JP3566448B2 - 耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度、しごき加工性、フランジ成形性に優れ、かつ耳率が低くキャンボディ(飲料缶胴)用などとして好適なアルミニウム合金板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
キャンボディ用のアルミニウム合金板には、缶形状を維持する為の強度(耐圧強度)、板材を円筒状にしごくときのしごき加工性、塗装焼付後のフランジ加工性、フランジ加工時における低い耳率が要求される。
前記耳率とは、板材を円筒状に絞ったカップの周縁部に生じる凸部と凹部の高さの差をカップ高さで徐した比率のことで、耳率が高いと次の弊害が生じる。
▲1▼カップ成形およびしごき成形時に耳先端からチップが飛散し、ピンホールやティアーオフ等の欠陥が生じる。
▲2▼フランジ成形後の缶の寸法精度が低下する。
▲3▼缶ボディ成形後のトリミング量が増し、トリミング後も缶周縁部の凹部が除去できない場合がある。
ところで、キャンボディ用のアルミニウム合金板は、例えば、JIS−3004合金鋳塊を均質化処理後、熱間圧延し、次いで冷間圧延と焼鈍を繰返す常法により製造されており、耳率は、冷間圧延後に冷間圧延集合組織が増加すると高くなることが知られている。
耳率を低くする方法として、熱延終了後の再結晶組織を耳率を低下させる立方体方位が優先的に生じた集合組織とし、耳率を高くする冷間圧延集合組織に抵抗させる方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の従来法では耳率を十分に低くすることができなかった。
本発明者等は、その原因について鋭意研究を行い、従来の熱間圧延条件では、熱間圧延終了後において、前記の立方体方位が優先した集合組織が十分に生じていないことを知見し、前記集合組織が十分に安定して生じる製造条件、特に熱間仕上圧延条件を詳細に検討して本発明を完成させるに到った。
本発明は、高強度で、しごき加工性とフランジ成形性に優れ、かつ耳率が低いキャンボディ用などとして好適なアルミニウム合金板の製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【発明が解決するための手段】
請求項1記載の発明は、Mgを0.8〜1.4mass%、Mnを0.8〜1.4mass%、Feを0.2から0.6mass%、Siを0.1〜0.5mass%、Cuを0.1〜0.3mass%を含有し、さらにTiを0.005〜0.05mass%を単独で或いはB0.0001〜0.01mass%とともに含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に、下記(a)〜(d)の諸工程を順に施し、更に下記(イ)、(ロ)、(ハ)のうち少なくとも1つを付加することを特徴とする耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
(a)530〜630℃の温度で1時間以上加熱する均質化処理工程。
(b)開始温度580℃以下、終了温度380〜460℃、終了板厚12〜60mmの熱間粗圧延工程。
(c)下記(1)〜(7)の条件を満足する熱間仕上圧延工程。
(1)使用圧延機がスタンド数が3以上のタンデム式熱間圧延機。
(2)各スタンドでの圧下率が30%以上。
(3)各スタンドでの歪速度の対数和〔Σ〕
(4)圧延材の各スタンドパス間の通過所要時間が5秒以内。
(5)総圧下率が80%以上。
(6)終了板厚が1.6〜3.0mm。
(7)終了温度が290℃以上
(d)圧延率が60〜90%の冷間圧延工程
(イ)(c)工程でクーラント油を噴出して熱延板を冷却する。
(ロ)(c)工程と(d)工程の間に下記いずれかの方法で焼鈍工程を入れる。
(1)箱型焼鈍炉を用いて300〜450℃で30分以上保持する焼鈍方法。
(2)連続焼鈍炉を用いて100℃/分以上の加熱速度で360〜560℃の温度範囲の所定温度に急速加熱し、前記所定温度に到達後直ちに或いは120秒以内保持後、冷却速度100℃/分以上で70℃以下の温度に冷却する焼鈍方法。
(ハ)(d)工程後に100〜160℃の温度で加熱する仕上焼鈍工程を入れる。
【請求項2】
請求項1記載の耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法において、熱間粗圧延終了から熱間仕上圧延開始までの時間を240秒以内とする耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法である。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法において、下記(イ),(ロ),(ハ) のうちの少なくとも1つを付加することを特徴とする耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法である。
(イ) (c)工程でクーラント油を噴射して熱延板を冷却する。
(ロ) (c)工程と (d)工程の間に下記いずれかの方法で焼鈍工程(y) を入れる。
▲1▼箱型焼鈍炉を用いて 300〜450 ℃で30分以上保持する焼鈍方法。
▲2▼連続焼鈍炉を用いて 100℃/分以上の加熱速度で 360〜560 ℃の温度範囲の所定温度に急速加熱し、前記所定温度に到達後直ちに或いは 120秒以内保持後、冷却速度 100℃/分以上で70℃以下の温度に冷却する焼鈍方法。
(ハ) (d)工程後に 100〜160 ℃の温度で加熱する仕上焼鈍工程(z) を入れる。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法において、熱間粗圧延終了から熱間仕上圧延開始までの時間を 240秒以内とする耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明にて用いるアルミニウム合金板の合金成分について説明する。
Mgは強度向上に寄与し、缶底部の高強度化に有効である。
Mgの含有量を 0.8〜1.4wt%に限定した理由は、0.8wt%未満ではその効果が十分に得られず、1.4wt%を超えるとDI成形時に加工硬化し易くなり、しごき加工時の割れの発生頻度が増加するためである。強度とDI成形性とのバランスを考慮したMgの最適含有量は、他元素の添加量や製造条件にもよるが、 1.0〜1.35wt% で、さらに望ましくは 1.1〜1.3wt%の範囲である。
【0008】
Mnは強度とDI成形性の向上に寄与する。MnがDI成形性を向上させるのは、Mnが固体潤滑作用を有する Al−Mn系、Al−Mn−Fe系、 Al−Mn−Fe−Si系等の晶出物を形成するためである。DI成形には、通常エマルジョン型の潤滑剤が使用されるが、これだけでは潤滑が不十分であり、合金板と金型との凝着によるビルトアップが発生してゴーリングまたはスコアリングと呼ばれる擦傷や焼付が発生することがある。Mnを所定量含有させることにより、前記ビルトアップの発生が阻止される。 Mnの含有量を 0.8〜1.4wt%に限定した理由は、0.8wt%未満ではDI成形性の改善効果が不十分なばかりか強度も不足し、1.4wt%を超えるとDI成形性および強度向上効果が飽和する上、後述するFeと結合してAl−Mn−Fe系の巨大(時として数mm程度)な初晶化合物が溶解鋳造時に発生して、これが圧延後も残存してDI成形時に割れやピンホールの原因になるためである。Mnの含有量は 0.9〜1.3wt%、さらには 1.0〜1.2wt%が望ましい。
【0009】
Feは前記Mnの晶出物の生成を促進するとともにその分布状態を均一化してDI成形性をより一層向上させる。
Feの含有量を 0.2〜0.6wt%に限定した理由は、0.2wt%未満ではその効果が十分に得られず、0.6wt%を超えると前述のAl−Mn−Fe系の巨大初晶化合物が発生し易くなるためである。Feの含有量は望ましくは 0.3〜0.5wt%、さらに望ましくは 0.3〜0.45wt% である。
【0010】
CuはMgと同じように缶底部の高強度化に有効である。
Cuの含有量を 0.1〜0.3wt%に限定した理由は、0.1wt%未満では強度が不十分で、耐圧強度を確保するために必要な最終冷間圧延での圧延率が大きくなってDI成形性が低下し、0.3wt%を超えると強度が高くなりすぎてフランジ成形性が低下するためである。
【0011】
Siは、Al−Fe−Mn系の晶出物に相変態を起こさせ、Al−Mn−Fe−Si 系析出物を形成してその硬度を高め、しごき加工性の向上に寄与する。
Siの含有量を 0.1〜0.5wt%に限定した理由は、0.1wt%未満ではその効果が十分に得られず、0.3wt%を超えると晶出物が巨大化して、逆にしごき加工性が低下するためである。
【0012】
Ti、またはTiおよびB は、鋳塊の結晶粒を均一微細化する。
Tiの含有量を 0.005〜0.05wt% に限定した理由は、Tiが0.005wt%未満では鋳塊の結晶粒を均一微細化する効果が得られず、 0.05wt%を超えるとAl−Ti 系の巨大双晶化合物が溶解鋳造時に発生し、これが圧延後も残存してDI成形時に割れやピンホールを発生させるためである。
B はTiの結晶粒を均一微細化させる効果を助長する。
B の含有量が 0.0001wt%未満ではその効果が十分に得られず、 0.01wt%を超えるとTi−B系の巨大な双晶化合物が溶解鋳造時に発生し易くなり、これが圧延後も残存してフランジ成形時での割れやピンホールの発生原因になる。
不純物は、本発明の効果が損なわれない程度の量であれば許容される。
例えば、Znは0.5wt%以下、Crは0.3%以下、Zrは0.1wt%以下、V は0.1wt%以下であれば問題ない。
【0013】
次に本発明の製造方法について説明する。
前述の組成のアルミニウム合金を通常のDC鋳造法(半連続鋳造法)によりスラブ(板状鋳塊)に鋳造する。このスラブに先ず均質化処理を施す。この均質化処理は得られるアルミニウム合金板の強度、靱性、深絞り加工性の向上および耳率のばらつきの減少等に寄与する。
この均質化処理温度は 530℃未満では十分に均質化されず、 630℃を超えると鋳塊表面に膨れが生じたりする。また保持時間が1時間未満では十分に均質化されない。従って均質化処理は 530〜630 ℃で1時間以上保持して行う。生産性とその効果を勘案した最も望ましい均質化処理条件は 530〜630 ℃で3〜12時間の条件である。
【0014】
均質化処理後、熱間で粗圧延と仕上圧延を行う。
粗圧延の開始温度が 580℃より高温では、粗圧延板の表面が酸化したり再結晶粒が粗大化して成形性が低下する。
粗圧延終了時の板厚が12mm未満では、仕上圧延に入る前に板が冷えてしまい所望の仕上圧延温度が得られなくなる。前記板厚が60mmを超えると、仕上圧延での加工率が高すぎて板の表面性状(焼付き、肌荒れ等)が悪化する。
また粗圧延の終了温度が 380℃未満では、その後の仕上圧延の開始温度が低くなりエッジ割れ等が生じる。また 460℃を超えると仕上圧延での終了温度が高くなり、板の表面性状が悪化する。
【0015】
本発明は、熱間仕上圧延の条件を厳密に規定して、熱間仕上圧延後の組織が立方体方位がより優先的に生じた集合組織になるようにしたものである。
前記立方体方位優先の集合組織は、マトリックスの歪みが多く蓄積されている部分(変形集中帯)から核生成し成長した1種の再結晶集合組織である。従ってこの熱間仕上圧延工程では、マトリックスに歪を十分蓄積させる必要がある。
本発明では、熱間仕上圧延工程で歪を十分に蓄積させる為に、▲1▼スタンド数が3以上のタンデム式の熱間圧延機を用い、▲2▼各スタンドでの圧下率を30% 以上とし、▲3▼歪速度の対数和を8以上とし、▲4▼各スタンド間のパス時間を5秒以内とし、▲5▼総圧下率を80% 以上とすることにより、歪みを多く発生させ、かつ各スタンドでの歪みが回復しないようにしている。
さらに、▲6▼熱間仕上圧延での終了板厚を 1.6〜3.0mm にして、 1.6mm未満での熱延板の表面性状の悪化、および 3.0mm超での冷間圧延率の増大に伴う耳率の増加を防ぎ、また▲7▼熱間仕上圧延での終了温度を 290℃以上にして、熱間圧延終了から室温にまで冷却した後の再結晶率の低下による耳率の増加を防止している。
本発明は、熱間仕上圧延を前記▲1▼〜▲7▼の条件で行うことにより、熱延板の室温冷却後の再結晶率を80% 以上、望ましくは90%以上とし、しかもそれを耳率を低く抑える立方体方位が優先的に生じた再結晶集合組織にしたものである。
なお、▲2▼の各スタンドの圧下率は、焼付防止を考慮すると 65%以下が望ましい。また▲7▼での終了温度は 310℃以上が特に望ましい。
【0016】
熱間仕上圧延後に施す冷間圧延はキャンボディに必要な耐圧強度を付与するために行う。この冷間圧延での圧延率を60〜90% に限定した理由は、 60%未満では合金板の耐圧強度が不足し、 90%を超えると深絞り成形時の耳率が高くなる上、強度が高くなりすぎてDI成形性が低下し、しごき割れの発生頻度が高くなるためである。この冷間圧延の上がり材の厚さは、通常0.28〜0.4mm 程度である。
【0017】
請求項1記載の発明において、熱間仕上圧延をクーラント油を噴射して熱延板を冷却しながら行うと、歪みがより十分に蓄積され、熱間仕上圧延終了後室温にまで冷却された熱延板は、立法体方位がより優先的に生じた再結晶集合組織となる。
クーラント油は、各スタンド毎か、最終スタンドを除く各スタンドにて噴射するのが望ましい。クーラント油は板幅全体に均一に噴射すると、得られる熱延板の特性が安定する。熱延板に歪みをより多く蓄積させるには、クーラント油の総噴射量を1000ml/min. 以上にするのが望ましい。
クーラント油を噴射すると熱延板が良好に冷却され、高速圧延しても熱延板表面の性状が悪化するようなことがなくなり生産性が向上する。
なお、クーラント油を噴射する場合、各スタンド間のパス時間が5秒を超えると冷却が効きすぎて熱延板にエッジ割れが生じる。
【0018】
請求項1記載の発明において、熱間仕上圧延後に焼鈍工程を入れると、十分に軟質化してDI成形性が向上し望ましい。
焼鈍方法には箱型焼鈍または連続焼鈍のいずれかの方法が選ばれる。
箱型焼鈍の場合、焼鈍温度が 300℃未満では、十分な軟質材(完全再結晶組織)が得られず、 450℃を超えると再結晶した結晶粒が粗大化し、この粗大な再結晶粒組織は加工性を低下させると同時に、特定方位の結晶粒が優先的に成長して耳率に悪影響(硬質板の45°耳率を大きくする)を及ぼす。また保持時間が30分未満では、前記の効果が十分に得られない。
連続焼鈍の場合、焼鈍温度が 360℃未満では、強度が高くなりすぎてDI成形性が低下し、 560℃を超えるとCuやSi等の析出物が再固溶しすぎ、これが塗装焼付時に析出してフランジ成形性を低下させる。保持時間は0秒でも良い。つまり目標温度に到達後直ちに冷却しても良い。保持時間が 120秒を超えると、焼鈍温度が 560℃以下でも析出物が再固溶しすぎて好ましくない。加熱速度、冷却速度はともに 100℃/分以上にして生産性を高めるのが良い。特に冷却の場合、その速度が 100℃/分未満では、固溶したCuおよびSiが析出して、次の最終冷間圧延で十分な強度が得られなくなる。
【0019】
請求項1記載の発明において、冷間圧延工程後に仕上焼鈍工程を入れると加工組織が回復して、DI成形性やフランジ成形性が向上する。またキャンボディの形状(真円度など)がより良好となる。焼鈍温度が 100℃未満では、その効果が十分に得られず、焼鈍温度が 150℃を超えても、また保持時間が8時間を超えても、固溶元素が析出しすぎてDI成形性やフランジ成形性が低下する。最も望ましい仕上焼鈍条件は 115〜150 ℃で1〜4時間の条件である。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明における熱間粗圧延終了から仕上圧延開始までの時間を規定したもので、この間の時間が240秒を超えると熱間粗圧延での歪の回復がかなり進み、熱間仕上圧延でその条件を厳密に規定しても歪を十分蓄積することができず、耳率の低いアルミニウム合金板を得ることが困難になる。望ましくは120秒以内である。
【0021】
【実施例1】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示す組成のアルミニウム合金を常法により溶解鋳造して厚さ500mm のスラブ(板状鋳塊)を得た。次にこのスラブを 490mmの厚さに面削し、次いで均質化処理(600℃×6時間) と熱間粗圧延(圧延開始温度 480℃、終了温度 430℃、終了板厚30mm)を順に施し、次いで4スタンドの圧延機を用いて熱間仕上圧延を行なって厚さ 2.2mmの熱延板を得た。
前記熱間仕上圧延では、各スタンドの圧下率を1パス目45% 、2パス目45% 、3パス目45% 、4パス目55% 、熱間粗圧延終了から熱間仕上圧延開始までの時間を90秒、各パス間の通過時間を 0.9秒、圧延終了温度を 320℃にそれぞれ設定した。歪速度の対数和は14である。熱延板の再結晶率(熱延板断面のすべての視野での再結晶率)は 95%であった。クーラント油は、噴射する場合としない場合の両方で行った。クーラント油は各スタンド入側で噴射し、その総量は1800l/分とした。
次に前記熱延板を CALにより 440℃で0秒(熱延板が 440℃に到達後直ちに空冷)焼鈍した。加熱速度は 780℃/分、冷却速度は1020℃/分であった。続いて常法により冷間圧延して厚さ 0.3mm(圧延率86%)の冷延板を得た。これに 115℃で2時間の仕上焼鈍を施してキャンボディ用アルミニウム合金板を製造した。
【0022】
このようにして得られた合金板について、耳率、引張強度、DI成形性、フランジ成形性を下記方法により調査した。
耳率:前記合金板から57mmφの円板を切出し、これを直径33mm、肩R2.5mmのポンチを用いてクリアランス30% で深絞りした。
引張強度:前記合金板を 200℃で20分間加熱(塗装焼付け条件)し、加熱前後の引張強さ(TS)と0.2%耐力(YS)を測定した。
DI成形性:炭酸飲料用のDI缶胴(内径66mmφ、側壁板厚 100μm、側壁先端部板厚 150μm)に成形した。
フランジ成形性:前記成形したDI缶胴を、トリミングと洗浄を施した後、 200℃で20分間加熱し、次いで4段のネッキング加工を施して開口部の内径dを57mmφに縮小し、最後に角度90°の円錐状の治具をフランジ割れが発生するまで押し込み、割れの発生した時の開口部の径Dを測定し、開口部の径の増加率Pを、次式P=〔(D−d)/d〕×100%により算出した。結果を表2に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003566448
【0024】
【表2】
Figure 0003566448
【0025】
表2より明らかなように、本発明例品(No.1 〜8)はいずれも、耳率が低く、フランジ成形での口径の限界増加率も大きかった。また200 ℃で20分間加熱(塗装焼付条件)後の強度(YS)も265MPa以上あり、缶底部の耐圧強度も問題ないものであった。またDI成形性も良好であった。
これに対し、比較例品のNo.9,10,15,16 はそれぞれMgまたはMnの添加量が多かった為いずれもDI成形でしごき割れが生じた。No.11,17はCuとSiの添加量が多かった為加熱処理により引張強さが高くなりフランジ成形性が低下した。No.12,18はMg添加量が少ない為、またNo.14,20はCuとSiの添加量が少ない為いずれも強度が低下した。No.13,19はMnの添加量が少ない為DI成形時に焼付が生じた。
【0026】
(実施例2)
表1に示したNo.Aのアルミニウム合金を常法により溶解鋳造して厚さ 500mmのスラブを鋳造した。次にこのスラブを 490mm厚さに面削し、次いで均質化処理、熱間粗圧延、熱間仕上圧延を行って熱延コイルを作製し、この熱延コイルを室温まで冷却した後、冷間圧延してキャンボディ用アルミニウム合金板を製造した。 (イ)熱間仕上圧延工程でのクーラント油噴射、 (ロ)熱間仕上圧延工程後の CALによる中間焼鈍、 (ハ)冷間圧延後の仕上焼鈍は任意に行った。均質化処理、熱間粗圧延、熱間仕上圧延、冷間圧延、中間焼鈍、仕上焼鈍の条件、クーラント油量は種々に変化させた。
【0027】
このようにして得られた合金板について、実施例1と同じ方法により、耳率、引張強度、DI成形性、フランジ成形性を調査した。
表3、4に製造条件、表5、6に熱間仕上圧延における各スタンドの歪速度の対数および各スタンドの圧下率、表7、8にアルミニウム合金板の特性を示す。特性の評価基準は、耳率2.5%以内、加熱処理(200 ℃×20分)後の耐力265MPa以上、フランジ成形での口径の限界増加率15% 以上を良好とした。
【0028】
【表3】
Figure 0003566448
【0029】
【表4】
Figure 0003566448
【0030】
【表5】
Figure 0003566448
【0031】
【表6】
Figure 0003566448
【0032】
【表7】
Figure 0003566448
【0033】
【表8】
Figure 0003566448
【0034】
表7、8より明らかなように、本発明例品(No.21 〜40)は耳率が2.5%以下で低く、フランジ成形性も良好であった。また焼付けに相当する加熱処理後の強度(耐力)も265MPa以上で、缶底部の耐圧性にも問題のない強度水準を有し、さらにDI成形性も良好であった。
特に、熱間仕上圧延でクーラント油を掛けたものは、歪みがより十分に蓄積されて耳率等の特性に優れ、かつ高速圧延でも圧延上がり温度を低く制御できた。熱間仕上げ圧延後に中間焼鈍工程を入れたものはDI成形性が向上し、冷間圧延後に仕上焼鈍工程を入れたものはDI成形性やフランジ成形性が向上した。
【0035】
これに対して、比較例品のNo.41、44、53、56は熱間粗圧延終了温度が低いために、歪の蓄積が不十分で耳率が基準値を上回った。No.42、54は熱間粗圧延の終了温度が高すぎたために焼付きが生じた。No.43、55は粗圧延の終了板厚が厚かったためまたF3スタンドの圧下率が65%を超えたため、熱間仕上圧延時にエッジ割れが生じたり、仕上圧延終了後の表面性状(肌荒れ、焼付きなど)が悪化した。No.46、58は2スタンドタンデム式の熱間圧延機を使用したために、歪の蓄積が不十分で耳率が基準値を上回った。No.47、59は熱間仕上圧延での終了板厚が厚く、しかも最終圧延率が高いために、DI成形で絞り割れが発生した。No.60は熱間仕上圧延での終了温度が低く、仕上圧延終了後の再結晶率が低いために、耳率が基準値を上回った。No.49、61は熱間仕上圧延での各パス時間が長かったため、熱延板が冷えすぎてエッジ割れが生じ、しかも仕上圧延終了時の温度が低くなり、耳率が基準値を上回った。No.50、51,62、63は熱間仕上圧延機の各スタンドでの歪速度の対数和、仕上圧延での総圧下率、F1スタンドの圧下率がともに低く、歪の蓄積が不十分で耳率が基準値を上回った。No.52、64は最終焼鈍温度が高いために、析出により強度(焼付け前の耐力)が高くなりしごき割れが発生した。
【0036】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、高強度で、しごき加工性とフランジ成形性に優れ、且つ耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板が得られ、工業上顕著な効果を奏する。

Claims (2)

  1. Mgを0.8〜1.4mass%、Mnを0.8〜1.4mass%、Feを0.2から0.6mass%、Siを0.1〜0.5mass%、Cuを0.1〜0.3mass%を含有し、さらにTiを0.005〜0.05mass%を単独で或いはB0.0001〜0.01mass%とともに含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に、下記(a)〜(d)の諸工程を順に施し、更に下記(イ)、(ロ)、(ハ)のうち少なくとも1つを付加することを特徴とする耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
    (a)530〜630℃の温度で1時間以上加熱する均質化処理工程。
    (b)開始温度580℃以下、終了温度380〜460℃、終了板厚12〜60mmの熱間粗圧延工程。
    (c)下記(1)〜(7)の条件を満足する熱間仕上圧延工程。
    (1)使用圧延機がスタンド数が3以上のタンデム式熱間圧延機。
    (2)各スタンドでの圧下率が30%以上。
    (3)各スタンドでの歪速度の対数和〔Σ〕
    (4)圧延材の各スタンドパス間の通過所要時間が5秒以内。
    (5)総圧下率が80%以上。
    (6)終了板厚が1.6〜3.0mm。
    (7)終了温度が290℃以上
    (d)圧延率が60〜90%の冷間圧延工程
    (イ)(c)工程でクーラント油を噴出して熱延板を冷却する。
    (ロ)(c)工程と(d)工程の間に下記いずれかの方法で焼鈍工程を入れる。
    (1)箱型焼鈍炉を用いて300〜450℃で30分以上保持する焼鈍方法。
    (2)連続焼鈍炉を用いて100℃/分以上の加熱速度で360〜560℃の温度範囲の所定温度に急速加熱し、前記所定温度に到達後直ちに或いは120秒以内保持後、冷却速度100℃/分以上で70℃以下の温度に冷却する焼鈍方法。
    (ハ)(d)工程後に100〜160℃の温度で加熱する仕上焼鈍工程を入れる。
  2. 請求項1記載の耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法において、熱間粗圧延終了から熱間仕上圧延開始までの時間を240秒以内とする耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
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