JP3567567B2 - 非可逆回路素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波帯域等で用いられる無線機器、例えば携帯電話のごとき移動無線機器等に使用される例えばサーキュレータ、アイソレータ等の集積形の非可逆回路素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の集中定数型サーキュレータは、図14の分解斜視図に示すごとき基本構造を有し平面形状が円形の組立式の磁気回転子を備えていた。同図において、140はガラス・エポキシ樹脂等からなる円形の非磁性体基板であり、この非磁性体基板140の上下面には中心導体141及び142が形成されている。中心導体141及び142は、非磁性体基板140を貫通するヴィアホール143で互いに接続されている。中心導体141及び142を形成したこの非磁性体基板140を両側から挟むように、円形の磁性体部材144及び145が組立式で取り付けられており、中心導体141及び142に印加される高周波電力によってこれら磁性体部材144及び145内に回転高周波磁束が生じるように構成されている。このように、中心導体を形成した非磁性体基板140の両側に磁性体部材144及び145を積み重ねて接着した構成となっている。
【0003】
サーキュレータ全体としては、図15の分解斜視図に示すように、中心導体141(142)を形成したこの非磁性体基板140の両側に、磁性体部材144及び145、接地導体電極146及び147、励磁用永久磁石148及び149、並びに上下に分割されており励磁用永久磁石148及び149からの磁束用磁路を構成する分割式の金属製ハウジング150及び151をこの順序でそれぞれ積み重ねて組立て固定することによって形成される。
【0004】
図示されていない入出力端子を介して中心導体141及び142に高周波電力を与えると、磁性体部材144及び145内に中心導体141及び142の回りを回転する高周波磁束が発生する。この高周波磁束と直交する直流磁界を永久磁石148及び149から印加すると、磁性体部材144及び145は、図16に示すように、高周波磁束の回転方向に応じて異なる透磁率μ+ 及びμ− を示すこととなる。サーキュレータは、高周波信号の伝播速度がこのような透磁率の違いによって回転方向によって異なり、その結果、磁気回転子内の打ち消し効果で特定の端子への信号の伝播を止め得ることを利用しているのである。非伝播端子は、透磁率μ+ 及びμ− の性質から、駆動端子に対する角度関係で設定される。例えば、ある回転方向に沿って端子A、B、Cがこの順序で配置されているとすると、駆動端子Aに対する非伝播端子が端子Bである場合に、駆動端子Bに対する非伝播端子は端子Cとなる。
【0005】
しかしながら従来のこの種のサーキュレータは、周波数帯域を広く取れないという大きな問題点を有しており、これを解決するため、本出願人は、所定のパターンの中心導体と絶縁性磁性体とを一体的に焼成することによって高周波磁束を閉磁路構造とした磁気回転子を提供することにより、非可逆回路素子を広帯域化する手法を提案している(特開平6−343005号及び特開平6−338707号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、非可逆回路素子の周波数帯域は、中心導体の形成する高周波磁束が磁性体内にいかに広く均一に分布するかによって決まる。このため、従来の集中定数型非可逆回路素子においても、その中心導体が作る高周波磁束がなるべく磁性体の広い部分に分布するように中心導体の形状に工夫がなされている。例えば、1端子当りの導体を2本とする構造、又は導体にスリットを設ける構造を用いている。
【0007】
しかしながら、このような構造によっても、次の理由から周波数帯域を充分に広げることが難しい。即ち、1端子当りの導体を2本とする構造や導体にスリットを設ける構造を採用した場合、2本の導体間の間隔又はスリット間隔を狭くすると、中心導体の作る高周波磁束が磁性体中に広く分布しない。これとは逆に、あまりこの間隔を広くすると、やはり、高周波磁束が磁性体中に広く一様に分布しない。これは、一方の導体の作る高周波磁束が他方の導体との間を抜けて戻ってしまうため、高周波磁束が互いに弱めあってしまい、磁性体内に広く分布することができないためである。
【0008】
前述した、一体焼成によって高周波磁束を閉磁路構造とする手法(特開平6−343005号及び特開平6−338707号)によっても、この問題は依然解決できなかった。
【0009】
従って本発明の目的は、周波数帯域の広帯域化を図ることのできる非可逆回路素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、絶縁性磁性体と、この絶縁性磁性体内に各端子毎に設けられた中心導体とを備えた磁気回転子を含む非可逆回路素子であって、各端子毎の中心導体の少なくとも一部に、互いに間隙を置いて伸長する複数のストリップ部分が設けられており、絶縁性磁性体内の上述のストリップ部分に囲まれる領域内に非磁性の部分を設けた非可逆回路素子が提供される。
【0011】
中心導体の形成する高周波磁束は、絶縁性磁性体内の非磁性の部分を通過することを妨げられるので、磁性体内全体に一様に分布することとなり、その結果、周波数帯域が大幅に広帯域化する。周波数帯域が広がれば、非可逆回路素子の動作周波数の調整を簡素化又は調整不要とすることができるのみならず、材料等の温度特性に基づく動作周波数変化を吸収することができる。その結果、製造歩留を大幅に改善することができ、製造コストの大幅な低減化を図ることができる。
【0012】
非磁性の部分が少なくとも当該非可逆回路素子の使用温度においては非磁性を示す材料からなることが好ましい。
【0013】
この非磁性を示す材料が少なくとも当該非可逆回路素子の使用温度においては非磁性を示す導体であり、この導体と中心導体とが電気的に絶縁されていることは、本発明の1つの実施態様である。
【0014】
この非磁性を示す材料が少なくとも当該非可逆回路素子の使用温度においては非磁性を示す誘電体であることも、本発明の1つの実施態様である。
【0015】
非磁性の部分が空隙であることも好ましい。
【0016】
各端子毎の中心導体が、互いに間隙を置いて伸長する複数のストリップ導体であるか、又は伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリットを有するストリップ導体であることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、さらに、前述した磁気回転子と、磁気回転子の側面に設けられており中心導体の一端に電気的に接続された複数の端子電極と、端子電極に結合された回路素子と、磁気回転子に直流磁界を印加するための励磁用永久磁石とを備えた非可逆回路素子が提供される。
【0018】
以下、図面を用いて本発明の原理を説明する。図1は、本発明の非可逆回路素子の基本構成を示す模式図であり、(A)は従来技術によるもの、(B)は本発明のものをそれぞれ示している。
【0019】
同図(A)に示すように、従来技術によると、絶縁性磁性体10内に設けられた中心導体11a及び11bの間隔が広いため、中心導体11a及び11bの作る高周波磁束12の一部12aがこれら中心導体11a及び11bの間を通り抜けてしまう。このため、高周波磁束が互いに弱めあってしまい磁性体内に広く分布することができない。
【0020】
これに対して、同図(B)に示すように本発明によれば、絶縁性磁性体13内に設けられた中心導体14a及び14bの間に非磁性の部分15が設けられているため、高周波磁束16はこの非磁性の部分15に邪魔されてこれら中心導体14a及び14bの間を通り抜けることがほとんどなくなり、その大部分が中心導体14a及び14bの外側を通ることとなる。その結果、高周波磁束16は絶縁性磁性体13内に広く均一に分布することとなり、非可逆回路素子の周波数帯域を広げることができるのである。
【0021】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の一実施形態である3端子型非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図であり、図3は本実施形態の非磁性の導体部分を説明する平面図、図4は本実施形態の磁気回転子の製造工程の一部を説明する図である。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態の非可逆回路素子は3端子型であり、従ってその磁気回転子は平面形状が正六角形となるように形成されている。しかしながら、均等な回転磁界が発生できる構造であれば、形状はかならずしも正六角形でなくともよく、六角形若しくはその他の多角形又は円形であってもよい。磁気回転子の平面形状を多角形とすれば、その側面に共振用キャパシタ等の回路素子を外付けした場合に、空いているスペースを有効に利用することができ、全体の寸法を小型に保つことが可能となる。
【0023】
図2において、20a〜20eは積層され一体的に焼成されることによって最終的に絶縁性磁性体20となる磁性体グリーンシートを示している。中間の磁性体グリーンシート20b、20c、及び20d上には、互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長する2本1組のストリップ導体21a及び21b、22a及び22b、並びに23a及び23bがそれぞれ設けられており、これらが中心導体を構成している。ストリップ導体21a及び21b、22a及び22b、並びに23a及び23bは、3つの放射方向に互いに120°の角度をなしてそれぞれ伸長している。ストリップ導体21a及び21b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍、ストリップ導体22a及び22b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍、並びにストリップ導体23a及び23b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍には、非磁性の導体24、25及び26がそれぞれ設けられている。なお、図2の例では、ストリップ導体が六角形の2つの辺に平行な放射方向に伸長しているが、ストリップ導体が六角形の2つの辺に垂直な放射方向に伸長してもよいことは、自明である。
【0024】
非磁性の導体24、25及び26は、本実施形態では、六角形に成形されている。図3からも明らかのように、これら非磁性の導体24、25及び26は、磁気回転子を平面的に見た場合に、ストリップ導体21a及び21b、22a及び22b、並びに23a及び23bからなる中心導体で囲まれる領域(六角形となる)内に設けられており、中心導体と電気的に接続されないように、その内縁と僅かの間隙(例えば200μmの間隙)を隔てて形成されている。
【0025】
本実施形態における磁気回転子は、六角柱形状に形成されており、その六角形の径(対辺間の距離)は4mm、厚さは1mmとなっている。800MHz近辺で動作させる場合、径は3〜6mm、厚さは0.5〜2mm程度に選ばれる。各ストリップ導体の幅及びストリップ導体間の間隔は、動作周波数、形状及び磁気回転子の寸法等によって異なるが、好ましくは、幅が0.3〜0.6mm、間隔が0.8〜1.6mm程度に選ばれる。
【0026】
次に本実施形態の非可逆回路素子の製造工程について説明する。
【0027】
まず、絶縁性磁性体グリーンシートを下記の方法で作成する。酸化イットリウム(Y2 O3 )と酸化鉄(Fe2 O3 )とをモル比で3:5の割合で混合する。混合して得た粉末を1200℃で仮焼する。得られた仮焼粉をボールミルで粉砕する。これに有機バインダ及び溶剤を添加して磁性体スラリーを作成する。得られたスラリーをドクターブレード法でグリーンシートに成形する。
【0028】
次いで、図4(A)に示すように、このようにして得た絶縁性磁性体グリーンシート上に、厚膜印刷法で、ストリップ導体21a及び21b、22a及び22b、並びに23a及び23bからなる中心導体と非磁性の導体24、25及び26とを同時に形成する。導体24、25及び26の形状及び形成位置は前述した通りである。導体材料としては、本実施形態では、非磁性のパラジウムペーストを使用している。このようにして導体パターンを印刷形成した中間のグリーンシート20b、20c、及び20d並びに上下のグリーンシート20a及び20eを積層して熱圧着し、積層体を得る。その後、所定の大きさの六角形に切断する。なお、図4(A)には、六角形に切断した状態で各グリーンシートが示されているが、実際には積層体としてから切断が行われる。
【0029】
このような六角柱形状の積層体を、磁性体の焼結温度付近で焼成する。上述した材料の場合は、例えば1480℃で焼成する。磁性体材料に焼結助剤を添加することにより、焼成温度を下げることもできる。また、焼成は1回であってもよいし、複数回行ってもよい。この焼結によって各グリーンシートを構成する磁性体が連続状態となり一体となった焼成体40が得られる。この状態が、図4(B)に示されている。
【0030】
次いで、図4(C)に示すように、この焼成体40の上下面に銀ペーストを焼き付けることによってグランド電極41を形成する。また、焼成体40の側面の一部にも銀ペーストを焼き付けて端子電極42及びグランド電極43を形成する。この場合、六角柱形状の各角部分が交互に、端子電極42及びグランド電極43となるように構成することにより、ストリップ導体21a及び21b、22a及び22b、並びに23a及び23bの一方の端とこれら端子電極とを他方の端とこれらグランド電極とをそれぞれ電気的に接続する。以上の工程により、3端子型の磁気回転子が形成される。
【0031】
非可逆回路素子全体としては、図4(C)及び(D)に示すように、このように構成された磁気回転子の各端子電極(42)に、所望の周波数で共振するように選ばれた容量値の共振用キャパシタ44が電気的に接続されている。磁気回転子の上下には、この磁気回転子に直流磁界を印加するための励磁用永久磁石45及び46がそれぞれ取り付けられている。永久磁石45及び46並びに図4には示されていないハウジングの組み付け構造等については後述する。
【0032】
図5は本実施形態のハウジング自体の構造、並びに本実施形態の磁気回転子に励磁用永久磁石及びハウジングを組み付けた非可逆回路素子の構造を示す分解斜視図及び斜視図である。
【0033】
ハウジングを組み付ける場合には、同図(A)に示すように、まず共振用キャパシタ51(44)をその1つおきの側面にそれぞれ取り付けた磁気回転子50の上下面に励磁用永久磁石52及び53をそれぞれ積み重ねる。そして、側面から絶縁物支持体54及び55を押し当てることにより、この磁気回転子50並びに励磁用永久磁石52及び53を支持する。その際、絶縁物支持体54及び55に設けられた入出力端子56と磁気回転子50に取り付けられた共振用キャパシタ51(又は取り出し端子)との間に、クリームはんだを付着させた接続リード等を挟んで機械的に押し止める。この接続リードは、例えば、弾性を有するU字形の薄い銅製ストリップで構成される。また、絶縁物支持体54及び55は、セラミック、ガラスエポキシ樹脂又はその他の高温に耐える樹脂で成型される。
【0034】
次いで、同図(B)に示すように、このように絶縁物支持体54及び55によって支持された磁気回転子及び励磁用永久磁石の組立体57を金属ハウジング58内に密着的に挿入し、かしめ用突起58aを折り曲げて固定する。これにより金属ハウジング58と励磁用永久磁石52及び53とが密着固定されることとなる。金属ハウジング58は、磁気ヨークとして動作可能な金属、好ましくは鋼板で構成されており、その表面には、ニッケルやクロム等のめっき処理が施されている。このハウジング58は、対向する2面が開口しその他の面が連続している角筒形状を有している。このようにして組み立てたものを、リフロー炉に通してはんだを溶融させ、接続リード及び入出力端子56間、接続リード及び共振用キャパシタ51(又は取り出し端子)間の接続を行う。図5のC)は、このようにして完成させた非可逆回路素子59を示している。
【0035】
本実施形態においては、非磁性の導体(24、25及び26)が六角形に成形されている。しかしながら、図6及び図7にも示すように、これらを矩形の非磁性導体24′、25′及び26′又は円形の非磁性導体24″、25″及び26″としてもよいし、その他の形状としてもよく、また、複数部分に分割された形状であってもよい。ただし、これら非磁性導体(24′、25′及び26′又は24″、25″及び26″)は、中心導体と電気的に接続されないように、その内縁と僅かの間隙(例えば200μmの間隙)を隔てて形成されることが必須である。なお、3端子型の磁気回転子の場合、ストリップ導体に囲まれる領域が六角形となるので、非磁性の導体の形状も六角形とした方が高周波磁束の通り抜けを防止する意味ではより有効となる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、非磁性の導体24、25及び26がストリップ導体(中心導体)に囲まれる領域内のみに設けられているが、少なくともこの領域内に設けられていれば、非磁性の導体をその外側の領域にも付加的に設けてもよいことは明らかである。また、非磁性の導体は、中心導体の存在する全ての層に形成されているが、1層以上の何層に設けても高周波磁束の通り抜けを防止効果が得られる。
【0037】
また、本実施形態においては、中心導体として、1端子当り2本のストリップ導体が設けられているが、1端子当り3本以上の互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長するストリップ導体を設けてもよい。さらに、3層構造とすることなく、図14の従来技術のようにヴィアホールを利用して中心導体を編み込んだ2層構造としてもよいし、4層以上の多層構造としてもよい。
【0038】
本実施形態の非可逆回路素子について、実際にサンプルを作成した。サンプルの寸法として、六角形の径(対辺間の距離)は4mm、厚さは1mmであり、ストリップ導体間の間隔はサンプルNo.1が1mm、サンプルNo.2が1.4mmであり、非磁性の導体はストリップ導体の内縁と約200μmの間隙で離隔する六角形である。また、比較用に、サンプルNo.1及びサンプルNo.2から非磁性の導体をそれぞれ除去した形で同様の条件で作成したサンプルNo.3及びサンプルNo.4を用意した。
【0039】
表1は、これらサンプルNo.1〜No.4について、アイソレーション(逆方向損失)を測定しその比帯域を計算した結果を示す。ただし、アイソレーションは、ヒューレットパッカード社製の8719ベクトルネットワークアナライザを使用して測定した。なお、比帯域とは、20dBのアイソレーション帯域をアイソレーションの中心周波数で除し、パーセントで表わした値である。同表から明らかのように、本実施形態によれば、アイソレーションの比帯域がかなり改善されている。
【0040】
【表1】
【0041】
図8は本発明の他の実施形態である3端子型非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。図2の実施形態においては、中心導体として、1端子当り2本の互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長するストリップ導体を用いているが、この実施形態では、各端子毎に伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリットを有するストリップ導体で中心導体を構成している。
【0042】
即ち、図8において、80a〜80eは積層され一体的に焼成されることによって最終的に絶縁性磁性体80となる磁性体グリーンシートを示している。中間の磁性体グリーンシート80b、80c、及び80d上には、伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリット81a、82a及び83aをそれぞれ有するストリップ導体81、82及び83がそれぞれ設けられており、これらが中心導体を構成している。ストリップ導体81、82及び83は、3つの放射方向に互いに120°の角度をなしてそれぞれ伸長している。ストリップ導体81のスリット81a内のその伸長方向の中心部近傍、ストリップ導体82aのスリット82a内のその伸長方向の中心部近傍、及びストリップ導体83のスリット83a内のその伸長方向の中心部近傍には、非磁性の導体84、85及び86がそれぞれ設けられている。なお、図8の例では、ストリップ導体が六角形の2つの辺に平行な放射方向に伸長しているが、ストリップ導体が六角形の2つの辺に垂直な放射方向に伸長してもよいことは、自明である。
【0043】
非磁性の導体84、85及び86は、本実施形態では、六角形に成形されている。図3に示したものと同様に、これら非磁性の導体84、85及び86は、磁気回転子を平面的に見た場合に、ストリップ導体のスリット81a、82a及び83a内に位置する領域(六角形となる)内に設けられており、中心導体と電気的に接続されないように、その内縁と僅かの間隙(例えば200μmの間隙)を隔てて形成されている。
【0044】
図8の実施形態のその他の構成、製造方法、作用効果、変更態様は図2の実施形態の場合と全く同様である。
【0045】
図9は本発明のさらに他の実施形態である3端子型非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図、図10は本実施形態における誘電体部分を説明する平面図である。
【0046】
同図に示すように、本実施形態の非可逆回路素子も3端子型であり、従ってその磁気回転子は平面形状が正六角形となるように形成されている。しかしながら、均等な回転磁界が発生できる構造であれば、形状はかならずしも正六角形でなくともよく、六角形若しくはその他の多角形又は円形であってもよい。磁気回転子の平面形状を多角形とすれば、その側面に共振用キャパシタ等の回路素子を外付けした場合に、空いているスペースを有効に利用することができ、全体の寸法を小型に保つことが可能となる。
【0047】
図9において、90a〜90eは積層され一体的に焼成されることによって最終的に絶縁性磁性体90となる磁性体グリーンシートを示している。中間の磁性体グリーンシート90b、90c、及び90d上には、互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長する2本1組のストリップ導体91a及び91b、92a及び92b、並びに93a及び93bがそれぞれ設けられており、これらが中心導体を構成している。ストリップ導体91a及び91b、92a及び92b、並びに93a及び93bは、3つの放射方向に互いに120°の角度をなしてそれぞれ伸長している。ストリップ導体91a及び91b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍、ストリップ導体92a及び92b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍、並びにストリップ導体93a及び93b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍には、誘電体94、95及び96がそれぞれ設けられている。なお、図9の例では、ストリップ導体が六角形の2つの辺に平行な放射方向に伸長しているが、ストリップ導体が六角形の2つの辺に垂直な放射方向に伸長してもよいことは、自明である。
【0048】
誘電体94、95及び96は、本実施形態では、六角形に成形されている。図10からも明らかのように、これら誘電体94、95及び96は、磁気回転子を平面的に見た場合に、ストリップ導体91a及び91b、92a及び92b、並びに93a及び93bからなる中心導体で囲まれる領域(六角形となる)内に設けられており、中心導体で囲まれる全領域一杯に中心導体と重ならないように形成されている。
【0049】
本実施形態における磁気回転子は、六角柱形状に形成されており、その六角形の径(対辺間の距離)は4mm、厚さは1mmとなっている。800MHz近辺で動作させる場合、径は3〜6mm、厚さは0.5〜2mm程度に選ばれる。各ストリップ導体の幅及びストリップ導体間の間隔は、動作周波数、形状及び磁気回転子の寸法等によって異なるが、好ましくは、幅が0.3〜0.6mm、間隔が0.8〜1.6mm程度に選ばれる。
【0050】
次に本実施形態の非可逆回路素子の製造工程について説明する。
【0051】
まず、絶縁性磁性体グリーンシートを下記の方法で作成する。酸化イットリウム(Y2 O3 )と酸化鉄(Fe2 O3 )とをモル比で3:5の割合で混合する。混合して得た粉末を1200℃で仮焼する。得られた仮焼粉をボールミルで粉砕する。これに有機バインダ及び溶剤を添加して磁性体スラリーを作成する。得られたスラリーをドクターブレード法でグリーンシートに成形する。
【0052】
次いで、このようにして得た絶縁性磁性体グリーンシート上に、厚膜印刷法で、ストリップ導体91a及び91b、92a及び92b、並びに93a及び93bからなる中心導体を形成する。本実施形態では、導体材料として、非磁性のパラジウムペーストを使用している。次いで、誘電体ペーストを印刷することにより、誘電体94、95及び96を形成する。誘電体94、95及び96の形状及び形成位置は前述した通りである。このようにして導体パターン及び誘電体パターンを形成した中間のグリーンシート90b、90c、及び90d並びに上下のグリーンシート90a及び90eを積層して熱圧着し、積層体を得る。その後、所定の大きさの六角形に切断する。なお、図9には、六角形に切断した状態で各グリーンシートが示されているが、実際には積層体としてから切断が行われる。
【0053】
このような六角柱形状の積層体を、磁性体の焼結温度付近で焼成する。上述した材料の場合は、例えば1480℃で焼成する。磁性体材料に焼結助剤を添加することにより、焼成温度を下げることもできる。また、焼成は1回であってもよいし、複数回行ってもよい。この焼結によって各グリーンシートを構成する磁性体が連続状態となり一体となった焼成体(40、図4(B)参照)が得られる。
【0054】
次いで、図2の実施形態の場合と同様に、この焼成体(40)の上下面に銀ペーストを焼き付けることによってグランド電極を形成する。また、焼成体の側面の一部にも銀ペーストを焼き付けて端子電極(42)及びグランド電極(43)を形成する。この場合、六角柱形状の各角部分が交互に、端子電極(42)及びグランド電極(43)となるように構成することにより、ストリップ導体91a及び91b、92a及び92b、並びに93a及び93bの一方の端とこれら端子電極とを他方の端とこれらグランド電極とをそれぞれ電気的に接続する。以上の工程により、3端子型の磁気回転子が形成される。
【0055】
非可逆回路素子全体としては、このように構成された磁気回転子の各端子電極(42、図4(C)及び(D)参照)に、所望の周波数で共振するように選ばれた容量値の共振用キャパシタ(44)が電気的に接続されている。磁気回転子の上下には、この磁気回転子に直流磁界を印加するための励磁用永久磁石(45)及び(46)がそれぞれ取り付けられている。永久磁石(45)及び(46)並びにハウジングの組み付け構造等は図2の実施形態と全く同様である。
【0056】
本実施形態においては、誘電体94、95及び96が六角形に成形されている。しかしながら、これらを矩形又は円形の誘電体としてもよいし、その他の形状としてもよく、また、複数部分に分割された形状であってもよい。さらに、これら誘電体を中心導体の内縁と間隙を隔てるように形成してもよい。なお、3端子型の磁気回転子の場合、ストリップ導体に囲まれる領域が六角形となるので、誘電体の形状もストリップ導体に囲まれる全領域を覆うように六角形とした方が高周波磁束の通り抜けを防止する意味ではより有効となる。
【0057】
さらに、本実施形態においては、誘電体がストリップ導体(中心導体)に囲まれる領域内のみに設けられているが、少なくともこの領域内に設けられていれば、誘電体をその外側の領域にも付加的に設けてもよいことは明らかである。また、誘電体は、中心導体の存在する全ての層に形成されているが、1層以上の何層に設けても高周波磁束の通り抜けを防止効果が得られる。
【0058】
また、本実施形態においては、中心導体として、1端子当り2本のストリップ導体が設けられているが、1端子当り3本以上の互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長するストリップ導体を設けてもよい。さらに、3層構造とすることなく、図14の従来技術のようにヴィアホールを利用して中心導体を編み込んだ2層構造としてもよいし、4層以上の多層構造としてもよい。
【0059】
本実施形態の非可逆回路素子について、実際にサンプルを作成した。サンプルの寸法として、六角形の径(対辺間の距離)は4mm、厚さは1mmであり、ストリップ導体間の間隔はサンプルNo.5が1mm、サンプルNo.6が1.4mmであり、誘電体はストリップ導体の内縁と一杯に形成された六角形である。また、比較用に、サンプルNo.5及びサンプルNo.6から誘電体をそれぞれ除去した形で同様の条件で作成したサンプルNo.7及びサンプルNo.8を用意した。
【0060】
表2は、これらサンプルNo.5〜No.8について、アイソレーション(逆方向損失)を測定しその比帯域を計算した結果を示す。ただし、アイソレーションは、ヒューレットパッカード社製の8719ベクトルネットワークアナライザを使用して測定した。なお、比帯域とは、20dBのアイソレーション帯域をアイソレーションの中心周波数で除し、パーセントで表わした値である。同表から明らかのように、本実施形態によれば、アイソレーションの比帯域がかなり改善されている。
【0061】
【表2】
【0062】
図11は本発明のまたさらに他の実施形態である3端子型非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。図9の実施形態においては、中心導体として、1端子当り2本の互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長するストリップ導体を用いているが、この実施形態では、各端子毎に伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリットを有するストリップ導体で中心導体を構成している。
【0063】
即ち、図11において、110a〜110eは積層され一体的に焼成されることによって最終的に絶縁性磁性体110となる磁性体グリーンシートを示している。中間の磁性体グリーンシート110b、110c、及び110d上には、伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリット111a、112a及び113aをそれぞれ有するストリップ導体111、112及び113がそれぞれ設けられており、これらが中心導体を構成している。ストリップ導体111、112及び113は、3つの放射方向に互いに120°の角度をなしてそれぞれ伸長している。ストリップ導体111のスリット111a内のその伸長方向の中心部近傍、ストリップ導体112aのスリット112a内のその伸長方向の中心部近傍、及びストリップ導体113のスリット113a内のその伸長方向の中心部近傍には、誘電体114、115及び116がそれぞれ設けられている。なお、図11の例では、ストリップ導体が六角形の2つの辺に平行な放射方向に伸長しているが、ストリップ導体が六角形の2つの辺に垂直な放射方向に伸長してもよいことは、自明である。
【0064】
誘電体114、115及び116は、本実施形態では、六角形に成形されている。図10に示したものと同様に、これら誘電体114、115及び116は、磁気回転子を平面的に見た場合に、ストリップ導体111a、112a及び113aからなる中心導体で囲まれる領域(六角形となる)内に設けられており、中心導体で囲まれる全領域一杯に中心導体と重ならないように形成されている。
【0065】
図11の実施形態のその他の構成、製造方法、作用効果、変更態様は図9の実施形態の場合と全く同様である。
【0066】
図12は本発明のさらに他の実施形態である3端子型非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0067】
同図に示すように、本実施形態の非可逆回路素子も3端子型であり、従ってその磁気回転子は平面形状が正六角形となるように形成されている。しかしながら、均等な回転磁界が発生できる構造であれば、形状はかならずしも正六角形でなくともよく、六角形若しくはその他の多角形又は円形であってもよい。磁気回転子の平面形状を多角形とすれば、その側面に共振用キャパシタ等の回路素子を外付けした場合に、空いているスペースを有効に利用することができ、全体の寸法を小型に保つことが可能となる。
【0068】
図12において、120a〜120eは積層され一体的に焼成されることによって最終的に絶縁性磁性体120となる磁性体グリーンシートを示している。中間の磁性体グリーンシート120b、120c、及び120d上には、互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長する2本1組のストリップ導体121a及び121b、122a及び122b、並びに123a及び123bがそれぞれ設けられており、これらが中心導体を構成している。ストリップ導体121a及び121b、122a及び122b、並びに123a及び123bは、3つの放射方向に互いに120°の角度をなしてそれぞれ伸長している。ストリップ導体121a及び121b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍、ストリップ導体122a及び122b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍、並びにストリップ導体123a及び123b間のそれら導体の伸長方向の中心部近傍には、空隙124、125及び126がそれぞれ設けられている。なお、図12の例では、ストリップ導体が六角形の2つの辺に平行な放射方向に伸長しているが、ストリップ導体が六角形の2つの辺に垂直な放射方向に伸長してもよいことは、自明である。
【0069】
空隙124、125及び126は、本実施形態では、六角形に成形されている。図9の実施形態における図10に示した誘電体と同様に、これら空隙124、125及び126は、磁気回転子を平面的に見た場合に、ストリップ導体121a及び121b、122a及び122b、並びに123a及び123bからなる中心導体で囲まれる領域(六角形となる)内に設けられており、中心導体で囲まれる全領域一杯に中心導体と重ならないように形成されている。
【0070】
本実施形態における磁気回転子は、六角柱形状に形成されており、その六角形の径(対辺間の距離)は4mm、厚さは1mmとなっている。800MHz近辺で動作させる場合、径は3〜6mm、厚さは0.5〜2mm程度に選ばれる。各ストリップ導体の幅及びストリップ導体間の間隔は、動作周波数、形状及び磁気回転子の寸法等によって異なるが、好ましくは、幅が0.3〜0.6mm、間隔が0.8〜1.6mm程度に選ばれる。
【0071】
次に本実施形態の非可逆回路素子の製造工程について説明する。
【0072】
まず、絶縁性磁性体グリーンシートを下記の方法で作成する。酸化イットリウム(Y2 O3 )と酸化鉄(Fe2 O3 )とをモル比で3:5の割合で混合する。混合して得た粉末を1200℃で仮焼する。得られた仮焼粉をボールミルで粉砕する。これに有機バインダ及び溶剤を添加して磁性体スラリーを作成する。得られたスラリーをドクターブレード法でグリーンシートに成形する。
【0073】
次いで、このようにして得た絶縁性磁性体グリーンシート上に、厚膜印刷法で、ストリップ導体121a及び121b、122a及び122b、並びに123a及び123bからなる中心導体を形成する。本実施形態では、導体材料として、非磁性のパラジウムペーストを使用している。次いで、カーボンペーストを印刷することにより、焼成後に空隙124、125及び126となるカーボンペースト層を形成する。カーボンペーストパターン(空隙124、125及び126)の形状及び形成位置は前述した通りである。このようにして導体パターン及びカーボンペーストパターンを形成した中間のグリーンシート120b、120c、及び120d並びに上下のグリーンシート120a及び120eを積層して熱圧着し、積層体を得る。その後、所定の大きさの六角形に切断する。なお、図12には、六角形に切断した状態で各グリーンシートが示されているが、実際には積層体としてから切断が行われる。
【0074】
このような六角柱形状の積層体を、磁性体の焼結温度付近で焼成する。上述した材料の場合は、例えば1480℃で焼成する。磁性体材料に焼結助剤を添加することにより、焼成温度を下げることもできる。この焼成によってカーボンペースト層が消失し、その後にそのカーボンペーストパターンと同じ形状の空隙124、125及び126が形成される。また、焼成は1回であってもよいし、複数回行ってもよい。この焼結によって各グリーンシートを構成する磁性体が連続状態となり一体となった焼成体(40、図4(B)参照)が得られる。
【0075】
次いで、図2の実施形態の場合と同様に、この焼成体(40)の上下面に銀ペーストを焼き付けることによってグランド電極を形成する。また、焼成体の側面の一部にも銀ペーストを焼き付けて端子電極(42)及びグランド電極(43)を形成する。この場合、六角柱形状の各角部分が交互に、端子電極(42)及びグランド電極(43)となるように構成することにより、ストリップ導体121a及び121b、122a及び122b、並びに123a及び123bの一方の端とこれら端子電極とを他方の端とこれらグランド電極とをそれぞれ電気的に接続する。以上の工程により、3端子型の磁気回転子が形成される。
【0076】
非可逆回路素子全体としては、このように構成された磁気回転子の各端子電極(42、図4(C)及び(D)参照)に、所望の周波数で共振するように選ばれた容量値の共振用キャパシタ(44)が電気的に接続されている。磁気回転子の上下には、この磁気回転子に直流磁界を印加するための励磁用永久磁石(45)及び(46)がそれぞれ取り付けられている。永久磁石(45)及び(46)並びにハウジングの組み付け構造等は図2の実施形態と全く同様である。
【0077】
本実施形態においては、空隙124、125及び126が六角形に成形されている。しかしながら、これらを矩形又は円形の空隙としてもよいし、その他の形状としてもよく、また、複数部分に分割された空隙形状であってもよい。さらに、これら空隙を中心導体の内縁と間隙を隔てて形成してもよい。なお、3端子型の磁気回転子の場合、ストリップ導体に囲まれる領域が六角形となるので、空隙の形状もストリップ導体に囲まれる全領域を占めるように六角形とした方が高周波磁束の通り抜けを防止する意味ではより有効となる。
【0078】
さらに、本実施形態においては、空隙がストリップ導体(中心導体)に囲まれる領域内のみに設けられているが、少なくともこの領域内に設けられていれば、空隙をその外側の領域にも付加的に設けてもよいことは明らかである。また、空隙は、中心導体の存在する全ての層に形成されているが、1層以上の何層に設けても高周波磁束の通り抜けを防止効果が得られる。
【0079】
また、本実施形態においては、中心導体として、1端子当り2本のストリップ導体が設けられているが、1端子当り3本以上の互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長するストリップ導体を設けてもよい。さらに、3層構造とすることなく、図14の従来技術のようにヴィアホールを利用して中心導体を編み込んだ2層構造としてもよいし、4層以上の多層構造としてもよい。
【0080】
本実施形態の非可逆回路素子について、実際にサンプルを作成した。サンプルの寸法として、六角形の径(対辺間の距離)は4mm、厚さは1mmであり、ストリップ導体間の間隔はサンプルNo.9が1mm、サンプルNo.10が1.4mmであり、空隙はストリップ導体の内縁と一杯に形成された六角形である。また、比較用に、サンプルNo.9及びサンプルNo.10から空隙をそれぞれ除去した形で同様の条件で作成したサンプルNo.11及びサンプルNo.12を用意した。
【0081】
表3は、これらサンプルNo.9〜No.12について、アイソレーション(逆方向損失)を測定しその比帯域を計算した結果を示す。ただし、アイソレーションは、ヒューレットパッカード社製の8719ベクトルネットワークアナライザを使用して測定した。なお、比帯域とは、20dBのアイソレーション帯域をアイソレーションの中心周波数で除し、パーセントで表わした値である。同表から明らかのように、本実施形態によれば、アイソレーションの比帯域がかなり改善されている。
【0082】
【表3】
【0083】
図13は本発明のさらに他の実施形態である3端子型非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。図12の実施形態においては、中心導体として、1端子当り2本の互いに間隙を置いてほぼ平行に伸長するストリップ導体を用いているが、この実施形態では、各端子毎に伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリットを有するストリップ導体で中心導体を構成している。
【0084】
即ち、図13において、130a〜130eは積層され一体的に焼成されることによって最終的に絶縁性磁性体130となる磁性体グリーンシートを示している。中間の磁性体グリーンシート130b、130c、及び130d上には、伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリット131a、132a及び133aをそれぞれ有するストリップ導体131、132及び133がそれぞれ設けられており、これらが中心導体を構成している。ストリップ導体131、132及び133は、3つの放射方向に互いに120°の角度をなしてそれぞれ伸長している。ストリップ導体131のスリット131a内のその伸長方向の中心部近傍、ストリップ導体132aのスリット132a内のその伸長方向の中心部近傍、及びストリップ導体133のスリット133a内のその伸長方向の中心部近傍には、空隙134、135及び136がそれぞれ設けられている。なお、図13の例では、ストリップ導体が六角形の2つの辺に平行な放射方向に伸長しているが、ストリップ導体が六角形の2つの辺に垂直な放射方向に伸長してもよいことは、自明である。
【0085】
空隙134、135及び136は、本実施形態では、六角形に成形されている。図10に示したものと同様に、これら空隙134、135及び136は、磁気回転子を平面的に見た場合に、ストリップ導体131a、132a及び133aからなる中心導体で囲まれる領域(六角形となる)内に設けられており、中心導体で囲まれる全領域一杯に中心導体と重ならないように形成されている。
【0086】
図13の実施形態のその他の構成、製造方法、作用効果、変更態様は図9の実施形態の場合と全く同様である。
【0087】
また、以上述べた実施形態は3端子型非可逆回路素子に関するものであるが、本発明はそれ以上の数の端子を有する非可逆回路素子についても適用可能である。
【0088】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0089】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明では、絶縁性磁性体と、この絶縁性磁性体内に各端子毎に設けられた中心導体とを備えた磁気回転子を含む非可逆回路素子であって、各端子毎の中心導体の少なくとも一部に、互いに間隙を置いて伸長する複数のストリップ部分が設けられており、絶縁性磁性体内の上述のストリップ部分に囲まれる領域内に非磁性の部分が設けられている。その結果、中心導体の形成する高周波磁束が絶縁性磁性体内に設けられた非磁性の部分を通過することができなくなる。このため、高周波磁束が磁性体内全体に一様に分布することとなり、周波数帯域が大幅に広帯域化する。周波数帯域が広がれば、非可逆回路素子の動作周波数の調整を簡素化又は調整不要とすることができるのみならず、材料等の温度特性に基づく動作周波数変化を吸収することができる。その結果、製造歩留を大幅に改善することができ、製造コストの大幅な低減化を図ることができる。整理番号を98P93439に変更します。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非可逆回路素子及び従来の非可逆回路素子の基本構造を比較説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態である3端子非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】図2の実施形態における非磁性の導体部分を説明する平面図である。
【図4】図2の実施形態の磁気回転子の製造工程の一部を説明する図である。
【図5】ハウジング自体の構造並びに磁気回転子に励磁用永久磁石及びハウジングを組み付けた非可逆回路素子の構造を示す分解斜視図及び斜視図である。
【図6】図2の実施形態における非磁性の導体部分の変更態様を説明する平面図である。
【図7】図2の実施形態における非磁性の導体の部分の他の変更態様を説明する平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態である3端子非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態である3端子非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図10】図9の実施形態における誘電体の部分の構成を示す図である。
【図11】本発明のまたさらに他の実施形態である3端子非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態である3端子非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態である3端子非可逆回路素子の磁気回転子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図14】従来の集中定数型非可逆回路素子における磁気回転子の分解斜視図である。
【図15】従来の集中定数型非可逆回路素子の組立ての様子を示す分解斜視図である。
【図16】回転高周波磁界に対する磁性体の透磁率を示す特性図である。
【符号の説明】
10、13、20、80 絶縁性磁性体
11a、11b、14a、14b 中心導体
12、12a、16 高周波磁束
15 非磁性の部分
20a〜20e、80a〜80e、90a〜90e、110a〜110e、120a〜120e、130a〜130e、 磁性体グリーンシート
21a、21b、22a、22b、23a、23b、81、82、83、91a、91b、92a、92b、93a、93b、111、112、113、121a、121b、122a、122b、123a、123b、131、132、133 ストリップ導体
24、25、26、24′、25′、26′、24″、25″、26、84、85、86″ 非磁性の導体
40 焼成体
41、43 グランド電極
42 端子電極
44 共振用キャパシタ
45、46 永久磁石
81a、82a、83a、111a、112a、113a、131a、132a、133a スリット
94、95、96、114、115、116 誘電体
124、125、126、134、135、136 空隙
Claims (8)
- 絶縁性磁性体と、該絶縁性磁性体内に各端子毎に設けられた中心導体とを備えた磁気回転子を含む非可逆回路素子であって、各端子毎の前記中心導体の少なくとも一部に、互いに間隙を置いて伸長する複数のストリップ部分が設けられており、前記絶縁性磁性体内の前記ストリップ部分に囲まれる領域内に非磁性の部分を設けたことを特徴とする非可逆回路素子。
- 前記非磁性の部分が少なくとも当該非可逆回路素子の使用温度においては非磁性を示す材料からなることを特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
- 前記非磁性を示す材料が少なくとも当該非可逆回路素子の使用温度においては非磁性を示す導体であり、該導体と前記中心導体とが電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項2に記載の非可逆回路素子。
- 前記非磁性を示す材料が少なくとも当該非可逆回路素子の使用温度においては非磁性を示す誘導体であることを特徴とする請求項2に記載の非可逆回路素子。
- 前記非磁性の部分が空隙であることを特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
- 各端子毎の前記中心導体が、互いに間隙を置いて伸長する複数のストリップ導体であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の非可逆回路素子。
- 各端子毎の前記中心導体が、伸長方向に沿って伸びる少なくとも1つのスリットを有するストリップ導体であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の非可逆回路素子。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気回転子と、該磁気回転子の側面に設けられており前記中心導体の一端に電気的に接続された複数の端子電極と、該端子電極に結合された回路素子と、前記磁気回転子に直流磁界を印加するための励起用永久磁石とを備えたことを特徴とする非可逆回路素子。
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