補正タイマ18aは、後述するタイマ値演算部19aによりタイマ値が設定される。周期測定タイマ18bは、磁極位置検出信号の周期を測定してタイマ値を得、このタイマ値をCPU19に含まれる位置信号周期演算部19bに供給する。この位置信号周期演算部19bは、周期測定タイマ18bからのタイマ値を受けて、固定子巻線13u,13v,13wの電圧パターンの周期を演算して、周期を表す位置信号周期信号を出力する。位相補正タイマ18aは、カウントオーバー信号をCPU19に含まれるインバータモード選択部19cに供給し、割込処理(図5中、割込処理2を参照)を行なう。また、位相補正タイマ18aは、カウントオーバー信号を通電幅制御タイマ18fに供給して通電幅制御タイマ18fのタイマ動作をスタートさせる。この通電幅制御タイマ18fは、後述するタイマ値演算部19aによりタイマ値が設定される。また、通電幅制御タイマ18fは、カウントオーバー信号をCPU19に含まれるインバータモード選択部19cに供給し、割込処理(図5中、割込処理3を参照)を行なう。インバータモード選択部19cは、メモリ18cから該当する電流パターンを読み出して出力する。補償電圧振幅モード選択部19gは、メモリ18cから該当するパターンを読み出して出力する。CPU19においては、位置信号周期演算部19bによりタイマ値に基づく演算を行なって位置信号周期信号を出力して、タイマ値演算部19aおよび速度演算部19eに供給する。タイマ値演算部19aには位相量指令も供給されており、位相量指令および位置信号周期演算部19bからの位置信号周期信号に基づいて、位相補正タイマ18aに設定すべきタイマ値を算出する。速度演算部19eは位置信号周期演算部19bからの位置信号周期信号に基づいて現在の速度を算出し、速度制御部19fおよび係数発生部19iに供給する。係数発生部19iは、速度演算部19eからの現在速度に基づいて予め定められている係数(0〜1の値)を出力する。速度制御部19fには、速度指令も供給されており、速度指令および速度演算部19eからの現在速度に基づいて平均電圧振幅を出力する。この平均電圧振幅と、係数発生部19iから出力される係数と、補償電圧振幅モード選択部19gから出力されるパターンとが乗算器19jに供給され、補償電圧振幅パターンを出力する。そして、速度制御部19fから出力される平均電圧振幅と乗算器19jから出力される補償電圧振幅パターンとが加算器19hに供給され、両者の和を電圧指令として出力する。そして、上記インバータモード選択部19cから出力される電圧パターンと加算器19hから出力される電圧指令がPWM(パルス幅変調)部18dに供給され、3相分の電圧指令を出力する。この電圧指令はベース駆動回路20に供給され、ベース駆動回路20が、上記スイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2のそれぞれのベース端子に供給すべき制御信号を出力する。尚、以上の説明において、CPU19に含まれる各構成部は、該当する機能を達成するための機能部分を構成部として示しているだけであり、CPU19の内部にこれらの構成部が明確に認識できる状態で存在しているわけではない。
【0032】
次いで、図9に示す波形図を参照して図4のブラシレスDCモータ駆動制御装置の動作を説明する。
ブラシレスDCモータのu相、v相、w相誘起電圧Eu,Ev,Ewの波形が台形波状であり、その位相が順次120°ずつずれた状態で変化するので、増幅器15から出力される信号VNMが図9中(A)に示すように変化する。この信号VNMを積分器16に供給することにより、積分波形=VNOdt{図9中(B)参照}が得られる。
【0033】
そして、この積分波形=VNOdtがゼロクロスコンパレータ17に供給されることにより、積分波形=VNOdtのゼロクロス点において立上り、または立下る位置信号が、図9中(C)に示すように出力される。この位置信号の立上りおよび立下りにより割込処理1が行なわれ、位相補正タイマ18aがスタートする{図9中(D)の矢印の起点を参照}。この位相補正タイマ18aはタイマ値演算部19bによりタイマ値が設定されているのであるから、設定されたタイマ値だけ計時動作を行なった時点でカウントオーバーする{図9中(D)の矢印の終点を参照}。そして、位相補正タイマ18aのカウントオーバーが発生する毎に割込処理2が行なわれ、インバータモード選択部19cがインバータモードを1ステップ進める。即ち、インバータモードが“4”“6”“8”・・・“0”“2”“4”・・・の順に選択される。また、位相補正タイマ18aのカウントオーバーが発生する毎に割込処理2が行なわれ、通電幅制御タイマ18fがスタートする{図9中(E)の矢印の起点を参照}。そして、通電幅制御タイマ18fのカウントオーバー{図9中(E)の矢印の終点を参照}が発生する毎に割込処理3が行われ、インバータモード選択部19cがインバータモードを1ステップ進める。即ち、インバータモードが“3”“5”“7”・・・“11”“1”“3”・・・の順に選択される。なお、割込処理2および割込処理3は交互に発生するので、図9中(M)に示すように、インバータモードが“3”“4”“5”・・・“11”“0”“1”“2”“3”・・・の順に選択される。
【0034】
また、前記位置信号の立上りおよび立下りにより割込処理1が行われ、補償電圧振幅モード選択部19gが補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進める。即ち、補償電圧振幅パターンモードが、図9中(N)に示すように、“0”“1”“2”・・・“11”“0”・・・の順に選択される。
そして、割込処理2、割込処理3によってインバータモードを1ステップ進めることにより、各インバータモードに対応してスイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2のON−OFF状態が、図9中、(F)〜(K)に示すように制御される。また、割込処理1によって補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進めるとともに、補償電圧振幅モード選択部19gにより選択されたパターンと、速度制御部19fから出力される平均電圧振幅と、係数発生部19iから出力される係数とを乗算器19jによって乗算することにより、各補償電圧振幅パターンモードに対応して、図9中(L)に示すように補償電圧振幅パターンが出力される。この結果、通電期間を150°に設定した状態でのブラシレスDCモータ13の駆動を達成することができるとともに、各相の平均値電圧指令をほぼ正弦波状にすることができる。すなわち、負荷トルクの最も必要な所でモータトルクを大きくすることができ、図10に示すように、トルク不足を解消して1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができる。なお、図10中、四角印が従来のブラシレスDCモータ駆動制御装置による運転範囲を示し、丸印がこの実施態様のブラシレスDCモータ駆動制御装置による運転範囲を示している。
【0035】
図6は上記割込処理1の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、位置検出器の磁極位置検出信号(上記励磁切換信号に相当する)の立上りエッジ、立下りエッジのそれぞれで外部割込要求が受け付けられる。そして、ステップSP1において外部からの位相量(位相補正角)指令および位置信号周期演算部19bにより得られた位置信号周期信号に基づいて位相補正タイマの値を演算し、ステップSP2において位相補正タイマ18aに補正タイマ値をセットし、ステップSP3において位相補正タイマ18aをスタートさせる。そして、ステップSP4において前回の割込処理1でスタートした周期測定タイマ18bをストップさせ、ステップSP5において周期測定タイマ値を読み込む(記憶する)。但し、このステップSP4、SP5の処理は、位置信号のエッジの周期を検出するための処理であるから、周期測定タイマ値の読み込み後、ステップSP6において、次回の周期測定のために、周期測定タイマ18bは直ちにリセットされ、スタートされる。そして、ステップSP7において記憶した位置信号周期の演算(例えば、電気角1°当りのカウント数の算出)を行ない、ステップSP8において位置信号周期演算結果に基づいてブラシレスDCモータ13の現在の回転速度を演算し、ステップSP9において補償電圧振幅モードに基づいてパターンを読み込み、ステップSP10において補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進め、ステップSP11において速度指令に基づいて速度制御を行って平均電圧振幅指令を演算し、ステップSP12において現在速度に基づいて係数を読み込み、ステップSP13において平均電圧振幅の係数倍をパターンに乗算して補償電圧を得、ステップSP14において平均電圧振幅に補償電圧を加算して出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0036】
具体的には、例えば、周期測定タイマ18bによる実測の結果、磁極位置検出信号の間隔に対応するカウント値が360であれば、インバータ出力電圧1周期のカウント値は、位置検出信号の立上り、立下りの数が6であるから、360×6=2160になる。そして、この値2160が360°に相当するのであるから、1°分のカウント値が2160/360=6になる。ここで、位相量指令が30°であれば、位相量指令に対応するカウント値(タイマ値)は6×(60−30)=180になる。したがって、この値180を補正タイマ値として位相補正タイマ18aにセットし、位相補正タイマ18aをスタートさせる。
【0037】
図7は上記割込処理2の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、割込処理1でスタートした位相補正タイマ18aがカウントオーバーすることにより割込処理2が受け付けられる。ステップSP1において予めメモリ18cに設定されているインバータモードを1ステップ進め、ステップSP2において、進められたインバータモードに対応する電圧パターンを出力し、ステップSP3において位置信号周期(通電幅指令)から通電幅制御タイマ18fのタイマ値を演算し、ステップSP4において通電幅制御タイマ18fに演算により得られたタイマ値をセットし、ステップSP5において通電幅制御タイマ18fをスタートさせ、そのまま元の処理に戻る。
【0038】
図8は上記割込処理3の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、割込処理2でスタートした通電幅制御タイマ18fがカウントオーバーすることにより割込処理3が受け付けられる。ステップSP1において予めメモリ18cに設定されているインバータモードを1ステップ進め、ステップSP2において、進められたインバータモードに対応する電圧パターンを出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0039】
したがって、割込処理2によってインバータモードが“4”“6”“8”・・・“10”“0”“2”“4”・・・の順に選択され、割込処理3によってインバータモードが“3”“5”“7”・・・“11”“1”“3”・・・の順に選択される。そして、割込処理2および割込処理3は交互に発生するので、インバータモードが“3”“4”“5”・・・“11”“0”“1”“2”“3”・・・の順に選択される。また、割込処理1によって補償電圧振幅パターンモードが“0”“1”“2”・・・“11”“0”・・・の順に選択される。なお、前記インバータモードに対応する電圧パターンは図11中(A)に示すとおりであり、前記補償電圧振幅パターンに対応する補償パターンは図12中(A)に示すとおりである。そして、図12中のKは係数であり、例えば、図13に示すように、低速域で比較的大きい一定値に設定され、この領域に続く領域において回転速度の増加に伴なって単調に減少する値に設定され、中高速域で0に設定される。その根拠は、(1)低速以外の部分は慣性モーメントによる「はずみ車効果」で速度変動が抑えられ、遅れを伴った電流脈動もなくなり、トルク不足によるモータ停止が起きないこと、(2)低速域では適当な係数値にすることで速度変動に伴う電流脈動を抑える効果が得られ、モータ停止の不具合を解消できるとともに、効率面でのメリットが出ること、および(3)中高速域では補償電圧によりインバータ電圧を変動させると不要な電流脈動を発生させ、効率面でデメリットが出ることである。
【0040】
係数を図13に示すように設定し、回転速度を20rpsに設定し、トルク制御を行わない場合とトルク制御を行う場合との電流波形はそれぞれ図14中(A)(B)に示すとおりであった。これらの電流波形を比較すれば、図13に示す係数を設定してトルク制御を行うことによって電流脈動を大幅に低減できていることが分かる。
【0041】
図15はこの発明のブラシレスDCモータ駆動制御装置の他の実施態様の要部を概略的に示す図であり、図5に示すブラシレスDCモータ駆動制御装置の構成と同じ箇所は同じ符号を付して説明を省略する。
この実施態様においては、通電幅制御タイマ18fに代えて補助タイマ18f´´を採用した点、補助タイマ18f´´がカウントオーバー信号を補償電圧振幅モード選択部19gに供給し、割込処理(図15中、割込処理3を参照)を行う点、外部割込端子に供給された磁極位置検出信号により補助タイマ18f´´に対する割込処理(図15中、割込処理1参照)をも行う点が図5の実施態様と異なるだけであり、他の部分の構成は同様である。
【0042】
次いで、図19に示す波形図を参照して図15のブラシレスDCモータ駆動制御装置の動作を説明する。
ブラシレスDCモータのu相、v相、w相誘起電圧Eu,Ev,Ewの波形が台形波状であり、その位相が順次120°ずつずれた状態で変化するので、増幅器15から出力される信号VNMが図19中(A)に示すように変化する。この信号VNMを積分器16に供給することにより、積分波形=VNOdt{図19中(B)参照}が得られる。
【0043】
そして、この積分波形=VNOdtがゼロクロスコンパレータ17に供給されることにより、積分波形=VNOdtのゼロクロス点において立上り、または立下る位置信号が、図19中(C)に示すように出力される。この位置信号の立上りおよび立下りにより割込処理1が行なわれ、位相補正タイマ18aがスタートするとともに、補助タイマ18f´´がスタートする{図19中(D)(E)の矢印の起点を参照}。これらの位相補正タイマ18aおよび補助タイマ18f´´はタイマ値演算部19bによりタイマ値が設定されているのであるから、設定されたタイマ値だけ計時動作を行なった時点でカウントオーバーする{図19中(D)(E)の矢印の終点を参照}。そして、位相補正タイマ18aのカウントオーバーが発生する毎に割込処理2が行なわれ、インバータモード選択部19cがインバータモードを1ステップ進める。即ち、インバータモードが“1”“2”“3”・・・“5”“0”“1”・・・の順に選択される。また、前記位置信号の立上りおよび立下りにより割込処理1が行われ、補償電圧振幅モード選択部19gが補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進める。即ち、補償電圧振幅パターンモードが、“23”“1”“3”・・・“21”“23”・・・の順に選択される。さらに、補助タイマ18f´´のカウントオーバーが発生する毎に割込処理3が行われ、補償電圧振幅モード選択部19gが補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進める。即ち、補償電圧振幅パターンモードが、“0”“2”“4”・・・“22”“0”・・・の順に選択される。なお、割込処理1および割込処理3は交互に発生するので、図19中(N)に示すように、補償電圧振幅パターンモードが“23”“0”“1”・・・“22”“23”“0”・・・の順に選択される。
【0044】
そして、割込処理2によってインバータモードを1ステップ進めることにより、各インバータモードに対応してスイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2のON−OFF状態が、図19中、(F)〜(K)に示すように制御される。また、割込処理1または割込処理3によって補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進めるとともに、補償電圧振幅モード選択部19gにより選択されたパターンと、速度制御部19fから出力される平均電圧振幅と、係数発生部19iから出力される係数とを乗算器19jによって乗算することにより、各補償電圧振幅パターンモードに対応して、図9中(L)に示すように補償電圧振幅パターンが出力される。この結果、通電期間を180°に設定した状態でのブラシレスDCモータ13の駆動を達成することができるとともに、各相の平均値電圧指令をほぼ正弦波状にすることができる。
【0045】
図16は上記割込処理1の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、位置検出器の磁極位置検出信号の立上りエッジ、立下りエッジのそれぞれで外部割込要求が受け付けられる。そして、ステップSP1において外部からの位相量(位相補正角)指令および位置信号周期演算部19bにより得られた位置信号周期信号に基づいて位相補正タイマの値を演算し、ステップSP2において位相補正タイマ18aに補正タイマ値をセットし、ステップSP3において位相補正タイマ18aをスタートさせる。そして、ステップSP4において前回の割込処理1でスタートした周期測定タイマ18bをストップさせ、ステップSP5において周期測定タイマ値を読み込む(記憶する)。但し、このステップSP4、SP5の処理は、位置信号のエッジの周期を検出するための処理であるから、周期測定タイマ値の読み込み後、ステップSP6において、次回の周期測定のために、周期測定タイマ18bは直ちにリセットされ、スタートされる。そして、ステップSP7において記憶した位置信号周期の演算(例えば、電気角1°当りのカウント数の算出)を行ない、ステップSP8において位置信号1周期を1/4倍して補助タイマ値を得、ステップSP9において、得られた補助タイマ値を補助タイマ18f´´にセットし、ステップSP10において補助タイマ18f´´をスタートさせ、ステップSP11において位置信号周期演算結果に基づいてブラシレスDCモータ13の現在の回転速度を演算し、ステップSP12において補償電圧振幅モードに基づいてパターンを読み込み、ステップSP13において補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進め、ステップSP14において速度指令に基づいて速度制御を行って平均電圧振幅指令を演算し、ステップSP15において現在速度に基づいて係数を読み込み、ステップSP16において平均電圧振幅の係数倍をパターンに乗算して補償電圧を得、ステップSP17において平均電圧振幅に補償電圧を加算して出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0046】
図17は上記割込処理2の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、割込処理1でスタートした位相補正タイマ18aがカウントオーバーすることにより割込処理2が受け付けられる。ステップSP1において予めメモリ18cに設定されているインバータモードを1ステップ進め、ステップSP2において、進められたインバータモードに対応する電圧パターンを出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0047】
図18は上記割込処理3の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、割込処理1でスタートした補助タイマ18f´´がカウントオーバーすることにより割込処理3が受け付けられる。ステップSP1において補償電圧振幅モードに基づいてパターンを読み込み、ステップSP2において補償電圧振幅パターンモードを1ステップ進め、ステップSP3において速度指令に基づいて速度制御を行って平均電圧振幅指令を演算し、ステップSP4において現在速度に基づいて係数を読み込み、ステップSP5において平均電圧振幅の係数倍をパターンに乗算して補償電圧を得、ステップSP6において平均電圧振幅に補償電圧を加算して出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0048】
したがって、割込処理1によって補償電圧振幅パターンモードが“23”“1”“3”・・・“21”“23”・・・の順に選択され、割込処理3によって補償電圧振幅パターンモードが“0”“2”“4”・・・“22”“0”・・・の順に選択される。そして、割込処理2および割込処理3は交互に発生するので、補償電圧振幅パターンモードが“23”“0”“1”・・・“22”“23”“0”・・・の順に選択される。また、割込処理1によってインバータモードが“1”“2”・・・“5”“0”“1”・・・の順に選択される。なお、前記インバータモードに対応する電圧パターンは図11中(B)に示すとおりであり、前記補償電圧振幅パターンに対応する補償パターンは図12中(B)に示すとおりである。
【0049】
図20はこの発明のブラシレスDCモータ駆動制御装置の他の実施態様の要部を概略的に示す図である。
この実施態様においては、位置検出器から出力される磁極位置検出信号はマイクロプロセッサ18の外部割込端子に供給される。マイクロプロセッサ18においては、外部割込端子に供給された磁極位置検出信号により位相補正タイマ18a、周期測定タイマ18b、補償電圧位相モード選択部19g´に対する割込処理(図20中、割込処理1を参照)を行なう。ここで、位相補正タイマ18aは、後述するタイマ値演算部19aによりタイマ値が設定される。周期測定タイマ18bは、磁極位置検出信号の周期を測定してタイマ値を得、このタイマ値をCPU19に含まれる位置信号周期演算部19bに供給する。この位置信号周期演算部19bは、周期測定タイマ18bからのタイマ値を受けて、固定子巻線13u,13v,13wの電圧パターンの周期を演算して、周期を表す位置信号周期信号を出力する。位相補正タイマ18aは、カウントオーバー信号をCPU19に含まれるインバータモード選択部19c´に供給し、割込処理(図20中、割込処理2を参照)を行なう。インバータモード選択部19c´は、メモリ18cから該当する電圧パターンを読み出して出力する。補償電圧位相モード選択部19g´は、メモリ18cから該当するパターンを読み出して出力する。CPU19においては、位置信号周期演算部19bによりタイマ値に基づく演算を行なって位置信号周期信号を出力して、タイマ値演算部19aおよび速度演算部19eに供給する。タイマ値演算部19aには後述する位相指令も供給されており、位相指令および位置信号周期演算部19bからの位置信号周期信号に基づいて、位相補正タイマ18aに設定すべきタイマ値を算出する。速度演算部19eは位置信号周期演算部19bからの位置信号周期信号に基づいて現在の速度を算出し、速度制御部19f、係数発生部19iおよび振幅パターン発生部19kに供給する。係数発生部19iは、速度演算部19eからの現在速度に基づいて予め定められている係数(0〜1の値)を出力する。速度制御部19fには、速度指令も供給されており、速度指令および速度演算部19eからの現在速度に基づいて平均電圧位相指令を出力する。この平均電圧位相指令と、係数発生部19iから出力される係数と、補償電圧振幅モード選択部19g´から出力されるパターンとが乗算器19j´に供給され、補償位相を出力する。そして、速度制御部19fから出力される平均電圧位相指令と乗算器19j´から出力される補償位相とが加算器19hに供給され、両者の和を位相指令として出力し、タイマ値演算部19aに供給する。前記振幅パターン発生部19kは、現在速度に基づいて電圧振幅パターンを発生し、電圧指令として出力する。そして、上記インバータモード選択部19c´から出力される電圧パターンと振幅パターン発生部19kから出力される電圧指令とがPWM(パルス幅変調)部18dに供給され、3相分の電圧指令を出力する。この電圧指令はベース駆動回路20に供給され、ベース駆動回路20が、上記スイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2のそれぞれのベース端子に供給すべき制御信号を出力する。尚、以上の説明において、CPU19に含まれる各構成部は、該当する機能を達成するための機能部分を構成部として示しているだけであり、CPU19の内部にこれらの構成部が明確に認識できる状態で存在しているわけではない。
【0050】
図23はこの実施態様の動作を示す構成各部の波形図である。
ブラシレスDCモータのU相、V相、W相電流IU,IV,IWの波形が台形波状であり、その位相が120°ずつずれた状態で変化するので、増幅器15から出力される信号VNMが図23中(A)に示すように変化する。この信号VNMは積分器16に供給され、積分波形=VNOdt{図23中(B)参照}が得られる。
【0051】
この積分波形=VNOdtがゼロクロスコンパレータ17に供給されることにより、積分波形=VNOdtのゼロクロス点において立上がり、または立下る位置信号が図23中(C)に示すように出力される。この位置信号の立上りおよび立下りにより割込処理1が行なわれ、位相補正タイマ18aがスタートする{図23中(D)の矢印の起点を参照}。この位相補正タイマ18aはタイマ値演算部19bによりタイマ値が設定されているのであるから、設定されたタイマ値だけ計時動作を行なった時点でカウントオーバーする{図23中(D)の矢印の終点を参照}。そして、位相補正タイマ18aのカウントオーバーが発生する毎に割込処理2が行なわれ、インバータモード選択部19c´が、図23中(M)に示すように、インバータモードを1ステップ進める。即ち、インバータモードが“1”“2”・・・“0”“1”・・・の順に選択される。また、前記位置信号の立上りおよび立下りにより割込処理1が行なわれ、補償電圧位相モード選択部19g´が、図23中(N)に示すように、補償電圧位相パターンモードを1ステップ進める。即ち、補償電圧位相パターンモードが“0”“1”“2”・・・“11”“0”・・・の順に選択される。
【0052】
そして、割込処理2によってインバータモードを1ステップ進めることにより、各インバータモードに対応してスイッチングトランジスタ12u1,12u2,12v1,12v2,12w1,12w2のON−OFF状態が、図23中、(F)〜(K)に示すように制御される。この結果、通電期間を180°に設定した状態でのブラシレスDCモータ13の駆動を達成することができる。
【0053】
なお、前記インバータモードに対応する電圧パターンは図11(B)に示すとおりである。また、補償電圧位相パターンモードに対応する補償位相は図12(A)に示すとおりである。
図21は図20の割込処理1の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、位置検出器の磁極位置検出信号の立上りエッジ、立下りエッジのそれぞれで外部割込要求が受け付けられる。そして、ステップSP1において位相補正タイマ18aに補正タイマ値をセットし、ステップSP2において位相補正タイマ18aをスタートさせる。そして、ステップSP3において前回の割込処理1でスタートした周期測定タイマ18bをストップさせ、ステップSP4において周期測定タイマ値を読み込む(記憶する)。但し、このステップSP3、SP4の処理は、位置信号のエッジの周期を検出するための処理であるから、周期測定タイマ値の読み込み後、ステップSP5において、次回の周期測定のために、周期測定タイマ18bは直ちにリセットされ、スタートされる。そして、ステップSP6において記憶した位置信号周期の演算(例えば、電気角1°当りのカウント数の算出)を行ない、ステップSP7において位置信号周期演算結果に基づいてブラシレスDCモータ13の現在の回転速度を演算し、ステップSP8において速度指令および現在速度に基づいて速度制御を行い平均電圧位相指令を演算し、ステップSP9において補償電圧位相モードに基づいてパターンを読み込み、ステップSP10において補償電圧位相パターンモードを1ステップ進め、ステップSP11において現在速度に基づいて係数を読み込み、ステップSP12において平均電圧位相の係数倍をパターンに乗算して補償位相を得、ステップSP13において平均電圧位相に補償位相を加算して位相補正タイマ値を得て記憶し、ステップSP14において現在速度に基づく電圧振幅パターンを出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0054】
図22は図18の割込処理2の処理内容を詳細に説明するフローチャートであり、割込処理1でスタートした位相補正タイマ18aがカウントオーバーすることにより割込処理2が受け付けられる。ステップSP1において、予めメモリ18c´に設定されているインバータモードを1ステップ進め、ステップSP2において、進められたインバータモードに対応する電圧パターンを出力し、そのまま元の処理に戻る。
【0055】
したがって、割込処理2によってインバータモードが“1”“2”“3”・・・“0”“1”・・・の順に選択され、割込処理1によって補償電圧位相パターンモードが“0”“1”“2”・・・“11”“0”・・・の順に選択される。
【0056】
【発明の効果】
請求項1の発明は、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0057】
請求項2の発明は、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0058】
請求項3の発明は、ロータリーエンコーダなどの磁極位置検出装置を設ける必要がなく、全体として構成を簡単化することができるという特有の効果を奏する。
請求項4の発明は、圧縮機を駆動するに当って、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0059】
請求項5の発明は、圧縮機を駆動するに当って、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0060】
請求項6の発明は、ロータリーエンコーダなどの磁極位置検出装置を設ける必要がなく、全体として構成を簡単化することができるという特有の効果を奏する。
請求項7の発明は、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0061】
請求項8の発明は、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機など負荷トルク変動が著しい負荷の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0062】
請求項9の発明は、ロータリーエンコーダなどの磁極位置検出装置を設ける必要がなく、全体として構成を簡単化することができるという特有の効果を奏する。
請求項10の発明は、圧縮機を駆動するに当って、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0063】
請求項11の発明は、圧縮機を駆動するに当って、負荷トルクのピーク点近傍におけるモータトルクを増大させることができる。この結果、負荷トルクのピーク点の近傍でのトルク不足を解消し、モータコストを上げることなく、1シリンダロータリー方式の圧縮機の運転範囲を拡大することができるという特有の効果を奏する。
【0064】
請求項12の発明は、ロータリーエンコーダなどの磁極位置検出装置を設ける必要がなく、全体として構成を簡単化することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のブラシレスDCモータ駆動制御装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】表面磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図である。
【図3】埋込磁石構造のブラシレスDCモータの構成を概略的に示す図である。
【図4】ブラシレスDCモータ駆動制御装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【図5】図4のマイクロプロセッサの内部構成を示す図である。
【図6】図5の割込処理1の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図7】図5の割込処理2の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図8】図5の割込処理3の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図9】図4のブラシレスDCモータ駆動制御装置の各部の信号波形、処理内容を示す図である。
【図10】運転範囲拡大効果を示す図である。
【図11】インバータモードと対応する電圧パターンとを示す図である。
【図12】補償モードと対応する補償パターンとを示す図である。
【図13】係数と回転速度との関係を示す図である。
【図14】トルク制御を行わない場合とトルク制御を行う場合における電流波形を示す図である。
【図15】ブラシレスDCモータ駆動制御装置の構成の他の実施態様の要部を概略的に示す図である。
【図16】図15の割込処理1の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図17】図15の割込処理2の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図18】図15の割込処理3の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図19】図15のブラシレスDCモータ駆動制御装置の各部の信号波形、処理内容を示す図である。
【図20】ブラシレスDCモータ駆動制御装置の構成のさらに他の実施態様の要部を概略的に示す図である。
【図21】図20の割込処理1の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図22】図20の割込処理2の処理内容を詳細に説明するフローチャートである。
【図23】図20のブラシレスDCモータ駆動制御装置の各部の信号波形、処理内容を示す図である。
【図24】従来のブラシレスDCモータ駆動制御装置で1シリンダ圧縮機を駆動制御した場合における速度起電圧、印加電圧、負荷トルク、モータトルクを示す図である。
【符号の説明】
2,12 インバータ 3,13 ブラシレスDCモータ
5 制御回路 13u,13v,13w 固定子巻線
13e 回転子 14u,14v,14w 抵抗
19g 補償電圧振幅モード選択部
19g´ 補償電圧位相モード選択部 19h 加算器

Claims (8)

  1. ブラシレスDCモータ(3)(13)の回転子の磁極位置を検出し、インバータ(2)(12)で電圧振幅を変化させることによってブラシレスDCモータ(3)(13)の速度を制御するブラシレスDCモータ駆動方法であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動電圧を平均値電圧指令に重畳することを特徴とするブラシレスDCモータ駆動方法。
  2. ブラシレスDCモータ(3)(13)の回転子の磁極位置を検出し、インバータ(2)(12)で電圧位相を変化させることによってブラシレスDCモータ(3)(13)の速度を制御するブラシレスDCモータ駆動方法であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動位相を平均値位相指令に重畳することを特徴とするブラシレスDCモータ駆動方法。
  3. インバータ(2)(12)の各相の出力端子に一方の端部が接続された抵抗(14u)(14v)(14w)の他方の端部を互いに接続して第1中性点電圧を得るとともに、ブラシレスDCモータ(3)(13)の各相の固定子巻線(13u)(13v)(13w)の一方の端部を互いに接続して第2中性点電圧を得、第1中性点電圧と第2中性点電圧との差に基づいてブラシレスDCモータ(3)(13)の回転子(13e)の磁極位置を検出する請求項1または請求項2に記載のブラシレスDCモータ駆動方法。
  4. 請求項1から請求項3の何れかのブラシレスDCモータ駆動方法により駆動されるブラシレスDCモータによって1シリンダ圧縮機を駆動することを特徴とする圧縮機駆動方法。
  5. ブラシレスDCモータ(3)(13)の回転子の磁極位置を検出し、インバータ(2)(12)で電圧振幅を変化させることによってブラシレスDCモータ(3)(13)の速度を制御するブラシレスDCモータ駆動装置であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動電圧を平均値電圧指令に重畳する変動電圧重畳手段(19g)(19h)を含むことを特徴とするブラシレスDCモータ駆動装置。
  6. ブラシレスDCモータ(3)(13)の回転子の磁極位置を検出し、インバータ(2)(12)で電圧位相を変化させることによってブラシレスDCモータ(3)(13)の速度を制御するブラシレスDCモータ駆動装置であって、負荷トルクの脈動に同期して、負荷トルクの位相に対して進ませた変動位相を平均値位相指令に重畳する変動電圧重畳手段(19g‘)(19h’)を含むことを特徴とするブラシレスDCモータ駆動装置。
  7. インバータ(2)(12)の各相の出力端子に一方の端部が接続された抵抗(14u)(14v)(14w)の他方の端部を互いに接続して第1中性点電圧を得るとともに、ブラシレスDCモータ(3)(13)の各相の固定子巻線(13u)(13v)(13w)の一方の端部を互いに接続して第2中性点電圧を得、第1中性点電圧と第2中性点電圧との差に基づいてブラシレスDCモータ(3)(13)の回転子(13e)の磁極位置を検出し、インバータ(2)(12)で電圧振幅を変化させることによってブラシレスDCモータ(3)(13)の速度を制御する請求項5または請求項6に記載のブラシレスDCモータ駆動装置。
  8. 請求項5から請求項7の何れかのブラシレスDCモータ駆動装置により駆動されるブラシレスDCモータによって1シリンダ圧縮機を駆動するものであることを特徴とする圧縮機駆動装置。
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