JP3635992B2 - 圧電型電気音響変換器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電受話器,圧電サウンダ,圧電スピーカ,圧電ブザーなどの圧電型電気音響変換器、特にユニモルフ型振動板の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧電受話器や圧電ブザーなどに圧電型電気音響変換器が広く用いられている。この種の圧電型電気音響変換器は、円形の圧電セラミック板の片面に円形の金属板を貼り付けてユニモルフ型振動板を構成し、この振動板の周縁部を円形のケースの中に支持し、ケースの開口部をカバーで閉鎖した構造のものが一般的である。ユニモルフ型振動板の場合、電圧印加によって外径が伸縮するセラミック板を、寸法変化しない金属板に接着して屈曲振動を得るものであるが、圧電セラミック板が単層構造であるため、その変位量つまり音圧が小さいという欠点がある。
【0003】
そこで、複数の圧電セラミックス層からなる積層体を金属板に貼り付けたユニモルフ型振動板が提案されている(特開昭61−205100号公報)。この振動板は、複数のセラミックグリーンシートおよび複数の電極を積層し、同時に焼成して得られた焼結体を金属板に貼り付けたものであり、振動板の振動を拘束しない位置に形成されたスルーホールにより、電極間を電気的に接続している。この場合には、単層のセラミックス層を金属板に貼り付けた振動板に比べて大きな変位量つまり大きな音圧を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、単層構造のユニモルフ型振動板を屈曲振動させるには、その表面の主面電極と裏面側の金属板との間に交番電圧を印加すればよく、外部リード線の接続は容易である。しかし、積層構造のユニモルフ型振動板の場合には、薄肉なセラミックス層の間に形成された内部電極を外部へ引き出す必要があり、引出構造が複雑になる。例えば、積層体の端面に内部電極と導通する端面電極を形成し、この端面電極を介して外部へ引き出す方法があるが、この方法の場合には、振動板1枚毎に端面電極を加工する必要があるため、工数がかかり、コスト高になるという欠点がある。
【0005】
そこで、上記公報の場合には、各セラミックス層の間に設けられた電極を、振動のノード部近傍に形成したスルーホールを介して1層おきに相互に接続してある。しかし、スルーホールを介して電極間の相互の接続を行なうには、各セラミックス層を積層する時にスルーホール同士が正確に一致するように位置合わせを行なわなければならず、電極パターンの位置合わせも精度よく行なわなければならない。そのため、製造コストが高くつくという欠点がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、セラミックス層間に設けられる電極同士を簡単に接続することができ、製造コストを低減できるユニモルフ型の圧電型電気音響変換器を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数の圧電セラミックス層を積層して積層体が形成され、この積層体の表裏主面には主面電極が形成され、各セラミックス層の間には内部電極が形成され、すべてのセラミックス層の隣合う層が厚み方向において逆方向に分極されており、上記積層体の裏面に金属板が貼り付けられた圧電型電気音響変換器において、上記積層体および金属板は矩形形状に形成され、上記積層体の対向する2辺の近傍の表面に、上記辺と平行で、その底部が内部電極および金属板まで至る深さの導通溝がそれぞれ形成され、上記導通溝に導電性材料を埋設することで、各層の電極が一層ごとに導通し、かつ内部電極が積層体の表面に引き出されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器を提供する。
【0008】
例えば、2層のセラミックス層からなる矩形状積層体を矩形状金属板に貼り付けた構造の振動板の場合、表裏の主面電極と内部電極との間に交番電圧を印加する必要がある。そこで、一方の辺の近傍に設けた導通溝を内部電極に至る深さとし、他方の辺の近傍に設けた導通溝を金属板に至る深さとする。そして、これら導通溝に導電性接着剤や半田などの導電性材料を埋設すれば、表面の主面電極と金属板(裏面の主面電極)とを相互に接続することができるとともに、内部電極を積層体の表面へ引き出すことができる。したがって、端面電極を設けずに表面側から電極を外部に引き出すことができる。
導通溝はダイサーなどを用いてハーフカットすれば簡単に加工できるので、従来のようなスルーホールの位置合わせや、電極パターンの正確な位置合わせ作業が不要となり、製造コストを低減できる。
【0009】
表面の主面電極が全面電極である場合には、内部電極に至る深さの導通溝を介して表面の主面電極と内部電極とが導通してしまう。そこで、請求項2のように、内部電極まで至る深さの導通溝の内側に、この導通溝と平行でかつ内部電極まで到達しない深さの分離溝を形成し、この分離溝により表面の主面電極を分断するのが望ましい。この場合には、分離溝を追加加工することによって、表面の主面電極と内部電極とを簡単に分断できる。
【0010】
また、内部電極が全面電極である場合には、金属板に至る深さの導通溝を介して表裏の主面電極と内部電極とが導通してしまう。その場合には、請求項3のように、金属板まで至る深さの導通溝の内側に、この導通溝と平行でかつ内部電極に至る深さの分離溝を形成し、この分離溝により内部電極を分断するのが望ましい。この場合も、請求項2と同様に、溝加工によって表裏の主面電極と内部電極とを簡単に分断できる。
【0011】
請求項4のように、積層体を電極膜を介して複数のセラミックグリーンシートを積層し、同時に焼成して得られる焼結体とするのが望ましい。すなわち、予め焼成し分極処理したセラミック板を複数枚積層接着して積層体を得ることも可能であるが、これでは積層体の厚みを薄くできず、音圧が小さい。これに対し、セラミックグリーンシートを電極膜を間にして積層し、同時焼成すれば、非常に薄い積層体を得ることができ、高い音圧を得ることができる。
【0012】
従来のような円形振動板の場合には、中心部のみが最大振幅点となるため、変位体積が小さく、音響変換効率が比較的低い。また、振動板の周囲が拘束されるので、周波数が高くなり、低い周波数の圧電振動板を得ようとすれば、半径寸法が大きくなる。これに対し、本発明のような矩形振動板の場合には、最大振幅点が長さ方向の中心線にそって存在するので、変位体積が大きく、高い音響変換効率を得ることができる。そこで、請求項5では、振動板をハウジング内に収容するとともに、振動板の導通溝を設けた2辺をハウジングに支持剤によって支持し、他の2辺とハウジングとの間を弾性封止剤によって封止し、振動板の表裏に音響空間を形成している。すなわち、矩形振動板の対向する2辺が拘束されるが、その間の部分は弾性封止剤によって自由に変位できるので、円形の振動板に比べて低い周波数を得ることができる。逆に、同じ周波数を得るのであれば、寸法を小型化できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1,図2は本発明にかかる圧電型電気音響変換器の第1実施例を示す。
この圧電型電気音響変換器は、長方形の振動板1と、この振動板1を収容した角形のケース10および裏蓋11(ハウジング)とで構成されている。ケース10の上面には放音穴10aが形成され、下面開口部に裏蓋11が接着されている。ケース10の対向する2辺の内側面には段差状の支持部12a,12bが形成され、これら支持部12a,12b上に振動板1の短辺側の2辺が絶縁性接着剤などの支持剤13a,13bによって支持されている。また、振動板1の長辺側の2辺とケース10との隙間はシリコーンゴムなどの弾性封止剤14a,14bによって封止されている。これにより、振動板1の表裏には、音響空間15,16が形成される。裏蓋11の両端部表裏面には外部接続用電極17a,17bが形成されており、表裏の電極17a,17bは裏蓋11の両端部側縁に形成されたスルーホール溝18a,18bの内面を介して相互に導通している。
【0014】
裏蓋11をケース10の下面開口部に接着した後、図2に示すようにスルーホール溝18a,18bから導電性接着剤19a,19bを流し込むことで、外部接続用電極17a,17bと振動板1の電極とが相互に接続されるとともに、スルーホール溝18a,18bが閉じられる。これにより、圧電型電気音響変換器が完成する。
【0015】
この実施例の振動板1は、図3,図4に示すように、PZTなどの2層の圧電セラミックス層2a,2bからなる積層体に金属板3を貼り付けたものであり、2つのセラミックス層2a,2bは、図4に矢印で示すように厚み方向において逆方向に分極されている。振動板1の表裏主面には主面電極4,5が全面に形成され、裏側の主面電極5は金属板3と導通している。セラミックス層2a,2bの間には内部電極6が部分的に形成され、この内部電極6はセラミックス層2a,2bの一側縁から他側縁の手前まで延びている。なお、図3,図4は振動板1の構造の理解を容易にするため、厚みを誇張して記載してある。
【0016】
振動板1の長さ方向両端部には、底部が内部電極6および金属板3まで至る深さの導通溝7a,7bがそれぞれ短辺と平行に形成されている。そして、導通溝7aの内側近傍部には、この導通溝7aと平行に内部電極6に至らない程度の深さの分離溝7cが形成され、この分離溝7cによって端子電極4aが主面電極4に対して分離される。上記導通溝7a,7bに導電性接着剤などの導電性材料8a,8bを埋設することで、内部電極6と端子電極4aとが導電性材料8aを介して接続され、表側の主面電極4と金属板3(裏側の主面電極5)とが導電性材料8bを介して相互に接続される。
【0017】
上記振動板1は、その金属板3側をケース10の支持部12a,12bに向けてケース10に取り付けられている。特に、支持剤13a,13bは、少なくともスルーホール溝18a,18bと対応する金属板3の部分が露出しないように絶縁被覆する役割を有する。振動板1をケース10に固定した後、振動板1の端子電極4aは、図2のように導電性接着剤19aによって外部接続用電極17aと接続され、主面電極4は導電性接着剤19bによって外部接続用電極17bと接続される。そして、外部接続用電極17a,17bの間に所定の交番電圧を印加することで、振動板1を長さベンディングモードで屈曲振動させることができる。すなわち、振動板1の長さ方向両端部を支点とし、長さ方向の中央部を最大振幅点として屈曲振動させることができる。
【0018】
例えば一方の外部接続用電極17aにマイナスの電圧、他方の外部接続用電極17bにプラスの電圧を印加すると、図4の矢印で示す方向の電界が生じる。セラミックス層2a,2bは、分極方向と電界方向とが同一方向であれば平面方向に縮む性質を有し、分極方向と電界方向とが逆方向であれば平面方向に伸びる性質を有するので、表裏のセラミックス層2a,2bは同時に伸びることになる。そのため、振動板1は中心部が上方へ凸となるように屈曲する。外部接続用電極17a,17bに印加する電圧を交番電圧とすれば、振動板1は周期的に屈曲振動を生じ、これによって大きな音圧の音を発生することができる。
【0019】
上記構成よりなる振動板1は、例えば図5に示されるような方法で製造される。まず、図5の(A)のようにマザー基板状態のセラミックグリーンシート2Aを準備し、別のセラミックグリーンシート2Bの表面に内部電極となる電極膜6Aを印刷などの手法で所定のパターンに形成しておき、このセラミックグリーンシート2A,2Bを積層して圧着する。
積層圧着後、焼成して焼結体2を得る(図5の(B)参照)。
次に、この焼結体2の表裏全面に主面電極4A,5Aを形成した後、主面電極4,5と内部電極6との間に直流電圧を印加し、分極を行なう。つまり、2層のセラミックス層2A,2Bに逆方向の分極を行なう(図5の(C)参照)。
次に、分極済みの焼結体2を金属板3Aに導電性接着剤などを用いて接着する(図5の(D)参照)。
次に、金属板3Aを貼り付けた焼結体2の表面に、導通溝7a,7bおよび分離溝7cをダイサーなどを用いて連続的に形成する(図5の(E)参照)。
次に、導通溝7aの複数箇所に導電性材料8aを埋設することで、内部電極6Aと端子電極4aとを導通させるとともに、導通溝7bの複数箇所に導電性材料8bを埋設し、表裏の主面電極4,5を相互に接続する(図5の(F)参照)。
次に、カットラインCLで焼結体2と金属板3Aとを同時にダイサーなどを用いて個々の素子にカットする(図5の(G)参照)。
このようにして、振動板1を得る(図5の(H)参照)。
上記のようにマザー基板の段階で溝7a〜7cの加工および導電性材料8a,8bの塗布を行うことができるので、生産性が良好であり、品質の安定した振動板1を製造できる。また、溝7a〜7cの加工を焼結体2を金属板3Aに貼り付けた後で行うので、焼結体2の割れを防止できる利点がある。
【0020】
図6は本発明にかかる振動板の第2実施例を示す。
この実施例の振動板20は、内部電極6として全面電極を用いたものである。この場合には、導通溝7bに埋設された導電性材料8bによって内部電極6と主面電極4,5とが導通してしまうので、導通溝7bの内側に内部電極6を分断する分離溝7dを追加してある。
この場合には、図5と同様に製造を行なう際、内部電極6を全面電極とすることができるので、電極形成が容易になるとともに、溝加工時やカット時に内部電極との位置合わせを行なう必要がなく、製造が容易となる。
【0021】
図7は本発明にかかる振動板の第3実施例を示す。
この実施例の振動板30は、内部電極6を部分電極とするとともに、表側の主面電極4も部分電極としたものである。そのため、表側の主面電極4と端子電極4aとが予め分離されており、図4における分断用の溝7cを省略できる。
【0022】
図8は本発明にかかる振動板の第4実施例を示す。
この実施例の振動板40は、3層のセラミックス層2a,2b,2cを積層したものであり、これらセラミックス層の間に2層の内部電極6a,6bが設けられている。これら内部電極6a,6bは部分電極であり、一方の内部電極6aはセラミックス層2a,2b,2cの一側縁から他側縁の近傍まで延びており、他方の内部電極6bはセラミックス層2a,2b,2cの他側縁から一側縁の近傍まで延びている。振動板40の長さ方向一端部には、底部が内部電極6aを貫いて金属板3まで至る深さの導通溝7eが短辺と平行に形成され、長さ方向他端部には、底部が内部電極6bまで至る深さの導通溝7fが短辺と平行に形成されている。そして、導通溝7eの内側近傍部には、この導通溝7eと平行に内部電極6aに至らない程度の深さの分離溝7gが形成され、この溝7gによって、主面電極4に対して端子電極4aが分離される。上記導通溝7e,7fに導電性接着剤などの導電性材料8a,8bを埋設することで、端子電極4aと内部電極6aと金属板3(裏側の主面電極5)とが導電性材料8aを介して接続され、表側の主面電極4と内部電極6bとが導電性材料8bを介して相互に接続される。
【0023】
この振動板40の場合も、図8に矢印で示すようにセラミックス層2a,2b,2cは互いに逆方向に分極されており、主面電極4と端子電極4aとの間に交番電圧を印加することにより、主面電極4と内部電極6bとが同一電位で、内部電極6aと主面電極5とが同一電位となり、振動板40を屈曲振動させることができる。これにより、単層構造のユニモルフ型振動板に比べて大きな音圧の音を発生することができる。
【0024】
図9は本発明にかかる振動板の第4実施例を示す。
この実施例の振動板50は、4層のセラミックス層2a,2b,2c,2dを積層したものであり、これらセラミックス層の間に3層の内部電極6a,6b,6cが設けらている。内部電極6a,6b,6cはそれぞれ部分電極であり、中間の内部電極6bはセラミックス層2a,2b,2cの一側縁から他側縁の近傍まで延びており、他の内部電極6a,6cはセラミックス層2a,2b,2cの他側縁から一側縁の近傍まで延びている。振動板50の長さ方向一端部には、底部が内部電極6bを貫いて金属板3まで至る深さの導通溝7hが短辺と平行に形成され、長さ方向他端部には、底部が内部電極6aを貫いて内部電極6cまで至る深さの導通溝7iが短辺と平行に形成されている。そして、導通溝7iの内側近傍部には、この導通溝7iと平行に内部電極6aに至らない程度の深さの分離溝7jが形成され、この溝7jによって、主面電極4に対して端子電極4bが分離される。上記導通溝7h,7iに導電性接着剤などの導電性材料8a,8bを埋設することで、主面電極4,5と内部電極6bとが導電性材料8aを介して接続され、端子電極4bと内部電極6a,6cとが導電性材料8bを介して接続され相互に接続される。
【0025】
この振動板50の場合、図9に矢印で示すようにセラミックス層2a,2b,2c,2dは互いに逆方向に分極されており、主面電極4と端子電極4bとの間に交番電圧を印加することにより、主面電極4,5と内部電極6bとが同一電位で、内部電極6aと6bとが同一電位となり、振動板40を屈曲振動させることができる。これにより、大きな音圧の音を発生することができる。
【0026】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
本発明にかかる振動板を収容するハウジング構造としては、図1,図2に限るものではない。例えば、図1では裏蓋11に外部接続用の電極17a,17bを形成したが、ケース10側に外部接続用の電極または端子を固定してもよい。さらに、振動子1の電極を外部へ引き出すために、導電性接着剤に代えて、リード線を用いてもよい。この場合、導通溝7a,7bに埋設される導電性材料として半田を用い、この半田を利用してリード線を接続してもよい。
上記実施例の振動板1,20,30,40,50はいずれも、セラミック積層体と金属板3とが同一形状の場合を示したが、金属板3が積層体より大形であってもよい。
【0027】
上記実施例の振動板1,20,30,40,50の製造方法は、セラミックグリーンシートを電極膜を介して複数枚積層し、この積層体を同時焼成して焼結体を得た後、この焼結体を分極処理した後、金属板に貼り付けるものであるが、金属板に貼り付けた後で分極処理してもよい。さらに、予め焼成し分極処理した複数の圧電セラミックス板と金属板とを積層接着してもよい。ただし、積層後に焼成する前者の製造方法は、予め焼成したものを積層する後者の方法に比べて、振動板の厚みを格段に薄くでき、音圧を大きくできるので、前者の製造方法の方が音響変換効率に優れた振動板を得ることが可能である。
積層体の分極方向は、セラミックス層の隣合う層が厚み方向において逆方向であればよく、図3のように対向方向に限らず、相反方向でもよい。
なお、本発明の圧電型電気音響変換器は、圧電ブザー,圧電サウンダ,圧電スピーカなどの発音体としての用途の他、圧電受話器などの受音体としても使用できる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、複数のセラミックス層からなる積層体の対向する2辺の近傍の表面に、上記辺と平行で、その底部が内部電極および金属板まで至る深さの導通溝をそれぞれ形成し、これら導通溝に導電性材料を埋設することで、各層の電極を一層ごとに導通させたので、セラミックス層間に設けられる電極同士を簡単に接続することができる。
また、内部電極を外部へ引き出すために、導通溝を介して積層体の表面側へ引き出すので、マザー基板段階で溝加工および導電性材料の埋設処理を行なうことができ、工数を削減できるとともに、コストを低減できる。しかも、スルーホールを介して導通させる方法のように、厳密な位置合わせ作業を必要としないので、生産性が向上するとともに、品質の安定した振動体を製造できる。
さらに、積層体および金属板が矩形形状であるから、溝加工を含めてマルチ処理を行なうことができるとともに、材料の無駄が少なく、安価に製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる圧電型電気音響変換器の第1実施例を裏側から見た分解斜視図である。
【図2】図1の圧電型電気音響変換器の組立状態の縦断面図である。
【図3】図1の圧電型電気音響変換器に用いられる振動板の斜視図である。
【図4】図3の振動板の縦断面図である。
【図5】図3の振動板の製造方法を示す工程図である。
【図6】振動板の第2実施例の縦断面図である。
【図7】振動板の第3実施例の縦断面図である。
【図8】振動板の第4実施例の縦断面図である。
【図9】振動板の第5実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
1,20,30,40,50 振動板
2a,2b,2c,2d セラミックス層
3 金属板
4,5 主面電極
6 内部電極
10 ケース
11 裏蓋
Claims (5)
- 複数の圧電セラミックス層を積層して積層体が形成され、
この積層体の表裏主面には主面電極が形成され、
各セラミックス層の間には内部電極が形成され、
すべてのセラミックス層の隣合う層が厚み方向において逆方向に分極されており、
上記積層体の裏面に金属板が貼り付けられた圧電型電気音響変換器において、
上記積層体および金属板は矩形形状に形成され、
上記積層体の対向する2辺の近傍の表面に、上記辺と平行で、その底部が内部電極および金属板まで至る深さの導通溝がそれぞれ形成され、
上記導通溝に導電性材料を埋設することで、各層の電極が一層ごとに導通し、かつ内部電極が積層体の表面に引き出されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器。 - 上記積層体表面の主面電極は全面電極であり、
上記内部電極まで至る深さの導通溝の内側に、この導通溝と平行でかつ内部電極まで到達しない深さの分離溝が形成され、この分離溝により表面の主面電極が分断されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電型電気音響変換器。 - 上記積層体の内部電極は全面電極であり、
上記金属板まで至る深さの導通溝の内側に、この導通溝と平行でかつ内部電極に至る深さの分離溝が形成され、この分離溝により内部電極が分断されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電型電気音響変換器。 - 上記積層体は電極膜を介して複数のセラミックグリーンシートを積層し、同時に焼成して得られる焼結体よりなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電型電気音響変換器。
- 上記振動板はハウジング内に収容され、
上記振動板の導通溝を設けた2辺がハウジングに支持剤によって支持され、
他の2辺とハウジングとの間が弾性封止剤によって封止され、
振動板の表裏に音響空間が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電型電気音響変換器。
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