JP3563250B2 - 冷鍛性、靭性に優れた耐熱鋼 - Google Patents

冷鍛性、靭性に優れた耐熱鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温環境において使用される内燃機関の吸気弁用材料等に適したもので、特に冷鍛性、靭性に優れた耐熱鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の内燃機関の吸気弁には、Si−Cr系耐熱鋼(SUH11)、Si−Cr−Mo系耐熱鋼(SUH3)等が広く用いられ、これら材料は冷間加工性が劣るため、通常は熱間鍛造により製造されている。しかしながら、熱間鍛造による製造では、生産性、コストの面で劣るという問題がある。また、エンジンの吸気弁は、500℃以下の低温化の傾向にあり、上記のSUH11やSUH3は、高温強度や耐酸化性の面で過剰品質であるという問題がある。以上より、これら耐熱鋼の低合金化を図ることにより、適した高温強度、耐酸化性を保持しながら、生産性、コスト面の優れた冷間鍛造へ変更可能な、冷鍛性の優れた耐熱鋼を開発することが重要となる。
【0003】
これに対し、特開平8−176752号公報、特開平8−176753号公報等があるが、これらはCが0.10〜0.34%と低く、強度が用途によっては不十分である。さらに、Moを0.1〜2.0%添加しており、冷間加工性を劣化させ、かつ高価な元素のためにコストが高くなることが考えられる。また、冷間鍛造へ変更した場合、冷間加工時に強い加工が加わる部分では、後工程の焼入れにおいて、オーステナイト粒が粗大化し、衝撃特性が劣化することが挙げられる。よって、結晶粒の微細化を図り、靭性も向上させることが必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の材料では、高温強度、耐酸化性を保持しながら、冷間加工性を向上させる低合金化した材料開発が、十分に図られていない。従って、従来の方法では、吸気弁用等の耐熱鋼のコスト低減および冷間加工性を向上させること、また後工程の焼入れ後の靭性を良好に保つことに問題があった。
本発明では、Cr,Siの低減することで、コストの低減、かつ冷鍛性を向上させ、N,Al,Nb,Tiの添加による結晶粒の微細化で、冷間加工後の焼入れ後の靭性を向上させ、耐酸化性をさらに必要とする場合には、Bを添加した、冷鍛性、靭性に優れた耐熱鋼を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の要旨とするところは以下に示すことにある。
(1)重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、Cr:4.0〜9.5%を含有し、さらにTi:0.05〜0.50%、Nb:0.05〜0.50%の内少なくとも1種または2種以上を添加し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、冷鍛性、また冷間加工後の焼入れ後の靭性に優れることを特徴とする冷鍛用耐熱鋼。
【0006】
(2)重量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、Cr:4.0〜9.5%、N:0.015〜0.050%を含有し、さらにTi:0.05〜0.50%、Nb:0.05〜0.50%の内少なくとも1種または2種以上を添加し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、冷鍛性、また冷間加工後の焼入れ後の靭性に優れることを特徴とする冷鍛用耐熱鋼。
(3)前記(1)、(2)に記載の成分に、さらにB:0.0010〜0.0050%を添加し、冷鍛性、冷間加工後の焼入れ後の靭性、さらに耐酸化性に優れることを特徴とする冷鍛用耐熱鋼にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明を構成する合金の成分組成を上記通りに限定した理由を説明する。C:0.35〜0.70%
Cは高温強度を確保するために必要な元素であり、十分な強度や耐摩耗性を得るためには、0.35%以上添加する必要がある。しかし、過度に添加すると優れた冷鍛性が得られず、また靭性も劣化する。よって上限を0.70%とした。
【0008】
Si:0.05〜1.00%
Siは脱酸剤として必要な元素であり、下限を0.05%とした。また、耐酸化性に有効であるが、過度に添加すると冷鍛性を劣化させるため、上限を1.00%とした。
Mn:0.10〜1.00%
Mnは脱酸剤、脱硫剤として必要であり、下限を0.10%とした。また、過度に添加すると、耐酸化性、靭性、冷間加工性が劣化するため上限を1.00%とした。
【0009】
P:0.035%以下
Pは偏析を起こしやすく、靭性を劣化させるため、極力少ない方が好ましく上限を0.035%とした。
S:0.010%以下
Sは硫化物系介在物を形成し、冷間加工性を劣化させ、また、偏析により靭性を劣化させるため、極力少ない方が好ましく、上限を0.010%とした。
【0010】
Cr:4.0〜9.5%
Crは耐酸化性の向上に効果があり、下限を4.0%とした。しかしながら、多量に添加すると必要な冷間加工性が得られないため上限を9.5%とした。さらに、耐酸化性を十分に確保するには、Crは7.0〜9.5%にすることがより好ましい。
Ti:0.05〜0.50%
Tiは鋼の強度、靭性を向上させるとともに、C,Nと結合し、それぞれ高温で安定な炭化物、窒化物を形成するため、結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させる効果がある。よって下限を0.05%とした。また、過度に添加してもその効果は飽和するため、上限を0.50%とした。
【0011】
Al:0.005〜0.100%
Alは、脱酸剤として必要であり、また、N等と窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させる効果があるため、下限を0.005%とした。しかしながら、過度に添加してもその効果は飽和するため、上限を0.100%とした。
Nb:0.05〜0.50%
Nbは鋼の強度、靭性を向上させるとともに、C,Nと結合し、それぞれ高温で安定な炭化物、窒化物を形成するため、結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させる効果がある。よって下限を0.05%とした。また、過度に添加してもその効果は飽和するため、上限を0.50%とした。
【0012】
N:0.015〜0.050%
Nは、Ti,Al,Nb等と結合して、窒化物を析出し、結晶粒の粗大化を抑制し、靭性の向上に有効であるため、下限を0.015%とした。また、0.050%を超えて含有させることは困難であるため、上限を0.050%とした。
B:0.0010〜0.0050%
Bは、耐酸化性を向上させる効果があり、下限を0.0010%とした。また、過度に添加すると冷鍛性を劣化させるため上限を0.0050%とした。
【0013】
【実施例】
供試材は、真空溶解炉で、100kgの鋼塊を作製し、これを熱間鍛伸して、φ20mmの棒鋼及び厚さ10mmの板を作製し、発明鋼及び比較鋼について、以下の試験を行った。まず、φ20鍛伸材を焼なまし(800℃×2h→炉冷)、φ14mm×L21mmの試験片に加工し、冷間圧縮試験を行い、割れの発生する圧縮率を調べた。次に、焼なまし後に70%の冷間加工を加えたものを、焼入れ(焼入れ温度980℃)し、結晶粒度について調べた。さらに、厚さ10mmの板を焼なまし、粗加工した後、焼入れ焼戻し(980℃焼入れ→700℃×1h空冷)を行い、研削により縦30mm、横20mm、厚さ3.5mmの試験片を作製し、450℃の大気中で500hの連続酸化試験をを行った。
【0014】
表1に発明鋼及び比較鋼の成分、また試験結果を示す。(1)割れ発生圧縮率については、78%以上の圧縮率で、初めて割れが発生した場合○、78%以下で割れが発生した場合は×として評価した。(2)結晶粒度については、結晶粒度がNo.6以上のものは○、No.6未満の粗粒を含む場合は△として評価した。(3)耐酸化性については、酸化減量を測定し、9.0×10-3(mg/cm-2・h)以下の場合を◎、9.0×10-3(mg/cm-2・h)以上の場合を○として評価した。No.1〜No.の本発明鋼は、No.10〜No.12の比較材に比べて、耐酸化性を保持しながら、冷間加工性、靭性向上に寄与する結晶粒度特性、ともに良好な結果を得た。
【0015】
【表1】
Figure 0003563250
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、吸気弁用等に使用される耐熱鋼の耐酸化性を保持しつつ、コストの低減および冷鍛性と靭性を向上させることができた。

Claims (3)

  1. 重量%で、
    C:0.35〜0.70%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:0.10〜1.00%、
    P:0.035%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.005〜0.100%、
    Cr:4.0〜9.5%を含有し、
    さらに、Ti:0.05〜0.50%、
    Nb:0.05〜0.50%の内少なくとも1種または2種以上を添加し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、冷鍛性、また冷間加工後の焼入後の靱性に優れることを特徴とする冷鍛用耐熱鋼。
  2. 重量%で、
    C:0.35〜0.70%、
    Si:0.05〜1.00%、
    Mn:0.10〜1.00%、
    P:0.035%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.005〜0.100%、
    Cr:4.0〜9.5%、
    N:0.015〜0.050%を含有し、
    さらに、Ti:0.05〜0.50%、
    Nb:0.05〜0.50%の内少なくとも1種または2種以上を添加し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、冷鍛性、また冷間加工後の焼入後の靱性に優れることを特徴とする冷鍛用耐熱鋼。
  3. 請求項1、請求項2に記載の成分に、さらにB:0.0010〜0.0050%を添加し、冷鍛性、冷間加工後の焼入れ後の靭性、さらに耐酸化性に優れることを特徴とする冷鍛用耐熱鋼。
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