JP3565765B2 - 紫外線耐性を有する繊維強化複合材料製搬送用部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紫外線耐性を有する繊維強化複合材料製搬送用部材およびその製造方法に関し、特に液晶表示装置、シリコンウェハー等の精密機器材料の搬送に好適な炭素繊維強化複合材料製部材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維強化プラスチックおよび炭素繊維強化炭素複合材料は、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスラケット、スキーストック等のスポーツ・レジャー用品、産業用ロボットの部材、印刷インキ用ロール、圧力容器等の工業材料および医療関係、橋梁の補修、土木補修等、特に炭素繊維強化炭素複合材料においては航空機のブレーキ材、高速鉄道のブレーキ材、原子炉の炉材、ロケットの噴射ノズル等に使用されている。
【0003】
近年、液晶表示装置の大型化に伴い、これら精密機器材料の搬送用産業用ロボットの搬送部材として、従来のアルミ等の金属材料に替えて、軽くて剛性が高く、
耐熱性のあるCFRP製搬送部材が使用され始めている。
【0004】
ところで、精密機器材料には油分、埃や塵等による汚染を極端に嫌うものが多く、そのため、工程によっては真空紫外領域の紫外線を照射することにより、有機物を分解し洗浄除去する方法が採用されている。CFRP製およびC/Cコンポジット製の搬送用部材は有機物であるため、真空紫外領域の紫外線を照射する装置内では表面が分解して搬送用部材として用いることはできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点を克服して、繊維強化複合材料が本来有している軽量、高剛性且つ耐熱性等の特性を活かしつつ、紫外線による洗浄処理に使用しても精密機器材料を汚染しにくい繊維強化複合材料製搬送用部材およびその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の事項に関する。
1. 繊維強化複合材料の表面に溶射法により、50〜250μm厚のセラミックまたはサーメットからなる耐紫外線被覆材層が形成されてなる紫外線耐性を有する繊維強化複合材料からなる搬送用部材。
2. 前記繊維強化複合材料が、繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化炭素複合材料で構成される上記1記載の搬送用部材。
3. 前記繊維強化複合材料中の強化繊維の少なくとも一部が、引張弾性率500〜1000GPaの炭素繊維であることを特徴とする上記1または2記載の搬送用部材。
4. 紫外線照射下で使用される搬送用産業用ロボットの搬送用部材である上記1〜3のいずれかに記載の搬送用部材。
5. 繊維強化複合材料の表面を溶射法により、50〜250μm厚のセラミックまたはサーメットからなる耐紫外線被覆材層を被覆する工程を有することを特徴とする紫外線耐性を有する繊維強化複合材料からなる搬送用部材の製造方法。
6. 前記繊維強化複合材料が、繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化炭素複合材料で構成される上記5記載の搬送用部材の製造方法。
7. 前記の耐紫外線被覆材層を被覆する工程が、溶射法により表面温度50〜200℃で被覆する工程である上記5または6記載の搬送用部材の製造方法。
8. 前記搬送用部材が、紫外線照射下で使用される搬送用産業用ロボットの搬送用部材である上記5〜7のいずれかに記載の搬送用部材の製造方法。
9. 上記4記載の搬送用部材を備えた搬送用産業ロボットを用いて、紫外線照射下で、精密機器材料を搬送することを特徴とする搬送方法。
10. 前記紫外線照射が、洗浄処理である上記9記載の搬送方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における繊維強化複合材料に被覆する耐紫外線被覆材としては紫外線耐性を有し、さらに紫外線を透過しない被覆材であれば何れも使用することができる。
【0011】
本発明において用いられる紫外線なる用語は波長100〜280nmのものをいい、特に有機物を容易に分解することができ、且つ、洗浄処理効果を有する波長100〜260nmのものをいう。
【0012】
本発明において紫外線耐性を有するとの用語は、25Wの低圧水銀灯を6個使用して波長180〜254nmの紫外線を、空気雰囲気中、常温、常圧において、水銀灯と試験片との距離50mm、1回の照射時間5〜20分、照射回数60回繰り返す紫外線照射試験(以下「紫外線照射試験」という。)をしても、耐紫外線被覆材自体が変質、分解、劣化、ひび割れ、剥離をしないものに対して用いられる。
【0013】
本発明において紫外線を透過しないとの用語は、紫外線照射試験をしても耐紫外線被覆材で被覆された母材の繊維強化複合材料製搬送用部材が変質、分解、劣化しないものに対して用いられ、紫外線照射試験で繊維強化複合材料製搬送用部材の曲げ強度がほとんど低下しない(具体的には、試験前に対する比が80%以上、好ましくは90%以上)ような被覆材であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、搬送用部材の構成材料であって、耐紫外線被覆材を被覆する前の繊維強化複合材料を繊維強化複合材料という。
【0015】
本発明において繊維強化複合材料製搬送用一次部材との用語は、繊維強化複合材料に切断面、研磨面、R加工面、穴加工面、溝加工面等の一次加工処理を加えたものであり、耐紫外線被覆材を被覆する前のものに対して用いられる。
【0016】
本発明において繊維強化複合材料製搬送用部材との用語は、繊維強化複合材料(繊維強化複合材料製一次部材が含まれる。)に耐紫外線被覆材を被覆したものに対して用いられる。
【0017】
本発明において用いられる耐紫外線被覆材の厚さは、紫外線が母材である繊維強化複合材料まで透過しないような厚さであることが好ましく、50〜250μmが好ましく用いることができる厚さの範囲である。この厚さが50μmより薄いと被覆ムラにより一部厚さ不足になる懸念があり、また、250μm以上では重量が大きくなり、用いる材料の軽量性が阻害され、かつコスト増になり好ましくない。
【0018】
耐紫外線被覆材の構成材料としてはセラミック、サーメット(セラミックおよび金属または合金)、金属および合金からなる群から選ばれた材料を使用することができる。また、該耐紫外線被覆材としては、複数種の構成材料を使用して2以上の積層構造とすることもできる。
【0019】
該セラミックとしては、金属酸化物系セラミックと金属炭化物系セラミック等が使用でき、金属酸化物系セラミックではアルミナ、スピネル、ムライト、アルミナチタニア、ジルコニア、クロミア、チタニア、ガーネット等が使用でき、金属炭化物系セラミックではチタニウムカーバイド、クロムカーバイド、タングステンカーバイド等が使用できる。
【0020】
該金属および合金としては、アルミニウム、シリコンアルミ、アルミニクロム、銅、銅ニッケル、アルミブロンズ、ニッケル、ニッケル/アルミナイド、ニッケルアルミ/モリブデン、モリブデン、モリブデン/鉄等が使用できる。
【0021】
該サーメットとしては上記のセラミックおよび金属または合金から選ばれ、それぞれ1あるいは2以上の混合物として使用できる。
【0022】
サーメットの混合比は、セラミック100重量部に対して、金属または合金を10〜300重量部の範囲で用いることができる。
【0023】
前記した耐紫外線被覆材を前記繊維強化複合材料の表面に被覆する際には、紫外線により搬送用部材の劣化がないように、繊維強化複合材料が露出したり、形成した被覆層の皮膜が薄くなり紫外線が耐紫外線被覆材を透過したりしないように留意し、特に被覆ムラがあってはならない。
【0024】
溶射法による好ましい被覆方法には例えばプラズマ溶射法および高エネルギーガス溶射法等があり、さらに好ましくはワイヤ溶射法、パウダー溶射法、ローカイド溶射法、スフェコード溶射法等がある。これらの方法で皮膜を形成すれば、アルミナ等の耐紫外線被覆材が不透明となり、紫外線を透過することもない。
【0025】
該被覆材による溶射時の被溶射面の温度は50〜200℃が好ましく、50℃以下では被覆が不十分で、脱落しやすく、200℃以上では炭素繊維強化プラスチックおよび/または炭素繊維強化炭素複合材料板が熱による反りや変形を生じて好ましくない。
【0026】
なお、上記被覆処理前に搬送用部材表面を物理的あるいは化学的に処理により改質して該被覆材と搬送用部材との密着性を増すことができ、炭素繊維強化プラスチックを採用する場合には特に有効である。これらの物理的処理としては研磨あるいはサンドペーパー等で目粗しすること、超音波処理する方法等があり、また化学的処理としては、表面を一部酸化するか官能基を付加させる方法があり、コロナ処理、プラズマ処理、酸化剤処理する方法等が採用できる。
【0027】
本発明においては、繊維強化複合材料製搬送用部材の母材である一次部材は、切断面、研磨面、R加工面、穴加工面、溝加工面等の一次加工等により、炭素繊維等が露出した部分があり、耐紫外線被覆材による被覆処理が行われた後に、このような表面の一部が粗面になることがあり、この部分をなめらかにするために、さらに、二次加工処理として研磨処理する必要がある。この場合の研磨処理方法としては、ダイアモンド研磨紙等を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の繊維強化複合材料としては、繊維強化セラミック、繊維強化炭素複合材料、繊維強化金属複合材料、繊維強化プラスチック(以下「FRP」という。)等の繊維強化複合材料を使用することができ、好ましくはFRP、炭素繊維強化炭素複合材料(以下「C/Cコンポジット」という。)等を使用することができる。該FRPとしては強化繊維に炭素繊維を主体として使用した炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」という。)が特に好ましい。
【0029】
繊維強化複合材料に使用されるマトリックスとしては熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、炭素、セラミックス、金属等およびこれらの2以上の混合物が使用でき、特に熱硬化性樹脂、炭素およびこれらの2以上の混合物が好ましく使用される。
【0030】
該熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、アラミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0031】
該熱可塑性樹脂としては、ナイロン樹脂、液晶性芳香族ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、液晶性芳香族ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ビニロン樹脂、アラミド樹脂、フッ素樹脂等の樹脂が用いられる。
【0032】
該セラミックスとしては、特に限定しないが、アルミナ、シリカ、炭化チタン、炭化珪素、窒化ポロン、窒化珪素等が使用できる。
【0033】
該金属としては特に限定しないが、チタン、アルミ、錫、珪素、銅、鉄、マグネシウム、クロム、ニッケル、モリブテン、タングステン等およびこれらの1または2以上を使用した合金等が使用できる。
【0034】
本発明において使用する強化繊維としてはステンレス繊維、銅繊維、ニッケル繊維、チタン繊維、タングステン繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、炭化チタン繊維、窒化ホウ素繊維、石油系ピッチ炭素繊維、石炭系ピッチ炭素繊維、PAN系炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等があり、これらのうちから選ばれた二種類以上をハイブリッド構造とした繊維を用いることができる。
【0035】
本発明の繊維強化複合材料製搬送用部材には、強化繊維として炭素繊維を主体的に用いた場合、軽量で高剛性の成形物が得られるため、好ましく用いることができる。また該炭素繊維をガラス繊維、アラミド繊維、ステンレス繊維、銅繊維、ニッケル繊維、チタン繊維、タングステン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、炭化チタン繊維、窒化ホウ素繊維その他の繊維と組み合わせることも適宜行うことができる。
【0036】
上記した強化繊維の形態としては特に限定されず、一次元強化、二次元強化、三次元強化、ランダム強化等目的に応じて適宜選択することができる。例えば強化繊維を短繊維、織布、不織布、一方向材、二次元織物、三次元織物等、より具体的にはフェルト、マット、組布、ワリフ、疑似等方材、平織、朱子織、綾織、模紗織り、からみ織等の材料を積層して使用することもできる。
【0037】
本発明のFRPおよびCFRPは通常知られた方法により製造されたものが使用できる。例えば前記のような形態に加工した強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸してプリプレグとし、さらにこれらを積層して硬化することによりFRPとすることができる。中でも強化繊維に一方向材を使用し、0゜、±45゜、90゜等の組で適宜配向させて積層することにより所定の弾性率を有する成形物を得る方法が本発明においては好適な製造方法である。
【0038】
上記積層方法の一例としては、スキン層と、コア層を設けて、該スキン層は最終的な搬送用部材の長手方向に対して―20゜〜+20゜の角度範囲に配向し且つ引張弾性率が500〜1000GPAである第1の炭素繊維を含有する第1の炭素繊維強化プラスチック層と、前記長手方向に対して+75゜〜+90゜および/または―75゜〜―90゜の角度範囲に配向し且つ引張弾性率が200〜400GPAである第2の炭素繊維を含有する第2の炭素繊維強化プラスチック層とを有するようにし、該コア層は、長手方向に対して+30゜〜+60゜および/または―30゜〜―60゜の角度範囲に配向し且つ引張弾性率が500〜1000GPAである第3の炭素繊維を含有することとし、スキン層の厚み比はスキン層とコア層全体の80〜60%とする方法が好適である。なお、コア層には芯材を使用することもでき、ハニカム、多孔体、波板(コルゲート)をなして空隙を有する構造体等を用いてもよい。
【0039】
前記強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させる方法としては特に限定はないが、樹脂を通常60〜90℃に加温して強化繊維に含浸させる、いわゆるホットメルト法を好ましく採用することができる。製造されたプリプレグ中の熱硬化性樹脂の含量は強化繊維と樹脂の総量に対して通常20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%の範囲である。
【0040】
該樹脂には所望に応じてフィラーを添加することができ、該フィラーとしてはマイカ、アルミナ、タルク、微粉状シリカ、ウォラストナイト、セピオライト、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン粉末、亜鉛末、アルミニウム粉、有機微粒子、すなわちアクリル微粒子、エポキシ樹脂微粒子、ポリアミド微粒子、ポリウレタン微粒子等が擧げられる。
【0041】
前記プリプレグは最終的にFRPに成形される。例えばプリプレグを搬送用部材に適した形状になるように積層して、オートクレーブ中または加圧プレス等により通常110〜150℃で30分〜3時間、加熱硬化させることによりFRPとすることができる。得られたFRPは品質が安定で、ボイドの少ないものを得ることができる。搬送用部材は精密な加工精度を必要とするので、得られたFRPを搬送用部材に適した形状にさらに加工することができる。
【0042】
また、本発明のC/Cコンポジットも通常知られた方法により得られたものを使用することができる。すなわち、採用されるC/Cコンポジットとしては炭素繊維を主体とすることができるが、前記のようにガラス繊維等の他の強化繊維を適宜組み合わせることができる。
【0043】
前記マトリックスの形成方法は、ピッチ、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を強化繊維に含浸する方法、化学気相蒸着法(CVD)、化学気相浸透法(CVI)等によって熱分解炭素を形成する方法等を用いることができる。
【0044】
該ピッチとしては石炭ピッチ、石油ピッチ、合成ピッチ等を用いることができ、また、これらのピッチを原料とした等方性ピッチ、メソ相ピッチ等を用いることができ、該熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂等を用いることができる。
【0045】
前記ピッチ、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂には充填剤、例えば炭素粉、黒鉛粉、炭化珪素粉、シリカ粉、炭素繊維ウィスカ、炭素短繊維、炭化珪素短繊維等を混合し、含浸することもできる。
【0046】
C/Cコンポジットの製造方法としては、例えば前記のように加工された炭素繊維にピッチ、フェノール樹脂等のマトリックス樹脂を含浸してプリフォームとして、これらの熱間静水圧プレス(HIP)処理等で含浸、炭化させることによりC/Cコンポジットとすることができる。炭素繊維は、一方向材を使用して前記FRPと同様に、コア層とスキン層からなるように積層することもできる。
【0047】
前記炭化条件としては、不活性ガス中、通常400〜3500℃、好ましくは500〜3300℃で加熱することができる。
【0048】
また得られたC/Cコンポジットは緻密化処理をすることができ、具体的には繰り返しマトリックス形成工程に通すことにより複合材料の密度を向上させることができる。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料製搬送用部材の形状は適宜用途に応じて板状、ロッド状、フォーク状、ハニカム状、中空ロッド状、T字状、I字状、湾曲面状あるいはこれらの組み合わせた形状等様々な形状を有することができる。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を擧げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0051】
実施例において紫外線照射試験は常温、常圧、空気中で180〜254nmの波長を有する25W低圧水銀ランプ6灯を50mmの距離から照射時間10分間で60回断続的に繰り返して照射した。
【0052】
実施例1
(1)C/Cコンポジット製搬送用一次部材の作製
引張強度3500MPA、引張弾性率800GPA、熱伝導率300W/mKのピッチ系炭素繊維を一方向に引き揃えた後に積層し、さらに炭素質ピッチを含浸させて圧力1MPA、温度1000℃で加圧炭化処理し、さらに炭素質ピッチを含浸、加圧炭化を繰り返して緻密化処理して一方向強化C/Cコンポジットを得た。該一方向強化C/Cコンポジットを、内径2.5mmのパッド取り付け穴、およびカップラ取り付け穴を有する長さ1000mm、幅380mm、厚さ8mmの形状を有する搬送用一次部材に加工した。このとき成形体の剛性が十分得られるように、成形体の炭素繊維は手元部から先端部AおよびB方向に配向させた。
【0053】
このようにして得られたC/Cコンポジット製搬送用一次部材のかさ密度1.90g/cm3、繊維堆積含有率Vf=60%、引張弾性率245GPA、炭素繊維配向方向の熱伝導率は400W/mK、炭素繊維に垂直な方向の熱伝導率は20W/mKであった。
【0054】
(2)耐紫外線被覆材の形成
前記C/Cコンポジット製搬送用一次部材の端部を2mmR加工したものを無塵のエアーガンにより表面の付着物を除去した後、平均粒径5μmのアルミナパウダーを用い、プラズマ溶射ガンによりC/Cコンポジット製搬送用一次部材(母材)の露出部分がないように約100μmの厚みとなるように溶射した。得られたアルミナ被覆したC/Cコンポジット製搬送用部材の表面を#600、#1000および#1600のダイアモンド研磨紙を用いて表面をなめらかにした。
【0055】
(3)紫外線耐性の試験
前記アルミナ溶射したC/Cコンポジット製搬送用部材を紫外線照射装置に入れ、紫外線照射試験をした。照射後、取り出し表面を観察した結果、微細なチリはなく、耐紫外線被覆材に劣化、ひび割れ等の変化はなく、さらに母材であるC/Cコンポジット部分の変質、劣化は見られなかった。
【0056】
(4)機械的物性の試験
0゜/90゜積層した平織物に石油ピッチを含浸してプリフォームとし、これを熱間静水圧プレス処理で2000℃で加圧炭化することにより、Vf(繊維体積含有率)40%、密度1.62g/cm3のC/Cコンポジットが得られた。これを長さ100mm、幅15mm、厚さ2mmに試験片を切り出し、アルミナを用いてプラズマ溶射し、20μmの皮膜を施しC/Cコンポジット製搬送用部材を得た。さらに該部材について紫外線照射試験後、曲げ強度を測定したところ照射前の該部材が105MPAであったのに対して照射後の該部材は104MPAであり、曲げ強度に変化は見られなかった。
【0057】
実施例2
(1)スキン層の作製
引張弾性率800GPAのピッチ系炭素繊維を一方向に引き揃えてビスマレイミド樹脂を含浸させて得た一方向プリプレグシートを、その強化方向が搬送用部材の長手方向となるべき方向に対して0゜(すなわち同方向)となるように、また、引張弾性率230GPAのPAN系炭素繊維を一方向に引き揃えてビスマレイミド樹脂を含浸させて得た一方向プリプレグシートを、その強化方向が上記長手方向に対して90゜(すなわち直交方向)となるように、それぞれ複数枚を積層して、オートクレーブ処理し、厚さ約1.2mmのスキン層を作製した。なお、ピッチ系炭素繊維を用いた前者のプリプレグのコア層における体積割合は75%とし、残りの25%はPAN系炭素繊維を用いた後者のプリプレグとした。
【0058】
(2)コア層の作製
引張弾性率600GPAのピッチ系炭素繊維を一方向に引き揃えてビスマレイミド樹脂を含浸させて得た一方向プリプレグシートを、その強化方向が上記長手方向となるべき方向に対して±45゜となるように、且つ、コア層におけるこのプリプレグシートの体積割合が5%となるように複数枚積層し、また残りの部分にはビスマレイミド樹脂を含浸させたガラス繊維からなるプリプレグを複数枚積層して厚さ約5.6mmのコア層を作製した。
【0059】
(3)FRP製搬送用一次部材の作製
2層の上記スキン層の間に上記コア層を配置させて接合し、さらに両スキン層の表面に、引張弾性率230GPAの炭素繊維の織物(朱子織り、厚さ0.1mm)を貼付してクロス層を形成させてCFRP板を得た。このCFRP板に、内径6mmの取り付け穴、真空パッド取り付け穴および幅6mm、深さ2mmの溝を加工して長さ1000mm、幅100mm、厚さ8.2mmのCFRP製搬送用一次部材とした。
【0060】
(4)耐紫外線被覆材の形成
前記CFRP製搬送用一次部材の端部を2mmR加工したものを無塵のエアーガンにより表面の付着物を除去した後、5μmのアルミナパウダーを用い、プラズマ溶射ガンによりCFRP製搬送用一次部材(母材)を露出部分がないように約100μm溶射した。得られたアルミナ被覆したCFRP製搬送用部材の表面を#600、#1000および#1600のダイアモンド研磨紙を用いて表面をなめらかにした。
【0061】
(5)紫外線耐性の試験
前記アルミナ溶射し被覆したCFRP製搬送用部材を紫外線照射装置に入れ、紫外線照射試験をした。照射後、取り出し表面を観察した結果、微細なチリはなく、耐紫外線被覆材の劣化やひび割れはなく、母材であるCFRP部分の変質、劣化は見られなかった。
【0062】
(6)機械的物性の試験
350゜F硬化型エポキシ樹脂組成物を引っ張り弾性率235GPA、引張強度3.53GPAの炭素繊維に含浸し、Vf60%の一方向プリプレグを作製した。このプリプレグを積層し、180℃、2時間硬化後、長さ100mm、幅15mm、厚さ2mmに試験片を切り出し、アルミナを用いてプラズマ溶射し、厚さ20μmの皮膜を施したCFRP製搬送用部材とした。
【0063】
この部材について紫外線照射試験した後、曲げ強度を測定したところ照射前の該部材が750MPAであるのに対して、照射後の該部材が748MPAであり曲げ強度の変化は見られなかった。
【0064】
比較例1
実施例2のCFRP製搬送用一次部材に常温硬化型セラミックコーティング剤{スカイミックSRCクリアー(大阪有機工業社製)/硬化剤=100/10重量比}を30μmの厚みとなるように塗布後、50℃、1h硬化した。
【0065】
該CFRP製搬送用部材を紫外線照射装置に入れ、紫外線照射試験をした。照射後、取り出し表面を観察したところ、表面の被覆剤が全てなくなり、CFRP部分のマトリックス樹脂やCFの一部が紫外線により損傷を受けていた。
【0066】
【発明の効果】
本発明の繊維強化複合材料(特にCFRPおよび/またはC/Cコンポジット)製搬送用部材は炭素繊維由来による精密機器材料の汚染がなく且つ軽量、耐熱性且つ高剛性という繊維強化複合材料製搬送用部材本来の性能を十分発揮することのできるものであり、さらに本発明の繊維強化複合材料製搬送用部材の製造方法によれば耐紫外線被覆材の処理後の表面がなめらかであり且つ該搬送用部材等の反りや変形を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたC/Cコンポジット製搬送用一次部材の一例を示す図である。
【図2】パット取り付け穴の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 カップラー
2 パット取り付け穴
Claims (10)
- 繊維強化複合材料の表面に溶射法により、50〜250μm厚のセラミックまたはサーメットからなる耐紫外線被覆材層が形成されてなる紫外線耐性を有する繊維強化複合材料からなる搬送用部材。
- 前記繊維強化複合材料が、繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化炭素複合材料で構成される請求項1記載の搬送用部材。
- 前記繊維強化複合材料中の強化繊維の少なくとも一部が、引張弾性率500〜1000GPaの炭素繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の搬送用部材。
- 紫外線照射下で使用される搬送用産業用ロボットの搬送用部材である請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用部材。
- 繊維強化複合材料の表面を溶射法により、50〜250μm厚のセラミックまたはサーメットからなる耐紫外線被覆材層を被覆する工程を有することを特徴とする紫外線耐性を有する繊維強化複合材料からなる搬送用部材の製造方法。
- 前記繊維強化複合材料が、繊維強化プラスチックまたは炭素繊維強化炭素複合材料で構成される請求項5記載の搬送用部材の製造方法。
- 前記の耐紫外線被覆材層を被覆する工程が、溶射法により表面温度50〜200℃で被覆する工程である請求項5または6記載の搬送用部材の製造方法。
- 前記搬送用部材が、紫外線照射下で使用される搬送用産業用ロボットの搬送用部材である請求項5〜7のいずれかに記載の搬送用部材の製造方法。
- 請求項4記載の搬送用部材を備えた搬送用産業ロボットを用いて、紫外線照射下で、精密機器材料を搬送することを特徴とする搬送方法。
- 前記紫外線照射が、洗浄処理である請求項9記載の搬送方法。
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