JP3563887B2 - 液体噴射記録ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射記録装置等に使用される長尺化された液体噴射記録ヘッドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射記録装置等に使用される液体噴射記録ヘッドは、半導体製造技術を用い複数の吐出エネルギー発生素子を所定の間隔をおいて配設した素子基板と、インクを吐出する複数のインク吐出口を形成した吐出口プレートを一体的に有し、インク吐出口にそれぞれ連通する複数のインク流路溝および各インク流路溝に連通しインクを貯留する共通液室が形成された天板とからなり、素子基板の吐出エネルギー発生素子と天板のインク吐出口およびインク流路溝をそれぞれ対応するように正確に位置合わせした状態で、素子基板と天板を組み合わせて接合固着して形成し、吐出エネルギー発生素子によりインク流路溝内のインクに吐出エネルギーを付与することによってインク吐出口からインクを飛翔液滴として吐出させて印字記録を行なうように構成されている。
【0003】
そして、液体噴射記録ヘッドを構成する天板の製造に関しては、射出成型等により樹脂成形された天板に複数のインク流路溝およびインク吐出口を機械切削あるいはレーザ加工を用いて所定の高精度で加工している。特に、インク流路溝の加工方法としては、特開平2−121845号公報に記載されているように、レーザ加工により天板の溝加工面に複数のインク流路溝を同時に形成する方法が知られており、このインク流路溝の加工は、天板の溝加工面と天板端面に配置された吐出口プレートとの境界線をインク流路溝の加工基準線として検出し、この加工基準線に基づいて天板を位置決めし、レーザ光を溝加工面の所定位置に照射することによって行なっている。また、インク吐出口の加工は、上記のように形成されたインク流路溝を基準にして吐出口プレートの所定位置にレーザ光を照射することによって行なっている。
【0004】
ところで、液体噴射記録ヘッドにおいては、記録装置の印字速度を向上させるために、長尺化によるマルチノズル化が望まれ、1404ノズル、あるいはA4幅に対応するもの等のように長尺化に進む傾向にある。このように長尺化された液体噴射記録ヘッドを構成する天板もまた図4に示すように長尺化されている。このように長尺化された天板を図4を参照して説明すると、図4の(a)は、長尺の天板の模式斜視図であり、図4の(b)はその模式断面図である。長尺の天板10は、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で成形され、天板本体11と吐出口プレート12とからなる。天板本体11にはインク流路溝13に供給されるインクを貯留する共通液室(図示しない)やインク受け口(図示しない)が設けられ、そして天板本体11の溝加工面14には、複数のインク流路溝13がレーザ加工等により、また吐出口プレート12には図示しないインク吐出口が同様のレーザ加工等によって加工形成され、長尺の液体噴射記録ヘッドの一構成部品としての天板が形成されている。
【0005】
このように長尺化された天板においては、インク流路溝をレーザ加工により形成する場合に、レーザ光の照射領域に限度があるために、上述した従来技術のように全てのインク流路溝を一度に加工することができない。そこで、インク流路溝を複数のブロックに分割して、ブロック毎にブロック内の溝加工面14と吐出口プレート12との境界線を加工基準線として天板10の位置決めを行ない、そしてブロック内の複数のインク流路溝をレーザ光により一度に加工し、このブロック毎の加工を複数回繰り返して行なって、全てのインク流路溝を形成するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このように長尺化された天板においては、長尺化による天板自身の反りが発生し、この反りを無視することができない。天板におけるインク流路溝のレーザ加工において加工の基準線とする溝加工面14と吐出口プレート12との境界線が、天板自身の反りと同様に弓状に湾曲した状態となっている。したがって、インク流路溝の加工が、天板自身の反りにより弓状に湾曲した加工基準線を基に各ブロック毎に天板の位置決めを行ない、そのブロック毎に加工をすることとなるために、各ブロック単位でインク流路溝の配列方向が異なってしまう。この状態を図3に反りや加工基準線の湾曲度を誇張して模式的に示す。図3に示すように各ブロック単位でインク流路溝の配列方向が異なってしまうと、インクの吐出方向が液体噴射記録ヘッド内でばらついてしまい、記録ヘッドとしての印字品位を低下させることとなり、好ましいものではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の従来技術の有する未解決な課題に鑑みてなされたものであって、長尺化された天板において、反りが生じているとしても、インク流路溝をブロック毎に分割加工して、全てのインク流路溝の配列方向を統一することができ、そして印字品位に悪影響を及ぼすことのない液体噴射記録ヘッドの製造方法を実現することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、複数の吐出エネルギー発生素子が形成された素子基板上に、天板本体とその端面に配設した吐出口プレートからなる天板であって、前記天板本体に前記各吐出エネルギー発生素子に対応する複数のインク流路溝をレーザ加工により形成し、そして前記吐出口プレートに複数のインク吐出口をレーザ加工により形成してなる天板を取り付けて、長尺の液体噴射記録ヘッドを組み立てる長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法において、前記天板のインク流路溝の加工形成に際して、天板の両端部における天板本体の溝加工面と吐出口プレートとの境界線を検出し、検出された両端部の境界線を基準にして、レーザ光の光束の分布軸に対する天板の角度調整を行ない、そして天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、各ブロックの前記境界線を加工基準線として検出し、レーザ光が当該ブロック内の溝加工面の所定位置を照射するように前記天板を位置合わせし、次いで、レーザ光により当該ブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、複数の吐出エネルギー発生素子が形成された素子基板上に、天板本体とその端面に配設した吐出口プレートからなる天板であって、前記天板本体に前記各吐出エネルギー発生素子に対応して複数のインク流路溝をレーザ加工により形成し、そして前記吐出口プレートに複数のインク吐出口をレーザ加工により形成してなる天板を取り付けて、長尺の液体噴射記録ヘッドを組み立てる長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法において、前記天板のインク流路溝の加工形成に際して、天板の両端部における天板本体の溝加工面と吐出口プレートとの境界線を別個の観察光学系でそれぞれ観察して、それらのデータに基づいて、天板の両端部の境界線を結ぶ線をレーザ光の光束の分布軸と合致するように天板の角度調整を行ない、そして天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、各ブロック毎の前記境界線を一方の観察光学系を用いて加工基準線として観察し、そのデータに基づいて、レーザ光が当該ブロック内の溝加工面の所定位置を照射するように前記天板を位置合わせし、次いで、レーザ光により当該ブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、複数の吐出エネルギー発生素子が形成された素子基板上に、天板本体とその端面に配設した吐出口プレートからなる天板であって、前記天板本体に前記各吐出エネルギー発生素子に対応して複数のインク流路溝をレーザ加工により形成し、そして前記吐出口プレートに複数のインク吐出口をレーザ加工により形成してなる天板を取り付けて、長尺の液体噴射記録ヘッドを組み立てる長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法において、前記天板のインク流路溝の加工形成に際して、天板の両端部における天板本体の溝加工面と吐出口プレートとの境界線を1つの観察光学系により順次観察して、それらのデータに基づいて、天板の両端部の境界線を結ぶ線をレーザ光の光束の分布軸と合致するように天板の角度調整を行ない、そして天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、各ブロックの前記境界線を前記観察光学系を用いて加工基準線として観察し、そのデータに基づいて、レーザ光が当該ブロック内の溝加工面の所定位置を照射するように前記天板を位置合わせし、次いで、レーザ光により当該ブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
【作用】
長尺化された液体噴射記録ヘッドの製造方法において、その天板のインク流路溝をレーザ加工によって加工形成する際に、先ず天板の両端部における溝加工面と吐出口プレートとの境界線を検出して、検出された境界線を結ぶ線がレーザ光の光束の分布軸と合致するように、天板の角度調整を行なってから、天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、ブロック毎に境界線を加工基準線として検出して天板の位置合わせをし、レーザ光によりブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を複数回繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようになしたことにより、天板を長尺化したことにより、溝加工面と吐出プレートとの境界線が湾曲していたとしても、インク流路溝の配列方向を一定に形成することができ、記録ヘッドとしての印字品位を損なうことがない。
【0012】
さらに、天板の両端部における境界線の検出および各ブロック毎の加工基準線の検出は、対物レンズ、鏡筒およびカメラ等からなる画像認識用の観察光学系を用いて行なうことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法における天板のインク流路溝を加工する態様を概略的に示す模式図である。図1において、樹脂成形された長尺の天板10を治具等を介して取り付け支持するステージ2は、図示しないレーザ光源から発振されるレーザ光1に対向して配置されて、移動可能に設けられており、ステージ2上には天板10がその溝加工面14にレーザ光1が照射されるようにセットされる。そして、対物レンズ、鏡筒およびカメラ等からなる画像認識用の観察光学系3および4は、その対物レンズ31、41がステージ2上にセットされた天板10に対向するように配設され、天板10の溝加工面14と吐出口プレート12との境界線15を読取り観察する。また、制御系5は画像処理装置6、制御コンピュータ7および移動手段8からなり、画像処理装置6および制御コンピュータ7が観察光学系3および4によって読取られ観察された画像を処理し、その結果に基づいて移動手段8を介してステージ2を適宜移動させるように構成されている。
【0015】
次に、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に基づく天板のインク流路溝の加工について説明する。
【0016】
先ず、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で樹脂成形されて、図示しない共通液室が設けられた天板本体11とその端面に設けられた吐出口プレート12とからなる長尺の天板10を、その溝加工面14にレーザ光1が照射されるように、ステージ2上の所定位置に治具等を介してセットする。その天板10の溝加工面14と吐出口プレート12との境界線15の両端部に、2個の観察光学系3、4の対物レンズ31および41をそれぞれ対向させて位置付ける。観察光学系3、4は、天板10の両端部の境界線15を観察し、そのデータをそれぞれ制御系5へ送り、画像処理装置6および制御コンピュータ7はそれらのデータを処理し、天板10の両端部に位置する境界線15を結ぶ線のレーザ光1の光束の分布軸に対する傾き角度、すなわち天板10の傾きθを演算し、その演算結果に基づいて移動手段8を作動させるべく指令する。これに応じて、ステージ2は移動手段8を介して移動調整され、ステージ2上の天板10は、天板10の両端部の境界線15を結ぶ線がレーザ光1の光束の分布軸と合致するようにその傾きθが調整される。そして、このように調整された角度は、天板の全てのインク流路溝が加工される間は一定に保持する。
【0017】
レーザ光によるインク流路溝13の加工は、本発明においても、インク流路溝を複数のブロックに分割して、ブロック毎にそのブロック内の複数のインク流路溝をレーザ光により一度に加工するものであるが、この各ブロック毎の加工に先だって、一方の観察光学系3の対物レンズ31をインク流路溝を加工しようとする一つの加工ブロックに対向させる。そして、この観察光学系3を用いて、一ブロックの加工領域の中の特定部位を観察し、制御系5は、その観察された画像から、特定部位内の境界線15を加工基準線とし、その加工基準線が画面上常に同じ一定の基準位置に位置するように、そのz方向の距離を演算し、その演算結果に基づいて、移動手段8を介してステージ2をz方向に移動させる。このようにして、ステージ2および天板10はz方向の移動がなされ、その加工基準線15が一定の基準位置に位置したときに天板10は位置決めされ、この状態で、レーザ光1を天板10の溝加工面14に照射して、そのブロックの加工領域内の複数のインク流路溝13を一度に加工する。
【0018】
そして、次のブロックの加工領域まで天板10をx方向に移動させ、そして前述と同様に、観察光学系3によりそのブロックの加工領域の中の特定部位における境界線15を加工基準線として観察し、その加工基準線15を画面上の一定の基準位置と対比して、そのz方向の距離を演算し、演算結果に基づいてステージ2および天板10をz方向に移動させて位置決めし、そのブロックの加工領域内の複数のインク流路溝13をレーザ光の照射により一度に加工する。
【0019】
このような操作を全てのブロックに対して順次繰り返すことによって、天板10の全てのインク流路溝13を加工する。
【0020】
なお、以上の説明においては、天板10の角度調整に際して、天板10の両端部の境界線15をそれぞれ別個の観察光学系3および4を用いて観察しているけれども、1個の観察光学系、例えば観察光学系3のみを用いて、両端部の境界線を観察し、天板10の角度調整を行なうこともできる。
【0021】
すなわち、観察光学系3によって、先ず天板10のいずれか一方の端部の境界線15を観察し、画像処理装置6がそのデータを処理し境界線位置を認識する。次いで、天板10の他方の端部の境界線15が観察光学系3に対向するように、天板10をステージ2によりx方向に移動させる。そして観察光学系3によって同様に天板10の他方の端部の境界線15を観察して画像処理装置6によりその境界線位置を認識する。このように1個の観察光学系3により順次観察された天板10の両端部の境界線位置から、天板10がレーザ光1の光束分布軸に対してどのくらいずれているのか制御コンピュータ7により演算し、その演算結果に基づいて、天板10の角度がレーザ光1の光束の分布軸と合致するように、スーテジ2によって天板10の角度調整を行なう。そして、その後のブロック毎のインク流路溝の加工は、上記の説明と同様に観察光学系3を用いてブロック毎の加工基準線15を認識しながら行なう。このように1個の観察光学系3を配備した加工装置によっても、天板の角度調整およびインク流路溝の加工を行なうことができる。
【0022】
上述のように、本発明は、天板10のインク流路溝13を加工形成する際に、最初に天板10の反りの影響の少ない天板の両端部を検出してレーザ光1の光束の分布軸に対する天板10の傾きを調整して、レーザ光1の光束の分布軸に対応する最適位置に天板を位置決めし、そして、観察光学系により各ブロックの加工領域毎に基準線15とインク流路溝13の位置を調整しながら、すなわち、x方向およびz方向の位置のみを移動の対象として、インク流路溝13を複数のブロックに分割してブロック毎に分割加工するようにしている。したがって、湾曲した加工基準線を誇張して示す図2および図3のように、天板を長尺化したために天板自身に反りがあり、加工基準線が湾曲しているとしても、図2に示すように、インク流路溝13の配列方向を一定にすることができ、そして加工基準線15とインク流路溝13の位置関係もほぼ一定に保つことができる。
【0023】
次に、本発明の製造方法により製造された液体噴射記録ヘッドを適用した液体噴射記録装置について図5を参照して説明する。
【0024】
図5において、101a〜101dはそれぞれ、ライン型の液体噴射記録ヘッド(以下、「ヘッド」ともいう。)であり、これらはホルダ102により矢印X方向(図5)に所定の間隔を持って互いに平行に固定支持されている。各ヘッド101a〜101dの下面には矢印Y方向(図5)に沿って、1列に16吐出口/mmの間隔で3456個の吐出口が下向きに設けられており、これにより216mm幅の記録が可能となっている。
【0025】
これらのヘッド101a〜101dは熱エネルギーを用いて記録液を吐出する方式のものであり、ヘッドドライバー120によって吐出制御されている。
【0026】
なお、前記ヘッド101a〜101dおよびホルダ102を含めてヘッドユニットが構成され、該ヘッドユニットはヘッド移動手段124により、上下方向に移動されるようになっている。
【0027】
また、前記ヘッド101a〜101dに対応してその下部に隣接して配置されたキャップ103a〜103dはそれぞれ内部にスポンジ等のインク吸収部材を有する。
【0028】
前記キャップ103a〜103dは不図示のホルダにより固定支持されており、該ホルダおよびキャップ103a〜103dを含んでキャップユニットが構成され、該キャップユニットはキャップ移動手段125により矢印X方向(図5)に移動されるようになっている。
【0029】
各ヘッド101a〜101dにはそれぞれ、インクタンク104a〜104dからインク供給チューブ105a〜105dを通じてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のインクが供給され、カラー記録を可能としている。
【0030】
また、このインク供給はヘッド吐出口の毛細管現象を利用しており、各インクタンク104a〜104dの液面は吐出口位置より一定距離だけ低く設定されている。
【0031】
ベルト106は被記録材である記録紙127を搬送するためのものであって帯電可能なシームレスベルトからなる。
【0032】
ベルト106は駆動ローラ107、アイドルローラ109,109aおよびテンションローラ110により所定の経路に引きまわされており、前記駆動ローラ107に接続され、モータードライバー121により駆動されるベルト駆動モーター108により、走行される。
【0033】
また、ベルト106はヘッド101a〜101dの吐出口の直下において矢印X方向(図5)に走行し、ここでは固定支持部材126により、下側のブレを抑制されている。
【0034】
ベルト106の図示下方には、ベルト106の表面に付着している紙粉等を除去するクリーニングユニット117が配設されている。
【0035】
前記ベルト106を帯電させる帯電器112は、帯電器ドライバー122により、ON、OFFされ、この帯電による静電的吸着力により、記録紙127をベルト106に吸着する。
【0036】
帯電器112の前後には前記アイドルローラ109,109aと共同して搬送記録紙127をベルト106に押し付けるためのピンチローラ111,111aが配置されている。
【0037】
給紙カセット113内の記録紙127は給紙ローラ116の回転により1枚ずつ送り出され、モータードライバー123により駆動される搬送ローラ114およびピンチローラ115により矢印X方向(図5)に山形ガイド113へと搬送される。該山形ガイド113は記録紙127のたわみを許容する山形のスペースを有する。
【0038】
記録の終了した記録紙127は排紙トレイ118に排出される。
【0039】
前記ヘッドドライバー120、ヘッド移動手段124、キャップ移動手段125、モータードライバー121,123および帯電器ドライバー122はすべて制御回路119により制御される。
【0040】
本発明は、特に液体噴射記録方式の中で熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を行なう、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0041】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。
【0042】
この記録方式を簡単に説明すると、記録液(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている吐出エネルギー発生素子である電気熱変換体に駆動回路より吐出信号を供給する、つまり、記録情報に対応して記録液(インク)に核沸騰現象を越え、膜沸騰現象を生じるような急速な温度上昇を与えるための少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせる。このように記録液(インク)から電気熱変換体に付与する駆動信号に一対一に対応した気泡を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法には有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介して記録液(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた記録液(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0043】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に、米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書に開示されているように、熱作用部が屈曲する領域に配置された構成を持つものにも本発明は有効である。
【0044】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出口とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成を有するものにおいても本発明は有効である。
【0045】
さらに、本発明が有効に利用される記録ヘッドとしては、記録装置が記録可能である被記録媒体の最大幅に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッドがある。
【0046】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0047】
また、記録ヘッドに対する回復手段や予備的な補助手段を付加することは、記録装置を一層安定にすることができるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリーニング手段、加圧または吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子、あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出モード手段を付加することも安定した記録を行なうために有効である。
【0048】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせで構成したものかのいずれでもよいが、異なる色の複色カラーまたは、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0049】
さらに加えて、本発明のインクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであってもよい。
【0050】
以上説明した本発明の実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液体となるもの、或いは、インクジェットにおいて一般的に行なわれている温度調整の温度範囲である30℃以上70℃以下の温度範囲で軟化もしくは液体となるものでもよい。すなわち、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への態変化のエネルギーとして使用せしめることで防止するか、または、インクの蒸発防止を目的として放置状態で固化するインクを用いるかして、いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化してインク液状として吐出するものや記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギーによって初めて液化する性質のインク使用も本発明には適用可能である。このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、上述のとおり構成されているので、長尺の液体噴射記録ヘッドに用いる天板に、レーザ光により複数のインク流路溝をブロック毎に分割加工しても、各ブロック毎にインク流路溝の配列方向にばらつきが生じることがなく、液体噴射記録ヘッドのインク吐出方向が記録ヘッド内で統一されるために、印字品位を損なうことがない長尺の液体噴射記録ヘッドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法における天板のインク流路溝を加工する態様を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法によって加工形成された長尺の天板において、その加工基準線と各ブロック単位のインク流路溝の関係を示すために、天板自体の反りや湾曲した加工基準線を誇張して模式的に示す部分拡大図である。
【図3】通常の長尺の天板において、その加工基準線と各ブロック単位のインク流路溝の関係を示すために、天板自体の反りや湾曲した加工基準線を誇張して模式的に示す部分拡大図である。
【図4】通常の長尺の天板を示し、(a)は長尺の天板の模式斜視図であり、(b)はその模式断面図である。
【図5】本発明の製造方法によって製造された液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置を示す模式斜視図である。
【符号の説明】
1 レーザ光
2 ステージ
3,4 観察光学系
5 制御系
6 画像処理装置
7 制御コンピュータ
8 移動手段
10 天板
11 天板本体
12 吐出口プレート
13 インク流路溝
14 溝加工面
15 境界線(加工基準線)
31,41 対物レンズ
Claims (3)
- 複数の吐出エネルギー発生素子が形成された素子基板上に、天板本体とその端面に配設した吐出口プレートからなる天板であって、前記天板本体に前記各吐出エネルギー発生素子に対応する複数のインク流路溝をレーザ加工により形成し、そして前記吐出口プレートに複数のインク吐出口をレーザ加工により形成してなる天板を取り付けて、長尺の液体噴射記録ヘッドを組み立てる長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法において、前記天板のインク流路溝の加工形成に際して、天板の両端部における天板本体の溝加工面と吐出口プレートとの境界線を検出し、検出された両端部の境界線を基準にして、レーザ光の光束の分布軸に対する天板の角度調整を行ない、そして天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、各ブロックの前記境界線を加工基準線として検出し、レーザ光が当該ブロック内の溝加工面の所定位置を照射するように前記天板を位置合わせし、次いで、レーザ光により当該ブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようにしたことを特徴とする長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
- 複数の吐出エネルギー発生素子が形成された素子基板上に、天板本体とその端面に配設した吐出口プレートからなる天板であって、前記天板本体に前記各吐出エネルギー発生素子に対応して複数のインク流路溝をレーザ加工により形成し、そして前記吐出口プレートに複数のインク吐出口をレーザ加工により形成してなる天板を取り付けて、長尺の液体噴射記録ヘッドを組み立てる長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法において、前記天板のインク流路溝の加工形成に際して、天板の両端部における天板本体の溝加工面と吐出口プレートとの境界線を別個の観察光学系でそれぞれ観察して、それらのデータに基づいて、天板の両端部の境界線を結ぶ線をレーザ光の光束の分布軸と合致するように天板の角度調整を行ない、そして天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、各ブロックの前記境界線を一方の観察光学系を用いて加工基準線として観察し、そのデータに基づいて、レーザ光が当該ブロック内の溝加工面の所定位置を照射するように前記天板を位置合わせし、次いで、レーザ光により当該ブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようにしたことを特徴とする長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
- 複数の吐出エネルギー発生素子が形成された素子基板上に、天板本体とその端面に配設した吐出口プレートからなる天板であって、前記天板本体に前記各吐出エネルギー発生素子に対応して複数のインク流路溝をレーザ加工により形成し、そして前記吐出口プレートに複数のインク吐出口をレーザ加工により形成してなる天板を取り付けて、長尺の液体噴射記録ヘッドを組み立てる長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法において、前記天板のインク流路溝の加工形成に際して、天板の両端部における天板本体の溝加工面と吐出口プレートとの境界線を1つの観察光学系により順次観察して、それらのデータに基づいて、天板の両端部の境界線を結ぶ線をレーザ光の光束の分布軸と合致するように天板の角度調整を行ない、そして天板のインク流路溝を複数のブロックに分割して、各ブロックの前記境界線を前記観察光学系を用いて加工基準線として観察し、そのデータに基づいて、レーザ光が当該ブロック内の溝加工面の所定位置を照射するように前記天板を位置合わせし、次いで、レーザ光により当該ブロック内の複数のインク流路溝を一度に加工し、この1ブロック毎のインク流路溝の加工を繰り返して天板の全てのインク流路溝を加工形成するようにしたことを特徴とする長尺の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
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