JP3561817B2 - 大型電磁遮蔽建物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、劇場や公会堂、工場、店舗、体育館等の大空間を電磁遮蔽空間として構築する大型電磁遮蔽建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近建物内部で電波を用いる場合が増加している。それに伴い、外部への不法電波の漏洩や外部からの電波の影響を防止するための電磁遮蔽の需要が増大している。本出願人は、ビル内で電波を使って無線通信を行う場合、電波法上の規制を受けることなく自由に周波数帯域を選択できるようにするため、既にビル自体を電磁遮蔽構造にする電磁遮蔽ビルに関し種々の提案をしている。例えば特公平6−99972号公報や特公平6−99973号公報、特公平7−16118号公報、特公平6−76706号公報では、ビルの躯体や外壁の遮蔽構造について提案し、特公平6−99971号公報や特公平6−33699号公報、特公平6−13822号公報では、ビルの出入口の遮蔽構造について、特公平6−63407号公報や特公平5−79790号公報、特公平3−58557号公報では、窓開口部の遮蔽構造について提案している。また、特公平3−62320号公報や特公平3−45972号公報、特公平3−62318号公報、特公平5−34159号公報では、天井や階層別の遮蔽構造について提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、機密情報を扱う情報システムや通話システム、簡便な無線通信システム等、建物の用途により、或いは使用する電波の周波数帯域や強度により要求される電磁遮蔽レベルは異なるにもかかわらず、すべて上記のような電磁遮蔽構造の建物を構築すると、材料費や工費等が過大にかかり過ぎる場合が生じる。
【0004】
例えばコンサート等を開催するために建設される簡易構造の建物や劇場、公会堂、体育館等において、ワイヤレスマイクや機器操作のためのリモコンを使用したり、レーザ光線で照明を演出したりするような場合には、これらの演出に対して外部電波がノイズとなって悪影響を及ぼしたり、建物内の電波が外部空間に漏洩して公衆の通信に悪影響を及ぼしたりするのを防ぐことが要求される。したがって、格別高い電磁遮蔽性能を要求されるわけではないことが多い。
【0005】
さらに、工場や大型店舗においても、広い空間で製品や商品の管理、設備機器の操作を効率的に行うため、無線LANやコードレス電話、リモコンなどを使用することも増えてきている。このような場合も、外来電波による誤動作や干渉があると、管理情報の信頼性を損ない、設備機器の誤動作を引き起こすという問題がある。したがって、このような外来電波による誤動作や干渉を防止するためには、上記の例と同様に電磁遮蔽性能を持たせることが必要となる。
【0006】
しかし、上記のような用途の建物の大空間を電磁遮蔽するためには、建物を構成する各面、即ち6面体であれば6面すべてを金属などの電磁遮蔽材で覆うことが必要となるが、その施工面積が膨大になる。そのため、施工や材料費等の費用がかなり掛かるという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、電磁遮蔽性能を有する建築材料を用いて効率的に電磁遮蔽を行うものである。
そのために本発明は、大空間を電磁遮蔽空間として構築する大型電磁遮蔽建物であって、電磁遮蔽材として、電磁遮蔽用被覆不織布、金属メッシュ、パンチングメタル、又は金属箔を用い、屋根は、金属板で構成される折板屋根又はアルミ屋根で構成し、壁は、角波サイデイング又は金属カーテンウオールで構成し、構造床は、型枠兼構造部材兼電磁遮蔽材として鋼板のデッキプレートを用いてコンクリートを打設し、コンクリート床は、捨てコンと土間コンクリートとの間に前記電磁遮蔽材を敷設して構成すると共に、内部で電波を用いて演出を行う劇場を含む前記大空間の客席と外に開放され観客が出入扉から前記客席に出入りするホールとを内部壁と出入扉に電磁遮蔽性能を持たせて仕切り、相互の電磁遮蔽層間は、前記電磁遮蔽材を用いて電気的に接続することにより、前記内部壁と出入扉で前記ホールと仕切った前記客席の電磁遮蔽空間を構築したことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、前記大空間を内部壁と出入扉でホールと客席に仕切り、前記内部壁と出入扉に電磁遮蔽性能を持たせたことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る大型電磁遮蔽建物の実施の形態を示す図であり、1、1′は屋根、2、2′は外部壁、3は構造床、4はコンクリート床、5は内部壁、6は接続部を示す。
図1に示す建物は、屋根1、外部壁2、構造床3、コンクリート床4、内部壁5に電磁遮蔽性能を有する建築材料及び電磁遮蔽材を用い、客席、舞台、奈落、フライロフト等からなる劇場空間をホールの空間を含む外部空間から分離した電磁遮蔽空間として構築するものである。つまり、劇場に本発明の大型電磁遮蔽建物を適用した例を示している。
【0010】
屋根1は、電磁遮蔽性能を有する金属板等を用いた建築材料により構築したものであり、例えば折板屋根やアルミ屋根などである。外部壁2は、電磁遮蔽性能を有する金属板等を用いた建築材料により構築したものであり、例えば角波タイディングや金属カーテンウォールなどである。構造床3は、電磁遮蔽性能を有する金属板等を用いた建築材料により構築したものであり、例えば鋼板製のデッキプレートを型枠兼構造部材兼電磁遮蔽材として用いてコンクリートを打設している。コンクリート床4は、地面に直に打設した捨てコンの上に電磁シールド用金属メッシュ等の電磁遮蔽材を敷設してから土間コンクリートを打設することによって、電磁遮蔽性能を持たせたものである。内部壁5は、電磁シールド用金属メッシュや金属箔その他の電磁遮蔽材を張り付けたり、挟み込んだり、内部に混入させたりして、電磁遮蔽性能を持たせたものである。接続部6は、電磁シールド用金属メッシュや金属箔等の電磁遮蔽材を配置して、屋根1の金属板と外部壁2の金属板とを電気的に一体に接続している。構造床3やコンクリート床4、内部壁5などの接続部においても同様に電磁遮蔽材を用いて電気的に一体化するための施工がなされる。このように劇場の空間を電磁遮蔽性能を有する金属板や金属メッシュ等で覆い、それらの部材間を電気的に一体に接続することによって、外部空間から独立した遮蔽空間を構築している。
【0011】
劇場では、先に述べたようにワイヤレスマイクやリモコン、レーザ光線等を使って舞台演出を行う。したがって、外部空間で使用されている電波とは関係なく内部で電波を用いているため、外部空間の侵入電波がノイズとなり演出効果に悪影響を及ぼしたり、逆に劇場からの漏洩電波が外部の公衆電波に悪影響を及ぼしたりするという問題が生じる。しかし、劇場の場合、ホールは、観客の出入りが常時多く外に開放しているのに対し、上演中であれば客席とホールとの出入扉を閉めているので、この出入扉を含めて客席とホールとの間の内部壁5に電磁遮蔽性能を持たせればよい。すなわち、何時、如何なるときでも電磁遮蔽空間にしなければならないというものでもなく、内部の使用状態により左右され、情報の漏洩のような問題も生じない。したがって、本発明のようにして構築した電磁遮蔽空間により要求に応えることができ、ホールの屋根1′や外部壁2′に電磁遮蔽材を用いなくてもよい。勿論、ホールも含めて外部空間から電磁遮蔽するように全ての屋根1、1′、外部壁2、2′に電磁遮蔽構造を採用してもよいことはいうまでもない。
【0012】
次に、本発明で採用される電磁遮蔽の細部の構造例について説明する。図2は折板屋根を用いた屋根の細部の構造例を示す図、図3はデッキプレートを用いた段差のある構造床の細部の構造例を示す図、図4はコンクリート床の細部の構造例を示す図、図5は接続部の細部の構造例を示す図である。
【0013】
まず図1のイに示す屋根1は、例えば図2(A)に示すように梁(又は母屋)8の上にタイトフレーム9を溶接にて固定し、そのタイトフレーム9の上に複数の折板10を固定する。折板10は、断面略逆八の字形状の樋状に形成し、両端部に係合フランジ10a及び係止フランジ10bを形成したものである。タイトフレーム9は、折板10の形状に沿って谷部9aと山部9bを連続的に形成し、山部9bに固定用段部9cを形成して谷部9aが梁8の上に溶接にて固定したものである。したがって、折板10はタイトフレーム9の谷部9aに沿って嵌合され、隣接する折板10はその係合フランジ10a及び係止フランジ10bによって係合され、固定用段部9cにおいて固定ボルト11により固定される。
【0014】
また、上記構造の屋根においては、折板10の長手方向開口側Xから電波が室内に侵入、漏洩する。そこで、図2(B)に示すようにタイトフレーム9の山部9bと梁8との間に電磁遮蔽材12を装着し、電波の侵入、漏洩を防止する。電磁遮蔽材12は、屋根下が高温にならないようにするために、通気性の高い金属メッシュやパンチングメタル等を用い、図2(C)に示すように周囲をタイトフレーム9及び梁8の形状に沿って折曲部12aを加工し、折曲部12aをタイトフレーム9の山部9bの内側と梁8の上面に固定する。そして、折板屋根1を壁及び床の電磁遮蔽材と電気的に一体に接続する。
【0015】
図1のロに示すデッキプレートを用いた段差のある構造床の場合には、例えば図3に示すように型枠兼構造部材兼電磁遮蔽材として用いる鋼板製のデッキプレート21、21により形成された段差Hに、電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材22を用いて相互の電磁遮蔽層間を電気的に接続する。そしてその上にコンクリートを打設して床を構築し、最後に、デッキプレート21、21の上に耐水合板23及びカーペット24を敷設する。
【0016】
図1のハに示すコンクリート床では、例えば図4(A)に示すように地面に直に捨てコン33を打設し、その上に電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材32を敷設してから土間コンクリート31を打設する。また、段差のある部分でモルタルを施工する場合には、例えば図4(B)に示すようにコンクリート36の上に電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材35を敷設してその上にモルタル34を施工する。このように土間コンクリートが表面となる場合には、その下側に電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材を敷設するが、コンクリートの上にさらにモルタルや耐水合板、カーペット等を敷設する場合には、その下、つまりコンクリートの上に電磁遮蔽材を敷設し、相互の電磁遮蔽層の間を電気的に接続するように構成してもよい。
【0017】
図1のニに示す接続部では、例えば図5に示すように屋根1の折板46と外部壁2の角波サイディング43との間を電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材45で電気的に接続することによって、屋根1と外部壁2の電磁遮蔽層との間を電気的に一体にする。なお、屋根1は、通常折板46の下に断熱材や防音材47が敷設される(図2では省略)。外部壁2は、I型鋼やH型鋼、C型鋼の鋼材42の外側にC型鋼(Cチャンネル)44を介して角波サイディング43を取り付け、内側にプラスターボード2枚貼41を取り付ける。ここでは、電磁遮蔽材45を敷設するのが特別のシールド工事となるが、その他は一般の建築工事である。
【0018】
また、図1のホに示す接続部では、例えば図4(C)に示すように捨てコン33と土間コンクリート31との間に敷設した電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材32を立ち上げ、外部壁2の電磁遮蔽層に電気的に接続する。そして、立ち上げ部分の電磁遮蔽材32の上には、例えば図4(B)の場合と同様にモルタル34、水切り37を施工する。
【0019】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、劇場の構造について説明したが、公会堂や体育館、工場、店舗その他の大型電磁遮蔽建物にも同様に適用してもよい。また、空調部分の外気取り入れ口のような開口部については、防虫金網兼用の金属メッシュ(エキスパンドメタル)を用いてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、屋根や外壁部、構造床を電磁遮蔽性能を有する通常の建築材料で構築し、各電磁遮蔽層との間を電磁シールド用金属メッシュや電磁シールド用被覆不織布、金属箔等の電磁遮蔽材で電気的に接続するので、大半を通常の建築工事で施工して特殊工事であるシールド工事を少なくすることができる。したがって、工費、材料費を低減して工期を短縮することができるので、低コストで短期にイベント用建物や劇場、体育館等の大型電磁遮蔽建物を建設することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大型電磁遮蔽建物の実施の形態を示す図である。
【図2】折板屋根を用いた屋根の細部の構造例を示す図である。
【図3】デッキプレートを用いた段差のある構造床の細部の構造例を示す図である。
【図4】コンクリート床の細部の構造例を示す図である。
【図5】接続部の細部の構造例を示す図である。
【符号の説明】
1、1′…屋根、2、2′…外部壁、3…構造床、4…コンクリート床、5…内部壁、6…接続部
Claims (1)
- 大空間を電磁遮蔽空間として構築する大型電磁遮蔽建物であって、電磁遮蔽材として、電磁遮蔽用被覆不織布、金属メッシュ、パンチングメタル、又は金属箔を用い、屋根は、金属板で構成される折板屋根又はアルミ屋根で構成し、壁は、角波サイデイング又は金属カーテンウオールで構成し、構造床は、型枠兼構造部材兼電磁遮蔽材として鋼板のデッキプレートを用いてコンクリートを打設し、コンクリート床は、捨てコンと土間コンクリートとの間に前記電磁遮蔽材を敷設して構成すると共に、内部で電波を用いて演出を行う劇場を含む前記大空間の客席と外に開放され観客が出入扉から前記客席に出入りするホールとを内部壁と出入扉に電磁遮蔽性能を持たせて仕切り、相互の電磁遮蔽層間は、前記電磁遮蔽材を用いて電気的に接続することにより、前記内部壁と出入扉で前記ホールと仕切った前記客席の電磁遮蔽空間を構築したことを特徴とする大型電磁遮蔽建物。
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JP29808595A JP3561817B2 (ja) | 1995-11-16 | 1995-11-16 | 大型電磁遮蔽建物 |
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JPH09139595A JPH09139595A (ja) | 1997-05-27 |
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1995
- 1995-11-16 JP JP29808595A patent/JP3561817B2/ja not_active Expired - Fee Related
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