JP3561987B2 - 多弁吸気式エンジン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複数の吸気ポートを有した多弁吸気式エンジンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は先に、図9に示すような多弁吸気式エンジンを提案した(特願平5−78275号)。この多弁吸気式エンジンは、クランク軸方向(機関長手方向)と略直角な方向に二本の吸気ポート1,2を並設して、一方の吸気ポート1をヘリカル形状にすることでシリンダ3内にスワールSを形成させると共に、他方の直線状の吸気ポート2の、シリンダ3に開口する開口部付近の内壁部に凹部4を設けることで、その吸気を反転させてスワールSの方向に案内するものである。
【0003】
この構成により、強いスワールSが得られ、しかも従来のエンジン(実開昭59−192625号公報など)のように吸気系が複雑なレイアウトとなることがない多弁吸気式のエンジンとすることができた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで前記提案においては、ヘリカル形状の吸気ポート1による吸気はバルブ(図示せず)を中心にして渦巻状にシリンダ3内に供給されるので、シリンダ周方向に向かう流れa1 のほかに、他方の吸気ポート2の側に向かう流れa2 も生じている。このため、この流れa2 が他方の吸気ポート2の凹部4による吸気の流れbと対向する形となり、干渉しあってスワールSが充分に強められないという課題が残されていた。
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、吸気ポートの流入空気が互いに干渉することがなく、充分な強いスワールが得られる多弁吸気式エンジンを提供すべく創案されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、クランク軸方向と略直角な方向に延出する第一の吸気ポート及び第二の吸気ポートを並べて配置し、第一の吸気ポートの第一のシリンダ側開口部と、第二の吸気ポートの第二のシリンダ側開口部とを、クランク軸方向に並べて配置した多弁吸気式エンジンであって、第一の吸気ポートの中間部における第二の吸気ポートと反対側の内壁に、吸気をシリンダ周方向に導いて、第二のシリンダ側開口部から第一のシリンダ側開口部に向かう方向のスワールを形成するための突出部を設けると共に、第二の吸気ポートの第二のシリンダ側開口部近傍の内壁に、その吸気をスワールの方向に案内するための凹部を設けたものである。
【0007】
【作用】
上記構成によって、第一の吸気ポートの突出部は、ポート内を通ってきた空気の流れ全体をシリンダ周方向に導いてスワールを形成する。第二の吸気ポートの凹部は、ポート内から開口部へと向かう空気を反転させるように案内する。この吸気は、第一の吸気ポートからの吸気と干渉することなくシリンダ内に流入し、スワールを強める。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0009】
図1及び図2は、本発明に係わる多弁吸気式エンジンの一実施例を示したものである。この多弁吸気式エンジンは、クランク軸方向と平面視で略直角な方向に第一の吸気ポート11及び第二の吸気ポート12を並べて配置したものであって、第一の吸気ポート11にはスワールSを形成するための突出部13が設けられ、第二の吸気ポート12には吸気をスワール方向Sに案内するための凹部14が設けられて構成されている。
【0010】
第一の吸気ポート11は、図2に示したようにシリンダヘッド41の一側面42から下面43までの略単調な屈曲経路にて形成されている。そして図1に示したように、シリンダ側開口部15の中心O1 を通りクランク軸センタ17と直角である軸線16に対して、シリンダ中心Oから離れる側に僅かに偏位して延びている。突出部13は、ポート長手方向の中間部において、第二の吸気ポート12と反対側の内壁18に形成されており、平面断面で略三角形を呈するように入口側の傾斜面19とシリンダ側の傾斜面20とで区画されている。突出部13の頂点21は丸みを帯びて、両傾斜面19,20を滑らかに連続させている。突出部13の突出長さd1 は、突出部13よりも上流側の位置におけるポート幅d2 の約1/3 程度(d1 ≒d2 /3)である。図3ないし図5に示すように、第一の吸気ポート11の上下方向の断面は、曲率が異なる複数の円弧が連ねられて描かれるものであり、真円形状のシリンダ側開口部15に近い位置の内壁22は、8 通りの曲率半径(r1 …r8 )の円弧によって略円形を呈し、略長方形である入口側開口部23に近い位置の内壁23は、6 通りの曲率半径(r17…r22)の円弧によって長方形が丸みを帯びた形状となっている。そして突出部13の断面は、3 通りの曲率半径(r10…r12)の円弧で区画されており、突出部13と対面する側である第二の吸気ポート12に近い側の内壁24は、4 通りの曲率半径(r 13…r16)の円弧によって区画され、その上流側の内壁23の一部と略同様の形状となっている。従ってこの位置の断面形状は、軸線16の位置を中心とした図中上下方向にやや長い略楕円形の形状となっている。このほかシリンダ側開口部15の直上の位置には、吸気弁のための軸孔(図示せず)が設けられる平坦壁面25が形成されている。
【0011】
第二の吸気ポート12は、図1に示したように、シリンダ側開口部26の中心O2 を通る軸線27に対して、ポート中間の部分が第一の吸気ポート11に近づくように僅かに屈曲或いは傾斜して延びている。凹部14は、シリンダ側開口部26の近傍においてスワールS上流側の内壁に形成されており、図6に示すように、シリンダ側に向かうに従って径方向外方に拡張するように傾斜した傾斜壁面27と、シリンダ下面43に平行な平坦面28と、傾斜壁面27及び平坦面28を滑らかに結ぶ曲面29とで区画されている。これらの形状は、第二の吸気ポート12の内壁30に沿って流れてくる吸気をスワールS方向に反転させ、しかもシリンダ側開口部26を出てからバルブ(図示せず)に阻まれない流れとなるように適宜形成されるべきものである。例えば、平坦面28とシリンダ下面43との間の距離(高さ)Hは、シリンダ側開口部26の直径Dの10%から30%(0.1 D<H≦0.3 D)としてよい。また凹部14の深さ(傾斜壁面27の下流側端と開口部側壁31との距離)Gは、シリンダ側開口部26の直径Dの10%から40%(0.1 D<G≦0.4 D)としてよい。さらに曲面29の曲率半径rO は、シリンダ側開口部26の直径Dの20%以下(rO ≦0.2 D)としてよい。そして平坦面28の深さKは、凹部14の深さGの50%から60%(0.5 D<G≦0.6 D)としてよい。
【0012】
次に本実施例の作用を説明する。
【0013】
エンジンの吸気工程において、入口側開口部23から第一の吸気ポート11内を通る吸気は、途中で突出部13の傾斜面19,20に沿わされ、流入方向が略軸線16の方向であったのをシリンダ中心Oから離れる方向に屈折される。そしてシリンダ側開口部15においては、全体がシリンダ周方向に向かってシリンダ3内に供給され(図中S1 )、強いスワールSを形成する。第二の吸気ポート12を通る吸気は、開口部26の手前で凹部14によって反転されて、スワール方向に向きを変え(図中S2 )、第一の吸気ポート11からの吸気と干渉することなくシリンダ3内に流入し、スワールSを増強させる。
【0014】
このように、第一の吸気ポート11に突出部13を設けて屈折させた流れによりシリンダ3内にスワールSを形成し、第二の吸気ポート12に凹部14を設けて吸気をスワールS方向に案内するようにしたので、第二の吸気ポート12による吸気の流れと第一の吸気ポート11による吸気の流れとが干渉するのを防止でき、スワールSの向上が達成される。すなわちクランク軸方向と略直角な方向に吸気ポート11,12を並設した多弁吸気式エンジンにおいて、そのシンプルな構造を大きく変更することなく、燃焼を改善させてスモーク低減ができると共に、高い体積効率による出力向上及び燃費低減が実現できる。また第一の吸気ポート11の突出部13は中間部に位置されており、しかも流れ方向に対して比較的緩やかな傾斜面19,20で区画されているので、吸気の絞り損失はほとんどない。
【0015】
本発明者らは、前記構成のうち、特に第一の吸気ポート11の作用効果を確認するため、スワール比(シリンダ3内のガス流旋回角速度のエンジン回転角速度に対する比)の測定を行った。測定はバルブリフトを変えて行い、従来の構成(図9参照)のものと比較した。図7に両方の吸気ポート(11,12)を開いた場合の測定結果を、図8に第一の吸気ポート(11)のみ開いた場合の測定結果を、それぞれ示す。いずれの場合においても、本発明の実施例の構成のスワール比(図中実線にて示す)は、従来の構成のスワール比(破線)よりも全体的に高い値となった。とくに実用的な高いバルブリフトでは、従来のものよりも約20%スワール比が増大しており、スワールの向上が極めて顕著に得られることが確認された。
【0016】
なお本実施例においては、吸気ポート11,12は、各軸線16,27から僅かにずれるように形成するものとしたが、ポート中心と軸線とが一致するような形状としてもよい。また突出部13の高さd1 或いは傾斜面19,20の形状などは図示例に限らず、適用されるエンジンにおいて所望するスワールSが形成できるものであればよい。さらに第二の吸気ポート12の凹部14は、平坦面28がシリンダ周方向に傾斜しているものであってもよく、平坦面とせずに、湾曲した面としても構わない。
【0017】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、吸気ポート相互の吸気流の干渉が防止され、スワールの向上が達成されるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる多弁吸気式エンジンの一実施例を示した平面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1及び図2のB−B線矢視断面図である。
【図4】図1及び図2のC−C線矢視断面図である。
【図5】図1及び図2のD−D線矢視断面図である。
【図6】図1のE−E線矢視断面図である。
【図7】本発明の作用効果を説明するためのバルブリフトとスワール比との関係図である。
【図8】本発明の作用効果を説明するためのバルブリフトとスワール比との他の関係図である。
【図9】従来の多弁吸気式エンジンを示した平面図である。
【符号の説明】
3 シリンダ
11 第一の吸気ポート
12 第二の吸気ポート
13 突出部
14 凹部
17 クランク軸センタ
18 第二の吸気ポートの内壁
26 シリンダ側開口部
S スワール
Claims (1)
- クランク軸方向と略直角な方向に延出する第一の吸気ポート及び第二の吸気ポートを並べて配置し、上記第一の吸気ポートの第一のシリンダ側開口部と、上記第二の吸気ポートの第二のシリンダ側開口部とを、クランク軸方向に並べて配置した多弁吸気式エンジンであって、上記第一の吸気ポートの中間部における上記第二の吸気ポートと反対側の内壁に、吸気をシリンダ周方向に導いて、上記第二のシリンダ側開口部から上記第一のシリンダ側開口部に向かう方向のスワールを形成するための突出部を設けると共に、上記第二の吸気ポートの上記第二のシリンダ側開口部近傍の内壁に、その吸気をスワールの方向に案内するための凹部を設けたことを特徴とする多弁吸気式エンジン。
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