JP3562899B2 - 防錆カバーの製造方法及びこれを用いた防錆カバー - Google Patents

防錆カバーの製造方法及びこれを用いた防錆カバー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防錆カバーの製造方法及びこれを用いた防錆カバーに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車は、組立完了後から納車までの間、保管等のために長期間露天下に晒されることがある。この状態で放置した場合、ディスクブレーキ装置の一要素を構成するディスクロータ等に錆が発生することがあるため、従来から防錆カバーを使用している。なお、防錆カバーには、ディスクロータの防錆性能確保(第1の要求性能〔基本性能〕)以外に、製品として出荷されてから組立工場に納品されるまでの輸送の間並びに組立工場でのライン組付時に変形しない(開かない)こと(第2の要求性能)、車両への組付後も容易には外れないこと(第3の要求性能)、不要時に簡単に取り外せること(第4の要求性能)といった性能も要求される。
【0003】
実開昭57−80734号公報にはこの種の防錆カバーが開示されており、以下この公報に開示された構成について簡単に説明する。
【0004】
図15に示されるように、防錆カバー150は略環状に形成されており、一般面を構成するハット部152と、このハット部152の一部を切り欠いて形成した狭幅のブリッジ部154と、ハット部152とブリッジ部154とを接続する一対のフラットな当接部156と、を備えている。なお、ハット部152の周方向所定位置には、組付用の一対の係合突起158が形成されている。また、ハット部152におけるブリッジ部154と反対側には、防錆カバー150の取外し時に把手として利用される脚部160が一体に形成されている。
【0005】
さらに、上述したブリッジ部154の中央部には、径方向外側へ突出する回り止め部162が一体に形成されている。この回り止め部162の軸心側には第1スリット164が形成されており、又回り止め部162と一方の当接部156との間には第2スリット166が形成されている。
【0006】
上記構成によれば、防錆カバー150は、ディスクブレーキ装置の一要素を構成する図示しないディスクロータとタイヤを支持するディスクホイールのディスク部との間に介在される。これにより、第1の要求性能であるディスクロータの防錆性能確保は満たされる。
【0007】
また、防錆カバー150は、回り止め部162がキャリパの一対の爪部間に配置されることでキャリパに対する回り止めがなされ、かつ、この状態で一対の当接部156にキャリパのトルクメンバの端部がそれぞれ当接されると共に係合突起158がディスクロータの内側に配置された図示しないダストカバーの外周部と係合されることで弾性的な組付状態となる。これにより、車両への組付後も容易には外れないという第3の要求性能が満たされる。
【0008】
ここで、第2の要求性能及び第4の要求性能に対する達成度について考察すると、以下の点で問題が残る。
【0009】
すなわち、上述した防錆カバー150は、木材のチップを一旦繊維化して板状に成形したベースとなるボードを製作した後、型で打ち抜き、その後プレス成形を行う所謂DFM(ドライ・ファイバー・モールド)製法によって製作されることが多い。この場合、木材繊維という結合強度が比較的高い材料から防錆カバー150が製作されることになるため、製品として出荷されてから組立工場に納品されるまでの輸送の間に変形しない(開かない)という第2の要求性能の一部は満たされる。しかしながら、結合強度が比較的高いことを考慮して第1スリット164及び第2スリット166を設けているため、組立工場でのライン組付時に変形し易いという問題がある。
【0010】
また、上記構成によれば、把手である脚部160が矢印A方向へ引っ張られることにより、第2スリット166から破断して防錆カバー150が取り外される。なお、この際、上記構成では、矢印A方向への引張力によってブリッジ部154に作用する矢印B方向への引張力により、回り止め部162がキャリパの爪部に当接して破断荷重が吸収されるのを避けるべく、前述した第1スリット164が形成されている。すなわち、この第1スリット164によって回り止め部162が結果的には湾曲方向が反転するように弾性変形することで、第2スリット166に破断荷重を集中させてこれを破断させるようになっている。しかしながら、前述した如く、結合強度が高いことから、第2スリット166での破断強度も高くなり、不要時に簡単に取り外せるという第4の性能に対しては未だ不充分な感がある。
【0011】
本発明は上記事実を考慮し、組付時には充分な強度を確保することができ、しかも不要時には簡単に取り外すことができる防錆カバーの製造方法及びこれを用いた防錆カバーを得ることが目的である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、紙材の繊維を粉砕する第1の工程と、粉砕された繊維を水に溶かすと共に耐劣化性についての性質が互いに異なる第1溶液並びに第2溶液を作る第2の工程と、第1溶液中に多孔質の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、を有する、ことを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、紙材の繊維を粉砕して長繊維及び短繊維を作る第1の工程と、粉砕された長繊維を水に溶かした第1溶液並びに粉砕された短繊維を水に溶かした第2溶液を作る第2の工程と、第1溶液中に多孔質の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の第1紙繊維層の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、を有する、ことを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、紙材の繊維を粉砕する第1の工程と、粉砕された繊維を水に溶かすと共に劣化防止材料を所定量添加した第1溶液並びに粉砕された繊維を水に溶かすと共に前記所定量よりも少ない量の劣化防止材料を添加し或いは劣化防止材料を無添加とした第2溶液を作る第2の工程と、第1溶液中に多孔質の型の一部を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の一部の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、第2溶液中に型の他の一部又は全体を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の他の一部の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、を有する、ことを特徴としている。
【0015】
請求項4記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、請求項3に記載の発明において、前記劣化防止材料として撥水剤を用いた、ことを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記第2紙繊維層を、防錆カバーの取外し時にディスクブレーキ装置の構成部品との干渉範囲に設定した、ことを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の本発明に係る防錆カバーは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法によって製造した、ことを特徴としている。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、第1の工程によって紙材の繊維が粉砕される。次いで、第2の工程によって、粉砕された繊維が水に溶かされると共に耐劣化性についての性質が互いに異なる第1溶液並びに第2溶液が作られる。次いで、第3の工程によって、第1溶液中に多孔質の型が浸漬され、型内部から所定の吸引力で吸引することにより、防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層が形成される。その後、第4の工程によって、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型が浸漬され、型内部から所定の吸引力で吸引することにより、防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層が形成される。上記工程を経て得られた第1紙繊維層及び第2紙繊維層によって防錆カバーが構成される。
【0019】
このように本発明によれば、第3の工程及び第4の工程における吸引時間を調整することで、任意の板厚の防錆カバーが得られる。すなわち、組付時の要求強度に対しては、防錆カバーを構成する第1紙繊維層及び第2紙繊維層の板厚をコントロールすることで確保することが可能となる。
【0020】
また、従来のDFM製法による場合、結合強度が比較的高い木材繊維による結合を基調としているため、組付時の要求強度と取外し時に破断し易い破断強度との調和点が見出しにくく、必要以上に強度が高くなりがちである。その結果、スリットを設ける必要が生じてこれが組付時の変形の誘因になると共に、不要時に防錆カバーを取り外す際に破断強度が高すぎて防錆カバーが取外しにくくなる。これに対し、本発明の製法による場合、結合強度が比較的低い紙繊維による結合を基調としているため、組付時の要求強度と取外し時に破断し易い破断強度との調和点を板厚をコントロールすることで容易に見出すことができ、更にスリット等を設ける必要もなくなる。
【0021】
加えて、本発明では、第1溶液と第2溶液は耐劣化性についての性質が異なるため、これらの溶液から形成された第1紙繊維層及び第2紙繊維層のいずれか一方は劣化し易く、いずれか他方は劣化しにくくなる。そして、この劣化性の差異を利用することで、不要時に防錆カバーが更に取外し易くなる。
【0022】
総じていえば、本発明では、組付時の強度確保については防錆カバーの板厚をコントロールすることで対処し、取外し性については結合強度が比較的低い紙繊維を利用したこと並びに劣化し易い部分と劣化しにくい部分とを設けたことの双方で対処している。
【0023】
請求項2記載の本発明によれば、第1の工程によって紙材の繊維が粉砕されて長繊維及び短繊維が作られる。次いで、第2の工程によって、粉砕された長繊維が水に溶かされた第1溶液並びに粉砕された短繊維が水に溶かされた第2溶液が作られる。次いで、第3の工程によって、第1溶液中に多孔質の型が浸漬され、型内部から所定の吸引力で吸引することにより、当該型の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層が形成される。その後、第4の工程によって、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型が浸漬され、型内部から所定の吸引力で吸引することにより、当該型の第1紙繊維層の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層が形成される。上記工程を経て得られた第1紙繊維層及び第2紙繊維層によって防錆カバーが構成される。
【0024】
このことから、本発明においても、請求項1記載の発明と同様に、組付時の強度確保については防錆カバーの板厚をコントロールすることで対処することができ、取外し性については結合強度が比較的低い紙繊維を利用したこと並びに劣化し易い部分と劣化しにくい部分とを設けたことの双方で対処することができる。
【0025】
なお、劣化し易い部分及び劣化しにくい部分について補足すると、本発明では、第1溶液中に長繊維を溶かし、この第1溶液から第1紙繊維層を形成していることから、第1紙繊維層の繊維間の結合面積は比較的小さく、劣化し易くなる。逆に、第2溶液中に短繊維を溶かし、この第2溶液から第2紙繊維層を形成していることから、第2紙繊維雄の繊維間の結合面積は比較的大きく、劣化しにくくなる。
【0026】
請求項3記載の本発明によれば、第1の工程によって紙材の繊維が粉砕される。次いで、第2の工程によって、粉砕された長繊維が水に溶かされると共に劣化防止材料を所定量添加した第1溶液並びに粉砕された短繊維が水に溶かされると共に前記所定量よりも少ない量の劣化防止材料を添加し或いは劣化防止材料を無添加とした第2溶液が作られる。次いで、第3の工程によって、第1溶液中に多孔質の型の一部が浸漬され、型内部から所定の吸引力で吸引することにより、当該型の一部の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層が形成される。その後、第4の工程によって、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型の他の一部又は全体が浸漬され、型内部から所定の吸引力で吸引することにより、当該型の他の一部の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層が形成される。上記工程を経て得られた第1紙繊維層及び第2紙繊維層によって防錆カバーが構成される。
【0027】
このことから、本発明においても、請求項1記載の発明と同様に、組付時の強度確保については防錆カバーの板厚をコントロールすることで対処することができ、取外し性については結合強度が比較的低い紙繊維を利用したこと並びに劣化し易い部分と劣化しにくい部分とを設けたことの双方で対処することができる。
【0028】
なお、劣化し易い部分及び劣化しにくい部分について補足すると、本発明では、第1溶液中には所定量の劣化防止材料が添加されていることから、この第1溶液から形成される第1紙繊維層は劣化しにくくなる。逆に、第2溶液中には前記所定量よりも少ない量の劣化防止材料が添加され或いは劣化防止材料が無添加とされていることから、この第2溶液から形成される第2紙繊維層は劣化し易くなる。
【0029】
請求項4記載の本発明によれば、請求項3に記載の発明において、劣化防止材料として撥水剤を用いたため、撥水剤の添加量を変えれば、第1紙繊維層及び第2紙繊維層の各耐劣化性も変わる。
【0030】
請求項5記載の本発明によれば、請求項3又は請求項4に記載の発明において、防錆カバーの取外し時にディスクブレーキ装置の構成部品との干渉範囲に劣化し易い第2紙繊維層を設定したので、防錆カバーの取外し時に当該防錆カバーとディスクブレーキ装置の構成部品とが干渉した場合に容易に破れる。
【0031】
請求項6記載の本発明によれば、防錆カバーが請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法によって製造されているため、組付時の要求強度の確保と取外し時の取外し性の向上との両立が達成された防錆カバーが得られる。特に、取外し時の取外し性については、劣化し易い部分と劣化しにくい部分とを設けることで、更なる向上が図られている。
【0032】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図12を用いて、第1実施形態について説明する。なお、この第1実施形態が、請求項1及び請求項3乃至請求項6記載の本発明の一実施形態に相当する。
【0033】
図10には、車両のホイール付近の縦断面構造が示されている。この図に示されるように、上部にショックアブソーバの下端部がブラケット10を介して固定され、下部にロアアーム12の外端部がロアボールジョイント14を介して連結されたステアリングナックル16の軸心部には、アンギュラボールベアリング18を介してアクスルハブ20のボス部20Aが軸支されている。アクスルハブ20のボス部20Aはアクスル22の小径軸22Aにスプライン嵌合されており、この状態でナット24が螺合されることによりアクスルハブ20がアクスル22に固定されている。
【0034】
また、アクスルハブ20のフランジ部20Bの外側には、ディスクロータ26が配置されている。ディスクロータ26は、アクスルハブ20のフランジ部20Bに当接状態で配置される有底円筒状の取付部26Aと、この取付部26Aの外周部から半径方向外側へ延出されたフランジ部26Bと、から成り、ディスクブレーキ装置28の一部を構成する。ディスクブレーキ装置28の他の一部を構成する浮動型のキャリパ30はステアリングナックル16に取り付けられており、キャリパ30内に配置されたインナパッド32及びアウタパッド34がディスクロータ26のフランジ部26Bの外周部に対向して配置されている。
【0035】
また、ディスクロータ26の外側には、ディスクホイール36が配置されている。ディスクホイール36は、ディスクロータ26の取付部26Aに当接状態で配置されるディスク部36Aと、このディスク部36Aから一体的に形成されタイヤを支持する円筒状のリム部36Bと、から成る。このうち、ディスク部36Aがディスクロータ26の取付部26Aと共にハブボルト38及びハブナット40によって共締めされることにより、ディスクロータ26及びディスクホイール36がアクスルハブ20のフランジ部20Bに固定されている。
【0036】
上述したディスクロータ26のフランジ部26Bの内側にはその内側面を覆うようにダストカバー42が配設されており、又ディスクロータ26のフランジ部26Bの外側(ディスクロータ26のフランジ部26Bとディスクホイール36のディスク部36Aとの間)にはその外側面を覆うように防錆カバー44が配設されている。なお、ダストカバー42はディスクロータ26に塵埃等が付着するのを防止するためのものであり、又防錆カバー44はディスクロータ26が長期間の保管時等に錆びるのを防止するためのものである。
【0037】
図11に示されるように、防錆カバー44は、一般面を構成するハット状のカバー本体46と、このカバー本体46の一部を切り欠いて形成した狭幅のブリッジ部48と、を含んで構成されている。このうち、ブリッジ部48の切欠きには、前述したキャリパ30が配置されている。別言すれば、キャリパ30との干渉を避けるべく、切欠きを設けてブリッジ部48としている。また、カバー本体46におけるブリッジ部48と反対側には、取外し用の把手50(図9参照)が一体に形成されている。
【0038】
さらに、図11及び図12(A)に示されるように、カバー本体46の外周部所定位置には、弾性変形可能な複数の係合突起52が一体に形成されている。これらの係合突起52は、ディスクホイール36のディスク部36Aに周方向に所定の間隔で形成された開口54内へ弾性的に係合されるようになっている。また、図10及び図12(B)に示されるように、カバー本体46の外周縁の所定部位には、鉤状の係合鉤部56が一体に形成されている。この係合鉤部56には、前述したダストカバー42の外周縁42Aが弾性的に係合されるようになっている。そして、これらの係合突起52及び係合鉤部56によって防錆カバー44は、ディスクホイール36とダストカバー42とに取り付けられている。なお、係合突起52及び係合鉤部56といった構成を用いる以外でも、防錆カバー44を確実に組付けることができる係合手段であればすべて適用することができる。
【0039】
次に、上述した防錆カバー44の製造方法について説明し、この説明を通して本実施形態の作用並びに効果を説明する。なお、以下に説明する製法は、WFM(ウェット・ファイバー・モールド)製法と呼ばれるものである。
【0040】
まず、原料用の混合水溶液の製造工程が行われる。
具体的には、図1に示されるように、廃品回収により回収された紙材としての古新聞58やダンボール60が、図示しないミキサーによって粉砕される。これにより、古新聞58やダンボール60は繊維化されて紙繊維62となる。なお、以上が、請求項1及び請求項3記載の「第1の工程」に相当する。
【0041】
次に、この紙繊維62が水槽64内へ投入されて、水中に紙繊維62を溶け込ませた水溶液66が作られる。次に、図2に示される如く、水槽64内へ劣化防止材料としての撥水剤68、及びバージンパルプ70が投入され、攪拌機72によって攪拌される。なお、撥水剤68を投入するのは、防錆カバー44が製品化された後に雨水や湿気等を吸水して必要以上に劣化するのを防止するためである。また、撥水剤68としては、本実施形態では環境に対する配慮からワックス(蝋)を使用しているが、樹脂を使用することも可能である。また、バージンパルプ70を投入するのは、製品化された防錆カバー44の強度をある程度コントロールするためである。これにより、図3に示されるように、原料となる請求項1及び請求項3の第1溶液としての第1混合水溶液74が完成する。
【0042】
また、第1混合水溶液74の製造と並行して、後述する図5(B)に示される請求項1及び請求項3の第2溶液としての第2混合水溶液132が製造される。具体的には、別の水槽130に前述した水溶液66に撥水剤68及びバージンパルプ70を添加する際に、撥水剤68の添加量を微量とすることで第2混合水溶液132が作られる。ちなみに、本実施形態では、第2混合水溶液132の撥水剤濃度が、第1混合水溶液74の撥水剤濃度の1/10程度になるように設定している。なお、以上が、請求項1及び請求項3記載の「第2の工程」に相当する。
【0043】
次に、防錆カバー型への吸着工程が行われる。
図4に示されるように、防錆カバー型76は、方形板状の基台78と、この基台78の上端面に立設された円柱形状の型本体80と、によって構成されており、セラミック製とされている。なお、防錆カバー型76は、木型から転写することにより製作される。基台78の四隅には、ボルト挿通孔82が形成されている。また、型本体80の上端面及び周面には、多数の吸引孔84が形成されている(なお、本図では、吸引孔84を点描で示している)。さらに、型本体80の上端面所定範囲及び周面所定範囲には、紙繊維62を吸着させないためのマスキング86が施されている。上述した防錆カバー型76を用いて、以下の如くして吸着工程が行われる。
【0044】
図5(A)に示されるように、まず、基台78のボルト挿通孔82内へ固定ボルト88を挿通させてワーク90に螺合させることにより、防錆カバー型76がワーク90に取り付けられる。なお、ワーク90には吸引手段ともいえるバキュームポンプ92がホース94を介して接続されており、コントロール弁96の開度を調節することにより吸引速度等を調整することができるようになっている。そして、このワーク90を垂直に立てた状態で、水槽64内へ所定量挿入して防錆カバー型76を第1混合水溶液74中に浸漬させる。このとき、防錆カバー型76の型本体80がXで示される範囲のみ浸漬されるように、ワーク90が第1混合水溶液74中に挿入される。次いで、バキュームポンプ92を駆動させて第1混合水溶液74ごと吸引する。これにより、第1混合水溶液74はXの範囲においてマスキング86が施された以外の部分の吸引孔84から吸引されて、マスキング86が施された以外の部分の表面に第1紙繊維層104(図11参照)が形成される。このとき、バキュームポンプ92による吸引時間を調整することで、第1紙繊維層104の板厚を任意にコントロールすることができる。なお、以上が、請求項1及び請求項3記載の「第3の工程」に相当する。
【0045】
次に、ワーク90を水槽64から引き上げた後、図5(B)に示されるように、予め別の水槽130内に用意された第2混合水溶液132中にワーク90を浸漬させる。なお、この工程では、防錆カバー型76の型本体80の全体が第2混合水溶液132中に浸漬されるようにワーク90が挿入される。次いで、前述した場合と同様にして、バキュームポンプ92を駆動させて第2混合水溶液132ごと吸引する。これにより、第2混合水溶液132は、既に第1紙繊維層104が形成された範囲(この範囲では吸引孔84が既に閉塞されている)以外の範囲(即ち、Yの範囲)においてマスキング86が施された以外の部分の表面に第2紙繊維層134(図11参照〔網掛け表示部分〕)が形成される。このとき、バキュームポンプ92による吸引時間を第3の工程の場合と同一時間に設定することにより、第2紙繊維層134の板厚は第1紙繊維層104の板厚と同一になる。これにより、板厚が均一な第1紙繊維層104及び第2紙繊維層134から成る紙繊維層136(図6(A)参照)が形成される。以上が、請求項1及び請求項3記載の「第4の工程」に相当する。
【0046】
次に、紙繊維層の水分を除去するべく、乾燥工程が行われる。
まず、図6(A)に示される如く、ワーク90を水槽130から離脱させると共に、防錆カバー型76が上方を向くようワーク90をセットする。次いで、図6(B)に示される如く、別のバキュームポンプ106が連結された吸引型108を防錆カバー型76に被嵌させて吸引する。これにより、図6(C)に示される如く、防錆カバー44を構成する紙繊維層136が型本体80から離脱して吸引型108内に吸着される。
【0047】
次いで、図7に示される如く、バキュームポンプ106を逆転駆動させる等により紙繊維層136を加圧する。これにより、紙繊維層136は吸引型108から離脱してベルトコンベア110上に落下する。次いで、ベルトコンベア110によって紙繊維層136が乾燥炉112に搬送されてきたら、ベルトコンベア110を一旦停止させて紙繊維層136を乾燥させる。紙繊維層136が乾燥したら、ベルトコンベア110を再び駆動させて台車114に積層させていく。なお、乾燥炉112の長手方向寸法や乾燥温度等によってはベルトコンベア110を停止させる必要はない。
【0048】
次に、製品精度を確保するべく、最終プレス工程が行われる。
まず、図8に示されるように、下型116の凹部118内に一方の紙繊維層136(本図では図示省略)をセットすると共に、上型120の凸部122に他方の紙繊維層136を被嵌させる。なお、このとき、凹部118の内周面及び凸部122の外周面に離型剤(油)が塗布される。次いで、上型120を下型116にプレスして、双方の紙繊維層136を加圧及び加熱成形しながら形状を整える。これにより、図9に示される如く、紙繊維62を主材料とした防錆カバー44の完成品が得られる。
【0049】
このように本実施形態では、従来のDFM製法に替えてWFM製法によって防錆カバー44を製造することとしたので、以下の効果が得られる。
【0050】
第一に、第3の工程及び第4の工程におけるバキュームポンプ92による吸引時間を調整することで、任意の板厚の防錆カバー44を得ることができる。すなわち、防錆カバー44のディスクホイール36等への組付時の要求強度に対しては、紙繊維層136を構成する第1紙繊維層104及び第2紙繊維層134の板厚をコントロールすることで容易に確保することができる。なお、このことから、当然に、製品として出荷されてから組立工場に納品されるまでの輸送の間に要求される強度に対しても充分な強度が確保される。この結果、製品として出荷されてから組立工場に納品されるまでの輸送の間並びに組立工場でのライン組付時に変形しない(開かない)こと(第2の要求性能)を満足する。
【0051】
第二に、本実施形態によれば、結合強度が比較的低い紙繊維62による結合を基調とするWFM製法を採用したので、組付時の要求強度と取外し時に破断し易い破断強度との調和点を板厚をコントロールすることで容易に見出すことができる。すなわち、本実施形態によれば、防錆カバー44が紙繊維層136によって構成されているため、不要時に防錆カバー44を取り外す場合には、ディスクホイール36の外側から手を入れて把手50を持って引っ張れば容易に破断してこれを取り外すことができる。この結果、不要時に簡単に取り外せること(第4の要求性能)も満足する。
【0052】
特に、本実施形態では、最初に、撥水剤68が比較的多く添加された第1混合水溶液74中に防錆カバー型76のXの範囲を浸漬させて当該Xの範囲に第1紙繊維層104を形成し、続いて、微量の撥水剤68が添加された第2混合水溶液132中に防錆カバー型76の全体を浸漬させることでYの範囲に第2紙繊維層134を形成する方法を採ったので、第2紙繊維層134を第1紙繊維層104よりも劣化し易くすることができる。つまり、第2紙繊維層134の方は撥水剤68の含有量が少ないため、雨水や湿気等を吸収し易く、それだけ劣化し易くなる。従って、不要時に防錆カバー44を取り外す際には、把手50を持って引っ張れば極めて容易に第2紙繊維層134が破断して防錆カバー44を取り外すことができる。よって、本実施形態では、防錆カバー44の取外し性をより一層向上させることができる。
【0053】
総じていえば、本実施形態によれば、組付時の強度確保については防錆カバー44を構成する第1紙繊維層104及び第2紙繊維層134の板厚をコントロールすることで対処し、取外し性については結合強度が比較的低い紙繊維62を利用したこと、並びに劣化し易い部分と劣化しにくい部分とを設けたことの双方で対処し、第2の要求性能確保と第4の要求性能確保との両立を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、撥水剤68の添加量を調整することにより、第1紙繊維層104及び第2紙繊維層134の耐劣化性を容易に調整することができる。
【0055】
さらに、図11からも判るように、防錆カバー44の取外し時には、防錆カバー44の特定部分(Yで示される範囲の部分)がキャリパ30やディスクロータ26と干渉することが多いが、本実施形態ではこの部分が劣化し易くなっているため、キャリパ30やディスクロータ26と干渉しても容易に前記特定部分が破れる。従って、防錆カバー44の取外し性をより一層向上させることができる。
【0056】
なお、防錆カバー44は、前述した係合突起52をディスクホイール36の開口54へ弾性的に係合させると共に係合鉤部56にダストカバー42の外周縁46Aを弾性的に係合させることによりディスクロータ26の外側に組付けられ、これによりディスクロータ26の防錆性能確保(第1の要求性能〔基本性能〕)並びに車両への組付後も容易には外れないこと(第3の要求性能)をも満足することになる。
【0057】
以上説明した本実施形態では、第4の工程において使用される第2混合水溶液132中に微量の撥水剤68を添加する方法を採ったが、これに限らず、撥水剤68(即ち、劣化防止材料)を全く添加しなくてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、第4の工程において防錆カバー型76の型本体80の全体を第2混合水溶液132中に浸漬させたが、これに限らず、第3の工程後にワーク90を上下反転させる等して型本体80のYの範囲のみを第2混合水溶液132中に浸漬させるようにしてもよい。
〔第2実施形態〕
以下、主として図13及び図14を用いて、第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態が、請求項1及び請求項2並びに請求項6記載の本発明の一実施形態に相当する。
【0059】
図13に示されるように、本実施形態では、繊維長を変えた二種類の紙繊維を用いている点に特徴がある。すなわち、一方の水槽200内には、繊維長が長い長繊維202が溶け込んだ第1水溶液204が貯留されている。これに対し、他方の水槽206内には、繊維長が短い短繊維208が溶け込んだ第2水溶液210が貯留されている。そして、これら二種類の第1水溶液204及び第2水溶液210を用いて、以下の如く防錆カバー212が製造される。
【0060】
まず、予め、前述した第1実施形態の図1に示される如くして、古新聞58やダンボール60等の紙材がミキサーによって粉砕され紙繊維が形成される。但し、ここでは、長繊維202から成る紙繊維と、短繊維208から成る紙繊維とが別々に作られる。なお、以上が、請求項1及び請求項2記載の「第1の工程」に相当する。
【0061】
次に、前述した第1実施形態の図2に示される如くして、一方の水槽200内へ長繊維202から成る紙繊維が投入されて、請求項1及び請求項2記載の第1溶液としての第1水溶液204が作られる。また、これと並行して、他方の水槽200内へ短繊維208から成る紙繊維が投入されて、請求項1及び請求項2記載の第2溶液としての第2水溶液210が作られる。なお、以上が、請求項1及び請求項2記載の「第2の工程」に相当する。
【0062】
次に、一方の水槽200の直上に防錆カバー型214を位置させる。なお、防錆カバー型214は、レール216に沿ってワーク218がスライドすることにより水平移動可能に構成されており、又油圧によって伸縮ロッド220を伸縮させることにより上下動可能に構成されている。また、防錆カバー型214には、バキュームポンプ222がホース224を介して連結されている。次いで、伸縮ロッド220を所定長さ伸ばすことにより、防錆カバー型214の型本体226を第1水溶液204中に浸漬させる。次いで、その状態で、バキュームポンプ222を駆動させて第1水溶液204ごと吸引する。これにより、防錆カバー型214の型本体226の表面に長繊維202から成る第1紙繊維層228が形成される。なお、以上が、請求項1及び請求項2記載の「第3の工程」に相当する。
【0063】
次に、伸縮ロッド220を初期状態まで縮ませると共にワーク218をレール216に沿ってスライドさせて他方の水槽206の直上まで移動させる。次いで、再び伸縮ロッド220を所定長さ伸ばすことにより、防錆カバー型214の型本体226を第2水溶液210中に浸漬させる。次いで、その状態で、バキュームポンプ222を駆動させて第2水溶液210ごと吸引する。これにより、既に形成された第1紙繊維層228の表面に、短繊維208から成る第2紙繊維層230が形成される。なお、以上が、請求項1及び請求項2記載の「第4の工程」に相当する。
【0064】
その後、前述した第1実施形態の場合と同様にして、第1紙繊維層228及び第2紙繊維層230から成る紙繊維層232を型本体226から離脱させてベルトコンベヤ234上に落下させ、乾燥工程、最終プレス工程が行われる。この結果、図14に示される如く、第1紙繊維層228及び第2紙繊維層230から成る最終製品としての二層構造の防錆カバー212が得られる。
【0065】
ここで、第1紙繊維層228及び第2紙繊維層230の性質について補足しておくと、長繊維202を一次吸着することにより得られる第1紙繊維層228にあっては、繊維間の結合面積が全体としては小さいことから、劣化し易く剛性も低い。これに対し、短繊維208を二次吸着することにより得られる第2紙繊維層230にあっては、繊維間の結合面積が全体としては大きいことから、劣化しにくく剛性も高い。但し、短繊維208も紙繊維には違いないことから、木材繊維を基調とするDFM製法と比較すれば結合強度は低いといえる。また、短繊維208は長繊維202に比べ繊維長が短いことから、剛性は高いものの引張強度は低く、その意味では破れ易く取外しには好都合な性質を有している。
【0066】
このように本実施形態においても、従来のDFM製法に替えてWFM製法によって防錆カバー212を製造することとしたので、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
簡単に説明すると、第3の工程及び第4の工程におけるバキュームポンプ222による吸引時間を調整することで第1紙繊維層228及び第2紙繊維層230の板厚を任意にコントロールすることができる。これにより、防錆カバー212のディスクホイール36等への組付時の要求強度を確保することができる。また、結合強度が比較的低い紙繊維による結合を基調とするWFM製法を採用したので、不要時には防錆カバー212を簡単に取り外すことができる。特に、第1紙繊維層228は長繊維202から形成され劣化し易く構成されているため、(更には第2紙繊維層230にあっても剛性は高いものの引張強度は低いため、)防錆カバー212の取外し性をより一層向上させることができる。この結果、本実施形態においても、組付時の強度確保については防錆カバー212を構成する第1紙繊維層228及び第2紙繊維層230の板厚をコントロールすることで対処し、取外し性については結合強度が比較的低い紙繊維を利用したこと、並びに劣化し易い部分と劣化しにくい部分とを設けたことの双方で対処し、第2の要求性能確保と第4の要求性能確保との両立を図ることができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、耐劣化性が劣る第1紙繊維層228、耐劣化性に優れた第2紙繊維層230の順に形成されていくことから、防錆カバー212の表面側は劣化しにくく、裏面側は劣化し易くなる。従って、防錆カバー212の裏面側(内側)ではある程度の吸湿効果を期待でき、これによりディスクブレーキ装置28の構成部品(ディスクロータ26やキャリパ30)に錆が発生するのを防止することができる。すなわち、本実施形態によれば、ディスクロータ26等の防錆性能確保という第1の要求性能に対する更なる改善を図ることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、紙材の繊維を粉砕する第1の工程と、粉砕された繊維を水に溶かすと共に耐劣化性についての性質が互いに異なる第1溶液並びに第2溶液を作る第2の工程と、第1溶液中に多孔質の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、を有するので、組付時には充分な強度を確保することができ、しかも不要時には簡単に取り外すことができるという優れた効果を有する。
【0070】
請求項2記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、紙材の繊維を粉砕して長繊維及び短繊維を作る第1の工程と、粉砕された長繊維を水に溶かした第1溶液並びに粉砕された短繊維を水に溶かした第2溶液を作る第2の工程と、第1溶液中に多孔質の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の第1紙繊維層の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、を有するので、組付時には充分な強度を確保することができ、しかも不要時には簡単に取り外すことができるという優れた効果を有する。
【0071】
さらに、本発明では、耐劣化性が劣る第1紙繊維層、耐劣化性維に優れた第2紙繊維層の順に形成することから、防錆カバーの表面側では劣化しにくく裏面側では劣化し易くなる。このため、防錆カバーの裏面側(内側)ではある程度の吸湿効果が期待でき、これによりディスクブレーキ装置の構成部品に錆が発生するのを防止することができる。すなわち、本発明では、ディスクロータ等の防錆性能確保という第1の要求性能に対する更なる改善を図ることができるという優れた効果を有する。
【0072】
請求項3記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、紙材の繊維を粉砕する第1の工程と、粉砕された繊維を水に溶かすと共に劣化防止材料を所定量添加した第1溶液並びに粉砕された繊維を水に溶かすと共に前記所定量よりも少ない量の劣化防止材料を添加し或いは劣化防止材料を無添加とした第2溶液を作る第2の工程と、第1溶液中に多孔質の型の一部を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の一部の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、第2溶液中に型の他の一部又は全体を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の他の一部の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、を有するので、組付時には充分な強度を確保することができ、しかも不要時には簡単に取り外すことができるという優れた効果を有する。
【0073】
請求項4記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、請求項3に記載の発明において、劣化防止材料として撥水剤を用いたので、撥水剤の添加量を調整することで、第1紙繊維層及び第2紙繊維層の耐劣化性を調整することができるという優れた効果を有する。
【0074】
請求項5記載の本発明に係る防錆カバーの製造方法は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、第2紙繊維層を、防錆カバーの取外し時にディスクブレーキ装置の構成部品との干渉範囲に設定したので、防錆カバーの取外し性をより一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0075】
請求項6記載の本発明に係る防錆カバーは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法によって製造したので、組付時には充分な強度を確保することができると共に不要時には簡単に取り外すことができ、特には不要時の取外し性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態において、紙繊維が溶け込んだ水溶液が作られるまでの工程を示す工程図である。
【図2】水溶液に撥水剤及びバージンパルプが添加されて攪拌される工程を示す工程図である。
【図3】図2に示される工程を経て得られた第1混合水溶液を示す工程図である。
【図4】吸着工程で用いられる防錆カバー型の斜視図である。
【図5】防錆カバー型が第1混合水溶液中又は第2混合水溶液中に浸漬されて吸着がなされる工程を示す工程図である。
【図6】バキュームポンプに防錆カバーが吸着されるまでの工程を示す工程図である。
【図7】乾燥工程を示す工程図である。
【図8】最終成形工程を示す工程図である。
【図9】以上の工程を経て得られた防錆カバーの完成品を示す斜視図である。
【図10】防錆カバーの組付状態を示す車両のホイール付近の縦断面図である。
【図11】防錆カバーが組付けられた状態をホイール側方から見て示す正面図である。
【図12】防錆カバーの組付時に用いられる係合手段の構成を示す概略図である。
【図13】第2実施形態において、防錆カバー型が第1水溶液中又は第2水溶液中に順次浸漬されて吸着がなされる工程を示す工程図である。
【図14】第2実施形態における防錆カバーの完成品を示す縦断面図である。
【図15】従来の防錆カバーの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
26 ディスクロータ(ディスクブレーキ装置の構成部品)
30 キャリパ(ディスクブレーキ装置の構成部品)
44 防錆カバー
58 古新聞(紙材)
60 ダンボール(紙材)
62 紙繊維
66 水溶液
68 撥水剤(劣化防止材料)
74 第1混合水溶液(第1溶液)
76 防錆カバー型
92 バキュームポンプ
104 第1紙繊維層
132 第2混合水溶液(第2溶液)
134 第2紙繊維層
202 長繊維
204 第1水溶液(第1溶液)
208 短繊維
210 第2水溶液(第2溶液)
212 防錆カバー
214 防錆カバー型
222 バキュームポンプ
228 第1紙繊維層
230 第2紙繊維層

Claims (6)

  1. 紙材の繊維を粉砕する第1の工程と、
    粉砕された繊維を水に溶かすと共に耐劣化性についての性質が互いに異なる第1溶液並びに第2溶液を作る第2の工程と、
    第1溶液中に多孔質の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、
    第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、
    を有する、
    ことを特徴とする防錆カバーの製造方法。
  2. 紙材の繊維を粉砕して長繊維及び短繊維を作る第1の工程と、
    粉砕された長繊維を水に溶かした第1溶液並びに粉砕された短繊維を水に溶かした第2溶液を作る第2の工程と、
    第1溶液中に多孔質の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、
    第2溶液中に第1紙繊維層形成後の型を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の第1紙繊維層の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、
    を有する、
    ことを特徴とする防錆カバーの製造方法。
  3. 紙材の繊維を粉砕する第1の工程と、
    粉砕された繊維を水に溶かすと共に劣化防止材料を所定量添加した第1溶液並びに粉砕された繊維を水に溶かすと共に前記所定量よりも少ない量の劣化防止材料を添加し或いは劣化防止材料を無添加とした第2溶液を作る第2の工程と、
    第1溶液中に多孔質の型の一部を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の一部の表面に防錆カバーの一部を構成する第1紙繊維層を形成する第3の工程と、
    第2溶液中に型の他の一部又は全体を浸漬させ、型内部から所定の吸引力で吸引することにより当該型の他の一部の表面に防錆カバーの他の一部を構成する第2紙繊維層を形成する第4の工程と、
    を有する、
    ことを特徴とする防錆カバーの製造方法。
  4. 前記劣化防止材料として撥水剤を用いた、
    ことを特徴とする請求項3に記載の防錆カバーの製造方法。
  5. 前記第2紙繊維層を、防錆カバーの取外し時にディスクブレーキ装置の構成部品との干渉範囲に設定した、
    ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の防錆カバーの製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法によって製造した、
    ことを特徴とする防錆カバー。
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