JP3562143B2 - 気体圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体圧縮機に係り、例えば、自動車の空調設備等に使用される気体圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、気体圧縮機の一例としてベーン圧縮機が知られている。
このベーン圧縮機は、気体を導入する吸入室と、この吸入室に導入される気体を回転体の回転により吸入孔から吸い込んで圧縮する圧縮室と、この圧縮室で圧縮済みの気体を吐出孔から吐出する吐出室などから構成される。圧縮室は、回転体を収容するシリンダブロックと、このシリンダブロックの両側を塞ぐ左右のサイドブロックとで形成され、この圧縮室内には、半径方向に摺動自在なベーンを有するロータが回転自在に収納されている。
また、この気体圧縮機では、圧縮室を形成するシリンダブロック(ケース)の外周に温度センサ(サーミスタセンサ)がネジ止めされ、この温度センサにより圧縮室の内部近傍の温度を検出し、この検出温度により圧縮室の回転体の回転制御を行い、圧縮室内の温度が異常にならないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧縮室内では、ベーンによる気体(冷媒ガス)の圧縮による発熱の他に、ベーンが圧縮室の内周面と摺動することによる発熱が生じており、この両者による温度を確実に検出する必要がある。
しかし、従来の温度センサは、圧縮室を形成するシリンダブロックの外周に取付けられ、シリンダブロックを伝わってくる熱を間接的に検出する上に、その取付け位置が適切でないために、圧縮室内の最高温度を確実に検出ができないという不都合があった。
【0004】
また、何らかの原因により圧縮室内の気体が希薄状態になったときには、気体の圧縮による発熱は小さく、ベーンが圧縮室の内周面と摺動することによる発熱が相対的に大きくなる。
しかし、このベーンによる摺動発熱は圧縮室内の気体が希薄のために、シリンダブロックの外部に伝わりにくいので、その摺動発熱による温度を確実に検出できず、ベーンを損傷してしまうという不都合があった。
一方、従来の温度センサは、温度の検出という機能しか持っていないために、温度センサの存在は、気体圧縮機全体の部品点数の増加をさせて、制作費用の上昇を招くという不都合があった。
【0005】
そこで、本発明は、温度センサに新たな機能を持たせ、全体の部品点数の減少が図れると同時に、コストダウンが図れ、さらに、組み立ての際の便宜を図ることができる気体圧縮機を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、圧縮室内の適正な温度検出ができる気体圧縮機を提供することを第2の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、気体を導入する吸入室と、回転体を回転自在に収容する筒状のシリンダブロックと、このシリンダブロックの開口する両側に固定する左右のサイドブロックとで形成され、前記吸入室に導入される気体を回転体の回転により吸入孔から吸い込んで圧縮する圧縮室と、この圧縮室で圧縮済みの気体を吐出孔から吐出する吐出室と、長さ方向に向けて中空部を設け、この中空部の先端を閉塞するとともに、その先端側の外周に、前記シリンダブロックの端面に設ける所定の雌ネジとネジ結合する雄ネジを切った検出用ケースと、この検出用ケースの中空部内の底部に設け、前記圧縮室内の温度を検出する温度検出素子と、この温度検出素子と電気的に接続し、前記検出用ケースの外部まで延長する外部延長コードと、を有し、前記左右のサイドブロックのいずれか一方のサイドブロックの一部を前記シリンダブロックに固定する際に用いられる温度センサと、を備えた気体圧縮機であって、前記温度センサの検出用ケースは、頭部に穴を設け、この穴の周囲の少なくとも一箇所に、前記外部延長コード配線用の切り欠きを設けたことにより、前記第1の目的を達成する。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の気体圧縮機において、前記検出用ケースの頭部に設けられる穴は、六角穴である。
【0008】
請求項3記載の発明では、請求項1又は請求項2記載の気体圧縮機において、前記温度センサの検出部は、前記圧縮室の吐出孔の近傍、又は、前記シリンダブロック内であって、前記回転体による圧縮工程の終了位置側に設けられることにより、前記第2の目的を達成する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の気体圧縮機の実施の形態の全体構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A線から見た図である。図3は、この実施の形態の構成の主要部を示す概略の分解斜視図である。
【0010】
この気体圧縮機は、図1に示すように、ケーシング1の開口端をフロントヘッド2で塞ぎ、そのケーシング1内に圧縮機本体3を収納する構成が採用されている。
圧縮機本体3はシリンダブロック6を備え、このシリンダブロック6の開口する両端側には、フロントサイドブロック4とリヤサイドブロック5とが後述のように取り付けられ、シリンダブロック6、フロントサイドブロック4、およびリヤサイドブロック5によって、図2および図3に示すような楕円筒状の圧縮室7が形成されている。
【0011】
次に、シリンダブロック6の開口する端面に取付けるフロントサイドブロック4、リヤサイドブロック5などの取付け構造の詳細について、図2および図3を参照して説明する。
シリンダブロック6の前端面の4箇所には、シリンダブロック6の長さ方向に向けて4個のネジ孔6a〜6dが設けられ、これに対応して図3に示すように、フロントサイドブロック4とフロントヘッド2には、4個の取付け用の通孔がそれぞれ設けられている。
そして、ネジ孔6a、6c、6dには3本の取付け用のボルト31を使用し、ネジ孔6bには温度センサ41に設けた後述のネジを使用することにより、シリンダブロック6の前端面には、フロントサイドブロック4とフロントヘッド2とが重なった状態で、一体に固定されるように構成される。
【0012】
ここで、ネジ孔6bとネジ孔6dの各位置は、図2に示すように、圧縮室7の吐出孔13の近傍であって、ベーン10による圧縮工程の終了位置側とする。
これにより、温度センサ41の検出部は、シリンダブロック6内であって、圧縮室7の吐出孔13の近傍、かつベーン10による圧縮工程の終了位置側に配置されることになる。
なお、温度センサ41の具体的な構成については、後述する。
【0013】
また、シリンダブロック6の後端面の4箇所には、前端面と同様に4個所にネジ孔(図示せず)が設けられ、このネジ孔に対応してリヤサイドブロック5には4個の取付け用の通孔が設けられている。
そして、この4個のネジ孔には4本の取付け用のボルト34を使用することにより、図3に示すように、リヤサイドブロック5がシリンダブロックの後端面に固定されるように構成される。
【0014】
圧縮室7には、ロータ8が回転自在に収納されている。このロータ8には、端面間を貫通するロータ軸8aが一体に設けられており、ロータ軸8aはフロントサイドブロック4の軸受4aとリヤサイドブロック5の軸受5aに回転可能に支持されている。
ロータ8の径方向には、図2および図3に示すように、ベーン10を収納する複数(5個)のベーン溝9が設けられ、この各ベーン溝9にはベーン10が圧縮室7の内周面に向けて出没自在に収納されている。このベーン10は、ロータ8の回転時に、遠心力とベーン溝9の底部の油圧とにより圧縮室7の内周面に付勢される。
【0015】
圧縮室7の2つの吸入孔20は、それぞれ気体通路21等を介して吸入室12と連通可能に構成されている。
また、圧縮室7の吐出孔13、13には、吐出弁14、14が設けられている。その吐出孔13、13は、リヤサイドブロック5の厚み方向に形成される吐出通路(図示せず)と連通し、この吐出通路の終端はリヤサイドブロック5の吐出室16側に一体に取り付けられた油分離器15に接続されている。
吐出室16の底部には、油分離器15で分離された潤滑油を貯留する油溜まり17が形成されている。この油溜まり17の潤滑油は、オイル通路18を介して軸受4a、軸受5a等の摺動部に供給されるように構成される。
【0016】
次に、温度センサ41の構成の詳細にについて、図4および図5を参照して説明する。
温度センサ41は、図4および図5に示すように、ボルトとしての機能を併せ持つ検出用ケース42と、この検出用ケース42内に配置した温度検出素子43と、この温度検出素子43と電気的に接続して検出用ケース42の外部まで延長する外部延長コード44などから構成される。
検出用ケース42は、その長さ方向に向けて中空部45が形成され、この中空部45の先端が閉塞されるとともに、その先端側の外周に、上述のシリンダブロック6に設けたネジ孔6bとネジ結合できるオネジ42aが切られている。
また、検出用ケース42の頭部には、六角レンチを使用するための六角穴46が設けられ、この六角穴46の対向する一部に2つの切り欠き47、47が形成されている。
この検出用ケース42の構成素材としては、鉄、真鍮、アルミニウムなどを使用する。
【0017】
温度検出素子43は、検出用ケース42の中空部45内の底部に接着剤などで固定されている。温度検出素子43としては、サーミスタ、熱電対、または測温抵抗体などが利用される。
外部延長コード44は、その先端が温度検出素子43に接続され、その後端がコネクタ48に接続されている。また、外部延長コード44は、熱収縮チューブ49で被覆され、その上側がビニルチューブ50で被覆されている。
このような構成からなる温度センサ41は、温度検出の機能を有することに加え、図3に示すボルト31と同様に、部材を取付けることができるボルトとしての機能を有することになる。
【0018】
次に、このように構成される実施の形態の動作の説明について、図面を参照して説明する。
いま、ロータ8が回転すると、これに伴うベーン10の回転により、吸入室12の低圧冷媒ガスが気体通路21、吸入孔20などを介して圧縮室7内に吸入され、この吸入された気体はベーン10の回転に伴って圧縮されていく。
この圧縮されたガスは、圧縮室7の吐出孔13、13、吐出弁14、14、吐出通路、および油分離器15を経由して吐出室16に吐出される。この吐出の際に、油分離器15では高圧冷媒ガスから油分を分離し、この分離された油分は、吐出室16の底部の油溜まり17に落下する。
【0019】
一方、吸入室12または圧縮室7と吐出室16との間には、吐出室16が高圧で吸入室12または圧縮室7が低圧の圧力差が生じている。従って、この圧力差により、油溜まり17の潤滑油は、オイル通路18を経由して軸受4a、軸受5a等の摺動部に供給される。
摺動部に供給された潤滑油は、最終的には、低圧側の吸入室12内に流入し、吸入室12の低圧冷媒ガス中でミストとなり、圧縮室7内に吸入されて冷媒ガスとともに圧縮される。
【0020】
このように、圧縮室7での気体の圧縮が開始されると、気体の圧縮による発熱と、ベーン10が圧縮室7の内周面を摺動することによる摺動発熱とにより、圧縮室7内の温度は、図6の実線で示すように上昇していき飽和状態になる。
温度センサ41は、この圧縮室7内の温度を検出するが、温度センサ41の温度検出素子43を収容する検出用ケース42は、図2または図3に示すように、圧縮室7を形成するシリンダブロック6内のネジ孔6b内にネジ結合の状態で埋め込まれている。
この埋め込み位置は、圧縮室7の吐出孔13の近傍であって、ベーン10による圧縮工程の終了位置側であり、圧縮室7内の最高温度の場所であると考えられる。従って、温度センサ41における温度検出素子43の検出温度は、圧縮室7の温度を制御するためのものとして適正であり、しかもその温度の検出精度も良いと考えられる(図6の破線参照)。
なお、図6の一点鎖線は、従来のサーミスタセンサによる検出温度である。
【0021】
ところで、圧縮室7内の気体が、何らかの原因により希薄状態になったときには、気体の圧縮による発熱は小さく、ベーン10が圧縮室7の内周面と摺動することによる発熱が相対的に大きくなる。このベーン10による摺動発熱は、圧縮室7の気体が希薄のために、圧縮室7を構成するシリンダブロック6の外部に伝わりにくい。
ところが、この摺動発熱は、温度センサ41の温度検出素子43の配置位置付近が最大と考えられ、温度検出素子43がシリンダブロック6内に埋められた状態にあるために、温度検出素子43に効率良く伝わると考えられる。
従って、気体センサ41の温度検出素子43は、その摺動発熱による温度を確実かつ精度良く検出できるので、圧縮室7の気体の希薄時において、ベーン10の摺動発熱によって生ずるベーン10の損傷を防止できる。
【0022】
以上述べたように、この実施の形態の気体圧縮機では、温度センサ41の温度検出素子43を、シリンダブロック6内の吐出孔13の近傍であって、ベーン10による圧縮工程の終了位置側に設けるようにした。
従って、圧縮室7内の最高温度を精度良く検出でき、かつ、圧縮室7の気体の希薄時には、ベーン10の摺動発熱による温度を確実かつ精度良く検出して、ベーン10の摺動発熱によるベーン10の損傷を防止できる。
【0023】
また、この実施の形態では、温度センサ41は検出用ケース42内に温度検出素子43を配置するとともに、その検出用ケース42にオネジ42aを切るようにし、このオネジ42aによってリンダブロック6にフロントブロック5とフロントヘッド2とを重ねて取付けるようにした。
すなわち、温度センサ41に温度の検出という本来の機能の他に、部品の取り付け機能を持たせるようにしたので、気体圧縮機全体の部品点数を減少させて、制作費用の上昇を抑制できる。
さらに、この実施の形態の温度センサ41では、検出用ケース42の頭部に六角穴46を設け、この六角穴46の対向する一部に2つの切り欠き47、47を設けるようにしたので、温度センサ41の外部延長コード44を2方向から取り出すことができ、組み立ての際に便宜である。
【0024】
なお、上記の実施の形態では、温度センサ41をシリンダブロック6の前端面に設けたネジ孔6aに取り付けるようにしたが、これに代えて、その前端面に設けたネジ孔6dの位置にフロントサイドブロック4等とともに取付けるようにしても良い。
また、温度センサ41を、シリンダブロック6の後端面に設けたリヤサイドブロック5の取付け用のネジ孔のうち、シリンダブロック6の前端面に設けたネジ孔6bまたはネジ孔6dに対応する位置のネジ孔を利用し、このネジ孔に取付けるようにしても良い。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の気体圧縮機では、温度センサに温度検出という本来の機能の他に、部材の取付け機能を持たせるようにしたので、全体の部品点数の減少が図れて、それに伴うコストダウンが図れ、さらに、検出用ケースに外部延長コード配線用の切り欠きを設けるようにしたので、組み立ての際の便宜を図ることができる。
また、本発明の気体圧縮機では、温度センサの検出部を、圧縮室の吐出孔の近傍であって、回転体による圧縮工程の終了する位置側に配置するようにしたので、圧縮室内の適正な温度検出ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の気体圧縮機の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線から見た断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の主要部の構成を示す概略分解斜視図である。
【図4】温度センサの構成を示す斜視図である。
【図5】同温度センサの断面図である。
【図6】圧縮室内の温度、およびその検出温度の一例を示す図である。
【符号の説明】
3 圧縮機本体
4 フロントサイドブロック
5 リヤサイドブロック
6 シリンダブロック
6a〜6d ネジ孔
7 圧縮室
8 ロータ
10 ベーン
12 吸入室
13 吐出孔
16 吐出室
20 吸入孔
31 ボルト
41 温度センサ
42 検出用ケース
43 温度検出素子
46 六角穴
47 切り欠き
Claims (3)
- 気体を導入する吸入室と、
回転体を回転自在に収容する筒状のシリンダブロックと、このシリンダブロックの開口する両側に固定する左右のサイドブロックとで形成され、前記吸入室に導入される気体を回転体の回転により吸入孔から吸い込んで圧縮する圧縮室と、
この圧縮室で圧縮済みの気体を吐出孔から吐出する吐出室と、
長さ方向に向けて中空部を設け、この中空部の先端を閉塞するとともに、その先端側の外周に、前記シリンダブロックの端面に設ける所定の雌ネジとネジ結合する雄ネジを切った検出用ケースと、この検出用ケースの中空部内の底部に設け、前記圧縮室内の温度を検出する温度検出素子と、この温度検出素子と電気的に接続し、前記検出用ケースの外部まで延長する外部延長コードと、を有し、前記左右のサイドブロックのいずれか一方のサイドブロックの一部を前記シリンダブロックに固定する際に用いられる温度センサと、
を備えた気体圧縮機であって、
前記温度センサの検出用ケースは、頭部に穴を設け、この穴の周囲の少なくとも一箇所に、前記外部延長コード配線用の切り欠きを設けたことを特徴とする気体圧縮機。 - 前記検出用ケースの頭部に設けられる穴は、六角穴であることを特徴とする請求項1記載の気体圧縮機。
- 前記温度センサの検出部は、前記圧縮室の吐出孔の近傍、又は、前記シリンダブロック内であって、前記回転体による圧縮工程の終了位置側に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の気体圧縮機。
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