JP3564897B2 - 障害物認識装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、障害物認識装置に係り、特に、測定結果を確率的に評価する障害物認識装置に関する。障害物認識装置としては、自動車の外界環境センサや、自律走行ロボットの障害物センサなどがある。
【0002】
【従来の技術】
障害物認識装置(障害物センサ)は、障害物を測定し、その結果を出力する。障害物センサの出力データとしては、第1に、障害物の有無を出力するものと、第2に、障害物までの距離を出力するものと、第3に、障害物の座標を出力するものとがある。
【0003】
このような障害物認識装置では、センサ種類によって、センサ出力に電気的ノイズ、対象物の反射特性、風、空気の不均一等のノイズが含まれる。
【0004】
これに対して、従来より、単一の障害物センサで複数回測定した場合には、その単純平均を算出することで信頼性を向上させることが考えられている。また、多種の障害物センサを用いた場合には、論理的な条件分岐によって、障害物の有無の精度を向上させるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例では、ノイズによる判定エラーの発生率が考慮されていないため、判定結果の信頼性を考慮したセンサ出力を得ることができない、という不都合があった。特に、複数のセンサ出力の信頼性を考慮した融合処理を行うことができない、という不都合があった。
【0006】
さらに、例えば、障害物有りと判定したときに実際には障害物が存在しない判定エラーの発生率が、障害物無しと判定したときに実際には障害物がある確率を大きく上回る場合には、障害物無しとの判定結果の信頼性がより高いため、多数決的な判断とは結論が逆となってしまう。
【0007】
例えば、3回の測定中、2回は障害物ありと出力し、1回は障害物無しと出力した場合、従来例では、一般に多数決で判断しているため、障害物有りの出力がほうが無しの出力よりも多いと、障害物ありという結論となってしまう。
【0008】
また、距離センサであれば距離が出力されるのみであり、測定範囲の障害物の配置がどのようになっているのかを全体的に知ることができない、という不都合があった。特に、精度良く複数のセンサ出力の結果を融合できないため、複数のセンサの測定範囲内のある地点を特定してその地点に障害物が存在するか否かを知るために良好な障害物認識装置はなかった。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、係る従来例の有する不都合を改善し、特に、測定範囲内の全ての領域について障害物の存在を判定することのできる障害物認識装置を提供することを、その目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、障害物までの距離を測定するセンサ部と、このセンサ部の出力に基づいて障害物の有無を認識する認識部とを備えてる。さらに、認識部は、センサ部から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部の計測範囲の各地点が「障害物有り」,「障害物無し」及び「不明」の3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果と実際の障害物の有無との関係を判定正答率として予め記憶した判定正答率記憶手段と、この判定正答率記憶手段に格納された判定正答率情報に基づいて判定手段による「障害物有り」及び「障害物無し」の判定結果の確からしさを算出する確率算出手段とを備えた、という構成を採っている。これにより前述した目的を達成しようとするものである。
【0011】
判定正答率情報は、センサの特性を示す値となる。これは、判定結果が「障害物有り」のときに実際に障害物が存在する確率や、判定結果が「障害物無し」のときに実際には障害物が存在する確率など、事前の計測により求めた確率値である。従って、確率算出手段は、判定手段によって3領域に区分された各領域毎に、障害物が存在する確率や、障害物が存在しない確率を求める。この確率は、事象Fが既に起こっているという過程のもとで事象Eの起こる確率を示す条件付き確率である。このように、確率算出手段によって、単一の距離センサ出力に基づいて、センサの計測範囲全てについて、センサの特性を考慮した障害物の存在する確率が算出される。
【0012】
複数のセンサの場合には、一旦このような障害物存在確率を各センサ毎に算出しておいて、次いで同一地点については各センサによる確率を融合する。このため、各センサの特性に応じた複数のセンサ出力の融合が行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明による障害物認識装置の構成を示すブロック図である。障害物認識装置は、障害物までの距離を測定するセンサ部2と、このセンサ部2の出力に基づいて障害物を認識する認識部とを備えている。この認識部は、センサ部2から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部2の計測範囲の各地点が「障害物有り」,「障害物無し」及び「不明」の3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する判定手段4を備えている。
【0015】
さらに、認識部は、判定手段4による判定結果と実際の障害物の有無との関係を判定正答率として予め記憶した判定正答率記憶手段8と、この判定正答率記憶手段8に格納された判定正答率情報に基づいて判定手段4による「障害物有り」及び「障害物無し」の判定結果の確からしさを算出する確率算出手段6とを備えている。
【0016】
この図1に示す単一の距離センサを用いる例では、この距離センサの特性に基づいて予め判定正答率情報が作成されている。これは、「障害物有り」「障害物無し」「障害物まで3m」等の判定結果が実際の障害物の有無やその距離と一致する確率を測定したものである。本実施形態では、「障害物有り」と判定したときに実際に障害物が存在する確率と、「障害物無し」と判定したときに実際に障害物が存在する確率とを一定間隔毎に測定した確率値を判定正答率情報としている。この判定正答率情報により、判定結果及び測距結果に応じて、障害物が存在する確率を算出することができる。
【0017】
一方、各判定結果に応じて障害物が存在しない確率を判定正答率情報とすると、判定結果及び測距結果に応じて、障害物が存在しない確率を算出することができる。さらに、風速センサ等を併設し、この風速センサ出力に応じた距離センサの正答率を判定正答率情報とするようにしてもよい。
【0018】
判定手段4は、センサ部2から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部2の前面から当該障害物に至る範囲を「障害物無し」と判定する第1の判定機能と、当該障害物近傍を「障害物有り」と判定する第2の判定機能と、当該障害物以降の範囲を「不明」と判定する第3の障害物判定機能とを備えている。また、判定手段4は、障害物が発見されない場合には、計測範囲全体を「障害物無し」と判定する第4の障害物判定機能を備えている。
【0019】
このため、センサ部2の測定範囲全体について、「障害物無し」の領域と、「障害物有り」の領域と、「不明」の領域とに区分される。この判定手段4は、1つの障害物によって、当該障害物よりも遠方の障害物の有無は不明となり、また、当該障害物が発見された以上、この測距を遮断するような他の障害物は当該障害物よりも近接には存在しないという考えに基づいて領域を区分する。この判定手段による区分の段階では、未だ確率計算は行われていない。
【0020】
障害物が存在する確率を計測範囲について求める場合を例とすると、判定正答率記憶手段8は、判定手段4の「障害物有り」との判定結果のときに実際に障害物が存在する第1の確率値を記憶した第1の記憶領域と、判定手段4の「障害物無し」との判定結果のときに実際には障害物が存在する第2の確率値を記憶した第2の記憶領域とを備える。
【0021】
さらに、確率算出手段6は、第1の記憶領域に格納された第1の確率値に基づいて判定手段4によって「障害物有り」と判定された範囲に障害物が存在する確率を算出する第1の確率算出機能と、第2の記憶領域に格納された第2の確率値に基づいて判定手段によって「障害物無し」と判定された範囲に障害物が存在する確率を算出する第2の確率算出機能を備える。
【0022】
このため、判定手段によって計測範囲が3つの領域に区分された後、この確率算出手段6によって各領域について障害物存在確率が算出される。この計測範囲の各地点について障害物の存在確率が与えられたデータを、ここでは、障害物地図という。図1に示す例では、単一のセンサによりこの障害物地図を生成する。ここでは、この単一のセンサによる障害物地図を第1の障害物地図という。
【0023】
図2は複数の距離センサを備えた場合に障害物地図を作成する構成を示すブロック図である。図2に示すように、センサ部2は、一部重なる測定範囲の測定結果を複数出力する同一又は複数の距離第1のセンサ0を備えている。しかも、判定手段4が、センサ部2から出力された複数の測定結果毎に3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する測定結果別判定機能12を備えている。
【0024】
さらに、確率算出手段6が、測定結果別判定機能12によってそれぞれ判定された領域毎に判定正答率記憶手段8に格納された判定正答率情報に基づいて実際に障害物が存在する確率を障害物存在確率として算出する測定結果別確率算出機能14を備えている。そして、確率算出手段6に、測定結果別確率算出機能14によって算出された同一地点についての複数の障害物存在確率を融合する融合手段16を併設している。
【0025】
しかも、融合手段16に、当該融合手段16によって融合された障害物存在確率をセンサ部2の測定範囲内に配置した障害物地図を生成する障害物地図生成手段18を併設している。
【0026】
この図2に示す例では、センサ部2は、複数の測定結果を出力する。これは、複数の距離第1のセンサ0によって一部重なる範囲を測定するようにしてもよいし、また、同一の距離センサで複数回測定することで複数の測定結果を出力するようにしてもよい。さらに、同一又は複数の距離センサを一定角度で回動させることにより測定範囲を変更し、測定範囲が一部重なる測定結果を複数出力するようにしてもよい。
【0027】
測定結果別判定機能12は、複数の測定結果毎に第1乃至第3の判定機能を用いて各センサ出力毎に3領域に区分する。さらに、測定結果別確率算出機能14は、判定正答率として予め定められた各センサの特性に応じて、各センサ出力の各領域毎に障害物存在確率を算出する。
【0028】
次いで、融合手段16は、測定結果が重なり合う部分について、測定結果別確率算出機能により各センサ出力毎に算出された障害物存在確率を一定の算出式を用いて融合する。例えば、第1の測定結果による障害物が存在する確率が96%であり、第2の測定結果による障害物存在確率が90%であれば、93%に融合する。
【0029】
障害物地図生成手段18は、このように算出された障害物存在確率をセンサ部2を基点とした地図に配置する。すなわち、元来測定対象外の部分と、障害物が発見された部分よりも遠方を「不明(50%)」としたうえ、測定範囲が重なった部分については融合した障害物存在確率を配置し、重ならない部分については測定結果別確率算出機能によって算出された障害物存在確率を配置する。
【0030】
このため、図2に示す例では、測定範囲を重ね合わせることにより、複数のセンサ出力に基づいたより信頼性の高い数値で障害物が存在する確率を出力することができ、しかも、測定範囲について距離だけを出力し座標を出力するものではない距離センサにあっては、測定範囲を重ね合わせることにより空間上の分解能を向上させることができる。しかも、障害物の有無を一旦抽象的な確率値に変換した後、この確率値を融合するため、複数のセンサ出力があった場合の解釈をより正確に行うことができ、さらに、判定正答率を用いて障害物の有無の確率を算出するため、各センサの特性を考慮した値を出力することができ、従って、他種類のセンサ特性の異なるセンサを用いた測定結果であっても、これを精度良く融合することができる。
【0031】
図1及び図2に示す例では、単一又は複数のセンサ出力に基づいて、この障害物認識装置を搭載した車両が右左折するときに、当該進行方向の障害物の存在確率を第1の障害物地図から読み出してその適否を判断するといった、ある地点を中心とした処理が可能となる。そして、一方の処理でこの障害物地図を逐次更新し、他方の処理で必要に応じてこの障害物地図を参照する制御が可能となる。
【0032】
また、この障害物地図を一定時間毎に記憶することで、当該障害物認識装置を備えた車両に生じた事実の事後的な解析が可能となる。さらに、車両の遠隔操作を行うシステムでは、障害物認識装置に通信制御装置を併設し、障害物地図を逐次外部の操作装置に送信することで、障害物の存在確率をディスプレイ等で確認しながら遠隔操作を良好に行うことが可能となる。
【0033】
以下、図3乃至図7を参照して本実施形態を詳細に説明する。
【0034】
〔単一の距離センサを用いる実施形態〕
センサ部2は、ある地点の障害物の有無を測定し出力する。センサ部2の構成例を図3を参照して説明する。図3(A)は、CCDカメラ2Aを用いた障害物センサを示す図である。図3(B)は、ステレオCCDカメラ2Bによる距離センサの例を示す図である。図3(C)はレーザによるレーザによる三角測量を利用した距離センサの例を示す図であり、図3(D)は反射伝搬時間を利用した距離センサを示す図である。さらに、図3(E)に示すように、、超音波を利用した距離センサがある。また、図3(F)に示すように、障害物まで直接ゲージで距離を測定する手法もある。
【0035】
ここでは、障害物センサからデータの出力があるときには、空間的に広がりを持って障害物が存在する確率が0.5(50%)以上であることを示していると解釈する。例えば、超音波距離センサの場合、ある距離データが出力される。この出力から、その距離周辺に障害物が存在しているだろうという判定をすることができる。
【0036】
図4は判定手段の制御内容を説明するための説明図である。例えば、図4(A)に示すように、センサ部2として、最も近い障害物を検出して距離データを出力する距離センサを採用し、その測定距離範囲は10mで測定幅範囲は1mであるとする。このとき、3mの位置に障害物があるという出力があると、判定手段4は、図4(B)に示すように当該出力データを次のように解釈する。
【0037】
・センサの前面より3mまでは障害物がない。
・3mの地点から障害物奥行き(例えば、0.5m)に障害物がある。
・障害物奥行き(3.5m)より遠方の障害物に関する情報はない。
【0038】
しかし障害物センサはノイズを含む曖昧さがあるため、「実際には障害物無しなのにあると判断」したり、「実際には障害物有りなのに無しと判断」する判定エラーが生じる。このように雑音の含まれた測定値をしきい値によって判別するために、本実施形態では確率的な考え方を導入する。
【0039】
図5に示すように、ある地点(x,y,z)での障害物があるという事象をA、障害物センサによって障害物があると判定する事象をBとする。それぞれの余事象をAc(障害物がない),Bc(障害物センサが障害物無しと判定する)とすると、次の4通りの条件付き確率が考えられる。
【0040】
P(A|B) ... センサの判断が障害物有りのときで、実際に障害物がある確率。
P(Ac|B) ... センサの判断が障害物有りのときで、実際には障害物がない確率。
P(A|Bc) ... センサの判断が障害物無しのときで、実際には障害物がある確率。
P(Ac|Bc) ... センサの判断が障害物無しのときで、実際には障害物がない確率。
【0041】
これは、次式(1)で表される。
【数1】
【0042】
センサの判断の確率P(B)は直接求めることはできない。実験的に計測可能なのは、P(B|A),P(Bc|A),P(Bc|Ac),P(B|Ac)の4通りの確率である。
【0043】
図5に示すように、それぞれの事象の個数を仮定すると、式(2)であらわされる。この式(2)に示す関係より、センサ出力が障害物有りのときに実際に障害物がある確率P(A|B)を示す次式(3)が導かれる。さらに、センサ出力が障害物無しのとき、実際には障害物がある確率P(A|Bc)は、次式(4)となる。
【0044】
【数2】
【0045】
これらの式を一般化して表現すると、式(5)のベイズの定理と呼ばれる式となる。
【0046】
【数3】
【0047】
確率算出手段6は、図6に示す判定結果に対して上述した確率計算を行う。すると、図7に示すように、センサ前面から3mまではP(A|Bc)となり、障害物の奥行きを0.5mとすると、3mから3.5mまではP(A|B)となる。さらに、3.5mよりも遠方では不明(0.5)となる。さらに、計測範囲外の領域についても、不明と判定する。
【0048】
このように本実施形態では、センサで測定すると、センサの測定範囲の各座標に障害物が存在する確率が書き込まれていき、これが、第1の障害物地図となる。
【0049】
〔複数の距離センサを用いる実施形態〕
次に、融合手段16が、複数のセンサ出力を融合する手法を説明する。これは、同種のセンサを複数配置した場合や、単一のセンサの複数回の測定の障害物位置精度を向上させるため、多種類の障害物センサの情報を融合し、障害物位置情報を障害物地図として確率表現するものである。
【0050】
n個のセンサによって得られた出力をBj(j=1,2,3,... n)とする。これらの複数のセンサ出力に対して障害物のある確率はP(A|B1,B2,B3,... Bn)と表される。
【0051】
2個のセンサ出力を融合するには、まず、P(A|B1)を次の演算を行う際のP(A)としてP(A|B2)を計算する。これは、次式(6)で表される。式(6)では、P(A|B1)とP(A|B2)の計算順を入れ替えても結果は同じである。さらに、これを複数のセンサ出力がある場合とし、一般的に表すと、次式(7)に示される。この式(7)によって計算された確率を、ここでは第2の障害物存在確率という。また、前提条件がない場合には、ある地点での障害物存在確率の初期値P(A)は0.5とする。
【0052】
【数4】
【0053】
図8に示すような状態について、左端のセンサ21の出力が3mで、中央のセンサ22の出力が2.9mで、右端の第2の第3のセンサの出力が障害物無しであるとすると、図9に示す如くの障害物地図となる。ハッチングで濃く表現している部分が障害物存在確率の高い部分である。
【0054】
この図9に示す障害物地図は複数段階の確率に分かれており、検査範囲でない部分は「不明」となる。そして、左端のセンサ21及び中央のセンサ22の検査範囲内であるが、右端の第2の第3のセンサの検査範囲内ではない部分で、かつ、障害物が検出された地点よりも遠方についても、「不明」となる。
【0055】
そして、左端のセンサ21及び中央のセンサ22が出力した距離の近傍は障害物存在確率が高くなる。特に、この左端のセンサ21及び中央のセンサ22の測定範囲が重なる部分が共に「障害物有り」と判定した領域については、障害物存在確率が高くなる。
【0056】
さらに、左端のセンサ21及び中央のセンサ22の測定範囲内で、障害物が存在する位置までは、「障害物無し」の確率が高くなる。さらに、右端の第3のセンサは出力データが無いため、右端の第3のセンサの計測範囲については、判定手段によって「障害物無し」と判定される。さらに、障害物よりも遠方の範囲で、左端のセンサ21の計測範囲と中央のセンサ22の出力が重なる領域については、「障害物無し」のときの障害物存在確率と、初期設定である0.5とが融合され、ほぼ「障害物無し」に近い障害物存在確率が出力される。
【0057】
図9に示しセンサを超音波センサとすると、複数のセンサの測定範囲の一部を重ねて、その出力値を確率値に変換してから融合することで、超音波センサの分解能を高めることができる。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0059】
〔第1実施例の構成〕
第1の実施例では、超音波センサでの障害物地図(オブスタクルマップ)作成する。まず、単一の超音波センサで、距離3mにある障害物を100回測定する。100回の測定におけるセンサ出力は障害物有りが90回、障害無しが10回であったとする。次に、障害物を取り除き、同じく100回測定する。このときセンサ出力は障害物ありが1回障害物無しが99回であったとする。
【0060】
この測定により、ある距離xでの4通りの確率は次式(8)の通りとなる。さらに、上述した式(3)及び式(5)より、実際の計算上必要な確率を次式(9)より求めることができる。この式(9)により求めた確率が、本実施例の判定正答率である。
【0061】
【数5】
【0062】
上述した測定値によると、3mの位置には障害物がないとセンサが判断している場合、実際には障害物がある確率は10%となる。これらの確率を検査範囲全ての座標について求めると、単一の超音波センサで得られた距離出力をその座標における障害物存在確率で表すことができる。実際には、検出範囲全ての確率を同一としてもよい。
【0063】
同じ超音波センサ2個で、同一地点を測定した場合、片方の第1のセンサは障害物有りと出力し、もう片方の第2のセンサは障害物無しと判断したとする。この地点の障害物存在確率は次のように計算される。
【0064】
まず、第1のセンサの出力のみから、この地点の障害物存在確率はP(B1|A)=90/91である。また、第2のセンサの出力によると、この地点の障害物存在確率はP(B2|A)=10/109となる。上述した式(6)にこの値と初期値P(A)=0.5を当てはめると、次式(10)となる。
【0065】
【数6】
【0066】
これは、センサ出力が障害物有りのときには99%(第1の確率値)の確率で障害物があり、センサ出力が障害物無しのときには10%(第2の確率値)の確率で障害物があるという2つの確率を確率計算した結果であり、ここでは、90%の確率で障害物があると結論することができる。このように、多数決や直感的処理では結論づけられないような場合であっても、存在の有無のどちらに近いのかが判定される。従って、多数決では少なくとも3とのセンサが必要となるのに対し、本実施例では、2つのセンサでより正確な測定が可能となる。
【0067】
さらに、この状況で3個目の超音波センサが同一地点を測定した結果、「障害物無し」と判定したとする。すると、この地点の障害物存在確率は次式(11)で示される。
【0068】
【数7】
【0069】
従来は多数決によって障害物無しとするか、直感的に障害物有り33%としていた。
【0070】
〔第1実施例の効果〕
しかし、本実施例による確率計算によると、3個のセンサの出力「有り」「無し」「有り」は、48%の確率で障害物があるという結果となった。48%というのは、障害物があるか無いかが不明である50%(初期値)と変わらない。
【0071】
このように、本実施例では、センサの検出特性を考慮に入れない計算とを比較して、以下のような相違を介してより的確な判定が可能となる。
【0072】
3個のセンサ出力には次のような組み合わせがある。
「有り」「有り」「有り」 ... a
「有り」「有り」「無し」 ... b
「有り」「無し」「無し」 ... c
「無し」「無し」「無し」 ... d
【0073】
まず、障害物がある場面では、a,b,c,dという測定結果がでる確率は次式(12)で示される。
【0074】
【0075】
次に、障害物が無い場面では、a,b,c,dという測定結果がでる確率はそれぞれ以下のようになる。
【0076】
【0077】
本実施例によるセンサ特性では、cという出力が得られるのは、障害物無しでは約2.94%、障害物有りでは2.70%である。つまり、cの「有り」「無し」「有り」が出力される確率は、実際の障害物存在確率にはさほど影響を受けず、常に3%程度であることが判る。つまり、ここでは、cの出力が得られても、実際の障害物の有無は判定できないことを確認した。
【0078】
本実施例では、それぞれのセンサ出力の組み合わせがあったときの障害物存在確率は次式(14)で示される。
【0079】
【数8】
【0080】
このように、a,b,c,dの出力が得られた場合は、障害物の有り無しが特定できるのに対して、cの出力では実際の障害物の存在を推定することができない。
【0081】
障害物があるときにa,b,c,dの出力が得られる確率を式12に示した。本実施例では、aの出力が得られたときには障害物有りと結論する。このときの判断が間違っている確率は、実際には、障害物が無いのにaの出力が得られてしまう確率である。これは式13のaの確率で、約0.00%である。
【0082】
同様に、bの出力が得られたときは、障害物有りと結論する。このときの判断が間違っている確率は、約0.03%である。cの出力が得られた場合には、わからないと判断する。この判断には間違っている、いないということはない。この出力となる確率は2.70%である。eの出力が得られた場合には、障害物無しの判断する。この判断が間違っている確率はほぼ2.97%であり、この出力が得られる確率は0.10%しかない。
【0083】
これらを、障害物有りのときの間違い率として合計すると、わからないを間違いとして約3%となる。
【0084】
次に、障害物が無いときを考える。a,b,c,dのセンサ出力が得られる確率を式12に示した。本実施例では、aの出力が得られたときは、障害物有りと結論する。このときの判断が間違っている確率は、実際には障害物がないのにaが出力される確率である。この確率は式12のaの確率で72.90%であるが、この出力が得られる確率は約0.00%である。
【0085】
同様に、bの出力が得られた場合には、障害物有りと判断する。この判断が間違っている確率は24.30%であるが、この出力が得られる確率は約0.03%である。cの出力が得られた場合には、わからないと判定する。この出力が得られる確率は約2.94%である。eの出力が得られた場合には、障害物無しと判断する。この判断が間違っている確率は0.10%であり、この出力が得られる確率は約97.03%である。
【0086】
これらを障害物無しのときの間違い率として合計すると、わからないを間違いとしてやはり約3%となる。
【0087】
本実施例では、センサ出力からの判断で、障害物有りとしたときの間違い率はほぼ0%である。同様に、障害物無しとしたときの間違い率も、ほぼ0%である。わからないが3%程度出力されるにすぎない。このように、本実施例では、判定不能な状態を正確に把握し、障害物の有無はわからないと判定することができる。
【0088】
これを従来の多数決や直感的確率表現を行うと、次のような結果となる。まず、多数決の場合は、a,bのとき障害物ありとし、c,dのときに障害物なしと判断する。cのとき障害物なしと判断しているのに実際には障害物なしという判断間違いが約1.5%生じる。このように、従来例では、実際には不確かな判断内容を断定してしまう。
【0089】
次に、aのときは障害物存在確率100%、bのとき66%、cのとき33%、dのとき0%と判断する場合では、本来正確であるbのときですら66%である。cでは、障害物があるのか無いのかわからないのに、無い方向に判断している。
【0090】
このように、本実施例によると、従来の感覚的な判断より明らかな間違いが少ない。実際には障害物が無いのに、障害物ありと判断したり、実際には障害物があるのに障害物無しと判断したりすることは極めて少ない。このように、本実施例では、実際の障害物の存在を正確に判断できる。
【0091】
また、センサ毎に間違える確率が異なっても、これを全て融合した判断を行うことができる。
【0092】
〔第2実施例〕
次に、自動車の各種センサを用いて障害物地図を生成する実施例を図10乃至図14を参照して説明する。
【0093】
図10は車載用センサの搭載例を示す説明図である。図10に示すように、本実施例では、先行車両との追突防止目的で設けられるフロントセンサ42と、右直事故や巻き込みなどの防止目的で設けられるコーナセンサ41,42と、車線変更時や幅寄せ時の接触回避目的で設けられるサイドセンサ44と、車線変更時などの死角監視目的で設けられる後側方センサ45,46と、走行時の追突防止や後退時の衝突防止目的で設けられる後方センサ47及びバックセンサ48,49とを備えている。
【0094】
フロントセンサ42は、レーザセンサやCCDカメラを用い、広角で測定する。120度程度までは、レンズの変更などでCCDカメラによっても撮像可能である。また、レーザセンサをスウィープさせるようにしてもよい。
【0095】
コーナセンサ41,43は、超音波センサで構成し、広角検出する。サイドセンサは、超音波センサやレーザセンサで構成し、狭角の検出をする。後側方センサ45,46は、超音波センサやCCDステレオCCDカメラ等で構成し、広角検出する。
【0096】
後方センサ47、バックセンサ48,49は、ステレオCCDカメラや、レーザセンサ、また超音波センサで構成する。また、バックセンサ48,49は、コーナセンサとして用いられることもある。
【0097】
これにより、夜間であればCCDセンサによる判定正答率を低く設定するなど、各種センサ特性に応じた障害物認識を行うことができる。
【0098】
図11及び図12センサの測定範囲の死角の関係を示す説明図である。運転者50から直視できる範囲は、図11の▲1▼に示す範囲である。図11及び図1の▲2▼に示す範囲はルームミラーによって目視可能であり、▲3▼に示す範囲はサイドミラーによって目視可能である。図1の▲4▼に示す範囲は、運転者50が首を動かすことにより状況を確認する。本実施例では、このような死角を考慮してセンサの配置を行う。特に、このような死角部分については各センサの計測範囲を重ね合わせ、複数種類のセンサ出力を融合することで、より精度の高い障害物認識処理を行うと良い。
【0099】
図13及び図14は障害物地図の設定例を示す説明図である。本実施例では、自車両の周辺を複数の障害物地図に分割して管理する。これは、自車の運転席の左右などもともとセンサの測定範囲ではない部分があることや、また、融合すべきセンサ出力は予め定まるため、計測範囲の重なるセンサを中心に障害物地図の生成範囲を定めたものである。
【0100】
図13に示す例では、自車の左側の範囲31と、右側の範囲32と、前方33と、後方34とに分割する。図14に示す例では、前方33と、進行方向に「コ」字状となる範囲36とに分割する。
【0101】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成され機能するので、これによると、判定手段が、センサ部から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部の計測範囲の各地点を3領域に区分し、さらに、確率算出手段が、判定正答率情報に基づいてこの判定結果の確からしさを算出するため、センサ部の測定範囲全域について、障害物が存在するか否かの確率を算出することができ、しかも、判定正答率が、センサ部の特性に基づいて定められるため、センサ部の特性に応じて障害物の存在の確率を算出することができ、このため、同一の地点について複数の距離センサを用いた場合には、当該障害物存在確率を一定の計算式により融合することが可能となり、すると、センサ特性の異なる複数のセンサ出力を精度良く正確に融合することができる。このように、測定範囲内の全ての領域について障害物の存在を確率的に評価することができる従来にない優れた障害物認識装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】複数のセンサ出力を用いた場合の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図3(A)〜(F)はセンサ部の一例を示す説明図である。
【図4】図1に示した判定手段の判定例を示す説明図であり、図4(A)はセンサの測距範囲及び距離を示す図で、図4(B)はこの測距範囲での3領域への判定内容を示す図である。
【図5】障害物の存在についての事象の各要素数を示す説明図である。
【図6】単一のセンサによる障害物の認識処理の一例を示す説明図である。
【図7】図6に示した状況から得られる障害物地図の一例を示す説明図である。
【図8】複数のセンサによる障害物の認識処理の一例を示す説明図である。
【図9】図8に示した状況から得られる障害物地図の一例を示す説明図である。
【図10】第2実施例によるセンサの配置例を示す平面図である。
【図11】図10に示すセンサ配置と死角との関係を示す平面図である。
【図12】図10に示すセンサ配置と死角との関係を示す側面図である。
【図13】第2実施例による障害物地図の形成範囲の一例を示す説明図である。
【図14】第2実施例による障害物地図の形成範囲の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
2 センサ部
4 判定手段
6 確率算出手段
8 判定正答率記憶手段
10 複数の距離センサ
12 測定結果別判定機能
14 測定結果別確率算出機能
16 融合手段
18 障害物地図生成手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、障害物認識装置に係り、特に、測定結果を確率的に評価する障害物認識装置に関する。障害物認識装置としては、自動車の外界環境センサや、自律走行ロボットの障害物センサなどがある。
【0002】
【従来の技術】
障害物認識装置(障害物センサ)は、障害物を測定し、その結果を出力する。障害物センサの出力データとしては、第1に、障害物の有無を出力するものと、第2に、障害物までの距離を出力するものと、第3に、障害物の座標を出力するものとがある。
【0003】
このような障害物認識装置では、センサ種類によって、センサ出力に電気的ノイズ、対象物の反射特性、風、空気の不均一等のノイズが含まれる。
【0004】
これに対して、従来より、単一の障害物センサで複数回測定した場合には、その単純平均を算出することで信頼性を向上させることが考えられている。また、多種の障害物センサを用いた場合には、論理的な条件分岐によって、障害物の有無の精度を向上させるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例では、ノイズによる判定エラーの発生率が考慮されていないため、判定結果の信頼性を考慮したセンサ出力を得ることができない、という不都合があった。特に、複数のセンサ出力の信頼性を考慮した融合処理を行うことができない、という不都合があった。
【0006】
さらに、例えば、障害物有りと判定したときに実際には障害物が存在しない判定エラーの発生率が、障害物無しと判定したときに実際には障害物がある確率を大きく上回る場合には、障害物無しとの判定結果の信頼性がより高いため、多数決的な判断とは結論が逆となってしまう。
【0007】
例えば、3回の測定中、2回は障害物ありと出力し、1回は障害物無しと出力した場合、従来例では、一般に多数決で判断しているため、障害物有りの出力がほうが無しの出力よりも多いと、障害物ありという結論となってしまう。
【0008】
また、距離センサであれば距離が出力されるのみであり、測定範囲の障害物の配置がどのようになっているのかを全体的に知ることができない、という不都合があった。特に、精度良く複数のセンサ出力の結果を融合できないため、複数のセンサの測定範囲内のある地点を特定してその地点に障害物が存在するか否かを知るために良好な障害物認識装置はなかった。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、係る従来例の有する不都合を改善し、特に、測定範囲内の全ての領域について障害物の存在を判定することのできる障害物認識装置を提供することを、その目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、障害物までの距離を測定するセンサ部と、このセンサ部の出力に基づいて障害物の有無を認識する認識部とを備えてる。さらに、認識部は、センサ部から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部の計測範囲の各地点が「障害物有り」,「障害物無し」及び「不明」の3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果と実際の障害物の有無との関係を判定正答率として予め記憶した判定正答率記憶手段と、この判定正答率記憶手段に格納された判定正答率情報に基づいて判定手段による「障害物有り」及び「障害物無し」の判定結果の確からしさを算出する確率算出手段とを備えた、という構成を採っている。これにより前述した目的を達成しようとするものである。
【0011】
判定正答率情報は、センサの特性を示す値となる。これは、判定結果が「障害物有り」のときに実際に障害物が存在する確率や、判定結果が「障害物無し」のときに実際には障害物が存在する確率など、事前の計測により求めた確率値である。従って、確率算出手段は、判定手段によって3領域に区分された各領域毎に、障害物が存在する確率や、障害物が存在しない確率を求める。この確率は、事象Fが既に起こっているという過程のもとで事象Eの起こる確率を示す条件付き確率である。このように、確率算出手段によって、単一の距離センサ出力に基づいて、センサの計測範囲全てについて、センサの特性を考慮した障害物の存在する確率が算出される。
【0012】
複数のセンサの場合には、一旦このような障害物存在確率を各センサ毎に算出しておいて、次いで同一地点については各センサによる確率を融合する。このため、各センサの特性に応じた複数のセンサ出力の融合が行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明による障害物認識装置の構成を示すブロック図である。障害物認識装置は、障害物までの距離を測定するセンサ部2と、このセンサ部2の出力に基づいて障害物を認識する認識部とを備えている。この認識部は、センサ部2から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部2の計測範囲の各地点が「障害物有り」,「障害物無し」及び「不明」の3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する判定手段4を備えている。
【0015】
さらに、認識部は、判定手段4による判定結果と実際の障害物の有無との関係を判定正答率として予め記憶した判定正答率記憶手段8と、この判定正答率記憶手段8に格納された判定正答率情報に基づいて判定手段4による「障害物有り」及び「障害物無し」の判定結果の確からしさを算出する確率算出手段6とを備えている。
【0016】
この図1に示す単一の距離センサを用いる例では、この距離センサの特性に基づいて予め判定正答率情報が作成されている。これは、「障害物有り」「障害物無し」「障害物まで3m」等の判定結果が実際の障害物の有無やその距離と一致する確率を測定したものである。本実施形態では、「障害物有り」と判定したときに実際に障害物が存在する確率と、「障害物無し」と判定したときに実際に障害物が存在する確率とを一定間隔毎に測定した確率値を判定正答率情報としている。この判定正答率情報により、判定結果及び測距結果に応じて、障害物が存在する確率を算出することができる。
【0017】
一方、各判定結果に応じて障害物が存在しない確率を判定正答率情報とすると、判定結果及び測距結果に応じて、障害物が存在しない確率を算出することができる。さらに、風速センサ等を併設し、この風速センサ出力に応じた距離センサの正答率を判定正答率情報とするようにしてもよい。
【0018】
判定手段4は、センサ部2から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部2の前面から当該障害物に至る範囲を「障害物無し」と判定する第1の判定機能と、当該障害物近傍を「障害物有り」と判定する第2の判定機能と、当該障害物以降の範囲を「不明」と判定する第3の障害物判定機能とを備えている。また、判定手段4は、障害物が発見されない場合には、計測範囲全体を「障害物無し」と判定する第4の障害物判定機能を備えている。
【0019】
このため、センサ部2の測定範囲全体について、「障害物無し」の領域と、「障害物有り」の領域と、「不明」の領域とに区分される。この判定手段4は、1つの障害物によって、当該障害物よりも遠方の障害物の有無は不明となり、また、当該障害物が発見された以上、この測距を遮断するような他の障害物は当該障害物よりも近接には存在しないという考えに基づいて領域を区分する。この判定手段による区分の段階では、未だ確率計算は行われていない。
【0020】
障害物が存在する確率を計測範囲について求める場合を例とすると、判定正答率記憶手段8は、判定手段4の「障害物有り」との判定結果のときに実際に障害物が存在する第1の確率値を記憶した第1の記憶領域と、判定手段4の「障害物無し」との判定結果のときに実際には障害物が存在する第2の確率値を記憶した第2の記憶領域とを備える。
【0021】
さらに、確率算出手段6は、第1の記憶領域に格納された第1の確率値に基づいて判定手段4によって「障害物有り」と判定された範囲に障害物が存在する確率を算出する第1の確率算出機能と、第2の記憶領域に格納された第2の確率値に基づいて判定手段によって「障害物無し」と判定された範囲に障害物が存在する確率を算出する第2の確率算出機能を備える。
【0022】
このため、判定手段によって計測範囲が3つの領域に区分された後、この確率算出手段6によって各領域について障害物存在確率が算出される。この計測範囲の各地点について障害物の存在確率が与えられたデータを、ここでは、障害物地図という。図1に示す例では、単一のセンサによりこの障害物地図を生成する。ここでは、この単一のセンサによる障害物地図を第1の障害物地図という。
【0023】
図2は複数の距離センサを備えた場合に障害物地図を作成する構成を示すブロック図である。図2に示すように、センサ部2は、一部重なる測定範囲の測定結果を複数出力する同一又は複数の距離第1のセンサ0を備えている。しかも、判定手段4が、センサ部2から出力された複数の測定結果毎に3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する測定結果別判定機能12を備えている。
【0024】
さらに、確率算出手段6が、測定結果別判定機能12によってそれぞれ判定された領域毎に判定正答率記憶手段8に格納された判定正答率情報に基づいて実際に障害物が存在する確率を障害物存在確率として算出する測定結果別確率算出機能14を備えている。そして、確率算出手段6に、測定結果別確率算出機能14によって算出された同一地点についての複数の障害物存在確率を融合する融合手段16を併設している。
【0025】
しかも、融合手段16に、当該融合手段16によって融合された障害物存在確率をセンサ部2の測定範囲内に配置した障害物地図を生成する障害物地図生成手段18を併設している。
【0026】
この図2に示す例では、センサ部2は、複数の測定結果を出力する。これは、複数の距離第1のセンサ0によって一部重なる範囲を測定するようにしてもよいし、また、同一の距離センサで複数回測定することで複数の測定結果を出力するようにしてもよい。さらに、同一又は複数の距離センサを一定角度で回動させることにより測定範囲を変更し、測定範囲が一部重なる測定結果を複数出力するようにしてもよい。
【0027】
測定結果別判定機能12は、複数の測定結果毎に第1乃至第3の判定機能を用いて各センサ出力毎に3領域に区分する。さらに、測定結果別確率算出機能14は、判定正答率として予め定められた各センサの特性に応じて、各センサ出力の各領域毎に障害物存在確率を算出する。
【0028】
次いで、融合手段16は、測定結果が重なり合う部分について、測定結果別確率算出機能により各センサ出力毎に算出された障害物存在確率を一定の算出式を用いて融合する。例えば、第1の測定結果による障害物が存在する確率が96%であり、第2の測定結果による障害物存在確率が90%であれば、93%に融合する。
【0029】
障害物地図生成手段18は、このように算出された障害物存在確率をセンサ部2を基点とした地図に配置する。すなわち、元来測定対象外の部分と、障害物が発見された部分よりも遠方を「不明(50%)」としたうえ、測定範囲が重なった部分については融合した障害物存在確率を配置し、重ならない部分については測定結果別確率算出機能によって算出された障害物存在確率を配置する。
【0030】
このため、図2に示す例では、測定範囲を重ね合わせることにより、複数のセンサ出力に基づいたより信頼性の高い数値で障害物が存在する確率を出力することができ、しかも、測定範囲について距離だけを出力し座標を出力するものではない距離センサにあっては、測定範囲を重ね合わせることにより空間上の分解能を向上させることができる。しかも、障害物の有無を一旦抽象的な確率値に変換した後、この確率値を融合するため、複数のセンサ出力があった場合の解釈をより正確に行うことができ、さらに、判定正答率を用いて障害物の有無の確率を算出するため、各センサの特性を考慮した値を出力することができ、従って、他種類のセンサ特性の異なるセンサを用いた測定結果であっても、これを精度良く融合することができる。
【0031】
図1及び図2に示す例では、単一又は複数のセンサ出力に基づいて、この障害物認識装置を搭載した車両が右左折するときに、当該進行方向の障害物の存在確率を第1の障害物地図から読み出してその適否を判断するといった、ある地点を中心とした処理が可能となる。そして、一方の処理でこの障害物地図を逐次更新し、他方の処理で必要に応じてこの障害物地図を参照する制御が可能となる。
【0032】
また、この障害物地図を一定時間毎に記憶することで、当該障害物認識装置を備えた車両に生じた事実の事後的な解析が可能となる。さらに、車両の遠隔操作を行うシステムでは、障害物認識装置に通信制御装置を併設し、障害物地図を逐次外部の操作装置に送信することで、障害物の存在確率をディスプレイ等で確認しながら遠隔操作を良好に行うことが可能となる。
【0033】
以下、図3乃至図7を参照して本実施形態を詳細に説明する。
【0034】
〔単一の距離センサを用いる実施形態〕
センサ部2は、ある地点の障害物の有無を測定し出力する。センサ部2の構成例を図3を参照して説明する。図3(A)は、CCDカメラ2Aを用いた障害物センサを示す図である。図3(B)は、ステレオCCDカメラ2Bによる距離センサの例を示す図である。図3(C)はレーザによるレーザによる三角測量を利用した距離センサの例を示す図であり、図3(D)は反射伝搬時間を利用した距離センサを示す図である。さらに、図3(E)に示すように、、超音波を利用した距離センサがある。また、図3(F)に示すように、障害物まで直接ゲージで距離を測定する手法もある。
【0035】
ここでは、障害物センサからデータの出力があるときには、空間的に広がりを持って障害物が存在する確率が0.5(50%)以上であることを示していると解釈する。例えば、超音波距離センサの場合、ある距離データが出力される。この出力から、その距離周辺に障害物が存在しているだろうという判定をすることができる。
【0036】
図4は判定手段の制御内容を説明するための説明図である。例えば、図4(A)に示すように、センサ部2として、最も近い障害物を検出して距離データを出力する距離センサを採用し、その測定距離範囲は10mで測定幅範囲は1mであるとする。このとき、3mの位置に障害物があるという出力があると、判定手段4は、図4(B)に示すように当該出力データを次のように解釈する。
【0037】
・センサの前面より3mまでは障害物がない。
・3mの地点から障害物奥行き(例えば、0.5m)に障害物がある。
・障害物奥行き(3.5m)より遠方の障害物に関する情報はない。
【0038】
しかし障害物センサはノイズを含む曖昧さがあるため、「実際には障害物無しなのにあると判断」したり、「実際には障害物有りなのに無しと判断」する判定エラーが生じる。このように雑音の含まれた測定値をしきい値によって判別するために、本実施形態では確率的な考え方を導入する。
【0039】
図5に示すように、ある地点(x,y,z)での障害物があるという事象をA、障害物センサによって障害物があると判定する事象をBとする。それぞれの余事象をAc(障害物がない),Bc(障害物センサが障害物無しと判定する)とすると、次の4通りの条件付き確率が考えられる。
【0040】
P(A|B) ... センサの判断が障害物有りのときで、実際に障害物がある確率。
P(Ac|B) ... センサの判断が障害物有りのときで、実際には障害物がない確率。
P(A|Bc) ... センサの判断が障害物無しのときで、実際には障害物がある確率。
P(Ac|Bc) ... センサの判断が障害物無しのときで、実際には障害物がない確率。
【0041】
これは、次式(1)で表される。
【数1】
【0042】
センサの判断の確率P(B)は直接求めることはできない。実験的に計測可能なのは、P(B|A),P(Bc|A),P(Bc|Ac),P(B|Ac)の4通りの確率である。
【0043】
図5に示すように、それぞれの事象の個数を仮定すると、式(2)であらわされる。この式(2)に示す関係より、センサ出力が障害物有りのときに実際に障害物がある確率P(A|B)を示す次式(3)が導かれる。さらに、センサ出力が障害物無しのとき、実際には障害物がある確率P(A|Bc)は、次式(4)となる。
【0044】
【数2】
【0045】
これらの式を一般化して表現すると、式(5)のベイズの定理と呼ばれる式となる。
【0046】
【数3】
【0047】
確率算出手段6は、図6に示す判定結果に対して上述した確率計算を行う。すると、図7に示すように、センサ前面から3mまではP(A|Bc)となり、障害物の奥行きを0.5mとすると、3mから3.5mまではP(A|B)となる。さらに、3.5mよりも遠方では不明(0.5)となる。さらに、計測範囲外の領域についても、不明と判定する。
【0048】
このように本実施形態では、センサで測定すると、センサの測定範囲の各座標に障害物が存在する確率が書き込まれていき、これが、第1の障害物地図となる。
【0049】
〔複数の距離センサを用いる実施形態〕
次に、融合手段16が、複数のセンサ出力を融合する手法を説明する。これは、同種のセンサを複数配置した場合や、単一のセンサの複数回の測定の障害物位置精度を向上させるため、多種類の障害物センサの情報を融合し、障害物位置情報を障害物地図として確率表現するものである。
【0050】
n個のセンサによって得られた出力をBj(j=1,2,3,... n)とする。これらの複数のセンサ出力に対して障害物のある確率はP(A|B1,B2,B3,... Bn)と表される。
【0051】
2個のセンサ出力を融合するには、まず、P(A|B1)を次の演算を行う際のP(A)としてP(A|B2)を計算する。これは、次式(6)で表される。式(6)では、P(A|B1)とP(A|B2)の計算順を入れ替えても結果は同じである。さらに、これを複数のセンサ出力がある場合とし、一般的に表すと、次式(7)に示される。この式(7)によって計算された確率を、ここでは第2の障害物存在確率という。また、前提条件がない場合には、ある地点での障害物存在確率の初期値P(A)は0.5とする。
【0052】
【数4】
【0053】
図8に示すような状態について、左端のセンサ21の出力が3mで、中央のセンサ22の出力が2.9mで、右端の第2の第3のセンサの出力が障害物無しであるとすると、図9に示す如くの障害物地図となる。ハッチングで濃く表現している部分が障害物存在確率の高い部分である。
【0054】
この図9に示す障害物地図は複数段階の確率に分かれており、検査範囲でない部分は「不明」となる。そして、左端のセンサ21及び中央のセンサ22の検査範囲内であるが、右端の第2の第3のセンサの検査範囲内ではない部分で、かつ、障害物が検出された地点よりも遠方についても、「不明」となる。
【0055】
そして、左端のセンサ21及び中央のセンサ22が出力した距離の近傍は障害物存在確率が高くなる。特に、この左端のセンサ21及び中央のセンサ22の測定範囲が重なる部分が共に「障害物有り」と判定した領域については、障害物存在確率が高くなる。
【0056】
さらに、左端のセンサ21及び中央のセンサ22の測定範囲内で、障害物が存在する位置までは、「障害物無し」の確率が高くなる。さらに、右端の第3のセンサは出力データが無いため、右端の第3のセンサの計測範囲については、判定手段によって「障害物無し」と判定される。さらに、障害物よりも遠方の範囲で、左端のセンサ21の計測範囲と中央のセンサ22の出力が重なる領域については、「障害物無し」のときの障害物存在確率と、初期設定である0.5とが融合され、ほぼ「障害物無し」に近い障害物存在確率が出力される。
【0057】
図9に示しセンサを超音波センサとすると、複数のセンサの測定範囲の一部を重ねて、その出力値を確率値に変換してから融合することで、超音波センサの分解能を高めることができる。
【0058】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0059】
〔第1実施例の構成〕
第1の実施例では、超音波センサでの障害物地図(オブスタクルマップ)作成する。まず、単一の超音波センサで、距離3mにある障害物を100回測定する。100回の測定におけるセンサ出力は障害物有りが90回、障害無しが10回であったとする。次に、障害物を取り除き、同じく100回測定する。このときセンサ出力は障害物ありが1回障害物無しが99回であったとする。
【0060】
この測定により、ある距離xでの4通りの確率は次式(8)の通りとなる。さらに、上述した式(3)及び式(5)より、実際の計算上必要な確率を次式(9)より求めることができる。この式(9)により求めた確率が、本実施例の判定正答率である。
【0061】
【数5】
【0062】
上述した測定値によると、3mの位置には障害物がないとセンサが判断している場合、実際には障害物がある確率は10%となる。これらの確率を検査範囲全ての座標について求めると、単一の超音波センサで得られた距離出力をその座標における障害物存在確率で表すことができる。実際には、検出範囲全ての確率を同一としてもよい。
【0063】
同じ超音波センサ2個で、同一地点を測定した場合、片方の第1のセンサは障害物有りと出力し、もう片方の第2のセンサは障害物無しと判断したとする。この地点の障害物存在確率は次のように計算される。
【0064】
まず、第1のセンサの出力のみから、この地点の障害物存在確率はP(B1|A)=90/91である。また、第2のセンサの出力によると、この地点の障害物存在確率はP(B2|A)=10/109となる。上述した式(6)にこの値と初期値P(A)=0.5を当てはめると、次式(10)となる。
【0065】
【数6】
【0066】
これは、センサ出力が障害物有りのときには99%(第1の確率値)の確率で障害物があり、センサ出力が障害物無しのときには10%(第2の確率値)の確率で障害物があるという2つの確率を確率計算した結果であり、ここでは、90%の確率で障害物があると結論することができる。このように、多数決や直感的処理では結論づけられないような場合であっても、存在の有無のどちらに近いのかが判定される。従って、多数決では少なくとも3とのセンサが必要となるのに対し、本実施例では、2つのセンサでより正確な測定が可能となる。
【0067】
さらに、この状況で3個目の超音波センサが同一地点を測定した結果、「障害物無し」と判定したとする。すると、この地点の障害物存在確率は次式(11)で示される。
【0068】
【数7】
【0069】
従来は多数決によって障害物無しとするか、直感的に障害物有り33%としていた。
【0070】
〔第1実施例の効果〕
しかし、本実施例による確率計算によると、3個のセンサの出力「有り」「無し」「有り」は、48%の確率で障害物があるという結果となった。48%というのは、障害物があるか無いかが不明である50%(初期値)と変わらない。
【0071】
このように、本実施例では、センサの検出特性を考慮に入れない計算とを比較して、以下のような相違を介してより的確な判定が可能となる。
【0072】
3個のセンサ出力には次のような組み合わせがある。
「有り」「有り」「有り」 ... a
「有り」「有り」「無し」 ... b
「有り」「無し」「無し」 ... c
「無し」「無し」「無し」 ... d
【0073】
まず、障害物がある場面では、a,b,c,dという測定結果がでる確率は次式(12)で示される。
【0074】
【0075】
次に、障害物が無い場面では、a,b,c,dという測定結果がでる確率はそれぞれ以下のようになる。
【0076】
【0077】
本実施例によるセンサ特性では、cという出力が得られるのは、障害物無しでは約2.94%、障害物有りでは2.70%である。つまり、cの「有り」「無し」「有り」が出力される確率は、実際の障害物存在確率にはさほど影響を受けず、常に3%程度であることが判る。つまり、ここでは、cの出力が得られても、実際の障害物の有無は判定できないことを確認した。
【0078】
本実施例では、それぞれのセンサ出力の組み合わせがあったときの障害物存在確率は次式(14)で示される。
【0079】
【数8】
【0080】
このように、a,b,c,dの出力が得られた場合は、障害物の有り無しが特定できるのに対して、cの出力では実際の障害物の存在を推定することができない。
【0081】
障害物があるときにa,b,c,dの出力が得られる確率を式12に示した。本実施例では、aの出力が得られたときには障害物有りと結論する。このときの判断が間違っている確率は、実際には、障害物が無いのにaの出力が得られてしまう確率である。これは式13のaの確率で、約0.00%である。
【0082】
同様に、bの出力が得られたときは、障害物有りと結論する。このときの判断が間違っている確率は、約0.03%である。cの出力が得られた場合には、わからないと判断する。この判断には間違っている、いないということはない。この出力となる確率は2.70%である。eの出力が得られた場合には、障害物無しの判断する。この判断が間違っている確率はほぼ2.97%であり、この出力が得られる確率は0.10%しかない。
【0083】
これらを、障害物有りのときの間違い率として合計すると、わからないを間違いとして約3%となる。
【0084】
次に、障害物が無いときを考える。a,b,c,dのセンサ出力が得られる確率を式12に示した。本実施例では、aの出力が得られたときは、障害物有りと結論する。このときの判断が間違っている確率は、実際には障害物がないのにaが出力される確率である。この確率は式12のaの確率で72.90%であるが、この出力が得られる確率は約0.00%である。
【0085】
同様に、bの出力が得られた場合には、障害物有りと判断する。この判断が間違っている確率は24.30%であるが、この出力が得られる確率は約0.03%である。cの出力が得られた場合には、わからないと判定する。この出力が得られる確率は約2.94%である。eの出力が得られた場合には、障害物無しと判断する。この判断が間違っている確率は0.10%であり、この出力が得られる確率は約97.03%である。
【0086】
これらを障害物無しのときの間違い率として合計すると、わからないを間違いとしてやはり約3%となる。
【0087】
本実施例では、センサ出力からの判断で、障害物有りとしたときの間違い率はほぼ0%である。同様に、障害物無しとしたときの間違い率も、ほぼ0%である。わからないが3%程度出力されるにすぎない。このように、本実施例では、判定不能な状態を正確に把握し、障害物の有無はわからないと判定することができる。
【0088】
これを従来の多数決や直感的確率表現を行うと、次のような結果となる。まず、多数決の場合は、a,bのとき障害物ありとし、c,dのときに障害物なしと判断する。cのとき障害物なしと判断しているのに実際には障害物なしという判断間違いが約1.5%生じる。このように、従来例では、実際には不確かな判断内容を断定してしまう。
【0089】
次に、aのときは障害物存在確率100%、bのとき66%、cのとき33%、dのとき0%と判断する場合では、本来正確であるbのときですら66%である。cでは、障害物があるのか無いのかわからないのに、無い方向に判断している。
【0090】
このように、本実施例によると、従来の感覚的な判断より明らかな間違いが少ない。実際には障害物が無いのに、障害物ありと判断したり、実際には障害物があるのに障害物無しと判断したりすることは極めて少ない。このように、本実施例では、実際の障害物の存在を正確に判断できる。
【0091】
また、センサ毎に間違える確率が異なっても、これを全て融合した判断を行うことができる。
【0092】
〔第2実施例〕
次に、自動車の各種センサを用いて障害物地図を生成する実施例を図10乃至図14を参照して説明する。
【0093】
図10は車載用センサの搭載例を示す説明図である。図10に示すように、本実施例では、先行車両との追突防止目的で設けられるフロントセンサ42と、右直事故や巻き込みなどの防止目的で設けられるコーナセンサ41,42と、車線変更時や幅寄せ時の接触回避目的で設けられるサイドセンサ44と、車線変更時などの死角監視目的で設けられる後側方センサ45,46と、走行時の追突防止や後退時の衝突防止目的で設けられる後方センサ47及びバックセンサ48,49とを備えている。
【0094】
フロントセンサ42は、レーザセンサやCCDカメラを用い、広角で測定する。120度程度までは、レンズの変更などでCCDカメラによっても撮像可能である。また、レーザセンサをスウィープさせるようにしてもよい。
【0095】
コーナセンサ41,43は、超音波センサで構成し、広角検出する。サイドセンサは、超音波センサやレーザセンサで構成し、狭角の検出をする。後側方センサ45,46は、超音波センサやCCDステレオCCDカメラ等で構成し、広角検出する。
【0096】
後方センサ47、バックセンサ48,49は、ステレオCCDカメラや、レーザセンサ、また超音波センサで構成する。また、バックセンサ48,49は、コーナセンサとして用いられることもある。
【0097】
これにより、夜間であればCCDセンサによる判定正答率を低く設定するなど、各種センサ特性に応じた障害物認識を行うことができる。
【0098】
図11及び図12センサの測定範囲の死角の関係を示す説明図である。運転者50から直視できる範囲は、図11の▲1▼に示す範囲である。図11及び図1の▲2▼に示す範囲はルームミラーによって目視可能であり、▲3▼に示す範囲はサイドミラーによって目視可能である。図1の▲4▼に示す範囲は、運転者50が首を動かすことにより状況を確認する。本実施例では、このような死角を考慮してセンサの配置を行う。特に、このような死角部分については各センサの計測範囲を重ね合わせ、複数種類のセンサ出力を融合することで、より精度の高い障害物認識処理を行うと良い。
【0099】
図13及び図14は障害物地図の設定例を示す説明図である。本実施例では、自車両の周辺を複数の障害物地図に分割して管理する。これは、自車の運転席の左右などもともとセンサの測定範囲ではない部分があることや、また、融合すべきセンサ出力は予め定まるため、計測範囲の重なるセンサを中心に障害物地図の生成範囲を定めたものである。
【0100】
図13に示す例では、自車の左側の範囲31と、右側の範囲32と、前方33と、後方34とに分割する。図14に示す例では、前方33と、進行方向に「コ」字状となる範囲36とに分割する。
【0101】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成され機能するので、これによると、判定手段が、センサ部から出力された障害物までの距離情報に基づいてセンサ部の計測範囲の各地点を3領域に区分し、さらに、確率算出手段が、判定正答率情報に基づいてこの判定結果の確からしさを算出するため、センサ部の測定範囲全域について、障害物が存在するか否かの確率を算出することができ、しかも、判定正答率が、センサ部の特性に基づいて定められるため、センサ部の特性に応じて障害物の存在の確率を算出することができ、このため、同一の地点について複数の距離センサを用いた場合には、当該障害物存在確率を一定の計算式により融合することが可能となり、すると、センサ特性の異なる複数のセンサ出力を精度良く正確に融合することができる。このように、測定範囲内の全ての領域について障害物の存在を確率的に評価することができる従来にない優れた障害物認識装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】複数のセンサ出力を用いた場合の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】図3(A)〜(F)はセンサ部の一例を示す説明図である。
【図4】図1に示した判定手段の判定例を示す説明図であり、図4(A)はセンサの測距範囲及び距離を示す図で、図4(B)はこの測距範囲での3領域への判定内容を示す図である。
【図5】障害物の存在についての事象の各要素数を示す説明図である。
【図6】単一のセンサによる障害物の認識処理の一例を示す説明図である。
【図7】図6に示した状況から得られる障害物地図の一例を示す説明図である。
【図8】複数のセンサによる障害物の認識処理の一例を示す説明図である。
【図9】図8に示した状況から得られる障害物地図の一例を示す説明図である。
【図10】第2実施例によるセンサの配置例を示す平面図である。
【図11】図10に示すセンサ配置と死角との関係を示す平面図である。
【図12】図10に示すセンサ配置と死角との関係を示す側面図である。
【図13】第2実施例による障害物地図の形成範囲の一例を示す説明図である。
【図14】第2実施例による障害物地図の形成範囲の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
2 センサ部
4 判定手段
6 確率算出手段
8 判定正答率記憶手段
10 複数の距離センサ
12 測定結果別判定機能
14 測定結果別確率算出機能
16 融合手段
18 障害物地図生成手段
Claims (5)
- 障害物までの距離を測定するセンサ部と、このセンサ部の出力に基づいて障害物の有無を認識する認識部とを備えた障害物認識装置において、
前記認識部が、前記センサ部から出力された障害物までの距離情報に基づいて前記センサ部の計測範囲の各地点が「障害物有り」,「障害物無し」及び「不明」の3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する判定手段と、この判定手段による判定結果と実際の障害物の有無との関係を判定正答率として予め記憶した判定正答率記憶手段とを備えると共に、
前記判定正答率は、前記判定手段による判定結果が「障害物有り」のときに実際に障害物が存在する確率、及び、前記判定手段による判定結果が「障害物無し」のときに実際には障害物が存在する確率、であって、事前の計測により求められた前記センサ部の特性を示す値であり、
前記判定手段に、前記判定正答率記憶手段に格納された判定正答率情報に基づいて前記判定手段による「障害物有り」及び「障害物無し」の判定結果の確からしさを算出する確率算出手段を併設したことを特徴とする障害物認識装置。 - 前記判定手段が、前記センサ部から出力された前記障害物までの距離情報に基づいて前記センサ部の前面から当該障害物に至る範囲を「障害物無し」と判定する第1の判定機能と、当該障害物近傍を「障害物有り」と判定する第2の判定機能と、当該障害物以降の範囲を「不明」と判定する第3の障害物判定機能とを備えたことを特徴とする請求項1記載の障害物認識装置。
- 前記判定正答率記憶手段が、前記判定正答率であって、前記判定手段の「障害物有り」との判定結果のときに実際に障害物が存在する第1の確率値を記憶した第1の記憶領域と、前記判定正答率であって、前記判定手段の「障害物無し」との判定結果のときに実際には障害物が存在する第2の確率値を記憶した第2の記憶領域とを備え、
前記確率算出手段が、前記第1の記憶領域に格納された第1の確率値に基づいて前記判定手段によって「障害物有り」と判定された範囲に障害物が存在する確率を算出する第1の確率算出機能と、前記第2の記憶領域に格納された第2の確率値に基づいて前記判定手段によって「障害物無し」と判定された範囲に障害物が存在する確率を算出する第2の確率算出機能を備えたことを特徴とする請求項2記載の障害物認識装置。 - 前記センサ部が、一部重なる測定範囲の測定結果を複数出力する同一又は複数の距離センサを備え、
前記判定手段が、前記センサ部から出力された複数の測定結果毎に前記3領域の評価のうちいずれに属するかを判定する測定結果別判定機能を備え、
前記確率算出手段が、前記測定結果別判定機能によってそれぞれ判定された領域毎に前記判定正答率記憶手段に格納された判定正答率情報に基づいて実際に障害物が存在する確率を障害物存在確率として算出する測定結果別確率算出機能を備え、
前記確率算出手段に、前記測定結果別確率算出機能によって算出された同一地点についての複数の障害物存在確率を一定の算出式を用いて第2の障害物存在確率として算出する融合手段を併設したことを特徴とする請求項1記載の障害物認識装置。 - 前記融合手段に、当該融合手段によって算出された障害物存在確率を前記センサ部を基点とした地図上に配置し、当該障害物の位置情報を確率表現した障害物地図を生成する障害物地図生成手段を併設したことを特徴とする請求項4記載の障害物認識装置。
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