JP3564872B2 - 熱交換器用波形フィン及びこの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子機器などを収納する制御盤等に使用され、制御盤外の空気と制御盤内の空気を強制対流させて熱交換させる熱交換器に使用される波形フィン(コルゲートフィン)の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の熱交換器内には、薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、上記各波形との間に第2の流路を形成し、上記第1の流路又は第2の流路の上下端面を一つおきに封止して、制御盤内に連通する内気流路と、制御盤外に連通する外気流路とを構成するようにしている。従来の波形フィンの流路の上下端面封止構造としては、例えば、特開昭61−289291号、実公平5−37506号公報などに開示されているものがあった。
【0003】
上記特開昭61−289291号公報は、波形フィンの上下端面をプラスチック成形品よりなる端部閉塞具のスリット溝穴内に挿入固着し、この端部閉塞具はスリット溝穴によって仕切られた凸状部には、一カ所おきに開口を形成する事によって内気流路と外気流路とを構成している。また、上記実公平5−37506号公報などは、波形フィンの上下端面から奥まった位置に、一カ所おきに櫛歯状シール金具の櫛歯を長手方向側面から挿入し、上記波形フィンの上下端面と櫛歯との間にシール材を充填する事によって内気流路と外気流路とを構成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開昭61−289291号公報における熱交換器は、波形フィンと端部閉塞具との製作誤差のために、波形フィンの上下端面と端部閉塞具のスリット溝穴との間に僅かな隙間が生ずることを避けることが出来ない。このため、外気流路側から内気流路側への、ミストや液体の侵入を完全に防止することが困難である。また、端部閉塞具に形成された開口は各流路断面を狭め、この開口への入出気流の流体抵抗を増大させることになり、熱交換器の冷却効率を低下させることになっていた。さらに、プラスチック成形品よりなる端部閉塞具は、熱交換器の幅(フィン山個数)が異なるもの毎に用意する必要があり、他種類の成形金型を投資しなければならないという問題があった。
【0005】
上記実公平5−37506号公報などにおける熱交換器は、前述したようにシール材を充填することにより流路端部の封止を行っている。この封止作業は次の手順で行われる。波形フィンの両方の端面から奥まった位置にシール金具の櫛歯を挿入し、上記シール金具の櫛歯が挿入されない流路内に、反対側面から該流路の幅にほぼ等しい幅を有したスペーサ治具を挿入する。これは、シール材の充填圧力により波形フィンの隔壁部が膨らむのを防止するためである。この後、カートリッジ入りシール材を塗布機(ディスペンサ)でシール金具の櫛歯から波形フィンの端縁までの間にシール材を肉盛り充填していた。上記櫛歯から波形フィンの端縁までの奥行きはシール材の接着信頼性を確保するため相当の肉盛りができる寸法にされている。
【0006】
上記充填作業はシール材を均等な力で押し出しつつ塗布機を流路端面に沿って徐々に移動させる必要がある。また、波形フィンの端面迄肉盛り充填するには上記作業を数回繰り返す必要があり多大な作業時間を要していた。さらに、充填された封止端面は波形フィンの長手方向に対して略直角であるため、隣り合う流路へ入る気流は急収縮による流体抵抗を、出る気流は急拡大による流体抵抗を生ずることになり、熱交換器の冷却効率を低下させることになっていた。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、流路端部の封止を簡単に、かつ信頼性の高い構成にでき、流路端部での流体抵抗が少なく、冷却効率の高い熱交換器用の波形フィンとその製造方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る熱交換器用波形フィンは、薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、各波形との間に第2の流路を形成している熱交換器用の波形フィンにおいて、複数の櫛歯を基板部から分岐折り曲げ形成した櫛歯状シール金具と、この櫛歯状シール金具の櫛歯を第1の流路または第2の流路の端部内に嵌合すると共に、この嵌合された流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着させることで、この端縁と櫛歯との間に形成された空間と、この空間内に充填されて該空間を封止するシール材とを備えたことをことを特徴とするものである。従って、櫛歯状シール金具の櫛歯を流路の端部内に嵌合すると共に、上記流路を塞ぐように流路両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着させ、上記櫛歯と密着端縁との間の空間内にシール材を充填して封止したので、フィン端部の隔壁部の剛性が強化され、シール材充填圧力によるフィン隔壁部の膨らみが防止されると共に、シール材の充填量を少なくできる。また、フィン封止端部が三角状に成形されるため、隣り合う流路への入出気流は緩やかに収縮、拡大される。
【0009】
第2の発明に係る熱交換器用波形フィンの製造方法は、薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、各波形との間に第2の流路を形成している熱交換器用の波形フィンの製造方法において、複数の櫛歯を基板部から分岐折り曲げ形成した櫛歯状シール金具の該櫛歯を第1の流路または第2の流路の端部内に嵌合すると共に、この嵌合された流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するよう塑性変形させ、塑性形成された密着した端縁部の両端に形成された隙間のいずれか一方から反対側の隙間まで、シール材を押し込み充填することをことを特徴とするものである。従って、圧縮して形成された密着端縁部の両端には涙滴状隙間と三角形状隙間とを残し、シール材は上記隙間のいずれか一方から反対側の隙間まで押し込み充填するので、注入ノズルを流路端面に沿って移動させることなく、一回の充填で封止を完了でき、反対側の隙間を充填完了の確認穴に利用できる。
【0010】
第3の発明に係る熱交換器用波形フィンは、隔壁部の長手方向を連結する橋絡部の少なくとも片方が、断面半円状に形成されており、半円状橋絡部を挟んだ両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着され、半円状橋絡部側には、該橋絡部の半円と連続して形成された円形隙間と、反対側に形成された三角状隙間と、円形隙間から三角状隙間まで押し込み充填されたシール材とを備えたことを特徴とするものである。従って、圧縮して形成された密着端縁部の片端には断面半円状橋絡部の半円と連続した円形隙間が形成されているので、上記円形隙間に注入ノズルを嵌合させることができ、高い圧力で短時間に充填でき、多管ノズルを使用して充填作業の自動化が容易にできる。
【0011】
第4の発明に係る熱交換器用波形フィンの製造方法は、薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、各波形との間に第2の流路を形成している熱交換器用の波形フィンの製造方法において、複数の櫛歯を基板部から分岐折り曲げ形成した櫛歯状シール金具をの櫛歯を第1の流路または第2の流路の端部内に嵌合すると共に、予め櫛歯状シール金具の櫛歯と流路端縁との間に軟質パッキン部材を配設し、櫛歯状シール金具の櫛歯が嵌合された流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着し、軟質パッキン部材を断面三角形状に圧縮させて封止することを特徴とするものである。従って、櫛歯状シール金具の櫛歯を流路の端部内に嵌合すると共に、上記櫛歯と流路端縁との間に軟質パッキン部材を配設しておき、上記流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するよう塑性変形させて封止したので、フィン端部の隔壁部の剛性が強化され、櫛歯と密着端縁との間の空間内に圧縮された軟質パッキン部材によって気密に封止される。また、フィン封止端部が三角状に成形されるため、隣り合う流路への入出気流は緩やかに収縮、拡大される。
【0012】
第5の発明に係る波形フィンの製造方法は、三角状の先端部と、封止する流路と隣り合う流路の幅にほぼ等しい幅でフィン端縁から流路内の櫛歯に達する奥行きより長い奥行きの直線部と、直線部から両側にそれぞれ封止する流路の幅のほぼ半分まで広がる一対の傾斜部とを有した複数個のくさび状突起部を備えた成形金型を、櫛歯状シール金具の櫛歯を流路内に嵌合させた波形フィンの端部側方向から、封止する流路と隣り合う流路内に挿入して、第1の流路または第2の流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するまで塑性変形することを特徴とするものである。従って、複数個のくさび状突起部を備えた成形金型を、櫛歯状シール金具の櫛歯を流路内に嵌合させた波形フィンの端部側方向から、封止する流路と隣り合う流路内に挿入して、流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するよう塑性変形させるので、櫛歯をダイとして利用し、パンチとしてのくさび状突起部を備えた成形金型のみで同時に複数個のフィン端部の成形ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、図1〜図3を参照してこの発明の一実施の形態を説明する。図において、1は薄板を連続的に折り曲げて製造した波形フィンである。図1に示されたものは折り曲げされたままの形状である。上記波形フィン1は伝熱に寄与する多数個の隔壁部11と、その長手方向の両端を交互に一つおきに連結する第1の橋絡部12と第2の橋絡部13とから成る。波形フィン1は図示されてないカバー板金などと組み合わされ、複数個の第1の流路90と、この第1の流路90と交互に位置する第2の流路91が形成される。2は櫛歯状のシール金具で、基板部21の一端から複数個の櫛歯22が分岐形成されている。この実施の形態では、上記櫛歯22の間隔及び個数は、上記第1の流路90と一致している。基板部21から直角に折り曲げられた櫛歯22の高さと幅は、第1の流路90の間に挿入されほぼ閉鎖できる高さと幅を有している。また、基板部21は波形フィン1の端部から飛び出るように配置されている。
【0014】
図1のようにシール金具2に組み付けられた波形フィン1は、図2に示すように、第1の流路90の隔壁部11の端縁がほぼ全高さにわたって密着するよう塑性変形される。15は上記加工によって形成される一対の傾斜段部で、略櫛歯22の位置から密着端縁14まで先細りに延びている。上記密着端縁14の片端には第1の橋絡部12に接続する隔壁部11に亀裂が生じない程度まで密着圧縮して三角形状の隙間16が残されている。また、密着端縁14の反対端には櫛歯22を挟んで両側に離れた第2の橋絡部13近傍の隔壁部11、11を押し潰すことなく涙滴状の隙間17が残されている。
【0015】
上記のように加工された波形フィン1の第1の流路90の端部には、傾斜断部15と櫛歯22との間に、三角形状隙間16、涙滴状隙間17で外部に通ずる断面三角形状の空間が形成されている。シール材塗布機のノズル5が涙滴状隙間17にあてがわれ、シール材3が上記断面三角形状の空間内に圧入される。シール材3が下部の三角形状隙間16からはみ出すまで充填すれば、第1の流路90の端部は気密に封止される。なお、ノズル5をあてがって圧入する隙間は、三角形状隙間16を使用しても良い。
【0016】
波形フィン1は通常、0.2〜0.8mm厚さの薄い金属帯板から波形に成形されているので、特に隔壁部11部分の剛性は大きくない。そのため、第1の流路90内に嵌合された櫛歯22によって、フィン山全体の横方向強度が補強されても、図1に示す隔壁部11端部ではシール材充填圧力によって膨らみを生じてしまう。しかし、図2のように傾斜段部15の形成によって、隔壁部11端部の剛性が強化されるので、第2の流路91内にスペーサ治具を挿入しなくとも、シール材3の充填圧力によるフィン隔壁部の膨らみが防止される。また、櫛歯22と第1の流路90の端縁迄の封止空間は傾斜段部15の形成によって従来のものより狭められるので、シール材の充填量を少なくできる。さらに、密着端縁14、傾斜段部15、櫛歯22はシール材3によって強固に密着一体化され、信頼性の高い封止が達成される。
【0017】
第1の流路90の端部は、傾斜段部15の形成によって三角状に先細りになつているので、図3の矢印で示すように、第2の流路91へ入る気流は緩やかに収縮されるため、急収縮による流体抵抗が低減される。また、上記矢印とは反対方向の第2の流路91から出る気流の場合は緩やかに拡大され、急拡大による流体抵抗が低減される。従って、風速を大きくでき、熱交換器の冷却効率を向上できる。
【0018】
一カ所の第1流路90のシール材充填作業は、注入ノズル5を移動させることなく一回の充填で封止を完了できる。この場合、シール材注入口に使用した隙間(16又は17)とは反対側の隙間を充填完了の確認穴に利用できる。また、ノズル5をあてがった隙間(16又は17)の周囲からのシール材はみ出しを防止するため、ノズル5の周囲に鍔状の蓋部材を配設すると良い。
【0019】
実施の形態2.
図4はこの発明による熱交換器用波形フィンの他の実施の形態を示す要部正面図である。図において、1は波形フィンで、実施の形態1と同様に第2の橋絡部13は断面半円状に形成されている。第1の流路90の隔壁部11の両端はほぼ全高さにわたって密着するよう塑性変形される。塑性変形による密着端縁14の上部には断面半円状の第2の橋絡部13の半円と連続した円形の隙間17Aが形成されている。他の部分は実施の形態1と同様に構成されているため説明は省略する。
【0020】
ノズル5の先端径を円形隙間17Aの内径に一致させることにより、ノズル5の先端を円形隙間17A内にぴったりと差込嵌合できる。この嵌合状態において高い注入圧力でシール材を充填しても、円形隙間17A周りからシール材がはみ出すことがない。このため充填時間が短くなりノズル5を外した後の仕上げも不要にでき、さらに短時間の封止ができる。ところで、一般的に波形フィン1は等間隔の波形に成形された後、スプリングバックで広がり各隔壁部11は平行な状態に保たれず、結果的にフィン山の間隔がずれる現象が起こる。この実施の形態は従来のものと同様に、波形フィン1の第1の流路90内に櫛歯状シール金具2の櫛歯22が嵌合されているので、スプリングバックによる広がりと成型時の誤差が矯正されフィン山間隔は正確である。従って、円形隙間17Aの位置も正確であるから、シール材塗布機の吐出口に複数個のノズルを分岐接続した多管ノズルを、上記円形隙間17Aに正確に位置決めして嵌合できる。以上により、複数箇所の流路のシール材充填封止作業を一括して行う自動化が容易にできる。
【0021】
実施の形態3.
図5はこの発明による熱交換器用波形フィンの他の実施の形態を示す要部斜視図である。図において、1は波形フィンで、第2の橋絡部13Aが第1の橋絡部12と同じく平坦に構成されたものである。17Bは密着端縁14の上部に残された涙滴状の隙間で、下部の三角形状隙間16と略対称の形状となる。また、上記涙滴状の隙間17Bは、第2の橋絡部13A端部に凹部13Bを設けることにより、V字状の開口部が小さい隙間17Cに加工できる。他の部分は実施の形態1と同様に構成されているため、説明は省略する。
【0022】
図5の波形フィン1は、下部の三角形状隙間16又は上部の涙滴状隙間17Bからシール材3が充填される。また、充填完了確認穴としてのV字状隙間17Cは、はみ出したシール材の除去作業が簡単にできる。このように、第1の橋絡部12、第2の橋絡部13Aとも平坦に構成された波形フィン1でも実施の形態1と同様に封止できる。
【0023】
上記実施の形態1〜3とも、両側隔壁部11端縁の高さ全体を密着するよう塑性変形させると共に、シール金具2の基板部21に注入穴を穿設し、上記注入穴から櫛歯22と密着端縁14との間の空間内にシール材を充填することもできる。しかし、三角形状隙間16を無くすには、櫛歯22を挟んで両側に離れた第1の橋絡部12近傍の隔壁部11、11を引き寄せ絞る加工となる。このため、亀裂が発生しないよう展延性に富む材料を使用したりしごき加工を加える必要がある。また、涙滴状隙間17を完全に押し潰す加工は容易ではあるが、その部分が第2の橋絡部13より外に延びることになりカバー板金と干渉するなどの不具合が生ずる。この発明では、複雑な加工を要して隔壁部11端縁の全高を密着させる必要はなく、密着端縁部14に僅かな隙間が生じていてもシール材で塞がれるので支障が無い。
【0024】
実施の形態4.
図6はこの発明による熱交換器用波形フィンの他の実施の形態を示す要部斜視図である。図において、1は波形フィンで、図1に示されたものと同じく折り曲げされたままの形状である。2は基板部21の一端から複数個の櫛歯22が折り曲げ形成された櫛歯状のシール金具である。4は上記櫛歯22に貼り付けられた複数個の軟質パッキン部材である。この軟質パッキン部材4は、基板部21の幅と櫛歯22の高さに等しい面積の接着材付き板材のものを複数個の櫛歯22に一括して貼り付け、次にダイカットにより余分な部分を切り取り図6に示す形状にすれば、貼り付け作業が極めて短時間にできる。上記のように軟質パッキン部材4が貼り付けられた櫛歯22を第1の流路90内に嵌合させた後、実施の形態1の図2で示すように、第1の流路90端部を塑性変形させる。他の部分は実施の形態1と同様に構成されているため、説明は省略する。
【0025】
上記のように両側隔壁部11の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するよう塑性変形させることにより、フィン端部の隔壁部11の剛性が強化されると共に、軟質パッキン部材4は櫛歯22と密着端縁14との間の空間内に圧縮される。この圧縮により軟質パッキン部材4の中間部から上下端に向けて体積移動が起こり、上下端は涙滴状隙間17、三角形状隙間16からはみ出すように波形フィン1端部内面に圧接される。以上のように圧縮された軟質パッキン部材4により、第1の流路90端部は気密に封止される。また、上記フィン封止端部は三角状に成形されるため、隣り合う第2の流路91への入出気流は緩やかに収縮、拡大され、流体抵抗が低減される。
【0026】
実施の形態5.
図7はこの発明による熱交換器用波形フィンの製造方法、特に端部成形方法を示す要部平面図、図8は図7のA−A線断面図である。図において、1は波形フィンで、図1に示されたものと同じく折り曲げされたままの形状である。2はシール金具で、図1と同様に、その櫛歯22が第一の流路90の端部内に嵌合されている。6は上記波形フィン1の端部を塑性変形させるための成形金型である。上記成形金型6は、波形フィン1の端部側に配置される基台61から複数個のくさび状突起62が形成されている。63は上記くさび状突起62の三角状の先端部である。64は第2の流路91の幅にほぼ等しい幅で、フィン端縁から櫛歯22に達する奥行きL1より長い奥行きL2を有し、上記先端部63に連続する直線部である。65は上記直線部64から両側にそれぞれ第1の流路90の幅のほぼ半分まで広がる一対の傾斜部である。66は上記傾斜部65に連続して隣り合うくさび状突起62の根元に設けられた細溝部で、波形フィン1の板厚のほぼ2倍の溝幅を有する。くさび状突起62の上下には直線部64から基台61へ広がる傾斜部67が設けられており、この上下の傾斜部67は傾斜部65の位置に対応している。
【0027】
成形金型61は適宜なガイド機構に支えられ、一般的な油圧又は空圧駆動装置によって図8に示す矢印方向に作動される。また、波形フィン1と櫛歯2は適宜なクランプ機構により固定されている。図7、図8は第2の流路91内にくさび状突起62が直線部64の付け根まで挿入された状態が示されている。さらに挿入されると、隔壁部11の端縁が傾斜部65に沿って変形される。最終挿入位置で、第1の流路90の両側隔壁部11の端縁は細溝部66内に食い込み、密着するよう塑性変形される。上記塑性変形が始まる時点で、直線部64の先端は櫛歯22より奧側に達しているから、隔壁部11は櫛歯22と直線部64の間に拘束され、第2の流路91の方に膨らんで逃げることが阻止される。換言すれば、パンチとしてのくさび状突起62に対し櫛歯22はダイとして作用する。
【0028】
成形金型6によれば、直線部64と基台61の高さを変えることにより、図2に於ける密着端縁14の高さを任意に調節でき、三角形状隙間16、涙滴状隙間17の大きさを調節できる。また、上記成形金型6の上部に、断面半円状の第2の橋絡部13のそれぞれに内接する径の丸棒部材を配設し、傾斜部65部分の挿入と連動して第2の橋絡部13内に上記丸棒部材を挿入すれば、図4に示す円形隙間17Aを形成できる。また、備えられたくさび状突起部62の個数に応じて、複数個のフィン端部の成形が同時にできる。上記くさび状突起部62の個数よりフィン山の個数(第1の流路90の個数)が多い場合は、成形金型6を横にずらせて複数回加工すればよく、塑性変形加工済みのところと重複して挿入できるから一つの成形金型6で、任意のフィン山個数の波形フィンを加工ができる。さらに、ダイ金型が不要なので金型費用が少なくできる。
【0029】
以上の実施の形態では、波形フィン1の片方の端部の封止についてのみを説明したが、反対側の端部の封止についても同様に実施される。なお、波形フィン1の両側の端部に嵌合させるシール金具2の櫛歯22は、第1の流路90、第2の流路内91のいずれにも嵌合できる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、第1の発明によれば、櫛歯状シール金具の櫛歯を流路の端部内に嵌合してから上記端部端縁を密着するよう塑性変形させ、上記櫛歯と密着端縁との間の空間内にシール材を充填して封止したので、フィン端部の隔壁部の剛性が強化され、少ないシール材の充填で、櫛歯とフィン端部の一体化が成され、信頼性の高い封止ができる。また、フィン封止端部が三角状に成形されるため、隣り合う流路への入出気流は緩やかに収縮,拡大され圧力損失を低減できる効果が得られる。
【0031】
また、第2の発明によれば、圧縮して形成された上記密着端縁部の両端には涙滴状隙間と三角形状隙間とを残し、シール材は上記隙間のいずれか一方から反対側の隙間まで押し込み充填するので、注入ノズルを移動させることなく、一回の充填により封止を完了でき、反対側の隙間を充填完了の確認穴に利用できる効果が得られる。
【0032】
また、第3の発明によれば、圧縮して形成された密着端縁部の片端には断面半円状橋絡部の半円と連続した円形隙間が形成されているので、上記円形隙間内に注入ノズルをぴったりと嵌合させることができ、高い注入圧力で短時間に充填でき、充填作業の自動化が容易にできる効果が得られる。
【0033】
また、第4の発明によれば、フィン端部内に嵌合する櫛歯と流路端縁との間に予め軟質パッキン部材を配設しておき、上記流路の端部端縁密着させて、櫛歯と密着端縁との間の空間内に軟質パッキン部材を圧縮させるので、フィン端部の隔壁部の剛性が強化され、シール材を使用することなく気密に封止できる。また、フィン封止端部が三角状に成形されるため、隣り合う流路への入出気流は緩やかに収縮,拡大され圧力損失を低減できる効果が得られる。
【0034】
また、第5の発明によれば、複数個のくさび状突起部を備えた成形金型を、シール金具の櫛歯を流路内に嵌合させた波形フィンの端部側方向から、封止する流路と隣り合う流路内に挿入して、両側端縁をほぼ密着するよう塑性変形させるので、櫛歯をダイとして利用し、パンチとしてのくさび状突起部を備えた成形金型のみで同時に複数のフィン端部の成形ができ、上記成形金型はフィン山数の異なる他種類の波形フィンに適用できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による実施の形態1を示す封止加工前の熱交換器用波形フィンの要部斜視図である。
【図2】この発明による実施の形態1を示す熱交換器用波形フィンの要部斜視図である。
【図3】図2に示す熱交換器用波形フィンの要部平面図である。
【図4】この発明による実施の形態2を示す熱交換器用波形フィンの要部正面図である。
【図5】この発明による実施の形態3を示す熱交換器用波形フィンの要部斜視図である。
【図6】この発明による実施の形態4を示す封止加工前の熱交換器用波形フィンの要部斜視図である。
【図7】この発明による実施の形態5を示す熱交換器用波形フィンの製造方法、特に端部成形方法を示す要部平面図である。
【図8】図7のA−A線断面図である。
【符号の説明】
1 波形フィン、2 櫛歯状のシール金具、3 シール部材、4 軟質パッキン部材、5 注入ノズル、6 成形金型、11 隔壁部、12 第1の橋絡部、13 第2の橋絡部、14 密着端縁、15 傾斜段部、16 三角形状隙間、17,17B 涙滴状隙間、17A 円形隙間、21 基板部、22 櫛歯、61 基台、62 くさび状突起、64 先端部、65 傾斜部、90 第1の流路、91 第2の流路
Claims (5)
- 薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、上記各波形との間に第2の流路を形成している熱交換器用波形フィンにおいて、
複数の櫛歯を基板部から分岐折り曲げ形成した櫛歯状シール金具と、
この櫛歯状シール金具の櫛歯を上記第1の流路または第2の流路の端部内に嵌合すると共に、この嵌合された流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着させることで、この端縁と櫛歯との間に形成された空間内に充填されて該空間を封止するシール材と、
を備えたことを特徴とする熱交換器用波形フィン。 - 薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、上記各波形との間に第2の流路を形成している熱交換器用波形フィンの製造方法において、
複数の櫛歯を基板部から分岐折り曲げ形成した櫛歯状シール金具の該櫛歯を上記第1の流路または第2の流路の端部内に嵌合すると共に、この嵌合された流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するよう塑性変形させ、
塑性形成された上記密着した端縁部の両端に形成された隙間のいずれか一方から反対側の隙間まで、シール材を押し込み充填することを特徴とする熱交換器用波形フィンの製造方法。 - 上記隔壁部の長手方向を連結する橋絡部の少なくとも片方が、断面半円状に形成されており、上記半円状橋絡部を挟んだ両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着され、上記半円状橋絡部側には、該橋絡部の半円と連続して形成された円形隙間と、反対側に形成された三角状隙間と、上記円形隙間から上記三角状隙間まで押し込み充填されたシール材とを備えたことを特徴とする請求項1記載の熱交換器用波形フィン。
- 薄板を連続的に波形状に折り曲げて、両側に隔壁部を有した各波形内に第1の流路を形成すると共に、上記各波形との間に第2の流路を形成している熱交換器用波形フィンの製造方法において、
複数の櫛歯を基板部から分岐折り曲げ形成した櫛歯状シール金具をの櫛歯を上記第1の流路または第2の流路の端部内に嵌合すると共に、予め上記櫛歯状シール金具の櫛歯と流路端縁との間に軟質パッキン部材を配設し、上記櫛歯状シール金具の櫛歯が嵌合された流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着し、上記軟質パッキン部材を断面三角形状に圧縮させて封止することを特徴とする熱交換器用波形フィンの製造方法。 - 三角状の先端部と、封止する流路と隣り合う流路の幅にほぼ等しい幅でフィン端縁から流路内の櫛歯に達する奥行きより長い奥行きの直線部と、上記直線部から両側にそれぞれ封止する流路の幅のほぼ半分まで広がる一対の傾斜部とを有した複数個のくさび状突起部を備えた成形金型を、櫛歯状シール金具の櫛歯を流路内に嵌合させた波形フィンの端部側方向から、封止する流路と隣り合う流路内に挿入して、第1の流路または第2の流路を塞ぐように両側隔壁部の端部のほぼ全高さにわたって両側端縁をほぼ密着するまで塑性変形することを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の熱交換器用波形フィンの製造方法。
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