JP3564052B2 - 射出成形機の圧力制御装置及び圧力制御方法 - Google Patents

射出成形機の圧力制御装置及び圧力制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動機構部側とこの駆動機構部側により進退駆動せしめられる可動部側の間に介在させた荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行う射出成形機の圧力制御装置及び圧力制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、駆動モータ及びボールねじ機構を備える駆動機構部側とこの駆動機構部側により進退駆動せしめられるスクリュ側の間にロードセル(荷重変換器)を介在させ、このロードセルから検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行う射出成形機の圧力制御装置は、特公平8−2567号公報及び特開平10−151653号公報等で知られている。
【0003】
この種の圧力制御装置は、ロードセルの一端面をスクリュを支持するスクリュ支持部材に固定するとともに、ロードセルの他端面をボールねじ機構におけるボールねじ部又はナット部に固定し、スクリュ支持部材とボールねじ部又はナット部間に付加される圧力をロードセルにより検出するとともに、この圧力検出結果に基づいて射出圧力(保圧力を含む、以下同じ)等に対する圧力制御を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、射出成形機の成形サイクルには、射出工程と計量工程が存在し、射出工程では、通常、20〔MPa〕程度の高圧の射出圧力がスクリュに付与される。このため、使用するロードセルの定格圧力は、サージ圧力の発生を見込んで、射出圧力の1.5倍程度のものを使用することもある。図4にロードセルの検出特性を示す。同図から明らかなように、射出設定率〔%〕(定格圧力を100〔%〕)に対して、ロードセルを接続したアンプ出力Ga〔mV〕及び検出される射出圧力Pi〔MPa〕は共に比例する関係にあり、これにより、射出工程では正確かつ安定した圧力制御を行うことができる。
【0005】
一方、計量工程では、スクリュを回転させて計量を行うとともに、この際、スクリュには、通常、1〔MPa〕以下の背圧が付与される。このように、計量工程は、1〔MPa〕以下の低圧制御となり、ロードセルの検出領域は、図4に二点鎖線枠Aで示す低圧領域となる。図5に、図4の二点鎖線枠A内の特性を拡大して示すが、同図から明らかなように、低圧領域、特に、0近辺でのアンプ出力Gaや射出圧力Piは、かなり不安定となる。
【0006】
このように、ロードセルを使用した従来の圧力制御装置は、特に、低圧制御工程となる計量工程においてロードセルの検出特性が不安定となり、高精度で安定した圧力制御を行うことができないとともに、高度の成形品質を確保できない問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する課題を解決したものであり、高圧制御工程及び低圧制御工程の双方において高精度で安定した圧力制御を行うことができるとともに、高度の成形品質を確保できる射出成形機の圧力制御装置及び圧力制御方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明に係る射出成形機Mの圧力制御装置1は、駆動機構部2側と可動部3側の間に、低圧検出用の第一荷重変換器(第一ロードセル)4と高圧検出用の第二荷重変換器(第二ロードセル)5を介在させ、かつ第一荷重変換器4に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制する規制部6を設けるとともに、低圧制御工程では第一荷重変換器4から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御し、かつ高圧制御工程では第二荷重変換器5から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行う制御部7を備えることを特徴とする。この場合、好適な実施の形態により、可動部3は、射出装置Miのスクリュ3sに適用できる。
【0009】
一方、本発明に係る射出成形機Mの圧力制御方法は、低圧制御工程では駆動機構部2側と可動部3側の間に介在させた低圧検出用の第一荷重変換器4から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行うとともに、高圧制御工程では規制部6により第一荷重変換器4に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制し、かつ駆動機構部2側と可動部3側の間に介在させた高圧検出用の第二荷重変換器5から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行うようにしたことを特徴とする。この場合、好適な実施の態様により、低圧制御工程は計量工程に適用できるとともに、高圧制御工程は射出工程に適用できる。
【0010】
【実施例】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
まず、本実施例に係る圧力制御装置1を備える射出成形機Mの構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0012】
図2は、射出成形機Mの射出装置Miを示す。同図中、10は機台であり、この機台10の上面には離間した射出台11と射出駆動台12を設置する。射出台11と射出駆動台12間には四本のガイドシャフト13…を架設し、このガイドシャフト13…に前スライダ14とこの前スライダ14に対して別体に構成した後スライダ15をそれぞれスライド自在に装填する(図1参照)。
【0013】
また、図1に示すように、前スライダ14と後スライダ15間には、規制部6を構成するストッパリング6rと第一ロードセル(第一荷重変換器)4を取付ける。この場合、第一ロードセル4は、計量工程における背圧を高精度に検出できる低圧検出用ロードセル、例えば、定格圧力が2〔MPa〕程度のロードセルを使用する。第一ロードセル4は全体をドーナツ形に形成し、比較的薄肉の中間起歪部4mの内側に内環部4iを有するとともに外側に外環部4oを有する。そして、外環部4oの前面を、ボルト等によりストッパリング6rの後面に固定するとともに、内環部4iの後面を、ボルト等により後スライダ15の前面に固定する。中間起歪部4mには複数の歪ゲージ4g…を付設し、この歪ゲージ4g…は制御部7を構成するコントローラ7cの入力側に接続する。
【0014】
ストッパリング6rは、外環部4oへの当接面に対して後方へ段差状に形成したストッパ部6rsを有する。このストッパ部6rsにより、内環部4iに対する間隔Lを設定することができ、この間隔Lにより第一ロードセル4に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制することができる。具体的には、定格圧力が2〔MPa〕の第一ロードセル4を使用した場合、2〔MPa〕を設定圧力として設定できる。この際、2〔MPa〕が付与された時点でストッパ部6rsが内環部4iに当接するように、間隔Lを設定すればよい。
【0015】
一方、前スライダ14は、内側に中空部を有する筒形に形成し、この中空部に、ベアリング16,17によりスクリュカップリング18を回動自在に支持する。また、前スライダ14とスクリュカップリング18間には、第二ロードセル(第二荷重変換器)5を介在させる。この場合、第二ロードセル5は、射出工程における射出圧力(保圧力を含む、以下同じ)を高精度に検出できる高圧検出用ロードセル、例えば、定格圧力が30〔MPa〕程度のロードセルを使用する。第二ロードセル5は全体をドーナツ形に形成し、比較的薄肉の中間起歪部5mの内側に内環部5iを有するとともに外側に外環部5oを有する。そして、外環部5oの後面は、前スライダ14の内端面に当接させるとともに、内環部5iの前面とスクリュカップリング18間には、スラストベアリング19を介在させる。中間起歪部5mには複数の歪ゲージ5g…を付設し、この歪ゲージ5g…はコントローラ7cの入力側に接続する。なお、20は前スライダ14の前端に嵌合して第二ロードセル5を保持する保持リング、21は保持リング20とスクリュカップリング18間に介在するベアリング、22はスクリュカップリング18の後端に螺着してベアリング16,17を固定する固定リングをそれぞれ示す。
【0016】
また、前スライダ14の外側上面には計量用のサーボモータ23を配設する。サーボモータ23の後端には、このサーボモータ23におけるロータシャフト23sの回転数(回転速度)を検出するロータリエンコーダ24を付設し、このロータリエンコーダ24はコントローラ7cの入力側に接続する。一方、スクリュカップリング18の前端には歯付被動プーリ25を取付けるとともに、ロータシャフト23sには歯付駆動プーリ26を取付け、さらに、歯付被動プーリ25と歯付駆動プーリ26間に、タイミングベルト27を架け渡して回転伝達機構を構成する。射出台11の前端面には、加熱筒28の後端を取付ける。加熱筒28は後部にホッパー29を備えるとともに、内部にはスクリュ3s(可動部3)を挿入し、このスクリュ3sの後端をスクリュカップリング18(歯付被動プーリ25)の中央に結合する。
【0017】
他方、後スライダ15の後端面にはボールねじ機構30のナット部30nの前端をボルト等により固定する。一方、射出駆動台12は、内側に中空部を有し、この中空部に配したベアリング31によりボールねじ機構30のボールねじ部30sの後端軸部32を回動自在に支持する。なお、33は射出駆動台12の前端面に固定したベアリング保持リングである。また、射出駆動台12の後端面には、ボルト等により射出用のサーボモータ34を取付ける。サーボモータ34は、ステータ部の極数をできるだけ多くし、ロータ部のマグネットによる高い磁束密度と合わせて、低速かつ高トルクの回転を出力する同期型のACサーボモータとして構成する。そして、サーボモータ34のロータシャフト34sは、ボールねじ部30sの後端軸部32に直結する。これにより、サーボモータ34の回転は、ボールねじ機構30のボールねじ部30sに対して直接伝達される。このようなサーボモータ34を用いれば、タイミングベルトを有する回転伝達機構は不要となり、成形機本体の小型コンパクト化及び騒音の低減に寄与できる。また、剛性化によりゲイン(制御定数)を大きくできるため、制御の安定性を高めることができる。
【0018】
実施例は、サーボモータ34の回転をボールねじ機構30のボールねじ部30sに対して直接伝達されるタイプを示したが、サーボモータの回転をタイミングベルトを用いた回転伝達機構を介してボールねじ機構に伝達する一般的なタイプであっても勿論よい。なお、サーボモータ34とボールねじ機構30は、スクリュ3sを進退駆動する駆動機構部2を構成する。一方、サーボモータ34は、コントローラ7cの出力側に接続する。
【0019】
さらに、サーボモータ34の後端には、ロータシャフト34sの回転数(回転速度)を検出するロータリエンコーダ35を付設し、このロータリエンコーダ35はコントローラ7cの入力側に接続する。ロータリエンコーダ35は、ロータシャフト34sの回転速度が低速であっても正確に検出できるように、特に、高分解能に構成する。即ち、ロータシャフト34sの一回転当たりに得られるパルス数ができるだけ多くなるように構成する。
【0020】
次に、本実施例に係る圧力制御装置1の動作を含む圧力制御方法について、図1及び図2を参照しつつ図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0021】
今、射出成形機Mは、計量工程(低圧制御工程)を開始する状態にあるものとする。したがって、スクリュ3sは前進した計量開始位置にある。この際、コントローラ7cは、第一ロードセル4から検出される圧力検出結果を使用できるように制御系を切換える。計量工程では、コントローラ7cによりサーボモータ23が駆動制御される。サーボモータ23の回転はスクリュ3sに伝達され、スクリュ3sの回転により計量が行われる(ステップS1)。この際、コントローラ7cは、第一ロードセル4から得られる背圧検出値(圧力検出結果)に基づいてサーボモータ23を制御し、背圧検出値が背圧設定値になるようにフィードバック制御する。これにより、スクリュ3sには所定の背圧(例えば、1〔MPa〕程度)が付与される。
【0022】
計量工程の終了により、コントローラ7cは、第二ロードセル5から検出される圧力検出結果を使用できるように制御系を切換え、この後、射出工程(高圧制御工程)に移行する(ステップS2,S3)。射出工程では、コントローラ7cによりサーボモータ34が駆動制御される。サーボモータ34の回転はボールねじ機構30のボールねじ部30sに伝達され、ナット部30nが前進するとともに、これに伴ってスクリュ3sも前進移動する。これにより、スクリュ3sの前方に計量された溶融樹脂は、不図示の金型内に射出充填される(ステップS4)。この際、コントローラ7cは、第二ロードセル5から得られる射出圧力検出値(圧力検出結果)に基づいてサーボモータ34を制御し、射出圧力検出値が射出圧力設定値になるようにフィードバック制御する。これにより、スクリュ3sには所定の射出圧力(例えば、20〔MPa〕程度)が付与される。また、射出工程では、ストッパリング6rのストッパ部6rsが内環部4iに当接するため、第一ロードセル4には、間隔Lにより設定された設定圧力(例えば、第一ロードセル4の定格圧力)以上の圧力は付与されない。
【0023】
射出工程の終了によりコントローラ7cは、第一ロードセル4から検出される圧力検出結果を使用できるように制御系を切換える(ステップS5,S6)。そして、次の成形(ショット)を行う場合には、次サイクルの計量工程に移行し、以後、同様の処理が繰り返される(ステップS7)。
【0024】
このように、本実施例に係る圧力制御装置1及び圧力制御方法によれば、計量工程では、ボールねじ機構30側とスクリュ3s側の間に介在させた第一ロードセル4から検出される圧力検出結果(背圧検出値)に基づいて圧力制御が行われるとともに、射出工程ではストッパ部6rsにより第一ロードセル4に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制され、かつボールねじ機構30側とスクリュ3s側の間に介在させた第二ロードセル5から検出される圧力検出結果(射出圧力検出値)に基づいて圧力制御が行われるため、計量工程(低圧制御工程)と射出工程(高圧制御工程)の双方において高精度で安定した圧力制御を行うことができ、もって、高度の成形品質を確保できる。
【0025】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。
【0026】
例えば、可動部3としてスクリュ3sを例示したが、型締機構などであってもよい。したがって、第一荷重変換器4と第二荷重変換器5は、型開閉工程や型締工程における低圧制御工程と高圧制御工程で使い分けることができる。また、実施例は、低圧制御工程と高圧制御工程の二つに分けたが、低圧制御工程(高圧制御工程)を、さらに低圧制御領域と高圧制御領域に分けるなどして三以上の荷重変換器を使用する場合も本発明に含まれる。一方、本発明は、ロードセル以外の第一荷重変換器4と第二荷重変換器5を排除するものではない。また、第一ロードセル4と第二ロードセル5は、取付位置を入れ替えてもよいし、それぞれ他の位置に変更してもよい。さらに、第一ロードセル4と第二ロードセル5を重ねて同一場所に取付けてもよい。他方、制御部7(コントローラ7c)は、第一ロードセル4から検出される圧力検出結果と第二ロードセル5から検出される圧力検出結果を監視し、両圧力検出結果の関係が所定の関係を外れたときに異常処理を行うこともできる。
【0027】
【発明の効果】
このように、本発明に係る射出成形機の圧力制御装置及び圧力制御方法は、低圧制御工程では駆動機構部側と可動部側の間に介在させた低圧検出用の第一荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行うとともに、高圧制御工程では規制部により第一荷重変換器に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制し、かつ駆動機構部側と可動部側の間に介在させた高圧検出用の第二荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行うことができるため、低圧制御工程と高圧制御工程の双方において高精度で安定した圧力制御を行うことができ、もって、高度の成形品質を確保できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る圧力制御装置の構成図、
【図2】同圧力制御装置を備える射出成形機における射出装置の一部断面側面図、
【図3】本実施例に係る圧力制御方法の処理手順を示すフローチャート、
【図4】ロードセルの検出特性図、
【図5】図4に示す二点鎖線枠A内の拡大特性図、
【符号の説明】
1 圧力制御装置
M 射出成形機
2 駆動機構部
3 可動部
4 第一荷重変換器(第一ロードセル)
5 第二荷重変換器(第二ロードセル)
6 規制部
7 制御部
Mi 射出装置
3i スクリュ

Claims (6)

  1. 駆動機構部側とこの駆動機構部側により進退駆動せしめられる可動部側の間に介在させた荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行う射出成形機の圧力制御装置において、前記駆動機構部側と前記可動部側の間に、低圧検出用の第一荷重変換器と高圧検出用の第二荷重変換器を介在させ、かつ前記第一荷重変換器に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制する規制部を設けるとともに、低圧制御工程では前記第一荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御し、かつ高圧制御工程では前記第二荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行う制御部を備えることを特徴とする射出成形機の圧力制御装置。
  2. 前記可動部は、射出装置のスクリュであることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の圧力制御装置。
  3. 前記荷重変換器は、ロードセルであることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の圧力制御装置。
  4. 駆動機構部側とこの駆動機構部側により進退駆動せしめられる可動部側の間に介在させた荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行う射出成形機の圧力制御方法において、低圧制御工程では前記駆動機構部側と前記可動部側の間に介在させた低圧検出用の第一荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行うとともに、高圧制御工程では規制部により前記第一荷重変換器に対して設定圧力以上の圧力が付加されないように規制し、かつ前記駆動機構部側と前記可動部側の間に介在させた高圧検出用の第二荷重変換器から検出される圧力検出結果に基づいて圧力制御を行うことを特徴とする射出成形機の圧力制御方法。
  5. 前記低圧制御工程は、計量工程であることを特徴とする請求項4記載の射出成形機の圧力制御方法。
  6. 前記高圧制御工程は、射出工程であることを特徴とする請求項4記載の射出成形機の圧力制御方法。
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