JP2022067653A - 炭素繊維強化複合材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のC/C複合材における加工時の板面からの粉塵の発生、従来のSiC-C/C複合材における加工時のチッピング等の欠けや層間剥離が抑制され、製造工程の削減を図ることも可能な炭素繊維強化複合材を提供する。【解決手段】第1の方向に配向している炭素繊維を含む第1の炭素繊維強化複合層と、該第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層との少なくとも2層が積層されてなる炭素繊維強化複合材。該第1の炭素繊維強化複合層の少なくとも1層は、金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であり、該炭素繊維強化炭化ケイ素複合層が該炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層を形成しており、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きい。【選択図】図1
Description
本発明は、炭素繊維強化複合材に係り、特に、金属シリコン(Si)を溶融含浸させて、炭素繊維強化炭素複合材中の炭素をシリコンとの反応で炭化ケイ素化した炭素繊維強化炭化ケイ素複合層(以下「SiC-C/C複合層」と称すことがある。)を有する炭素繊維強化複合材とその製造方法に関する。
耐候性、耐熱性が要求される環境、例えば半導体製造装置であるエッチング装置のウェハキャリアや液晶パネル製造ラインの加熱炉中のキャリアやハンドにおいては、一般的にアルミナなどのセラミックスが使用されている。
ところが、セラミックスは耐候性、耐熱性が高い反面、高価で耐衝撃性が低く割れやすいという問題がある。また、比重が大きいため、特に大型ロボットのハンドなどにおいては自重による撓みが発生して位置ずれが生じたり、ロボット自体を大型にする必要があるなどの問題もある。
このような問題に対し、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた構造体が提案されている。しかしながら、CFRPを用いた構造体はマトリックスがプラスチックであるため耐熱性が低く、一般的に200℃以上では使用することができない。
これに対して、炭素繊維と炭素質マトリックスとからなる炭素繊維強化炭素複合材(以下「C/C複合材」と称すことがある。)は、耐熱性が高く、軽量で耐摩耗性等にも優れることから、従来より、ロケットノズルや航空機のブレーキ材など、主として宇宙、航空機用材料等として用いられている(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載されるような従来のC/C複合材で作成した部材では、炭素繊維及び複合材の緻密化に用いたコール―タール・ピッチ等の含浸材に起因する粉塵が板面から発生するため、半導体製造装置であるエッチング装置のウェハキャリアや液晶パネル製造ラインの加熱炉中のキャリアやハンド等の搬送用部材の構成材料として使用できないという問題点があった。この問題を解決するために、従来のC/C複合材では含浸材を含浸して焼成する工程を複数回実施した後、メッキ処理、ガラス状カーボンコート等の防塵処理が別途必要であった。
また、C/C複合材は、耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ高強度で軽量であるが、一般に400℃程度から酸化を受けるため、高温大気中では、極短時間だけ使用される場合を除き、使用不可能である。
C/C複合材の酸化による物理的、化学的性質の低下を防止すること等を目的として、C/C複合材に金属シリコンを溶融含浸させ、C/C複合材中の炭素をシリコンと反応させて炭化ケイ素化したSiC-C/C複合材が提案されている(例えば特許文献2,3)。
特許文献2に記載されるSiC-C/C複合材は、炭素繊維の繊維方向が互いに直交するように交互に積層されたプリフォームヤーンから製造されたC/C複合材の全体に溶融金属シリコンを含浸させたものであるが、C/C複合材を構成する第1の方向のヤーン配列体と、これと直交する第2の方向のヤーン配列体との厚み比が等しい(第1の方向のヤーン配列体の厚み割合が全体の50%)ため、第1及び第2の方向において強度や弾性率が同等で、所望の一方向に高い強度及び弾性率を得ることができないという問題があった。
特許文献3に記載されるSiC-C/C複合材は、特許文献2に記載の炭素繊維の繊維方向が互いに直交するように積層されたSiC-C/C複合材では、炭素繊維のすべてを一方向に配向させたものに比べると、該一方向における強度及び弾性率が低いという問題を解決するために、炭素繊維を一方向に配向させてSiC-C/C複合材としたものであるが、このようなSiC-C/C複合材では、基材の炭素繊維に一定の割合で異方性がないことから、半導体製造装置であるエッチング装置のウェハキャリアや液晶パネル製造ラインの加熱炉中のキャリアやハンド等の形状に加工する際に、繊維方向に沿って削り出しがある場合、その部分を局部的に支える炭素繊維がないため、チッピング等の欠けや層間剥離が発生するという問題が生じる。
本発明は、上記従来のC/C複合材及びSiC-C/C複合材の問題点を解決する炭素繊維強化複合材、即ち、従来のC/C複合材における加工時の板面からの粉塵の発生、従来のSiC-C/C複合材における加工時のチッピング等の欠けや層間剥離が抑制され、かつ、所望の方向に十分な曲げ強度を有し、また、製造工程の削減を図ることも可能な炭素繊維強化複合材及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、特許文献3のように、単に長手方向に炭素繊維を引き揃えたSiC-C/C複合材ではなく、SiC-C/C複合層と、このSiC-C/C複合層とは炭素繊維の配向が異なるC/C複合層とを積層し、SiC-C/C複合層を少なくとも一方の最表面層とすることで、チッピング等の欠けや層間剥離の発生を抑制でき、また、SiC-C/C複合層により、炭素繊維及び含浸材に起因する粉塵が板面から発生することを抑制でき、更には、C/C複合材における複数回にわたる含浸材の含浸、焼成、その後のメッキ処理、ガラス状カーボンコート等の防塵処理を、溶融金属シリコンの含浸工程で代替することができ、製造工程の削減も図ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 第1の方向に配向している炭素繊維を含む第1の炭素繊維強化複合層と、該第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層との少なくとも2層が積層されてなる炭素繊維強化複合材であって、該第1の炭素繊維強化複合層の少なくとも1層は、金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であり、該炭素繊維強化炭化ケイ素複合層が該炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層を形成しており、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きいことを特徴とする炭素繊維強化複合材。
[2] 前記炭素繊維強化複合材が、3層以上の層が積層されてなるものであり、両最表面層がいずれも前記炭素繊維強化炭化ケイ素複合層である、[1]に記載の炭素繊維強化複合材。
[3] 前記炭素繊維強化複合材が、前記金属シリコンを、該炭素繊維強化複合材の単位体積1cm3当たり、0.1g以上含有する、[1]又は[2]に記載の炭素繊維強化複合材。
[4] 前記第1の炭素繊維強化複合層の厚みが、前記炭素繊維強化複合材全体の厚みの70%以上である、[1]ないし[3]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[5] 前記炭素繊維強化複合材は、長手方向の長さと幅方向の長さの比が1を超える板状の積層体である、[1]ないし[4]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[6] 前記第1の方向が前記長手方向と平行である、[5]に記載の炭素繊維強化複合材。
[7] 前記長手方向の曲げ強度が150MPa以上である、[5]又は[6]に記載の炭素繊維強化複合材。
[8] 前記第2の方向が前記長手方向となす鋭角が20~90°である、[5]ないし[7]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[9] 気孔率が10vol%以下で嵩密度が2.5g/cm3以下である、[1]ないし[8]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[10] 前記第1の炭素繊維強化複合層のFAWが1,000~20,000g/m2であり、前記第2の炭素繊維強化複合層のFAWが200~5,000g/m2であり、前記炭素繊維強化複合材全体のFAWが1,200~25,000g/m2である、[1]ないし[9]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[11] 前記炭素繊維がピッチ系炭素繊維である、[1]ないし[10]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[12] 該ピッチ系炭素繊維の熱伝導率が10W/m・K以上である、[11]に記載の炭素繊維強化複合材。
[13] 前記炭素繊維の体積含有率が40~70%である、[1]ないし[12]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材。
[14] 炭素繊維が繊維軸方向に引き揃えられた一方向プリプレグの複数枚を、該炭素繊維の引き揃え方向が交叉するように積層し、得られた積層体を加熱加圧して炭素繊維強化樹脂成形体を得、該炭素繊維強化樹脂成形体を焼成、炭化させてプリフォームを得る工程を含む[1]ないし[13]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
[15] 前記プリプレグが熱硬化性樹脂を含み、該熱硬化性樹脂の含有率が15~45重量%である、[14]に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
[16] 前記プリフォームに金属シリコンを含浸させる工程を含む、[14]又は[15]に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
[17] 前記プリフォームに、コールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ、及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の含浸材を含浸させた後焼成し、その後、金属シリコンを含浸させる工程を含む、[14]又は[15]に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
[18] [1]ないし[13]のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材を備える搬送用部材。
本発明の炭素繊維強化複合材は、所望の方向に十分な曲げ強度を有する上に、加工時のチッピング等の欠けや、層間剥離、炭素繊維及び含浸材に起因する板面からの粉塵の発生が抑制され、加工性、取り扱い性に優れる。しかも、本発明によれば、従来法に比べて工程数を削減することもでき、工業的有利に炭素繊維強化複合材を製造することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[炭素繊維強化複合材]
本発明の炭素繊維強化複合材は、第1の方向に配向している炭素繊維を含む第1の炭素繊維強化複合層(第1のC/C複合層)と、該第1方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層(第2のC/C複合層)との少なくとも2層が積層されてなる炭素繊維強化複合材であって、該第1の炭素繊維強化複合層の少なくとも1層は、金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層(SiC-C/C複合層)であり、該炭素繊維強化炭化ケイ素複合層が該炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層を形成しており、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きいことを特徴とする。
本発明の炭素繊維強化複合材は、第1の方向に配向している炭素繊維を含む第1の炭素繊維強化複合層(第1のC/C複合層)と、該第1方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層(第2のC/C複合層)との少なくとも2層が積層されてなる炭素繊維強化複合材であって、該第1の炭素繊維強化複合層の少なくとも1層は、金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層(SiC-C/C複合層)であり、該炭素繊維強化炭化ケイ素複合層が該炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層を形成しており、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きいことを特徴とする。
本発明の炭素繊維強化複合材は、長手方向の長さと幅方向の長さの比が1を超える板状の炭素繊維強化複合材であることが好ましく、この場合において、第1のC/C複合層の炭素繊維の配向方向である第1の方向が、この長手方向と平行であることが好ましい。また、第2のC/C複合層の炭素繊維の配向方向である第2の方向が、この長手方向、即ち、第1の方向となす鋭角が20~90゜であることが好ましく、より好ましくはこの交叉角度は45~90゜、特に好ましくは70~90゜である。
第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層が存在することにより金属シリコンが含浸したときに炭素繊維強化複合材の反りを低減することができる。詳しくは、炭素繊維と金属シリコンでは熱膨張係数に差がある。この場合、炭素繊維強化複合材を冷却したときに炭素繊維と金属シリコンの存在する領域で収縮の差が生じることとなりその歪みにより炭素繊維強化複合材の反りとなる。第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層が存在する場合、第2の方向に配向している炭素繊維が、第1の炭素繊維強化複合層の収縮を抑える役割を果たし、炭素繊維強化複合材の反りを低減することができる。
第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層が存在することにより金属シリコンが含浸したときに炭素繊維強化複合材の反りを低減することができる。詳しくは、炭素繊維と金属シリコンでは熱膨張係数に差がある。この場合、炭素繊維強化複合材を冷却したときに炭素繊維と金属シリコンの存在する領域で収縮の差が生じることとなりその歪みにより炭素繊維強化複合材の反りとなる。第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層が存在する場合、第2の方向に配向している炭素繊維が、第1の炭素繊維強化複合層の収縮を抑える役割を果たし、炭素繊維強化複合材の反りを低減することができる。
図1は、本発明の炭素繊維強化複合材の実施の形態の一例を示す模式的断面図であり、この炭素繊維強化複合材10は、第1の炭素繊維強化複合層11(11A,11B,11C,11D)の2層ずつが、第2の炭素繊維強化複合層12を介して積層された5層積層構造である。
本発明の炭素繊維強化複合材において、炭素繊維強化複合材全体に占める第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、炭素繊維強化複合材全体に占める第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きい。
この構成要件を満たすことにより、第1の炭素繊維強化複合層の炭素繊維の配向方向である第1の方向に炭素繊維強化複合材の強度及び弾性率を高めることができ、また一定割合で第2の炭素繊維強化複合層が存在することでオートクレーブ成形においてガス抜き効果を高めることができる。
図1の炭素繊維強化複合材10では、第1の炭素繊維強化複合層11の厚さは、炭素繊維強化複合材10全体の厚さの80%となっている。
本発明の炭素繊維強化複合材において、炭素繊維強化複合材全体に占める第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、炭素繊維強化複合材全体に占める第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きい。
この構成要件を満たすことにより、第1の炭素繊維強化複合層の炭素繊維の配向方向である第1の方向に炭素繊維強化複合材の強度及び弾性率を高めることができ、また一定割合で第2の炭素繊維強化複合層が存在することでオートクレーブ成形においてガス抜き効果を高めることができる。
図1の炭素繊維強化複合材10では、第1の炭素繊維強化複合層11の厚さは、炭素繊維強化複合材10全体の厚さの80%となっている。
このような炭素繊維強化複合材において、少なくとも一方の最表面層(図1中の10A又は10B)を構成する第1の炭素繊維強化複合層が、金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることが好ましく、両方の最表面層(図1中の10A及び10B)を構成する第1の炭素繊維強化複合層が金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることが好ましい。金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層は、金属シリコンが部分的に含浸されている態様とすることもできる。例えば、炭素繊維強化炭化ケイ素複合層の厚み方向表面側に金属シリコンが部分的に含浸された状態としてもよい。各層を積層した後に金属シリコンを含浸させてもよいし、金属シリコンが含浸された状態の炭素繊維強化炭化ケイ素複合層を積層させてもよい。
本発明の効果、即ち、加工時のチッピング等の欠けや、層間剥離、炭素繊維及び含浸材に起因する板面からの粉塵の発生の抑制効果をより一層確実に得る上で、炭素繊維強化複合材を構成する第1の炭素繊維強化複合層のすべてが金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることが好ましく、第2の炭素繊維強化複合層も含めてすべての炭素繊維強化複合層が金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることが特に好ましい。
なお、図1は本発明の炭素繊維強化複合材の実施の形態の一例を示すものであって、本発明の炭素繊維強化複合材の積層構造は何ら図示の積層構造に限定されない。
例えば、第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層の3層積層構造、第1の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層の4層積層構造、第1の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層の7層積層構造等であってもよい。
いずれの場合も、炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層が第1の炭素繊維強化複合層に金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であり、また、炭素繊維強化複合材全体に占める第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、炭素繊維強化複合材全体に占める第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きい。
ただし、前述の通り、炭素繊維強化複合材の両最表面層が第1の炭素繊維強化複合層に金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることが好ましく、最表面層以外の第1の炭素繊維強化複合層や第2の炭素繊維強化複合層も金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることがより好ましい。
例えば、第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層の3層積層構造、第1の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層の4層積層構造、第1の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第2の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層/第1の炭素繊維強化複合層の7層積層構造等であってもよい。
いずれの場合も、炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層が第1の炭素繊維強化複合層に金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であり、また、炭素繊維強化複合材全体に占める第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、炭素繊維強化複合材全体に占める第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きい。
ただし、前述の通り、炭素繊維強化複合材の両最表面層が第1の炭素繊維強化複合層に金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることが好ましく、最表面層以外の第1の炭素繊維強化複合層や第2の炭素繊維強化複合層も金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であることがより好ましい。
このような本発明の炭素繊維強化複合材の製造方法には特に制限はないが、例えば、下記(1)~(5)の工程を経て製造される。
(1) 炭素繊維が繊維軸方向に引き揃えられた一方向プリプレグ(以下、「UDプリプレグ」と称すことがある。)の複数枚を、該炭素繊維の引き揃え方向が交叉するように積層する。
(2) 得られた積層体を加熱加圧して炭素繊維強化樹脂成形体(以下、「CP成形体」と称すことがある。)を得る。
(3) 該CP成形体を焼成、炭化させてプリフォームを得る。
(4) プリフォームにコールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ、及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の含浸材を含浸させた後、焼成する。
(5) その後、金属シリコンを含浸させる。
なお、上記(4)の工程は適宜省略し、(3)の工程後、直接(5)の工程を行うこともできる。以下において、上記(5)の工程に供する(3)又は(4)の工程を経たC/C複合材を「溶融含浸前C/C複合材」と称すことがある。
(1) 炭素繊維が繊維軸方向に引き揃えられた一方向プリプレグ(以下、「UDプリプレグ」と称すことがある。)の複数枚を、該炭素繊維の引き揃え方向が交叉するように積層する。
(2) 得られた積層体を加熱加圧して炭素繊維強化樹脂成形体(以下、「CP成形体」と称すことがある。)を得る。
(3) 該CP成形体を焼成、炭化させてプリフォームを得る。
(4) プリフォームにコールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ、及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の含浸材を含浸させた後、焼成する。
(5) その後、金属シリコンを含浸させる。
なお、上記(4)の工程は適宜省略し、(3)の工程後、直接(5)の工程を行うこともできる。以下において、上記(5)の工程に供する(3)又は(4)の工程を経たC/C複合材を「溶融含浸前C/C複合材」と称すことがある。
以下、本発明の炭素繊維強化複合材の製造方法に従って、本発明の炭素繊維強化複合材を説明する。
<炭素繊維>
本発明の炭素繊維強化複合材の第1のC/C複合層及び第2のC/C複合層を構成する炭素繊維は、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維を用いることができるが、ピッチ系炭素繊維であることが好ましい。
即ち、C/C複合層を構成する炭素繊維としては、PAN系炭素繊維を用いたC/C複合層では、炭化ケイ素化の際に、PAN系炭素繊維自体がシリコンと反応して炭化ケイ素化されてしまうことにより、炭素繊維本来の特性が損なわれ、引張強度向上効果が有効に発揮されなくなる場合があるため金属シリコンを含浸させない層に好適に用いることができる。これに対して、ピッチ系炭素繊維は、炭化ケイ素化の際にシリコンと反応しにくいため、その補強効果を保持できる。
本発明の炭素繊維強化複合材の第1のC/C複合層及び第2のC/C複合層を構成する炭素繊維は、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維を用いることができるが、ピッチ系炭素繊維であることが好ましい。
即ち、C/C複合層を構成する炭素繊維としては、PAN系炭素繊維を用いたC/C複合層では、炭化ケイ素化の際に、PAN系炭素繊維自体がシリコンと反応して炭化ケイ素化されてしまうことにより、炭素繊維本来の特性が損なわれ、引張強度向上効果が有効に発揮されなくなる場合があるため金属シリコンを含浸させない層に好適に用いることができる。これに対して、ピッチ系炭素繊維は、炭化ケイ素化の際にシリコンと反応しにくいため、その補強効果を保持できる。
ピッチ系炭素繊維は、原料ピッチを溶融紡糸してピッチ繊維を得、次いで不融化、炭化、或いは更に黒鉛化することによって得られる。ピッチ系炭素繊維の形態としては、複数の単繊維(フィラメント)からなるトウ、ストランド、ロービング、ヤーンなどの形態であり、好ましくは2000本以上、14000本以下、より好ましくは12000本以下の単繊維を引き揃えた炭素繊維束として提供される。炭素繊維としては引張弾性率が250~1000GPa、熱伝導率が10W/m・K以上、特に50~1000W/m・Kのものが好ましい。1本の炭素繊維の直径は7~14μm、特に8~12μmが好適である。
ここで、炭素繊維の繊維径は、炭素繊維の顕微鏡観察又はレーザー計測器により20~30個の繊維径を測定し、その測定値の平均値で求められる。
引張弾性率については、JIS R7606に準拠し、万能試験機で測定された値からの計算値である。また、熱伝導率は、体積固有抵抗率を測定し、その測定された値からの計算値である。後掲の実施例においても同様である。
引張弾性率については、JIS R7606に準拠し、万能試験機で測定された値からの計算値である。また、熱伝導率は、体積固有抵抗率を測定し、その測定された値からの計算値である。後掲の実施例においても同様である。
<UDプリプレグ>
UDプリプレグは、炭素繊維を一方向に引き揃えたシート(以下「UDシート」と称する場合がある)に、不活性ガス雰囲気中で加熱されることにより炭化する樹脂及び/又はピッチを含浸させた後、乾燥することで製造することができる。
UDプリプレグは、炭素繊維を一方向に引き揃えたシート(以下「UDシート」と称する場合がある)に、不活性ガス雰囲気中で加熱されることにより炭化する樹脂及び/又はピッチを含浸させた後、乾燥することで製造することができる。
なお、UDシートは、後述の好適なFAWを満たすことができるように製造される。また、第1のC/C複合層を形成するUDシートと第2のC/C複合層を形成するUDシートとは同一であってもよく、炭素繊維の種類や引き揃え本数等が異なるものであってもよいが、通常製造工程の簡略化のために同一のものが用いられる。
UDシートに含浸させる樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂の1種又は2種以上を用いることができる。
これらの樹脂は、水、アルコール、アセトン、アントラセン油等の溶媒に溶解ないし分散させて適度な粘度に調整された含浸液として用いられる。
これらの樹脂は、水、アルコール、アセトン、アントラセン油等の溶媒に溶解ないし分散させて適度な粘度に調整された含浸液として用いられる。
なお、熱硬化性樹脂の代りに石油系、石炭系等のピッチを用いることもできる。
UDプリプレグの樹脂及び/又はピッチ含有率は、15~45重量%、特に25~35重量%であることが好ましい。
UDプリプレグの樹脂及び/又はピッチ含有率が多過ぎると相対的に炭素繊維の含有割合が少なくなることにより、炭素繊維による補強効果を十分に得ることができない。UDプリプレグの樹脂含有率が少な過ぎると得られるC/C複合層の炭素質マトリックスが少なくなることにより、得られるC/C複合層が脆くなる場合がある。
UDプリプレグの樹脂及び/又はピッチ含有率が多過ぎると相対的に炭素繊維の含有割合が少なくなることにより、炭素繊維による補強効果を十分に得ることができない。UDプリプレグの樹脂含有率が少な過ぎると得られるC/C複合層の炭素質マトリックスが少なくなることにより、得られるC/C複合層が脆くなる場合がある。
<UDプリプレグの積層>
UDプリプレグは、その必要枚数を積層して積層体とする。
この際、炭素繊維の引き揃え方向(配向方向)が交叉するように積層する。
好ましくは、得られる炭素繊維強化複合材の両最表面層が第1のC/C複合層となり、これら第1のC/C複合層間に第2のC/C複合層が介在するように積層する。ただし、第2のC/C複合層間に第1のC/C複合層が介在するようにしてもよく、第1のC/C複合層と第2のC/C複合層とが交互に位置するように積層してもよい。
各UDプリプレグの積層枚数は、後述の第1のC/C複合層の厚み割合を満たすことができるように設計することが好ましい。
UDプリプレグは、その必要枚数を積層して積層体とする。
この際、炭素繊維の引き揃え方向(配向方向)が交叉するように積層する。
好ましくは、得られる炭素繊維強化複合材の両最表面層が第1のC/C複合層となり、これら第1のC/C複合層間に第2のC/C複合層が介在するように積層する。ただし、第2のC/C複合層間に第1のC/C複合層が介在するようにしてもよく、第1のC/C複合層と第2のC/C複合層とが交互に位置するように積層してもよい。
各UDプリプレグの積層枚数は、後述の第1のC/C複合層の厚み割合を満たすことができるように設計することが好ましい。
なお、積層するUDプリプレグはすべて同一のものに限らず、含浸樹脂の種類や含浸率、用いたUDシートの種類等の異なるものであってもよいが、通常、製造工程の簡略化のために同一のものが用いられる。
<CP成形体>
UDプリプレグの積層体は、加熱加圧してCP成形体を得る。
この加熱加圧条件は、用いた熱硬化性樹脂によっても異なるが、通常の場合、温度は100~500℃、好ましくは100~200℃で、圧力は1~20kg/cm2、好ましくは5~10kg/cm2程度である。また、この加熱加圧の保持時間は60~180分程度である。
UDプリプレグの積層体は、加熱加圧してCP成形体を得る。
この加熱加圧条件は、用いた熱硬化性樹脂によっても異なるが、通常の場合、温度は100~500℃、好ましくは100~200℃で、圧力は1~20kg/cm2、好ましくは5~10kg/cm2程度である。また、この加熱加圧の保持時間は60~180分程度である。
<プリフォーム>
C/P成形体は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中、700~2,500℃、好ましくは700~1,600℃程度の温度で焼成することにより、樹脂を炭化(本発明において、この焼成、炭化により得られるものを「プリフォーム」と称す。)させて、プリフォームを得る。
C/P成形体は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中、700~2,500℃、好ましくは700~1,600℃程度の温度で焼成することにより、樹脂を炭化(本発明において、この焼成、炭化により得られるものを「プリフォーム」と称す。)させて、プリフォームを得る。
<プリフォームの緻密化>
得られる炭素繊維強化複合材の嵩密度を高め、曲げ弾性率、その他の機械的特性を十分に高いものとするために、金属シリコンの溶融含浸に先立ち、得られたプリフォームの緻密化を行ってもよい。
得られる炭素繊維強化複合材の嵩密度を高め、曲げ弾性率、その他の機械的特性を十分に高いものとするために、金属シリコンの溶融含浸に先立ち、得られたプリフォームの緻密化を行ってもよい。
緻密化の方法としては、プリフォームにフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、及び/又は、コールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ等の熱可塑性物質などの含浸材を含浸させた後、焼成して含浸材を炭化させる含浸・炭化プロセスを少なくとも1回行う方法;或いはメタン、プロパンなどの炭化水素ガスを熱分解して炭素を得るCVD法等が挙げられる。特に高熱容量且つ高熱伝導性の炭素繊維強化複合材が得られることから、含浸材としてピッチを含浸させて炭化させる含浸・炭化プロセスを少なくとも1回行う方法が好ましい。
炭化プロセスでの焼成温度は700~2,500℃、特に700~1,600℃程度であることが好ましい。炭化プロセスでの雰囲気は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気が好ましい。
この含浸・炭化プロセスの回数を調整することにより、本発明に好適な嵩密度及び気孔率を有する溶融含浸前C/C複合材を得ることができる。具体的には、含浸・炭化プロセスの回数が多いほど嵩密度は高く、気孔率は小さくなる傾向にある。
なお、この緻密化処理後は、更に必要に応じて黒鉛化処理を行ってもよい。
黒鉛化処理は、例えば、緻密化処理後のプリフォームを不活性ガス雰囲気中で1,600~2,800℃で焼成することにより行うことができる。
黒鉛化処理は、例えば、緻密化処理後のプリフォームを不活性ガス雰囲気中で1,600~2,800℃で焼成することにより行うことができる。
<金属シリコンの溶融含浸>
必要に応じて上記の緻密化処理、更には黒鉛化処理を行ったプリフォーム(溶融含浸前C/C複合材)への金属シリコンの溶融含浸は、各種の方法で行うことができる。例えば、溶融含浸前C/C複合材とシリコンとを不活性ガス雰囲気下にて1100~1400℃程度の温度に保持し、次いで1450~2500℃の温度に昇温することにより、溶融含浸前C/C複合材の開気孔内部へシリコンを溶融含浸させ、その一部を溶融含浸前C/C複合材の炭素と反応させて炭化ケイ素としてSiC-C/C複合層を形成する。このSiC-C/C複合層では、マトリックスは、未反応の炭素及びシリコンと、反応により生じた炭化ケイ素よりなる。溶融含浸前C/C複合材への金属シリコンの含浸量は、得られる炭素繊維強化複合材の単位体積1cm3当りのシリコン含浸量として0.1g以上、例えば0.15~1.0gが好適である。
必要に応じて上記の緻密化処理、更には黒鉛化処理を行ったプリフォーム(溶融含浸前C/C複合材)への金属シリコンの溶融含浸は、各種の方法で行うことができる。例えば、溶融含浸前C/C複合材とシリコンとを不活性ガス雰囲気下にて1100~1400℃程度の温度に保持し、次いで1450~2500℃の温度に昇温することにより、溶融含浸前C/C複合材の開気孔内部へシリコンを溶融含浸させ、その一部を溶融含浸前C/C複合材の炭素と反応させて炭化ケイ素としてSiC-C/C複合層を形成する。このSiC-C/C複合層では、マトリックスは、未反応の炭素及びシリコンと、反応により生じた炭化ケイ素よりなる。溶融含浸前C/C複合材への金属シリコンの含浸量は、得られる炭素繊維強化複合材の単位体積1cm3当りのシリコン含浸量として0.1g以上、例えば0.15~1.0gが好適である。
なお、このような金属シリコンの溶融含浸により形成されるSiC-C/C複合層の厚みは、上記の好適な金属シリコン含浸量を満たすものであればよく、特に制限はないが、通常、本発明の炭素繊維強化複合材の全厚みの55%以上、特に80~100%がSiC-C/C複合層とされていることが好ましい。
<炭素繊維強化複合材の大きさ、形状>
本発明の炭素繊維強化複合材は、好ましくは長手方向の長さと幅方向(短手方向)の長さの比(長手方向/幅方向)が1を超えるものであり、より好ましくは、この比が5以上、更に好ましくは20以上の長尺状の板状部材である。長手方向/幅方向の長さ比が大きい程、軽量な板状部材が得られるが、工業的な生産性や炭素繊維強化複合材の用途から、通常、この比は100以下、好ましくは90以下、より好ましくは80以下である。
本発明の炭素繊維強化複合材は、好ましくは長手方向の長さと幅方向(短手方向)の長さの比(長手方向/幅方向)が1を超えるものであり、より好ましくは、この比が5以上、更に好ましくは20以上の長尺状の板状部材である。長手方向/幅方向の長さ比が大きい程、軽量な板状部材が得られるが、工業的な生産性や炭素繊維強化複合材の用途から、通常、この比は100以下、好ましくは90以下、より好ましくは80以下である。
本発明の炭素繊維強化複合材の長手方向及び幅方向(短手方向)の長さ及び厚みについては特に制限はなく、用途と生産設備の規模に応じて適宜決定される。
一般的には、本発明の炭素繊維強化複合材の長手方向の長さは通常200~5,000mm、好ましくは500~2,000mm、より好ましくは800~1,800mm、特に好ましくは1,000~1,500mmであり、幅方向(短手方向)の長さは、通常10~100mm、好ましくは20~80mm、より好ましくは25~70mm、特に好ましくは30~60mmであり、厚みは、通常1~40mm、好ましくは1~30mm、中でも好ましくは1~25mm、より好ましくは5~25mm、特に好ましくは8~20mmである。炭素繊維強化複合材の厚みが薄過ぎると剛性が不足し、厚過ぎると重量過多となり、用途が制限されることとなる。
一般的には、本発明の炭素繊維強化複合材の長手方向の長さは通常200~5,000mm、好ましくは500~2,000mm、より好ましくは800~1,800mm、特に好ましくは1,000~1,500mmであり、幅方向(短手方向)の長さは、通常10~100mm、好ましくは20~80mm、より好ましくは25~70mm、特に好ましくは30~60mmであり、厚みは、通常1~40mm、好ましくは1~30mm、中でも好ましくは1~25mm、より好ましくは5~25mm、特に好ましくは8~20mmである。炭素繊維強化複合材の厚みが薄過ぎると剛性が不足し、厚過ぎると重量過多となり、用途が制限されることとなる。
なお、本発明のC/C複合体の長手方向とは、その最も長さの長い部分であり、好ましくは前述の第1のC/C複合層内の炭素繊維の軸方向が配向している方向であり、厚み方向とは、前述の第1のC/C複合層と第2のC/C複合層との積層方向であり、幅方向(短手方向)とは、この長手方向及び厚み方向と直交する方向をさす。
<炭素繊維強化複合材の物性等>
(第1のC/C複合層の厚み)
本発明の炭素繊維強化複合材においては、第1のC/C複合層の厚みは、炭素繊維強化複合材全体の厚みの55%以上が好ましく、この厚み割合は、70%以上であることがより好ましく、特に70~90%、とりわけ75~85%であることが好ましい。
この第1のC/C複合層の厚み割合が、上記下限以上であれば、第1のC/C複合層を設けることによる本発明の効果(長手方向に対する曲げ強度)をより確実に得ることができる。ただし、第1のC/C複合層の厚み割合が過度に大きいと、第2のC/C複合層による加工時のチッピングを防ぐ効果を十分に得ることができないため、第1のC/C複合層の厚み割合は上記上限以下とすることが好ましい。
(第1のC/C複合層の厚み)
本発明の炭素繊維強化複合材においては、第1のC/C複合層の厚みは、炭素繊維強化複合材全体の厚みの55%以上が好ましく、この厚み割合は、70%以上であることがより好ましく、特に70~90%、とりわけ75~85%であることが好ましい。
この第1のC/C複合層の厚み割合が、上記下限以上であれば、第1のC/C複合層を設けることによる本発明の効果(長手方向に対する曲げ強度)をより確実に得ることができる。ただし、第1のC/C複合層の厚み割合が過度に大きいと、第2のC/C複合層による加工時のチッピングを防ぐ効果を十分に得ることができないため、第1のC/C複合層の厚み割合は上記上限以下とすることが好ましい。
なお、ここで、第1のC/C複合層の厚み割合は、炭素繊維強化複合材中に第1のC/C複合層を複数層有する場合は、その厚みの合計をさす。例えば、炭素繊維強化複合材の両最表面層に第1のC/C複合層を有する場合は、両最表面層の第1のC/C複合層の合計の厚み割合である。
(FAW)
本発明の炭素繊維強化複合材の第1のC/C複合層のFAW(単位面積当たりの炭素繊維重量)は1,000~20,000g/m2であることが好ましく、より好ましくは5,000~15,000g/m2である。第1のC/C複合層のFAWが上記下限以上であれば、板状部材として形状を保てる厚みが確保でき、上記上限以下であれば軽量な板状部材が得られるである。
本発明の炭素繊維強化複合材の第1のC/C複合層のFAW(単位面積当たりの炭素繊維重量)は1,000~20,000g/m2であることが好ましく、より好ましくは5,000~15,000g/m2である。第1のC/C複合層のFAWが上記下限以上であれば、板状部材として形状を保てる厚みが確保でき、上記上限以下であれば軽量な板状部材が得られるである。
なお、FAWは各層又は炭素繊維強化複合材の製造に用いた炭素繊維の重量と面積から計算により求められる。
また、第2のC/C複合層のFAWは200~5,000g/m2であることが好ましく、より好ましくは1,000~3,000g/m2である。第2のC/C複合層のFAWが上記下限以上であれば、板状部材として形状を保てる厚みが確保でき、上記上限以下であれば軽量な板状部材が得られる。
これらの第1のC/C複合層と第2のC/C複合層とを有する本発明の炭素繊維強化複合材全体のFAWは1,200~25,000g/m2であることが好ましく、より好ましくは6,000~18,000g/m2である。本発明の炭素繊維強化複合材全体のFAWが上記下限以上であれば、板状部材として形状を保てる厚みが確保でき、上記上限以下であれば軽量な板状部材が得られる。
(炭素繊維含有率)
本発明の炭素繊維強化複合材の炭素繊維の体積含有率(炭素繊維強化複合材の体積に占める炭素繊維の体積割合)は、高い程機械的強度を高くすることができ好ましいが、過度に高いと相対的に炭素質マトリックス量が減ることで層間剥離などの発生が懸念され、不利である。従って、本発明の炭素繊維強化複合材の炭素繊維の体積含有率は40~70%であることが好ましく、特に45~65%、とりわけ48~60%であることが好ましい。
本発明の炭素繊維強化複合材の炭素繊維の体積含有率(炭素繊維強化複合材の体積に占める炭素繊維の体積割合)は、高い程機械的強度を高くすることができ好ましいが、過度に高いと相対的に炭素質マトリックス量が減ることで層間剥離などの発生が懸念され、不利である。従って、本発明の炭素繊維強化複合材の炭素繊維の体積含有率は40~70%であることが好ましく、特に45~65%、とりわけ48~60%であることが好ましい。
なお、炭素繊維強化複合材の炭素繊維の体積含有率は、後述の実施例の項に記載される方法で算出される。
(曲げ強度)
本発明の炭素繊維強化複合材が、長手方向の長さと幅方向の長さの比が1を超える板状の炭素繊維強化複合材である場合において、該長手方向の曲げ強度は150MPa以上であることが好ましい。長手方向の曲げ強度が150MPa以上であれば、搬送用部材等、各種構造部材として要求される強度を十分に満たすことができる。
なお、炭素繊維強化複合材の曲げ強度は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
本発明の炭素繊維強化複合材が、長手方向の長さと幅方向の長さの比が1を超える板状の炭素繊維強化複合材である場合において、該長手方向の曲げ強度は150MPa以上であることが好ましい。長手方向の曲げ強度が150MPa以上であれば、搬送用部材等、各種構造部材として要求される強度を十分に満たすことができる。
なお、炭素繊維強化複合材の曲げ強度は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
(嵩密度)
本発明の炭素繊維強化複合材の嵩密度は、衝撃強度の観点から、2.5g/cm3以上であることが好ましい。
炭素繊維強化複合材の嵩密度は高い程機械的強度の向上の面で好ましいが、このように嵩密度の高い炭素繊維強化複合材を製造するためには、前述の焼成、炭化及び緻密化の工程を多数回行う必要があり、製造コストが嵩む原因となる。製造コストを過度に高くすることなく、十分な機械的強度を得ることができる嵩密度として、好ましくは1.8~2.4g/cm3、より好ましくは1.9~2.2g/cm3である。
本発明の炭素繊維強化複合材の嵩密度は、衝撃強度の観点から、2.5g/cm3以上であることが好ましい。
炭素繊維強化複合材の嵩密度は高い程機械的強度の向上の面で好ましいが、このように嵩密度の高い炭素繊維強化複合材を製造するためには、前述の焼成、炭化及び緻密化の工程を多数回行う必要があり、製造コストが嵩む原因となる。製造コストを過度に高くすることなく、十分な機械的強度を得ることができる嵩密度として、好ましくは1.8~2.4g/cm3、より好ましくは1.9~2.2g/cm3である。
なお、炭素繊維強化複合材の嵩密度は、後述の実施例の項に記載される方法で算出される。
(気孔率)
上記嵩密度と同様な理由から、本発明の炭素繊維強化複合材の気孔率(ボイドの体積割合)にも好適範囲が存在し、炭素繊維強化複合材の気孔率が高過ぎると長手方向の曲げ強度やその他の機械的強度が十分に高い炭素繊維強化複合材を得ることができない。炭素繊維強化複合材の気孔率は低い程機械的強度の向上の面で好ましいが、このように気孔率の低い炭素繊維強化複合材を製造するためには、前述の緻密化処理を複数回行う必要があり、製造コストが嵩む原因となる。製造コストを過度に高くすることなく、十分な機械的強度を得ることができる気孔率として、本発明の炭素繊維強化複合材の気孔率は好ましくは通常10vol%以下、より好ましくは2~5vol%である。
上記嵩密度と同様な理由から、本発明の炭素繊維強化複合材の気孔率(ボイドの体積割合)にも好適範囲が存在し、炭素繊維強化複合材の気孔率が高過ぎると長手方向の曲げ強度やその他の機械的強度が十分に高い炭素繊維強化複合材を得ることができない。炭素繊維強化複合材の気孔率は低い程機械的強度の向上の面で好ましいが、このように気孔率の低い炭素繊維強化複合材を製造するためには、前述の緻密化処理を複数回行う必要があり、製造コストが嵩む原因となる。製造コストを過度に高くすることなく、十分な機械的強度を得ることができる気孔率として、本発明の炭素繊維強化複合材の気孔率は好ましくは通常10vol%以下、より好ましくは2~5vol%である。
[搬送用部材]
本発明の搬送用部材は、上述のような本発明の炭素繊維強化複合材を備えるものである。
用途によっても異なるが、本発明の搬送用部材の長手方向の長さは通常300~5,000mm、好ましくは500~4,500mm、より好ましくは1,000~4,000mm、特に好ましくは1,500~3,700mmであり、幅方向(短手方向)の長さは、通常10~100mm、好ましくは20~80mm、より好ましくは25~70mm、特に好ましくは30~60mmであり、厚みは、通常5~100mm、好ましくは10~80mm、より好ましくは15~60mm、特に好ましくは20~50mmである。
本発明の搬送用部材は、上述のような本発明の炭素繊維強化複合材を備えるものである。
用途によっても異なるが、本発明の搬送用部材の長手方向の長さは通常300~5,000mm、好ましくは500~4,500mm、より好ましくは1,000~4,000mm、特に好ましくは1,500~3,700mmであり、幅方向(短手方向)の長さは、通常10~100mm、好ましくは20~80mm、より好ましくは25~70mm、特に好ましくは30~60mmであり、厚みは、通常5~100mm、好ましくは10~80mm、より好ましくは15~60mm、特に好ましくは20~50mmである。
従って、前述のような本発明の炭素繊維強化複合材を一つのみ用いて本発明の搬送用部材としてもよく、寸法を調整するために本発明の炭素繊維強化複合材の複数本を適当な配置で接着剤等により接合し、継ぎ合わせて用いてもよい。この場合、同一寸法で同一の層構成の炭素繊維強化複合材を複数本用いてもよく、寸法や層構成の異なるものを組み合わせて用いてもよい。
[用途]
本発明の炭素繊維強化複合材は、特に液晶基板、プリント基板やガラス基板等の薄板状ワークの搬送用部材として好適に用いられるが、何ら搬送用部材に限定されるものではなく、長手方向/幅方向の長さ比が大きく、機械的強度、特に長手方向の曲げ強度が大きいことが要求され、更に軽量で耐熱性、耐食性に優れることが要求される各種部材に好適に使用される。
本発明の炭素繊維強化複合材は、特に液晶基板、プリント基板やガラス基板等の薄板状ワークの搬送用部材として好適に用いられるが、何ら搬送用部材に限定されるものではなく、長手方向/幅方向の長さ比が大きく、機械的強度、特に長手方向の曲げ強度が大きいことが要求され、更に軽量で耐熱性、耐食性に優れることが要求される各種部材に好適に使用される。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
[UDプリプレグの製造]
実施例及び比較例における炭素繊維強化複合材の製造に用いたUDプリプレグは以下のようにして製造した。
1本のフィラメント直径10μm、フィラメント数16000本、引張弾性率760GPa、熱伝導率200W/m・Kのピッチ系炭素繊維束を一方向に引き揃え、メタノールで希釈したフェノール樹脂を含浸させた後、乾燥してFAW400g/m2、フェノール樹脂含有率30重量%、厚さ0.33mmのUDプリプレグを得た。
実施例及び比較例における炭素繊維強化複合材の製造に用いたUDプリプレグは以下のようにして製造した。
1本のフィラメント直径10μm、フィラメント数16000本、引張弾性率760GPa、熱伝導率200W/m・Kのピッチ系炭素繊維束を一方向に引き揃え、メタノールで希釈したフェノール樹脂を含浸させた後、乾燥してFAW400g/m2、フェノール樹脂含有率30重量%、厚さ0.33mmのUDプリプレグを得た。
[炭素繊維強化複合材の評価]
実施例及び比較例で製造した炭素繊維強化炭素複合体の評価は以下の方法で行った。
実施例及び比較例で製造した炭素繊維強化炭素複合体の評価は以下の方法で行った。
<嵩密度>
曲げ試験片寸法(長さ・幅・厚み)をノギスによって測定し、それらを掛け合わせて体積を算出した。また、天秤により重量を測定した。重量の測定値を体積の計算値で割ることにより、嵩密度を算出した。
曲げ試験片寸法(長さ・幅・厚み)をノギスによって測定し、それらを掛け合わせて体積を算出した。また、天秤により重量を測定した。重量の測定値を体積の計算値で割ることにより、嵩密度を算出した。
<炭素繊維体積含有率(Vf)>
C/P成形体を焼成炭化することによって発生する重量減少分を焼成炭化前重量から差し引いて求めた炭素繊維重量を、全体体積、炭素繊維の比重の数値で割り、その百分率を求めることにより算出した。
C/P成形体を焼成炭化することによって発生する重量減少分を焼成炭化前重量から差し引いて求めた炭素繊維重量を、全体体積、炭素繊維の比重の数値で割り、その百分率を求めることにより算出した。
<気孔率>
水銀ポロシメーターで測定した。
水銀ポロシメーターで測定した。
<層厚み>
ランダムに選んだ3点につき、顕微鏡観察にて厚みを実測し、その平均値を求めた。
ランダムに選んだ3点につき、顕微鏡観察にて厚みを実測し、その平均値を求めた。
<曲げ強度>
炭素繊維強化複合材のSiC-C/C複合層の炭素繊維配向方向の曲げ強度を、JIS K7074に従って、島津製作所社製シマヅオートグラフを用いて測定した。
炭素繊維強化複合材のSiC-C/C複合層の炭素繊維配向方向の曲げ強度を、JIS K7074に従って、島津製作所社製シマヅオートグラフを用いて測定した。
<粉塵濃度>
図2に示すように、外部からの粉塵流入を抑える密閉ブース(1m×1m×1m=1m3)1内に、測定サンプルに所定の振動(プラスチックハンマーで1秒に1回のピッチでたたく)を付与する装置(アズワン社製振動試験機「CV-101M」)2と、JIS B 9921光散乱式自動粒子計数器に準拠した粉塵測定器(SIBATA社製「LD-3K2 機器No.637597」)3とを配置し、振動付与装置2上にサンプル4を置いて振動を付与してサンプル4から粉塵を排出させ、排出された粉塵量を「1分間当たりの粒子個数を測定」換算係数により、ブース内容積体積1m3当たりの粉塵重量(mg/m3)に換算し、粉塵濃度とした。
図2に示すように、外部からの粉塵流入を抑える密閉ブース(1m×1m×1m=1m3)1内に、測定サンプルに所定の振動(プラスチックハンマーで1秒に1回のピッチでたたく)を付与する装置(アズワン社製振動試験機「CV-101M」)2と、JIS B 9921光散乱式自動粒子計数器に準拠した粉塵測定器(SIBATA社製「LD-3K2 機器No.637597」)3とを配置し、振動付与装置2上にサンプル4を置いて振動を付与してサンプル4から粉塵を排出させ、排出された粉塵量を「1分間当たりの粒子個数を測定」換算係数により、ブース内容積体積1m3当たりの粉塵重量(mg/m3)に換算し、粉塵濃度とした。
[実施例1]
UDプリプレグ(880mm×260mm)2枚を炭素繊維の引き揃え方向が長手方向となるように積層した積層プリプレグ(880mm×260mm)を2つ用意し、これらの積層プリプレグの間に、炭素繊維の引き揃え方向が、長手方向と直交方向(略90°)となるようにUDプリプレグ(880mm×260mm)1枚を介して積層することによりプリプレグ積層体(880mm×260mm)とした。
UDプリプレグ(880mm×260mm)2枚を炭素繊維の引き揃え方向が長手方向となるように積層した積層プリプレグ(880mm×260mm)を2つ用意し、これらの積層プリプレグの間に、炭素繊維の引き揃え方向が、長手方向と直交方向(略90°)となるようにUDプリプレグ(880mm×260mm)1枚を介して積層することによりプリプレグ積層体(880mm×260mm)とした。
このプリプレグ積層体をオートクレーブ装置にて、177℃の温度、6kg/cm2の圧力をかけて120分間保持し、フェノール樹脂を硬化させて、C/P成形体を得た。このC/P成形体を、窒素ガス雰囲気中、750℃で5時間焼成して炭化させた。次いで、ピッチを含浸させて750℃で5時間焼成する含浸炭化プロセスを3回行い、端部のトリミングを行うことにより、C/C複合材(850mm×230mm)を得た。
得られたC/C複合材と金属Siとを真空条件下、1600℃に保持することにより、このC/C複合材の全体に金属シリコンを溶融含浸させて炭素繊維強化複合材を得た。炭素繊維強化複合材1cm3当りの金属シリコン含浸量(以下、単に「Si含浸量」と称す。)は2.5gであった。
この時、炭素繊維強化複合材の両表面層を構成する長手方向と平行な繊維配向の第1のC/C複合層の合計の厚み割合は80%であった。
得られた炭素繊維強化複合材(850mm×230mm)について、前述の評価を行った。
結果を表1に示す。
この時、炭素繊維強化複合材の両表面層を構成する長手方向と平行な繊維配向の第1のC/C複合層の合計の厚み割合は80%であった。
得られた炭素繊維強化複合材(850mm×230mm)について、前述の評価を行った。
結果を表1に示す。
[実施例2]
3回のピッチの含浸・焼成の工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化複合材を得、実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
3回のピッチの含浸・焼成の工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化複合材を得、実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
[比較例1]
金属シリコンを溶融含浸させなかったこと以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化複合材を得、同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
金属シリコンを溶融含浸させなかったこと以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化複合材を得、同様に評価を行った。
結果を表1に示す。
[比較例2]
積層プリプレグの間に、炭素繊維の引き揃え方向が、長手方向と0°となるようにUDプリプレグ1枚を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化複合材(850mm×230mm)を得、同様に評価を行った。
なお、この炭素繊維強化複合材は試験片に加工する際に破損が生じたため曲げ強度の測定はできなかった。また、粉塵の発生は実施例2と同等であった。
結果を表1に示す。
積層プリプレグの間に、炭素繊維の引き揃え方向が、長手方向と0°となるようにUDプリプレグ1枚を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化複合材(850mm×230mm)を得、同様に評価を行った。
なお、この炭素繊維強化複合材は試験片に加工する際に破損が生じたため曲げ強度の測定はできなかった。また、粉塵の発生は実施例2と同等であった。
結果を表1に示す。
表1中、「マトリックスVp」、「Si含浸前Vv」の定義は以下の通りである。
<マトリックスVp>
マトリックスVpは、マトリックスピッチ体積含有率(Vp)であり、ピッチ含浸後炭化焼成したC/P成形体の嵩密度から、炭素繊維体積含有率(Vf)と炭素繊維の比重を掛け合わせた数値、および炭化樹脂体積含有率(Vm)と炭化樹脂の比重を掛け合わせた数値を引き、その値を炭化ピッチ比重で割り、その百分率を求めることにより算出した。
Vp=(ピッチ含浸後C/P成形体嵩密度-(Vf/100)×炭素繊維比重-(Vm/100)×炭化樹脂比重)/炭化ピッチ比重
ここで、炭化樹脂体積含有率(Vm)は、炭化焼成したC/P成形体の嵩密度から炭素繊維体積含有率(Vf)と炭素繊維の比重を掛け合わせた数値を引き、その値を炭化樹脂比重で割り、その百分率を示した値である。
Vm=(炭化焼成後C/P成形体嵩密度―(Vf/100)×CF比重)/炭化樹脂比重
マトリックスVpは、マトリックスピッチ体積含有率(Vp)であり、ピッチ含浸後炭化焼成したC/P成形体の嵩密度から、炭素繊維体積含有率(Vf)と炭素繊維の比重を掛け合わせた数値、および炭化樹脂体積含有率(Vm)と炭化樹脂の比重を掛け合わせた数値を引き、その値を炭化ピッチ比重で割り、その百分率を求めることにより算出した。
Vp=(ピッチ含浸後C/P成形体嵩密度-(Vf/100)×炭素繊維比重-(Vm/100)×炭化樹脂比重)/炭化ピッチ比重
ここで、炭化樹脂体積含有率(Vm)は、炭化焼成したC/P成形体の嵩密度から炭素繊維体積含有率(Vf)と炭素繊維の比重を掛け合わせた数値を引き、その値を炭化樹脂比重で割り、その百分率を示した値である。
Vm=(炭化焼成後C/P成形体嵩密度―(Vf/100)×CF比重)/炭化樹脂比重
<Si含浸前Vv>
C/P成形体を焼成炭化することによって発生した空隙部分の体積分率であり、以下の通り算出される。
Si含浸前Vv=100%-Vf-Vm
C/P成形体を焼成炭化することによって発生した空隙部分の体積分率であり、以下の通り算出される。
Si含浸前Vv=100%-Vf-Vm
表1より、本発明の炭素繊維強化複合材は長手方向において十分な曲げ強度を有し、かつ、加工時の粉塵の発生が抑制され、加工性、取り扱い性にも優れることが分かる。
1 密閉ブース
2 振動付与装置
3 粉塵測定器
4 サンプル
10 炭素繊維強化複合材
10A,10B 最表面層
11(11A,11B,11C,11D) 第1の炭素繊維強化複合層
12 第2の炭素繊維強化複合層
2 振動付与装置
3 粉塵測定器
4 サンプル
10 炭素繊維強化複合材
10A,10B 最表面層
11(11A,11B,11C,11D) 第1の炭素繊維強化複合層
12 第2の炭素繊維強化複合層
Claims (18)
- 第1の方向に配向している炭素繊維を含む第1の炭素繊維強化複合層と、該第1の方向とは異なる第2の方向に配向している炭素繊維を含む第2の炭素繊維強化複合層との少なくとも2層が積層されてなる炭素繊維強化複合材であって、
該第1の炭素繊維強化複合層の少なくとも1層は、金属シリコンが含浸された炭素繊維強化炭化ケイ素複合層であり、該炭素繊維強化炭化ケイ素複合層が該炭素繊維強化複合材の少なくとも一方の最表面層を形成しており、
該炭素繊維強化複合材全体に占める該第1の炭素繊維強化複合層の厚みの割合が、該炭素繊維強化複合材全体に占める該第2の炭素繊維強化複合層の厚みの割合より大きい
ことを特徴とする炭素繊維強化複合材。 - 前記炭素繊維強化複合材が、3層以上の層が積層されてなるものであり、両最表面層がいずれも前記炭素繊維強化炭化ケイ素複合層である、請求項1に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記炭素繊維強化複合材が、前記金属シリコンを、該炭素繊維強化複合材の単位体積1cm3当たり、0.1g以上含有する、請求項1又は2に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記第1の炭素繊維強化複合層の厚みが、前記炭素繊維強化複合材全体の厚みの70%以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記炭素繊維強化複合材は、長手方向の長さと幅方向の長さの比が1を超える板状の積層体である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記第1の方向が前記長手方向と平行である、請求項5に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記長手方向の曲げ強度が150MPa以上である、請求項5又は6に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記第2の方向が前記長手方向となす鋭角が20~90°である、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 気孔率が10vol%以下で嵩密度が2.5g/cm3以下である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記第1の炭素繊維強化複合層のFAWが1,000~20,000g/m2であり、前記第2の炭素繊維強化複合層のFAWが200~5,000g/m2であり、前記炭素繊維強化複合材全体のFAWが1,200~25,000g/m2である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記炭素繊維がピッチ系炭素繊維である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 該ピッチ系炭素繊維の熱伝導率が10W/m・K以上である、請求項11に記載の炭素繊維強化複合材。
- 前記炭素繊維の体積含有率が40~70%である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材。
- 炭素繊維が繊維軸方向に引き揃えられた一方向プリプレグの複数枚を、該炭素繊維の引き揃え方向が交叉するように積層し、得られた積層体を加熱加圧して炭素繊維強化樹脂成形体を得、該炭素繊維強化樹脂成形体を焼成、炭化させてプリフォームを得る工程を含む請求項1ないし13のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
- 前記プリプレグは熱硬化性樹脂を含み、該熱硬化性樹脂の含有率が15~45重量%である、請求項14に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
- 前記プリフォームに金属シリコンを含浸させる工程を含む、請求項14又は15に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
- 前記プリフォームに、コールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ、及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の含浸材を含浸させた後焼成し、その後、金属シリコンを含浸させる工程を含む、請求項14又は15に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
- 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の炭素繊維強化複合材を備える搬送用部材。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020176189 | 2020-10-20 | ||
JP2020176189 | 2020-10-20 |
Publications (1)
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JP2022067653A true JP2022067653A (ja) | 2022-05-06 |
Family
ID=81390499
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2021171051A Pending JP2022067653A (ja) | 2020-10-20 | 2021-10-19 | 炭素繊維強化複合材及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022067653A (ja) |
-
2021
- 2021-10-19 JP JP2021171051A patent/JP2022067653A/ja active Pending
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