JP3566509B2 - 二次電池用電極板及びその製造方法 - Google Patents

二次電池用電極板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は二次電池用電極板及びその製造方法に係り、特にデンドライトの生成を抑止して、充放電サイクル寿命や安全性に優れたリチウム二次電池を実現することができる二次電池用電極板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯性を備えた機器の需要が高まり、乾電池等の小型電池はその電源として重要性を増している。このような一般用の小型電池のうち、マンガン電池やアルカリマンガン電池等を代表例とする一次電池は再利用することができないため、使用後は廃棄されている。従って、資源の有効利用の観点からは、これらの一次電池よりも充電再利用が可能な二次電池の方が優れているといえる。
【0003】
従来、携帯機器に使用する二次電池としては、総合的に見た性能が高いことから、ニッケルカドミウム電池及びニッケル水素電池が用いられてきた。しかし、二次電池は、一般に一次電池に比較して単位体積あたりの電気容量が小さいという欠点があり、その高容量化を図ることが電池開発における永続的な課題となっている。このような二次電池の高容量密度化の要求に答えるものとして、従来からリチウム二次電池が研究されている。
【0004】
リチウム二次電池は、従来主に用いられてきたニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比較して体積当たりの電気容量が大きく、しかも軽いという特徴があるため、実用化されれば携帯機器用の電池として非常に適している。こうしたリチウム二次電池にはいくつかの種類があるが、負極活物質に炭素系材料を用い、種々の正極活物質との間においてリチウムイオンの吸蔵、放出を行わせるリチウムイオンタイプと総称されるリチウム二次電池は、既に実用化され広く使用されている。
【0005】
更に、リチウム二次電池の高容量化を図るために、負極活物質として炭素材料に代えてリチウム金属を使用する方法があり、この構成によれば最も高容量の部類の二次電池が実現する。実際に負極活物質としてリチウム金属を使用したリチウム二次電池は各種試作されており、リチウムイオンタイプの二次電池よりも高い容量密度をもつことが示されている。
【0006】
しかるに、この種の電池が未だ実用化されるに至らないのは、主に充放電サイクルを繰り返した際に負極表面に生成されるリチウムのデンドライト(樹枝状結晶)に由来する問題が依然として解決されていないためである。
【0007】
即ち、負極表面にデンドライトが生成されると、その分リチウム金属が充放電に寄与し難くなるため、電池の容量が低下し、サイクル寿命が短くなるという問題がある。また、成長したデンドライトにより正負極間が電池内部において短絡し、電池の発煙や発火等を招くことがあるため、安全性に欠けるという最大の問題がある。そして、1回の充放電により僅かでもデンドライトが生じるような電池系であると、このような異常の発生を完全になくすことはできないことから、デンドライトの生成を防止することが、リチウム二次電池の開発における大きな課題となっている。
【0008】
このような課題を解決する一つの方法として、電極材料としてリチウムアルミニウム合金を用い、その場合のリチウムアルミニウム合金からなる電極を良好に製造する方法が提案されている(特開平4−337244号公報及び特開平4−328276号公報参照)。
また、同種の材料を電極材料として用いると共に、その電極を構造の面から更に改良したものも提案されている(特開平6−231755号公報参照)。
これらの提案によれば、いずれの場合においても、リチウム金属の代わりにリチウムアルミニウム合金を電極材料として用いているため、デンドライトの生成を防止又は抑止することができる。
【0009】
更に、別の解決方法として、金属リチウム板上にリチウムと合金化しうる金属の微粒子とリチウムイオンが混合した電析層が形成された電極を製造する方法が提案されている(特開平6−140027号公報参照)。
この提案によれば、電析層による多数の活性点の形成により電流の分散が生じて局所的な電流集中が緩和され、これがデンドライトの成長防止に有利に作用して、デンドライトの成長を防止ないし抑制することができる。
また、この提案によれば、リチウム金属と他の金属との合金は電析層に含まれるだけであるため、電極全体にリチウムアルミニウム合金を使用した場合に比べると、電極の容量密度の減少を軽減することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のリチウムアルミニウム合金を電極材料として用いる場合においては、デンドライトの生成を抑止するために活物質としての動作には無関係なアルミニウムという成分が電極中に添加されることから、電極の単位体積当たりの容量が低下する。従って、デンドライトの生成は抑制されるものの、高容量化を図るという本来の目的を十分に達成することができない。このようにリチウムアルミニウム合金を電極材料として用いる方法は、リチウム金属電極のもつ高容量密度化の効果が減少するという問題がある。
【0011】
また、上記従来の金属リチウム板上にリチウムと合金化しうる金属の微粒子とリチウムイオンが混合した電析層が形成された電極の場合、電池組み立てに先立ち電極上に電析層を形成する工程から後の工程においては、この電析層に含まれるリチウムイオンの状態を保つために電極を常に電解液による湿潤状態としておくことが必要であり、このような湿潤状態の電極は電池組み立て工程の巻き取りや積層の段階において濡れているために位置調整等が難しいため、製品の歩留まりが低下するという問題を生じる。また、電池組み立てに先立ち電極が湿潤状態となるような組み立て工程をとると、リチウム二次電池に用いられるリチウム塩を含む有機電解液の吸湿性は一般に極めて強いことから、電池に持ち込まれる水分を電池性能に影響がない程度に低く保持するためには組み立て環境の露点を極めて低く維持しなければならなくなるため、製造コストの上昇を招くという問題がある。
【0012】
そこで本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、高容量のリチウム二次電池の実用化を図るため、電極の容量を減じることなくデンドライトの生成を抑制することができ、且つ電池製造プロセスに容易に適用することができるリチウム二次電池用電極及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者は、負極にリチウム金属を使用したリチウム二次電池の各構成要素について、種々の材料を用いてデンドライト生成の有無を実験し、最適な材料を見出すための検討を加えた。その結果、以下の本発明に係る二次電池用電極板により上記課題が達成されることを見出した。
【0014】
即ち、請求項1に係る二次電池用電極板は、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子が圧縮されてなるリチウム金属−リチウム化合物複合材料を活物質とすることを特徴とする。
【0015】
このように請求項1に係る二次電池用電極板においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子が圧縮されてなるリチウム金属−リチウム化合物複合材料を活物質とすることにより、リチウム二次電池に使用可能な殆どの正極材料及び電解液との組み合わせにおいて、デンドライトの生成が抑制される。
【0016】
なお、このような電極構造によりデンドライト生成が抑止されるメカニズムは必ずしも明らかとはなっていないが、従来の方法のようにリチウムと他の金属との合金を使用することなどによってデンドライト生成を抑止していたものとは異なり、リチウムとリチウム化合物との複合材料により新規なリチウムイオン輸送機能が実現されたものと考えられる。
【0017】
即ち、近年、リチウム二次電池内のリチウム極表面には有機電解液等との反応により炭酸リチウムを含むリチウム化合物層が形成され、このリチウム化合物層はリチウムイオンを比較的容易に拡散により輸送することが知られているが、請求項1に係る二次電池用電極板においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層が3次元の網目状に骨格を形成するため、このような輸送機能がより積極的に利用されると考えられる。また、電極板の形状は3次元の網目状のリチウム化合物層の骨格によって保持されるため、電極の形状が損なわれることはなく、つまりデンドライトの生成が生じることはない。従って、リチウム金属−リチウム化合物複合材料を活物質とする電極板により、デンドライトの生成を生じることなく、良好な充放電動作が行われると考えられる。
【0018】
また、請求項2に係る二次電池用電極板は、上記請求項1に係る二次電池用電極板において、リチウム化合物層が炭酸リチウムの他にフッ化リチウムを含有している構成とすることにより、上記請求項1の場合と同様に、デンドライトの生成が良好に抑制される。そして、リチウム二次電池の電解液に含まれるリチウム塩がその組成としてフッ素を含むもの、例えばLiCFSO、LiBF、LiPF、LiAsFなどである場合には、フッ化リチウムを含有しているリチウム化合物層と電解液との親和性が増すことから、より急速なリチウムイオンの拡散速度が得られるため、放電電流特性が更に向上する。
【0019】
また、請求項3に係る二次電池用電極板は、上記請求項1に係る二次電池用電極板において、リチウム化合物層における炭酸リチウムの含有量が、リチウム化合物層の10wt(重量)%以上90wt%以下である構成とすることにより、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層は活物質としての機能を有しないものの、リチウム金属−リチウム化合物複合材料全体に対するその含有量が僅かであるのため、従来のリチウムアルミニウム合金におけるアルミニウムのように電極のエネルギー密度を低下させることはない。従って、最も高容量であるリチウム金属電極の場合とほぼ同程度の高容量が実現される。
【0020】
また、請求項4に係る二次電池用電極板は、上記請求項2に係る二次電池用電極板において、リチウム化合物層における炭酸リチウムの含有量が、リチウム化合物層の10wt%以上90wt%以下であり、リチウム化合物層におけるフッ化リチウムの含有量が、リチウム化合物層から炭酸リチウムを除いた部分の10wt%以上100wt%以下である構成とすることにより、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層は活物質としての機能を有しないものの、リチウム金属−リチウム化合物複合材料全体に対するそれらの含有量が僅かであるのため、従来のリチウムアルミニウム合金におけるアルミニウムのように電極のエネルギー密度を低下させることはない。従って、最も高容量であるリチウム金属電極の場合とほぼ同程度の高容量が実現される。
【0021】
なお、上記請求項1又は2に係る二次電池用電極板において、リチウム金属粒子の粒径が、0.1μm〜10μmの範囲内にあることが望ましい。
【0022】
また、上記請求項1又は2に係る二次電池用電極板において、リチウム化合物層の厚さが、10nm〜100nmの範囲内にあり、かつリチウム金属粒子の粒径の1/10以下であることが望ましい。
【0023】
次に、上記の本発明に係る二次電池用電極板の製造方法について述べる。
例えば上記請求項1に係る二次電池用電極板を形成する方法としては、リチウム金属粉と炭酸リチウムを含むリチウム化合物粉とを混合して圧縮成形する方法が先ず想定される。
しかし、本発明に係る二次電池用電極板においてはリチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されることが重要であるのに対して、前記の圧縮成形による方法を用いると、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合せず、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることから、本発明の目指す機能をもった二次電池用電極板の実現は困難である。
そのため、本発明者は、本発明に係る二次電池用電極板の製造方法について種々の実験による検討を行った。その結果、以下の本発明に係る二次電池用電極板の製造方法を想到した。
【0024】
即ち、請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法は、処理チヤンバ内において、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆した多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積する第1の工程と、集電体上に堆積した多数のリチウム金属粒子を圧縮して、活物質とするリチウム金属−リチウム化合物複合材料を前記集電体上に形成する第2の工程とを有することを特徴とする。
【0025】
このように請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法においては、蒸発又は溶射したリチウム金属を所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆した多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積した後、この集電体上に堆積した多数のリチウム金属粒子を圧縮して、活物質とするリチウム金属−リチウム化合物複合材料を形成することにより、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることがないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもった上記請求項1に係る二次電池用電極板が実現される。
【0026】
なお、ここで、リチウム金属と反応させてリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとしては、CO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO又はこれらの混合ガスを用いることが好適である。
【0027】
また、請求項8に係る二次電池用電極板の製造方法は、上記請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法において、前記第1の工程が、処理チヤンバ内において、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する工程である構成とすることにより、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることがないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもつと共に、フッ素を組成として含むリチウム塩が溶解している電解液を用いる場合に、より急速なリチウムイオンの拡散速度が得られる上記請求項2に係る二次電池用電極板が実現される。
【0028】
なお、ここで、リチウム金属と反応させてリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとしてはCO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO又はこれらの混合ガスに、Fを加えたガスを用いることが好適である。
【0029】
また、請求項9に係る二次電池用電極板の製造方法は、上記請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法において、前記第1の工程が、処理チヤンバ内において、放電により励起されたプラズマ領域を設け、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスのプラズマと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する工程である構成とすることにより、上記請求項7の場合と同様に、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることがないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもった上記請求項2に係る二次電池用電極板が実現される。
【0030】
なお、ここで、プラズマ中においてリチウム金属と反応させリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとしては、CO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO又はこれらの混合ガスを用いることが好適であり、このガスをHe、H、Ar、N若しくはO又はこれらの混合ガスにより希釈したガスを用いることが好適であり、CH若しくはC又はこれらの混合ガスをOにより希釈したガスを用いることが好適である。
【0031】
また、請求項10に係る二次電池用電極板の製造方法は、上記請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法において、前記第1の工程が、処理チヤンバ内において、放電により励起されたプラズマ領域を設け、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスのプラズマと反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する工程である構成とすることにより、安全性確保等のためにFのように毒性や可燃性を有するガスでない不活性なガスを雰囲気ガスとして用いる場合であっても、上記請求項8の場合と同様に、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることがないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもつと共に、フッ素を組成として含むリチウム塩が溶解している電解液を用いる場合に、より急速なリチウムイオンの拡散速度が得られる上記請求項2に係る二次電池用電極板が実現される。
【0032】
なお、ここで、プラズマ中においてリチウム金属と反応させリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとしては、CO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO又はこれらの混合ガスに、CF、CHF若しくはC又はこれらの混合ガスを加えたガスを用いることが好適であり、このガスをHe、H、Ar、N若しくはO又はこれらの混合ガスにより希釈したガスを用いることが好適であり、CH若しくはC又はこれらの混合ガスに、CF、CHF若しくはC又はこれらの混合ガスを加えたガスをOにより希釈したガスを用いることが好適である。
【0033】
また、上記請求項7又は8に係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム金属と反応させる雰囲気ガスの圧力は、1.33mPa〜0.133Paの範囲内にあることが望ましい。
【0034】
また、上記請求項9又は10に係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム金属と反応させる雰囲気ガスの圧力は、13.3mPa〜13.3Paの範囲内にあることが望ましい。
【0035】
また、上記請求項7〜10のいずれかに係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する際の集電体の温度は、−50℃〜−10℃の範囲内に保持されていることが望ましい。
【0036】
また、上記請求項7〜10のいずれかに係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する際の堆積速度は、0.1μm/分〜10μm/分の範囲内にあることが望ましい。
【0037】
また、上記請求項9又は10に係る二次電池用電極板の製造方法において、処理チヤンバ内に放電により励起されたプラズマ領域を設ける際にプラズマ生成のために供給する電力密度は、堆積領域の面積に対して0.1W/cm〜2W/cmの範囲内にあることが望ましい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板は、図1に示されるように、銅箔からなる集電体10上に活物質層11を形成したものであるが、この活物質層11が、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮されて、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料から構成されている点に本実施形態の特徴がある。
【0039】
ここで、銅箔からなる集電体10及びリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11の全体の厚さは80μmであり、リチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量は80wt%である。
【0040】
次に、図1に示すリチウム二次電池用電極板の製造方法を、図2を用いて説明する。ここで、図2は集電体10上にリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11を形成するための処理装置を示す概略断面図である。
【0041】
この処理装置は、図2に示されるように、処理チャンバ20と、COガスが充填されたシリンダ21からMFC(Mass Flow Controller;マスフローコントローラ)22を介して処理チャンバ20内に雰囲気ガスCOを供給するガス供給機構と、処理チャンバ20内のガスを外部に排気する真空排気装置23と、処理チャンバ20内の圧力を調整するための可変オリフィス24と、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載するタンタル製の蒸着ボート26と、この蒸着ボート26に通電して、蒸着ボート26上のリチウム金属25を加熱蒸発させるための蒸着用電源27と、蒸着ボート26に対向して集電体10を保持する集電体保持機構28と、蒸着ボート26と集電体保持機構28との間に配置された開閉可能なシャッタ機構29とを主要な機構として備えている。
【0042】
先ず、処理チャンバ20内のタンタル製の蒸着ボート26上に蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載すると共に、この蒸着ボート26上のリチウム金属25に対向して、集電体保持機構28の底面部に厚さ20μmの銅箔からなる集電体10を下向きに固定する。
【0043】
続いて、シリンダ21から雰囲気ガスとしてのCOガスを処理チャンバ20内に供給する。このときの雰囲気ガスCOの流量は、MFC22によって10sccmに制御する。また、処理チャンバ20内の圧力は、真空排気装置23及び可変オリフィス24によって13.3mPaに保持する。
【0044】
続いて、蒸着用電源27により蒸着ボート26に通電して、蒸着ボート26上のリチウム金属25を加熱蒸発させる。そして、この蒸発させたリチウム金属を雰囲気ガスとしてのCOガスと反応させ、リチウム金属粒子13の表面を炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって被覆すると共に、この炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する。
【0045】
また、このとき、シャッタ機構29の開状態の時間を調節して、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が集電体10上に堆積する厚さ、即ちリチウム金属−リチウム化合物複合材料の堆積層の厚さが100μmになるように制御する。
【0046】
次いで、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が堆積した集電体10を処理チャンバ20から取り出した後、ロールプレス装置を用いて、集電体10及びリチウム金属−リチウム化合物複合材料の堆積層の全体の厚さが120μmから80μmになるまで圧縮し、隙間のないように緻密に充填された状態にする。そして、これを矩形に打ち抜いて、リチウム二次電池用電極板とする。
【0047】
こうして、上記図1に示されるような、炭酸リチウムを80wt%含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮され、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11が銅箔からなる集電体10上に形成されている、厚さ80μmのリチウム二次電池用電極板が作製される。
【0048】
なお、このような製造方法を用いて作製したリチウム二次電池用電極板の断面をX線マイクロアナライザにより調べたところ、リチウム金属粒子13と炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12との界面には特段の不純物層は存在せず、良好な界面が形成されていることが確認された。
【0049】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を用いたリチウム二次電池用電極の特性について述べる。
【0050】
上記図1に示すリチウム二次電池用電極板を負極板として用い、微孔を有するポリプロピレンフィルムからなるセパレータを介して、同寸法の正極板と対向させる。この正極板としては、リチウム電池用LiCoO粉末にアセチレンブラックとPTFE(ポリテトラフロロエチレン)樹脂粉末を各々10wt%混合し、N−メチルピロリドンを加えて十分に混練し、厚さ20μmのアルミニウム箔に乾燥後の厚さが200μmとなるように塗布した後、乾燥し、プレスしたものを用いる。また、電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの1:1混合溶媒にリチウム塩としてLiClOを1mol/l溶解したものを用いる。こうして、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルAを作製した。
【0051】
なお、このリチウム二次電池ガラスセルAと比較するため、次の3種類のリチウム二次電池ガラスセルB〜Dを作製した。
【0052】
即ち、比較例1においては、厚さ20μmの銅箔からなる集電体上にリチウム及びアルミニウムを各々50wt%含有する合金箔を形成し、全体の厚さが80μmとなるように圧接した後、これを矩形に打ち抜いてリチウム二次電池用電極板としたものを負極電極板として用い、その他の正極板や電解液等は上記リチウム二次電池ガラスセルAと全く同一にしたリチウム二次電池ガラスセルBを作製した。
【0053】
また、比較例2においては、厚さ20μmの銅箔からなる集電体上にリチウム80wt%及びアルミニウム20wt%からなる合金箔を形成して、全体の厚さが80μmとなるように圧接した後、これを矩形に打ち抜いてリチウム二次電池用電極板としたものを負極電極板として用い、その他の正極板や電解液等は上記リチウム二次電池ガラスセルAと全く同一にしたリチウム二次電池ガラスセルCを作製した。
【0054】
また、比較例3においては、厚さ20μmの銅箔からなる集電体上にリチウム金属箔を形成して、全体の厚さが80μmとなるように圧接した後、これを矩形に打ち抜いてリチウム二次電池用電極板としたものを負極電極板として用い、その他の正極板や電解液等は上記リチウム二次電池ガラスセルAと全く同一にしたリチウム二次電池ガラスセルDを作製した。
【0055】
これら4種類のリチウム二次電池ガラスセルA〜Dを2.7Vから4.2Vの電圧範囲において電流密度1.5mA/cmの充放電電流を流してサイクル試験を行い、電池容量の測定を行うと共に、このサイクル試験後に分解してデンドライト生成の有無の調査したところ、以下のような結果が得られた。
【0056】
1. 本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルAは、比較例3のリチウム二次電池ガラスセルDにおける初回の容量の98%以上の容量を示し、500サイクルを超えても容量低下を生じなかった。また、サイクル試験後の分解調査の結果、内部にデンドライトの発生は全く観察されなかった。
【0057】
2. 比較例1のリチウム二次電池ガラスセルBは、500サイクルを超えても容量低下は僅かであった。また、サイクル試験後の分解調査の結果、内部にデンドライトの発生は観察されなかった。但し、電池容量は、比較例3のリチウム二次電池ガラスセルDの初回の容量に対して活物質の比率と同一の50%にとどまった。
【0058】
3.比較例2のリチウム二次電池ガラスセルCは、比較例3のリチウム二次電池ガラスセルDの初回の容量の80%の容量を示したが、試験開始後に充放電容量が漸減し300サイクル近辺において内部短絡を生じた。また、サイクル試験後の分解調査の結果、内部にデンドライトの生成が観察された。
【0059】
4.比較例3のリチウム二次電池ガラスセルDは、試験開始後1サイクルごとに充放電容量が急速に減少し、30サイクルにおいて内部短絡を生じた。また、サイクル試験後の分解調査の結果、内部に多量のデンドライトの生成が観察された。
【0060】
このような結果から、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を負極板として用いたリチウム二次電池ガラスセルAは、リチウム金属板を負極板として用いる最も高容量なリチウム二次電池ガラスセルDとほぼ同じ容量を示し、かつデンドライトの生成がないことが明らかになった。
また、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板は、比較例1〜3のリチウム二次電池用電極板と同様に乾燥状態で取り扱われるため、従来技術の一つに挙げた電析層を用いる場合において懸念されるような、電極が湿潤状態であることによる取り扱い上の困難もなく、通常の電池組み立てプロセスを適用できることが確認された。
【0062】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板におけるリチウム金属粒子13の粒径の最適範囲について述べる。
【0063】
上記図1に示すリチウム二次電池用電極板においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮されて、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料から活物質層11が構成されているが、このリチウム金属粒子13の粒径が変わることによりリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、リチウム金属粒子13の粒径を種々に変化させて、その最適範囲を明らかにするための実験を行った。
【0064】
上記図2を用いて説明したリチウム金属25の加熱蒸発時の諸条件を変化させることにより、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際のリチウム金属粒子13の粒径を種々に変化させることが可能である。
即ち、主に、リチウム金属25を加熱蒸発する際の雰囲気ガスCOの圧力、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載する蒸着ボート26と集電体10を底面部に固定する集電体保持機構28との距離、蒸着ボート26の温度の各条件を変化させることにより、ロールプレス装置による圧縮後のリチウム金属粒子13の粒径を0.01μmから20μmの範囲で変化させることができた。
【0065】
そして、この範囲において、リチウム金属粒子13の粒径が種々異なるリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。その結果、リチウム金属粒子13の粒径が0.1μm〜10μmの範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下がこの範囲外にある場合に比べて小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
【0066】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板におけるリチウム化合物層12の炭酸リチウムの含有量の最適範囲について述べる。
【0067】
上記図1に示すリチウム二次電池用電極板においては、リチウム金属粒子13表面を被覆するリチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量は80wt%であったが、このリチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量が変わることによりリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、リチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量を種々に変化させて、その最適範囲を明らかにするための実験を行った。
【0068】
上記図2を用いて説明したリチウム金属25の加熱蒸発時の諸条件を変化させることにより、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際の、リチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量を種々に変化させることが可能である。
【0069】
即ち、主に、リチウム金属25を加熱蒸発する際の雰囲気ガスCOの圧力、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載する蒸着ボート26と集電体10を底面部に固定する集電体保持機構28との距離、蒸着ボート26の温度の各条件を変化させることにより、リチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量を0.5wt%〜95wt%の範囲で変化させることができた。
【0070】
そして、この範囲において、リチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量が種々異なるリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。その結果、リチウム化合物層12における炭酸リチウムの含有量が10wt%〜90wt%の範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下がこの範囲外にある場合に比べて小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
【0071】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板における炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12の厚さの最適範囲について述べる。
【0072】
上記図1に示すリチウム二次電池用電極板においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮されて、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料から活物質層11が構成されているが、このリチウム化合物層12の厚さが変わることによりリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、リチウム化合物層12の厚さを種々に変化させて、その最適範囲を明らかにするための実験を行った。
【0073】
上記図2を用いて説明したリチウム金属25の加熱蒸発時の諸条件を変化させることにより、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際のリチウム化合物層12の厚さを種々に変化させることが可能である。
【0074】
即ち、主に、リチウム金属25を加熱蒸発する際の雰囲気ガスCOの圧力、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載する蒸着ボート26と集電体10を底面部に固定する集電体保持機構28との距離、蒸着ボート26の温度の各条件を変化させることにより、リチウム化合物層12の厚さを10nm〜1μmの範囲で変化させることができた。
【0075】
そして、この範囲において、リチウム化合物層12の厚さが種々異なるリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。その結果、リチウム化合物層12の厚さが10nmから100nmの範囲内にあり、かつリチウム金属粒子13の粒径の1/10以下である場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下がこの範囲外にある場合に比べて小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
【0076】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際に用いる雰囲気ガスの種類について述べる。
【0077】
上記図2を用いて説明したリチウム二次電池用電極板の製造方法においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際に、蒸発させたリチウム金属と反応させる雰囲気ガスとしてCOガスを用いているが、この雰囲気ガスの種類が変わることによりリチウム金属粒子13の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、雰囲気ガスの種類を種々に変化させて、その最適なガス種を明らかにするための実験を行った。
【0078】
雰囲気ガスとして使用可能な種々のガスを用いて、蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0079】
その結果、雰囲気ガスとしてCO、CO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス又はこれらのいくつかを混合したガスを用いた場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。これらのガスを雰囲気ガスとして使用した場合、蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際に、リチウム金属粒子13の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0080】
また、これらのガスのうちCHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかを単独で又は一部混合して用いた場合、より優れた電流特性が得られることが確認された。但し、これらのガスは常温、常圧下では液体であるため、雰囲気ガスとして使用する際には、ガス供給系全体を加熱する必要があり、製造装置コストの上昇を招くことから、特段の電極性能の向上を必要としない場合にはCO、COを用いることが好適である。
【0081】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際に用いる雰囲気ガスの圧力について述べる。
【0082】
上記図2を用いて説明したリチウム二次電池用電極板の製造方法においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際に、蒸発させたリチウム金属と反応させる雰囲気ガスCOの圧力を13.3mPaに保持しているが、この雰囲気ガスの圧力が変わることによりリチウム金属粒子13の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、雰囲気ガスの圧力を種々に変化させて、その最適なガス圧の範囲を明らかにするための実験を行った。
【0083】
雰囲気ガスとしてCOを用い、種々の圧力下において蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0084】
その結果、雰囲気ガスCOの圧力が1.33mPa〜0.133Paの範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。雰囲気ガスCOの圧力が1.33mPa〜0.133Paの範囲内にある場合、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際に、リチウム金属粒子13の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0085】
更に、COガスの代わりに、雰囲気ガスとしてCO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス又はこれらのいくつかを混合したガスを用いて同様の実験を行った。この場合も、COガスを用いた場合と同様の結果が得られた。
【0086】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際に用いる集電体10の温度について述べる。
【0087】
上記図2を用いて説明したリチウム二次電池用電極板の製造方法においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際の集電体10の温度が変わることによりリチウム金属粒子13の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、集電体10の温度を種々に変化させ、その最適な集電体10の温度範囲を明らかにするための実験を行った。
【0088】
上記製造方法において、集電体10の温度を種々に変化させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0089】
その結果、集電体10の温度が−50℃から−10℃の間の一定の温度に保持される場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。こうした−50℃〜−10℃の温度範囲内の一定の温度に保持されている集電体10上に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を堆積する際に、リチウム金属粒子13の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0090】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際の炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13の集電体10上への堆積速度について述べる。
【0091】
上記図2を用いて説明したリチウム二次電池用電極板の製造方法においては、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を集電体10上に堆積する際の堆積速度が変わることによりリチウム金属粒子13の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、堆積速度を種々に変化させて、その最適な堆積速度範囲を明らかにするための実験を行った。
【0092】
上記製造方法において、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13の堆積速度を種々に変化させ、リチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層11を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0094】
その結果、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13の堆積速度が0.1μm/分から10μm/分の間の一定の堆積速度に保持される場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
この0.1μm/分〜10μm/分の堆積速度範囲内の一定の堆積速度に保持して、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層12によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子13を堆積する際に、リチウム金属粒子13の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0095】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を示す断面図である。なお、図1に示されるリチウム二次電池用電極板の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0096】
上記第1の実施形態においては、上記図1に示すリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製する際に、電解液中に溶解するリチウム塩としてLiClOを用いているが、電解液に難燃性を付与して電池の安全性を高めるため、近年はフッ素を組成中に含むリチウム塩、例えばLiBF、LiPF、LiN(CFSO、LiB(C、LiAsFなどが用いられることが多くなっている。
【0097】
これらのリチウム塩が有機電解液中においてどのような状態で存在しているかは相当複雑であることが予想され、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、上記第1の実施形態において重要な役割を担っているリチウム化合物層12においてもその組成元素としてフッ素が含まれていると、フッ素を組成中に含むリチウム塩が溶解している電解液との親和性が増大することなどにより、更に急速なリチウムイオンの拡散速度を得ることが可能となり、結果として放電電流特性に優れた電池を実現できることが経験的に予想される。
【0098】
そこで、本実施形態においては、上記第1の実施形態のリチウム化合物層15フッ素を含有させることとした。従って、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板は、図3に示されるように、銅箔からなる集電体10上に活物質層14を形成したものであるが、この活物質層14が、炭酸リチウムの他にフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されて、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料から構成されている点に本実施形態の特徴がある。
【0099】
ここで、銅箔からなる集電体10及びリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14の全体の厚さは80μmであり、リチウム化合物層15における炭酸リチウムの含有量は80wt%であり、更にフッ化リチウムの含有量は20wt%である。
【0100】
次に、図3に示すリチウム二次電池用電極板の第1の製造方法を、図4を用いて説明する。ここで、図4は集電体10上にリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を形成するための処理装置を示す概略断面図である。なお、上記図2に示される処理装置の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0101】
この処理装置は、図4に示されるように、上記図2に示される第1の実施形態に係る処理装置とほぼ同様の機構を備えているが、COガスが充填されたシリンダ21及びその流量を制御するMFC22に加えて、Fガスが充填されたシリンダ31及びその流量を制御するMFC32を備えており、これらのシリンダ21、31からMFC22、32を介してCOガスにFガスを添加した混合ガスを処理チャンバ20内に供給するようになっている点に特徴がある。
【0102】
先ず、処理チャンバ20内のタンタル製の蒸着ボート26上に蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載すると共に、この蒸着ボート26上のリチウム金属25に対向して、集電体保持機構28の底面部に厚さ20μmの銅箔からなる集電体10を下向きに固定する。
【0103】
続いて、シリンダ21、31からMFC22、32を介して処理チャンバ20内にCO及びFの混合ガスを供給する。このときのCO及びFの混合ガスの流量はそれぞれMFC22、32によって制御され、COとFとの混合比が80:20となり、混合ガス全体の流量が10sccmになるようにする。また、処理チャンバ20内の圧力は、真空排気装置23及び可変オリフィス24によって13.3mPaに保持する。
【0104】
続いて、蒸着用電源27により蒸着ボート26に通電して、蒸着ボート26上のリチウム金属25を加熱蒸発させる。そして、この加熱蒸発させたリチウム金属を雰囲気ガスとしてのCOガス及びFガスと反応させ、リチウム金属粒子16の表面を炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって被覆すると共に、これら炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する。
【0105】
また、このとき、シャッタ機構29の開状態の時間を調節し、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が集電体10上に堆積する厚さ、即ちリチウム金属−リチウム化合物複合材料の堆積層の厚さが100μmになるように制御する。
【0106】
次いで、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が堆積した集電体10を処理チャンバ20から取り出した後、ロールプレス装置を用いて、集電体10及びリチウム金属−リチウム化合物複合材料の堆積層の全体の厚さが120μmから80μmになるまで圧縮し、隙間のないように緻密に充填された状態にする。そして、これを矩形に打ち抜いて、リチウム二次電池用電極板とする。
【0107】
こうして、上記図3に示されるような、炭酸リチウム80wt%に加えてフッ化リチウム20wt%を含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮され、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14が銅箔からなる集電体10上に形成されている、厚さ80μmのリチウム二次電池用電極板が作製される。
【0108】
なお、上記第1の製造方法においては、リチウム化合物層15にフッ化リチウムを含有させるため、雰囲気ガスとしてFガスを用いているが、このFガスは金属に対して激しい腐食性を示すため、耐食性に優れた材料を用いて製造設備を製作する必要があること、また強い毒性をもつため、高感度の漏洩検出設備や排出ガス除害設備等の設置が義務づけられることなど、取り扱いが難しいガスであると共に製造設備のコストを大幅に増加させるという問題がある。
【0109】
この問題を回避するためには、CF等のフッ素原子を含む不活性なガスを雰囲気ガスとして用いることが考えられるが、上記図4に示される処理装置を用いた第1の製造方法においては、Fガス以外のフッ素原子を含む不活性なガスを用いてもフッ化リチウムをリチウム化合物層15に含有させることはできないか、含有させることができる場合であってもその量は非常に僅かであった。
【0110】
そこで本発明者は種々の方法を実験した結果、雰囲気ガスとしてCF等の不活性なガスを用いた場合であっても、フッ化リチウムをリチウム化合物層15に良好に含有させることができる方法として、次に述べるプラズマ反応を利用したリチウム二次電池用電極板の第2の製造方法を想到した。
【0111】
次に、図3に示すリチウム二次電池用電極板の第2の製造方法を、図5を用いて説明する。ここで、図5は集電体10上にリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を形成するためのプラズマ処理装置を示す概略断面図である。なお、上記図4に示される処理装置の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0112】
このプラズマ処理装置は、図5に示されるように、上記図4に示される第1の製造方法に使用する処理装置とほぼ同様の機構を備えているが、Fガスが充填されたシリンダ31及びその流量を制御するMFC32の代わりに、CFガスが充填されたシリンダ33及びその流量を制御するMFC34を備えており、シリンダ21、33からMFC22、34を介してCOガスにCFガスを添加した混合ガスを処理チャンバ20内に供給するようになっている。このことに加えて、蒸着ボート26と集電体保持機構28との間に雰囲気ガスのプラズマ領域を生成させるための誘導コイル35と、この誘導コイル35に13.56MHzのRF(高周波)電力を供給するRF電源36とを新たな機構として備えている点に特徴がある。
【0113】
先ず、上記第1の製造方法の場合と同様にして、処理チャンバ20内のタンタル製の蒸着ボート26上に蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載すると共に、この蒸着ボート26上のリチウム金属25に対向して、集電体保持機構28の底面部に厚さ20μmの銅箔からなる集電体10を下向きに固定する。
【0114】
続いて、シリンダ21、33からMFC22、34を介して処理チャンバ20内にCO及びCFの混合ガスを供給する。このときのCOガス及びCFガスの流量はそれぞれMFC22、34によって制御され、COとCFとの混合比が80:20となり、混合ガス全体の流量が10sccmになるようにする。また、処理チャンバ20内の圧力は、真空排気装置23及び可変オリフィス24によって133mPaに保持する。
【0115】
続いて、RF電源36から誘導コイル35に13.56MHzのRF電力を供給して、蒸着ボート26と集電体保持機構28との間に雰囲気ガスのプラズマ領域を生成させる。また、蒸着用電源27により蒸着ボート26に通電して、蒸着ボート26上のリチウム金属25を加熱蒸発させる。そして、この加熱蒸発させたリチウム金属を雰囲気ガスとしてのCO及びCFのプラズマと反応させ、リチウム金属粒子16の表面を炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって被覆すると共に、これら炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する。
【0116】
また、このとき、シャッタ機構29の開状態の時間を調節し、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が集電体10上に堆積する厚さ、即ちリチウム金属−リチウム化合物複合材料の堆積層の厚さが100μmになるように制御する。
【0117】
次いで、上記第1の製造方法の場合と同様にして、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が堆積した集電体10を処理チャンバ20から取り出した後、ロールプレス装置を用いて、集電体10及びリチウム金属−リチウム化合物複合材料の堆積層の全体の厚さが120μmから80μmになるまで圧縮し、隙間のないように緻密に充填された状態にする。そして、これを矩形に打ち抜いて、リチウム二次電池用電極板とする。
【0118】
こうして、毒性や可燃性を有しない不活性のCFガスを用いても、上記図3に示されるような、炭酸リチウム80wt%及びフッ化リチウム20wt%を含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮され、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14が銅箔からなる集電体10上に形成されている厚さ80μmのリチウム二次電池用電極板が作製される。
【0119】
なお、このような第1及び第2の製造方法を用いて作製したリチウム二次電池用電極板の断面をX線マイクロアナライザにより調べたところ、いずれの場合においても、リチウム金属粒子16と炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15との界面には特段の不純物層は存在せず、良好な界面が形成されていることが確認された。
【0120】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を用いたリチウム二次電池用電極の特性について述べる。
【0121】
上記図3に示すリチウム二次電池用電極板を負極板として用い、微孔を有するポリプロピレンフィルムからなるセパレータを介して、同寸法の正極板と対向させる。この正極板としては、リチウム電池用LiCoO粉末にアセチレンブラックとPTFE樹脂粉末を各々10wt%混合し、N−メチルピロリドンを加えて十分に混練し、厚さ20μmのアルミニウム箔に乾燥後の厚さが200μmとなるように塗布した後、乾燥し、プレスしたものを用いる。また、電解液としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの1:1混合溶媒にリチウム塩としてLiPFを1mol/l溶解したものを用いる。こうして、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製した。
【0122】
そして、上記第1の実施形態の場合と同様に、このリチウム二次電池ガラスセルを2.7Vから4.2Vの電圧範囲において電流密度1.5mA/cmの充放電電流を流してサイクル試験を行い、電池容量の測定を行うと共に、このサイクル試験後に分解してデンドライト生成の有無の調査したところ、以下のような結果が得られた。
【0123】
即ち、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルは、上記第1の実施形態におけるリチウム二次電池ガラスセルAの場合と同様に、リチウム金属板を負極板として用いる最も高容量なリチウム二次電池ガラスセルと同様の高い容量を示すと共に、デンドライトの生成がないことが明らかになった。また、乾燥状態で取り扱われるため、電極が湿潤状態であることによる取り扱い上の困難もなく、通常の電池組み立てプロセスを適用できることが確認された。
【0124】
更に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板のリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14においては、リチウム金属粒子16の表面を被覆するリチウム化合物層15が炭酸リチウムの他にフッ化リチウムを含有していることから、フッ素を組成中に含むリチウム塩LiPFが溶解している電解液との親和性が増大することなどにより、より急速なリチウムイオンの拡散速度を得ることが可能となるため、上記第1の実施形態におけるリチウム二次電池ガラスセルAに比べて、放電電流を増加した場合の放電容量の低下がより小さく、更に優れた負荷電流特性が実現された。
【0125】
また、本実施形態においては、電解液中のリチウム塩としてLiPFが用いられることから、上記第1の実施形態におけるリチウム二次電池ガラスセルAの場合よりも、電解液に難燃性が付与されるため、電池の安全性が向上した。
【0126】
なお、電解液中のリチウム塩としてLiPFの代わりに、例えばLiBF、LiN(CFSO、LiB(C、LiAsFなどを用いる場合においても、上記の効果を同様に奏することが可能である。
【0127】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板におけるリチウム金属粒子16の粒径の最適範囲について述べる。
【0128】
上記図3に示すリチウム二次電池用電極板においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されて、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料から活物質層14が構成されているが、このリチウム金属粒子16の粒径が変わることによりリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、リチウム金属粒子16の粒径を種々に変化させて、その最適範囲を明らかにするための実験を行った。
【0129】
上記図4及び図5を用いて説明した第1及び第2の製造方法において、リチウム金属25の加熱蒸発時の諸条件を変化させることにより、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際のリチウム金属粒子16の粒径を種々に変化させることが可能である。
【0130】
即ち、主に、リチウム金属25を加熱蒸発する際の雰囲気ガスであるCOとCFの混合ガスの圧力、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載する蒸着ボート26と集電体10を底面部に固定する集電体保持機構28との距離、蒸着ボート26の温度の各条件を変化させることにより、リチウム金属粒子16の粒径を0.01μmから20μmの範囲で変化させることができた。
【0131】
そして、この範囲において、リチウム金属粒子16の粒径が種々異なるリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。その結果、リチウム金属粒子16の粒径が0.1μm〜10μmの範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下がこの範囲外にある場合に比べて小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
【0132】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板におけるリチウム化合物層15の炭酸リチウム及びフッ化リチウムの含有量の最適範囲について述べる。
【0133】
上記図3に示すリチウム二次電池用電極板においては、リチウム金属粒子16の表面を被覆するリチウム化合物層15における炭酸リチウム及びフッ化リチウムの含有量は、炭酸リチウムが80wt%、フッ化リチウムが20wt%であったが、このリチウム化合物層15における炭酸リチウム及びフッ化リチウムの含有量が変わることによりリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、リリチウム化合物層15における炭酸リチウム及びフッ化リチウムの含有量を種々に変化させて、その最適範囲を明らかにするための実験を行った。
【0134】
上記図4及び図5を用いて説明した第1及び第2の製造方法において、リチウム金属25の加熱蒸発時の諸条件を変化させることにより、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際のリチウム化合物層15における炭酸リチウム及びフッ化リチウムの含有量を種々に変化させることが可能である。
【0135】
即ち、主に、リチウム金属25を加熱蒸発する際の雰囲気ガスであるCOとCFの混合ガスの圧力、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載する蒸着ボート26と集電体10を底面部に固定する集電体保持機構28との距離、蒸着ボート26の温度の各条件を変化させることにより、リチウム化合物層15における炭酸リチウムの含有量をリチウム化合物層15全量の0.5wt%〜95wt%の範囲で変化させ、フッ化リチウムの含有量をリチウム化合物層15から炭酸リチウムを除いた部分の0.5wt%〜100wt%の範囲で変化させることができた。
【0136】
そして、この範囲において、リチウム化合物層15における炭酸リチウム及びフッ化リチウムの含有量が種々異なるリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。その結果、リチウム化合物層15における炭酸リチウムが10wt%〜90wt%の範囲内にあり、フッ化リチウムの含有量がリチウム化合物層15から炭酸リチウムを除いた部分の10wt%〜100wt%の範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下がこの範囲外にある場合に比べて小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
【0137】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板における炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15の厚さの最適範囲について述べる。
【0138】
上記図3に示すリチウム二次電池用電極板においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されて、隙間のないように緻密に充填されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料から活物質層14が構成されているが、このリチウム化合物層15の厚さが変わることによりリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、リリチウム化合物層15の厚さを種々に変化させて、その最適範囲を明らかにするための実験を行った。
【0139】
上記図4及び図5を用いて説明した第1及び第2の製造方法において、リチウム金属25の加熱蒸発時の諸条件を変化させることにより、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際のリチウム化合物層15の厚さを種々に変化させることが可能である。
【0140】
即ち、主に、リチウム金属25を加熱蒸発する際の雰囲気ガスであるCOとCFの混合ガスの圧力、蒸発物質としてのリチウム金属25を搭載する蒸着ボート26と集電体10を底面部に固定する集電体保持機構28との距離、蒸着ボート26の温度の各条件を変化させることにより、リチウム化合物層15の厚さを10nm〜1μmの範囲で変化させることができた。
【0141】
そして、この範囲において、リチウム化合物層15の厚さが種々異なるリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。その結果、リチウム化合物層15の厚さが10nmから100nmの範囲内にあり、かつリチウム金属粒子16の粒径の1/10以下である場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下がこの範囲外にある場合に比べて小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。
【0142】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際に用いる雰囲気ガスの種類について述べる。
【0143】
上記図4を用いて説明した第1の製造方法においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、蒸発させたリチウム金属と反応させる雰囲気ガスとしてCOとFとの混合ガスを用いているが、この雰囲気ガスの種類が変わることによりリチウム金属粒子16の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、雰囲気ガスの種類を種々に変化させて、その最適なガス種を明らかにするための実験を行った。
【0144】
雰囲気ガスとして使用可能な種々のガスを用いて、蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0145】
その結果、雰囲気ガスとしてCO、CO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス又はこれらのいくつかを混合したガスにFを加えたガスである場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。これらのガスを雰囲気ガスとして使用した場合、蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0146】
また、上記図5を用いて説明したリチウム二次電池用電極板の第2の製造方法においても、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、蒸発させたリチウム金属と反応させる雰囲気ガスとしてCOとCFとの混合ガスを用いているが、上記第1の製造方法の場合と同様に、この雰囲気ガスの種類が変わることによりリチウム金属粒子16の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、雰囲気ガスの種類を種々に変化させて、その最適なガス種を明らかにするための実験を行った。
【0147】
即ち、雰囲気ガスとして使用可能な種々のガスを用いて、そのプラズマを蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0148】
その結果、雰囲気ガスとして、CO、CO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス又はこれらの混合ガスにCF、CHF、Cのいずれかのガス又はこれらの混合ガスを加えたガスを用いる場合、前記のガスをHe、H、Ar、N、Oのいずれかのガス又はこれらの混合ガスにより希釈したガスを用いる場合、CH、Cのいずれかのガス又はこれらの混合ガスにCF、CHF、Cのいずれかのガス又はこれらの混合ガスを加えたガスをOにより希釈したガスを用いる場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。これらのガスを雰囲気ガスとして使用した場合、そのプラズマを蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0149】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際に用いる雰囲気ガスの圧力について述べる。
【0150】
上記図4を用いて説明した第1の製造方法においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、蒸発させたリチウム金属と反応させる雰囲気ガスであるCOとFとの混合ガスの圧力を13.3mPaに保持しているが、この雰囲気ガスの圧力が変わることによりリチウム金属粒子16の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、雰囲気ガスの圧力を種々に変化させて、その最適なガス圧の範囲を明らかにするための実験を行った。
【0151】
雰囲気ガスとしてCOとFとの混合ガスを用い、種々の圧力下において蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0152】
その結果、雰囲気ガスであるCOとFとの混合ガスの圧力が、1.33mPa〜0.133Paの範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。COとFとの混合ガスの圧力が1.33mPa〜0.133Paの範囲内にある場合、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0153】
更に、COとFとの混合ガスの代わりに、雰囲気ガスとしてCO、CO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス又はこれらのいくつかを混合したガスにFを加えたガス(但し、COとFとの混合ガスを除く)を用いて同様の実験を行った場合においても、COとFとの混合ガスを用いた場合と同様の結果が得られた。
【0154】
また、上記図5を用いて説明した第2の製造方法においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、蒸発させたリチウム金属と反応させる雰囲気ガスであるCOとCFとの混合ガスの圧力を133mPaに保持しているが、上記第1の製造方法の場合と同様に、雰囲気ガスの圧力を種々に変化させて、その最適なガス圧の範囲を明らかにするための実験を行った。
【0155】
雰囲気ガスとしてCOとCFとの混合ガスを用い、種々の圧力下において蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0156】
その結果、雰囲気ガスであるCOとCFとの混合ガスの圧力が、13.3mPa〜13.3Paの範囲内にある場合に、放電電流を増加した際の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。COとCFとの混合ガスの圧力が13.3mPa〜13.3Paの範囲内にある場合、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0157】
更に、COとCFとの混合ガスの代わりに、雰囲気ガスとして、COとCFとの混合ガスをHe、H、Ar、N、Oのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガスを用いて同様の実験を行った場合、CO、CO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスにCF、CHF、Cのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスを加えたガス(但し、COとCFとの混合ガスを除く)を用いて同様の実験を行った場合、又は前記のガスをHe、H、Ar、N、Oのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガスを用いて同様の実験を行った場合、CH、Cのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスにCF、CHF、Cのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスを加えたガスをOにより希釈したガスを用いて同様の実験を行った場合においても、COとCFとの混合ガスを用いた場合と同様の結果が得られた。
【0158】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際に用いる集電体10の温度について述べる。
【0159】
上記図4及び図5を用いて説明した第1及び第2の製造方法においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際の集電体10の温度が変わることによりリチウム金属粒子16の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、集電体10の温度を種々に変化させ、その最適な集電体10の温度範囲を明らかにするための実験を行った。
【0160】
上記第1及び第2の製造方法において、集電体10の温度を種々に変化させ、この集電体10上に炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16が圧縮されたリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0161】
その結果、いずれの場合においても、集電体10の温度が−50℃から−10℃の間の一定の温度に保持される場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。こうした−50℃〜−10℃の温度範囲内の一定の温度に保持されている集電体10上に炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0162】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際の炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16の集電体10上への堆積速度について述べる。
【0163】
上記図4及び図5を用いて説明した第1及び第2の製造方法においては、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積する際の堆積速度が変わることによりリチウム金属粒子16の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、堆積速度を種々に変化させて、その最適な堆積速度範囲を明らかにするための実験を行った。
【0164】
上記第1及び第2の製造方法において、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16の堆積速度を種々に変化させ、リチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0165】
その結果、いずれの場合においても、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16の堆積速度が0.1μm/分から10μm/分の間の一定の堆積速度に保持される場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。この0.1μm/分〜10μm/分の堆積速度範囲内の一定の堆積速度に保持して、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0166】
次に、本実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を作製する際のプラズマ生成のために供給する電力について述べる。
【0167】
上記図5を用いて説明した第2の製造方法においては、RF電源36から誘導コイル35に13.56MHzのRF電力を供給して雰囲気ガスのプラズマ領域を生成させ、この雰囲気ガスのプラズマと蒸発させたリチウム金属と反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積しているが、このときのプラズマ生成のために供給する電力密度が変わることによりリチウム金属粒子16の均一性に差が見られ、それによるリチウム二次電池用電極板の特性の変化が予想されるため、プラズマ生成のために供給する電力密度を種々に変化させて、その最適な電力密度範囲を明らかにするための実験を行った。
【0168】
上記第2の製造方法において、RF電源36から誘導コイル35にRF電力を供給して雰囲気ガスのプラズマを生成させる際の電力密度を種々に変化させ、リチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層14を集電体10上に形成してリチウム二次電池用電極板を作製し、更にこのリチウム二次電池用電極板を負極板として用いるリチウム二次電池ガラスセルを作製し、放電電流に対する容量の変化を調査した。
【0169】
その結果、プラズマ生成のために供給する電力密度が堆積領域の面積に対して0.1W/cmから2W/cmの間の一定の電力密度となるようにRF電力を供給する場合に、放電電流を増加した場合の放電容量の低下が小さく、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現できることが確認された。この0.1W/cm〜2W/cmの電力密度範囲内の一定の電力密度となるようにRF電力を供給して雰囲気ガスのプラズマ領域を生成させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を堆積する際に、リチウム金属粒子16の均一性が優れていることから、均一な特性を有するリチウム二次電池用電極板が形成されるためと考えられる。
【0170】
なお、上記第1の実施形態においては、上記図2に示される処理装置を用いて炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積し、また、上記第2の実施形態においては、上記図4に示される処理装置又は上記図5に示されるプラズマ処理装置を用いて炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積しているが、上記第1の実施形態においても、上記図5に示されるプラズマ処理装置と同様のプラズマ処理装置を用いて炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層15によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子16を集電体10上に堆積することも可能である。
【0171】
この場合に用いる雰囲気ガスとしては、CO、CO、CHOH、C(OH)、(CHCOのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスであることが好適であり、このガスをHe、H、Ar、N、Oのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガスであることが好適であり、CH、Cのいずれかのガス若しくはこれらの混合ガスをOにより希釈したガスであることが好適である。
【0172】
また、その他の条件、例えばリチウム金属粒子の粒径、リチウム化合物層の炭酸リチウムの含有量、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層の厚さ、雰囲気ガスの圧力、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積する際の集電体の温度及び堆積速度はそれぞれ上記第1の実施形態の場合と同様であり、雰囲気ガスのプラズマ生成のために供給する電力密度は上記第2の実施形態の第2の製造方法の場合と同様である。
【0173】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、上記図2、図4、又は図5に示される処理装置又はプラズマ処理装置を用いて、蒸発させたリチウム金属粒子と雰囲気ガス又はそのプラズマとを反応させているが、このようなリチウム金属粒子の蒸発の代わりに、リチウム金属粒子を溶射して、この溶射されたリチウム金属粒子と雰囲気ガス又はそのプラズマとを反応させてもよい。
この場合においても、上記第1及び第2の実施形態の場合と同様に、炭酸リチウム又は炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積し、リチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層を形成することができる。
【0174】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した通り、本発明に係る二次電池用電極板及びその製造方法によれば、次のような効果を奏することができる。
【0175】
即ち、請求項1に係る二次電池用電極板によれば、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子が圧縮されてなるリチウム金属−リチウム化合物複合材料を活物質とすることにより、リチウムとリチウム化合物との複合材料により新規なリチウムイオン輸送機能が実現されると共に、電極板の形状が3次元の網目状のリチウム化合物層の骨格によって保持されるため、リチウム二次電池に使用可能な殆どの正極材料及び電解液との組み合わせにおいて、デンドライトの生成を抑制し、良好な充放電動作を行う電池を実現することができる。また、乾燥状態で取り扱われるため、取り扱い上の困難もない電極を得ることができる。
【0176】
また、請求項2に係る二次電池用電極板によれば、リチウム化合物層が炭酸リチウムの他にフッ化リチウムを含有していることにより、デンドライトの生成を良好に抑制することができると共に、電解液に含まれるリチウム塩がその組成としてフッ素を含む場合には、フッ化リチウムを含有しているリチウム化合物層と電解液との親和性が増すことから、より急速なリチウムイオンの拡散速度が得られるため、上記請求項2に係る二次電池用電極板を用いる場合よりも、放電電流特性を更に向上することができる。
【0177】
また、請求項3に係る二次電池用電極板によれば、リチウム化合物層における炭酸リチウムの含有量がリチウム化合物層の10wt%以上90wt%以下であることにより、活物質を構成するリチウム金属−リチウム化合物複合材料全体に対する炭酸リチウムの含有量が僅かであるのため、従来のリチウムアルミニウム合金におけるアルミニウムのように電極のエネルギー密度を低下させることはなく、最も高容量であるリチウム金属電極の場合と同程度の高容量を実現することができる。
【0178】
また、請求項4に係る二次電池用電極板によれば、リチウム化合物層における炭酸リチウムの含有量がリチウム化合物層の10wt%以上90wt%以下であり、フッ化リチウムの含有量がリチウム化合物層から炭酸リチウムを除いた部分の10wt%以上100wt%以下であることにより、活物質を構成するリチウム金属−リチウム化合物複合材料全体に対する炭酸リチウムの含有量が僅かであるのため、従来のリチウムアルミニウム合金におけるアルミニウムのように電極のエネルギー密度を低下させることはなく、最も高容量であるリチウム金属電極の場合と同程度の高容量を実現することができる。
【0179】
また、請求項5に係る二次電池用電極板によれば、リチウム金属粒子の粒径が0.1μm〜10μmの範囲内にあることにより、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0180】
また、請求項6に係る二次電池用電極板によれば、リチウム化合物層の厚さが10nm〜100nmの範囲内にあり、かつリチウム金属粒子の粒径の1/10以下であることにより、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0181】
また、請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、蒸発又は溶射したリチウム金属を所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆した多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積した後、この集電体上に堆積した多数のリチウム金属粒子を圧縮して、活物質とするリチウム金属−リチウム化合物複合材料を形成することにより、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることはないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもった上記請求項1に係る二次電池用電極板を実現することができる。
【0182】
また、請求項8に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、蒸発又は溶射したリチウム金属を所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆した多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積した後、この集電体上に堆積した多数のリチウム金属粒子を圧縮して、活物質とするリチウム金属−リチウム化合物複合材料を形成することにより、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることはないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもった上記請求項2に係る二次電池用電極板を実現することができる。
【0192】
また、請求項9に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスのプラズマと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積することにより、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることはないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもった上記請求項1に係る二次電池用電極板を実現することができる。
【0193】
また、請求項10に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスのプラズマと反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積することにより、安全性確保等のために不活性なガスを雰囲気ガスとして用いる場合であっても、リチウム金属とリチウム化合物層とが十分に結合し、その界面にリチウムイオンの輸送を妨げる境界層が形成されることはないため、リチウムイオンがリチウム金属からリチウム化合物層を通って容易に輸送されるリチウムイオン輸送機能をもった上記請求項2に係る二次電池用電極板を実現することができる。
【0194】
また、請求項11に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項7に係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム金属と反応させてリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとして、CO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO又はこれらの混合ガスを用いることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
上記請求項1に係る二次電池用電極板を実現することができる。
【0195】
また、請求項12に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項8に係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム金属と反応させてリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとしてCO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO又はこれらの混合ガスにFを加えたガスを用いることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0196】
また、請求項13に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項9に係る二次電池用電極板の製造方法において、プラズマ中においてリチウム金属と反応させリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとして、CO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO若しくはこれらの混合ガス、若しくはこのガスをHe、H、Ar、N若しくはO若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガス、又はCH若しくはC若しくはこれらの混合ガスをOにより希釈したガスを用いることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0197】
また、請求項14に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項10に係る二次電池用電極板の製造方法において、プラズマ中においてリチウム金属と反応させてリチウム金属粒子の表面に炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層を形成するための雰囲気ガスとして、CO、CO、CHOH、C(OH)若しくは(CHCO若しくはこれらの混合ガスに、CF、CHF若しくはC若しくはこれらの混合ガスを加えたガス、若しくはこのガスをHe、H、Ar、N若しくはO若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガス、又はCH若しくはC若しくはこれらの混合ガスにCF、CHF若しくはC若しくはこれらの混合ガスを加えたガスをOにより希釈したガスを用いることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0198】
また、請求項15に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項7又は8に係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム金属と反応させる雰囲気ガスの圧力が1.33mPa〜0.133Paの範囲内にあることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0199】
また、請求項16に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項9又は10に係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム金属と反応させる雰囲気ガスの圧力が13.3mPa〜13.3Paの範囲内にあることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0200】
また、請求項17に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項7〜10のいずれかに係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する際の集電体の温度が−50℃〜−10℃の範囲内に保持されていることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0201】
また、請求項18に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項7〜10のいずれかに係る二次電池用電極板の製造方法において、リチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する際の堆積速度が0.1μm/分〜10μm/分の範囲内にあることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0202】
また、請求項18に係る二次電池用電極板の製造方法によれば、上記請求項9又は10に係る二次電池用電極板の製造方法において、処理チヤンバ内に放電により励起されたプラズマ領域を設ける際のプラズマ生成のために供給する電力密度が堆積領域の面積に対して0.1W/cm〜2W/cmの範囲内にあることにより、均一性に優れたリチウム金属粒子が形成され、放電電流を増加した際の放電容量の低下が相対的に小さくなり、負荷電流特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を示す断面図である。
【図2】図1に示すリチウム二次電池用電極板の製造方法において、集電体上にリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層を形成するための処理装置を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るリチウム二次電池用電極板を示す断面図である。
【図4】図3に示すリチウム二次電池用電極板の第1の製造方法において、集電体上にリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層を形成するための処理装置を示す概略断面図である。
【図5】図3に示すリチウム二次電池用電極板の第2の製造方法において、集電体上にリチウム金属−リチウム化合物複合材料からなる活物質層を形成するためのプラズマ処理装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
10 集電体
11 活物質層
12 炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層
13 リチウム金属粒子
14 活物質層
15 炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層
16 リチウム金属粒子
20 処理チャンバ
21 COガスが充填されたシリンダ
22 MFC
23 真空排気装置
24 可変オリフィス
25 蒸発物質としてのリチウム金属
26 蒸着ボート
27 蒸着用電源
28 集電体保持機構
29 シャッタ機構
31 Fガスが充填されたシリンダ
32 MFC
33 CFガスが充填されたシリンダ
34 MFC
35 誘導コイル
36 RF電源

Claims (19)

  1. 炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆された多数のリチウム金属粒子が圧縮されてなるリチウム金属−リチウム化合物複合材料を活物質とする
    ことを特徴とする二次電池用電極板。
  2. 請求項1記載の二次電池用電極板において、
    前記リチウム化合物層が、前記炭酸リチウムの他にフッ化リチウムを含有している
    ことを特徴とする二次電池用電極板。
  3. 請求項1記載の二次電池用電極板において、
    前記リチウム化合物層における前記炭酸リチウムの含有量が、前記リチウム化合物層の10重量%以上90重量%以下である
    ことを特徴とする二次電池用電極板。
  4. 請求項2記載の二次電池用電極板において、
    前記リチウム化合物層における前記炭酸リチウムの含有量が、前記リチウム化合物層の10重量%以上90重量%以下であり、
    前記リチウム化合物層における前記フッ化リチウムの含有量が、前記リチウム化合物層から前記炭酸リチウムを除いた部分の10重量%以上100重量%以下である
    ことを特徴とする二次電池用電極板。
  5. 請求項1又は2に記載の二次電池用電極板において、
    前記リチウム金属粒子の粒径が、0.1μm乃至10μmの範囲内にある
    ことを特徴とする二次電池用電極板。
  6. 請求項1又は2に記載の二次電池用電極板において、
    前記リチウム化合物層の厚さが、10nm乃至100nmの範囲内にあり、かつ前記リチウム金属粒子の粒径の1/10以下である
    ことを特徴とする二次電池用電極板。
  7. 処理チヤンバ内において、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆した多数のリチウム金属粒子を集電体上に堆積する第1の工程と、
    前記集電体上に堆積した前記多数のリチウム金属粒子を圧縮して、活物質とするリチウム金属−リチウム化合物複合材料を前記集電体上に形成する第2の工程と
    を有することを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  8. 請求項7記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記第1の工程が、処理チヤンバ内において、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスと反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する工程である
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  9. 請求項7記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記第1の工程が、処理チヤンバ内において、放電により励起されたプラズマ領域を設け、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスのプラズマと反応させ、炭酸リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する工程である
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  10. 請求項7記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記第1の工程が、処理チヤンバ内において、放電により励起されたプラズマ領域を設け、リチウム金属を蒸発又は溶射して所定の雰囲気ガスのプラズマと反応させ、炭酸リチウム及びフッ化リチウムを含有するリチウム化合物層によって表面を被覆したリチウム金属粒子を集電体上に堆積する工程である
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  11. 請求項7記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記雰囲気ガスが、CO、CO、CHOH、C(OH)、若しくは(CHCO、又はこれらの混合ガスである
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  12. 請求項8記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記雰囲気ガスが、CO、CO、CHOH、C(OH)、若しくは(CHCO、又はこれらの混合ガスに、Fを加えたガスである
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  13. 請求項9記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記雰囲気ガスが、CO、CO、CHOH、C(OH)、若しくは(CHCO、若しくはこれらの混合ガス、若しくはこのガスをHe、H、Ar、N、若しくはO、若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガス、又はCH若しくはC、若しくはこれらの混合ガスをOにより希釈したガスである
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  14. 請求項10記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記雰囲気ガスが、CO、CO、CHOH、C(OH)、若しくは(CHCO、若しくはこれらの混合ガスに、CF、CHF、若しくはC、若しくはこれらの混合ガスを加えたガス、若しくはこのガスをHe、H、Ar、N、若しくはO、若しくはこれらの混合ガスにより希釈したガス、又はCH若しくはC、若しくはこれらの混合ガスに、CF、CHF、若しくはC、若しくはこれらの混合ガスを加えたガスをOにより希釈したガスである
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  15. 請求項7又は8に記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記雰囲気ガスの圧力が、1.33mPa乃至0.133Paの範囲内にある
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  16. 請求項9又は10に記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記雰囲気ガスの圧力が、13.3mPa乃至13.3Paの範囲内にある
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  17. 請求項7乃至10のいずれかに記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記リチウム化合物層によって表面を被覆した前記リチウム金属粒子を前記集電体上に堆積する際の前記集電体の温度が、−50℃乃至−10℃の範囲内に保持されている
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  18. 請求項7乃至10のいずれかに記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記リチウム化合物層によって表面を被覆した前記リチウム金属粒子を前記集電体上に堆積する際の堆積速度が、0.1μm/分乃至10μm/分の範囲内にある
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
  19. 請求項9又は10に記載の二次電池用電極板の製造方法において、
    前記処理チヤンバ内に放電により励起されたプラズマ領域を設ける際に供給する電力密度が、堆積領域の面積に対して0.1W/cm乃至2W/cmの範囲内にある
    ことを特徴とする二次電池用電極板の製造方法。
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