JP2004308482A - 電動気体圧縮機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】モータ制御部104に対してモータ10を低速回転で駆動するよう指示が出された場合、モータ制御部104は支持された回転数よりも少し高い回転数でモータ10を起動させて、モータ10の状態が正常状態となったときに指示された回転数までモータ10を減速させる。このようにモータ10を少し高い回転数で起動することにより、モータ10に接続されたベーンロータリ式の気体圧縮機のベーンをロータ内から突出させることができ、さらにベーンを押し出すための十分な油圧が生成されるので、ベーンを安定して突出させることができる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の空調装置等に用いられるベーンロータリ式の電動気体圧縮機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平5−99165号公報
従来、空調装置等の冷媒圧縮に用いられる気体圧縮機は、そのケーシング内に配置した内周面が略楕円形のシリンダ内に、複数のベーンを備えるロータを回転可能に設け、その回転にしたがってベーンで仕切られた空間が容積変化を繰り返す圧縮室を形成し、吸入口から圧縮室へ吸入した冷媒ガスを圧縮して吐出口から吐出するようになっている。
【0003】
このようなベーンロータリ式の気体圧縮機を低速で起動させた場合には、ベーンをシリンダの内周面に押し付ける力が弱いため、ベーンがロータ内から全く出なかったり、ベーンが出たとしてもベーンが跳ねてチャタリングによる異音が発生して騒音の問題を引き起こすことがある。これらを防止するため、気体圧縮機の内部に特別な圧力調整弁を取り付けたり、特別な冷媒通路を設けるなど様々な構造上の工夫がなされている。
【0004】
また、気体圧縮機を長時間停止した後などには気体圧縮機内部に液体冷媒や油が多量に溜まることがあり、そのまま気体圧縮機を高速起動した場合には高速で液圧縮を起こし、騒音や耐久性に問題が出るため液圧縮を防止する必要がある。この液圧縮を防止する方法として特開平5−99165号公報においては、気体圧縮機内に液圧縮であるか否かを検出する検出手段を設け、液圧縮状態にある場合には気体圧縮機を超低速運転とすることで、液状冷媒を少しずつ排出してから起動する技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の気体圧縮機にあっては、気温が低く油の粘度が高い場合や、もともと高い粘度の油を使用している場合などは、ベーンがシリンダ内から飛び出ないことがある。特に気体圧縮機の容量が小さくなるとベーンも小さくなるため、ベーンに働く遠心力に対して油の抵抗の割合が大きくなり、ベーンが非常に出にくくなる。またこの対策を構造上の工夫によって行う場合には、気体圧縮機の構造が複雑となり、コストも高くなってしまう。
【0006】
また、液圧縮を防止するため特開平5−99165号公報記載の技術があるが、ベーンロータリ式の電動気体圧縮機において、電動気体圧縮機の超低速運転を行った場合にはベーンをシリンダの内周面に押し付ける力が弱いため、ベーンがロータ内から出ず液状冷媒を排出することができない。またベーンをシリンダ内から出すために高速起動を行うと、液圧縮による騒音や耐久性に問題がでた。
【0007】
そこで本発明はこのような問題点に鑑み、複雑な構造を付加することなく、起動時にベーンを所定位置まで突出させ、液圧縮を防止したベーンロータリ式の電動気体圧縮機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の本発明は、内周面が略楕円形のシリンダと該シリンダ内に圧縮室を形成する複数のベーンをベーン溝に保持するロータとによって構成される圧縮機と、該圧縮機を駆動するモータとを有する電動気体圧縮機において、モータの回転数の制御を行うモータ制御部と、圧縮機の状態が正常状態であるかどうかを判定する判定部とを有し、モータ制御部は、所定の目標回転数で圧縮機を駆動する際に、目標回転数よりも高い第1の回転数で圧縮機を起動させ、判定部によって圧縮機が正常状態であることが検出された場合に、モータ制御部は目標回転数まで圧縮機の回転数を下げるものとした。
【0009】
請求項2の本発明は、内周面が略楕円形のシリンダと該シリンダ内に圧縮室を形成する複数のベーンをベーン溝に保持するロータとによって構成される圧縮機と、該圧縮機を駆動するモータとを有する電動気体圧縮機において、モータの回転数の制御を行うモータ制御部と、圧縮機の状態が正常状態であるかどうかを判定する判定部とを有し、モータ制御部は、所定の目標回転数で圧縮機を駆動する際に、目標回転数よりも低い第2の回転数で圧縮機を起動させ、判定部によって圧縮機が正常状態であることが検出された場合に、モータ制御部は目標回転数まで圧縮機の回転数を上げるものとした。
【0010】
請求項3の本発明は、モータに流れる電流値を検出する電流値検出部を有し、判定部は、電流値検出部によって検出された電流値と基準電流値とを比較し、電流値検出部によって検出された電流値が基準電流値を挟んだ所定範囲内にあるときを、正常状態であると判定するものとした。
【0011】
請求項4の本発明は、基準電流値は、ベーンが突出して前記シリンダ内周面に当接し、かつ圧縮機が液圧縮を起こしていない場合に電流値検出部によって検出される電流値に設定するものとした。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を実施例により説明する。
図1は実施例を示す縦断面図、図2は図1におけるA−A部断面図である。
円筒状に形成されたセンタケース3と、それぞれ有底筒状に形成されたリヤケース4およびフロントケース5とが、リヤケース4とフロントケース5とによってセンタケース3を挟み、その開口縁同士が整合されて固定され電動気体圧縮機1のケーシング2を構成している。
フロントケース5は、その開口側にコイル12を備えたステータ11が焼きばめによって固定されている。
なおフロントケース5の内周壁には段差部6が形成され、ステータ11の前端はこの段差部6に当接されて位置決めされる。
【0013】
センタケース3のリヤケース4側の開口部には、圧縮機20が配置されている。圧縮機20は、内周円が楕円形状に形成されたシリンダ21内に複数のベーン23を備えるロータ25が回転可能に設けられ、シリンダ21をフロントサイドブロック30とリヤサイドブロック40との間に挟んでベーンロータリ式圧縮機を形成している。
【0014】
ロータ25はその回転軸27を、後側(図中左側)ではリヤサイドブロック40の支持穴41に支持され、前側(図中右側)ではフロントサイドブロック30の支持穴31に支持されている。
またセンタケース3の内周壁には段差部8が形成され、フロントサイドブロック30の前端を段差部8に当接させて圧縮機20の位置決めを行う。
【0015】
とくに図2に示すように、ロータ25の外周面側にはスリット状のベーン溝56が放射状に複数形成され、これらのベーン溝56にはそれぞれベーン23が装着されている。このベーン23は、ロータ25の回転時に発生する遠心力とベーン溝56の底部に形成される背圧室59に加えられる油圧とにより、シリンダ21の内周面に向けて付勢される。シリンダ21内はロータ25とベーン23により複数の小室に仕切られ、ロータ25の回転にしたがって容積の大小変化を繰り返す圧縮室48を形成する。
【0016】
シリンダ21、フロントサイドブロック30およびリヤサイドブロック40は、それぞれの位置関係が規定され、シリンダ21の中心に対してロータ25の回転軸27を整合させた状態で、リヤサイドブロック40、シリンダ21およびフロントサイドブロック30を貫通する図示しないボルトによって、センタケース3の段差部8にねじ止め固定されている。
リヤサイドブロック40には、オイルセパレータ49を備えるサイクロンブロック67が取り付けられている。
【0017】
ロータ25の回転軸27は、支持穴31を貫通してフロントケース5内に伸びる延長部28を有し、この延長部28には、軸方向においてステータ11に整合させた回転子16が固定されている。これによりステータ11と回転子16とでモータ10が形成される。
【0018】
フロントケース5内では、モータ10によって2つの空間51、52が形成されている。モータ10より前側の空間51と、モータ10とフロントサイドブロック30との間の空間52とは、モータ10を挟んで冷媒の吸入室50を形成している。
フロントサイドブロック30には、吸入室50と圧縮室48を連通させる吸入口36が開口している。
【0019】
またフロントケース5には、冷媒ガスをケーシング2内部に導入する吸入ポート15が形成される。吸入ポート15から吸入室50に流入した冷媒ガスは、フロントサイドブロック30に形成された吸入口36から圧縮室48へ吸入される。
コイル12から延びるケーブル13が、ハーメチックターミナルによってケーシング2の気密を保ちつつ外部にひきだされ、モータ10の制御を行う制御部100に接続されている。
【0020】
リヤケース4のサイクロンブロック67が臨む空間は、吐出室53を形成している。リヤケース4の側壁には吐出ポート9が設けられて、圧縮機20からオイルセパレータ49を経て吐出された冷媒を吐出ポート9から外部へ供給するようになっている。
サイクロンブロック67は、リヤサイドブロック40の支持穴41が形成されたボス部38との間にシールリング64を挟んで、密閉空間Rを形成している。
【0021】
図2に示すように、シリンダ21の短径部近傍は外周部に吐出チャンバ68が切り欠かれて薄肉部とされ、この薄肉部に吐出口42が開口している。吐出口42にはリードバルブ43が設けられている。
吐出口42から吐出された冷媒ガスは、吐出チャンバ68からオイルセパレータ49を経て吐出室53へ吐出される。吸入口36と吐出口42はロータ25の回転軸27に関して対称に、それぞれシリンダ21の周辺部にそった2箇所に設けられている。
【0022】
ロータ25が回転すると、吸入ポート15から流入する冷媒ガスは、吸入室50から吸入口36を経て圧縮室48へ吸入される。そして冷媒ガスは圧縮室48で圧縮された後、吐出口42からリードバルブ43を経て吐出され、吐出室53を経て吐出ポート9から外部へ吐出される。
【0023】
リヤサイドブロック40には吐出室53の図中下側に開口するとともに支持穴41の側壁に至る油路33が形成され、また、リヤサイドブロック40のロータ25に対向する面には、ベーン溝56の背圧室59に連通するように配した凹部(さらい)44が設けられている。
サイクロンブロック67とリヤサイドブロック40との間の密閉空間Rと、凹部44とが連通路34で結ばれている。
【0024】
吐出室53には、所定量の潤滑油が貯留されている。
潤滑油は、単体における動粘度が40℃において60〜350mm2/s、100℃において13〜25mm2/sであり、比較的高粘度である。
吐出室53の吐出圧に押されて、油路33を経て支持穴41の側壁に至った潤滑油は、支持穴41と回転軸27間の隙間を通って密閉空間Rへ流れ、それから連通路34により凹部44へ流れるものと、支持穴41と回転軸27の隙間を通って凹部44へ流れるものがある。
【0025】
密閉空間Rの潤滑油は、吐出圧の潤滑油が支持穴41と回転軸27間の微小隙間を通過する際の絞り作用で減圧されたもので、やや吐出圧に近い中間圧力状態となる。この中間圧力は、密閉空間Rが連通路34によって凹部44と通じ、したがって複数のベーン溝56の背圧室59と連通しているので、複数のベーン背圧の平均圧力でもある。
【0026】
シリンダ21の底部にはリヤサイドブロック40の油路33に連通する貫通穴46が設けられ、フロントサイドブロック30に形成された油路26でこの貫通穴46とフロントサイドブロック30の支持穴31とを接続して、当該支持穴31ならびにフロントサイドブロック30のロータ25に対向する面に形成した凹部45へ潤滑油を導くようになっている。
【0027】
次に、制御部100によって行われる電動気体圧縮機1の起動時における制御について説明する。
図3を用いて制御部100の構成について説明する。
制御部100は内部に、図示しない空調機のコントローラ等からの信号や、後述の判定部103での判定結果よりモータ10の回転数指令値を決定するモータ制御部104と、モータ制御部104によって決定された回転数指令値にもとづいてモータ10を駆動する駆動部105とを有している。
【0028】
さらに、制御部100はモータ10に流れる電流値を検出する電流値検出部102を有し、さらにモータ制御部104によって決定された回転数指令値と電流値検出部102によって検出された電流値とにもとづいてベーン23の飛び出し状態等を判定する判定部103とを有している。
【0029】
次に、電動気体圧縮機を起動する際の制御部100の動作について説明する。
まず図4を用いて、電動気体圧縮機1を低速で駆動させたい場合、すなわち起動終了後のモータ制御部104に対する目標回転数が、例えば1000rpmの低回転数である場合について説明する。
ステップ200においてモータ制御部104は、指示された目標回転数よりも高い回転数である2000rpmを駆動部105に対して指示し、駆動部105はモータ10を回転数2000rpmで起動させる。
【0030】
次にステップ201において、ベーン23がロータ25内から飛び出ているかどうかの判断を行う。
ここで、モータは負荷が大きくなると消費電流が増大し、負荷が小さくなると消費電流が減少する。したがってモータの回転数指令値と電流値をモニタすることによりモータの負荷の大小を確認することができる。
また電動気体圧縮機1の起動時にベーン23が飛び出ていない場合には、ロータ25が空転し定常時よりもモータの負荷は小さくなり、電流値も小さくなる。
【0031】
よって判定部103では、モータ制御部104によって決定された回転数指令値と電流値検出部102によって検出された電流値とをモニタし、電流値検出部102によって検出される電流値が第1の電流値となった場合に、ベーン23がロータ25内から飛び出たと判断することができる。
この第1の電流値としては、モータ10を回転数2000rpmで駆動させ、かつベーン23がロータ25から飛び出た状態であるときに電流値検出部102によって検出される電流値を基準電流値とし、該基準電流値より所定量少ない値が設定される。本実施例においては基準電流値を30Aとし、第1の電流値は28Aに設定した。
【0032】
ステップ201においてベーン23が飛び出したと判断されるまで、モータ10を2000rpmで駆動する。
ステップ201においてベーン23が飛び出たと判定されると、ステップ202において、モータ制御部104は回転数指示値を低くしてモータ10を減速させ、ステップ203においてモータ制御部104に対して指示された回転数指令値(1000rpm)でモータを定常運転させる。
【0033】
図5の(a)および(b)に、モータ10の回転数と電流値検出部102によって検出される電流値との関係を示す。図5の(a)は、ベーン23が引っかかりなく飛び出す場合を示し、図5の(b)はベーン23が飛び出し難い場合を示す。
図5の(a)に示すように、モータ10を起動させて回転数を2000rpmまで上昇させる。回転数の上昇とともにベーン23がロータ25内から飛び出し、シリンダ21の内周面に接触することによりモータ10の負荷が大きくなり電流値検出部102によって検出される電流値が大きくなる。
【0034】
時刻t1において、検出される電流値が第1の電流値以上となるとモータ10を減速させる。時刻t2においてモータ制御部104に対して指示された回転数指令値(1000rpm)まで減速させたあと、以降、回転数1000rpmでモータ10を定常運転させる。
【0035】
また図5の(b)に示すようにベーン23が飛び出し難い場合には、モータ10の起動後しばらくの間、ベーン23がシリンダ21の内周面に当接しておらずモータ10の負荷が小さいため電流値検出部102によって検出される電流値も小さい。ベーン23が飛び出した後、モータ10に負荷が加わり検出される電流値が大きくなる。
時刻t3において、検出される電流値が第1の電流値以上となるとモータ10を減速させ、時刻t4においてモータ制御部104に対して指示された回転数指令値(1000rpm)まで減速させたあと、以降、回転数1000rpmでモータ10を定常運転させる。
【0036】
次に図6を用いて、電動気体圧縮機1を高速で駆動させたい場合、すなわち起動終了後のモータ制御部104に対する目標回転数が、例えば5000rpmの高回転数である場合について説明する。
また図7の(a)は、液圧縮がない場合における電流値検出部102によって検出される電流値とモータ10の回転数との関係を示し、図7の(b)は液圧縮がある場合における電流値検出部102によって検出される電流値とモータ10の回転数との関係を示す。
【0037】
ステップ300においてモータ制御部104は、指示された目標回転数よりも低い回転数2000rpmを駆動部105に対して指示し、駆動部105はモータ10を回転数2000rpmで起動させる。
これにより図7の(a)および(b)に示すように、電流値が上昇するとともにモータ10の回転数も上昇する。
【0038】
次にステップ301において、ベーン23がロータ25から飛び出たかどうかの判断を行う。この判断も上記図4に示すステップ201と同様に、電流値検出部102によって検出される電流値が第1の電流値以上となった場合(図7の(a)および(b)における時刻t1’およびt3’の時点)に、ベーン23が飛び出たと判断する。
【0039】
ベーン23が飛び出たと判断されるとステップ302において、圧縮機20が液圧縮を起こしているかどうかの判断を行う。液圧縮を起こしている場合には、モータ10の負荷がさらに大きくなり、モータに流れる電流値も大きくなる。
よって電流値検出部102によって検出される電流値が、第2の電流値以下である場合に、シリンダ21内に液体冷媒が無く液圧縮を起こしていない、または液体冷媒がシリンダ21内から排出されて液圧縮を起こしていないと判断してステップ303へ進む。
この第2の電流値としては、モータ10を回転数2000rpmで駆動させた際に検出される上述の基準電流値(30A)よりも所定量大きい値が設定される。本実施例においては第2の電流値を32Aに設定した。
【0040】
液圧縮が発生していない場合には、モータ10に対して大きな負荷が加わらないため、図7の(a)に示すように電流値検出部102によって検出される電流値が、時刻t1’以降においても第2の電流値以下のままとなる。よって時刻t2’において、判定部103は圧縮機20が液圧縮を起こしていないと判断してステップ303へ進む。
【0041】
一方、液圧縮を起こしている場合にはモータ10に大きな負荷が加わるため、図7の(b)に示すように時刻t3’において検出される電流値が第1の電流値以上となった後においても、モータ10に流れる電流は増加を続け、さらに第2の電流値以上となる。
モータ制御部104は回転数2000rpmでのモータ10の駆動を維持することにより、液圧縮による圧縮機20の負荷の増大を防止しながら液体冷媒をシリンダ21内から排出させる。シリンダ21内の液体冷媒が排出されるとモータ10の負荷が減少し、検出される電流値も減少する。その後検出される電流値が第2の電流値以下となる時刻t4’において、判定部103は圧縮機20が液圧縮を起こしていないと判断してステップ303へ進む。
【0042】
ステップ303でモータ制御部104は、時刻t2’およびt4’以降、モータ10の回転数を上昇させ、ステップ304においてモータ10の回転数が5000rpmに達すると、モータ10の定常運転を行う。
【0043】
本実施例は以上のように構成され、電動気体圧縮機1を低回転数で駆動させたい場合には、モータ制御部104は指示された回転数よりも高い回転数でモータ10を起動させ、電流値検出部102によって検出される電流値が第一の電流値以上となるときに、モータ制御部104は指示された回転数までモータ10を減速させる。このようにモータ制御部104は指示された回転数よりも高い回転数でモータ10を起動させることにより、ベーン23に十分な遠心力が加わるので、ベーン23をロータ25内から突出させることができ、さらに背圧室59に十分な油圧が供給されることにより、ベーン23を安定して突出させることができる。
【0044】
また電動気体圧縮機1を高回転数で駆動させたい場合には、モータ制御部104は指示された回転数よりも低い回転数でモータ10を起動させ、電流値検出部102によって検出される電流値が第1の電流値以上であり、かつ第2の電流値以下となるときに、モータ制御部104は指示された回転数までモータ10を加速させる。このように、まずベーン23をロータ25内から突出させたあと液圧縮を起こしているかどうかを判断し、液圧縮を起こしていない場合にモータ10の回転数を上昇させることとしたので、液圧縮を起こしている場合にはモータ10を低回転で駆動してシリンダ21内の液体冷媒を外部へ排出することができ、液圧縮状態にあるときにモータ10を高回転で駆動した際に発生する騒音や耐久性の問題が発生することがない。
【0045】
さらに、電動気体圧縮機1の構造上の変更を行うことなく、モータ10の制御を行う制御部100のソフト上の変更を行うのみで、ベーン23を突出させたり液圧縮を防止したりすることができるので、容易に、かつコストを抑えつつ上記問題を解決することができる。
【0046】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ベーンをロータ内から突出させるために十分でない回転数で圧縮機を駆動させる際に、モータ制御部は目標回転数よりも高い第1の回転数でモータを起動させることとしたので、ベーンに十分な遠心力が加わり、ベーンをロータ内から突出させることができ、さらにベーンを安定して押し出すための十分な油圧が生成されるので、ベーンを安定して突出させることができる。
【0047】
請求項2記載の発明によれば、圧縮機を高回転で駆動させる際に、モータ制御部は目標回転数よりも低い第2の回転数でモータ10を起動することとしたので、シリンダ内に液体冷媒が溜まっている場合にも、シリンダ内の液体冷媒を低回転で排出することによって液圧縮を防止することができ、液圧縮状態にあるときにモータを高回転で駆動した際に発生する騒音や耐久性の問題が発生することがない。
【0048】
また判定部は、電流値検出部によって検出される電流値と、基準電流値との比較を行うことによって圧縮機の状態が正常状態であるかどうかの判断を行うこととしたので、ベーンが突出しているかどうかを検出するセンサや、シリンダ内に液体冷媒があるかどうかを検出するセンサ等を備えることなく、容易に圧縮機の状態が正常であるかどうかを判断することができる。
また電動気体圧縮機の構造上の変更を行うことなく、モータを制御する制御部のソフト上の変更を行うのみでベーンを安定して突出させたり液圧縮を防止したりすることができるので、容易に、かつコストを抑えつつ上記の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施例を示す図である。
【図2】図1におけるA−A部断面図である。
【図3】制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】モータを低速駆動する際に制御部で行われる処理の流れを示す図である。
【図5】モータを低速駆動する際のモータ回転数とモータに流れる電流値との関係を示す図である。
【図6】モータを高速駆動する際に制御部で行われる処理の流れを示す図である。
【図7】モータを高速駆動する際のモータ回転数とモータに流れる電流値との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 電動気体圧縮機
2 ケーシング
3 センタケース
4 リヤケース
5 フロントケース
6、8 段差部
9 吐出ポート
10 モータ
11 ステータ
12 コイル
13 ケーブル
15 吸入ポート
16 回転子
20 圧縮機
21 シリンダ
23 ベーン
25 ロータ
26 油路
27 回転軸
28 延長部
30 フロントサイドブロック
31 支持穴
33 油路
34 連通路
36 吸入口
38 ボス部
40 リヤサイドブロック
41 支持穴
42 吐出口
43 リードバルブ
44、45 凹部
46 貫通穴
48 圧縮室
49 オイルセパレータ
50 吸入室
51、52 空間
53 吐出室
56 ベーン溝
59 背圧室
64 シールリング
67 サイクロンブロック
68 吐出チャンバ
Claims (4)
- 内周面が略楕円形のシリンダと該シリンダ内に圧縮室を形成する複数のベーンをベーン溝に保持するロータとによって構成される圧縮機と、該圧縮機を駆動するモータとを有する電動気体圧縮機において、
前記モータの回転数の制御を行うモータ制御部と、
前記圧縮機の状態が正常状態であるかどうかを判定する判定部とを有し、
前記モータ制御部は、所定の目標回転数で前記圧縮機を駆動する際に、前記目標回転数よりも高い第1の回転数で前記圧縮機を起動させ、前記判定部によって前記圧縮機が正常状態であることが検出された場合に、前記モータ制御部は前記目標回転数まで前記圧縮機の回転数を下げることを特徴とする電動気体圧縮機の制御装置。 - 内周面が略楕円形のシリンダと該シリンダ内に圧縮室を形成する複数のベーンをベーン溝に保持するロータとによって構成される圧縮機と、該圧縮機を駆動するモータとを有する電動気体圧縮機において、
前記モータの回転数の制御を行うモータ制御部と、
前記圧縮機の状態が正常状態であるかどうかを判定する判定部とを有し、
前記モータ制御部は、所定の目標回転数で前記圧縮機を駆動する際に、前記目標回転数よりも低い第2の回転数で前記圧縮機を起動させ、前記判定部によって前記圧縮機が正常状態であることが検出された場合に、前記モータ制御部は前記目標回転数まで前記圧縮機の回転数を上げることを特徴とする電動気体圧縮機の制御装置。 - 前記モータに流れる電流値を検出する電流値検出部を有し、前記判定部は、前記電流値検出部によって検出された電流値と基準電流値とを比較し、前記電流値検出部によって検出された電流値が前記基準電流値を挟んだ所定範囲内にあるときを、前記正常状態であると判定することを特徴とする請求項1または2記載の電動気体圧縮機の制御装置。
- 前記基準電流値は、前記ベーンが突出して前記シリンダ内周面に当接し、かつ圧縮機が液圧縮を起こしていない場合に前記電流値検出部によって検出される電流値に設定することを特徴とする請求項3記載の電動気体圧縮機の制御装置。
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