JP3563647B2 - 複合型イヤホン - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、情報通信機器、オーディオ機器、補聴器など電気回路と人間の聴覚機能とを結合するいわゆるイヤホンとして利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、本発明と同様の利用分野に供されるイヤホンとして電磁型のもの、静電型のもの、圧電型のものなど数多く製作され、あるいは、提案されている。それらのうち、本発明に関連する従来技術の静電型イヤホンと圧電型イヤホンについて説明する。
【0003】
まず、静電型イヤホンについて、図8を参照しながら説明する。
【0004】
図8は、静電型イヤホンの断面図である。静電型イヤホンは、振動膜81、スペーサ82、背電極基板83、背電極導体84、ハウジング85、背電極導体84に接続されているリード線86から構成される。エレクトレットからなる振動膜81は、一面(図では上面)にアルミニュウム、金等の導電膜が被覆されている。なお、エレクトレットは、弗素樹脂等の高分子材料を熱処理することにより生成される。リード線86とアースであるハウジング85との間に電圧を加えると、背電極導体84と振動膜81との間に発生する静電力によって振動膜81が振動し、圧力波が発生して音響信号となる。
【0005】
次に、圧電型イヤホンについて、図9を参照しながら説明する。
【0006】
図9は、圧電型イヤホンの断面図である。圧電型イヤホンは、チタン酸バリュウムなどの圧電材料からなる圧電板91、駆動電極92、鉄板などの曲げが容易で伸縮しにくい導体板93、ハウジング94、駆動電極92に接続されているリード線95、クランプリング96から構成される。
【0007】
圧電板91は、圧電板91の両面に電圧が加えられた場合、面に沿って、伸縮するように成極されている。圧電板91の両面は、駆動電極92と導体板93とが接しており、圧電型電気音響変換素子を構成している。
【0008】
リード線95とアースであるハウジング94との間に電圧が加えられると、圧電板91は面に沿って径方向に伸縮するが、片面に伸縮に抵抗するよう鉄板等の導体板93が設置されており、かつ、導体板93が、その周辺において伸縮に坑するよう支持または固定されているため、導体板93と接触している面の伸縮が少なくなり、結果的に全体として面に垂直な方向での曲げ振動となって音響信号となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記、従来の静電型、圧電型イヤホンは、いずれも電気音響変換の効率が悪く所望の大きさの音響信号を得るためには、振動する部分の面積を大きくするか、あるいは、加える電圧を高くしなければならないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、電気音響変換の効率を向上させた優れた複合型イヤホンを提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の複合型イヤホンは、振動膜、振動膜に対向して振動膜の片側または両側に並行に配置され、かつ、穿孔を有する圧電材料からなる圧電板、圧電板の一面に形成された駆動電極、および、もう一方の面に形成された金属板を有し、駆動電極に供給される電圧によって生ずる圧電板の変位と、振動膜に作用する静電力による振動膜の変位とが逆方向となるように圧電板を成極したことを特徴とするものである。この構成により、電気音響変換の効率を向上することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態における複合型イヤホンについて、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態における複合型イヤホンの断面図である。
【0014】
複合型イヤホンは、高分子フィルムを熱処理したエレクトレットからなる振動膜11、駆動電極12、スペーサ13、1個または複数個の穿孔を有する圧電材料からなる圧電板14、鋼板15、音孔16、ハウジング17から構成される。
【0015】
振動膜11と駆動電極12とにより静電型電気音響変換素子を形成し、駆動電極12と圧電板14と鋼板15とにより圧電型電気音響変換素子を形成する。静電型電気音響変換素子と圧電型電気音響変換素子とは、逆方向の曲げ振動を生じさせるものである。
【0016】
つぎに、本発明の第1の実施の形態における複合型イヤホンの動作を説明する。図2は本発明の複合型イヤホンに電圧を加えた時の動作を説明するための図である。
【0017】
振動膜21と駆動電極22との間に作用する静電力によって、振動膜21は図2のような変位を生ずる。
【0018】
一方、駆動電極22に接続されている駆動端子(リード線)28に電圧が加えられると、駆動電極22に接している圧電板24は径方向に伸縮する。ここで、圧電板24の片面が、鋼板25によって保持されているために、伸縮動作が、曲げ動作に変換され、図2に示すような変位を生ずる。
【0019】
この関係は、静電変換部分のバイアス電圧と圧電板24の成極方向とによって逆方向とすることは容易である。
【0020】
振動膜21と駆動電極22との間の空気層が圧縮、膨張作用を受け、音孔26より音圧波として導出される。その量は、静電型電気音響変換のものと、圧電型電気音響変換との加算されたものとなる。
【0021】
また、上記実施の形態では、エレクトレットからなる振動膜11を使用しているが、駆動電極12の表面にエレクトレットを被覆することでも、同様の動作をすることができる。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施の形態における複合型イヤホンの具体例を示す図である。複合型イヤホンは、振動膜31、駆動電極32、スペーサ33、圧電材料からなる圧電板34、鋼板35、音孔36、ハウジング30、37、駆動端子38、固定用部品39、イヤーチップ40から構成される。駆動端子(リード線)38に電圧が加えられると、振動膜31と圧電板34とが逆位相で振動し、振動膜31と駆動電極32との間の空気が、音孔36を通じてイヤーチップ40に導かれ、イヤホン出力として耳内に達する。
【0023】
図4は、本発明の第2の実施の形態における複合型イヤホンの断面図である。図4は、すでに述べた図3の各部分に加え、第二の駆動電極41、第二の圧電板42、第二の鋼板43、第二の駆動端子44が付加されたものである。第二の駆動端子44に第一の駆動端子45と逆位相の電圧を加え、振動膜46の振動を助長する。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態における複合型イヤホンの圧電型電気音響素子の構成断面図であり、他の部分はすべて図1〜図4に準ずるものである。
【0025】
図5において、圧電型電気音響素子は、基板51、PVF2などの圧電性フィルム52、フィルム53から構成される。基板51は、ハネカム構造等の面に沿った方向の伸縮性が、厚み方向の伸縮性に比して大なる材料で構成されている。圧電フィルム52の両面には、金属等の導体によって、電極が形成されている。フィルム53は、金属等の、面に沿った方向での伸縮性の少ない材料で構成されている。駆動端子54に電圧が印加されると、圧電性フィルム52が伸縮し、基板51の片面を伸縮駆動するが、フィルム53は静止しているため結果として曲げ振動となる。
【0026】
また、図6は、図5と同様、本発明の実施の形態における圧電型電気音響素子の構成断面図である。
【0027】
図6において、圧電型電気音響素子は、基板61、PVF2などの圧電性フィルム62、63、支持板64から構成される。基板61は、図5と同様、ハネカム構造等の面に沿った方向の伸縮性が、厚み方向の伸縮性に比して大なる材料で構成されている。圧電フィルム62、63の両面には、金属等の導体によって電極が形成されている。圧電フィルム62、63は、基板61を中心として対称に装着されている。圧電フィルム62、63は互いに逆位相で動作するもので、電圧が印加されたときには、一方が伸び、他方が縮みの動作を為し、結果として曲げ振動となる。支持板64は、全体として、この複合材料を支持する板である。なお、駆動端子は自明である為、記述を省略してある。
【0028】
図7は図5、図6と同様、本発明の実施の形態における圧電型電気音響素子の構成断面図である。
【0029】
図7において、圧電型電気音響素子は、中心付近に貫通孔を持つ円環状の圧電板71と、静電、圧電両者の駆動電極として動作する電極72と、金属板等の、面に沿った方向の伸縮性の少ない基板73とから構成される。一般に、セラミックス等の圧電板71は、穿孔することに特別の装置工具が必要であるため、穿孔するような加工は、材料燒結の際に金型等で行うことが多いが、本発明における構成によれば、省くことができる。
【0030】
なお、静電型、圧電型いずれの変位も、振動膜と電極との間隔に比して10分の1以下であり、互いに相手方の動作に影響を及ぼすことは全く無い。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、静電型電気音響変換における振動膜と圧電型電気音響変換における圧電板との変位により、電気音響効率を向上することができる複合型イヤホンを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における複合型イヤホンの断面図
【図2】図1における複合型イヤホンの電圧を加えた時の動作を説明するための図
【図3】本発明の第1の実施の形態における複合型イヤホンの具体例を示す図
【図4】本発明の第2の実施の形態における複合型イヤホンの断面図
【図5】本発明の実施の形態における複合型イヤホンの圧電型電気音響変換素子の構成断面図
【図6】本発明の実施の形態における複合型イヤホンの圧電型電気音響変換素子の構成断面図
【図7】本発明の実施の形態における複合型イヤホンの圧電型電気音響変換素子の構成断面図
【図8】従来の静電型イヤホンの断面図
【図9】従来の圧電型イヤホンの断面図
【符号の説明】
11、21、31、81 振動膜
14、24、71、91 圧電板
12、22、32、92 駆動電極
93 導体板
15、25、35 鋼板
28、38、54、64 駆動端子
41 第二の駆動電極
42 第二の圧電板
43 第二の鋼板
44 第二の駆動端子
51、61、73 基板
52、62、63 圧電性フィルム
53 フィルム

Claims (7)

  1. 振動膜、前記振動膜に対向して前記振動膜の片側に並行に配置され、かつ、穿孔を有する圧電材料からなる圧電板、前記圧電板の一面に形成された駆動電極、および、もう一方の面に形成された金属板を有し、前記駆動電極に供給される電圧によって生ずる前記圧電板の変位と、前記振動膜に作用する静電力による前記振動膜の変位とが逆方向となるようにしたことを特徴とする複合型イヤホン。
  2. 第1の圧電板、前記第1の圧電板の一面に形成された第1の駆動電極、および、もう一方の面に形成された第1の金属板からなる第1の圧電型電気音響変換素子と、第2の圧電板、前記第2の圧電板の一面に形成された第2の駆動電極、および、もう一方の面に形成された第2の金属板からなる第2の圧電型電気音響変換素子とを、振動膜の両側に対向させて並行に配置し、前記第1の駆動電極に供給される電圧によって生ずる前記第1の圧電板の変位と前記第2の圧電板に供給される電圧によって生ずる前記第2の圧電板の変位とが逆方向となるようにしたことを特徴とする複合型イヤホン。
  3. 前記振動膜の一面を、高分子フィルム永久電荷を与えたエレクトレットで構成し、前記高分子フィルムの一面に導電膜を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の複合型イヤホン。
  4. 前記駆動電極の表面上に高分子フィルムを被覆し、前記高分子フィルムが永久電荷を与えたエレクトレットで構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の複合型イヤホン。
  5. 前記駆動電極と、前記圧電板と、前記金属板との代わりに、基板と、前記基板の一方に形成された圧電材料からなる圧電性フィルムと、前記基板のもう一方の面に形成されたフィルムとを用い、前記基板は前記フィルムに比して面に沿った方向の伸縮が容易としたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の複合型イヤホン。
  6. 前記駆動電極と、前記圧電板と、前記金属板との代わりに、基板と、前記基板の両面に形成された圧電材料からなる圧電性フィルムとを用い、前記基板は厚み方向に比して面に沿った方向の伸縮を大きくしたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の複合型イヤホン。
  7. 前記圧電板が中心付近を穿孔した円環状を有することを特徴とする請求項1ないし2、6のいずれかに記載の複合型イヤホン。
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