JP3567449B2 - 流体分離装置用ポリウレタン系二成分型接着剤を用いた接着方法 - Google Patents

流体分離装置用ポリウレタン系二成分型接着剤を用いた接着方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体分離装置用ポリウレタン系二成分型接着剤に関する。更に詳しくは、人工腎臓、人工肺、人工心肺、人工肝臓、血漿分離装置、家庭用・工業用水処理装置等の医療用・工業用流体分離装置の主要な機能を果たす積層型、コイル型あるいは中空糸型の分離膜を結束し、かつ分離した流体が再び混合しないために使用されている結束材、シール材と、それが固定される流体分離装置外筒との接合面に使用する流体分離装置用ポリウレタン系二成分型接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人工腎臓、人工肺、人工心肺、人工肝臓、血漿分離装置、家庭用・工業用水処理装置等の流体分離装置において分離膜は最も主要な部分であるが、その膜を固定し、かつ分離前後の流体が再度混入しないような良好なシール性を持つ結束材も重要である。このような結束材にはエポキシ樹脂等が使用されてきたが、成型の容易さ、良好な接着性、適度な硬度、抗血栓性、安全性等の点から、現在ではポリウレタン系の結束材が主流となっている。
【0004】
接着性を改善する方法として、接着剤の使用が挙げられる。ポリウレタン樹脂は溶媒へ溶解することにより接着剤として使用できる。さらにその接着強度を向上させるためにポリウレタン樹脂溶液へイソシアネート基(NCO基)含有化合物を混合して使用する方法も一般的に行われている。NCO基含有化合物としては、4,4´−MDIやTDIのウレタン変性体、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(以下ポリメリックMDIと略す)、HDIのウレタン変性体、イソシアヌレート変性体及びビュレット変性体等が使用されていた。しかしながら、これら硬化剤による接着性改善は脂肪族系イソシアネートからなるポリウレタン結束材に対しては効果がなく、また接着そのものが不可能となる現象も認められた。さらに、MDI系やTDI系の硬化剤を使用した接着剤では、脂肪族ポリウレタン系結束材の利点である低溶出物性に対して悪影響が出る可能性も考えられた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は従来の欠点を改良するため鋭意研究検討を重ねた結果、ポリウレタン樹脂からなる接着剤として、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルもしくはポリメチルメタクリレートから選ばれた少なくとも1種類を分子内に結合した構造を有するポリウレタン樹脂を使用し、硬化剤としてウレトジオン二量体及びイソシアヌレート環状三量体を含むHDI変性体を使用することにより、脂肪族ポリウレタン系結束材と各種プラスチック及び金属との接着性が向上し、かつ脂肪族ポリウレタン系結束材の特長である低溶出物性に対しても影響を与えないことに加え、一般的なMDIやTDIからなるポリウレタン系樹脂に対しても強固な接着性を示すことを見出だし、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、原料ポリイソシアネートの一部または全部が脂肪族及び/または脂環族イソシアネートであるポリウレタン樹脂と、ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂製ハウジングまたは金属製ハウジングとの接着方法において、用いられる接着剤が下記に示されるポリウレタン樹脂と硬化剤とからなる流体分離装置用ポリウレタン系二成分型接着剤であること、を特徴とする前記接着方法である。
ポリウレタン樹脂:分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートと、グラフトポリオールを10〜80重量%有する数平均分子量が500〜20000で分子内に少なくとも2個の活性水素基を有する化合物との反応から得られるポリウレタン樹脂。
硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン二量体及びイソシアヌレート環状三量体を含有するヘキサメチレンジイソシアネート変性体。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂は、NCO基と活性水素基の反応から得られるもので、当該樹脂を得るためのNCO基を有する化合物としては、例えばTDI、MDI、パラフェニレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4',4″−トリイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、HDI、1,10−デカンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3および1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略す)等の脂肪族及び脂環族ジイソシアネート、あるいはこれらイソシアネートの一部をビュレット、アロハネート、ウレトジオン、ウレトンイミン、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものが挙げられる。これらは1種類もしくは2種類以上を組み合わせて選択、使用することができる。好ましい化合物としては、TDI、MDI、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、HDI、1,10−デカンジイソシアネート等である。
【0008】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂を得るための数平均分子量が500〜20000で分子内に少なくとも2個の活性水素基を含有する化合物としては、ポリエステル系グリコール、ポリラクトン系グリコール、ヒマシ油系ポリオール、グラフトポリオールがあり、本発明においてはグラフトポリオールが10〜80重量%使用されることが好ましい。その他の化合物は単独もしくは2種類以上の組合わせとして使用される。
【0009】
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリカルボン酸(脂肪族飽和もしくは不飽和ポリカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2量化リノール酸及び/または芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)と低分子グリコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール)との縮合重合により得られるポリオールが挙げられる。ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は200〜5000で、好ましくは500〜3000である。
【0010】
ポリラクトン系ポリオールとしては、グリコール類やトリオール類の重合開始剤に、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等を有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物化物等の触媒の存在下で付加重合させたポリオールが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールの数平均分子量は200〜5000で、好ましくは500〜3000である。
【0011】
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油及びヒマシ油脂肪酸とポリオール(前記低分子ポリオール及び/またはポリエーテルポリオール)との線状または分岐状ポリエステル、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールプロパンとのモノ、ジまたはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジまたはトリエステル等が挙げられる。ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量は200〜3000で、好ましくは500〜2000である。
【0012】
グラフトポリオールとしては、炭素数2〜10の2価グリコールの主鎖にポリスチレン、ポリアクリロニトリルもしくはポリメチルメタクリレートから選ばれた少なくとも1種類をグラフト結合した数平均分子量が5000〜20000の化合物が挙げられる。特に好ましい分子量は6000〜10000である。グラフトポリオールは、全ポリオールに対して10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%使用される。グラフトポリオールを使用することでポリウレタン系樹脂とその他のプラスチック材料との接着性を向上させる。グラフトポリオールが10重量%以下の場合は接着性の改善効果がない。また、80重量%以上の場合は高粘度化に伴う相溶性の低下や得られる接着層が堅くなる等の問題が生じる。
【0013】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂を得るには、前記したNCO基含有化合物と活性水素基含有化合物とを、NCO基当量と活性水素基当量との比率が0.80〜1.05、好ましくは0.90〜1.00の範囲で、有機溶媒、例えばメチレンクロライド、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、アノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド等のNCO基と反応せず、かつNCO基含有化合物と活性水素基含有化合物に対する溶解性が良好な溶媒に溶解させ、反応させる。あるいは、NCO基含有化合物と活性水素基含有化合物とを前記の比率で固相反応させ、細かく粉砕した後、前記の有機溶媒に溶解させてもよい。得られるポリウレタン樹脂溶液の固形分は5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%である。5重量%以下の場合、接着するために十分な厚さの被膜が得られない。80重量%以上では高粘度となり、硬化剤との混合が不可能となる。
【0014】
本発明に使用する硬化剤としてのHDI変性体は、ウレトジオン二量体とイソシアヌレート環状三量体を含有しているものを用いる。好ましくは分子内に2個の活性水素基と1個以上の炭化水素基を有しかつ1個以上の炭化水素基の炭素数の合計が4〜35でありそのうち分岐している1個以上の炭化水素基の炭素数の合計が2〜33である二価アルコールとの反応により得られるウレタン構造を含有する。イソシアヌレート環状三量体にウレトジオン二量体を導入することで低粘度化が実現でき、良好な乾燥性に加えポリウレタン樹脂との相溶性が向上する。また、ウレトジオン二量体の構造的要因により、イソシアヌレート環状三量体単体を硬化剤とした場合と比較して接着性が向上する。これらの特長を発現するには、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでの示差屈折計検出によって求められるウレトジオン基を有するHDI二量体の面積百分率が15〜60%及びイソシアヌレート基を有するHDI三量体の面積百分率が60〜20%各々含有することを特徴としている。好ましくは二量体の面積百分率が20〜55%及び三量体の面積百分率が50〜23%である。ウレトジオン二量体が15%以下の場合、接着性の向上は期待されない。また、イソシアヌレート環状三量体が60%以上の場合高粘度化してしまい、ポリウレタン樹脂との相溶性が低下する。
【0015】
本発明における前記の二価アルコールとしては、2個の水酸基を最短で直線的に結ぶ二価アルコール分子骨格に炭化水素基が結合した構造(すなわち分岐炭化水素基)を有する化合物である。分岐構造を2以上有するかまたは長い分岐炭化水素基を有する二価アルコールが好ましい。特に、数平均分子量100〜1000の二価アルコールが好ましい。例えば、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオン酸−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルエステル、水素化ビスフェノールA、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ウレタン構造の導入量は、原料HDIの全NCO基に対して0.5〜15当量%であることが必要である。ウレタン化率が0.5モル%未満では乾燥性の不足、溶剤との相溶性不良、及び合成時に部分ゲル化物を生ずる等の問題点が生じてくる。ウレタン化率が15当量%より大きいと耐候性が劣ることに加え、イソシアヌレート構造とウレトジオン構造による接着性の改善効果が得られない。
【0016】
本発明の硬化剤として使用するHDI変性体は、ウレトジオン二量体とイソシアヌレート環状三量体とを同時に生成する反応を用いることで得ることができる。二量化及び三量化反応を同時に効果的に進行させる触媒としては、トリエチルフォスフィン、ジブチルエチルフォスフィン、トリ−n−プロピルフォスフィン、トリイソプロピルフォスフィン、トリ−n−ブチルフォスフィン、トリイソブチルフォスフィン、トリ第3級ブチルフォスフィン、トリアミルフォスフィン、トリオクチルフォスフィン、トリベンジルフォスフィン、ベンジルメチルフォスフィン等の有機リン系化合物等が挙げられる。
【0017】
さらに、本発明では接着剤の硬化性を速めるために、前記のイソシアヌレート環状三量体とウレトジオン二量体を含むHDI変性体にHDIのイソシアヌレート体を組み合わせて使用することもできる。HDIのイソシアヌレート体は、HDI単独もしくはHDIのNCO基を一部ポリオール付加したHDIウレタン化物を原料として、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸及びこれらの分岐脂肪酸のカリウムまたはナトリウム塩を触媒として使用し、必要に応じて助触媒も併用し、100℃以下で反応を行い、イソシアヌレート化することで得られる。このHDIイソシアヌレート体をイソシアヌレート環状三量体とウレトジオン二量体を含むHDI変性体と組み合わせる場合、ウレトジオン二量体が面積百分率15〜60%及びイソシアヌレート環状三量体が面積百分率20〜60%となるような比率で混合使用する。イソシアヌレート環状三量体が60%を越えると粘度が高くなり作業性が劣るようになる。また接着力も低下する。
【0018】
本発明のポリウレタン樹脂と硬化剤とは、該樹脂/硬化剤の重量比で100/1〜100/50で混合使用される。好ましくは100/5〜100/40である。この範囲を外れると接着剤としての効果が得られないか、乾燥性が非常に遅くなる等の問題が生じ実用に適さない。反応は室温で進行し、そのゲル化時間は30分〜1時間である。本発明のポリウレタン系二成分型接着剤は、前記の比率で混合後、接着される対象物の接合面に塗布して使用される。その厚さは乾燥後の膜厚で20〜200μm、好ましくは50〜150μmとなるように塗布するのが望ましい。本発明のポリウレタン樹脂と硬化剤の混合溶液の粘度が高い、あるいは固形分比率が高い場合は、イソシアネートと反応しない既存の有機溶剤、例えばメチレンクロライド、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、アノンジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド等を適宜加えてもよい。ポリウレタン樹脂合成時に使用した有機溶媒と同一の溶媒が好ましい。
【0019】
本発明に用いられるポリウレタン系二成分型接着剤は、医療用・工業用流体分離装置中の分離膜を結束、固定するために用いられるポリウレタン系結束材と各種プラスチック、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、あるいは各種金属とを接合するために使用される。また、その良好な接着性から、ポリウレタン系結束材に限らず、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱硬化性ポリウレタンエラストマー、常温硬化型ポリウレタンエラストマー、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォームと、前記の各種プラスチック間の接着、さらには上記ポリウレタン樹脂間、各種プラスチック間各種金属間の接着にも使用することができる。これら接着の対象物の形状は、フィルム、シート及びブロック状のいずれでもよい。ポリウレタン系樹脂と各種プラスチック及び金属とを接着する場合、本発明のポリウレタン系二成分型接着剤を塗布、乾燥したプラスチックおよび金属にポリウレタン系樹脂を注入することで一体成型を行い接着させる。あるいは、成型したポリウレタン系樹脂と各種プラスチック及び金属の表面に本発明のポリウレタン系二成分型接着剤を塗布、乾燥後、対象物を密着させて接着させてもよい。
【0020】
本発明に用いられるポリウレタン系二成分型接着剤は、原料ポリイソシアネートの一部または全部が脂肪族及び/または脂環族イソシアネートであるポリウレタン樹脂と、ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂製ハウジングまたは各種金属製ハウジングとの接着に有用である。前記ポリウレタン樹脂は、原料ポリイソシアネートとして、HDIのような脂肪族ポリイソシアネートやIPDIのような脂環族ポリイソシアネートを原料ポリイソシアネート中NCO基基準で1モル%以上含有しているものであり、この割合が10モル%を超えたものでは、本発明に特に有用である。被着体の合成樹脂製ハウジングには、特に限定はないが、本発明は従来の接着剤では、接着が困難であったポリカーボネート製、ポリスチレン製、ポリメチルメタクリレート製ハウジング等に有用である。ハウジングの形状としては、樹脂の収縮への追随性が小さい箱型、円筒形のものに有用である。
【0021】
本発明に用いられるポリウレタン系二成分型接着剤は、中空繊維を用いた流体分離装置の繊維端部の結束材及び電気用シール材の接着剤として用いることができる。医療用流体分離装置の製造方法は遠心成型法を用いるのが一般的である。内径200〜300μmの中空繊維を1〜2万本束ね、ハウジングとなる透明筒型容器に本発明の接着剤を乾燥後の膜厚が30〜90μmとなるように塗布し、該容器に差し入れて、両端をキャップで塞いだのち、回転台上に固定する。回転台を高速で回転させ、主剤及び硬化剤を注型機により混合した樹脂液をハウジングの流体出入口よりチューブを介して容器内部へ流し込む。接着剤は遠心力により容器両端へ押し付けられ、中空糸端部と容器が接着される。遠心成型法は、特公昭57−6363号公報に記載されている方法がある。これらの具体的な用途の例としては、血漿分離器、人工肺、人工腎臓、家庭用・工業用水処理装置等が挙げられる。また、優れた流動性を有することから、電気用シール材として使用することもできる。
【0022】
本発明に用いられるポリウレタン系二成分型接着剤は、人工腎臓、人工肺、人工心肺、人工肝臓、血漿分離装置、家庭用・工業用水処理装置等の医療用・工業用流体分離装置の主要な機能を果たす積層型、コイル型あるいは中空糸型の分離膜を結束し、かつ分離した流体が再び混合しないために使用されている結束材、シール材と、それが固定される流体分離装置外筒との接合面に使用することで、強固な接着性と十分なシール性とを与え、かつ医療用途・水処理用途において重要項目である安全性に何等影響を与えない。
【0023】
【発明の効果】
本発明に用いられるポリウレタン系二成分型接着剤は、医療用・工業用流体分離装置中の分離膜を結束、固定するために用いられるポリウレタン系結束材とその他のプラスチック材料あるいは金属との接合面もしくはポリウレタン系樹脂間、プラスチック材料間あるいは金属との接合面に使用することで強固な接着性と良好なシール性を与えることができる。その場合、接着性に劣る脂肪族ポリウレタン系エラストマーに対しても良好な接着性を与えるため、被着体の組成に係わらず使用できる。この特長により、各種工業用途での使用が可能である。また、低溶出物性であるため、医療用途でも使用することができる。
【0024】
【実施例】
以下に、本発明を更に実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの例になんら限定されるものではない。実施例及び比較例における「部」及び「%」は、特に言及しない限り全て「重量部」及び「重量%」である。
【0025】
製造例1〜5
〔硬化剤として使用するHDI変性体(B)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた反応器に、表1に示すHDI(日本ポリウレタン工業製、NCO含量=49.9%、)と二価アルコール及び触媒を添加し、50〜60℃で目標のNCO含量に達するまで反応後、停止剤を加えて反応を停止させ、淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを薄膜蒸留により除去し、ウレトジオン二量体及びイソシアヌレート環状三量体を含有するHDI変性体(B)を得た。結果を表1に示す。二量体及び三量体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでの示差屈折計検出によって求められるウレトジオン基を有するHDI二量体の面積百分率及びイソシアヌレート環を有するHDI三量体の面積百分率である。
【0026】
【表1】
Figure 0003567449
【0027】
表1の注
二価アルコール(1):ネオペンチルグリコール
二価アルコール(2):2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール
触媒 :トリブチルフォスフィン
停止剤(1) :p−トルエンスルホン酸メチル
停止剤(2) :リン酸
【0028】
製造例6、7
〔硬化剤として併用するHDIのイソシアヌレート体(C)の製造〕
製造例1と同様の反応器に、表2に示すHDIと触媒及び助触媒を加え、70℃で7時間反応後、停止剤を加えて反応を停止させ、淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを薄膜蒸留により除去し、HDIのイソシアヌレート体(C)を得た。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
Figure 0003567449
【0030】
表2の注
触媒(1):プロピオン酸カリウム
触媒(2):カプリン酸カリウム
助触媒 :フェノール
停止剤 :リン酸
【0031】
製造例8〜12
〔ポリウレタン樹脂(A)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた反応器に、表3に示すMDI(ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業製、NCO含量=33.5%)、グラフト化ポリオール、その他のポリオール類、及び溶剤を仕込み、58〜60℃で5時間反応させてポリウレタン樹脂(A)の固形分15%溶液を得た。結果を表3に示す。なお、比較のためグラフトポリオールを含まないポリウレタン樹脂も製造した。
【0032】
【表3】
Figure 0003567449
【0033】
表3の注
グラフトポリオール(1):ポリスチレングラフトポリオール、数平均分子量8000
グラフトポリオール(2):ポリメチルメタクリレートグラフトポリオール、数平均分子量8000
ポリオール(1):ポリヘキサンアジペート、数平均分子量2500
ポリオール(2):ポリブチレンアジペート、数平均分子量2500
ポリオール(3):ポリヘキサンイソフタレート、数平均分子量1000
短鎖グリコール :1,4−ブタンジオール
溶剤(1) :メチレンクロライド
溶剤(2) :メチルエチルケトン
【0034】
実施例1〜5
表4に示す割合でポリウレタン樹脂(A)とHDI変性体(B)を用いて二成分型接着剤とした。各成分を混合した後、内径44mm、全長20mmの表4に示す材質のリング状被着体の内壁に、乾燥膜厚が約80μmとなるように塗布し、室温で1日放置した。この被着体内部にMDIまたはHDIから得られる注型エラストマーを用いて注型した。70℃で16時間硬化後、引張り試験機を用いて内部のポリウレタン樹脂と被着体との接合面に剪断応力を加え、内部のポリウレタン樹脂が剥離する際の最大応力より接着強度を算出した。試験結果を表4に示す。また、表4に示す接着剤を内径46mm、全長300mmのポリカーボネートパイプの端部に、幅が20mm、乾燥膜厚が約80μmとなるように塗布し、室温で24時間放置した。このパイプへ、グリセリン含有量70%、直径250μmの中空糸を1万本束ねたものを挿入し、脂肪族ポリウレタン系結束剤を用いて樹脂温度40℃、成形温度40℃で遠心成形を行った。40℃で3日間養生後、接着部分の外観観察、及び接着部の溶出試験を行った。脂肪族ポリウレタン系結束剤は、主剤(ポリウレタン樹脂)と硬化剤とから構成される。主剤は、製造例1と同様の反応器にMDI477部とヒマシ油系ポリオール(水酸基価163mgKOH/g)203部とを仕込んで反応させて得られるNCO含量が15%のプレポリマーにHDIのイソシアヌレート体を500部添加、混合することで得られる。硬化剤は、ヒマシ油系ポリオール(水酸基価163mgKOH/g)650部とN,N,N′,N′−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン350部とを混合することで得られる。溶出試験は、透析型人工腎臓装置承認基準V−4(中空糸接着部分の溶出試験)に準じて行った。切り出され1〜2cm3 に細断された中空糸接着部40gに対し蒸留水200gを加え40℃で2時間震盪し、得られた抽出液の50倍希釈溶液の280〜240nmの紫外領域における吸光度を測定して評価した。この場合、吸光度は0.05以下でなければならない。
【0035】
【表4】
Figure 0003567449
【0036】
表4の注
A/B混合比:固形分換算による重量比
接着強度=最大応力/接着面積
被着体
PC :ポリカーボネート
PS :ポリスチレン
PMMA:ポリメチルメタクリレート
Al :アルミニウム
注型エラストマー
PU1:MDI/ポリブチレンアジペート(数平均分子量1000)/トリメチロールプロパン/1,4−ブタンジオールからなるポリウレタンエラストマー
PU2:HDI/ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1000)/4,4´−ジアミノ−3,3´−ジクロロジフェニルメタンからなるポリウレタンエラストマー
外観観察
有り:遠心成形テストサンプルにおいて剥離が認められたもの
無し:遠心成形テストサンプルにおいて剥離が認められなかったもの
UV吸光度:280〜240nm領域での最大吸光度
【0037】
実施例6〜10
ポリウレタン樹脂(A)に対し、HDI変性体(B)及びHDIのイソシアヌレート体(C)を表5に示す割合で用い、二成分型接着剤とした。表5に示す割合でA、B及びCを混合し、表5に示した被着体を使用して実施例1と同様な操作により試験片を作成し、同様な方法により接着性を評価した。試験結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
Figure 0003567449
【0039】
表5の注
A/B/C混合比:固形分換算による重量比
【0040】
比較例1〜5
表6に示すように、ポリウレタン樹脂のみを接着剤として使用した。内径44mm、全長20mmの表6に示す材質のリング状被着体の内壁に、乾燥膜厚が約80μmとなるように塗布し、室温で24時間放置した。この被着体内部にMDIまたはHDIから得られる注型エラストマーを用いて注型した。70℃で16時間硬化後、引張り試験機を用いて内部のポリウレタン樹脂と被着体との接合面に剪断応力を加え、内部のポリウレタン樹脂が剥離する際の最大応力より接着強度を算出した。試験結果を表6に示す。また、実施例1と同様に遠心成形を行い、外観観察と溶出試験により評価した。試験結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
Figure 0003567449
【0042】
比較例6〜10
表7に示すように、ポリウレタン樹脂(A)に各種硬化剤を使用した。表7に示す割合で混合後、表7に示す被着体を使用して比較例1と同様な操作により試験片を作成し、同様な方法により接着性を評価した。試験結果を表7に示す。
【0043】
【表7】
Figure 0003567449
【0044】
表7の注
硬化剤
MR−200:ポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業製、NCO含量=31.1%)
C−L :TDIの多官能グリコール変性体(日本ポリウレタン工業製、固形分=75%、NCO含量=13.2%)
A/硬化剤混合比:固形分換算による重量比
【0045】
比較例11〜13
表8に示すように、ポリウレタン樹脂としてグラフトポリオールを含まないポリウレタン樹脂(A;製造例11、12)を使用し、これにHDI変性体(B)を組み合わせて二成分型接着剤とした。表8に示す割合でポリウレタン樹脂およびHDI変性体を混合後、表8に示す被着体を使用して比較例1と同様の操作により試験片を作成し、同様な方法により接着性を評価した。試験結果を表8に示す。
【0046】
【表8】
Figure 0003567449

Claims (1)

  1. 原料ポリイソシアネートの一部または全部が脂肪族及び/または脂環族イソシアネートであるポリウレタン樹脂と、ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂製ハウジングまたは金属製ハウジングとの接着方法において、用いられる接着剤が下記に示されるポリウレタン樹脂と硬化剤とからなる流体分離装置用ポリウレタン系二成分型接着剤であること、を特徴とする前記接着方法。
    ポリウレタン樹脂:分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートと、グラフトポリオールを10〜80重量%有する数平均分子量が500〜20000で分子内に少なくとも2個の活性水素基を有する化合物との反応から得られるポリウレタン樹脂。
    硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン二量体及びイソシアヌレート環状三量体を含有するヘキサメチレンジイソシアネート変性体。
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